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『百万畳ラビリンス』上下巻紹介/全2巻に詰め込まれた大冒険!

【三つのオススメポイント】
・「見ていられない」けど、見ていたくなる主人公:礼香の魅力
・超人気イラストレーターの画力によって描かれた世界
・ミステリーでもあり、SFでもあり、大冒険でもあり


【紙の本】
百万畳ラビリンス  上巻 (ヤングキングコミックス) 百万畳ラビリンス  下巻 (ヤングキングコミックス)

【キンドル本】
百万畳ラビリンス(上) (ヤングキングコミックス) 百万畳ラビリンス(下) (ヤングキングコミックス)

【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:△(礼香の過去のシーンはちょっとキツイかも)
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×


◇ 「見ていられない」けど、見ていたくなる主人公:礼香の魅力
 半年くらい前にコメント欄でオススメされていた漫画です。
 キンドルで少年画報社のポイント還元キャンペーンをやっていたので(現在は終了しています)、上下巻まとめて買って一気に読んでしまいました。すごく面白い!けど、これをネタバレさせずに紹介するのは難しい!なるべく物語の核心部分には触れないように紹介できるよう頑張ります。


 ストーリーは、ゲーム会社でデバッグのアルバイトをしている女子大生2人が、ある日突然「誰もいない謎空間」に迷い込んでしまって、そこからの脱出を目指すというものです。


hyakuman1.jpg
<画像は『百万畳ラビリンス』上巻 第2畳より引用>

 主人公は19歳の女子大生:礼香。
 黒髪ロングで、端正なお顔立ちで、スタイルも整っている「これぞ美人!」っていうキャラです。


hyakuman2.jpg
<画像は『百万畳ラビリンス』上巻 第3畳より引用>

 相方は礼香のルームメイトの庸子。
 礼香とは対照的にワイルドな風貌で、自分で自分を「ドブス」と卑下したりもするキャラです。


 一見すると「美女と野獣」みたいなコンビに見えるかもですが、読み進めれば読み進めていくほど、この2人の関係性は逆だと分かっていきます。礼香が後先考えずに突っ走って、気配りの出来る庸子がそれをサポートするのです。礼香の友達をやっていけるのは庸子しかいないよなぁ……と徐々に見えてくるあたりが、この作品にハマるポイントでもあります。



 さてさて。主人公たちが元々「ゲーム会社で働いていた」という設定だったり、礼香も庸子もゲーム好きなのでゲームの例えもところどころで出てきたりもすることから、この作品をゲームが好きな人にオススメ!みたいに言われているのを見かけるのですが……逆に言うと、「ゲームに詳しくないと楽しめないのでは?」と手に取らない理由にもされてしまうんじゃないかと危惧します。

 私の感覚では、この漫画を楽しむのにゲームに詳しいかどうかはあんまり関係ないと思います。
 というか、主人公たち(&作者さん)と私の「ゲームの好み」は全然ちがうので、私にも出てくるゲームの例えがよく分からなかったりしました。それでも、問題なく楽しめましたからね。


 ただ、「バグ」と「デバッグ」については事前に知っておいた方がイイかな……と思うので、その用語の意味だけ説明しておきます。
 コンピューターゲームは人間の作った「プログラム」によって動くのですが、時々作り手が想定していない動きをしてしまうことがあります。例えば、本来なら8月31日で終わる『ぼくのなつやすみ』で、特定の手順を踏むと「8月32日」に進めてしまうとか。これが「バグ」です。
 「デバッグ」というのはそうした「バグ」を発売前に見つける作業で、見つけられた「バグ」は報告されて修正されます。そのため「どうしたらバグが起こるのか」をありとあらゆる方法で探さなくてはならないので、バイトを雇ってありとあらゆる方法を試させるのです。発売されたゲームに残っているバグというのは、基本的にはこの「デバッグ」作業ですら見つけられなかったものです(面白いから仕様として敢えて残すものもありますけど)。


hyakuman3.jpg
<画像は『百万畳ラビリンス』上巻 第1畳より引用>

 礼香と庸子は、この「デバッグ」のアルバイトをしている女子大生で。
 特にこの礼香は、「バグ」を見つけるのが大好きで、「バグ」を見つける天才でもあります。


 この礼香の「バグを見つける天才」なところが、『百万畳ラビリンス』の魅力とも言えて……言ってしまえば、「バグ探し」というのは、ゲームを作った人が想定しないことを考える行為なんですね。「誰もいない謎空間」に迷い込んでしまった2人ですが、礼香は「バグ探し」で鍛えた自由な発想で次々と困難を突破していくのです。

 「常人には発想できない奇抜なアイディアで困難を突破する」「常人には理解されない感性ゆえに人とうまく関われない」―――礼香のキャラクターの特性だけを見れば、物語の世界では特に珍しいものではありません。諸葛亮公明のような天才軍師タイプとか、シャーロック・ホームズのような名探偵タイプとか、様々な形で登場します。

 しかし、「軍師だから頭がイイんですよ」「名探偵だから頭がイイんですよ」と言うのではなく、「デバッガーだから他人の盲点を突ける」「そこに楽しさを見出せるからデバッガーなんてことをやっている」というキャラ付けだからこそ、彼女は説得力を持ったキャラクターになっていると思うのです。私達と地続きの世界にいそうなキャラとして感じられるのです。



 礼香はすっごい美人ですし、下着姿や全裸姿になることもあるので「あー、美しや美しや」と拝ませてもらっているのですが。彼女の魅力は単なる外見上の美しさではなく、次はどんな「常人には発想できない奇抜なアイディア」を見せてくれるんだろうというワクワク感と、それと表裏一体の「常人には理解されない感性」とも言える壊れ具合のハラハラ感が混在しているところにあると思うのです。



◇ 超人気イラストレーターの画力によって描かれた世界
 説明が遅くなりましたが、この作品は2013年から2015年に当時の「ヤングコミックチェリー」、後に「ヤングコミック」に名前を戻した雑誌に連載されていた漫画です。作者はたかみち先生。

 たかみち先生……と言ってピンと来るかどうかは人それぞれだと思いますが、一番有名な説明をすれば「コミックLOの表紙を描いている人」です。


 コミックLOという雑誌は、茜新社から発売されている「小さい女のコを好きな人に向けたエロ漫画誌」なのですが。その表紙は創刊号からたかみち先生が担当していて、基本的にはエロではない「少女が普通に過ごしている風景を切り取ったイラスト」になっています。そのイラストの美麗さゆえに、表紙をまとめた画集も発売されているほど高く評価されているのです。

LO画集2-A -TAKAMICHI LOOP WORKS- (FLOW COMICS)
LO画集2-A -TAKAMICHI LOOP WORKS- (FLOW COMICS)


 つまり、超絵が上手いイラストレーターさんが描いている漫画なんです。
 まぁ……「絵が上手い」と言っても、「カラー絵のイラスト」と「白黒の漫画」では表現できるものがちがいますし、絵の上手いイラストレーターさんが描いた漫画を読んだら「読みづれええ」みたいなこともしょっちゅうですし、ましてや「ノスタルジーをこめた現実世界の少女のイラスト」と「謎空間からの脱出を目指す漫画」じゃ方向性が正反対だとも思うんですが。

 「カラーが白黒に」なっても、「現実世界が謎空間に」なっても、「少女が女子大生2人組に」なっても、全く問題ないくらい画力という暴力で圧倒されました。


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<画像は『百万畳ラビリンス』上巻 第7畳より引用>

 トビラ絵を引用するのはちょっと気が引けるのですが……
 たかみち先生の特徴でもある「光と影のコントラスト」も、白黒でしっかり表現されていますし。謎空間の立体的な把握や、そこにしっかり存在するキャラクターのデッサン技術も高く、終始「絵が上手いとこんな漫画が描けるんだなぁ……」と思いながら読んでいました。


 あと、先ほども書いたように礼香さんは頻繁に裸や下着姿を見せてくださるので、画力の高さというのはそういうところでもありがたいですね。




◇ ミステリーでもあり、SFでもあり、大冒険でもあり
 三つのオススメポイント、一つ目は「キャラクター」について語り、二つ目は「画力」について語ったので、三つ目は「ストーリー」について語りたいのですが……これが、ネタバレせずに語るのがとても難しいです。

 私はこの漫画の「ストーリー」がとても好きで、最後のあとがきに「本作はあらかじめ結末までストーリーを決めて制作し、ほぼそのまま描ききることができました。」とあるように、非常に美しく構成されたストーリーだと思うんですね。
 それは「伏線の張り方が上手い」みたいな分かりやすいものだけでなく、情報の出し方が上手いというか、キャラクターがどういう人間なのかをあらかじめここで見せておくことで後の言動に説得力がある―――みたいに1つ1つのシーンがすごく計算されていると思うのです。


 ただ、それを解説してしまうと思いっきりネタバレになってしまいますし。
 それは、この作品の魅力を大きく損なうことだと思うんですね。



 だから、なるべく物語の核心部分に触れないように、自分がこの作品の「ストーリー」で好きなところを考えてみたところ……私はやっぱりこの作品、「大冒険」なところに魅力があると思いました。

hyakuman5.jpg
<画像は『百万畳ラビリンス』上巻 第4畳より引用>

 “ある日突然「誰もいない謎空間」に迷い込んでしまって、そこからの脱出を目指す”という説明だと、『密室からの脱出』的な脱出ゲームを連想する人もいると思うんですが、礼香はこの状況を「オープンワールド」のように捉えているんですね。

 「オープンワールド」の定義はゲーム好きの間でも見解が分かれる難しい話ですが、ゲームにあまり興味のない人にも分かりやすい説明を考えると……脱出ゲームは「作り手が想定する解法を見つけるゲーム」で、(ここで礼香が言っている)オープンワールドのゲームは「どこに行っても自由で、何をしても自由なゲーム」です。

 例えば、最近発売されたオープンワールドのゲーム『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』では、一つの塔の登り方にも、「壁をよじ登る」だけでなく、「風船をたくさん付けて浮き上がる」とか、「思いっきり丸太を吹っ飛ばして自分もその上に乗る桃白白ごっこ」といった様々な方法があります。中には開発チームですら想定しない技を編み出す人もいて、開発チームを悔しがらせたなんて逸話もあるのですが……



 要は、礼香はこの「誰もいない謎空間」を、オープンワールドのゲームのような「大冒険の場所」として楽しんでいるんですね。「次はあっちに行ってみよう!」「次はこんなことをしてみよう!」と、それこそ私達が『ブレス オブ ザ ワイルド』を買って自由に遊んでいるみたいに、礼香はこの「誰もいない謎空間」で自由に遊んでいるのです。

 「どうしてこんな謎空間に閉じ込められてしまったのか」の謎に迫っていくさまはミステリーのような楽しさがありますし、不思議空間が解明されていく展開はSF的な面白さもあるのですが、私はこの作品は「冒険するワクワク感」を与えてくれる漫画だと思うのです。


 そして、重要なのは、そんな大冒険が「全2巻」というコンパクトなページ数に詰め込まれていることです。「何十巻もあるような漫画は読む時間がない」という忙しい人にも、「何十冊も漫画を買うほどお財布に余裕がない」という人にもありがたい「全2巻」ですよ!




 2017年5月27日現在、
 Pixivコミックで1話が試し読み可能ですし、
 ソクヨミだと3話の冒頭まで試し読み可能みたいです。

 興味を持ってもらえたなら、試し読みからでも是非どうぞ!

| 漫画紹介 | 17:52 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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殺人、ドラッグ、オカルト……なのに爽やか群像劇!『ヴォイニッチホテル』全3巻紹介

【三つのオススメポイント】
・南国のホテルを舞台に、様々な登場人物が躍動する群像劇
・本当ならグロイはずなのに、コミカルな作風ゆえに、爽やかさまで感じられる
・風刺と、パロディと、テンポの良さが光るテキスト


[紙の本]
ヴォイニッチホテル 1 (ヤングチャンピオン烈コミックス) ヴォイニッチホテル 2 (ヤングチャンピオン烈コミックス) ヴォイニッチホテル 3 (ヤングチャンピオン烈コミックス)

[キンドル本]
ヴォイニッチホテル(1) (ヤングチャンピオン烈コミックス) ヴォイニッチホテル(2) (ヤングチャンピオン烈コミックス) ヴォイニッチホテル(3) (ヤングチャンピオン烈コミックス)

【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目の有無を、実験的にリスト化しました。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番強くて、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:○(それほど重くはないけれど、人が死ぬ話なのでそれなりには)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:◎(絵柄上そんなにはグロくないけど)
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×


◇ 南国のホテルを舞台に、様々な登場人物が躍動する群像劇
 この作品は、2006年から2015年までヤングチャンピオン烈(隔月誌→後に月刊化)にて連載された道満晴明さんの漫画です。ヤングチャンピオン烈は「ヤング○○」という青年誌の中でも過激寄りの雑誌で、グラビアにはAV女優のヌードが掲載されたりもする雑誌です。
 自分は成年向け漫画はあまり詳しくなくて知らなかったのですが(ホントですよ!?)、道満さんは元々成年向け漫画でも活動している漫画家さんで、そうした漫画家にも積極的に作品を描いてもらおうというヤングチャンピオン烈の方針に合致したということみたいですね。

 でも、一応言っておきますけど『ヴォイニッチホテル』はエロくはないです。
 殺人も麻薬も幽霊も出てくる作品なので、下ネタというか性の話も出てくるくらいで。過激さは、「エロイ」というよりかは「何でもあり」という方向性での過激さです。



 舞台は太平洋南西に浮かぶブレフスキュ島、そこに建つ「ヴォイニッチホテル」を中心に描かれます。
 一応の主人公格として、ヴォイニッチホテルの従業員であるエレナベルナという二人のメイド、日本からやってきてこのホテルに長期宿泊しているクズキ・タイゾウという男の三人がいるのですが……

 その他にも、同じように長期宿泊している日本人の漫画家、日本人の殺し屋、麻薬の密売人、連続殺人犯、それを追う警察、少年探偵団、ホテルのコック、ホテルのオーナー、幽霊、悪魔……これでもかというほど多種多様なキャラクターが登場し、回によって描かれるキャラは入れ替わります。ということで、この作品は!私の大好きな「群像劇」なのですよ!!

 どのキャラも大好きなのだけど、強いて好きなキャラを挙げるならやっぱりアレかなぁ。ロボット刑事かなぁ。アイツが出てくるシーンは全部面白い、ズルイ。



 この漫画を機に、私が「群像劇」を好きな理由を改めて考えてみたのだけど……
 一つには、「一つの出来事を(読者だけは)色んな“視点”から見ることが出来る」というのがあるのかなと思います。
 “視点”となるキャラクターが回によって入れ替わるので、例えば殺し屋が“視点”になる回もあれば、その標的が“視点”になる回もあります。どちらの立場にも読者としては感情移入が出来てしまうし、標的に対して「殺し屋が迫ってるよ!早く気付け!」とドキドキしてるのに、殺し屋に対しては「早くしないと標的に逃げられるよ!急げ!」とワクワクできて、一粒で二度美味しいという。こういうことが全3巻ずっと続くんですね。


 二つ目には、「“視点”となるキャラクターがたくさん出てくるために、話がどう転がっていくのかが全く予想できない」という魅力も群像劇にはあります。
 例えば先ほどの殺し屋の例で言えば、「殺し屋の“視点”でしか進まない話」だったら殺しが成功するか失敗するかなんだろうなという予想が出来てしまいます。しかし、「殺し屋」「標的」「標的のことが好きな人」「標的のことが好きな人を好きな人」といったカンジに“視点”となるキャラクターが増えると、これらのキャラクターがどう作用するのか予想できなくなります。だから、「この後どうなっちゃうんだろう」にドキドキワクワク出来るんですね。


 私は単行本である程度一気に読むことが出来ましたが(最終巻が出るまではしばらく待ちましたが)、これを隔月誌の時から毎号読んでいた人は「早く!早く続きを読ませてくれよ!」とやきもきしていただろうなと思います。そのくらい、後を引いてしまうのが群像劇の魅力なのです。


◇ 本当ならグロイはずなのに、コミカルな作風ゆえに、爽やかさまで感じられる
 先ほど、例え話として「殺し屋」の話を書きましたが……実際にこの漫画には「殺し屋」が出てきます。なので、殺人のシーンもあれば、血みどろになるシーンもあります。
 殺人も十分に犯罪ですが、同じように犯罪描写として「麻薬の販売・購入・使用」なんかの描写も出てきます。舞台が架空の島なだけであって、やりたい放題です。麻薬が切れて禁断症状が起こってしまう描写もあります。
 精神的に病んでいる人間や、自殺しようとする描写もあります。
 もっと言うと、幽霊だったり、ゾンビ(のようなもの)だったりも登場します。


 これ……同じ題材でも、描く人によってはものすごくグロイものになっていたかもなぁって思います。ゲームだったらCEROは高めの年齢推奨にしていたかも知れませんし、ひょっとしたら18歳未満は禁止になっていたかも知れません。血がわんさか出てきますからね。


 ですが、可愛らしい絵柄に、一歩引いたところから描いているような無機質な演出、“不条理”とも言える世界観ゆえにグロさは全然感じないんですね。むしろ、コミカルに見えるし、読んでいる間は爽やかな気分になれます。
 だってさ、島中を震撼させる謎の連続殺人犯の犯行現場にやってきて捜査を開始する警察サイドのキャラがロボット刑事ですからね!世界観どうなってんだよ!と言いたくなります(笑)。


 題材的に、重い話にしようとすれば好きなだけ重く出来た題材だと思うんですよ。
 スペイン軍の侵攻と、植民地時代の話、日系企業が進出しつつも内戦が起こったことでとっとと撤退してしまったことによる反日感情、放置されて荒廃している街並み……「殺人」や「麻薬」が描かれているのならそういう罪の意識の話とか、ロボット刑事がいるのなら「人間とは何か」みたいな切り口にしたっておかしくないと思います。

 でも、この漫画はそういうことはしません。
 作者の信念とか、作者の思想みたいなことを持ち込んだりはしないのです。喋るのはあくまでキャラクターで、行動するのはあくまでキャラクターなんです。極端な話、この作品の中では「殺人は良くない」とすら言いません。ただ、殺す人の人生と、殺された人の人生が描かれるだけ。このフラットさがなければ、もっと重く押し付けがましい話になっていたかも知れません。



 これだけ血がわんさか出てくる話なのに、可愛らしい絵柄の白黒の漫画ゆえにグロさを感じさせず、むしろ爽やかに思えてしまいます。命に対しては冷淡に殺す人も殺される人もたくさん出てくるのに、「人間って捨てたもんじゃないよなぁ」と思えてしまう暖かみもある―――これは作者の作風の力であって、他の人には出来ない芸当だと思います。



◇ 風刺と、パロディと、テンポの良さが光るテキスト
 この漫画、1話1話はとても短いんですね。
 1話6ページとか、8ページとか。終盤はちょっと長くなりますが、それでも12ページとか。

 それが大きく繋がって全体的には破綻なく話が進んでまとまるのも凄いんですけど、それぞれの話は“視点”となるキャラが変わって6ページとか8ページとかで一応の区切りが付くことが多いです。この短いページ数の中で話をまとめるのはよほどの技術がないと難しいと思うのですが、そこはやはり「短編の名手」と呼ばれた道満晴明さん。短いページ数でも1話・1話が面白いんです。


 1ページの中に、ゴチャゴチャさせずにコマ数を多く押しこめる技術とか。
 そのコマの中に必要なキャラを必要なポーズで描ける技術とか……そういうところももちろん目を見張るのですが、“1話・1話が面白い”最大の理由としては「台詞の面白さ」が大きいかなぁと思います。 


 「何でもあり」な世界観ゆえに、風刺も、パロディも、下ネタも「何でもあり」で―――それらがテンポ良く、それでいてクドくなく使われていて、数ページに1度はクスリと笑わされるからこそ1話・1話が面白いんですね。



 しかし、それを「紹介記事」で説明するのは難しいのです!
 流れを無視してその部分だけ切り取ってテキストで紹介したってその面白さは伝わらないし、ネタバレになってしまいます。だから、「面白い」以上に説明のしようもないのですが……方向性だけ言っておくと、個人的にはやっぱりロボット刑事のロボットネタと、少年探偵団のやり取りが好きだったかなぁ。


 あと、テキスト関係ない話だけど、女のコの漫画的な動きの可愛さなんかも特筆すべきところ。アリスの愛くるしさと言ったら!姉妹の話もすごく良かったなー。


◇ 総評
 全3巻と一気に読むにも負担のかからない長さで、それでいてたくさんのキャラクターのそれぞれの生き様が見られる傑作だと思います。群像劇好きならば、是非是非!

 殺人・麻薬・性の話と苦手な人は苦手かも知れない題材も取り込んでいる「何でもあり」な作品なので、そこに抵抗感がある人もいるかも知れませんが……ですが、私はこの作品を「ブラックな漫画」だとは思わないんですね。人間の欲をコミカルに、スリリングに描いて、多くの人が楽しめるエンターテイメントにしてしまっている、とてつもないバランス感覚の作品だと思います。
 「何だこの世界観は」という出だしだけど、不条理さとか意味不明さとかは皆無で、最後まで読んだ後に1巻から読み直しても「やっぱり良く出来ているなー」と感心する見事な構成になっています。

 大好きな作品です。オススメ!


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道満晴明


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| 漫画紹介 | 17:51 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

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どのゲームハードも愛おしくなる!『P.S.すりーさん』1~4巻紹介

【三つのオススメポイント】
・激動だった2006年~2012年のゲーム業界を切り取った作品
・擬人化したからこそ、彼女達の健気さに心を打たれる
・変なキャラ達と、4コマ漫画としての上手さ


<紙の本>
P.S.すりーさん (GAME SIDE BOOKS) P.S.すりーさん・に (GAME SIDE BOOKS) (ゲームサイドブックス) P.S.すりーさん・さん (ゲームサイドブックス) (GAMESIDE BOOKS) P.S.すりーさん・よん (GAME SIDE BOOKS) (GAMESIDE BOOKS)

<キンドル本>
P.S.すりーさん P.S.すりーさん・に P.S.すりーさん・さん P.S.すりーさん・よん

○ 激動だった2006年~2012年のゲーム業界を切り取った作品
 この漫画紹介は基本的に「完結した作品」を紹介してきた記事で、『P.S.すりーさん』に関しては明確に4巻が最終巻だとはされていないみたいなのですが(カラーページに「END」という文字は書かれている)……2012年の4巻発売以後は音沙汰がなく、企画されていた続編も頓挫されてしまっているみたいです。

 事情はよく分からないのですが、とりあえず4巻までで「PS3発売の2006年」~「Wii U登場の2012年」を網羅したとも言えて、個人的にはこれが良い一区切りだと思ったので紹介することにしました。もちろん続きや続編が描かれたのなら追いかける気は満々ですけど。


 この漫画は、元々『IKaのマホ釣りNo.1』さんというブログで描かれた4コマ漫画に、大量の描き下ろしや、雑誌その他で連載されたスピンオフ作品などをまとめた本です。ブログに掲載されている「本編」は今でも無料で読めますんで、こちらのセットからどうぞ。

 内容は、「PS3」や「Wii」と言ったゲームハードをアイドルに擬人化して、彼女らの奮闘を描く4コマ漫画です。一応公式には「登場人物に特定のモデルはいない」ということになっているみたいですが、紹介記事を書く立場からすると「ゲームハードの擬人化だよ」と言わないとオススメのしようもないので(笑)。

 記念すべき1本目が公開されたのは、2006年の11月。
 PS3が発売された月ですね。

 現在のところ公開されている最後の1本は、2012年の7月です。
 Wii Uがこれから発売されるという時期で、「うぃーゆーさん」と「ぱっどさん」の二人が登場する話です。


 つまり、ちょうどPS3やWiiが発売された「2006年末」から、その次の世代機であるWii Uが登場する「2012年」までに描かれていた作品ということで―――PS3やWiiやXbox360が活躍したこの激動の6年間を切り取った漫画になっているんですね。
 ブログという媒体の特性上「(ゲーム業界にとっての)時事ネタ」が多くて、「時事ネタってリアルタイムで読む分には面白いけど数年経ったら微妙じゃない?」と思う人もいるかも知れませんが、私は逆に「この漫画を読むと激動だった6年間を思い出すことが出来て面白い」と思うんですね。

 今回、私は家にあった紙の本を自炊して1巻から読み返したんですけど……1巻のネタなんかは本当に懐かしいですよ。「ヘブン状態」とかね。当時を知っている人ならば「あったなー、そういうの」と思い出してニヤリと出来るネタが満載です。

 また、リアルタイムに描かれたからこそ、「作者の思わぬ方向に進んでしまった面白さ」を切り取れたとも言えて―――
 例えば、2007年2月に描かれた40本目は、すりーさんが『ガンダム無双』を歌わされるという話です。2007年3月1日にPS3専用ソフト『ガンダム無双』が発売されるというのが元ネタなのですが……

 2007年5月に描かれた53本目は、はこまるさんが『ガンダム無双』を歌っている様をすりーさんが眺めるという話になっています。これは『ガンダム無双』が海外ではXbox360版も発売されることが発表されて(実際に発売されたのは2007年8月、12月には日本でも『インターナショナル』がXbox360で発売されました)が元ネタです。
 今では信じられない話ですけど、当時のPS3はソフトが少なく、『ガンダム無双』はその中でも「PS3でしか遊べないゲーム」として非常に貴重な存在でした。そんなソフトのXbox360版が発表された時の気持ちがあのすりーさんの表情に表れているのです。

 で、オチが付くのは2008年1月に描かれた74本目。その『ガンダム無双』を、まさかのお姉ちゃんであるつーさんも歌わされるという話です。これはその『ガンダム無双』が『ガンダム無双 Special』として2008年2月にPS2専用ソフトとして発売されたことが元ネタです。
 当時のあの「お、おぅ……」という感情はなかなか文章にはしづらいのですが、「時事ネタを扱う4コマ漫画」という形で一気に読むと当時の感情を追体験できるのです。


 これはほんの一例です。
 この他にもこうした「当時を思い出させられる話」がたくさん詰まっていて、単行本には元ネタが分からない人用に詳しく解説が書かれていて、これを読むのも面白いです。Wikipediaを読むだけでは分からない当時の空気感がここにあるので、これはもうゲーム業界にとって貴重な資料と言ってイイと思います!

 惜しい点があるとすると……
 このブログでの4コマ漫画が人気になって、単行本を出すことになって、その続刊がどんどん出るようになって、描き下ろしやらその他媒体での連載やらの作業に作者が追われるようになってしまって、「本編」とも言えるブログに描かれた4コマは少なくなってしまうんですね。
 もちろん「描き下ろし」や「その他の連載」も面白いんですが、ブログに4コマ漫画をガンガン投稿されていた頃に比べて「リアルタイム感」というか「時事ネタのタイムリーさ」がなくなってしまっていったのは残念です。

 人気になることが、作品にとって必ずしも幸せなことではない―――と思い知らされた一件でした。


○ 擬人化したからこそ、彼女達の健気さに心を打たれる
 「どのゲームハードを買うのか」に悩んだり、「自分の買ったゲームハードを信奉する」あまりに他のハードを憎んだりということは、最近に限った話ではありません。スーパーファミコンに対するメガドライブやPCエンジンだって、プレイステーションに対するNINTENDO64やセガサターンだって、それぞれのハードの所持者には複雑な想いがあったものです。
 「ドラクエがセガサターンで出るって話だったからサターンを買ったのに、プレステで出るだなんてエニックスは絶対に許さん!」って言っていた友達がいたっけかなぁ……


 しかし、Xbox360・PS3・Wiiの世代は、そうした各ハード所持者の感情がインターネット上に蓄積されるようになったこともあるし、それぞれ違った特徴を持ったハードだったために「完全勝者」のいない世代だったし、それ故に「こっちのハード独占と発表されていたのに後からマルチ化が発表」とか「こっちのハード独占で発売された1年後に別のハードで完全版が発売」みたいなことが頻出して憎しみも膨れ上がり、ネット上で「ゲームハードの話をする」のは「政治思想を語る」ことくらいの炎上案件になってしまいました。


 『P.S.すりーさん』という漫画は、こうしたゲームハードを単に擬人化しただけでなく、「アイドル」として描いているのがポイントだと思うのです。
 熱烈なファンに支えられていること、売れるアイドルと売れないアイドルに明暗が分かれること、アイドル自身は仕事を選べないこと、“偉い人”の判断でいつかは引退しなければならないこと、その短いアイドル生命を必死に生きていること―――「ゲームハード」と「アイドル」は非常に似た存在で、それが絶妙に風刺になっているところもあれば、でもこの作品で描かれているのは「どのアイドルだって一生懸命でファンに愛されているように、どのゲームハードだって愛すべき存在なんだ」ということだと思うのです。

 作品には現役世代だけでなく過去のハードのキャラも多数登場するのですが、それらのキャラは「かつてのアイドル」として登場します。彼女らも、かつてはすりーさんやうぃーさんやはこまるさんのように現役バリバリのアイドルだった。そうした姿を見せることで、作品に奥行きが生まれているのです。
 自分にとって印象的なキャラは、やはりどりきゃすさんかなぁ。苦しい時期のすりーさんが、小さなライブハウスで頑張っているどりきゃすさんのライブを観に行く回が好きです。これは、セガがハード事業を撤退した後もドリームキャストは長く愛され、2007年まで新作ソフトが発売されたことが元ネタなんですが……こうした姿を見ると、どんなゲームハードだって必死に生きているし、そのハードによって救われているファンがいるのだと思えます。


 だから、私はこの『P.S.すりーさん』という漫画をゲームハードの論争に利用しようとする人達を好きになれませんし、この作品が「どのゲームハードが勝ったか」みたいな話をしなかったことを批判する人達を好きになれません。
 この作品が描いてきたことは、「カレーせんべい」が1枚あればすりーさんはそれを支えに頑張れたということじゃないですか。普及台数がどうのとか勝者がどうのみたいな話で締めくくったら、それこそこの漫画が大切に描いてきたものが全部台無しになってしまいますよ。


○ 変なキャラ達と、4コマ漫画としての上手さ
 とは言え、単に「業界を切り取った」だけの「擬人化したキャラの漫画」だったなら、そんなにオススメ出来る漫画ではなかったと思います。この作品の魅力は、たくさんあるゲームハードを個性的なキャラに仕立ててしまったことと、不条理系とも言える4コマ漫画の上手さゆえにだと思います。つまり、ゲーム業界ネタどうこうだけじゃなくて、普通に4コマ漫画として面白いんです。


 自分の好きなキャラは、やはりつーさん。
 すりーさんのお姉ちゃんで、全世界で普及したPS2がモデルのキャラです。

 トップアイドルでありながら妹想いのお姉ちゃんと、そんな姉を持つが故の重責を背負ってしまっている妹の、姉妹愛の物語として自分はこの漫画が好きなんです。4巻を最終巻と考えるのなら、この漫画の主人公はつーさんだったのかなぁと思わなくもないです。


 あと、他のキャラだと作者のお気に入りであろうせがさんのワケの分からなさも良いです。この漫画は4コマ漫画としては「1コマ余った」みたいなネタをぶちこんでくるので“不条理系”とも呼ばれているのですが、それを何となく許してしまうのはセガさんというかセガの人徳だよなぁと思ったり。
 すりーさんやうぃーさん等のゲームハードはアイドルとして登場しますが、せがさんやこーえーさんなどのゲームメーカーはプロデューサーとして登場します。アイドルに曲を提供する立場ってことですね。せがさんは常にワケの分からないようなことを言っているバカキャラのようでいて、長く業界にいて色んなアイドルをプロデュースしてきて、その無念な姿を見てきたという背景があるから深みがあるんですよね。

 先ほどは“不条理系”と書きましたけど、スタンダードな4コマ漫画から、幾つかの話が繋がっている4コマ漫画や、切ない話・泣ける話もあるし。4コマ漫画として非常にバリエーション豊かで、技術があるなぁって思います。



○ 総評
 ゲームハードを元ネタにした漫画ですが、「ゲームハード論争とかもう見たくない……」という人にこそ手に取ってもらいたい優しい漫画です。決して「どのハードが優れているか」とか「どのハードが勝ったのか」みたいな作品ではなく、「どのハードだってみんな頑張っているんだ」と描いている作品なんです。

 ゲームの話題が殺伐としてしまったあの時期に、こうした作品があったことは奇跡だと思っていますし、自分も随分と救われました。コメント欄が目も当てられない状況になった時も、この漫画に出てくるキャラクター達を思い浮かべて「ゲームハードに罪はないんだ」と自分に言い聞かせていたほどです。


 「ゲーム業界とか全然興味ないや」という人が読んで楽しめるかというと、流石にそれはちょっとと思いますが……ゲームが大好き&どのゲームハードも応援しているって人は「2006年~2012年のゲーム業界を切り取った作品」として保管しておいて、10年後・20年後に読み返してみるのも面白い作品だと思います。

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生活感のある百合に悶える。『星川銀座四丁目』全3巻紹介

【三つのオススメポイント】
・これぞ文句なしの「禁断の愛」
・一緒にゴハンを食べて、お風呂に入って、寝る―――同棲だから描けるもの
・金髪・碧眼のスーパー美少女・乙女ちゃんが心底かわいい


<紙の本>
星川銀座四丁目 (1) (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ) 星川銀座四丁目 (2) (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ) 星川銀座四丁目 (3) (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ)

<キンドル本>
星川銀座四丁目 1巻 まんがタイムKRコミックス 星川銀座四丁目 2巻 まんがタイムKRコミックス 星川銀座四丁目 3巻 まんがタイムKRコミックス

○ これぞ文句なしの「禁断の愛」
 百合漫画です。
 この漫画は、芳文社の百合を題材にしたアンソロジー集「つぼみ」にて2009年~2012年に連載されていた作品です。作者は『少女セクト』で知られる玄鉄絢さん。『星川銀座四丁目』自体は“成人向け”ではありませんが、成人向けで活動していた漫画家さんなので、『星川銀座四丁目』にも多少の性的な描写はあります。


 さて……この作品を語る前に、「百合」について語っておきます。
 「恋愛」を題材にストーリーを作っていくとしたら……どういうカップルを描くのであっても、「何かを乗り越える」要素が必要というのが私の持論です。言い換えると、「乗り越えられないもの」を作者が用意して、キャラクター達が「それを乗り越える」からこそストーリーが成り立つと私は思うのです。

 例えば……片想いの女のコに告白をして、付き合う。
 これも立派に「片想いを乗り越える」ストーリーとして成り立ちますし。

 彼氏の元カノが現れて、恋人関係が気まずくなる。
 これも「三角関係を乗り越える」ストーリーになりますし。

 お互い結婚しているのに、好きになってしまった不倫カップル。
 これも「イケナイ関係を乗り越える」ストーリーになるのです。


 もちろんこの「乗り越えられない障壁」が高ければ高いほどストーリーは盛り上がりますし、それを乗り越えた後に結ばれた主人公達のカタルシスは大きくなります。これ、実はバトル漫画における「敵が強ければ強いほど盛り上がる」のと構造的には一緒なんじゃないのかと私は思っているのですが。

 それはさておき、「百合」です。
 「百合」というのは「女性同士の恋愛」を題材に描く作品のことです。これも「恋愛」を題材にした作品なので、「同性愛を乗り越える」ストーリーになると言えます。それ故に、しばしば“禁断の愛”という決まり文句のようなキャッチフレーズが使われます
 「相手は同性の友達としか思っていないのに、好きになってしまった……」という片想いだったり、「女のコ同士で付き合っているってバレたらどうしよう……」というカップルだったり……“本当は女性同士で恋愛はしてはいけない”という社会のルールが「乗り越えられないもの」として立ちふさがってストーリーになるので、“禁断の愛”という表現がされるのだと思います。


 「それはイヤだ」と言う人の気持ちも分かります。
 もちろん“禁断の愛”という表現をしたからといって、本当に女性同士の恋愛が禁じられているワケではなく、「それを乗り越えて恋愛をする主人公達」を描くのだから―――ヒーローもののキャッチフレーズが「地球滅亡の危機!」なのに、実際には地球を救って滅亡しないみたいな話だとは思うのですが……

 そもそも、“本当は女性同士で恋愛はしてはいけない”というルール自体に違和感があるって人も多いと思うんですよね。実際の同性愛者の人や、友人・知人にそういう人がいるって人だけじゃなくて……
 例えば、私は「女のコ同士でイチャイチャするアニメ」をしょっちゅう観ているので、「女のコ同士はイチャイチャするのが当たり前だ」という脳内ルールが出来上がっていて……イザ百合漫画を読んでみて「相手は同性の友達としか思っていないのに、好きになってしまった……」というシーンがあっても、「別にイイんじゃないの?」としか思えないんです(笑)。


 これ、考えてみると皮肉なもので……
 同性愛を許容する世の中になればなるほど、「同性愛」を題材にした恋愛のストーリーは作りにくくなるんですよね。それだけでは「乗り越えられないもの」にならなくなってしまうので、別の「乗り越えられないもの」を用意する必要が出てくるのです。


 ということで、『星川銀座四丁目』です。
 この漫画は百合を題材にしたアンソロジー集に連載されていたくらいなので、「女性」と「女性」の恋愛を描いているのは当然なのですが……この漫画の主人公二人は、実は「大人」と「子ども」です。
 へー、年の差の百合カップルかーと思ったら、それだけじゃなくて「小学校の先生」と「小学校の生徒」です。ほー、それはかなりの“禁断の愛”だなーと思うのは早くて……この「小学校の生徒」は家庭に問題があったために「小学校の先生」が里親制度で引き取ろうとしているので、「親」と「子」でもあるんです。

 つまり……この漫画の主人公二人は、

・「女性」と「女性」
・「大人」と「子ども」
・「先生」と「生徒」
・「親」と「子」


 “禁断の愛”の4乗なのです!!
 「親」と「子」だから二人は一緒に暮らしているけど、恋愛感情が芽生えてしまっていて、でも手を出してしまえば終わってしまう関係なのです。女のコ同士の恋愛を見慣れてしまって、「女のコ同士で付き合っても別にイイんじゃないの?」と思ってしまう私でも、「これはマズイな!」と思うドキドキ感がたまらないのです。



○ 一緒にゴハンを食べて、お風呂に入って、寝る―――同棲だから描けるもの
 「親」と「子」が主人公なので、二人は一緒に暮らしています。
 「親」「子」だけど、百合目線で考えれば同棲百合カップルです。

 だから、物語の舞台の多くは「家の中」になり、そこでの生活を描いていくことになります。どうして「小学校の生徒」を引き取って育てようとしているかにも“FOOD理論”的な理由があるのですが、この漫画自体が生活を描いていくことをものすごく重視していると言えます。

 ゴハンを食べる。そのために、ゴハンを作る。
 そのために、商店街で買い物をする。
 お風呂に入る。
 寝る。

 誰だってする「当たり前のこと」も、好きな人と一緒にするからトキメキが生まれる―――というのを大切に描いているんですね。
 いや、なんかすごくキレイな話のように紹介していますけど……小学生と一緒にお風呂に入って、小学生の裸にドキドキしてしまう若い女教師なんて、ニヤニヤせずには見られないじゃないですか!
 「普通の親子はこうするんだよ」という口実を作って、帰ってくる度にハグをするところもすごい好き。


 こんなに好きで、こんなに近くにいるのに、絶対に手を出してはいけない―――衣食住をしっかり描いて、この二人の日々の生活を読者に感じさせることが出来ているからこそ、このドキドキ感が伝わるんだと思いますし。
 これはこの作品が「同棲カップル」を描いているからこその魅力だと思います。


○ 金髪・碧眼のスーパー美少女・乙女ちゃんが心底かわいい
 心底かわいい。
 小学生と言ったらそれだけでかわいいものかも知れないけど、この漫画の主人公の一人:乙女ちゃんはそんな次元じゃなくかわいい。小さくて、細くて、サラサラの金髪に、豊かな表情、芯の強さに、一途な想い―――と、何ともまぁ、かわいさの塊のようなコ。

 きっと先生の趣味なんだけど、着ている服もいちいちかわいいし、髪型のアレンジもかわいい。かわいいかわいい書きすぎて「か」「わ」「い」「い」という文字の組み合わせがゲシュタルト崩壊を起こしそうなほどかわいいです。


 しかし、この漫画……
 「つぼみ」発売のタイミングと、作中の時間を合わせて描いているので……スタート時が小学5~6年生だった乙女ちゃんも、どんどん成長していきます。「小学生のままでイイのに!」「ずっとこの愛らしい乙女ちゃんを見ていたかったのに!」という気持ちも正直あるのですが……

 でも、子どもって油断するとどんどん大きくなるし、これってよくよく考えてみると「早く乙女に大人になって欲しい」という先生の気持ちを表しているようにも思うんですね。大人になれば堂々と付き合えるのに、なかなかそうならない―――そのもどかしさを描くために、「成長する子ども」をしっかり描こうとしているのかも知れません。


 また、かわいいかわいい子どもだった乙女ちゃんが、少しずつ「女」になっていくのもドキッとするんですよ。身も蓋もない表現をすると「エロイ」。周りからもそういう目で見られるし、乙女ちゃん自身にも性欲が出てくるようになって……枕のシーンは破壊力抜群でした。


○ まとめ
 ということで、お気に入りの百合漫画です。
 電子書籍を利用するようになってから、「置き場所に困らない!」と百合漫画をよく読むようになったのですが……その中でもトップクラスに好きな作品でした。

 そんなに急スピードで成長しないで欲しいという気持ちも正直あったのですが、それを惜しいと思うくらい自分の中に「この二人」への愛着が大きくなっていたんだなぁと思います。それくらいお気に入りの作品です。


 「百合」というだけでイヤな人はいるだろうし、“禁断の愛”の4乗なので眉をひそめる人もいるかもだけど……テンポもイイし、爽やかな読後感があるし、割とライトな百合初心者にもオススメできる一作じゃないかなーと思います。多分。乙女ちゃんかわいいし(ゲシュタルト崩壊)。

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クリエイターかサラリーマンか。『テレキネシス 山手テレビキネマ室』全4巻紹介

【三つのオススメポイント】
・「昔の映画」を題材にした、「昔の映画」に詳しくない人に向けた漫画
・クリエイターでもあり、サラリーマンでもある「テレビ局の社員」の物語
・1話完結で読みやすい、けど大きな流れもある漫画


テレキネシス 001―山手テレビキネマ室 (ビッグコミックス) テレキネシス 002―山手テレビキネマ室 (ビッグコミックス) テレキネシス 003―山手テレビキネマ室 (ビッグコミックス) テレキネシス 004―山手テレビキネマ室 (ビッグコミックス)


○ 「昔の映画」を題材にした、「昔の映画」に詳しくない人に向けた漫画
 久々の漫画紹介です。
 とある記事を書くために、どうしても1話だけ読み返さなきゃ……と本棚の奥から引っ張り出してきたところ、ついつい他の話も読みたくなって全巻読破してしまいました。

 昔好きだった漫画って、何年も経ってから読み返すと「あれ……記憶にあるより面白くないなぁ……」と思うことが多いです。年齢を重ねることで好みも変わるでしょうし、思い出は美化されますし、それはそういうものだと私は割り切っているのですが。この『テレキネシス』は数年ぶりに読んでも、リアルタイム時と同じくらい面白かったし、今だからこそ分かることも多かったです!


 この漫画は2004年~2007年にビッグコミックスピリッツに不定期連載されていた作品で、全4巻で完結です。この記事を書いている2014年10月14日現在、どうもこの漫画の電子書籍はどこででも出ていないみたいですね……名作なのに勿体ない。

 作画は『金魚屋古書店』の芳崎せいむさん。
 原作は“浦沢直樹のブレーン”として有名な長崎尚志さんのペンネーム「東周斎雅楽」。


 なので……「題材が映画になった『金魚屋古書店』」とか「舞台がテレビ局の『MASTERキートン』」と言えば、分かる人には分かりやすいと思うのですが。それらの作品を知らない人だってたくさんいるよね、というのがウチのスタンスなので。「○○みたいな作品」という説明を敢えて使わないで説明しようと思います。


 主人公は、関東大手の民放テレビ局「山手テレビ」の社員:東崋山と野村マキノ。
 担当する番組は、「金曜深夜テレビキネマ館」―――昔の映画を放映する深夜番組です。ドラマ制作をしたくて山手テレビに入ったマキノは、ドラマ制作でも映画制作でもなければ、ゴールデンでもない深夜番組の担当になることにショックを受けるのですが……

 出会った東崋山という男。
 「昔の映画」に詳しいだけでなく……悩んでいる人や傷ついている人に、相応しい「昔の映画」を見せることで前を向かせることが出来る人で、その崋山の姿を見てマキノも変わっていきます。言ってしまえばこの作品、悩んでいる人や傷ついている人を応援していく作品なのです。


 なので、この作品の各話タイトルには『風と共に去りぬ』や『めぐり逢い』などの「昔の映画」のタイトル名が付いていて、その映画の話が出てくる1話完結のストーリーになっているのですが―――――「昔の映画」に詳しくないと楽しめないなんてことはなく、むしろ「昔の映画」に詳しくない人に向けた漫画となっています。
 主人公の片方である野村マキノが「昔の映画」に詳しくない新人なので、読者はマキノ視点によって「昔の映画」のことを知ることが出来るのです。だから、別に読者も「昔の映画」に詳しくなくて全然構わないのです。

 私も、この漫画の中に出てくる「昔の映画」で以前から観たことがあった映画は多分1~2本だけで。この漫画に出てきたことで興味を持って観てみた映画は何本もあります。そういう意味でも、「昔の映画」の入門作品としても楽しめるんじゃないかなーと思います。


○ クリエイターでもあり、サラリーマンでもある「テレビ局の社員」の物語
 私がこの漫画に出会った頃は、ちょうど私自身が漫画を描き始めようかと思っていた時期なので……この漫画を「クリエイター達を応援する漫画」として捉えていました。

 テレビ局も、コンテンツを作る場所ですからね。
 ドラマを作る人、バラエティ番組を作る人、報道番組を作る人―――この漫画には様々な“クリエイター”が出てきて、彼ら彼女らが傷つき悩み、それでも前を向いていく姿が描かれています。また、題材となる「昔の映画」だって監督やら俳優やらの様々な“クリエイター”が作り上げたもので、その姿が現代を生きる登場人物達と繋がってくることで、自分自身にも創作する勇気が湧いてくるものでした。


 しかし、今……冷静になって全巻を読んでみると、この漫画を「クリエイター達のための漫画」と評するのは一面的だったなと分かりました。テレビ局の社員は、“クリエイター”であり“サラリーマン”なんです。

 彼らは大組織の中で生きている。
 「面白いものを作れば許される」ワケではなく、人と人との繋がりがあって、予算があって、査定があって―――という中で生きているのです。主人公の一人:東崋山が、ドラマ作りには天才的な才能を持っていたのだけど、組織の中ではなかなか生きられずに「深夜に映画を放映する番組」に異動させられてしまったキャラですからね。

 この漫画のキャラクター達は……そうした“クリエイター”なのに、“サラリーマン”だからこその悲哀を持っていて。そうした微妙なバランスを描いている、「サラリーマンを応援する漫画」でもあったことにようやく気付きました。



○ 1話完結で読みやすい、けど大きな流れもある漫画
 この辺は、今なら……なるほど『MASTERキートン』っぽいと思う話なのですが、前述したようにウチのブログは「MASTERキートンを知らない人」にも分かるように書くスタンスなので。そういうスタンスで説明していこうと思います。

 この漫画は、構成としては「1話完結」のストーリーです。
 その回で話が決着して、次の回ではまた全然違うストーリーが始まるし、それぞれの回に違うキャラクターが登場します。なので、すごく読みやすい。ちょっとした飽き時間に「1話だけ読もうっと」と、ちょっとずつ読みやすいのです。1話の長さも大体同じだから1話を読む時間が計算しやすいですし、次はもう別の話だから後を引くこともないという。

(関連記事:「続きが気にならない」型エンタテイメント


 ただ……一気に読むと分かる話の繋がりも、なくはないストーリーでもあるんですね。
 この回で左遷された人が、ここでまた出てきたり。ここで名前が出てきた人が、後に登場する人だったり。同じキャラが出てくることで、テレビ局という“組織の中の話”だとカンジさせられる―――というのは、サラリーマンとしてのテレビ局社員を描くこの作品においては重要な要素だと思います。



 それと。
 あんまり書くとストーリーのネタバレになっちゃうので躊躇われることなのですが。この漫画のストーリーを引っ張る推進力には二つあって。

 一つは、東崋山が探している「父親の遺作」の行方。
 ドラマ部から映画放映の深夜枠に飛ばされても、まだ崋山が山手テレビにしがみついている理由は、父親が最後に撮ったテレビ作品『国民の手品師』のフィルムを探しているから―――で。どうして崋山がこのフィルムを探しているのか、このフィルムが何処に行ったのか、このフィルムを崋山は見つけることが出来るのか、という興味で視聴者を惹きつけるのです。

 そして、もう一つはマキノの成長です。
 ドラマを作りたくて、山手テレビに入って、でも映画を放映する番組にまわされて、「マスコミの最前線」とは縁遠いところに追いやられてしまったマキノが……この場所で、何を学び、どう成長するのかという物語でもあるのです。
 “クリエイター”になりたくて、でも“サラリーマン”だから望まぬ部署に配属されて、という主人公の成長物語は……誰もが望んだ人生を歩めるワケではない世の中で、その中でも必死に生きている人達への励ましにもなっていて。これが描けているからこそ、この作品の「最後の一ピース」が埋まったのだと思うのです。


○ 総評
 ということで、自分にとっては大好きな漫画なので「今更紹介するまでもない」と思っていたのですが……Amazonのレビューも3~4件しか付いていなくて、『金魚屋古書店』なんかと違って電子書籍化もされていないし。

 「あれ?ひょっとしてこの漫画ってマイナーなのか……?」と思い、今更ですけど応援の意味を込めて紹介記事を書きました。全4巻だからそんなに量ないし、1話完結だから読みやすいし、みんな読むとイイさ!

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後悔を背負って生きる者の物語。『銀河パトロール ジャコ』全1巻紹介

【三つのオススメポイント】
・「これぞ鳥山明の漫画!」という世界観
・過去を変えようとする主人公「大盛博士」が何を意味するのか
・徹頭徹尾ムダのない“完成度の高いエンターテイメント作品”


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○ 「これぞ鳥山明の漫画!」という世界観
 この漫画は2013年7月から週刊少年ジャンプに短期集中連載された鳥山明先生の最新作です。自分はもうしばらく少年ジャンプ本誌を読んでいないので、この漫画のことも知らなかったのですが……入院している父に兄が差し入れていたのを見て、自分も借りて読んでみました。

 すんげえ面白かったです。
 「これぞ鳥山明先生の漫画だぜ!」と唸ったほどに。

 恐らく私が紹介するまでもなく御存知の方も多い作品でしょうけど、作品を御存知の方には「やまなしがこの漫画のどこをススメるのか」を楽しんでもらえればなと思って書きます。ネタバレはなるべくしないように紹介するので、みなさんもコメント欄などで物語の核心部分には触れないようにお願いします。



 「鳥山明」という漫画家に対してどういうイメージを持っているかは、恐らく世代によってちがうんだろうなと思います。『Dr.スランプ』のイメージの人も、初期『ドラゴンボール』のイメージの人も、後期『ドラゴンボール』のイメージの人も、漫画は一切読んだことがなくて『ドラゴンクエスト』のモンスターの絵を描いている人だって認識の人もいらっしゃることでしょう。

 私もこの作品を読むまでは、どうしても後期『ドラゴンボール』のイメージが強かったので、すっかり忘れていました。鳥山明という超天才は、“世界を魅力的に描く天才”だったのだ―――と。

 メカを“メカっぽく”描き、背景にも動物達を描きこむことで“背景”が“舞台”になり、どの角度からも空間を描くことができるデッサン力を持っていて……その技術の高さと描き込みの細かさにより、魅力的な世界を作り出していた漫画家だったと思うのです。


 後期『ドラゴンボール』は確かにバトル漫画家としてのイメージが強くなっていましたが、初期の短編~『Dr.スランプ』~初期『ドラゴンボール』は“魅力的な世界を描く人”という認識で作品が楽しまれていたと思うのです。
 『Dr.スランプ』はペンギン村が非常に魅力的に描かれていて「あの村が大好きだ!」と思わせられたし、初期『ドラゴンボール』はそこから更に進んで「何も知らない主人公:孫悟空が世界を冒険して世界の魅力を知っていく作品」でしたものね。



 この『銀河パトロール ジャコ』も、まさにあの頃の鳥山明先生の作品にワクワクさせられた気分を思い出す作品でした。メカも、動物も、都会の賑やかさも、自然の美しさもしっかり描かれていて、この世界に入り込まされてしまうのです。
 こういう作品を描かせても、やはりレベルがとてつもなく高いですね。



○ 過去を変えようとする主人公「大盛博士」が何を意味するのか
 自分がこの漫画を「すごく好きだ」と思ったのはこの部分です。
 この漫画の主人公は、一応名目上は「凶悪宇宙人から地球を守るために送り込まれた銀河パトロール隊員:ジャコ」なのですが……自分はやはりこの漫画の主人公は、「ジャコが出会う地球人:大盛徳之進」だと思うのです。

 大盛博士は67歳のおじいちゃん。
 元々は時空工学の権威でタイムマシンの研究を島で行っていましたが、大事故により妻やスタッフを多数失い、タイムマシン研究も凍結してしまいます。その後悔を背負った大盛博士は島に残り、たった一人でタイムマシンの開発を続けるのです。死なせてしまった妻やスタッフ達を、過去に戻って救うために。


 つまり、大盛博士というキャラは「死んでしまった者達のために過去を改変しようとしている」キャラなんです。



 こういうキャラ自体はそれほど珍しいキャラではないかも知れません。
 しかし、この作品におけるこのキャラというのは、実はダブルミーニングになっていて。詳しくは核心部分のネタバレになるので書きませんけど、大盛博士というキャラは鳥山先生自身であって、この物語は鳥山先生自身が「過去を改変すること」に向き合って描いた物語じゃないかと思うのです。

 そういう視点で考えれば、このダブルミーニングが作中でどういう結末を迎えるのかの意味が更にちがって見えるんじゃないかと思いますし。同じようにたくさんの後悔を抱えて生きている私達に対して、非常に優しい結末だったなと思うのです。



○ 徹頭徹尾ムダのない“完成度の高いエンターテイメント作品”
 『ドラゴンボール』は超長期連載になってしまった上に、後期の人造人間編や魔人ブウ編は路線変更・設定変更・伏線無視が目に付くこともあって……「鳥山明という漫画家は行き当たりばったりでストーリーを描いている」みたいな認識の人もいるんじゃないでしょうか。

 しかし、このブログで散々書いてきたように、『ドラゴンボール』ってものすごくよく考えられているストーリーなんですよ。「○○編」ごとに飽きさせない工夫、盛り上げる工夫がしっかりされているという。

(関連記事:『ドラゴンボール』におけるインフレバトルの葛藤
(関連記事:天津飯にはどうして「かめはめ波が効かない」のか?
(関連記事:「ピッコロ大魔王」編の衝撃は半端なかった
(関連記事:ベジータは誰に敗れたのか?
(関連記事:コルド大王は“旧世代の象徴”だったのだと今更ながらに気付きました
(関連記事:真にセルを倒したのは誰だったのか


 この『銀河パトロール ジャコ』は最初から短期集中連載とのことで「10+1話」と決まってのストーリーですから、ものすごくキレイにまとまっていて、序盤の何気ない描写が後半にしっかり活きてくるところが多いです。
 ムダなシーンのないコンパクトにまとめられた良質なストーリーになっているのです。『Dr.スランプ』なんかは1話完結の話が多かったですし、元々短編がものすごく上手い漫画家さんだったのでしょうしね。


 それでいて、やはり鳥山先生は生粋のエンターテイナーなんです。
 読者を楽しませる、ワクワクさせる、ドキドキさせる、スカッとさせる―――それが最優先で、確かにダブルミーニングで考えさせるところがないワケでもないのですが、そんな小難しいことを考えなくて頭空っぽで読んでもしっかり面白い作品になっているのも見事です。



○ 総評
 この紹介記事は「核心部分のネタバレ」にはなるべく触れないように書きました。
 ただ、その「核心部分のネタバレ」はプロモーション等でガンガン押し出されているし、Twitterで感想を呟いている人もそこを第一に触れる人が多かったですし、私の兄が父に差し入れした時にもそのネタバレをしてから渡したみたいですし。確かにそこを言わないと興味を惹かれないと、そこを言いたくなる気持ちも分かるのですが。


 私は、なるべくなら「何も知らない」状態で読み始めて欲しいなぁと思います。


 鳥山明という20世紀後半を代表する漫画家の最新作として、当時を知っている人はもちろん、知らない人にも是非手に取ってもらいたい一作です。そこで興味を持ったのなら、過去作に手を出せばイイのですしね。


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人間の価値とは。『機動戦士クロスボーン・ガンダム』全6巻紹介

【三つのオススメポイント】
・「ガンダム」シリーズを知らない人でも大丈夫
・「ガンダム」生みの親である富野由悠季監督が漫画原作を担当した貴重な作品
・「人間」とは何か、「ニュータイプ」とは何だったのか



○ 「ガンダム」シリーズを知らない人でも大丈夫
 「今日の記事は「ガンダム」かよー。「ガンダム」詳しくないから今日の記事は読まなくていいやー」と思った人も多いと思いますが、今日はそういった“「ガンダム」にそれほど詳しくない”人達に向けて記事を書こうと思います。
 「「ガンダム」大好きだからシリーズ全作欠かさずチェックしているぜっ!」って人は、私が紹介するまでもなくこの漫画を読んでいると思いますしね(笑)。


 「ガンダム」シリーズは1979年に始まって以降コンスタントに新作が作られているため、恐ろしい数の作品が世に出ています。
 アニメ作品だけでも20作品以上あって、漫画や小説やゲームでしか語られない作品もあって、アニメ版と小説版では展開が違っていたりもして、とにかく数が多くてややこしいため……「ガンダム」という名を聞いただけで「それはマニアが好きなものであって、私には関係のないものだ」と逃げ出してしまう人も多いと思うのです。

 実際、「「ガンダム」は全作観ていなければ語っちゃいけないんだ」とか「あの作品とあの作品はこう繋がっているからこれとこれを観なければこの作品は楽しめないんだ」とか言うガンダムファンもいますしね。
 ついさっき「ガンダム大好きな人は全員『クロスボーン・ガンダム』も読んでいるはず」とか書いている人もいたような気もしますが……アレは悪い見本です。




 基本的に「ガンダム」シリーズは、どの作品から観ても大丈夫ですし。
 「一作品だけ」でも楽しめるものです。

 もちろん時代が前作から繋がっていたり、前作のキャラが登場したりする作品もあることはあるのですが……基本的に「ガンダム」作品は全て“新しい主人公”を立てて、その“新しい主人公”目線で物語が語られ、その“新しい主人公”の成長物語が描かれるのです。(※1)
 当然、その“新しい主人公”は前作の出来事を知りませんから、視聴者が前作を知らなくても何の問題もないんです。

(※1:『逆襲のシャア』なんかは流石にアレを「ハサウェイが主人公だ」とは言い張れないと思うので……例外だとは思いますが)


 今日紹介する漫画『クロスボーン・ガンダム』もそうです。
 主人公はトビア・アロナクスという15歳の少年で、彼が成長していく様子を描いていきます。
 トビアが仲間になる宇宙海賊クロスボーン・バンガードのメンバーには『機動戦士ガンダムF91』に登場するキャラクターが何人かいるので、どうしても気になる人は『F91』だけチェックするというのも手です。『F91』は映画1本だけなのでチェックするのは時間的にも金銭的にもそんなに大変ではないと思いますが……

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 個人的には、別に観なくても『クロスボーン・ガンダム』は楽しめると思います。
 『F91』と『クロスボーン・ガンダム』は描かれている事件が違いますし(『F91』の10年後が『クロスボーン・ガンダム』という設定)、キャラの性格も随分と変わったように思いますし、絵柄が全然違うので『F91』を好きな人から「『クロスボーン・ガンダム』は絵がイヤで読んでいない」と言われたことも何度もありますし……この二作品は“別物”として考えた方がイイと私は思います。



 では、何故「ガンダム」を全く知らない人にこの『クロスボーン・ガンダム』を薦めるのかというと……少年誌に連載されていた漫画作品ということで、すごく「王道」で「分かりやすい」話なんですね。簡単にあらすじを説明しますと……
 「地球圏からの交換留学生として木星圏にやってきた主人公トビアは、ひょんなことから木星圏に住む人々が“木星帝国”として地球侵攻を企てていることを知ってしまう。その“木星帝国”の目論見を知り、彼らの野望を阻止しようと戦い続けていたのが宇宙海賊クロスボーン・バンガード。彼らに助けられたトビアは、地球を守るためにクロスボーン・バンガードの一員として“木星帝国”と戦うことを決意する――――」

 こんなカンジ。
 「15歳の少年の成長物語」「彼が一途に想いを寄せているヒロイン」「頼れる兄貴分」「地球侵攻を狙う“木星帝国”vsそれを止めようとする宇宙海賊、という悪と正義が分かりやすい構図」―――と、これでもかというほど王道の少年漫画で。
 アニメの「ガンダム」シリーズが「戦争の悲惨さ」とか「容赦なく死んでいくキャラ達」とか「登場人物がみんな苦しんでいる」とか「複雑な勢力図で誰が正義とも悪とも言い切れない」になりがちなのに比べると……漫画はアニメよりも1話の尺が短いこともあって、より分かりやすい作品になっていると言えるのです。

 なので、「ガンダムって難しそうだし……」という初心者にこそオススメな作品なのです!




○ 「ガンダム」生みの親である富野由悠季監督が漫画原作を担当した貴重な作品
 この漫画は1994年から1997年まで、月刊少年エースで連載されていました。原作が「ガンダム」シリーズ生みの親である富野由悠季監督で、作画は長谷川裕一先生が担当されています。

 1994年~1997年が「ガンダム」シリーズにとってどういう時期かというと……
 1979年に最初の『機動戦士ガンダム』が放送され、再放送やプラモデル展開などで後に大人気になり、商業的な理由から富野監督も「ガンダム」シリーズの続編を次々と作らされるのが80年代後半~90年代初頭。それらの続編では「ガンダムシリーズの再生」や「ガンダムシリーズの破壊」を試みるのですが、それらは上手くいかず、1993~1994年の『Vガンダム』を最後に富野監督はガンダム作品の監督を降りることになるのです。

 1994年~1995年の『機動武闘伝Gガンダム』は今川泰宏監督。
 1995年~1996年の『新機動戦記ガンダムW』は池田成監督(途中から高松信司監督)。
 1996年の『機動新世紀ガンダムX』は高松信司監督。

 ……と、アニメでの「ガンダム」シリーズが富野監督の手から離れ、別の監督が「ガンダム」を作っていた時期なんですね。
 ちなみに富野監督はこの後の1998年に『ブレンパワード』、1999年~2000年『∀ガンダム』でアニメ監督として復活をするので。ちょうど富野監督がアニメ監督の仕事から離れていた時期に、漫画原作という形で『クロスボーン・ガンダム』に参加していたとも言えますね。


 ということで……「ガンダム」シリーズの漫画作品はたくさんあるのですけど、いわゆる“原作者の欄に名前だけ載っている”状態ではなく、富野監督がガッツリと原作者として漫画制作に参加している貴重な作品と言えるのです(私が知る限りは“唯一の作品”です)。

 新装版には付いているのかは分からないのですが(電子書籍版には恐らく付いていない)、各巻のコミックスカバーに作者コメントが寄せられていて、1巻には「新しいガンダムの切り口を発見したいと、はじめてコミックス発の仕事に参加させていただきました」という富野監督のコメントが載っています。
 『Vガンダム』以降「ガンダム」シリーズの監督を降りた富野監督がこれを書いているというのは、色々と考えさせられるものがあります。



 『クロスボーン・ガンダム』の好きなところを挙げろと言われたら、私は二十も三十も挙げられるのですが……その中の一つに実はこの「作者コメント欄での富野監督と長谷川先生のやりとり」があります(笑)。
 富野監督は繰り返し「長谷川先生の描く女のコは好みではない」と書いているのだけど、長谷川先生は何のことだか分かっていない――――というのもなかなかで(笑)。
 それこそ従来の「ガンダム」シリーズファンの中には、アニメでの「ガンダム」シリーズの絵柄との違いで「絵柄があんまり好きじゃないから『クロスボーン・ガンダム』は読まない」とか「『F91』の絵柄でアニメ化してくれたら観るのに」なんて言う人もいるのですが。


 でも、富野監督は作者コメント欄で
「長谷川先生の情熱と出会えて、少年時代の活劇を再現できると期待しています。」
「(長谷川先生の)作画やキャラクターに、アニメでは見られない側面があります」
「コミックらしい展開にしていただけたのは、ひとえに先生のおかげで、おれのシナリオどおりにやれ、といってしまったら、こうはならなかったんです。」
と、“長谷川先生の漫画であったから”この漫画が成り立ったんだとも書いているんです。


 これは本当にその通りだと私も思います。
 『クロスボーン・ガンダム』がもし全50話のテレビアニメだったら、スポンサーとか視聴率とかターゲット層とかに配慮しなくちゃならなかったでしょうし、こんなにもコンパクトに凝縮されたストーリーにならなかったと思います。
 かく言う私も最初に『クロスボーン・ガンダム』を読んだ時は長谷川先生の絵柄に戸惑いました。『F91』のキャラが!若返っている!!と思いましたもの(笑)。でも、読み進めていくと、この漫画は長谷川先生の絵柄じゃないとダメだと思えてくるし、女のコも好みになってきました。この絵だからこそ少年漫画的な王道成長物語が照れずに楽しめたのだし、トビアの成長に心を鷲掴みにされたのです。



 アニメの「ガンダム」シリーズから離れていた時期の富野監督と、「ガンダム」シリーズを情熱を持って少年漫画として描くことが出来る長谷川先生が合わさったからこその、奇跡のような作品―――それがこの『クロスボーン・ガンダム』なのです。



○ 「人間」とは何か、「ニュータイプ」とは何だったのか
 この記事は「ガンダム」シリーズを全く知らない人に向けて書いているので、ものすごく簡潔に「ニュータイプ」という言葉を説明すると……1979年の第1作目『機動戦士ガンダム』に登場する「宇宙に適応して洞察力が鋭くなった新しい人類」という概念です。

 それゆえに作中では「(機械を使った)戦闘能力に優れている」と戦争に利用され、ファンの間でも「ニュータイプ」についての議論は「ガンダム」を語る際に欠かせないものとなってしまい……「人間の新しい可能性」だとか「超能力」だとか、言葉が一人歩きしてしまっているところがありました。
 長谷川先生が『クロスボーン・ガンダム』以前に描いた『Vガンダム外伝』や『逆襲のギガンティス』でも、長谷川先生なりの「ニュータイプとは何か」が描かれていますからね。

機動戦士Vガンダム外伝 (角川コミックス・エース)
機動戦士Vガンダム外伝 (角川コミックス・エース)



 この『クロスボーン・ガンダム』にも「ニュータイプ」という言葉が出てきます。
 作中で説明されるので、この他の作品を知らなくても何も問題なく楽しめると私は思いますが……前述したように、「ガンダム」生みの親である富野監督が原作を担当しているので。最初の『ガンダム』以降一人歩きしてしまった「ニュータイプ」という概念に対する富野監督なりのケジメと、この後に富野監督が作る『ブレンパワード』『∀ガンダム』『劇場版Zガンダム』等で描かれる“隣人愛”に繋がる息吹のようなものが感じられるのです。


 例えばこの作品の第1話、木星圏に留学生としてやってきたトビアが「ここは人類の最先端なんだ!」と考えるモノローグがあります。この作品には各所にこうした「人類の進歩」や「人類の成長」を考えさせる描写があります。
 地球にいた人類が、宇宙に居住区を作り暮らすようになり、やがて木星圏まで進出して暮らすようになり―――人類がどんどん進化しているように思え、それはある意味では「人間」が「ニュータイプ」へと成長したかのように思えるのだけど。


 果たして、そうだろうか?

 というのがこの作品の肝になりますし、最初の『機動戦士ガンダム』以降に一人歩きしてしまった「ニュータイプ」という概念に戸惑った私が、初めて「これを描くために“ニュータイプ”という概念が生まれたのならそれはとても素晴らしいことだ」と思えた描写でした。何十回と読み返している漫画なのに未だに最終巻は泣いてしまうくらい、この作品は優しく「私達人間にはどんな価値があるのか」を描いてくれていると思います。

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○ 総評
 以前「今まで読んできた漫画の中でベスト5を選んでください」と言われた際に、真っ先に「これは外せないな」と私が思ったのがこの『クロスボーン・ガンダム』でした。そのくらい大好きですし、愛着があるし、何より“存在するのが奇跡のような作品”だと思っているからです。

 たまたま富野監督がアニメ監督の仕事をしていない時期に、少年エースが出来て、長谷川先生がいて、たまたま「『F91』のその後の話」が諸事情で作られていなかったけど、「じゃあ『F92』を作ろう」ではなく「完全新作を作ろう」となったというのは―――色んな偶然が重なり合って起きた奇跡だと思うのです。


 絵柄の好みがあるのは仕方ないですし、「ガンダム」シリーズに王道少年漫画を期待していない人もいるんだとは思うのですが……「ガンダム」という枠を取っ払っても、多くの人に読んで欲しい私の大好きな漫画です。



 ちなみに『クロスボーン・ガンダム』の単行本は2011年に新装版が発売になっています。電子書籍版はこの新装版の方になるみたいですね。
 検索してみたところ、新装版は旧版と中身は一緒で、解説文やインタビューが追加されているみたいです。富野監督の作者コメントが収録されているかは検索しても出てきませんでした(笑)。

 更に更に、この『クロスボーン・ガンダム』が人気になったため……続編も幾つか出ています。作画は本編同様に長谷川先生ですが、富野監督はノータッチみたいですね。
 後の読み切りを集めた『機動戦士クロスボーンガンダム -スカルハート-』が全1巻、本編から3年後のトビア達の戦いを描いた『機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人』が全3巻、更に17年後の『Vガンダム』と同じ時代を描いた新主人公での『機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト』が現在5巻まで出ていて連載中です。時間軸を詳しく説明しているイケメンのTweetがあったので、こちらを読めば分かりやすいかな。



 無印『クロスボーン・ガンダム』全6巻を読んで長谷川先生の漫画が気に入ったのなら楽しめると思います。
 富野監督は恐らくノータッチでしょうし、無印『クロスボーン・ガンダム』で描ききってしまったので、この記事で紹介した「人間とは」「ニュータイプとは」みたいな話には続編はあまり触れられていません。あの作品の後の世界で、長谷川先生の少年漫画節がより濃く絵が書かれている――――というところです。


 私は全部読んでいますし、『ゴースト』は主人公を変えたことで彼の成長物語として面白いのは面白いんですけど……まだ完結していないし、当分完結しそうにもないので、まだオススメかどうかはよく分かりません。



<紙の本・新装版>



<紙の本・旧版>



<キンドル版>

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