○ 「将棋やチェス」と『ファミコンウォーズ』と「SRPG」と この『ファミコンウォーズ』のようなウォーシミュレーションや、ここから派生した『ファイアーエムブレム』や『スーパーロボット大戦』などのSRPGが説明される際―――
「将棋やチェスのようなゲーム」と説明されることが多いです。
元々ウォーシミュレーションゲームというのはボードゲームで、それをコンピューター上で表現したものが『ファミコンウォーズ』のようなゲームで、そこにRPG要素(「育成」や「ストーリー」)を加えたのがSRPGなので……説明としては間違ってはいません。
「将棋やチェスに、独自のルールが追加されたもの」と考えれば分かりやすいと思います。
将棋もチェスも『ファミコンウォーズ』も『ファイアーエムブレム』も『スーパーロボット大戦』もゲームとしての骨格部分は一緒で、
「能力の違う複数のユニット(駒)を全部自分で動かして、敵を倒す」というゲームです。
・将棋で言えば、「飛車」は前後左右に好きなだけ動けるけど1機しかなくて、「歩兵」は前に1マスしか進めないけどたくさんいる―――とか。
・チェスで言えば、「ナイト」は他の駒を飛び越えて移動できて、「ルーク」はキャスリングに使用できる―――とか。
・『ファミコンウォーズDS 失われた光』で言えば、「ロケット砲」は遠く離れた敵に攻撃できて、「爆撃機」は高い移動力と地上への高い攻撃力がある―――とか。
・『ファイアーエムブレム』で言えば、「アーマーナイト」は防御力の高さで敵の攻撃を寄せ付けなくて、「シスター」は攻撃は一切出来ずに味方の回復ができる―――とか。
・『スーパーロボット大戦』で言えば、「ゲッターロボ」はとてつもない威力の攻撃を出来るが消費ENが大きいので1面に1発しか撃てなくて、「ビルバイン」はとにかく敵の攻撃を避けまくってくれる―――とか。
どのゲームも、言ってしまえば「指揮官」になるゲームです。 「自軍の手駒」の特性を考えて、移動と攻撃を指示して、最終的にクリア条件を果たしていくのです。
ただ、
「将棋やチェス」と『ファミコンウォーズDS 失われた光』が違うのは… 「将棋やチェス」は「1ターンに1つの駒だけを動かせる」の対して、『ファミコンウォーズDS 失われた光』は「毎ターン自分の手駒を全て1回ずつ動かせる」ことと。
「将棋やチェス」は毎回同じマップと駒配置で戦うのに対して、『ファミコンウォーズDS 失われた光』はそれぞれのマップごとに「地形」も「駒配置」も「クリア条件」も変わるので、
“上達”よりも“クリア”が目的になること。
『ファミコンウォーズDS 失われた光』と、『ファイアーエムブレム』や『スーパーロボット大戦』のようなSRPGが違うのは… 『ファミコンウォーズDS 失われた光』はマップごとに決まっている手駒+工場などで生産した手駒で戦うのに対して、SRPGはキャラクターごとにレベルがあって「自分がどのキャラクターをどのくらい育てているのか」で難易度が変わることです。
「育成」要素の有無が大きな違いで、『ファイアーエムブレム』→『ファミコンウォーズ』の順でプレイした自分はここに一番戸惑いました。
例えば、『ファイアーエムブレム』では、1面ではお荷物気味のシーダ(ペガサスナイト)もせっせと経験値を与えてレベルを上げれば、中盤以降は敵をバッタバッタとやっつけてくれるエースに育ってくれる――――みたいにゲーム全体を通しての育成を考えなければならないのですが。
『ファミコンウォーズDS 失われた光』にはそういうのはないです。
1面の軽戦車も20面の軽戦車も同じ能力です。
面の中で「敵を倒したユニットは三段階で成長する」というシステムはあるそうですが、そのレベルは次の面には引き継がれません。
「育成」要素はSRPGの大きな楽しさの一つだと思いますし、「弱かったキャラがどんどん成長していく」喜びは他のジャンルではなかなか味わえないのですが……
逆に言うと、私のように「育成」が面倒くさくなってしまった人にとっては『ファミコンウォーズ』のシステムは合っていました。 誰を育てればイイのか悩まなくてもイイし。
この面でユニットが死んでも次の面には影響がないし。
「○○に経験値をあげるためにギリギリ削る」みたいな不毛なことをしなくてイイし。
順序は逆なんですけど、
SRPGが面倒くさくなっちゃった人にオススメのゲームと言えます。
『ファミコンウォーズ』に「育成」と「ストーリー」を足したのが『ファイアーエムブレム』のようなSRPG―――と書きましたし、初期の頃の『ファミコンウォーズ』シリーズには「ストーリーのあるモード」はなかったそうなんですが。
近年の『ファミコンウォーズ』には、SRPGからの逆輸入のような形で「ストーリーのあるモード」が導入されていて、これが「チュートリアルモード」と「メインのモード」を兼ねているのです。
個人的には「ストーリー」はあった方が気分が乗るので嬉しいし、この「ストーリー」がベタで王道なんですけど
“『ファミコンウォーズ』というゲーム”を体現しているかのようなストーリーでお気に入りの理由になりました。
○ “駒”の価値とは―――― 断っておきますけど、このゲームは「簡単なゲーム」ではありません。
SRPGにある「育成」要素がこのゲームにはないと書きましたが、それは言ってしまえば
味方のユニットに“エース”が存在しないということです。
『ファイアーエムブレム』だったら同じ「傭兵」でもオグマとシーザでは能力が全然違います。しかし、『ファミコンウォーズ』の場合「軽戦車」はみんな軽戦車です。敵を倒した数だけ三段階の成長はしますが、自軍の軽戦車A君も軽戦車B君も、敵軍の軽戦車C君も基本能力はみんな一緒なんです。
そもそもこのゲームには「回避」がありませんからね。 そりゃ、将棋で「歩兵の攻撃を飛車が避けたーーーー!」とか言い出したら永遠に飛車を倒せそうにありませんし、ボードゲームからの流れではそれが当然だとは思うのですが。
だから、
“回避率の高いエース”を突っ込ませて切り崩すみたいなことは出来ません。 敵のコンピューターも「命中率0%なのにバカみたいにビルバインを攻撃してくる」みたいなことはしません。こちらの攻撃範囲にギリギリ入らないようにちゃんと計算して動きますし、コンピューターの動きに「げっ、そう来たか……」と何度も苦しめられました。
また、このゲームのユニットには“最強のユニット”は存在しません。 陸戦では最強と言われる弩級戦車も空の敵には攻撃出来ませんから、爆撃機相手には手も足も出ずに沈まされます。その爆撃機も地上への攻撃は最強クラスの攻撃力を誇りますが、対空戦車・対空ミサイルにはあっさり沈められますし、空の敵には攻撃出来ませんから戦闘機相手には瞬殺されます。
『ファイアーエムブレム』にも「ドラゴンナイトは弓兵に弱い」といった相性はありますが、『ファミコンウォーズ』はそれがもっと顕著なのです。ユニットごとの特性と相性を組み合わせないと、一方的にやられてしまうことになるのです。
各ユニットはHPが10で、攻撃を喰らうと「部隊の何割が死んだ」となるので攻撃力も弱まります。なので、SRPGでは基本的な遊び方となる「味方は全員死なせないように」という遊び方は不可能で、
味方はガンガン死んでいくけど、工場・空港・港で味方ユニットをガンガン生産して押しきるという遊び方になります。
敵ももちろんガンガンユニットを生産してくるので、マップのサイズの割にはなかなか決着が付かないということもありますね。
「元々はボードゲーム」と考えれば、この辺の理由も分からんでもないでしょう。
ということで……そもそもSRPG自体が「ストイックなゲーム」として万人受けするゲームでもないのに、更に「ストイックなゲーム」でとっつきにくいゲームなので―――
日本では発売されなかった理由も分からなくはないなと正直思いました。ネットで調べてみたところ、日本での前作売上は3万本とかだったそうですし。
ただ、じゃあ初心者には難しいゲームなのかと言うとそうでもなく、
実はこのゲームは“初心者救済措置”が結構あるんです。おかげさまで『ファミコンウォーズ』シリーズ初プレイの私でも苦労しながらクリア出来ましたし、SRPGとの違いを把握すると「こんなに面白いゲームはないな!」というくらいのめりこみました。
一つには、
ストーリーモードにおける「作戦会議」の存在です。
これは本作から追加された“初心者救済措置”らしくて、面クリアのための攻略方法をキャラクター達が(漫才形式で)教えてくれるというものです。これがなければ私は絶対にクリア出来なかったと断言出来ます(笑)。
もう一つには、
徐々に要素を覚えていけるステージ構成です。
まぁ、これは『ファミコンウォーズ』だけでなくて『ファイアーエムブレム』なんかでもそうですね。最初は使えるユニットが少なくて出来ることも覚えることも少ないのですが、徐々にユニットが増えて、工場の生産なんかも出来るようになって、空ユニット・海ユニットが使えるようになって―――と、少しずつ出来ることが増えるので、初心者が混乱しなくて済むようになっているのです。
また、少なくともストーリーモードの中には「空ユニットが生産できる空港」「海ユニットが生産できる港」が同時に出てくる面はありませんでした。「プレイヤーに選択肢を与えすぎてワケが分からなくなってしまう」こともないように、絶妙に考えられているなと思いました。
そうだそうだ、肝腎なことを忘れていました。
自分のターン内だったら
「いつでもセーブ&ロードが可能」というのも大きいです。
かつての『ファイアーエムブレム』シリーズは「ステージの途中ではセーブが出来ない(中断は出来る)」ので、「リセットするとステージの最初から」という初心者の心をへし折る仕様だったのですが(最近のはカジュアルモードで途中セーブ出来るようになったそうだけど)。
このゲームはステージの途中でもセーブが出来るので、私は
毎ターンセーブ→上手くいかなかったらロードを5~6回繰り返して1ターンを進めていました。これがかつての『ファイアーエムブレム』仕様だったら恐らく10面もクリア出来なかったと思います!威張ることではない!!
それと……最初は「オマケ」程度にしか見ていなかった「ストーリー」なんですけど、これが中盤以降はグッと来る展開の連続でした。
滅亡してしまった世界の中で生き残った主人公達が「諦めない」とか「何のために生まれてきたのか」とかを語るベタベタな王道展開のストーリーなんですけど……
ここで描かれていることが「『ファミコンウォーズ』とはどういうゲームなのか」をとてつもなく端的に表現しているのです。 私は先ほど、「このゲームには“エース”が存在しない」と書きました。
「味方はガンガン死んでいくけど、工場・空港・港で味方ユニットをガンガン生産して押しきる」遊び方になると書きました。
このゲームのストーリーは「だからこそ」胸を打つのです。 登場人物達は知っているのです。
この戦場には“英雄”はいません。敵の攻撃を華麗に避けまくってくれるオグマもビルバインもいません。弩級戦車は爆撃機にあっさり沈められ、爆撃機は戦闘機に瞬殺され、戦闘機は対空ミサイルで一撃に沈められます。
“味方ユニットは替えが効く存在”です。爆撃機が沈められたら、また新たな爆撃機を生産して戦うだけですし、次第にそのことにも慣れていってしまいます。
勝利のためには味方の犠牲は仕方がないんだ―――と。
だから、このゲームのキャラクター達の台詞は重いのです。
決して“英雄”ではない“替えが効く”存在の彼らが、戦いの果てにたどり着いた答えに私はグッと来ました。
逆に言うと、これをやっちゃったら次回作のストーリーとかどうすんの?と思ったほどに(笑)。次回作……出ないんですかねぇ。
○ 総評 ということで、「ハードルは高いし、簡単なゲームでは決してない」けれど……
SRPGとはまた違う魅力を持った「ウォー・シミュレーションゲーム」の入口として、とてもオススメしたい一本でした。とても面白かったです。お腹いっぱい!
不満点というか、残念な点を挙げると……
やはり
「普通では買えない」というところです。
クラブニンテンドーのプラチナ会員も、2014年5月以降にクラブニンテンドーポイント800ポイントと引き換えるのも、「たくさんのゲームを買った人」という条件になってしまいます。他のゲームには興味ないけどこのゲームだけは遊んでみたいという人が手を出すのには、ものすごく高いハードルになってしまいますし。
「たくさんのゲームを買った人」にのみ、何十時間も遊べるゲームを配るというのはどうなのかと思ってしまいます。
私のTwitterのタイムラインには「たくさんのゲームを買った人」なクラブニンテンドーのプラチナ会員がたくさんいますけど、私以外にこのゲームをプレイしている人を見かけませんもの!!
みなさんたくさんゲームを買っているから、『マリオ』に『モンハン』に『ポケモン』に『ドラクエ10』に『王だぁランド!』に『燐光のランツェ』に『難攻不落三国伝』に『初音ミク Project mirai2』に『スチームワールド ディグ』に『マイティー スイッチ フォース!』に『メタルマックス4』に大忙しなんですもの!
遊びたい人のところには届くように―――
“クラブニンテンドーポイント800ポイントで交換”だけじゃなくて、2000円とか3000円とかで構わないから“eShopからも普通に買える”ようにした方がイイんじゃないかって思ってしまいます。良いゲームだからこそ尚更。
とまぁ……ゲーム内容には一切不満がないくらい、私は楽しみました。
バーチャルコンソールで出ている『ファミコンウォーズ』『スーパーファミコンウォーズ』にはストーリーモードがないそうなので、ゲームボーイアドバンスのバーチャルコンソールが始まった際には『ゲームボーイウォーズアドバンス1+2』の配信に期待したいです。
いや、3DSで新作が出るのならそれはそれで遊びたいです。Miiverse対応してくれたら面白くなるゲームだと思いますし。
そんなことを言う前に、今作の「トライアルマップ」をやるべきか……(笑)。
↑ 前作
やまなしレイ(管理人)(02/17)
やまなしレイ(管理人)(02/17)
やまなしレイ(管理人)(02/16)
ああああ(02/16)
ああああ(02/15)
ああああ(02/13)
やまなしレイ(管理人)(02/12)