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これをどうして本編でやらんのか!『境界の彼方』ブルーレイ7巻紹介

 なるべくネタバレしないように書きます。

 昨年の10~12月に放送され、ウチのブログで猛プッシュして、最終回に「………何が起こった?」と唖然とした『境界の彼方』のブルーレイ&DVDの最終巻が発売されました。
 公式サイトを見る限り、ブルーレイもDVDも画質以外の収録内容は一緒みたいですね。価格はDVDの方がちょっと安いですが、私はブルーレイの方を買いました。ちなみに1~6巻は買っていません。最終巻に収録されている0話を観たくて、最終巻だけ買ったのです。



 放送当時に書いた考察記事は以下の通りです。

生きるためには食べなくてはならない!『境界の彼方』の食事シーンを読み解く
初見では絶対にワケが分からないであろう『境界の彼方』の伏線をまとめました
『境界の彼方』アニメでキャラを好きになった人達へ、原作小説その他のススメ
栗山未来は「何」になったのか――アニメ『境界の彼方』ラストシーン考察

 テレビ版の最終回が終わった直後の記事で、私は「敢えて謎を残して、来年7月に発売されるブルーレイ7巻(新作未放送エピソード1話収録)で明らかになるあのね商法かよ花田先生、もしくは劇場版とか2期ありきの構成だったのかよ京アニ―――と、最終話を観た直後は正直思いました。」と書きました。
 その後に原作を読んだり、他サイトさんの考察を読んだりして、明らかになった謎もありましたが―――作中でかなり細かく描写されている「名瀬美月が何をしていたのか」の回答は最後までなく、半年間ずっとモヤモヤしました。


 だから、ブルーレイ最終巻の紹介記事を書こうと思います。
 自分も含めて『境界の彼方』が大好きだった人達にとって、このブルーレイ最終巻がどういう位置付けの商品になるのかを書いておこうと思います。


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 開封の儀!


☆ 初回特典「スペシャル三方背ケース/デジパック仕様」
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 紙のケースに、デジパック仕様のケースが入っています。
 描かれている絵は「表紙」「背表紙」「裏表紙」の三方でつながっているアイドル裁判の4人の絵(非SDバージョン)ですね。

 細かい話ですが……『未確認で進行形』の時「デジパック仕様は出すのがちょっと面倒くさい」と書きましたが、『未確認で進行形』の紙ケースは上下が開いていたのに対して、『境界の彼方』の紙ケースは横が開いているので出すのは面倒くさくないです。


☆ 初回特典「メガネストのための特大ポストカード(名瀬 泉)」
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 私はメガネストではないのでノーコメントで!!


☆ 初回特典「16Pオールカラーブックレット「芝姫」特別号其の漆」
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 「漆」と書いて「7」と読むのか!マジか!
 言ってしまえば単なるブックレットですが16ページもあって、結構凝っています。

>鳥居なごむ氏書きおろし「芝姫」連載小説『眼鏡売りの少女とツンデレラ』最終回
 原作者によるオリジナル小説。
 最終回だけ読んでもよく分かりませんでしたが、あー原作ってこんなカンジだったなぁと思わせる小説でした。

>キャラクター紹介【名瀬 泉/二ノ宮 雫/新堂彩華/藤真弥勒】
 これは公式ガイドブックなんかにも載っているような情報なので、目当てにするようなものでもないですね。

>0話紹介(#0 東雲)
>きょうかいのかなた アイドル裁判!~迷いながらも君を裁く民

 収録されている話の解説です。とてつもなくネタバレなので本編を視聴してから読んだ方がイイと思います!

>「#0東雲」「きょうかいのかなた アイドル裁判!」設定紹介
 0話に登場する中学生時代の博臣・美月・秋人と登場する妖夢の設定画、アイドル裁判のSDキャラの設定画です。細かい指定なんかも書き込まれていて見ごたえ十分ですが、文字が小さくて解読できないものもあるのが残念。設定画は眺めているだけで楽しいのでもっと見せて欲しいです!

>キャラクターデザイン・門脇未来のラフ画
 キャラクターデザイン&総作画監督&京アニの天使こと門脇未来さんのラフ絵です。「本当にラフ絵だ!」と驚きました(笑)。絵は超上手いんだけど、どうしてこんな絵を描いたのだろうか、疲れているのだろうかと心配になる絵でした。
 やきいもが髪の毛喰っている絵がお気に入りです。

>石立太一監督メッセージ
 石立監督の描く秋人と栗山さんの絵と、直筆メッセージです。
 あぁ……終わってしまったんだなぁ……と、寂しくなってしまったのが正直な気持ちです。




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 ん?




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 さぁ!ここからが本編だ!!


☆ 本編「#0 東雲」
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 こちらがメニュー画面。カッチョイイ!!

 「Play Movie」は「0話」→「アイドル裁判」の順に再生。
 「Chapter List」は、それらの好きなところから選んで再生。
 「Special Features」は「映像特典」。「ミニ劇場#7 ~母からの手紙~」と「アイドル裁判!ノンクレジットED」の二つが収録されています。
 「Audio&Subtitles」は、音声をコメンタリに切り替えたり、日本語字幕を付けたりできます。



 さて……そろそろ第0話の紹介を書きますか。
 これはもう「ネタバレかどうか」ではなくて、事前に書かないといけないと思うので書きます。テレビ版の全12話では明らかにならなかった謎が、今回の第0話で明らかになる―――みたいなことはありません。泉の過去についてはちょっと匂わす描写がありましたが、謎解明を目当てに買って満足できるようなものではありません。

 お話は、テレビ版から3年前の話。
 中学生の頃の博臣と美月が、中学生の頃の秋人と出会う話です(秋人は中学には通えていなかったみたいですが)。

 いわゆる典型的な“エピソード0”もので。
 テレビ版の全12話の中でも何回か話に出てきた「秋人と博臣が戦った話」を、しっかり描いてくれたということですね。

 私が“エピソード0”もので重視しているのは二つ、「本編で語られた“過去に起こったこと”と矛盾せずに辻褄を合わせた話になっているか」「本編では語られなかった“新たな情報”が提示されることで本編の解釈を一歩前進させてくれるか」です。

 前者については、ある一点を除けば満足です。
 特に自分が気にしていたテレビ版9話の「だったら(栗山さんじゃなくて)兄貴が殺せばイイじゃない」という美月の台詞は、この第0話を観て納得が出来ました。こういう過去があったのなら、あの台詞が出てきて当然です。

 しかし、後者については正直物足りなかったです。
 尺の問題もあるのでしょうが、テレビ版の全12話で描かれたものを捕捉するに留まっていて……「秋人は何者なのか」「美月は何をしていたのか」「最終回の栗山さんは何だったのか」といった謎を解決させてはくれませんでした。よくまとまっているけど、驚きはなかったなーというか。


 というかですね……この第0話で、初めて描かれた「基本的な設定」とかも多いんですよ。
 “人間に害をなす妖夢”とか、“結界(檻)を使えば姿を消すことが出来る”とか、“博臣が泉に対して劣等感を抱いている”とか、この辺の設定は本編でもちゃんと説明しなきゃダメだろ!って思いましたし……
 何より、「秋人が死にたがっている」という設定。原作小説版では重要な描写なのに、テレビ版の全12話ではきっちり描いてはくれなかったので「アニメ版ではなくなった設定だったのかなー」と思っていたら、第0話ではしっかり描かれてやんの!この秋人の設定を見せてこそ、栗山さんの「死ななくて良かった」というメールが何十倍にも意味を強めてくれるというのに!

 この第0話……テレビ版の5話目か6話目辺りにやっておけば良かったのにと、つくづく思いました。そうすれば終盤の展開の意味を強めてくれただろうし、設定が分かりやすくなることで中盤で脱落した人も減らせたろうに!


 映像のクオリティに関しては「流石」の一言。
 FOOD理論的には台所の描写が見事でしたし、中学二年の美月がひたすら可愛かったです。スタッフコメンタリの門脇さんによると、本編の美月とは表情設定が違うそうです。「謎解明」のようなものを期待しなければ、安定の京アニクオリティなので『境界の彼方』ファンなら満足できると思います。

 以前の記事で「テレビ版のラストは“栗山さんルート”だったんだ」と書きましたが、こちらは“博臣ルート”だと言えます。博臣のルーツと、秋人との関係とを描き、本編の行動に繋げる―――この第0話を観た後にテレビ版の最終話を観ると、あの台詞の重みが増すと思います。


 ということで……基本的には満足なんですが。なんですが。
 ごめんなさい、言わせてください。

 あのキャラに関しては、本編と矛盾しちゃってないですか?
 ネタバレなしでは説明できないので、文字色を反転させてください。

<以下、第0話ネタバレ>
 ニノさんの年齢は、3年前ということは20歳のはずなのだがとてもじゃないが見えない

 私が気になるのは、弥勒が泉と以前から知り合いで秋人のことも以前から追いかけていたという話です。
 本編では初対面っぽかったのに……というのは、スタッフコメンタリで監督も仰っていましたが「次に会う時はお互いに知らないフリをしましょう」みたいなニュアンスの台詞で納得できます。泉にとっても「弥勒と知り合いなこと」は名瀬家の連中にも隠したい過去なのでしょうし。
 しかし、第3話で泉が弥勒の能力を聞いていたり、第4話で弥勒が秋人の能力に驚いていたりというシーンは……他に聞いている人が誰もいないシーンです。嘘をつく必然性がどこにあるのか。

 正直、弥勒ではない他の新キャラを出すだけで良かったのに……って思ってしまいます。何でもかんでも弥勒のせいにしすぎて、事件がこじんまりしちゃっているところもありますしねぇ。

</ここまで>


 というワケで……面白いし、カッチョイイし、『境界の彼方』ファンならば観て損はないのですが。「かゆいところに手が届いていない」感も正直あって、またしても「来年の劇場版までお預け」が続くのかというところ。



☆ 本編「きょうかいのかなた アイドル裁判!~迷いながらも君を裁く民~」
 WEBで公開されたショートコメディの1~3話と、未公開の4~5話です。
 私は正直WEBで公開された時からあまり好きではなくて、未公開のも含めてそんなに楽しめなかったのですが……スタッフコメンタリを聴いて「この世界観はどこから生まれているのか」を考えて最初から観てみると、なるほど世界はこう見えているのかと興味深いものはありました。

 そう考えると……一番の被害者は愛ちゃんな気がする(笑)。


 脚本は全話を花田先生が担当し、
 コンテは1話を石立監督が、2~5話は『Free!』監督の内海紘子さんが描いたそうです。

 なので、花田先生の女性観と、内海さんの男性観が混じった内容になっているとか。
 そうか……3話の博臣は『Free!』の監督が作ったのか。


☆ 音声特典「キャストコメンタリー」「スタッフコメンタリー」
 さて、オーディオコメンタリーです。
 以前にも書きましたが私はオーディオコメンタリーがあまり好きじゃなくて、これまで買ってきたブルーレイやDVDもほとんど再生してきませんでした。しかし、あんな記事を書いたくらいですし、紹介記事を書く際にはちゃんと確認しなきゃなと再生しました。

 キャストコメンタリーは、種田梨沙さん(栗山さん役)、山岡ゆりさん(愛ちゃん役)、豊田萌絵さん(桜役)の3人で―――どうしてこの3人なのかというと、「第0話に出ていない3人」と「アイドル裁判に出ている3人」という選出らしいです。後者はともかく前者はダメだろ!「収録はどんなだったんだろうねー」とか言っているし(笑)。


 スタッフコメンタリーは、監督の石立太一さん、キャラクターデザインの門脇未来さん、文芸の西岡麻衣子さんの3人で―――前2人は説明するまでもありませんが、「西岡さん……?」「文芸……?」って人もいらっしゃるでしょうし、ちょっと解説しますと。
 西岡さんは『日常』や『氷菓』などの京アニ作品で脚本を書いている脚本家で、この『境界の彼方』では文芸という仕事をしています。文芸は作品によって仕事が違うらしいのですが、基本的には「脚本家のサポート」をするらしいです。『境界の彼方』のアニメの脚本は全ての回を花田先生が書いていますが、ドラマCDなどの番外編を西岡さんは書いていたそうです。


 えっとまぁ……特に「アイドル裁判」のスタッフコメンタリーは裏話も多くて、そこそこ面白かったんですが。石立監督が「そう言えば、この作品って食べるシーンが多いですね」と仰っていて、こんな記事まで書いた自分としては「あー、俺なんて最初から存在しなければイイんだ。そうすればこんな生き恥をさらすこともなかったのに」と生まれてきたことを後悔するしかなかったので、今後もオーディオコメンタリーは再生しない方向になりそうです。



☆ 映像特典「ミニ劇場#7 ~母からの手紙~」「アイドル裁判!ノンクレジットED」
 「アイドル裁判!ノンクレジットED」は特に書くことがないので省くとして……

 「ミニ劇場#7 ~母からの手紙~」について。
 自分は1~6巻は買っていないので「なるほど」と思ったのですが、ミニ劇場はアニメじゃないんですね。「ピクチャードラマ」と呼ばれるもので、静止画に音声を充てた「紙芝居のようなもの」でした。まぁ、労力を考えれば仕方がないことだとは思います。

 さて……この内容、正直驚きました。
 この「ミニ劇場#7」、最終回のラストシーンの後の話なんですよ。

 ラストバトルの後、平穏な日常に戻ったその更に後、あの衝撃のラストシーンの後―――普通に彼らが生活している様が描かれているんです。
 あのラストシーンを観た時、私は「これはもうこの後の話なんて描けないんだろうなー」と思っていました。例えば『けいおん!』のアニメは2期最終回より後の話というのは存在しません。その後の番外編や劇場版は“最終回よりも前の話”として描かれているのです。頑なに「最終回より後の話は描かない」と守っているのです。

 でも、『境界の彼方』はしれっと最終回より後の話を描いていたという。
 しかも!禄に告知もしないで、再生してみて初めて「あれ?これってラストシーンよりも後の話じゃないか!」と気付くレベルで!なんかしれっと2期とかやりそうですね、これじゃ!!


 話自体は相変わらず「『境界の彼方』のギャグパート」で……まぁ、正直「いつものカンジだな」ってところなんですが。ラストシーンよりも後の時間軸で、彼らが相変わらずのノリで賑やかに生活していることが感慨深くて。あのラストバトルも、その後のラストシーンも、この「いつものカンジ」を取り戻すための苦労だったことを思うと、ようやく報われたんだと目頭が熱くなりました。

 桜が出ていなかったことは不満ですが!


 ということで……第0話で感じた消化不良も、この「ミニ劇場#7」で少しだけ癒されました。
 『境界の彼方』に不満を抱いていた人が観て「好きになった!」と思えるものではないと思いますが、ブルーレイ最終巻は『境界の彼方』を好きだった人はちゃんと報われる内容になっていると思います。

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○ 余談:劇場版始動について
 公式でももう発表されているからイイですよね。
 『境界の彼方』劇場版が来年の春に公開されるそうです。

 『たまこラブストーリー』と同じようにゴールデンウィークですかねぇ。
 内容は今のところ全く発表されていませんが……正直ここまで来たらコレしかないだろうと思いますし、劇場版ですらコレをやらなかったらオマエラ本当いい加減にしろよと言いたくなります。


 名瀬美月の視点で描き直す『境界の彼方』―――

 私はそう予想します。
 『中二病でも恋がしたい!』の劇場版も「六花の視点で構成し直した総集編」+「新作映像」でしたし、『境界の彼方』の劇場版も「美月の視点で構成し直した総集編」+「新作映像」になるんじゃないかと思います。そうでなければ、どうしてテレビ版であんなにも「匂わせるシーン」を描いていたのだ!!と。


 というか……尺的にも、劇場版(90~120分くらい)が丁度良い長さだと思うんですね。
 第0話のように25分弱だと流石に全12話+αを追うことは出来ませんし、2期でこれをやると「え?1期と同じ内容をもう1回やるの?」って思われるでしょうし。テレビ版を観ていた人はテレビ版の謎が解けて、テレビ版を観ていなかった人はテレビ版のダイジェストが楽しめる――――そして、その劇場版から「2期決定!」「2期はこの後の話だよ!!」と繋がるとイイんですけどね。


 来年の春になった時、自分がどういう環境になっているのかは分かりませんが……その頃にはまた細かい伏線とか全部忘れているでしょうから、またまた1話から全部観直さないとならないんでしょうね。どうしてこんなに小出しにされるのか!ちくしょう!!

| アニメ雑記 | 17:16 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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栗山未来は「何」になったのか――アニメ『境界の彼方』ラストシーン考察

※ この記事はアニメ版『境界の彼方』最終話までの全12話のネタバレを含みます。
 閲覧にはご注意下さい。



 ラストシーンの考察なので、当然ラストシーンのネタバレも含みます。
 まだ『境界の彼方』のアニメを観ていない人、これから観る予定の人は読まない方が絶対に良い記事です。今月ようやくブルーレイ&DVD1巻が発売されますし、1月8日にはニコニコ生放送で全話一挙放送もあります(タイムシフト予約は出来ません)。全話を観てからこの記事を読まれることを推奨します。





 さて。最終話の放送直後に、このブログでは「初見では絶対にワケが分からないであろう『境界の彼方』の伏線をまとめました」という記事を書きました。「急いで書いて良かったなー」と思うことに、その後にあいばたんが素晴らしい考察記事を書かれているんです。


 境界の彼方/第12話(最終回)感想(少しラストシーンの解説含む)

 自分は伏線まとめの記事で「何故、栗山さんは最後この世界に戻ってこられたのか―――」に完璧な説明は出来ないと書いたのですが、ちゃんと作中にヒントは描かれていたのです。
 詳しくはあいばたんの記事を読んでもらいたいですが、作中で分かりやすく描かれているものとしては、“境界の彼方”は世界を具現化していたし“境界の彼方と融合した栗山さん”は秋人を具現化していた、ならばラストシーンで栗山さんを具現化させたのは“境界の彼方を再び取り込んだ秋人”に他ならないはずだ、と。


 他人様の記事を「すごいね!すごいね!」と言うだけだとウチを読みに来てくれている人に申し訳ないので、このあいばたんの考察を踏まえて自分なりにもうちょっと考えてみようと思います。
 伏線まとめの記事に私は「最終話を迎えてもまだなお説明が付かない“謎”が大量に残っている」と書きました。しかし、あのラストシーンを踏まえて、以下のような仮説を立てると、そうしたたくさんの“謎”に説明が付くと気付いたのです。もっと言うと、あのシーンはコレを説明するためのシーンだったんじゃないかと思うくらいです。





 それはつまり。

 栗山未来は「神原秋人と同じような存在」になったのではないか――――





 これは恐らく本編中に出てこなかった表現だと思うのですが、アニメ放送開始前に公開されたPVにはきっちりこう書かれています。



 存在しないはずの「半妖」の少年――――
 秋人のことをそう説明しているのです。


 そう。「半妖」というのは本来は存在しないんです。
 妖夢である愛ちゃんと、人間の男性が結婚したからと言って、「半妖」は生まれないんです。妖夢は「人の心の憎しみが形になって生まれる」と言われているので、妖夢には恐らく生殖機能はないんです。愛ちゃんは猫又の妖夢が、彩華さんは九尾の狐の妖夢が、普段は人間の姿に変化している―――ってカンジなんでしょうしね。


 秋人は本来「存在しないはずの存在」……それが何を意味しているかというと、
 この作品には、最初から「存在しないはずの存在」が存在していたということなんです。



「先輩の中に“境界の彼方”は戻ったんです。
ここはもうすぐ崩壊します。私も多分……消えます。
“境界の彼方”が先輩の中に戻った今、私は存在できないはずです。本当の私は…もうとっくにいませんから」



 最終話のラストシーン。「存在できないはずの栗山さん」があそこに存在していたのは、唐突でも不思議でも御都合展開でもなく、最初から明示されていたんです。「存在しないはずの神原秋人」の存在が、「存在できないはずの栗山未来」の復活を裏付けていたんです。





 そして、このアニメのラストシーンに描かれる「栗山未来の復活」は、これまでずっと“謎”だった部分の説明も担っていると考えられるのです。それが、「神原秋人の出生の秘密」――――――

 最終話のAパート、神原弥生のこんな台詞があります。


「博臣くん、美月ちゃん。
秋人と未来ちゃんは、ただの“妖夢”と“異界士”ではない。特別な存在なの。
……よろしく頼みます!続くぅ!!」


 「特別な存在」というのを、最初自分は“半妖”と“呪われた血の一族の生き残り”だと思っていました。そして「続く」で、何も説明せずにこの作品は幕を閉じてしまったのだと思っていました。
 でも、違います。順序立てて考えれば、分かるのです。この状況で“半妖”だとか“呪われた血の一族の生き残り”だとか、分かりきったことを言うはずがないのです。

 というのも……弥生は、“境界の彼方”が作り出した世界の中で栗山さんがどうなっているのかを正確に把握していました。
 “境界の彼方”が勝てば世界が滅ぶことも分かっていたのですから、栗山さんが勝てば栗山さんも消滅することは分かっていたはずなんです。なのに、最後に「よろしく頼みます!」とだけ博臣と美月に言って去っていくのです。

 つまり、弥生は「栗山さんが復活すること」を分かっていたんですね。



 何故か?
 それはきっと――――


弥生「“境界の彼方”には栗山未来が作り出した…彼女の強い想いが作り出した“秋人の傀儡”がいるわ。それを捕まえなさい……全力で。後は、その妖夢石が運んでくれるはずよ。」
秋人「なんで……そんなこと、知ってるんだよ……」
弥生「分かるでしょ……貴方の母親は、神原弥生よ。」
秋人「……いずれ僕のことも、きちんと話してもらうからな」



 彼女はきっと経験しているのです。
 「母親だから知っている」というのなら、きっとかつて生まれてきた「存在しないはずの存在」を経験しているから知っているのです。
 “父親”がそれを望んだのか、“母親”がそれを望んだのかは分からないけれど、「存在しないはずの神原秋人」は、最終話で栗山さんがそうして復活したように、“境界の彼方”の力によって具現化された子どもだったんじゃないかと推察されるのです。


 もちろんこれは仮説でしかありませんが。
 そう考えれば、「弥生の言動」も「秋人の出生の秘密」も「栗山さんが何故復活できたのか」も全て作品内で説明されていることになりますし、「栗山さんの復活」によって今までの“謎”がことごとく解明されるラストシーンだったと言えるんじゃないかと思うのです。





 そもそもの話、物語の帰結として―――
 恐らく栗山さんは“境界の彼方”を殺せば自分が消滅することは分かっていて、それでも秋人を「普通の人間」にしてあげるために自分の身は犠牲になっても“境界の彼方”を殺せばイイと思っていたんじゃないかと思います。
 でも、秋人はそれを許しませんでした。“嫉妬”も“絶望”も“哀しみ”も“後悔”も“我侭”も“猜疑心”も“憎悪”も“諦め”も“狡猾”も“保身”も受け入れて、「普通の人間」になんて戻らなくてイイ、人間の汚い部分も最強の妖夢としての恐ろしい部分もあってイイじゃないかと“境界の彼方”と生きていくことを選んだのです。

 その選択の結果として、栗山さんが戻ってこられた―――というのなら、これ以上ないほど美しいエンディングだったと思いますし。



 「人の心の憎しみが形になって妖夢が生まれる」というこの作品世界において、
 栗山さんと、恐らく秋人は、

「予めそう定められていたのか……
それとも、栗山さんが頑張ったおかげかは分からない。
それとも、僕の栗山さんへの想いが届いたのか――――」


 栗山さんと、恐らく秋人は、誰かの純粋な「存在して欲しい」という想いから生まれているんです。人間の心の闇が集まって出来た“境界の彼方”が、実はそんな純粋な想いを具現化してくれていた―――最終話のタイトル「灰色の世界」には、そんな意味が込められていたんじゃないかと思います。



 アニメではあまり描かれませんでしたけど、原作の秋人は「死にたくても死ねない」というキャラでした。栗山さんはアニメでも原作でも「死んでしまいたいとどこかで思っていた」というキャラでした。闇を抱え、後悔を抱え、普通の人間になれない絶望を抱え、自身の生を肯定出来ないキャラでした。

 そんな彼らに、闇も後悔も絶望も抱えたまま、「存在してイイんだ」と言ってあげられたこのラストシーンはこれ以上ないほど優しくて美しかったと思いますし。だから、私はこのアニメが大好きだったんだなと心の底から思いました。








 ……ということで、このまま「いやー、あのラストシーンは凄かったんだねぇ」と『境界の彼方』語りを締めくくっても良かったのですが。やはりこうなると無視出来ない問題が出てきますよね。

 あれ?美月、何もやってなくね……?

 伏線まとめの記事に書いた、「残されたたくさんの“謎”」――――
 「博臣の能力」については原作である程度の説明はされていました(この記事参照)。
 「弥生の言動」と、「秋人の出生の秘密」はこの記事に書いた内容で説明出来ます。
 「栗山さんが何故戻ってこられたのか」も言うまでもなく。
 「泉の正体」と「弥勒の目的」もある程度推察は出来ますし、そもそもこれは詳細に説明するのは野暮だとも思うのです。秋人達には分からない大人の事情もあるだろうよと。

 でも、「美月が何をしていたのか」だけはやっぱり説明が出来ないのです。
 「弥生と連絡を取っていたっぽい」のは確定としても、「栗山さんと何を話していたのか」は最後まで分かりませんでした。何かを話していたのは間違いないと思うのだけど、美月は結局何もしていない(ように見える)し……ここまで徹底して説明されないというのは、やはりブルーレイ7巻で明らかになるのか、2期をやるのか。



 『境界の彼方』の2期があるのかは分かりませんが……
 もし2期をやるのなら、博臣を主人公にしてくれた方が面白いんじゃないかと思います。

 今日の記事に書いたように、秋人と栗山さんに関してはもう完全に「やりきっちゃった」と思うんですね。二人が完全に生を肯定出来るようになって、二人ともお互いに「好き」と言っちゃっているし。この二人の物語はもうここで完結してしまっていて、あとはひたすらイチャイチャするしかないと思いますもの(笑)。

 でも、博臣はこれから過酷な現実と戦わなければならないし、秋人との関係もこのまま続けられるかは分からなくなるし、ヒロイン(妹)との関係がどう変わっていくのかも面白そうですし、ニノさんがフラグ立てていたし(笑)。まだまだ描き足りない博臣の話があるのですよ!



 ……ということで心の底から言おうじゃないですか。
 2期、希望!!と。




<『境界の彼方』関連記事>
考察:ヒンヌーコンプレックスに何故萌えてしまうのか
生きるためには食べなくてはならない!『境界の彼方』の食事シーンを読み解く
主人公がヒロインを好きすぎる作品、が好きです
初見では絶対にワケが分からないであろう『境界の彼方』の伏線をまとめました
『境界の彼方』アニメでキャラを好きになった人達へ、原作小説その他のススメ

| アニメ雑記 | 17:51 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

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『境界の彼方』アニメでキャラを好きになった人達へ、原作小説その他のススメ

 なるべくネタバレはしないで書こうと思います。
 自分は以前に書いたように「アニメ→原作」の順で観るのが好きなので、『境界の彼方』のアニメ全12話を観終わってようやく原作小説1巻を読みました。
 2~3巻はどうしようかと悩んだのですが、もしアニメ2期があった場合、ストーリーは全然違うものになるだろうけど会話劇なんかは踏襲されそうなので「まだ読まない」ことにしました。

(関連記事:アニメの後に原作を読むススメ


 『境界の彼方』のアニメは正直ストーリーは“難解”というか、1周観ただけでは意味不明なシーンも多いのであまり大きな声で「万人にオススメだよ!」とは言いづらいのですが。Twitterを見てると『境界の彼方』のアニメが好きな人達が、「とにかくキャラクターが好きだった」「もっと彼らの日常を見ていたかった」「2クールやって欲しかった」「2期やって欲しい」と言っているのをよく見かけます。

 私もすごくそう思います。『境界の彼方』の「すごいところ」を挙げると、構成とか演出とか作画のことをすごいと言うと思うのですが……実際に「何故好きか」を語ると「キャラクターが好きだったから」と言うと思いますもの。男のキャラも、女のキャラも、大人キャラも、みんな大好きでしたもの。


 ということで、アニメが終わってしまって寂しい想いをしている皆様に“延長戦”として、アニメ公式ガイドブックドラマCD原作小説の紹介記事を書きます。
 注意点を一つ。『たまこまーけっと』の小説版が出た時にも記事に書きましたが、京都アニメーションが発行している本は普通の本屋さんには置いていません。取扱店が限られていて、Amazonで買おうとすると「定価以上の値段+送料」と割増価格が提示されます。1500円の本を2800円とかで売ろうとする店もあるくらいです。

 ネットで注文する際には、JBOOKというサイトがオススメです。
 定価で買える上に3000円以上の商品を注文すると送料無料になるので、自分は「原作小説680円×3+アニメ公式ガイドブック1500円」をセットで注文して送料無料にしました。原作2~3巻はまだ読んでいませんが(笑)。



○ TVアニメ「境界の彼方」ガイドブック
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 取扱店は紹介ページに乗っていますが……少なっ!ここには載っていない店でも、アニメショップなんかでは普通に売っていたりもするらしいですね。

 「アニメ開始と同時に発売されたガイドブック」なので、基本的には「これからアニメを観る人」に向けて作られた本です。ストーリー解説は4話までで、終盤の展開などには触れられていませんが、微妙に中盤のネタバレとかも入っています。
 サイズはA5版=「4コマ漫画の単行本」なんかと同じですね。フルカラーなのでページ数の割には1500円となかなかの価格で、「お布施用のファンアイテム」と言っちゃってもイイと思うのですが。


 このアニメが出来るまでの話が詳細に書かれていて、むしろアニメを観終わったファンの方が唸らされるんじゃないかと思います。石立監督や、キャラクターデザインの門脇さんのインタビューはボリュームもあって、かなりの読み応えです。門脇さんは「京アニの天使」と呼ばれているそうですけど、なるほど確かにインタビューを読むだけで女子力の高さを感じます(笑)。
 決定前のキャラクターのラフ画なんかも掲載されているので、「三つ編みの桜」とか「ロングヘアーの泉」とか髪型が決まる前の各キャラクターの絵も見られます。桜の鎌は初期設定では「唯の形見」だったんですね(原作には登場しない)。

 背景設定なんかも主要なところは載っていて「栗山さんの家の間取り」や「新堂写真館の間取り」なんかは、なるほど言われてみればそうなっていたなと思わされるところも多いです。
 また、各キャラクターの表情設定や小物の設定なんかも充実していて、アニメ本編では出てこないそういう設定絵もガシガシ載っています。「愛ちゃんのムスッとした表情」とか「弥勒が眼鏡を外した姿」とかは多分本編には出ていませんし、2話で戦った妖夢と栗山さんが並んでいる絵(身長差を見せる設定絵なので)なんかは決して本編には出てこないほのぼのとした絵になっています。


 私くらい重症のファンになると「『境界の彼方』……『境界の彼方』分が足りない……!」とシュークリームを食べるがごとく、このガイドブックを開いて「花野寺駅の改札」の背景設定画を見てニンマリしているくらいです。文章化してみると、自分でもどうかと思うな(笑)。



 ということで、ファン以外には何が面白いか分からないであろう「お布施用のファンアイテム」なのですが、ファンにとってはお布施を支払うありがたみはある1冊だと思います。値は張りますが、そこそこオススメ。



○ TVアニメ「境界の彼方」ドラマCD『スラップスティック文芸部』
TVアニメ 境界の彼方 ドラマCD スラップスティック文芸部
 こちらは普通にAmazonでも買えます。

 私はこの国にあるあらゆる娯楽商品の中でも、トップクラスにコストパフォーマンスが悪い商品が「ドラマCD」だと思っています。この『境界の彼方』のドラマCDは全部で33分、価格は3000円で、描き下ろしの絵も商品情報から見られるジャケット絵だけですし、特典がたくさん付いてくるブルーレイ(もちろん絵が動く)に比べて何て気合の入っていない商品だろうって思うのです。


 ただまぁ、自分は『境界の彼方』にものすごく楽しませてもらったし、アニメが終わった今となっては「登場人物達がバカ話をしている」だけでも嬉しいし、お布施としての意味も込めて購入しました。結果を言うと、「お布施だったなー」というカンジでした(笑)。

 面白くないワケではないし、彼らが会話をしているだけでも嬉しいのですが……
 例えば博臣が栗山さんを呼ぶ時に「未来ちゃん」と呼ぶとか(原作では「未来ちゃん」だけどアニメでは一貫して「栗山さん」だった)、変にエロイ展開に行くとか、脚本担当が違うからかアニメとあまり繋がっていない印象を受けました。あと、序盤のような会話劇をもっとたっぷり聞かせて欲しかったかなーと。


 時間軸としては、アニメ版の8話前半辺り。
 文芸部の季刊誌「芝姫」でグラビアを撮ろうという話になって……というメインのストーリーと、幕間にはさまる「もしもシリーズ」という構成になっています。「もしもシリーズ」は結構面白かったので、もっと膨らませてくれれば良かったのに。「もしも美月がブラコンだったら」は、相当あざといなとは思いましたが(笑)。

 キャストはほぼ全員集合で(弥勒はいない)、彼らの声をまだまだ聴きたいファンに向けたアイテムというところ。価格が高いのでそれほどオススメはしませんが、お布施を納めたい人はどうぞー。





○ 原作小説『境界の彼方』1巻
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 取扱店は「KAエスマ文庫取扱店」一覧をどうぞ。4月の時より格段に増えていますね。

 テレビアニメ版とは絵柄が違うので、原作小説のホームページや過去のTVCMと見比べてみるのも一興です。しかし、原作でもTVCMでもそれほどロリではない栗山さんを、「赤ちゃんっぽい感じにしました」とロリ化させた門脇さんの手腕には敬意を表したい!




 さて……ネタバレしないように原作小説の紹介を書きますが。
 まず大事なことを書きますと、現在は3巻まで発売されている原作小説ですが「アニメの製作が始まった時点では原作が1巻までしか出ていなかった」とのことです。
 普通ライトノベルを1クールのアニメにする場合は3冊程度が目安らしいのですが、なので「1巻」を「12話」に引き伸ばすんじゃなくて、「1巻」をやるのは「最初の数話」にして「中盤から終盤」にかけてはアニメオリジナル展開にした―――と、アニメ公式ガイドブックには花田先生のインタビューが載っていたのですが。

 原作を読んでみてビックリですよ。
 原作をそのままアニメ化したのはせいぜい第1話のAパートまでで、第1話のBパート以降はほぼ完全オリジナル展開ですよ!一応、“虚ろな影”や“凪”は出てくるのですがアニメとは違う描かれ方でした。
 前に番組ラジオで「原作は既に読んでいるのでストーリー展開は知っているのですが、あのシーンを皆さんがどう演じられるのかが楽しみです!」というメールが読まれて、種田さんがビミョーなリアクションをしているなとは思っていました。原作のシーンなんてほとんどアニメ化されていませんもの!(笑)


 というか……「アニメ→原作」の順で観た自分は驚いたのですが、根本的な設定も随分と変えているんですね。アニメ化に際して何を軸にアニメで語るのかを考えて、とてつもないリファインを行っているというか。
 ちょっと「アニメ」と「原作」で設定が違うところを書いていきますね。もちろん1巻の段階なので、2巻以降はどうかは分からないのですが。


◇ 栗山さんは原作だと最初から「凄腕の戦士」
 アニメ版の「妖夢をほぼ倒したことがない」「貧乏」「お腹が空いている」という設定は、アニメオリジナルで追加された設定。原作ではアニメのように秋人や美月を拒絶しない。
◇ 原作には桜はいない
 桜ポジションのキャラはいます。ただし、栗山さんの「幼馴染の男」。
◇ 美月は原作だと事務方の非戦闘要員
 恐らくヤキイモもアニメオリジナルキャラ。
◇ 泉さんは原作だと「名瀬家の時期当主」と言われている
 そもそも名瀬家の人間がいっぱいいるみたいなんですね。
◇ 原作には「妖夢を倒すと妖夢石が生まれる」「それを換金する」設定はない
 なので、彩華さんは普通に異界士。
◇ 原作には愛ちゃんがいない
 そもそも原作だと基本的に「妖夢=討伐対象」なのです。
◇ ニノさんは原作だと高校教師ではない
 アニメの設定だと「文芸部の顧問」はニノさんらしいのだけど、第1話で美月が「ニノさんに」ではなく「顧問に」と言っていたのはこういう理由か。


 「アニメ→原作」の順で観ることの何が面白いかと言うと、アニメ化の際に変えた部分にこそアニメスタッフが描きたいものがあることが分かることなのです。ということで、アニメ版の設定変更でどうなったのかをちょっと書いていきます。


1.アニメ版は「栗山未来の成長物語」
 原作は秋人という主人公の視点で世界を見ていく小説なので、「秋人と○○」の関係性がどう変化していくのかという物語なのですが……アニメ化に際しては、全12話の中で栗山さんがどう成長していくのかを軸に構成されていることが分かるのです。

 アニメの栗山さんは最初、最弱のところから始まります。
 能力はあっても実戦経験が皆無で「妖夢にトドメを刺せない」という致命的な欠陥を抱えています。でも、お金もなくて、お腹が空いて、生きるために妖夢を倒さなくてはならない―――というところから物語はスタートするのです。
 また、アニメ版の栗山さんは秋人のことも美月のことも最初拒絶して、その関係性が徐々に変わっていく様を描くのですが……

 原作の栗山さんは最初から超強くて、ガシガシ敵をやっつけますし、お金にも困っていないし、比較的序盤から秋人とも美月とも仲良くやっているんですね。「栗山さんの成長」がないワケでもないのですが、アニメ版は徹底的にここを描くために栗山さんの設定を「最初は最弱」のところに持ってきているのです。

 面白いのが美月の使い方で……
 アニメだと栗山さんの「先輩異界士」として助言したり一緒に戦ったりしていたのですが、原作では非戦闘要員なのです。栗山さんの「異界士としての未熟さ」を見せるために、アニメ版の美月は「先輩異界士」として戦うように設定変更されているのは上手いなぁと思いました。


 あと、原作では栗山さんと「幼馴染の男」の関係を秋人が考える場面があるんですが、アニメではここを桜に変えている辺り、京アニは分かっているな!と思いました(笑)。



2.アニメ版は、より「現実と地続き」の話に
 これはガイドブックのインタビューを読むと分かるのですが、石立監督は「ファンタジー作品だからと言って現実から離れてはいけない」と考えているらしいのですね。桜の髪型設定でツインテールを提案された際に、「アニメっぽい」と却下するやり取りなんかは顕著です。

 原作では結構メタ的な描写とか、「ツンデレ」「貧乳」「つるぺた」「百合」みたいな用語が出てくるのですが……軒並みその辺はカットされています。それでも「巨乳」を残している辺りは、どうしてか訊きたいのですが(笑)。


 「現実と地続き」にするための設定変更で一番大きいのは、「妖夢石の鑑定」をアニメオリジナル要素として加えたところです。原作だと異界士は依頼されて妖夢を退治して報酬を得るのですが、アニメ版は誰に迷惑をかけていなくても妖夢を倒すとお金に換えられるシステムが出来上がっていて、私達にも「妖夢を狩って生きていくこと」のイメージがしやすくなっているんですね。
 栗山さんがいつもお金に困っていて、いつもお腹を空かせているというのも、妖夢退治が生活に根付いていることを見せる効果があったと思いますし。この辺の見せ方はアニメ版は上手いなと思いますね。

 1話のファミレスで店員が料理を持ってくるところとかもアニメオリジナルのシーンで、「異界士」でも「妖夢」でもない「普通の人間」がそこに生きていることを徹底して描いているのもアニメ版の特徴です。
 博臣はあまり描かれませんでしたが、他のキャラは「普通のクラスメイト」と一緒にいるシーンも描かれていましたものね。ニノさんなんか先生になっちゃっていたし。



3.設定の簡略化と、秋人の孤独の緩和化
 アニメでも名瀬家と異界士協会の衝突が描かれていましたが、原作では「○○家」「△△家」「××家」と異界士同士の権力争いが描かれていますし。名瀬家の中も「博臣のいる部署と美月のいる部署が違う」といった組織の大きさを感じさせる描写がありました。アニメだと名瀬家って4人しか出ていないんだけど、実は結構な大組織だったのね(笑)。

 アニメ版もガイドブックによると「名瀬家の両親は健在」と書かれていて「どこにいるんだよ!」と思わずツッコんでしまったのですが、原作だと普通に両親が名瀬家の最高権力者で、泉はあくまで「次期当主」なんですね。

 原作は小説なのでやっぱり複雑な設定とか、“謎”を秋人が推理して右往左往するところがあるのですが……同じことをアニメでやると難しく見えてしまうので、なるべく登場人物を絞って簡略化させてあるなと思いました。その割にはストーリーが……というのは言ってはいけない。



 「アニメ→原作」で追加された要素こそアニメで描きたいものだ説で言えば、桜と愛ちゃんはアニメオリジナルキャラなので(弥勒もかな?)……桜は栗山さんの成長を描くために絶対必須のキャラだったと思うのですが、愛ちゃんは何のためにいたのかなーと原作を読む前は思っていました。

 でも、愛ちゃんって「妖夢でも学校に通って平穏な日々を過ごせる」象徴なんですよね。言ってしまえば秋人以上に危うい存在なワケで、そんな彼女でも学校に通って普通に毎日を暮らせているというのは、「妖夢なのは秋人だけじゃない」「妖夢がみんな悪いワケではないんだ」と視聴者に見せる効果があったのだと思います。


 まぁ……逆に言うと、愛ちゃんのいない原作にある「徹底された秋人の孤独」はアニメ版だと薄れちゃっているところはあるんですけどね。原作の秋人は定住することが許されず、妖夢であることがバレると町を去るような暮らしを続けていて、名瀬家の監視下に入ることで初めて特別に定住が許されて、それも許されない両親は常に逃亡中な上、「妖夢からも敵だと思われている」という設定で。本が好きなのも「友だちがいなかったから一人で楽しめるものを選んだんだ」とか泣けることを言うし。
 原作は秋人の一人称の物語だからそこが一番大事なところなんですが……アニメではこの辺の設定を多少マイルドにして、多少牧歌的なところがあって、ストーリーのメインは「栗山未来の成長物語」で――――と考えると、愛ちゃんの存在というのは必須だったんだなと痛感しました。





 ということで、「原作小説はアニメとは別物」なのですが。
 逆に言うと、原作未読者には「アニメとは違うルートに進む物語」がまだ残っているとも言えて。アニメとは全く違うからこそ、新しいストーリーを楽しむことが出来るよと強くオススメしたいです。


 アニメ公式ガイドブックのスタッフインタビューを読むと「原作の魅力は何と言っても会話劇」ということで、実はこれだけストーリーも設定も変えているアニメなのに「会話」の部分は踏襲されているところも多いんですね。原作では全然違うシチュエーションでなされた会話が、アニメでは別のところで使われるとか。

 もちろん「会話」の量は、アニメと小説では小説の方が圧倒的に多くなるので。アニメには入りきらなかった「会話」シーンもものすごくたくさんあります。秋人の眼鏡愛も、博臣の妹愛も、美月のサディストっぷりも、アニメには収まりきらなかったんだなと思うくらい、原作では更に大ボリュームで語られています。

 あんまり書いちゃうとネタバレになるのですが……私が一番好きなのは、秋人が「眼鏡をかけている人に「眼鏡」というニックネームを付けるのはナンセンスで、本来なら「眼鏡の置き台」と呼ぶべきだ」と熱弁するシーンです(笑)。
 その他にも、博臣が栗山さんを「義妹」と呼ぶところや、博臣が秋人の脇に栗山さんの手を入れさせようとするところなど、アニメの秋人・博臣・美月が好きだった人は更なる彼らを楽しめると思います。栗山さんは設定もアニメと違うし、出番もそれほど多いワケでもないので、アニメで栗山さんのファンになった人は物足りないかも。


 ストーリーはアニメとは違う展開で、アニメにはなかったようなチーム戦もありますし、原作だとちゃんと「芝姫」の選考作業をしているし(笑)、アニメを観ていても新鮮に楽しめます。自分は半日で一気に読み終えてしまいました。
 この記事の冒頭で「アニメ2期があるかも知れないから2~3巻はまだ読まない」と書きましたが、実を言うと「もったいないからすぐには読まないようにしよう」というのもあります。


 桜や愛ちゃんはいないし、栗山さんファンにとっても微妙かも知れませんが、秋人・博臣・美月のファンには是非オススメです。
 というか、これ……原作って「美月ルート」じゃないのかなぁ。栗山さんよりもよっぽど存在感あるし。秋人も結構満更でもないカンジだし……原作だと「頑張らないと……卒業式の日に私から告白されるという夢が適わないわよ?」の後に「それとも誰かほかに親密になりたい女の子でも現れたのかしら?」と言っていて、より“どちらのルートに進むのか”を秋人に提示しているように見えるんですよねぇ。


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○ オマケ
 原作小説を読む前に書いたアニメ版の伏線まとめの記事には、「アニメ版だけではよく分からなかった描写」がたくさんあると書きました。しかし、特に「名瀬家の能力」については原作にしっかり書いてあるんですね。

 アニメ版も同じ設定なのかは分かりませんが、「原作を読んだら分かったアニメ版で“謎”だったところ」を一応書いておこうと思います。


◇ “檻”の能力
 原作1巻にはこう記述されています。

<以下、引用>
 この学校の敷地内は名瀬一族によって施された干渉結界で覆われている。普通の人間には無害だが妖夢や異能力者を認識すると即座に担当者へ知らされる仕組みが確立されていた。これによって僕は博臣と激闘を繰り広げることになったし、栗山さんはその存在を美月に捕捉されたのである。しかも警戒難易度を引き上げれば絶対不可侵の檻となる代物だ。
</ここまで>


 アニメではバトル描写での登場が主だったので、“警戒難易度を引き上げた”状態でのバリアー的な使い方が多かったのですが。元々の使い道としては、「対象範囲内に入った異能力者を認識する」能力なんですね。アニメではそこまでではなかったけど、原作では「町中に“檻”が張り巡らされているので、町中の異能力者の動きを名瀬家は把握している」と思われる描写もあります。

 1話での栗山さんの動きを博臣が知っていて9話で回想していたのも、4話では町中に“檻”や“結界”を張って“虚ろな影”を誘導しようとしていたために美月が博臣に「秋人の居場所」を訊いていたのも、9話では博臣には秋人の居場所が分からなかったのも、秋人の部屋に「誰か来たら分かるようにしておく」と博臣が何かを仕掛けたのも―――設定が分かってしまえば不思議なところはないですね。

 アニメでやっていた「ワープ」みたいな能力と、バレずに車の中の話を聞いていたのは、この能力では説明出来ないのですが……まぁ、原作でも秋人が名瀬家の能力を全て知っているワケではないでしょうしね。



◇ 3話で美月が部室の“檻”を解除させたのは?
 全く同じではないけど、原作にも同様のシーンがありました。

 アニメでは「人間と妖夢の戦い」がメインでしたが、原作では「人間同士」というか「異界士同士」の権力争いも大きく描かれているので……学校だからと言って、安心して情報を話せないんですね。
 原作では秋人は博臣に情報交換を求めて、他者に聞かれないために博臣は部室に秋人を呼び“檻”を張って盗み聞きを防いでいたのです。これが、“警戒難易度”を上げた状態なのかは分かりませんが、名瀬家の人間は“檻”を中和出来るので美月には侵入が出来たということですね。

 アニメのシーンを振り返ると、話している内容は原作とは違うのですが、一応これも「他者には聞かれてはいけない情報交換」だったんですよね。栗山さんの事情を博臣に訊こうとしている。しかし、話が脱線して眼鏡や妹について熱く語っているところに美月が来て“檻”を解除させる―――


 しかし、そうすると1話で美月が学食に秋人を呼びつけたのは何だったのだろう。
 原作にも同じようなシーンがある(話している内容は違う)ので、それをやりたかっただけなのか……
 アニメ公式ガイドブックによると、この高校には「本館」と「別館」があるそうで。教室や文芸部の部室や度々出てくる屋上は「本館」で、学食は「別館」とのことなので、博臣が“檻”を張ってあるのは「本館」だけだったということですかね。



◇ 美月は何故、“虚ろな影”対策に参加しなかったのか。
 アニメ版の3~4話で泉は町中の異界士を使って、“檻”や“結界”で“虚ろな影”を誘導させていました。しかし、美月は蚊帳の外で、一人部屋で塞ぎこんでいました。
 9話でも博臣に「美月は下がってろ」と言われていましたし、最終話では「いつも末っ子で留守番させられていた」と言っていました。美月は名瀬家の中では“非戦闘要員”扱いだったのです。


 アニメ版だと「妖夢を倒すと妖夢石が生まれてそれを換金してお金を稼ぐ」という設定があるため、名瀬家とは別のところで美月が勝手に戦っている姿が3話や6話で描かれていたので、全く気にしていなかったのですが……

 原作では異界士は「依頼された仕事をすることで報酬を得る」設定なので“組織に属していない”限りは戦闘すらさせてもらえないんですね。
 博臣は名瀬家の幹部クラスとして前線でバリバリ戦っているのだけど、美月は事務方の仕事しかさせてもらえていないんです。美月はほとんど実戦経験のない異界士なんです。そこに不満があるのです。


 原作でもアニメでも美月はコンプレックスを抱えたキャラなのですが、原作では「名瀬家なのに」戦うことが許されないコンプレックスで、アニメでは「名瀬家だから」普通のクラスメイトとは溶け込めないコンプレックスで。コンプレックスの出所が正反対だったんですね。


◇ どうして秋人は「巨乳好き」と言われたのか?
 アニメ版1話では美月に、3話では博臣に、秋人は「巨乳なら誰でもイイ節操のない人間」と言われます。アニメ版には特にそういう描写もないので「過去にそういうことがあった」という伏線なのかなと思っていたのですが、アニメ版ではそういう話にはなりませんでした。

 原作小説版を読むと、その辺が理解出来ました。
 原作の秋人は美月の巨乳に見惚れているんです。

 アニメの1話Aパートにも美月が“伸び”をして巨乳が強調されるシーンがあるのですが、原作だと秋人はその巨乳をマジマジと見つめ「視線がエロい」と怒られるのです。
 その後、アニメでも原作でも部室を出た秋人が栗山さんと一悶着あって、部室に戻って美月と「頑張らないと……卒業式の日に私から告白されるという夢が適わないわよ?」→「いつからそれが僕の夢になった」→「それは失礼したわ。秋人は巨乳なら誰でもいい節操のない変態だものね。私にこだわる必要は見当たらないというわけね。」という会話になるのです。あの“伸び”のシーンが伏線だったとは(笑)。


 美月に限らず、原作の秋人は秋人の一人称で進むだけあって、他の女性キャラにも結構ときめいているんですよね。彩華さんにもニノさんにも泉にも。博臣にも眼鏡をかけさせようとするシーンがあるし(笑)。
 アニメ化にあたってそういう「ハーレム構造」をやめて、「栗山さん一筋」に見えるように構成しているということを考えると―――前の記事に書いた「『境界の彼方』アニメ版は栗山さんルートだった」というのも、あながち間違ってはいないのかもなと。

 しかし、美月の罵倒だけは残したかったのか、唐突に秋人のことを「巨乳好き」呼ばわりするところだけ残って。原作では秋人のムッツリ助平っぷりを見せるシーンなのに、アニメだと美月のサディストっぷりを見せるシーンになっているというのは……やっぱりアニメ版の美月は可哀想だなぁと思いました(笑)。


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≫ EDIT

初見では絶対にワケが分からないであろう『境界の彼方』の伏線をまとめました

※ この記事はアニメ版『境界の彼方』最終話までの全12話のネタバレを含みます。
 閲覧にはご注意下さい。


 原作小説はこの記事を書き終えてから読み始めるので、今日はアニメ版の話です。
 アニメ公式ガイドブックは読んでいるので、その内容もチラホラ書くところがあります。


 自分がプッシュしていたアニメ『境界の彼方』が最終話を迎えました。
 正直言って、最終話を見終わった後は茫然自失となっていました。今まで張ってあった伏線や謎を消化しないどころか、最終話になってもなお新しい伏線や謎が生まれて、一見すると「え?なんでそうなるの……?」というラストでした。
 普通に話をまとめただけでも傑作になったアニメだったと思うんですけど、敢えて謎を残して、来年7月に発売されるブルーレイ7巻(新作未放送エピソード1話収録)で明らかになるあのね商法かよ花田先生、もしくは劇場版とか2期ありきの構成だったのかよ京アニ―――と、最終話を観た直後は正直思いました。

 私はこのアニメが大好きでしたから元々ブルーレイ7巻は買うつもりでした。
 ですが、冬アニメどころか春アニメも通り越して夏アニメのどれを観るのか選別するのに忙しい時期に「真相はこうだったんだよ!」と言われても、その頃には伏線なんて覚えていませんよ。






 ただ……時間を置いて、ちょっと冷静になってみると
 最初から『境界の彼方』はこういうアニメだった気もするのです。

 「分かりやすく真相を説明」なんてしてくれない。
 ところどころに“謎”とか“伏線”とか“違和感”を仕込み、そこから視聴者が真相を推察するしかないし――― 一応、推察すると「多分こう」という説明は出来るようになっている。(恐らく)半年後のブルーレイ7巻発売まで“正解”を与えてくれないのも、ある意味でこのアニメらしいっちゃらしいところです。


 「何故、栗山さんは最後この世界に戻ってこられたのか―――」

 秋人視点で考えると唐突な展開に「取ってつけたようなハッピーエンドだ」と呆れた人も多いんじゃないかと思いますし、「何故」の部分に完璧な説明は出来ないのですが……「栗山さんが戻ってくる」という伏線はちゃんと張ってあったんですね。



 このアニメは“謎”とか“伏線”とか“違和感”を恐ろしいほど詰め込んで構成されているので、初見ではワケが分からず「意味不明なシーンばっかだなぁ」と思ってしまうところも多いです。ですが、それらのシーンを繋げて考えてみると、実はこのキャラはこの時点で何を考えて何をしていたのかが見えてくるのです。


 「美月は、この12話の中で何をしていたのか―――」

 これを考えると、秋人の知らないところで何が起こっていたのかが見えてきます。
 いや、まぁ……「そうとでも考えないと自分の中に納得がいかない」というのは正直ありますし、それらを全部踏まえた上でも「テレビ版12話の中でそれを語るだけで傑作になれたのに」とは思うんですけど(笑)。「秋人は美月が何をしていたのかを最後まで知らなかった」結末を考えると、実はこの結末はとてもよく出来た結末だったんじゃないかと思えてきました。




 ということで、全12話の伏線をまとめてみました。
 「2周目」を観てもらえば「1周目」では気付かなかった色々な真相に気付けると思いますし、みなさんにも2周目を観て欲しいのですが。みんながみんな「アニメを2周観る」ことが出来るワケではありませんものね。時間の問題、金銭の問題、環境の問題、エトセトラエトセトラ……
 なので、2周目を観ることの出来ない人は「そんなシーンもあったなぁ、そう言えば!」と思って欲しいし、2周目を観られる人にも「そうそう、そのシーンがあのシーンの伏線になっているのよね」と“2周目のお供”になってくれればなと思います。

 くれぐれも「1周目」を観終わるまでは読まないように。
 この作品の魅力の大幅減になってしまうと思いますから。

 それと、「恐ろしいほど膨大な量がある」ので……「あのラストシーンは何だったの?」というところだけ知りたい人は、伏線まとめはすっ飛ばしてその後に書く「まとめ」の部分だけ読んでもらえればイイと思います。



 記事タイトルには「絶対にワケが分からないであろう」と書きましたけど、本当にそれレベルの伏線ばっかり列挙するとみなさんポカーーーンだと思いますので。三段階+2で表示します。

・「○」← 分かりやすい伏線
・「◇」← 「何だこのシーン……」という違和感だけを残す伏線
・「☆」← 伏線が張ってあることにすら気付かせない伏線

・「×」← 視聴者のミスリードを誘う場面
・「?」← 最終回まで観ても、結局よく分からない場面




【第1話:カーマイン】
<アバンタイトル>
◇ 学校の上空に張られている“檻”
・いきなりコレで申し訳ない(笑)。
・物語の幕開けで、上空から学校→町へと俯瞰視点でカメラが流れるのですが。
・この際に、鳥が学校に近づけないという描写があります。

→ この時点では、博臣の“檻”が学校を守っているということ。
※ また、“檻”は「断絶」を暗喩していて、この物語が「人間と妖夢の断絶」を描いているのだと見せているのかも知れません


○ 秋人が「自殺」しない根本的な理由
→ 不死身の半妖だから

・この「自殺しようとしていた栗山さん」というのはブラフなんだろうけど、ここで秋人が栗山さんの自殺を止めることが、ここからの物語が栗山さんが秋人のおかげで「生まれてきて良かった」と言えるようになる物語なんだと象徴しているシーンとも言える。
・ちなみに最終話のラストシーン、栗山さんは「フェンスの内側」に立っているんですよね。


○ 秋人を刺す前に手が震えている栗山さん
→ 唯を殺してしまった件で、妖夢を殺すことに躊躇いがあるから

・よくよく考えてみると、「自宅にとりついている妖夢」すら怖くて倒せない栗山さんが、ここでたまたま会った秋人を刺すというのは不自然なんですよね。栗山さんには「妖夢かどうか」が分かるとは言っても。
・泉の指示で、秋人を殺すように指示されていたから。
・ちなみにこの後に何度も栗山さんは秋人を刺すのだけど、どれも“目を見ないように”胴体を刺しています。


○ 秋人「この眼鏡を……かけてくれないか」
→ 最終話ラストシーンの台詞


<オープニング>
◇ オープニングの映像は「過去」の話
 10話を観た人なら分かると思いますが、『境界の彼方』のオープニングは「泉から連絡を受けた栗山さんが花野寺町に来るまで」を描いています。第1話が4月ですが、オープニングは恐らく3月。しかし、それは10話を観る前からある程度推察できるようになっていました。

・愛ちゃんだけ制服が違う(恐らくまだ中学生という時期)
・美月と博臣が登校しているシーンで、他の学生のネクタイとリボンを見ると「赤と緑の2学年しかいない」(3年生はもう学校に来ていない時期)
・栗山さんは制服を着ていなくて、他のキャラと一緒にいるシーンがない

 もちろん「だからどうした」という話ではあるんですが、重要なのは

→ この物語は、「第1話」よりも前から始まっていると最初に見せている


○ 栗山さんが持っている写真は?
→ 栗山さんと唯と桜の子ども時代
※ オープニングの最後の頃に、伊波家の前で写真撮影をしているカットもある


○ 桜と弥勒が一緒にいる
→ 桜はこの鎌を弥勒から預かっていた


○ そもそも歌詞が
→ 秋人と栗山さんの二人のこれからの物語を指し示しているように思える


<Aパート>
☆ このアニメで大切なのは“行動”と“意味”
 なんのこっちゃな人も多いと思うので、台詞を書き起こします。

秋人「何でもかんでも殺し方を残酷にすれば、読者の興味を引けるってワケじゃないだろ」
美月「じゃあ、どういう殺し方ならイイの?」
秋人「読者にとって大切なのは、“行動”と“意味”だと思うけどね」


 この二人が話しているのは、文芸部の傑作選に選ぶ“先輩達が過去に書いてきた小説”についてなんですが……これは実はこのアニメがどういうアニメなのかを最初に提示しているとも読み取れます。
 『境界の彼方』に限らず、深夜アニメには「ショッキングなこと」を起こして視聴者の興味を引きつける作品があります。『境界の彼方』だって「ヒロインが主人公を殺す」「ヒロインが消滅してしまう」というところだけを見ればそういう作品と言えるのですが……

→ この作品で重要なのはそうした「ショッキングなこと」ではなくて、「どうしてそういう行動が取られたのか」「そこにはどういう意味があるのか」の方が重要なんだと言っているんですね。

※ 作品の楽しみ方をAパートの最初のシーンで提示していて、これを踏まえて2周目を見ると「栗山さんの行動」や「美月の行動」にちゃんと意味があると分かるのです。


? 『赤ずきん脱いじゃいました』
→ シンボルを失うという暗喩で、最終話で栗山さんが眼鏡を失うという伏線?
※ 流石にこじつけだと思います(笑)
※ でも、最終話で栗山さんは眼鏡を失うし、道中で秋人は“不死身”の特性を失うし、「自分らしさ」を失うことの象徴とも言える……か?


× 秋人「(栗山さんは)誤魔化すの下手すぎ!」
・これは伏線と見るべきか、ミスリードと見るべきか……
・自分はこのシーンのおかげで随分と惑わされました。「栗山さんは平沢唯のように、嘘をつくのが苦手な裏表のないコなんだ」と。
・そしたら、まさかの「秋人を殺す使命」を与えられていたことをずっと隠していたという。
・ただ、10話を観てから2周目を観返してみると驚くんですけど、栗山さんって実はほとんど嘘をついていないんです。真実を隠す時は俯いて黙ったり、大きな声を出したり。

→ 栗山さんは「嘘をつかないコ」と視聴者をミスリードに誘うシーンのように思えるけど、実は栗山さんはこの後も嘘はほとんど付いていない。


? 美月「頑張らないと……卒業式の日に私から告白されるという夢が適わないわよ?」
→ 美月は「秋人は卒業式までに殺される」と知っていたということ?
※ 美月がどの段階で栗山さんの目的を知ったのかはテレビ版12話の中では描かれなかったので、保留。
※ ただ、泉が秋人を殺す計画を立てていることには勘付いていたとは思います。


? 美月「例え怒られても…課せられた使命から逃れることは出来ないから」
→ これも栗山さんのことを指しているようにも見えなくもない……か?


◇ 何故、栗山さんは秋人を殺すことにこだわったのか?
・栗山さんは俯いて答えません
・秋人は「恋!?」と妄想していたし、後に「僕を練習台に使っていたのか」と自己解決するのだけど
→ 本当は、泉からの指示で“秋人=境界の彼方”の抹殺のために栗山さんはこの町にやって来ていた。


<Bパート>
○ 栗山さんが妖夢を(ほとんど)倒したことがない理由
・「それに…」の後に黙るのは
→ 唯を殺してしまったことで妖夢を殺すことを恐れるようになった


☆ 美月の忠告が指し示しているものとは
 これも説明が大変なので、台詞を書き起こします。
 美月は第1話で2度も秋人に同じ忠告をします。何故か……?

【部室】
美月「まぁ…とにかく。栗山未来にこれ以上関わるのはよした方がイイわ」
秋人「……どうして?」
美月「この地区の異界士を管轄している…名瀬家の娘が助言しているの。それで分からなければ……アナタはバカよ」


【学食】
美月「名瀬家が栗山未来を警戒しているわ」
秋人「どうして?」
美月「代々その地を治める長というのは、排他的で保守的なものよ」
秋人「つまり……どういうことだよ?」
美月「これ以上…栗山未来に関わるのはやめなさい
 って私が言ったら関わるつもりなんでしょ?」



 比べてみれば分かるのですが、部室では「名瀬家の娘」として、学食では「名瀬家を注視している者」として忠告をしているのです。美月が何を意図して忠告したのかはテレビ版の全12話では描かれなかったのですが、これが指し示しているのは恐らく二つ。

→ 美月は名瀬家の人間でありながら、名瀬家とは別の意志で動いていること。
→ 「部室」は美月にとって、隠し事を喋られない場所であること(博臣に聞かれることを警戒している?)



◇ 栗山さんがこの町に来た目的
 すんごい遠めの絵なので分かりづらいけど、「特には…」と栗山さんが嘘をつく際には俯いています。

栗山「もし目的があったとして、ここで先輩に言うと思いますか?」
秋人「それは……つまり、“ある”ってこと?」
栗山「誘導尋問には引っかかりません」


 ここでは話が「栗山さん宅にいる妖夢」に行ってしまうし、この後に栗山さんは“虚ろな影”討伐のため単独行動に出るので「栗山さんは“虚ろな影”を倒すためにこの町に来たんだ」と視聴者も秋人も思ったことでしょうが…

→ 栗山さんは泉に「秋人=境界の彼方の抹殺」を依頼されてこの町に来た


○ 秋人「それは僕も同じだよ」
→ 触れただけで死をもたらす血を持つ栗山さんと、世界を破滅させる“境界の彼方”を自分の中に持っている秋人―――実はこの二人は似たような境遇の二人だった

・この時点で視聴者は秋人の力の凄さは知らないのだけど、栗山さんは泉に聞いて知っている。
・なので、栗山さんは秋人に心惹かれていき、以後栗山さんは秋人を殺せなくなる。


? 公園では夕方だったのに、栗山さんの家に着いたのは夜
・2話で明らかになるように、栗山さんの家はこの公園のすぐそばにある
・なのに、移動で夜までかかっているのは何故だ??謎。

→ 「夜にならないと出ない妖夢だから、夜まで待機していた」ってとこですかね。


? 博臣が泉に何かを報告して泉が微笑んでいる
・美月も何かを察してクッションを抱いている
・2話でも話題になるのだけど、1話アバンで学校の周りに張ってあった“檻”がAパートでは張っていなくて、おかげで秋人と栗山さんは学校で妖夢に襲われるのだけど……それは泉の指示だったということ?
・9話の回想シーンを見る限り、博臣は秋人が栗山さんに襲われている様を知っていたみたいなので、その報告かも知れない。博臣と美月には秋人の“監視”が命じられていたのだし。

→ 栗山さんと秋人の戦闘や、その後の妖夢登場などの学校での出来事を報告していた?

※ ただ、それって作中では「一日前」の出来事なんですよね……
※ 単なる思わせぶりなシーンという気もする


<エンディング>
 直接的な伏線はないんですけど、「たくさんの色」と「たくさんの花」と「たくさんの人」が出てくるエンディングの映像。「色」と「花」はこのアニメ全体でキーアイテムになっているとも言えて、「色」は各話のタイトルになっているだけでなく、キャラクター一人一人にイメージカラーが設定されています。

 エンディングの最初と最後、コマ送りにすると「誰かの手」と「花」のカットが細かく切り替わっていることが分かると思います。それぞれの花の色はキャラクターのイメージカラーに準じているっぽい。

【最初】
 ピンク→栗山さん→白→愛ちゃん→ピンク(紫?)→美月→青→博臣→白→栗山さん

【最後】
 オレンジ→秋人→ピンク→ニノさん→白→彩華さん→オレンジ→栗山さん


 博臣のイメージカラーは緑だけど、緑色の花だと画面に問題があると思われたのか青に。栗山さんのイメージカラーはピンク&白、美月は藤色、秋人はオレンジや黄色とアニメ公式ガイドブックに書いてあるのでそれに沿っていることが分かりますね。

→ オープニングが「まだこの町に来る前の栗山さん」を描いているのに対して、エンディングが「この町に来て色々なものを手に入れた栗山さん」を暗示しているのが面白いところ。



【第2話:群青】
<アバンタイトル>
○ 誰かを傷つけてしまった秋人の回想
→ 妖夢化した際に誰かを傷つけてしまったというイメージ

・何故このタイミングでこんなことを考えているのかは不明(笑)


<Aパート>
◇ 指輪を外す前に、秋人には当たらない距離だと確認する栗山さん
・呪われた血の力を解放すると「血に触れただけで相手を殺す」恐ろしい威力を発揮するので、それが秋人に当たらないように考慮した―――というのが普通の見方なんだけど。
・栗山さんの目的は「秋人を殺すこと」なんだから、本来は当たっても構わないはず

→ この時点で、栗山さんは「秋人を殺せない」ようになってしまっている


○ 妖夢を殺すことに躊躇している栗山さんの回想
→ かつて栗山さんが殺してしまった唯のことを思い出している

※ 前髪長い人は別人なのかと思っていたのだけど、あれはカチューシャを外すと前髪があれだけ長いって同一人物だったんですね


? 1話の時にはなかった栗山さんの家の前の園芸セット
・栗山さんの趣味が園芸だという伏線なのだろうけど……
・妖夢を倒してから数日経っているという伏線なのかなと思ってTwitterに書いたこともあるのですが、前後にちゃんと「明日」とか「昨日」とかの言葉があるのでそれは気のせいっぽい。
→ 栗山さんが貧血から起きてから買いに行ったのか、業者に届けてもらったのか


◇ 頑なに秋人のことを拒絶する栗山さん
・リアルタイムに観ていた時は「このコは平沢唯に似て可愛いけど、強情で面倒くさいコだなー」と思っていましたが……振り返ってみると、栗山さんは秋人を殺さなくてはならないので拒絶するのも当然でした。
・1話のラストで「自分と同じように孤独」と思って惹かれ始めた秋人に、「他にも女がいるんかい」「自分とは違って仲間がいる」ことを知って距離を取り始めるのも面白いところ。
・8話や10話を観れば分かるように、栗山さんって結構嫉妬心が強いんですよね(笑)

→ 「いずれ秋人を殺さなくてはならない」ので、距離を取ろうとしている


<Bパート>
? 博臣が“檻”を張り忘れたせいで掃除屋を呼ぶ羽目になった
・1話のAパートラストで妖夢に襲われた(ニノさんが退治した)件だと思われます。
・わざわざコレを言うということは、「敢えて」博臣は“檻”を張らなかったということなのかなと思うのですが……テレビ版12話の中では真相は明かされませんでした。
・ただ、9話を見る限り博臣は栗山さんと秋人の戦闘は見ていたようなので……「敢えて」説が有力じゃないかと思うのですが。

→ 不明。この件に限らず、博臣は視聴者に「コイツは何か裏があるな」と思わせるミスリードの役を担わされていたように思います。


○ 妖夢が攻撃的になっている理由
→ “虚ろな影”の接近で、本来攻撃的でない妖夢も攻撃的になっていた。

・細かいことなんだけど、博臣が「美月に頼まれたのか?」と訊いているということは……美月は“虚ろな影”の接近を教えてもらえていなかったということですよね。同じ名瀬家でも博臣と美月では立場が違うことを見せている。


○ 博臣と秋人の“休戦協定”
→ 博臣は秋人の中にいる妖夢(博臣は知らないが“境界の彼方”)に殺されかけているのだが、「秋人が余計なことに首をつっこんで妖夢化しない」限りは始末しないという“休戦協定”を結んでいる

・実際に戦ったら100%“境界の彼方”が勝つのだろうけど、博臣はこの時点では“境界の彼方”とは知らないし、4話で戦った際に「俺が消す!」→「こないだより成長している!」と博臣があっさり負けているので――――ある程度は本気なんだろうけど。
・アニメ公式ガイドブックによると、博臣は人間の状態の秋人と触れ合うことで「自分の使命」に疑問を抱き始めているそうなので……本心としては「戦わないに越したことはない」と思っているんじゃないかと思います。


◇ 栗山さんが美月に秋人との関係を訊くシーン
・この時、美月は「“観察”……かしら」と答えます。
・後々になって分かることだけど、栗山さんは秋人を“危険な妖夢”として認識していて、泉から「(秋人のことを)監視している」と聞いている。
・つまり、この美月の返答に驚いている栗山さんは「美月は名瀬家の人間として“監視”するためでなく、一人の人間として“観察”するために秋人の横にいる」ことに驚いているんじゃないかと推察されます。
・この時点で美月が栗山さんの立場を知っていたかどうかは不明なんですが……

→ 栗山さんが、美月は「名瀬家サイド」ではなく「秋人サイド」の人間だと察した


○ “虚ろな影”という言葉に反応する栗山さん
・に反応する美月
・この時の反応が気になって、美月はこの後に栗山さんの過去を調べることになる

→ 栗山さんと唯がかつて討伐に失敗して、栗山さんが唯を殺すことになってしまった原因の妖夢

※ 今になると分かるけど、栗山さんは“虚ろな影”が来ることを知らなかったみたいなんですね。だから「“虚ろな影”を倒すためにこの町に来た」ワケではなかったと。


◇ 栗山「私は……以前、この手で人を殺したんです」
・と言って、秋人のように「みんなと仲良く生きる」ことが許されないと言うシーン。
・もちろんこれは唯のことなんですけど……
・栗山さんはこの後に「秋人を殺さなければならない」のだから、秋人のように「みんなと仲良く生きる」ワケにはいかないと他者を拒絶するのも仕方ないですよね。
・リアルタイムで見ていた時は「面倒くさいコだなー」と思ったけど。

→ 唯を既に「殺してしまった」こともそうだけど、秋人をこの後に「殺さなくてはならない」ことを指していたのだと思います。


【第3話:ムーンライトパープル】
<Aパート>
○ 人がいる限り生まれ続ける妖夢と、それを倒し続ける異界士とは
・弥勒の目的は最後までよく分からなかったのだけど……
・最終話で明らかになる弥勒が自分の体内に妖夢を飼っているという話から考えるに、

→ 弥勒は「妖夢を倒す異界士」自体に反逆心があったのかもなぁとここの台詞から考えられます。


☆ 泉「(妖夢とは)決まっているじゃないですか。ただのバケモノですよ」
・弥勒に「貴女にとって妖夢とは何ですか?」と訊かれた泉の回答。
・このカットの直後に、場面転換のカットを挟まずに秋人の顔のカットに移るのです。
・ということで、泉が秋人を「ただのバケモノ」と認識しているという伏線でもありますし……
・8話でニノさんが泉のことを「バケモノよ」と言っていたシーンを思うに、これは泉が泉自身に対して抱いている感情だったとも言えるのです。

→ 泉が秋人のことを「ただのバケモノ」と認識していただけでなく、泉は泉自身のことも「ただのバケモノ」と認識していた。


× 博臣「アレが栗山未来か」
・これは流石にミスリードを誘った場面だと思うんですけどね。
・秋人の前で(後ろで)、栗山さんを初めて見たと博臣が言っているのだけれど……9話で博臣が回想した場面を見ると、博臣は(1話の)栗山さんと秋人の戦闘を知っていたし、泉と栗山さんが以前から知り合いだったことも知っていました。
・それを秋人には隠していたということだと思うんですけど、おかげで視聴者もまんまと騙されました。

→ 博臣が栗山さんを初めて見るシーンなのだけど、多分これは“嘘”だと思います



× 博臣「(栗山未来に)騙されているんじゃないのか?」
・これは見事なミスリードですよ。
・視聴者からすると、この時点では「栗山さん=厄介だけど嘘はつかないコ」「博臣=真相を知っているけど話してはくれない信用できない人物」くらいの認識なので―――博臣がそう言うということは、栗山さんが秋人を騙しているなんてことはないはずだと思ってしまう。
・実際には栗山さんには秋人も博臣も騙されていたし、博臣は全く真相を知りませんでした。

→ 視聴者に「栗山さんは信用できる」と思わせる見事なミスリード


? 美月「変態お兄ちゃん、“檻”をとっとと解除して欲しいのだけど」
・これはアニメ版12話を見ただけではよく分からないシーン。
・部室を“檻”で囲んでいたら誰も入ってこられないだろうし、それを美月が解除させる意味もよく分かりません。
・9話で博臣は秋人の部屋に「誰か来たら分かるようにはしておく」と言っているので、博臣の能力には「索敵」の能力もあってそれが部室にもかかっていたということですかね。
・そう考えると、1話で美月が秋人をわざわざ学食に呼び出した理由が説明できます。秘密の話をするのに、部室ではなく学食でというのには何か理由があっただろうし。

→ このシーンまで、部室には“檻”が張ってあって博臣の監視下にあったということかな?


○ 美月が秋人に「栗山未来の過去」を教えるのに、どうして秘密の場所を使ったのか
・あの話をすれば、秋人が栗山さんを助けるために“虚ろな影”に近づくことは想像できたはず。
・妖夢化の危険性を考えれば、「秋人が妖夢化したら殺さなくてはならない」博臣からすればその情報は教えたくなかったろうし(博臣は知らなかったみたいですが)、部室を避けたのも分かる。
・ただ、泉にとっては「秋人が妖夢化したら栗山さんが“境界の彼方”を殺せる」ので、望んでいた形だとも思います。流石に美月はそれを知らなかったでしょうが。

→ 秋人の妖夢化の危険性を考えれば、博臣に反対されるから。


○ 美月が情報をもらった「イチノミヤイオリ」
→ 美月は、名瀬家とは違うネットワークの情報網を持っているということ。


<Bパート>
☆ 栗山さんは何故博臣の名前を知っていたのか?
 “虚ろな影”討伐に向かう栗山さんを秋人が止めるシーンなのですが、栗山さんが口走った台詞が「あれ……?」と思える台詞なのです。自分は以前そのことを記事で「ミスですよねぇ」と書いていたのですが……全文を書き起こしますね。

栗山「先輩に何が分かるんです!
先輩は半妖だと言いました!私と同じ……特別な存在だと!
でも、違います!先輩には仲間がいます……博臣先輩、美月先輩、それどころか妖夢の彩華さんや愛ちゃんまで。」
秋人「それは……違う!」
栗山「何が違うんですか!!」


 1話のラストで「僕も同じだよ」と言ってもらえて、初めて自分だけが一人ではないと思えた栗山さんが、やっぱり秋人は違うんだと突っぱねるシーン……1話とも2話とも4話とも繋がっている見事なシーンなのですが。

あれ、どうして栗山さんは博臣の名前知っているの……と当時は混乱しました。
・栗山さんが秋人から博臣を紹介されるのは5話の冒頭だから、3話の時点では博臣を知らないはずなのに―――と、9話までは思っていました。あぁ、これはミスだ、と。
・そしたらどっこい、栗山さんは秋人と出会う前から博臣の名前を泉から聞いていたのです。「仲間」と言ったということは、泉から「秋人と仲良くし過ぎた」くらいのことも聞いていたのかも知れません。こんな伏線の張り方、聞いたことがないですよ!!(笑)

→ 栗山さんは秋人と出会う前から博臣の名前を知っていたという伏線。こんなの分かるか!!


○ 博臣の背中の傷
→ 過去に妖夢化した秋人に付けられた傷だと思われる。

・9話で「栗山さんに秋人を殺させるのか」と問い詰めようとした美月が、博臣の傷を見て一瞬言葉に詰まるシーンがあるので。


【第4話:橙】
<アバンタイトル>
☆ 栗山「なんで来たんですか!もし目覚めたら……」
・ミスだと思っていたら伏線だったシリーズ第2弾。
・この時点での栗山さんは、秋人の本当の力を知らないはず。だからずっとここはミスだと思っていて、「何やってんだよ。しっかりしてくれよ花田先生」とか言っていました。ゴメンなさい。

→ 栗山さんは最初から秋人が目覚めると“境界の彼方”になってしまうことを知っていた。


? 秋人はどうやって栗山さん達のところまで来られたのか
・これはアニメ版12話の中では説明されませんでした。
・秋人は「栗山さんの姿が見えたから飛び込んできただけ」と言っていたけど、“位置”が分からないだけでなくて、「オマエ、さっきまで家でオムライス作ってたじゃねえか!」というのも分からない。栗山さんと別れてから家に帰ってオムライスを作っている時間を考えると、追いつけるワケがないのです(栗山さんはトラックに乗って移動していたし)
・答えの前に間があるところから見ても、秋人も何かを隠しているみたいだし。

→ 不明。秋人には「いつでも眼鏡美少女のところにワープ出来る能力」でもあるのだろうか。

※ 11話でも栗山さんのところに一直線に飛んでいったし、あながちないワケでもない(笑)


<Aパート>
? 美月が秋人の居場所を博臣に訊いている
・これもよく分からなかったシーン。
・初見では「博臣の能力には“特定人物”の居場所を探知できるレーダー的な能力があるのかな」と思ったのだけど、9話を見る限り博臣は常に秋人の居場所を把握出来ているワケではないみたいだし。
・この場合のみ、町中の異界士が“結界”や“檻”を使っていたことで秋人の居場所を探知できたということなのかな。

→ 不明。博臣の能力の応用性がよく分からないので。


◇ 言い争いの途中で言葉に詰まる栗山さん
 このシーン、すっごく好きなシーンなので書き起こします。

秋人「こんな行き当たりばったりで、“虚ろな影”を倒すつもりだったのかよ!」
栗山「予定が狂ったんです!勝手に来ておいて文句ですか!?」
秋人「勝手に来た!?だったら僕に余計なこと言わないで一人で行けば良かっただろ!」
栗山「勝手に調べて、私の家の前で待ち伏せしていたのは先輩ですよね!」
秋人「そう仕向けたのは誰だよ!そもそも最初に僕に絡んできたのは栗山さんの方だ!」
栗山「それは……!」(言葉に詰まって俯く)


・これ、初見では秋人の方が正論を言っているように思えたのですが、
・10話を見た後だと、栗山さんだって好きで秋人に絡んだワケではないし、自分が殺すために秋人に近づいたことの負い目もあるし、ここで哀しい顔をして目を伏せて黙ってしまう栗山さんの気持ちも分かるようになっている。
・2周目を観た時に「あーーー」と思えるナイス場面。
・しかし、秋人。「そう仕向けた」のは栗山さんじゃなくて美月だと思うぞ。

→ 栗山さんにも事情があったのだ。


○ 異界士の力のない桜がどうして力を持ったのか
→ 弥勒が与えた鎌の力によって

・とは言え、子どもの頃は“虚ろな影”の空も見ることができなかった桜なので、本来なら妖夢の姿も見えないはずなんだけど……あの鎌の力によって見えるのか、子どもの頃から成長して妖夢くらいは見えるようになったのか。
・鎌を失った後の11話でも妖夢が見えていたみたいなので後者かな。


<Bパート>
○ 聴こえなかった栗山さんの台詞とは
→ 「さよなら」

・栗山さんは血の力を使うと秋人は死ぬと思っていたので、泣きながら「さよなら」と言った
・血の力を使って“虚ろな影”を秋人の体から追い出すというのは、終盤で血の力を使って“境界の彼方”を秋人の体から追い出す展開を御都合展開と見せないための前フリとも言えます。


◇ 泉の表情の意味とは?
・妖夢化した秋人が暴れている時に微笑んでいて、
・秋人が人間に戻った後に険しい顔をしている

→ 妖夢化した秋人=“境界の彼方”を殺すチャンスだったのに、栗山さんが秋人を殺せなかったから


◇ “鏡面世界”を見る美月と博臣
・秋人が妖夢化した際に現れた鏡面世界を二人が確認する
・美月はこの後「秋人を助けることは出来ない」と塞ぎこみ。
・博臣は9話で秋人=“境界の彼方”だと気付くきっかけになる。

→ 美月にとっても博臣にとっても、今後の行動に関わる大きな出来事だった


◇ 200円の妖夢石の正体
・これだけ細かく伏線をチェックしている自分も、まさかこれがキーアイテムになるとは思いませんでした。
・これは栗山さんが「さよなら」と言って秋人に血の力を使った際に現れた“境界の彼方”の欠片。これが後に秋人の体に戻り、栗山さんを助けることとなる。
・部室にずっと置いてあるから「何だろう」とは思っていたのですが。

→ 秋人の体から出た“境界の彼方”の欠片。

※ 200円なのか……


<Cパート>
○ “虚ろな影”の妖夢石を回収した泉の目的とは
・「これでしばらくは異界士協会の動きを止められます」とのこと。
・9話で弥勒がこれを奪還しに来た隙に、栗山さんが“境界の彼方”を倒そうとするので……“囮”として使えると判断したのだと思っていたのですが。
・これが弥勒の手に渡ったことで泉の計画が崩れるのだから、泉は「桜が持っていた鎌」の存在を知らなかったのか?

→ 若干謎なところも多いけれど、弥勒の足止めに使ったということかな。


【第5話:萌黄の灯】
<Aパート>
× 秋人「栗山さんって博臣達の家に来るの、初めてだったよね?」
・秋人は知らないが、当然初めてではない。
・泉の手引きで名瀬家の祖父にも会ったことがある。
・なので、この時の栗山さんの返答は「はい」でも「いいえ」でもなく、「あぅ」みたいなどっちつかずの返答だという(笑)

→ 視聴者に「栗山さんは怪しくない」とミスリードさせる描写


? 弥勒をにらむ秋人
・意味深なシーンだったけど何だったのだろう、これ。
・弥勒の方は秋人を“境界の彼方”だと知っているので(多分)、一瞥したのも分かるのだけど。秋人の方は弥勒に何を感じたのかはよく分かりません。

→ 単に弥勒の敵意を感じただけ?

※ にしても、秋人は男の眼鏡姿には興味ないのね。


◇ 泉が栗山さんにした「今後の話」とは
→ 秋人=“境界の彼方”を殺すチャンスを逃したことについて咎められる

・泉と栗山さんのラインに視聴者が初めて気付く場面。
・ただ、これまでに張ってあったミスリードを誘うシーンによって、この二人が以前からの知り合いであるとは考えにくい状況を作っているのが上手い。
・博臣と美月の表情も意味深だけど、この時点で二人がどれまで知っていたのかは分からないので保留。
・しかし、この後に慰めようとしている秋人がてんど的外れなことを言っているのが、2周目を観ると分かってしまう(笑)


☆ 栗山さんと美月の間に流れる気まずい雰囲気
 部室と喫茶店で二度、この二人は微妙な間で黙るシーンがあります。

栗山「あの……他には?」
美月「…?…これで終わりだけど?」
栗山「っ…・・・そ、そうですか」
美月「……」
栗山「……」


・10話を観た後に観ると、栗山さんはここで美月に「助け」を求めているように見えます。
・栗山さんは美月を「秋人の仲間だ」と認識している(2話の「“観察”かしら」)ので、秋人を殺さずに助ける方法はないのかを美月に相談したいのだと思われます。
・しかし、美月はそれを受け止めない(笑)。
・「前に言ったでしょう?私は秋人を“監視”しているんだって」の台詞は、美月のミスなのか、実は描かれていないだけでそういうシーンがあったのか。
・2話の時点では「観察」だったのが、4話を経て「秋人を助けることは出来ない」と思って、5話で「監視」と言葉を変えたと考えると……前者かなぁ。

→ 栗山さんは「秋人を助ける」ために美月に助けを求めているのだけど、美月は「秋人を助けることは出来ない」と歩み寄ろうとしない。流石、作品一のコミュ障。


○ 一人黙々と妖夢退治を続ける桜
→ 妖夢を喰わせることで鎌の力を強化させるため

※ その鎌の力は弥勒に利用されてしまうのだけど


<Bパート>
? 泉「異界士は異界士である限り、ずっと一人なの」
・美月を縛り続けた呪いのような台詞だけど……
・名瀬家を背負い、望まぬ形でつまらない大人になり、体内に妖夢を飼っている―――という最終話の泉の台詞から考えるに。
・泉は美月を「自分のようにはさせたくない」と思っていたのかも。
・そもそも「何故美月は祭りに行けなかったのか」が説明されていないしな…

→ この辺はよく分からないし、詳細に説明されても野暮という気もする。


☆ 写真館をクローズにした後、美月が栗山さんに何かを言う
・よーーく観ると分かると思うのですが、美月の口が動いていて何かを言っています。
・その直前に美月が回想していたシーンは

美月「躊躇いがなくなったわね」
栗山「いつまでも迷っていたら……何も変わりませんから」


・妖夢憑きを倒した時の二人の会話
・これを回想した後に何かを栗山さんに喋るということは、美月は「状況を変えるために迷うのを辞める」と決意した証。恐らくはこれ以降の美月は「秋人を助ける」ために行動を始め、栗山さんと美月は同盟関係になるワケです。
・なので、これ以降の二人はやたらイチャイチャしているという(笑)

→ 恐らく「秋人を助けるため」、美月は栗山さんと同盟関係になって動き始める


☆ 祭りでバッタリ会った秋人との会話
 これも全文書き起こしておきます。

栗山「先輩?」
秋人「栗山さん、美月……どうして?」
美月「『どうして』?便所飯でお馴染みの秋人を慰めるために決まってるでしょ?」
秋人「だから!何度も言うが、僕は誰の世話にも…」
栗山「先輩。みんな……一人だから、です。みんな……一人だから」


・これ、初見では唐突な会話に思えました。話が噛み合っていない、と。
・でも、栗山さんと美月がこの直前に同盟関係を結んでいるということを考えると、「誰の世話にもならない」という秋人の台詞を遮る栗山さんの意志表明なことが分かるのです。

→ 秋人を助けるため、栗山さんと美月は行動を始めるという表明。


<Cパート>
○ 祭りで泉とバッタリ会って、一歩引く栗山さん
→ 「秋人=“境界の彼方”の抹殺」から手を引こうと栗山さんは泉に伝える

※ なので、後ずさる動きをしているんですよね。



【第6話:ショッキングピンク】
・この回は本編の流れから外れたサブエピソードなので伏線らしい伏線はありません。
・逆に考えると、この回がリアルタイムではとても評判が良かったのって「この1話で説明されない意味不明なシーン」がなかったからかも知れませんね。
・ただ、この「最初に結末を見せて、どうしてこういう結末になったのかを後に描く」という構成は、この『境界の彼方』というアニメを端的に表しているとも思えますね。

・こうして全話の流れを見ると、「平和な日常」を描いているのはこの回だけという(笑)。


【第7話:曇色】
<Aパート>
? 『全裸リーマン』シリーズ
→ 『赤ずきん脱いじゃいました』と同じようにシンボルを失うという暗喩で、最終話で栗山さんが眼鏡を失うという伏線?

※ 「こじつけ」にしか思えないけど(笑)


○ 美月が打っているメールの内容
・これも詳細はテレビ版12話の中では明かされなかったのですが……
・文面は「鏡面世界の発生 今回のことについて、私の」と読めます。
・4話で秋人が妖夢化した際の現象について、5話での栗山さんとの同盟関係を経て、“誰か”に連絡を取っているのが分かります。これは「状況を変えるために迷うのを辞める」美月の行動ですね。
・相手は、異界士協会か神原弥生(秋人のお母さん)か。
・8話で弥生が「秋人が“虚ろな影”に近づいた」ことを知っていたので、弥生の方が可能性高そう。

→ 恐らく弥生に、秋人の妖夢化について連絡を取って「秋人を助けようとしている」。


◇ ニノさんの言う「泉に頼む」という“裏技”
・転入してくる桜を止めるために、地元の名士である泉の力を使うという手もある、と。
・これ自体は謎を残す台詞でもないんですけど……
・恐らく栗山さんはこの“裏技”を使ってこの町にやって来ているんですよね。
・栗山さんがこの町に来る3月の時点では高校入試は終わっているだろうし、身よりもないのにどうやってアパートを借りたんだって話ですし。
・泉と栗山さんが以前から知り合いならそのことに全部説明が付くという。

→ 泉には「学校への転入」を拒否できるだけの力があるので、栗山さんの件も泉なら簡単に処理できたという後々明らかになる真相に説得力を持たせる伏線。


? 秋人の作るオムライスは不味い
・伏線じゃないけど一応(笑)。
公式サイトによると秋人の母親の作るオムライスは壊滅的に不味いらしく、アニメ公式ガイドブックによると秋人の好物は「不味いオムライス」だそうな。
・普通の美味しいオムライスでは満足できない秋人は、なので自炊する際にはやたらオムライスを自分で作って食べているという。
・11話で愛ちゃんの作ったオムライスを食べていたけど、アレは美味しいのか不味いのか

→ 秋人にとっては「おふくろの味」なのだが、普通の人にとっては「不味い」


◇ 栗山さんが想像した「秋人の家に来ていた人物」
 ここも超好きなシーンなので、書き起こしますね。

栗山「先輩は一人っ子ですよね?妹も弟も、イトコもハトコもいませんよね!?
この靴……サイズ的に若い女性のものですよね?」
秋人「…先回り!?」
栗山「男子高校生が一人暮らしとなれば、それくらいのことは普通なのかも知れませんが……やっぱり、そういうのってどうなんだろうって思うんですけど!どうなんだろうって思うんですけど!!」
秋人「だから、思ったことを(ブログに)すぐ書くのは炎上の元だよ!!」
栗山「誰ですか!?」
秋人「えぇ……」
栗山「やっぱり美月先輩ですか?ですよね。私が知らないのをイイことに、二人でこっそり私の噂話ですか!」
秋人「ちがう!美月のワケないだろ!!」
栗山「じゃあ…彩華さん!?いや……愛ちゃん?いけません!相手は妖夢ですよ!」
秋人「だから、勝手に想像を飛躍させるな!!」
栗山「あーーーー!に、に、二ノ宮先生と!?」
秋人「ない!!!」
栗山「じゃあもしかして……っ!!ひ、ひ、博臣先輩!!アッキーの脇はあったか以上の仲だったんですか!?不潔です!不愉快です!不潔不愉快です!!」
秋人「あのなぁ……」


・あぁ……栗山さんは可愛いなぁ、というのは置いといて。
・共通の知り合いを漏れなく全員挙げているのに、泉の名前だけは出していないんですね。
・栗山さんは、泉が秋人を殺そうとしているのを知っているので。
・あと、美月と秋人の関係を真っ先に疑っておきながら、エロ展開ではなくて「二人でこっそり私の噂話」と想像しているのもポイント。栗山さんはこの二人がそういう関係にはなっていないのを知っているということなんですね。

→ 栗山さん視点からすると、「泉の名前を挙げない」のも「美月は秋人と恋仲にはなっていない」ことも分かっている。


<Bパート>
? 美月がヤキイモを飼っていることを泉に隠す理由
・泉は「妖夢」をバケモノだと言い放ち、秋人のことも殺そうとしている。
・美月がヤキイモを飼っている理由は明かされなかったし、美月と秋人との出会いも描かれなかったのだけど、ずっと一人で生きてきた彼女にとっては「妖夢であっても大切な存在」と―――相反した考えの姉妹なのだけど。
・泉は彩華さんのことは助けているし、そこまで急進的に「反・妖夢」というワケではないと思えます。体内に妖夢を飼っているというのは、彼女にとって負い目なのか……?

→ 「美月が、泉を信用していない」という描写なのだけど、美月がヤキイモを飼っている理由は明かされないので若干消化不良な件ではあります。


? 泉は何故「境界の彼方」と言ったのか?
・鏡面世界が広がり、「“凪”が来る……全てが止まる、停滞の時。そして……“境界の彼方”」と泉は言う。
・何故鏡面世界が現れたのか、どうして泉は美月に“境界の彼方”のことを教えたのか。
・ここはホント、よく分かりません(笑)。

→ 謎。「やったー!とうとう凪が来たから“境界の彼方”を殺せるぞー!」とテンション上がって口走っちゃったとしか説明出来ない(笑)。


【第8話:凪黄金】
<アバンタイトル>
○ 泉「“凪”の訪れにより状況に変化が起きると考えられます」
→ “凪”によって弱体化した“境界の彼方”ならば、栗山さんが秋人の体から追い出せるという計画。


<Aパート>
? 秋人が“虚ろな影”に近づいたことを弥生は知っていた
・まぁ、名瀬家からか異界士協会からか報告が行くのも当然だと思うのだけど……
・自分はこれは、7話の美月のメールによって伝えられたんじゃないかと思っています

→ 美月と弥生がコンタクトを取っていたというシーン?


? 美月は何故走っていたのか?
・弥勒と会うシーン。
・写真館で一人考えているようなカットもあるし、「どうしてアナタが…?」という台詞もあるので、誰かと会う約束をしていたところ弥勒がいた―――ってカンジですかね。
・異界士協会に連絡したら弥勒が来た、か。
・弥生に連絡したら何故か弥勒が来た、のどっちかですかね。

→ 「秋人を助けよう」と7話に打ったメールの相手と会うつもりだったのに、弥勒が来た……ってところだと思います。


◇ 弥勒は何を美月に語ったのか
・美月は4話で秋人が発生させた鏡面世界を見ている。
・7話で誰かにそのことをメールで送っている。
・8話で弥勒がやって来て「話しておこうかと思いまして、貴女が見たものについて」と、“境界の彼方”について話し始めている。
・つまり、美月はこの時点で「秋人=“境界の彼方”」だと察しているはずなんですね。
・美月はここで「栗山さんは秋人を殺すために近づいた」のだと気付いたのか、もっと前から気付いていたのか―――この辺はテレビ版12話だけではよく分かりませんね。自分としては「5話の時点で知っている」ように思えるのですが。

→ 秋人の正体と、それを殺すために栗山さんが泉によってこの町に呼ばれたことを教えた。


○ いきなりワープした弥勒の能力
→ 光の屈折を利用して幻影を見せる能力。

・何故これを美月に見せたのかは謎。


? 突然現れた博臣の能力とは?
・不明。
・泉と博臣にはワープ的な能力があるのかと思うのだけど、その有効範囲は長くないだろうし、姿を隠して尾行する能力でもあるのだろうか?
・この回のエンドカードで博臣が弥勒の車の後ろに乗っている絵があるのだけど、当然本編中の車の後ろには誰も乗っていません。ただ、その後の様子を見るに博臣は車内の会話を聞いていたようにも思えます。

→ 博臣の能力が多岐に渡りすぎてよく分かりませんが、姿を隠す能力ですかね。


<Bパート>
○ 秋人は何のために倒れたのか?
→ “凪”で弱っている“境界の彼方”を引きずり出すために、泉の凍結界で人間部分を更に弱らされたため。


○ 弥勒が誰かと喋っているのは何?
 ここも分かりにくいので書き起こします。

「エサは撒いておきました。そろそろ頃合でしょう。
元々“アレ”は僕が追っていたものですし。
分かっていますよ……名瀬家にはやらせません」


・エサを撒いていた相手というのは、美月のように思えて実は博臣。
・泉の行動に不信感を抱いた博臣が結界を開けることで、弥勒が侵入出来るということなんですが……
・“アレ”というのが「虚ろな影の妖夢石」を指すのか「秋人=境界の彼方」を指すのか「泉」を指すのかは不明。「名瀬家にはやらせない」ということは「秋人=境界の彼方」ですかね。
・そもそも誰と喋っているのか。弥勒が体内に飼っているという妖夢なのか、アレを通して異界士協会と喋っているのか。

→ 博臣を利用して「虚ろな影の妖夢石」を回収するという話みたい。


○ ニノさんと泉の関係は?
・この二人は多分長い付き合いで、ニノさんは泉を信用しているんですよね。
・11話で、秋人を追おうとする泉を博臣・美月・桜・弥生で立ちふさがるシーンがあるんだけど……ニノさんは参加しないんです。泉の肩を持つ発言もしているし、高校生組には分からない関係があるのだなと。
・ただ、奇しくもここでニノさんが泉を称した「バケモノ」という言葉は、3話で泉が妖夢を称した言葉で、泉=妖夢という図式をこの時点で見せているという。

→ 二人の長い付き合いを感じさせる場面だが、それが皮肉にも「泉=妖夢」という真実を浮かび上がらせるという。


☆ 桜に「良かったね……出会えて」と言われた時の栗山さんの表情
・10話を見てからこのシーンを見ると、栗山さんはすごく哀しい顔をしていることが分かります。
・殺さなくてはいけないから近づいた、殺さなくてはいけないのに惹かれてしまった、好きにならなければ何も考えずに殺せたのかも知れないのに―――
・ここから11話の「先輩と出会えて本当に良かったです」に繋がるという。

→ 「出会えて良かった」のか「出会わなければ良かった」のか、この時の栗山さんにはまだ分からない


? 弥勒は何故秋人の様子を見に来たのか?
・放っておけば、泉の戦略で秋人=“境界の彼方”が殺されると思ったから?
・弥勒の目的は、「“境界の彼方”を使って世界を滅ぼす」ことだったのか「泉の失脚」だったのか……自分は前者と見せかけた後者だと思っているんですが、正解はテレビ版12話の中では描かれていません。
・名瀬家が“境界の彼方”を殺してしまうと、どちらにしても弥勒の目的は果たせないので……「保護します」というのはあながち嘘じゃなかったと思われます。

→ 泉達に“境界の彼方”を殺させないため


【第9話:銀竹】
<Aパート>
○ 秋人が栗山さんの誕生日にあげようとしていた眼鏡
・10~12話で“境界の彼方”に取り込まれた栗山さんがかけていた眼鏡ってこれ?
・ちなみにアニメ公式ガイドブックによると、栗山さんの誕生日は3月31日。
・7月からそんなこと考えているなんて、気が早すぎるだろ!!

→ 多分、“境界の彼方”に取り込まれた栗山さんはこの眼鏡を具現化したっぽい。


<Bパート>
? 栗山さんに何かを言いかけて辞める博臣
・「アッキーを殺すな」と栗山さんに言おうとして、辞める博臣。
・ということは……この時点で、栗山さんが最初から秋人を殺そうとしていることに勘付いたのかな?

→ 博臣がいつから栗山さんを認識していたかも不明なので、これもどういうシーンなのかちょっと確定しづらい。


◇ 栗山さん「こんなことが待っているなら、こんなこと……知らなければ良かった」
・殺さなければならない相手ならば、最初から知らなければ良かった。
・だから、泉は忠告していたのだし、栗山さんは秋人を拒絶していたのに。

→ 「異界士」と「妖夢」として接すれば殺すことに問題はなかったのに、「人間」と「人間」として接してしまったがために殺せなくなってしまった。


○ 泉は栗山さんを呼びたてて何を伝えたのか
→ 満を持して、秋人を殺さずに“境界の彼方”を外に出す方法があると。

※ 10話の表情を見る限り、泉は栗山さんにこの決断をして欲しくはなかったのかなと思います。本当は「秋人を殺して自分は生き延びる」方を選んで欲しかったのかなと。


◇ 栗山さんは何を想って秋人と対峙したのか
・これは本当に素直にすごいなぁと思ったところ。
・9話を観た際、栗山さんは「これから一番好きな人を殺さなくていけない」という哀しさを背負っていると思ったのだけど……10話を観た後だと、栗山さんは「自分が消滅することで一番好きな人と別れなくてはいけない」哀しさを背負っていると分かるんですよね。

→ 1周目と2周目で正反対に見える描写にしてあるところが流石。


【第10話:白の世界】
<Aパート>
○ 並行して描かれる“夏”と“冬”の世界
・まぁ……説明するまでもないかも知れませんが。
・“夏”は秋人の体に残った栗山さんの血が見せている夢の世界。なので、秋人が知らない情報(桜が、栗山さんが秋人を好きだと知っている)(美月が秋人を助けようと尽力していた)もこの夢の中に出てくる。
・“冬”は栗山さんの血と融合して消滅を免れた“境界の彼方”が栗山さんを殺すために作り出した本物そっくりの世界。秋人と眼鏡は栗山さんが作り上げた傀儡。なので、栗山さんの頭を撫でてはくれない。

→ “夏”は秋人の夢で、“冬”は境界の彼方が作り出した世界。


◇ “夏”で秋人が見ていた妖夢石
・4話で200円と鑑定された妖夢石。ずっと部室に置いてあったのか。
・当然これの正体は……

→ 秋人の体から出てきた“境界の彼方”の一部。


<Bパート>
○ “冬”で栗山さんが追いかけているものと、現実で秋人が聴いている音とは
・栗山さんは“境界の彼方”の本体を殺すことで全てを終わらせようとしていて。
・秋人は、かつての半身である“境界の彼方”の叫びが聴こえている―――ってところか。
・恐らくこの時点では、栗山さんが“境界の彼方”を倒すと“境界の彼方”ごと栗山さんも消滅してしまうはず。

→ 栗山さんは自分の身を犠牲にしてでも、“境界の彼方”を消そうとしている。


【第11話:黒の世界】
<アバンタイトル>
◇ 「弥勒の鎌」は人の憎しみが塊になったもので、弥勒に相応しい
・つまり弥勒は人間全てに憎悪を抱いているのか、人間全ての憎悪を背負って生きているのか……
・これまでの言動から察するに、弥勒は「人間の憎しみが生む妖夢」を否定していないので後者なのかな。

→ 「妖夢=人の心の歪み」を肯定する弥勒にこそ相応しい武器ということか。


<Aパート>
◇ 博臣「確信はないが……母親と話をしてみるんだな」
・ここの台詞、最初見た時は「ここでこんな台詞があると後半に弥生が来ることに驚かなくなっちゃうからダメじゃん!」と思ったのですが。
・逆に考えると、

→ 博臣は3ヶ月の間に弥生とコンタクトを取っていたということか。


○ 博臣が喋る際に美月と目を合わせている
→ 3ヶ月の間にこの二人の関係も少し変わっていることが分かる。

※ 推察するに、美月と博臣と弥生が連絡を取り合っていたんじゃないかと思います。


○ 博臣達の能力が弱体化した理由
→ “境界の彼方”が栗山未来を殺すために、妖夢や異界士の力を吸収することで力を増幅しようとしている

・弥勒がこれまで仕込んできた“鎌”は、この力を更に促進させて、町中の妖夢を吸収させて“境界の彼方”を強化させるためのものだった。
・“境界の彼方”が栗山さんを倒すと、栗山さんから解放された“境界の彼方”は世界を滅ぼす。
・ということで弥勒が望んでいたのは「世界の滅亡」だったのかというと……
・結果的に、秋人が“境界の彼方”を取り込んで世界を守ったということは―――弥勒の行動が“境界の彼方”を守ったということか?それが目的だったのか?


<Bパート>
○ 何故、弥生はみんなのところにやって来たのか。
 全文書き起こします。

秋人「本当か?本当に栗山さんは生きているんだな?」
弥生「ええ、生きているよろ。未来ちゃんは今でも一人で戦っているよろ。
本当は手を貸せないのだけど、このまま“境界の彼方”が勝っちゃうと世界が滅びちゃうよろ。だから、非常事態ってことで柔軟な対応をすることにしたよろ。」


・“境界の彼方”「が」勝っちゃうと、なんですね。
・この時点での戦力は「栗山さんvs“境界の彼方”+弥勒の力で町中の妖夢の力を吸収している」なので、圧倒的に栗山さんが不利。このままだと世界は滅んでしまう。なので、秋人に助けに行くように言っている。

→ 秋人が行かないと世界が滅んでしまうから

※ 「本当は手を貸せない」の部分は一体……?
※ 弥生は、名瀬家とも異界士協会とも違う組織に属しているということ??


? 何故、弥生は“境界の彼方”の事情を知っているのか?
・弥生は「分かるでしょ?アナタの母親は神原弥生よ」と言った。
・秋人の出生の秘密に関係しているのか、弥生もかつてこういう経験をしていたのか、この辺はテレビ版12話の中では明かされませんでした。
・まぁ……この辺の設定は原作で明かされそうな気もする。

→ そもそも秋人の存在自体がどうやって生まれたのかが分からないので。


【第12話:灰色の世界】
<Aパート>
? 泉と弥生の関係は?
・どうも弥生は泉の小さい頃を知っている……?
・現在の二人の年齢を考えると、弥生は高校生の息子がいてもおかしくない年齢なので30代中盤くらいと考えられて、泉は美月の回想シーンから考えるに美月+10歳くらいに思えるので20代中盤くらい?
・二人の年齢差が10歳くらいだと考えると、この二人にも色々あったのだろうし……泉が美月に「異界士は異界士である限り、ずっと一人なの」と言った高校生くらいの時には、既に弥生が子持ちなので(秋人と美月が同い年だからね)。その頃には関係は途絶えていたみたい?

→ かつては知り合いだったけど、恐らく秋人達が生まれてからは会っていないみたい。


◇ 弥生はどうして博臣と美月の名前を知っていたか
・弥生は泉に「大人同士のウダウダにいつまでこの子達を付き合わせるつもりよ。異界士協会はもう動いているのよ」と言っている。
・異界士協会というのは弥勒のことか……?
・弥勒が泉の失脚を狙って行動していると考えると、それに秋人や栗山さんは巻き込まれているとも言えて。確かに弥生の言っていることは筋が通っている。
・そして、「博臣くん、美月ちゃん。秋人と未来ちゃんはただの妖夢と異界士ではない。特別な存在なの。よろしく頼みます!」と言って去っていった。

→ 作中では描かれていないところで、博臣と美月は弥生と連絡を取っていたのは間違いない。

※ 「続く!」じゃねえよ!!とは思いました。
※ 2期はあるんですかねぇ……


? どうしてニノさんは着替えたの?
・謎。まさか弥勒がイイ男だからってワケでもなかろうに。
・法被姿は「妖夢退治のユニフォーム」だから、弥勒戦には使わないということかな。

→ 不明。どう考えても着替える時間は無駄だ。

※ それはそうと、よく見るとニノさん→博臣にフラグ立っているんですけどおおおお!


※ 伏線関係ないけど、原チャリに秋人と栗山さんが乗るシーン。細かく一時停止して見てみると、栗山さんのパンツを見てしまった秋人がとっさに目を逸らしているのが分かります。
→ どうしても誰かに言いたくて書いてしまった。


<Bパート>
○ 弥勒は異界士協会の人間ではなかったのか?
→ 異界士協会が弥勒に全責任を押し付けただけだと思われる。

※ 泉は以前、「異界士協会は名瀬家の失墜を狙っている」と言っていたので。弥勒一人の意志ではなく異界士協会の意志ではあったと思います。


○ 泉は何故姿を消したのか
・美月が「お留守番から卒業」と言った場面、博臣が「姉さんのようにはならない」と言った場面、泉は微笑んでいるんですね。
・二人の成長を見て、自分はもう必要ないと思ったからか、自分のようにはならないと安心したからか。

→ 弟と妹の成長を見て、名瀬家の統括の責務から離れた。


☆ 「それが娯楽というものだろ」
 このアニメ、第1話のAパートで秋人と美月が「作品に大切なのは“行動”と“意味”」と言っていて。最終話のエピローグでも秋人と美月が娯楽について語っているんですよね。つまり、この作品とはどういうものだったかをここで二人が語っているのです。

美月「結局……最後は悪が滅びるのが分かっているのに読み進めるのは、まったく時間の無駄じゃない?」
秋人「それが娯楽というものだろ」


・この作品の“悪”とは何だったのか。
・全てのキャラクターが“行動”と“意味”を持っていたこの作品において、ただの“悪”は存在しなかったし。「妖夢」も「異界士」も「人間」も“悪”ではなかった。弥勒だって「妖夢」を“悪”とする者達を裁こうとしたのだし。
・栗山さんは“呪われた血”を受け入れて「生まれてきて良かった」と言えるようになったし、秋人は“嫉妬”も“絶望”も“哀しみ”も“後悔”も“我侭”も“猜疑心”も“憎悪”も“諦め”も“狡猾”も“保身”も受け入れて“境界の彼方”と生きていくことを選んだ。
・人間の憎悪=“境界の彼方”が“悪”だというのなら、この作品の結末は「それを受け入れて生きていく」決断をしたのであって、決まった“悪”が滅びる話では決してなかった―――というのと。
・それと、もう一つ

→ それが分かりきっているとしても、やはり最後はハッピーエンドで終わるのが娯楽なんだ。


 おかえり。栗山さん。



○ まとめ
 列挙してみれば分かるとおり、このアニメは最終話を迎えてもまだなお「説明が付かない」“伏線”や“謎”が大量に残っています。
 これらが説明されるのはブルーレイ7巻なのか、原作小説なのか、劇場版なのか、2期なのかは分かりませんが、テレビ版12話の中で説明されなかったことに自分は失望してしまったのですが……


 人間一人が認識できる“物語”なんてこんなものなのかもとも思うのです。

 秋人は「美月が秋人を助けるために何をしていたのか」を最後まで知りません。「博臣が何をしていたのか」も知りません。「弥生は一体どういう経緯で秋人の母親になったのか」も分かりません。「泉の正体」も分かっていません。でも、そういうものだと思うんです。

 たまたま栗山さんだけは、一度目の消滅の際に全てを語って消滅したから明らかになりましたけど―――それは、テレビ版の秋人は「栗山さんルート」に進んだからというだけの話です。
 「美月ルート」や「博臣ルート」「泉ルート」が、ブルーレイになるのか原作になるのか劇場版になるのか2期になるのかは分かりませんが、少なくともテレビ版では描かれませんでした。それはこの作品における必然だったのかもって思うのです。



 「名瀬美月」にとって、このテレビアニメ『境界の彼方』全12話は「秋人に選ばれなかった」物語だったのです。

 美月は秋人のことを好きだったのか――――
 自分は、美月→秋人は「恋愛感情」ではなく「似たもの同士の共感」だったと思っていましたし、秋人も多分そう思っていると思います。でも、栗山さんが秋人に惹かれた理由も、秋人が栗山さんに惹かれた理由も、最初は「自分に似ているから」だったじゃないですか。

 11話の病室で秋人が真っ先に栗山さんの心配をしたシーン、
 最終話で秋人が部室から出ていくシーン……美月にある表情は「自分は選ばれなかった」という表情なのです。


 美月が秋人を助けようと尽力していたのは確かだと思うのですが。
 作中ではハッキリとは描かれません。秋人も全く気付いていません。

「予めそう定められていたのか……
それとも、栗山さんが頑張ったおかげかは分からない。
それとも、僕の栗山さんへの想いが届いたのか――――」



 この作品最大の謎とも言える「何故、栗山さんは最後この世界に戻ってこられたのか―――」について秋人はこんなことを言っているのです。
 残っている伏線から考えるに、栗山さんが戻ってこられた理由に美月は関係していると思うのですが。秋人は全く気付いていません。


 “テレビ版12話の中では説明されなかった”ことで、誰にでも楽しめる分かりやすいエンターテイメントとは言いがたくなってしまったとは思うのですが。「敢えて説明しなかった」意図は分かりますし、美月視点で考えるとこんなに切ないハッピーエンドはないと分かるのです。選ばれなかったことで、描写すらされない、気付いてさえもらえない、これが名瀬美月にとってのエンディングだったのです。



「秋人……頑張らないと……卒業式の日に私から告白されるという夢が適わないわよ?」

 卒業式というのはエンディングのこと。
 「卒業式の日に告白される」というのは恋愛ゲームの定番のエンディングです。

 しかし、この「美月ルート」は選ばれなかったのです。
 第1話で提示されたこのエンディングを迎えることはありませんでした。告白されることも、真相が明かされることもありませんでした。栗山さんのように秋人から「ありがとう」と言ってもらえることもありませんでした。


 美月視点でこの物語を振り返ると、この物語は「主人公から選んでもらえなかったヒロインも、主人公を助けようと必死にもがいていた物語」だったのです。




 だから、やっぱり。
 この結末を迎えてもなお、私はこのアニメが大好きなのです。

 ありがとう。美月。



○ 余談
 ということで……アニメ版についての記事をようやく書き終えたので、これから原作小説版を読み始めようと思います。恐らくアニメ版で謎だったところも原作小説版では描写されていたり、原作小説版で描かれるためにアニメ版では明らかにならなかったりしたところもあると思うので。

 「アニメはアニメ」「原作は原作」と分けて考えるために、
 アニメ版についての記事を書き終えるまでは原作小説は読まないでおいていました。

 読み終わったら、また紹介記事でも書こうと思います。

| アニメ雑記 | 17:54 | comments:10 | trackbacks:1 | TOP↑

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「1週観逃しても大丈夫なアニメ」と「毎週観ないと楽しめないアニメ」

 テレビ東京の放送時間が30分ズレていたので『のんのんびより』録画失敗していました。死にたい。ウチのHDDレコーダーは、毎週録画にすると放送時間のズレに対応できないんです……ニコ動のタイムシフト予約しておいたけど、一週間以上はお預けか。


 ただ、正直なことを言うと『のんのんびより』は「1話観逃したところでそんなに問題ないアニメ」とも思います。
 いや、録画失敗したので今週の話もそうだったかは分かりませんが。基本的には1話完結の話で、“今週の話が来週の話に繋がる”みたいなことはないので。8話を観なくても、9話は普通に楽しめると思うのです。いや、まぁ録画失敗しないに越したことはないのですが、「録画失敗したのが『のんのんびより』だった」のは不幸中の幸いだったのかも知れません。



 対照的に「1話観逃すと致命的なアニメ」もたくさんあります。
 恐らく深夜アニメファンではないと思われる人が、『魔法少女まどか☆マギカ』について「全話観ることが前提のストーリーなのでアニメヲタク以外の人は付いていけない」と評しているのを見たことがあって。なるほど、それは確かに言えるなと思ったのです。

 『まどか☆マギカ』は毎週毎週「ショッキングなことが起こる」か「重大な真実が明らかになる」アニメだったので、ファンからすれば毎週目が離せずに食い入るように観ていたワケですが……逆に言うと、1週でも観逃してしまうと意味不明になってしまうので、毎週アニメを観る習慣のない“非アニメファン”からすると付いていけないアニメだったのかも知れませんね。


 ただ、それが悪いこととは私は思いません。
 深夜アニメは「ブルーレイやDVDを売る」ことが基幹になっているビジネスモデルですから、ブルーレイやDVDを買ってもらって「全話通して楽しめる」「何回観ても楽しめる」ストーリーにしていくのは当然のことだと思います。現に『まどか☆マギカ』のブルーレイやDVDの売上は、深夜アニメのそれの中ではズバ抜けた超絶ヒットをしたワケですからね。




 もちろんコレは『まどか☆マギカ』に限った話ではありません。
 自分が今季推しているもう一つのアニメ『境界の彼方』なんて、「一回観ただけでは何が何だか分からない」と言われているくらい細かい伏線とか演出が多いので、1話まるまる観逃してしまったら致命傷です。
 例えば、『境界の彼方』は登場人物の感情を「私は前向きになりました!」みたいな台詞で説明するのではなくて、2話で「牛丼を食べているシーン」と4話で「レバニラを食べているシーン」を比べると4話の方が美味しそうに食べているから栗山さんの気持ちが変わったんだと分かるようになっていて。
 こういうところが私がこのアニメを大好きなところなんですけど、2話か4話かどちらかを観逃していたら意味不明なワケですよ。ただご飯食べているだけのシーンにしか見えません。


 録画失敗したのが『境界の彼方』じゃなくて良かった……と正直思いました。
 それは『のんのんびより』より『境界の彼方』の方が好きだという話ではなくて、「1話観逃したところでそんなに問題ないアニメ」と「1話観逃すと致命的なアニメ」の違いなのです。



(関連記事:『のんのんびより』における一条蛍の役割を考える
(関連:生きるためには食べなくてはならない!『境界の彼方』の食事シーンを読み解く



 これは数年前に何万回と議論になった「『けいおん!』にストーリーはあるのか」問題にも繋がるのだと思います。
 『けいおん!』も言ってしまえば1話完結の日常アニメなので、一見すると『のんのんびより』同様に「1話観逃したところでそんなに問題ないアニメ」と見ることも出来るのですが……全話通して観るとキャラクターの成長が描かれていて、例えば2期の中盤あたりから唯が憂に起こされなくなるなんてことは台詞では説明されないので、その点では「1話観逃すと致命的なアニメ」とも言えるんです。

 『けいおん!』はライトに観ている人には「1話観逃したところでそんなに問題ないアニメ」で、ヘビーに観ている人には「1話観逃すと致命的なアニメ」のハイブリッドアニメだったというか。同じメインスタッフの『たまこまーけっと』もそういうところがありましたね。最終話まで積み重ねてきたものがあってこそ、最後のたまこの決断が活きたワケで。

(関連:憂はどうして軽音部に入らなかったのだろうか
(関連:「誰かを好きになるって楽しいね!」――『たまこまーけっと』が描いているもの
(関連記事:北白川たまこは特別な存在だし、特別な存在と描かなければならなかった




 ここまで書いておいてアレなんですけど。
 でも、別にアニメって「100%理解しないとならない」ワケではないですよね。


 『けいおん!』を日常アニメとして楽しんだ人もいる、『まどか☆マギカ』をキャラ萌えアニメとして楽しんだ人もいる、『境界の彼方』を脚フェチアニメとして楽しんでいる人もいる―――娯楽の楽しみ方は人それぞれですから、ぶっちゃけどんなアニメだって「全話観ないとならない」とは言えないとも思うのです。

 これ……お叱りを受けるかも知れませんけど、私は最初の2~3話で脱落してしまったアニメも「最後はどうなるんだろう?」と気になって最後の2~3話だけ観ることがあります。
 それでも結構面白いんですよ。途中の展開とか分からないから全話観ている人と同じくらい楽しめるワケではないのですが、それでも結構楽しめちゃうんです。『アイドルマスター』のアニメは1~3話と23~25話の6回しか観ていなかったのですが、それでも春香の話に号泣していましたもの。途中を全く知らないのに(笑)。


 娯楽なんて楽しめたもの勝ちなんだから、「アニメを毎週観る習慣なんてないから深夜アニメ追いかけられない」って人は今からでもイイと思うんです。
 秋に始まった1クールのアニメはここからが山場ですからね。こっから一番盛り上がるところですし、今から観たってイイと思います。だから、観ていなかった人も『のんのんびより』『境界の彼方』を今からでも観ましょうよ!


| アニメ雑記 | 17:56 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

主人公がヒロインを好きすぎる作品、が好きです

 『境界の彼方』の話ばかり書いていると、『境界の彼方』に興味がない人が読んでくれなくなっちゃうので冒頭だけ。
 自分がこんなにも『境界の彼方』を好きな理由の一つに、「男主人公がヒロインを好きすぎる作品」が自分のツボだというのがあります。相手に伝わっているかは作品に依りますが、その一途さがこっちにも伝わってくる作品は……アニメに限らず、漫画でも、映画でも好きになるなぁと自分の好みを省みると思いました。


 『境界の彼方』はキャラクター配置だけ見れば女のコ多めですが……7話で栗山さんが秋人との関係を一番怪しんだのが博臣だったように、男主人公が女のコから好かれまくるハーレムアニメとは違って、女のコとの浮いた話はほとんどないんですよね。

 美月は……それっぽさを感じなくもないのですが、美月が何を狙って行動しているのかは終盤まで明らかにならないので保留ということで。

 その一方で、秋人は栗山さんに「メガネ美少女が(部に)欲しいから」と追い回しただけじゃなくて、栗山さんの写真を高額で買い取ったり、盗撮したり。こうやって文章にしてみるとどう考えてもストーカーです。本当にありがとうございましたというくらいに、栗山さんに熱を上げていて。その一途さと言ったら凄まじいものがあります。



 まぁ、秋人が本当に好きなのは栗山さんじゃなくてメガネなんで、8話で栗山さんがそれに気付いてムスッとする表情と演技がまぁ可愛くて、8話は作画監督が堀口さんだったのでそりゃ平沢唯っぽいわ、でも平沢唯っぽさで言えば山田さんがコンテの5話の方がホットケーキ食べるところかメガネをセーターで拭くところとか平沢唯っぽかったけど別に『けいおん!』にそんなシーンなかったのにあれを平沢唯っぽいと思うということは私の思う平沢唯っぽさというのはもはや平沢唯とは関係のない概念としての平沢唯がこの世界の可愛いを支配しているのではないかとうんたらかんたら。



 『境界の彼方』に興味がない人どころか、『境界の彼方』を好きな人もそろそろドン引きしていると思うので閑話休題――――こんな風に、男主人公がヒロインを一途に好きすぎる作品を私は好きなのです。密かに片思いしているとかよりも、誰が見ても分かるくらいの好き好きアピールをしているくらいの作品が好きなのです。


 今年のアニメで言えば……『琴浦さん』なんかもそうでしたし。太一主人公と見れば『ちはやふる』もそうですよね。
 往年の名作漫画で言えば『スラムダンク』だってそうですし、パッと私の本棚に並んでいる漫画を見ると『金魚屋古書店』『おっとり捜査』『とめはねっ!』なんかはそうか。『武装錬金』もそうだっけ。というかボーイミーツガール作品は大抵当てはまる気がする(笑)。

 外国映画を観ていても、奥さんを大事にしている主人公だとそれだけで「コイツは悪いヤツじゃない!頑張れ!」という気持ちになります。『第9地区』の主人公なんて最低のクズ野郎だと思って観ていましたが、奥さんへの会いたさっぷりを観ていたら「頑張れー頑張れー」とか言い出してラストは号泣してました。

(関連記事:「ボーイ・ミーツ・ガール」は何故“王道”なのか



 随分昔に「「片想い」している女のコは可愛い」という記事を書いたことがあるのですが、それは別に女のコに限った話ではなく、“誰か”を好きなキャラクターというのはそれだけで魅力的なのかなぁと。

 「食べ物を美味しそうに食べるキャラは善人に見える」というFOOD理論にも近い話ですが、「誰かを好き」とか「熱中するものがある」とか「大切な人がいる」とかの情報を読者・視聴者に見せるということはそれだけで“裏表のないキャラ”と親近感を抱かせるのかなと思うのです。

 FOOD理論の記事で「食事シーンがほとんどないのでミステリアスで孤独なキャラとして際立っている」例として『幽遊白書』の飛影を挙げましたけど、彼も「妹」の存在が出てきてから「悪人ではない」と思えるようになりましたからね。大切な人がいるというのは、それだけでそのキャラを魅力的に見せるのだと思うのです。



 逆に。
 自分がハーレムアニメをあまり好きじゃないとか、ギャルゲーは一周目は出来ても「他のキャラを攻略する二周目」のやる気が出ないとかは――――今の話とは全く逆のケースで、「Aさんが好き。でもBさんとラッキースケベが起こったらデレデレしちゃう。Cさんから想われているのを邪険に出来ない」みたいな主人公だと親近感を全く感じられなくなっちゃうからです。

 いや、もちろん実際にハーレムアニメみたいな状態になったら男がそういう態度に出るのはリアルと言えばリアルなんですけどさ……リアルなキャラクターだから魅力的に見えるというワケではないので、ヒロインへの“好き”を一途に貫こうとする主人公の方が自分は好きなんです。


| ひび雑記 | 17:55 | comments:8 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

生きるためには食べなくてはならない!『境界の彼方』の食事シーンを読み解く

※ この記事はアニメ版『境界の彼方』第7話「曇色」までのネタバレを含みます。閲覧にはご注意下さい。

 『境界の彼方』のアニメが好きです。
 私がどのくらい『境界の彼方』を好きかと言うと、『けいおん!』以降の京アニ作品の中で一番好きなくらい好きです。あくまで7話の段階での話なので、この後の展開でズコーッとなるかも知れないし、逆に『けいおん!』以上に好きになるかも知れませんが。


 ただ、あんまり世間では話題にはなっていないなーと思いまして、もちろん「私が好きなもの」と「みんなが好きなもの」は違うのは当然ですしそんなことはこれまでにも何百回と経験してきたのですが……『境界の彼方』のどういうところが凄くて、どうして自分はこのアニメを好きなのかを語らずにアニメが終わってしまって、1年後くらいに「境界の彼方?そんなアニメもあったね」なんて言われてしまうのは耐えられないので、ありったけの想いを込めて描こうと思います。

 ちなみにアニメは今週(8話)から新展開の終盤戦に入ると思われるので……
 これまで観ていなかった人も、今週からでもどうぞ!という薦め方は流石に強引過ぎるかな(笑)。





 『境界の彼方』のアニメを語るには、どの視点から語るべきかと考えたのですが……この作品で“核”となっているであろう「食事」シーンについて語ろうかなと思います。

 『境界の彼方』には食事シーン―――何かを飲み食いしているシーンがとても多いです。
 7話までに24回、食事に関する話題や直前で終わるシーンも含めると40回。
 軽音部の連中が「楽器を演奏しないで紅茶飲んでばかりのアニメ」と言われていた以上に、コイツらは飲み食いばかりしています。当然それは狙ってやっているんだと思います。このアニメでは「飲み食いすること」がとても重要に描かれているのです。




 『境界の彼方』に限らず、映画やドラマ、漫画やアニメ等では「食事をする」というシーンを描くこと自体が演出だという理論があります。
 キャラクターにとって食事シーンは「無防備になる」瞬間と言えて、それを見せることは視聴者に心の内をさらけ出す意味があり。また、キャラクター同士が食事を共にするシーンは、そのキャラクター同士が心を近づける効果があるのです。

 福田里香先生のFOOD理論ですね(このページに簡単な紹介が書かれています)。
 ジブリアニメの食事シーンが美味そうというのはよく言われる話ですが……これは恐らく世にある全ての映画、ドラマ、漫画、アニメに当てはめられる話だと思います。
 例えば、漫画『3月のライオン』ではやたら食卓のシーンが描かれていて、食卓が出てくる度にキャラクター同士の距離が近づく効果がありますし。逆に『幽遊白書』の飛影なんかは恐らく作中でほとんど食事シーンが描かれていなくて、それが彼のミステリアスさと孤独さを描いているとか。それに比べて『ドラゴンボール』のべジータはバーベキューやってて日本中がずっこけたとか。例を挙げればキリがありません。これだけで一つブログが作れるくらい。



 『境界の彼方』の食事シーンにもこの「FOOD理論」は効果的に使われているのですが、もう一つこの作品ならではの“核”が食事シーンにはあると思われます。
 一言で言えば、「人間は生きるためには食べなくてはならない」というどうしようもないルールをこの作品では描いているのです。

 第3話で弥勒に「異界士とは」「妖夢とは」と訊かれた泉がこう話しています。

泉「太古の昔から、代々妖夢討伐を生業としてきた異界士の娘からすると…妖夢は「農家にとっての米」、「漁師にとっての魚」みたいなものです。何であるかなどどうでもいい。」


 彼らにとって「妖夢退治」は生活の糧なのです。
 妖夢を倒し、妖夢石を換金して、そのお金で衣食住を賄う。この作品の異界士は「食べるために妖夢を殺している」のです。

 だから、この作品における「生きるためには食べなくてはならない」は、「どうして異界士は妖夢を殺さなくてはならないのか」という作品の大前提となるルールと一体となっていて。この記事で列挙する食事シーンを見るだけで、「栗山未来」と「名瀬美月」という二人のヒロインが見事なまでに対比されて描かれていることが分かるのです。
 


【第1話:カーマイン】
◇ 美月→ 飴(チュッパチャップスのような飴:ピンクと白)
・エロイ
・エロイけど、エロイだけではなくて。飴というのは「舐め続けなければならない」=「摂取し続けなければならない」象徴とも言える

◇ 栗山さん&秋人→ たくさん(アイゼリヤというファミレス)
・全て秋人のおごり
・最初に栗山さんが食べ終わっているのは多分オムライス
・二人が食べているのがどちらもケチャップ料理で、血をイメージさせている(フォークを刺したタイミングで御丁寧にズバッという効果音が入る)
「戦い」の代わりに向かい合って「食事をする」ことで二人の距離が縮まるシーンなのだけど、二人が食べるタイミングがズレていることで完全には分かり合えていないことを暗示させている

△ 秋人…オムライスの食べ残しをラップに包んでいる
・秋人の自宅
・問題が解決していないことのイメージを伝えている

◇ 美月→お茶
・学食で秋人を待つ間
学食で待っている割に、美月は食事をしていないというのがポイント
・警戒心の表れ

△ 秋人→きつねうどん
・トレイに載せているだけで食べてはいない
・が、美月に比べて全く警戒心がない(笑)

△ 美月「便所飯でお馴染みの秋人」
・便所飯=食事をしている姿を誰にも見せられない孤独な人間、ということ
・ただの悪態という気もする(笑)

◇ 栗山さん→ お弁当
・390円(またも秋人がおごった)
・秋人に背中を向けて食べている
・この時点ではまだ秋人に心を許していないという描写


【第2話:群青】
◇ 栗山さん→かけうどん+おにぎり
・かけうどんは180円
・秋人から離れたところで食べ始める=拒絶の表れ

△ 弥生「たまには自炊しないと栄養が偏るうんぬんかんぬん」
・どうも秋人がオムライスばかり作っているのは、この人に原因があるみたい

◇ 栗山さん&秋人→牛丼
・栗山さんがおごる
・今回は同時に食べているけれど、カウンターで横に並んで食べるのは二人がまだ向き合えないという意味
・ちなみにこのシーンは、番組ラジオによると「牛丼=死の象徴」と台本に書かれていたそうな。牛を殺してその肉を食して生きることが、人を殺してでも生き続けている栗山さんの絶望を表しているのだと思われる
・なので、このシーンの牛丼は全く美味しそうに食べられていないという


【第3話:ムーンライトパープル】
◇ 弥勒→ コーヒー
・コーヒーにミルクを入れるカットが、人の心が歪んで濁っていく(ことで妖夢が生まれる)ことを表現している
・泉はコーヒーに手をつけていない

△ 愛ちゃん→ うどん?
・トレイを持って話しているだけなので見えない

◇ 栗山さん→ カップラーメン
・160円
・ここでも秋人の方を向かず、視聴者には背中を向けて食べている=心を閉ざしている

◇ 美月→ カレー味のアニマルビスケット(たべっ子どうぶつ)
・最初は向かい合って美月一人で食べているけれど、隣に座って秋人にも食べさせている=秘密を共有するという意志
・このアニマルビスケット、美月は家まで持ち帰っている
・流石に量多すぎだ!

△ 唯が栗山さんに食事を届ける
・回想シーン
・メイドさんから奪って届けるというのは、仕事ではなく友達として自分に関わってくれたということで。それが栗山さんの支えになっていたという証
・その後に二人でお手玉をしているということは、唯は栗山さんが食べ終わるのを待っていたということですよね

△ ニノさん…ビール缶を持っている

△ 秋人…料理を作っている(チキンライス?)
・割った卵に殻が残っている(落ち着いていないという描写)
・オムライスを作っていたのかな?
・秋人がどうしてこの後に栗山さんの元に駆けつけられたかは伏線っぽい


【第4話:橙】
◇ ヤキイモ→ ビスケットのようなもの

△ 弥勒→ コーヒー牛乳のパック?
・焼け野原になったあの状況でコーヒー飲んでいるという、異常性を見せる

◇ 栗山さん→ レバニラ?(中華の王様)
・2話の牛丼とは対照的に、豪快にもぐもぐ食べている
・自分が生きることを肯定出来るようになったから
・逆に秋人は餃子に手を付けず、今回もカウンターで向かい合わずに食事している
・だから、栗山さんがレバニラを一切れ渡すことで、心を通わそうと描写


【第5話:萌黄の灯】
△ 博臣→ 緑茶を注ぐ
・汲んだ様子は描かれているけど、飲んでいる様子は描かれていない

◇ 美月→ 飴(チュッパチャップスのような飴:ピンク)
・不満がいつまでも解消できないことの象徴

◇ 弥勒→ バナナオレ
・パックのジュースというのはストローで飲むため、口を閉じながら摂取する
・食事というより“煙草”に近い演出アイテムなのかも

◇ 美月&栗山さん&ヤキイモ→ ホットケーキ
・飲み物は、美月がコーヒーか紅茶で、栗山さんがメロンジュース?
・二人で向かい合って飲み物を飲んでいるだけでなく、美月が栗山さんにホットケーキを恵んであげる場面も
・「一つの食べ物を共有する」というのは、それだけ心を許すということ
・なので、美月は栗山さんに「随分な変わりよう」と言った

◇ ニノさん&美月&栗山さん→ 焼肉
・肉は焼くところでシーンが終わっちゃうので食べるシーンは映らないのだけど
・飲み物はちゃんと乾杯して飲んでいる
・ニノさんはビール、美月はオレンジジュース、栗山さんは烏龍茶かな
・乾杯は言うまでもなく、「食事の場の共有」であり「仲間」であることの強調

◇ 美月→ 飴(ピンクと茶色の飴)
・手持ち無沙汰もあるけど
・この回冒頭に出てきた飴よりも、舐めて小さくなった飴ということで、「不満が小さくなっている」という美月の心理描写も兼ねているのかも

△ 美月「便所飯でお馴染みの秋人」
・4週間ぶり二度目

△ 美月「りんご飴食べたい」
・「一人で生きていくしかない」と思い続けていた美月が、他者を頼ろうとしたシーン
・詳しくは後述します



【第6話:ショッキングピンク】
◇ 美月&ヤキイモ→ 飴&チョコ
・栗山さんや博臣がいる前でも、飴も舐めるし、ヤキイモも外に出している
・相当無警戒になっている

△ 秋人「眼鏡を外した女子など苺の載っていないショートケーキのようなものだ」
・これもリストに入れるべきか悩みましたが一応(笑)

◇ 美月&ヤキイモ→ モナカアイス
・いくらなんでも和みすぎだろう(笑)
・アイスを食べているところに、体液を浴びた制服のニオイをかがされる→ 「クサイ」というのは食欲を遮断させるので、生命維持のジャマになるという象徴?

◇ ヤキイモ→ チョコ
・まだ食っている
・なので、この後に食いすぎで動けなくなる

◇ 彩華さん→ ソフトクリーム
・食事に支障がないくらい遠巻きから傍観していたということ

◇ 美月→ 紅茶とポッキー
・他のみんながガスマスクを外せないのを、美月だけが何ともなく食事が出来るという描写

◇ 美月→ スナック菓子(うまい棒みたいなヤツか?)
・それにしてもよく食べる

◇ 美月→ 水?
・嘘回想シーンにて


【第7話:曇色】
◇ 栗山さん→ 釜揚げうどん(うどん屋 八兵衛)
・150円で食べ放題の日なので、思いっきり食べまくる

◇ 秋人&桜→ オムライス
・倒れていた桜を介抱した後に、一緒にオムライスを食べる
・秋人は背中を向けて食べる=向き合って食べるワケではないので分かり合っているワケではないけれど、一度殺されかけている相手に背中を見せて食事をするというのは警戒していないというサイン
・秋人の作ったオムライスは桜曰く「マズイ」らしい
・ただ、秋人が栗山さんと喋っている間に、完食していた……食べ物を粗末にしないだけで「悪いコじゃない」と思えるのがFOOD理論(笑)

△ 桜とメイドさんがサンドウィッチを作っている
・回想シーン
・桜は異界士の家に生まれたのに異界士の力がないから「それしか出来ない」と言うけれど、異界士を生かすためには桜のように食事を作ってくれる人が必要
・唯はそれが分かっていたから「それが出来る桜が一番エライよ」と言った

△ 桜が栗山さんにサンドウィッチを届ける
・回想シーン
・唯を殺してしまった栗山さんも、生きていくためには食べなければならない
・それを教えてくれたのは実は桜だった




 シーンを列挙しているだけでは「何がなんやら」という人も多いと思うので、解説。

 栗山さんが飲み食いをするシーンは9回。唯が食事(カレー?)を届けるシーンも含めれば10回。美月にホットケーキを恵んでもらった1回を除けば、残り9回は全て「昼ご飯」か「夜ご飯」です。間食とかお菓子とかではなく、ガッツリ食事をしているシーンばかりが描かれているのです。

 「栗山未来」は「生きるために食べている」んです。
 生きるため、そして戦うためには食事をしなければならないから食べているんです。
 象徴的なのが2話の牛丼のシーン。肉を喰らうということは命を喰らうということ。一番大切な人を殺してまでも生き続けている栗山さんの気持ちを表しているように、このシーンの栗山さんはとても美味しくなさそうに牛丼を食べているんです。
 その裏返しで、虚ろな影と戦った4話以降の栗山さんは自分の生を肯定出来るようになったので、一つ一つの食事をとても美味しそうに食べるようになったのです。

 彼女は貧乏でいつもお腹を空かせていますが、それは「不憫なコ萌え~」ということではなくて、この作品世界のルールを忠実に表現していると言えるのです。



 対照的に、美月が飲み食いをするシーンは12回。ニノさんに焼肉をおごってもらう1回を除くと、残り11回は全て「お菓子」とか「お茶」とか「ケーキ」と言った嗜好品です。焼肉のシーンも肉を食べる様子は描かれなかったので、彼女の飲み食いは「間食」しか描かれていないんです。

 「名瀬美月」は「嗜好のために食べている」んです。
 本当は食べなくてもいいものを食べているだけなんです。
 栗山さんととても対照的に描かれているのが分かります。



 この二人の食事シーンの対比は、「異界士としての二人の対比」にもなっていて。
 異界士を辞めようと何度も思ったけど、結局辞められずに「生きるために異界士をしている」栗山さんと。異界士の家の娘として生まれながら、その名瀬家に対して複雑な感情を抱いているであろう美月と。

 二人のヒロインの対照的な位置付けを、食事シーンを対比させることで見せているという。




 FOOD理論の話で言うと……
 美月というキャラは毒舌でとっつきにくいキャラのように思えるのですが(今思うと、秋人と博臣に挟まれている割には優しい方だと分かったけど・笑)。「たべっ子どうぶつ」をバリバリ食べて、それを秋人にも分ける辺りで、「このコは悪いコじゃないはずだ!」と思えてしまうという。

 対照的に、泉や博臣は飲み食いするシーンが描かれず(コーヒーや緑茶には手を付けていない)、視聴者には腹の内を見せないようにしているのも面白いです。



 また、序盤(4話まで)の美月は、何かを食べている様子を秋人以外には見せていません。
 第1話の学食のシーンですら、お茶を飲んでいるだけです。お茶はイイのかよという話ではありますが(笑)、彼女が警戒せずに済んでいる相手は秋人だけだったのだと思います。名瀬家に生まれた身として孤独を抱えていた彼女が、同じように孤独な秋人に仲間意識を持っていたのか。

 しかし、4話で(自分がその原因の一つになってしまった)秋人の暴走が起こった際、泉の結界のせいで美月は近づくことも出来ませんでした――――

 「やっぱり自分は孤独なんだ」と美月が思って迎えた第5話で、栗山さんと向かい合ってホットケーキを食べて、栗山さんと共闘して妖夢を倒して、ニノさんと栗山さんと焼肉を食べて、栗山さんと浴衣を着て祭りに行って……人間はみな孤独だけど、その一人一人が集まって光になることを知ったのです。


 だから、「りんご飴食べたい」なんです。
 これは美月が秋人以外の人間にも心を開いたというシーンなのです。
 だから、これ以後の美月はみんなの前でも何か食っているし、栗山さんとも率先してイチャイチャしている(「高校デビューさせたくなった」とか言っている)のです。



 たかが食事シーンですけど、一つ一つのシーンが「体の向き」とか「食べているもの」とか「誰と食べているか」とか「どう食べているか」とかが全部意味を持って描かれていて、それがキャラクターの描写を強化していて。

 また、それが物語全体で描こうとしているものと密接に繋がっている――――というのが、自分がこのアニメを好きなところなのです。



 とは言え……
 『境界の彼方』というアニメを自分は大好きですけど、「観ているんだけどよく分からない……」という人が多いのも分かります。食事のシーンなんかはまだ分かりやすい方で、初見では絶対に意味が分からないようなシーンも多いですし、7話まで観た現在に観返しても「このシーンの意味はまだ分からない」というシーンが多いです。


 栗山さんを主人公として考えると、彼女が知らない町にやってきて、色んな人と出会って、大変なことがたくさん起こって、それでも成長していく物語――――と、分かりやすいんですけど。

 名瀬家の三人は一枚岩ではなく、それぞれがそれぞれに秘密を持って情報戦を行っているらしく……初見では「どうしてこのキャラはこういう行動を取っているのだろう」というのが分からないようになっています。
 例えば、美月がヤキイモを飼っていることは泉には隠しているとか、博臣は泉の指示で動いているっぽいとか、美月は博臣を警戒してなのか秋人と大事な話をする際には部室を使わないとか(※1)、4話で美月が博臣に「秋人の場所を教えて」と電話しているとか(そういう能力がある?)、泉は二回ほど栗山さんと二人で話しているとか――――

 秋人も秋人で、第3話で桜に殺されかけている栗山さんを助けた際に、どうして場所が分かったかを訊かれて上手く誤魔化しているし――――

 恐らく全て伏線なのだけど、その意味がしっかり明らかになるのは恐らくこれからの終盤戦なので、今の時点で「よく分からないや」と思われてしまっているのは仕方がないのは確かなんです。
 自分はこういう一つ一つのピースを頭で繋げていくアニメが凄い好きなので、このアニメも好きなんですけどね。『まどか☆マギカ』だって初見はホント手探りで観ていましたし。

(※1:第1話で美月が「栗山未来に関わるな」と言うシーンが2度あるのだけど、部室では「名瀬家の娘として」忠告していて、学食では「名瀬家が警戒している」と名瀬家を客観視している。第3話ではわざわざ手書きのメモまで渡して外で栗山さんの過去を教えている)



 また、それでいて「これは伏線なのか?ミスなのか?」という場面も幾つかあって、それが物語をより難解に見せているというか……第3話で栗山さんが「先輩(=秋人のこと)には仲間がいます!博臣先輩!美月先輩!」って言うシーンはミスですよねぇ。栗山さんが秋人から博臣を紹介されるのは第5話ですから。




 とにかく。
 このアニメが傑作になるか佳作になるかは、ここからの終盤戦で今まで張り巡らした伏線をどう使うのか次第なので―――「美月がどう動くのか」「桜をどう使うのか」辺りに自分は注目しています。

 あと私は女性の鼻の穴が好きなので、鼻の穴を描いているこの作品が好きです。
 今まで書いてきたこと全部が台無しになってしまった気がする。


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