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『ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~』紹介/スーパー美少女と送るひと夏の冒険譚!

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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
シリーズ一新を象徴する「かわいいのに田舎臭い」ライザちゃんの絶妙なデザイン
ベースはシンボルエンカウントのコマンドRPG、帰ってきたら調合もするよ!
ひと夏の出会い、みんなでつくる秘密基地、これはファンタジー版『ぼくなつ』では??



『ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~』
・発売:コーエーテクモゲームス、開発:ガスト長野開発部
公式サイト
 プレイステーション4用ソフト:2019年9月26日発売
 Nintendo Switch用ソフト:2019年9月26日発売
  ※ Nintendo Switch本体機能でのスクリーンショット撮影○、動画撮影○
 Setam版:2019年10月29日発売
 DMM GAMES版:2019年10月29日発売
・RPG
・セーブ方法:拠点でのみ手動セーブ可能(移動中ならボタン一発で拠点に帰還できます)


 私が1周クリアにかかった時間は約43時間でした
 ※やりこみ要素やクリア後の要素・有料DLCなどはやっていないプレイ時間です
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください

【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:△(過去に起こった事件は結構重いかも)
・恥をかく&嘲笑シーン:○(序盤は主人公達が島のはみ出し者でなかなかキツイ)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:△(モンスターをやっつけるくらい)
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:△(イチャイチャはするけど百合というほどではない)
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×(ただ歩いているだけでエロイという声はあるけど…)
・セックスシーン:×

↓1↓

◇ シリーズ一新を象徴する「かわいいのに田舎臭い」ライザちゃんの絶妙なデザイン
 「アトリエ」シリーズは、1997年の『マリーのアトリエ』から始まって……現在までに発売されたシリーズは20作以上!ナンバリングはされていませんが、シリーズの正統続編には通し番号が記されていて、この『ライザのアトリエ』は「A21」と21作目に当たるそうです。ひょっとして、移植とか外伝を除いた「正統続編の多いゲームシリーズ」の中でもトップクラスなんじゃなかろうか。

 私が「アトリエ」シリーズをプレイするのは、シリーズ1作目の『マリーのアトリエ』以来です。なので、今までのシリーズとの比較みたいな紹介の仕方は出来ません。その代わり、「アトリエシリーズって気になっているけどプレイしたことないんだよなぁ」という人には、同じ目線での紹介が出来るかなと思います。参考になれば幸いです!

 ちなみに私がプレイしたのはNintendo Switch版なので、操作説明などはNintendo Switchのプロコン準拠だと思ってください。
 全部買うとゲームソフト1本分くらいの値段がする有料DLCは、「武器の見た目を変えられる」「水着に着せ替えられる」「ライザちゃん以外のメインキャラを主人公にした追加ストーリー」「超高難度マップ」などで、「これを買えばゲームが有利になる」みたいなものではありませんね。


 さてさて、まず大事な前提から。
 「アトリエ」シリーズはガストの看板シリーズなため、1年に1本ペースで新作が発売されているんですね。HD機になったPS3の『ロロナ』以降の発売頻度を見てみましょうか。ちなみに「移植」は除いて、のリストです。

・2009年6月『ロロナのアトリエ ~アーランドの錬金術士~』
・2010年6月『トトリのアトリエ ~アーランドの錬金術士2~』
・2011年6月『メルルのアトリエ ~アーランドの錬金術士3~』

・2012年6月『アーシャのアトリエ ~黄昏の大地の錬金術士~』
・2013年6月『エスカ&ロジーのアトリエ ~黄昏の空の錬金術士~』
・2014年7月『シャリーのアトリエ ~黄昏の海の錬金術士~』

・2015年11月『ソフィーのアトリエ ~不思議な本の錬金術士~』
・2016年11月『フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~』
・2017年12月『リディー&スールのアトリエ ~不思議な絵画の錬金術士~』

・2019年3月『ルルアのアトリエ ~アーランドの錬金術士4~』

・2019年9月『ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~』



 これは「新作の正統続編」だけで……これらの移植版とか、これらのキャラが登場するスマホゲーとか、これらのキャラが登場する『ネルケと伝説の錬金術士たち ~新たな大地のアトリエ~』(2019年1月発売)みたいな外伝もあって、ものすごいハイペースで作られていることが分かるかと思います。

 そのため、1本のゲームを3~4年かけて作る海外のAAAタイトルとか、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』みたいな任天堂タイトルとかと比べてしまうと……どうしても「世界の狭さ」や「敵キャラの種類の少なさ(色違いがやたら多い)」を感じてしまうのはしょうがないです。天井と比較してしまうのは良くないです。


 しかし、逆に考えると(開発は1.5~2ラインで作っているそうなので)開発期間1~2年という限られたスケジュールの中でこれだけのものが出来るというのは、シリーズ作を1年に1本ペースで発売しているからこそのノウハウの蓄積の力だと思うんですね。これはこれでAAAタイトルにはない技術と言えると私は思います。


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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 ということで、ライザちゃんかわいい。大勝利。


 このゲームは最初に情報が発表されたときから、主人公のライザちゃんのデザインがものすごく大きな話題になって、「太もも!」「おっぱい!」「この太ももで錬金術とかムリでしょ」とか、みなさんライザちゃんのことをエロイ目で見すぎですよ!
 マジメにこのキャラクターデザイン、3Dになってゲーム内で動いた際に「ありとあらゆる角度で見てかわいい」ように頭から足先までしっかり考えて作られていると思うんですよ。だからそこ、太ももばっかり見てるんじゃない!

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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>


 上のリストを見てもらえれば分かりやすいのですが、「アトリエ」シリーズはおよそ3作を一グループとして「同じ世界観」「共通のキャラクターも登場する」としています。そして、この『ライザのアトリエ』は新シリーズ1作目にあたる作品です。
 キャラクターデザインを担当されたイラストレーターさんもトリダモノさんという新しい人選で、今までのシリーズのガーリーなイメージから一新して「牧歌的」「田舎町にいる普通の女の子」を目指して作られたのですが……これが、ものすごい難産だったみたいですね。


ライザはこうして生まれた。「ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~」キャラクターデザインの変遷を,細井Pとトリダモノ氏が語る4Gamer.netより)


 この壮絶な作成過程を読むと、単純に「新しいイメージの新シリーズにしたいから、新しいイラストレーターさんを起用して、新しい風を吹き込んだ」なんて一行では片付けられない苦労があったんだなぁと思いますね。イラストレーターさんが一人で作ったのではなく、スタッフとディスカッションして、スタッフから様々なアイディアをもらって、ようやく出来上がったデザインなんですね。これはやっぱりシリーズを量産し続けてきたガストの力も大きいんじゃないかなと思いました。

 「田舎者」っぽいんだけど、テンプレ的な「田舎者」ではない、このキャラしかないデザインの「かわいい田舎娘」をよくぞ生み出してくれました!


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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 そうして出来上がったイラストのキャラクターが、しっかり「かわいい3Dモデル」になってゲーム内では動き回ります。
 3Dマップを自由に動き回るゲームだと、プレイヤーは基本的にライザちゃんの後ろ姿ばかり見ることになるし。ストーリー部分では胸から上のアングルになることが多いのですが……後ろ姿でも、太ももが見えないアングルでも、ちゃんとかわいいのは本当にすごいと思います。


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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 また、数はさほど多いワケではありませんが、ストーリーの合間にはイラストレーターさんが描かれた一枚絵も出てきて、これがどれも美麗です。


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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 美麗と言えば!
 キャラクターデザインばかり取り上げられるこのゲームですけど、背景の街並みもむっちゃキレイでかわいいんですよ。木組みの家、石畳の広場、川沿いの道、ヤギのいる農場、湖が見渡せる高台―――ゲームの序盤は走り回っているだけでワクワクしました。流石に終盤にもなると見飽きてくるので、「ここは何もない島だよ」というライザ達の気持ちも分かってくるのですが(笑)。

 日数制限的なものはありませんが、ゲーム内には「時間」があって(マップを切り替えたり、錬金したり、寝たりすると経過する)、同じ風景でも朝から夕方、夜まで様変わりするのもいいところ。時には雨も降ったりするので、この島で自分も生活している気分になれます。


↓2↓

◇ ベースはシンボルエンカウントのコマンドRPG、帰ってきたら調合もするよ!
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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 さてさて……『マリーのアトリエ』以来の久々の「アトリエ」シリーズを遊んでみて驚いたんですが、「アトリエ」シリーズってRPGなんですね。

 いや、『マリーのアトリエ』も確かに公式ジャンルは「RPG」ではあったのですが、「普通のRPGとはちがう自由な遊び方ができる」のがウリで、ずっと自室に引きこもって調合だけすることも出来れば、町の人達と交流して仲良くなることも出来る―――『プリンセスメーカー』から続く“育成シミュレーション”の系譜にあるゲームだと記憶していたものですから、『ライザのアトリエ』を遊んで「普通のRPGなんだ!?」と驚きました。


 『ライザのアトリエ』は「一本道のストーリーを追う」「シンボルエンカウント」の「コマンドバトルRPG」です。マルチシナリオやマルチエンディングとかではなくて、「○○に行け」といったシナリオの目的を達成するとストーリーが進行していく分かりやすいタイプのRPGだと言えますね。

 3D空間を走り回るのは、左スティックで移動、右スティックでカメラ操作です。

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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 +ボタンを押すと、「ここまでのあらすじ」と「次にすること」が表示されるのでまめにチェックしましょう。中には何のヒントもなく「3日経つのを待つ」みたいな目的のときもあるから、これを見ないと「何をやってもストーリーが進まないなぁ」ってことになりかねないぞ!



 基本的には「スタンダードなRPG」なのですが、主人公が錬金術士なこともあって、「アイテムとアイテムを合成して新たなアイテムを作る」調合ができるというのが大きな特徴となっています。
 これによって、ストーリーを進めることそっちのけで強力な武器を作ったり、島に住む人々のお願い(サブクエスト)を聞いてあげたりみたいな遊びもできますし、メインストーリーでも「○○を作れ」といったように主人公が錬金術士なことを活かした展開をしていくところも多々あります。


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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 調合の第一歩は、まず素材となるアイテムを「採取」するところから。
 フィールドは素材アイテムで溢れていて、ライザの自宅のある島ではアイテムは取り放題、モンスターの出てくる「森」や「洞窟」などではカゴの容量いっぱいまでアイテムを取って持ち帰ることが出来ます。もちろん、モンスターを倒してもアイテムは手に入ります。

 私はこの手の「フィールドでアイテムをごっそり集めて、自宅で合成して良いアイテムに変化させる」ゲームが大好きなのですが……特にこの『ライザのアトリエ』は、最初ライザちゃんが錬金術士ではないためアイテムを採取することができず、ストーリーを進めて錬金術士になって初めて「自分が今まで何気なく通っていた道にこんなに“素材”があふれていたんだ」と気付けるようになっているのが見事でした。

 その結果、他人の家の箱を勝手にぶっ壊してミルクを持ち帰る野盗みたいなライザちゃんが生まれるワケですが(笑)。


 アイテムを「調合」して作ることで、「斧」とか「鎌」といった採取道具も作ることが出来ます。フィールドの探索中はこれを切り替えることによって、例えば同じ木でも「棒で殴ると木の実が落ちてくる」「鎌で削ると樹皮が手に入る」「斧で斬ると丸太が手に入る」といったカンジに―――「調合」によって手に入ったアイテムによって、「採取」の幅が広がっていくのも楽しいです。

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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 「採取」における不満点は、ダンジョンでアイテムを集めるカゴがあっという間にいっぱいになってしまうことです。この手のゲームは何が役立つかも考えずにたくさんアイテムを持ち帰って、後であれが役に立った―というのが楽しいのですが……1回の探索で持ち帰れるアイテムが少ないことで、せっかく見つけたアイテムを諦めたり、敵と戦わないように進まなくちゃいけなかったりする(敵を倒してもアイテムをドロップするので)と、このゲームの楽しいところを自ら台無しにしちゃっているのではと思いました。

 ゲームを進めるとカゴを大きくするアイテムが作れるようになったり、1エリアごとにワープできるようになったりするので、そういったジレンマから解放される……と言いたいのですが、その頃には今度は「今まで集めたアイテムを保管できるコンテナ」がいっぱいになってしまうので、初期に集めた素材をタダ同然で売り払ったりしなくちゃならなくなるという。その上、大量のアイテムを1コずつ選んで売るのも大変!

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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 とまぁ……アイテム周りには不満点があったのですが、移動に関してはプレイヤーに対する配慮がものすごくてそこは良かったですね。まずは、-ボタン一発ですぐに「ライザの部屋」に帰れること、島の掲示板を見れば島のあらゆるところにワープできること、後半はさらにダンジョンの中でも行ったことのあるエリアにならワープができるようになること。

 そのせいで「命がけの探索」みたいな緊張感はほとんどなくなっちゃうのですが、気軽に遊べるようになっているのでこれは良いゲームデザインだったと思います。


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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 次に、そうして「採取」してきたアイテムを合成して新たなアイテムを作る「調合」です。私はこの手の「フィールドでアイテムをごっそり集めて、自宅で合成して良いアイテムに変化させる」ゲームが大好きなのですが、流石に錬金術士を主人公とする「アトリエ」シリーズはここに凝っていて、「調合」に関しては今まで遊んだどのゲームよりも面白かったです。

 一見すると「ものすごく難しそう」に思える画面ですが、ベースとなるアイテム……上の画像の場合は「小麦粉」を作るので「ヴァッサ麦」を投入して、あともう一つのアイテム(ヴァッサ麦でもイイし、その隣のエリアのアイテムでもイイ)を入れればもう「小麦粉」が作れてしまいます。

1.ベースのアイテムは必ず入れる
2.2つ以上のアイテムを入れる

 これだけで新しいアイテムに「調合」出来てしまうのです。これが基本。
 ただし、他に入れるアイテムによって「品質」が上がったり、「特殊効果」が付いたり、戦闘で使うアイテムなら「消費CC」が下がったり……3つ目以上のアイテムを入れると、そういった“プラスアルファ”の付加価値を付けてくれるんですね。更には、別のアイテムに変化するというものまであります。

 この辺、最初はよく分からずに「調合」していくしかないのですが……メインストーリーやサブクエストで「品質○○以上の××を作ってこい」が出たあたりで、「なるほど、ここのエリアにこの色のアイテムを入れると品質が上がるのか!」と分かってくるのでグッと面白くなってきます。たっぷり集めたアイテムが色んな効果を生むのは、やはり楽しい!


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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 これは不満点というより、「これからこのゲームを始める人には是非知っておいてほしいこと」として書くのですが……「Xボタン:サブメニュー」→「並び替え」→「品質順」と押すことで、持っているアイテムを「品質順」に並べることができます。
 これによって高品質の素材を投入して「品質○○以上の××を作ってこい」というお題をクリアしたり、逆に品質の低いアイテムはまとめて売り払ったりできるので……このゲームでは絶対に必要な操作の一つなのですが、イマイチ分かりづらいところにあるので私は中盤までこれに気付かないで苦戦しました。WEB説明書にもここの操作は載っていないんですよねぇ。



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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 そして、RPGの華とも言える「戦闘」部分。
 一見すると、スーファミ~プレステ時代の『ファイナルファンタジー』のアクティブタイムバトルのようなリアルタイムで進むコマンドバトルに見えるのですが……プレイヤーがコマンドを出せるのは1キャラのみで、残りの味方も敵も超高速で動きます。「1キャラずつ攻撃が終わるのを残りが待っている」時間がないため、あっという間に戦闘が進行していくんですね。

 その上、操作も「Aボタンで攻撃」「Bボタンで隊列変更や逃走」「Yボタンでアイテム使用」「Xボタンで魔法(スキル)使用」と、コマンド選択がボタン対応になっているだけでなく……「+ボタンで情報閲覧」「-ボタンでタクティクスレベルを上げる」「LRボタンで操作キャラの切り替え」「上下ボタンで味方キャラが魔法(スキル)を使うかの切り替え」「ZRボタンでクイックアクション」と、コマンドバトルRPGなのにほぼ全部のボタンを使用させるのには戸惑いました。

 というか、この記事を書くために説明書を読み返して「上下ボタンで味方キャラが魔法(スキル)を使うかの切り替え」ができることを思い出したくらいですからね、私……ほとんど使わなかったなコレ。「-ボタンでタクティクスレベルを上げる」と「ZRボタンでクイックアクション」はクリアには絶対必須なんで忘れないでください(後者は序盤は使えないので忘れても構わないけど)。


 また、「アイテム」と「魔法(スキル)」も、一般的なRPGのアイテムと魔法とは別物なのが要注意です。

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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 「アイテム」は出撃前に武器スロットにセットしたものだけを使えて、使ってもなくならない代わりに「パーティで共有のCC」という数字を消費します。上の画面で言えば、右の方に表示されている「10 CORE CHARGE」ってやつね。
 分かりやすく言えば、仲間達が共有しているMPというカンジで……出撃時には必ず「10」持っていて、上の画像で言えば「魚油リキッド」は1消費、「フラム」は2消費、「施しの軟膏」は2消費です。このペースならあっという間に尽きちゃわない?と思われるかもですが、「このアイテムはこの出撃時にはもう使わない」と宣言すると(コンバート)、CCを最大値の10まで回復することが出来ます。

 拠点に帰ると、このCCの数値も、コンバートしたアイテムも元に戻ります。

 すっごいややこしく思えるのですが……「普通のRPGでいう魔法」が「ライザのアトリエにおけるアイテム」って認識で構わないかな。最大MPが恐ろしく低いかわりに、MP全快する方法があるというカンジで。


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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 じゃあ、「魔法(スキル)」はどうなのよというと、こちらもパーティ共通のAP(アクションポイント)というものを使います。上の画像で言えば「AP 13」と表示されているヤツですね。これは戦闘時は「0」から始まって(シンボルエンカウントの敵を殴って戦闘開始になれば「10」から)、敵に攻撃を加えるなどすると溜まっていくゲージです。

 「敵を攻撃して溜まるゲージを消費して使える必殺技」みたいな感覚で構わないと思うのですが、このAP(アクションポイント)はMAXまで溜まった状態で-ボタンを押すとタクティクスレベルを上げることや、順番に関係なく割り込んで行動ができるクイックアクションなど―――様々なことに使います。

<AP(アクションポイント)を使って出来ること>
・魔法(スキル)を使う
・MAXまで溜めてパーティ全体の能力の底上げをする
・APを10+スキルの分を消費して、クイックアクションで大技を決めて相手の大技を防ぐ


 AP(アクションポイント)を使うのか溜めるのか―――そのリスクとリターンを瞬時に判断しなければならないというゲームなんですね。



 どうしてこんなややこしいシステムにしてるんだろうと最初は不思議だったのですが、このシステムによって「調合によって作った強力なアイテムを何度でも使用できる」とか「ザコ戦でも大技を連発できる」といったカンジに、普通のRPGでありがちな“もったいないから温存しよう”という消極的な戦い方をしなくて済む、積極的に色んなアイテム・色んな技を使いたくなる仕様にしたかったのだと思いました。

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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 しかし、その結果として戦闘が面白くなっているかというと……正直微妙で。
 「アイテムも大技も雑魚戦でガンガン使ってイイ」「ボタン一発で拠点にすぐに戻れる」ため、普通のRPGの「アイテムやMPをやりくりする楽しさ」がなくなり……雑魚戦もボス戦も、同じように大技を連発して同じような戦い方をするだけになっちゃったんですね。

 上の画像のアクションオーダー、ライザちゃんが「魔法ダメージを与えて」、レントが「アイテムを使ってくれ」と言っていますが―――戦闘中に仲間が要求した行動を取ると、仲間が大技を放ってくれるので、ただただこれを繰り返すだけのゲームになっちゃうという。
 序盤は戦闘が難しく、中盤はそれを理解して面白くなってきたところで、終盤はそれがずっと続くので飽きてくる……という。


 「調合」で作ったアイテムを「戦闘」でもバシバシ使えるようにしたかったのは分かるのだけど、実際に食べてみると「美味しいんだけど、ずっと同じ味が続く……」という惜しいシステムでした。


↓3↓

◇ ひと夏の出会い、みんなでつくる秘密基地、これはファンタジー版『ぼくなつ』では??
 とまぁ…システム面では不満点も少なくないのですが。
 それを補ってあまりある「キャラクター」と「シナリオ」の魅力があったと思います!


 「キャラクターの魅力」というのは、単純に「ライザちゃんの太ももがエロイ」って話じゃなくてね……この島に住むライザだったりレントだったりというキャラが、しっかりと描けているシナリオだったなと思うんです。

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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 ライザちゃんのデザインが発表されたころから「この顔とこの体で“なんてことない”“普通の女の子”って設定はムリがあるでしょ」みたいな声があったのですが……実際に遊んでみると納得で、ライザちゃん達が住む島は「風習や因習の厳しい閉鎖的な島」で、この島の中にはライザちゃんを可愛いって言ってくれる人は一人もいないんですね。強いて挙げるなら、行商人として島を訪れるロミィさんくらい。


 ライザちゃんにしても、レントにしても、タオにしても……この「閉鎖的な島」で、自分の価値にすら気付かず、でも何にもなれずただただ日々を過ごしているというスタートなんですね。

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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 「これぞ村社会!」という、閉鎖的な島だからこそ大威張りしている一家とかもいるし、ライザちゃんが錬金術を始めてからしばらくは「あんな怪しいものを」と言われるし……風景むっちゃキレイな街並みなのに、この島の人間関係はドロドロしているな!ってなります。


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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 もちろん、それは「スタートの設定」の話であって……
 行商でやってきた隊の一員であるクラウディアとか、錬金術士であるアンペルとか、彼と旅をしている女戦士リラとか、「島の外からやってきた人々」との出会いで彼女らは変わり、そして彼女ら自身の持っている可能性に気付いていく――――そういう成長物語なのです。

 「ゲームの中でまでドロドロした人間関係なんか味わいたくない」と思っちゃう人もいるかもですが、それを打破していくストーリーですからね。最終的には、登場人物の一人一人に愛をこめて描かれたストーリーだって思えるようになりますから。



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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 ライザちゃんばかり注目されるけど、レントもタオもクラウディアも、一人一人に物語があって成長していくのが熱かったです。ライザちゃんが錬金術を始めたからみんなでやろうって言うんじゃなくて、それぞれに目指す道があって、それでもみんな仲間だから集まるってのがイイんですよ。


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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 このゲームには日数制限的なものはないのですが(誰々がモンスターに襲われているから助けに行かなくちゃって時でも自宅に戻って何日も寝たりできる)、セミの鳴き声、強い日差し、この期間だけ島にいられる旅人達、みんなで作る秘密基地など――――まだ大人になれない少年少女達が、“夏休みに大冒険をする”話と受け取れるように作ってあると思います。

 主人公は「田舎にやってくるぼく」ではなくて、「田舎に住んでいる女の子」の方だけど、やっていることは『ぼくのなつやすみ』っぽいんですね。このかけがえのない1ヶ月を楽しもう、的な。
 世界を救うために壮大な旅に出るというよりは、夏休みにフラッとこの島に遊びに来たみたいなゲームなんです。

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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 秘密基地ではペットも飼えるぞ!




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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 また、島には様々な人が住んでいて、そういう人達の頼みを聞くサブクエストも発生します。
 足が痛くて遠出が出来ないと言っているおばあさんや、島の名物スイーツを作りたいおばちゃん、いつか王子様のような結婚相手が来てくれることを夢見ているお姉さんなどなど……クリアには必須ではないんですが、同じ人の頼みを解決し続けているとその人の物語も動いていって、この島に暮らしている色んな人の物語が知れるし、その悩みを解決することで島がどんどん幸せになっているカンジがするのが好きなところです。

 ライザちゃんだけの物語じゃなくて、サブキャラクター一人一人にしっかり物語があるんですね。


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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 私が好きなのは、島の外からやってくる行商人ロミィさん。
 ライザちゃんをからかえる「年上のお姉さん」ってポジションがとてもイイんですよ。こういうサブキャラクターもしっかりデザインが凝っているのも凄いですよね。


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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 もちろんジェナも好きです。
 こういう子供が、この島で何を考えてどういう人生を歩むのか―――そういうものが見えてくるのでサブクエスト進めるのむっちゃ楽しかったです(だから、クリアまでにこんな時間がかかったのか??)。



 そうそう。
 メインストーリーはフルボイスですが、サブクエストなどの横道の話はボイスなしです。そこはまぁしょうがないのですが、このゲーム「全体的に文字が小さい」という不満点もあります。さっきからのスクショも「台詞が読みづらい」と思われていそうですが、戦闘中や錬金中も小さな文字がところせましとワンサカ出てくるのでテレビの画面に近づいてプレイしていたほどでした。

 「オマエんちのテレビが小さいのが悪い!」と言われそうですが……Nintendo Switchだと「携帯モード」で遊ぶ人もいらっしゃるでしょうし。


 あと、個人的には、このストーリーならばキャラクターの年齢を2~3下げた方がテーマ的なものが分かりやすかったと思います。「まだ大人になっていない少年少女の冒険譚」なのに、ゲームスタート直後からライザちゃんたち悪ガキグループも大人に見えちゃうキャラデザでしたし(タオ以外)。
 でも、それだとマーケティングの問題とか、海外展開とかで問題になるのかな。海外は特に「児童の労働」に厳しいので、『幻影異聞録#FE』なんかは海外版だとキャラクターの年齢が1歳ずつ上がっているという話もありましたし。


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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 すっごい細かいツッコミどころに思われそうですが……
 ストーリー上「魚がまったく獲れなくなって漁師達が困っている」という展開になっている時でも、市場で「調べる」ボタンを押すと「今日も大漁みたい」というメッセージが出るなど、配慮が足りない場面がチラホラありました。

 「そんなこと」って思うかもしれませんが、こういうところのメッセージ一つ変えることで「本当に切羽詰まっているんだなぁ」という悲壮感が生まれるのですし、作りこんでいるゲームはこういうところに気を遣うので、短い開発期間で作ったゲームという印象はこういうところで感じちゃいます。


◇ 結局、どういう人にオススメ?
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<画像はNintendo Switch版『ライザのアトリエ』より引用>

 システム面ではところどころで惜しいと思わせられてしまったけれど、「かわいいキャラ」と「かわいい街並み」で「胸躍るひと夏の冒険」というワードに響く人には是非オススメです!
 ライザちゃんのキャラデザなどで「エロイゲーム」と誤解している人もいるかもですが、お色気シーンはほとんどなく、子供にも見せたくなる健全で熱いストーリーでしたよ。シリーズの中でもかなりヒットしたそうですし、いっそのことアニメ化して、夏休みの午前中にでも放送したいくらいでした。


 記事の序盤にも書きましたが「アトリエ」シリーズは基本的に「3作品で一まとめ」で、この『ライザのアトリエ』は新シリーズ1発目の作品でした。なので、既に次回作ではライザが登場することが公言されています
 でも、ライザちゃんだけでなく、レントやタオやクラウディアはもちろん、島の住民がこの後どうなるのかを次回作でも描いて欲しいと思わせる作品でした。この島が舞台にならなくても、この島の話が聞けるだけでも感動しそうですよねぇ。数年後アレは島の名物になったのかとか、あの2人はどうなったのかとか、そういうのを知りたくなる作品でした。


   

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『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』紹介/海外製だからこそのリブート(再起動)とリビルド(再構築)成功!

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<Nintendo Switch版『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
「くにおくんシリーズ」の世界とキャラを再構築!これが新しいシリーズの夜明けだ!
シリーズ伝統のベルトスクロールアクションは健在!見た目は変わってもくにおくんだ!
日本でもアメリカでもない“リバーシティ”を舞台にした新たなシリーズが始まる!


『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』
・発売:アークシステムワークス、開発:WayForward
公式サイト
 Setam版:2019年9月5日発売
 プレイステーション4用ソフト:2019年9月5日発売
 XboxOne用ソフト:2019年9月5日発売
 Nintendo Switch用ソフト:2019年9月5日発売
  ※ Nintendo Switch本体機能でのスクリーンショット撮影○、動画撮影○
・ベルトスクロールアクション
・セーブスロット数:3
 ※オートセーブ+任意セーブでどこでも終了可能、再開はそのエリアに入ったところから


 私が1周クリアにかかった時間は約08時間でした
 ※やりこみ要素やハードモードなどはやっていないプレイ時間です
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください

【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:×
・恥をかく&嘲笑シーン:△(長谷部と真美は“嘲笑”してくる)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:○(床をGらしき虫が走ってたりする)
・百合要素:△(のぞみときょうこの話はグッときた)
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×

↓1↓

◇ 「くにおくんシリーズ」の世界とキャラを再構築!これが新しいシリーズの夜明けだ!
 「くにおくんシリーズ」というと元々ファミコンやスーファミの頃の時代に人気だったテクノスジャパンのアクションゲームで、1作目のベルトスクロールアクションをベースにして様々な作品が発売されました。シリーズを大別するとこんなカンジになるそうです。


<リアル頭身のケンカアクション、熱血硬派シリーズ>
・熱血硬派くにおくん
・初代熱血硬派くにおくん
・新・熱血硬派くにおたちの挽歌

<2D頭身のヒーローものっぽいアクション、ダウンタウンシリーズ>
・ダウンタウン熱血物語
・ダウンタウン熱血行進曲 それゆけ大運動会
・ダウンタウンスペシャル くにおくんの時代劇だよ全員集合!
・びっくり熱血新記録!
・熱血格闘伝説

<2D頭身で様々な部活に挑戦する、スポーツシリーズ>
・熱血高校ドッジボール部
・熱血高校ドッジボール部サッカー編
・いけいけ!熱血ホッケー部
・熱血!すとりーとバスケット
・ダウンタウン熱血べーすぼーる物語
・熱血!ビーチバレーだよ くにおくん

<おでん>
・くにおのおでん

 見やすくするために移植や続編モノは省いてあります。ゲームボーイの『熱血硬派くにおくん 番外乱闘編』のように「2Dなのに熱血硬派を名乗っているソフト」もあるので線引きは微妙ですけどね。

 しかしその後、ゲーム業界が「次世代ゲーム機戦争」なんて言葉で盛り上がっていた1995~1996年頃にテクノスジャパンは倒産、版権が他社に移り、DS時代にはポリゴン化して3Dアクションゲームの道を試したりしたのですがあまり上手くいかず……3DS以降はアークシステムワークスからダウンロード用ソフトを含めて新作がたくさん出たのですが、ファミコン風のグラフィック&ゲーム性から脱却できませんでした。

 シリーズ消滅の危機までいったことから考えると、新作を出してくれるだけでありがたいとは思うんですけどね……正直、「マンネリ化」を感じてしまって、ここ最近は購買意欲が湧いてきませんでした。


 そこに現れたのがWayForward!
 『シャンティ』シリーズで知られるアメリカのゲーム会社が、「くにおくんシリーズ」に新たな風を持ち込んでくれました。

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<Nintendo Switch版『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』より引用>

 主人公は、なんと『新・熱血硬派くにおたちの挽歌』でりきの恋人だった「きょうこ」と、『新・熱血硬派くにおたちの挽歌』でくにおの恋人だった「みさこ」!意外すぎるチョイス!浦沢直樹先生が『地上最大のロボット』をリメイクした『PLUTO』を描いた際、アトムじゃなくてゲジヒトを主人公にしたみたいなヤツ!


 というのも、やはりこの作品は「2D頭身のダウンタウンシリーズ」ではなく、「リアル頭身の熱血硬派シリーズ」の外伝なんですね。なので、「ダウンタウンシリーズ」でおなじみの長谷部や島田真美ではなく、『新・熱血硬派くにおたちの挽歌』のきょうことみさこが主人公になるという。


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<Nintendo Switch版『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』より引用>

 と思っていたら、長谷部と真美も出てきたんですけどね!



 「リアル頭身の熱血硬派シリーズ」とは言いつつ、熱血硬派シリーズだけでなくダウンタウンシリーズやスポーツシリーズからも数多くのキャラが登場しています。


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<Nintendo Switch版『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』より引用>

 『ダウンタウン熱血物語』『ダウンタウン熱血行進曲』から五代!
 コイツ、原作だとクソ強かったのに、今回はゴミ箱からいきなり登場して頼みごとをしてくるという変なキャラに!


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<Nintendo Switch版『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』より引用>

 『熱血高校ドッジボール部』から、なりたか!
 花園高校で「実は最強キャラ」みたいに言われてるヤツ!


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<Nintendo Switch版『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』より引用>

 『熱血硬派くにおくん 番外乱闘編』から、美穂子!
 ゴメンゴメンゴメン、誰だか知らない……検索してようやく「元になっているキャラがいたのか」と知ったキャラです。私がゲームボーイ持っていなかったことを差し引いても、シリーズの中でもかなりのマニアックキャラじゃない!?



 とまぁ、こんなカンジに「意外なところから意外な人選」で様々なキャラが登場します。今回「きょうこ」と「みさこ」という女のコ2人が主人公なこともあって、女性キャラが特に多く登場しているかなと思います。


 また、単純に「昔のキャラがリファインされたデザインで登場する」ってだけではなくて……「五代がみさこのストーカーをしていた」とか、「ひろしが漫画ヲタクになっている」とか、「小学生のころに山田が長谷部に一目ぼれしてしまう」とか、キャラクター設定やキャラクター同士の関係性を独自に描き直している点も目立ちました。

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<Nintendo Switch版『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』より引用>

 これには賛否両論あるかもですが、私は「賛成」です。
 クリストファー・ノーランのダークナイト三部作が『バットマン』に新たな風を吹き込んだように、「くにおくんシリーズ」も今までの作品に縛られない独自解釈によって新しいシリーズに再構築(リビルド)するくらいで構わないと思います。

 3DS時代のアークくにおくんは「ファミコン時代の開発者を呼び寄せる」ことで旧作ファンに呼びかけていましたが、そうするとやっぱり「ファミコン時代の作風」から脱却できなくなっちゃうんですね。
 今回は外部の会社、しかもWayForwardというアメリカの会社が作ったことでその辺のしがらみから上手く脱却できていたと思うのです。それは単純に「主人公が女」ってだけではなく、「固定概念にとらわれずに一からシリーズを再構築する」ということが出来ていたと思うのです。


 ただまぁ個人的には不満点もあって、後半のボスはオリジナルキャラ(ですよね?)が多くなるので、「この枠にもっとメジャーなキャラをぶちこんで欲しかったなー」と思ってしまいましたが……こういう作品だと「どうしてあのキャラを出してくれないんだ!」って思われるのは仕方がないこと。
 今回は出なかったキャラに出てもらうためにも、WayForwardには是非またこの路線の続編を出してほしいです。個人的には豪田砂織を出して欲しかったなー。そして、お兄ちゃんとイチャイチャして欲しかったなー。


↓2↓

◇ シリーズ伝統のベルトスクロールアクションは健在!見た目は変わってもくにおくんだ!
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<Nintendo Switch版『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』より引用>

 ゲームジャンルは、昔ながらのベルトスクロールアクションです。
 2Dアクションながら「奥行き」があるタイプのゲームで、攻撃ボタンを重ねることでコンボというか連続攻撃が決まっていきます。オフラインでの2人協力プレイが可能で、同士討ち(フレンドリーファイア)の有り/無しも設定できます。


 私がプレイしたのはNintendo Switch版なので、ボタン説明はNintendo Switch版準拠になりますが……

・Yボタン=弱攻撃
・Xボタン=強攻撃
・Bボタン=ジャンプ
・Aボタン=特殊攻撃
・Rボタン=ガード
・Lボタン=舎弟の召喚

 こんなカンジ。キーコンフィグはありません。
 レベル1の頃には出来るアクションが少ないのですが、レベルが上がることで「倒れている敵を踏みつける」とか「倒れている敵を持ち上げる」といったアクションが増えていって、更にお店で必殺技(特殊攻撃)を購入することも可能です。キャラによって覚えられる必殺技(特殊攻撃)はちがうみたいなので、「1周目はきょうこでプレイしたけど2周目はみさこでプレイしようかな」なんて遊び方もできますね。

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<Nintendo Switch版『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』より引用>

 もちろんマッハキックなんかのおなじみの必殺技もあります。
 必殺技は緑色のゲージを消費して使い、このゲージは通常攻撃を敵に当てることで回復するみたいです。



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<Nintendo Switch版『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』より引用>

 ベルトスクロールアクションの定番である、「その辺に落ちているものを拾って武器として使う」要素ももちろん健在です。『ダウンタウン熱血物語』でもあったゴミ箱やチェーンだけでなく、自転車とかベンチとかヨーヨーとか様々なものを武器として使えるのが楽しかったです。魚市場でマグロ振り回して戦うのには笑いました。

 武器はリーチが長いものが多くて大人数相手での立ち回りに有効なのですが、今回は「武器の耐久度」があるので強力な武器をずっと持っていくみたいなプレイは出来ません。この辺の塩梅はすごくよく出来ていたかなと思いますね。


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<Nintendo Switch版『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』より引用>

 2つまでセットできる「アクセサリー欄」を使って、「武器の耐久度を上げる」とか、「○○な敵に対するダメージを5%上げる」みたいなカスタマイズも可能です。自分のプレイスタイルに合わせてアクセサリーを使い分けるのも『ダウンタウン熱血物語』っぽいし、女のコが主人公の「くにおくんシリーズ」というカンジもしててイイですね。



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<Nintendo Switch版『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』より引用>

 しかし、かわいい見た目に反して、難易度は決して低くありません。
 回復手段が「レベルアップ時の全回復」と「ショップで買える回復アイテム」くらいしかないので(あと、ごくまれに出るドロップアイテム)、大した回復アイテムが買えない序盤は特にキツイです。店が出てこない1面が一番厳しかったですし、碌な回復アイテムが売っていない2面もキツかった……3面以降は回復アイテムを買い込んでゴリ押しできるんですけどね。

 お店で買える消費アイテムも「○%体力を回復する」ものがほとんどで、ステータス補正的なアイテムが少ないのも残念。買う前に効果が分からないこともあって、一つ「値段の割に回復量の大きなアイテム」を見つけたらそればっかり買ってしまうようになっちゃいました。
 アクセサリーも含めて、買い物周りは「もっと工夫したら面白く出来たんじゃないかなー」と思わなくもないです。


--9月17日追記--
 コメント欄で指摘していただき確認してみたところ、食べ物などの消費アイテムは「初回のみ」ライフ回復+ステータスアップの効果があるみたいです。値段の割に回復量が小さいアイテムは、いろんなステータスが上がるとかですかね。とりあえず色んな種類のアイテムを使っていった方がステータスは上がるっぽいぞということで。



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<Nintendo Switch版『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』より引用>

 時折はさまる「ケンカアクション以外の動きが求められるシーン」や、特殊なボス戦などは、キライな人も多そうです。私は「ゲームに変化を付けるため」と好意的に受け止めましたが、それならもうちょっと難易度を抑えたらどうなんだとも思いました。ケンカアクションを求めて買った人に、シビアなジャンプアクションを遊ばせるんじゃないよ!



 難易度の高さは海外製だからなのかと思いましたが、そもそも昔の「くにおくんシリーズ」だって決して難易度の低いゲームではありませんし、『ダウンタウン熱血物語』もお金が貯まっていないスタート直後が一番キツイという見方が出来ます。
 個人的には、その難易度も「シリーズリスペクト」というカンジがしたし、その難易度に合わせて慎重な立ち回り&回復アイテムをごそっと買っていくプレイに徹したので丁度良かったのですが……「くにおくんシリーズ」を「派手な必殺技で雑魚敵を一掃する爽快ゲー」みたいに捉えている人は「コレジャナイ」と思ってしまうかも知れませんね。


↓3↓

◇ 日本でもアメリカでもない“リバーシティ”を舞台にした新たなシリーズが始まる!
 「くにおくんシリーズ」は1986年のアーケードゲーム『熱血硬派くにおくん』から始まるのですが、あの当時の「くにおくんシリーズ」って「私達の身近にある場所」が舞台だったと思うんですよ。1作目の1面が、駅のホームで他校の不良と殴り合うってステージですからね。

 『ダウンタウン熱血物語』でも、商店街を駆け抜け、公園とか工事現場とかで戦い、他校に乗り込んでボスと戦うというゲームでしたし……『ダウンタウン熱血行進曲』の、民家を通り抜けて、マンションの壁をよじ登って、屋上を走るってのも「私達の身近にある場所」が舞台だったと思います。


 しかし、くにおくん達は未だに高校生である一方、現実世界はそこから30年が立ってしまって……日本中から商店街がなくなっているとか、公園の遊具が撤去されてるとか、駅のホームには転落防止用のフェンスが付けられるとか、そもそもあんな見た目の不良はもういないとか。「くにおくんシリーズ」の舞台って、もう「昔の日本の風景」になっちゃっているんですね。『三丁目の夕日』的な、こんな時代もあったよねと。



 今作『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』は開発がWayForwardになったことで、絵柄がガラッと変わっただけじゃなく、一から作品世界を再構築したこともあって……「リバーシティ」という新しい街を舞台にした「くにおくんシリーズ」新章が始まった!カンジがしました(※1)

(※1:この「リバーシティ」というのは、海外での『ダウンタウン熱血物語』のタイトル『River City Ransom』から来ていると思うのですが)


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<Nintendo Switch版『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』より引用>

 例えば、メニュー画面がスマホだったり。


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<Nintendo Switch版『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』より引用>

 ショッピングモールを舞台にして戦ったり。


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<Nintendo Switch版『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』より引用>

 スクショじゃ絶対に伝わらないと思いますが、ラジカセの置いてある場所ではオシャレなボーカル曲が流れていて……ゲーム全体が「現代的」で「オシャレ」な雰囲気なんです。もちろんキャラや背景のドット絵もすごいです。ずっと1980年代から抜け出せなかった「くにおくん」がようやく21世紀にやってきたというか(いや、ラジカセは1980年代的ではあるんですけど・笑)。


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<Nintendo Switch版『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』より引用>

 ところどころアニメムービーが挟まったり、コミック調になったりする(この絵もすげえかわいい)ことから思うに……「現代を舞台にしてくにおくんシリーズを再構築させよう」というよりかは、「アメコミ的な世界観でくにおくんシリーズを再構築しよう」という狙いがあるのかなと思います。「リバーシティ」という舞台ですが、日本っぽいところもありますし、アメリカっぽいところもありますし、無国籍というか多国籍な世界を構築したかったのかなと思いました。

 ボイスは英語のみで日本語がないというのは残念でしたし、次回作があるなら日本語ボイスも入れて欲しいんですけど、その結果「よりアメコミっぽい雰囲気の作品」になれていたのも確かかなと思います。


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<Nintendo Switch版『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』より引用>

 新主人公の「きょうこ」と「みさこ」は、非常に漫画的なキャラで、明るくて、行動力があって、時に図々しく、時にずる賢くて、「くにお」や「りき」では描けないストーリーが描けていたと思います。

 「くにお」や「りき」には硬派で、ヒーローっぽいイメージが付いてしまっている分、ストーリーにあまり自由が効かないんですよね。『熱血硬派くにおくんすぺしゃる』で、プリクラを撮ろうとしているみすずを「すげえブスがプリクラ撮ろうとしてたぜ」と笑うくにおくんが描かれた時「くにおはこんなこと言わない!」と思っちゃいましたもの。でも、今作の「きょうこ」や「みさこ」ならそれが許されると思うのです。


 日本の会社だったらここまでの思いきりはなかったんじゃないかと思います。
 アメリカの会社だからこそ、シリーズの再構築と再起動が可能で、今までの「くにおくんシリーズ」を停滞させていた様々なものをぶち壊してくれたと思うので……是非是非この1作に留まらずに、この路線の作品を出し続けてほしいなぁと思います。



◇ 結局、どういう人にオススメ?
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<Nintendo Switch版『熱血硬派くにおくん外伝 リバーシティガールズ』より引用>

 「くにおくんシリーズ」を昔遊んでいたけど最近はすっかり遊んでいないやーという人や、「くにおくんシリーズ」という名前は聞いたことがあるけどどれから遊んでいいのか分からないという人には、シリーズを一から再構築しようとしたこの作品から遊ぶことをオススメします!
 ダウンロード専用ソフトとしてはちょっと定価は高いし、難易度も低くないんですけど、「くにおくんシリーズ」への愛に満ちて、ここから再起動しようという熱い志を感じる作品ですから。


 ちなみに「くにおくんシリーズ」はこの後、10月10日に『ダウンタウン乱闘行進曲マッハ!!』をSteam、PS4、Nintendo Switch用に発売予定です。2016年にPS4で、2017年にSteamで発売した『ダウンタウン乱闘行進曲 かちぬきかくとうSP』のバージョンアップ版だそうです。

 その『ダウンタウン乱闘行進曲 かちぬきかくとうSP』には、チームミスズとして「みすず」はもちろん「きょうこ」や「みさこ」も登場していたそうなので、『マッハ!!』の方にも当然出ることでしょう!これは買わなくてもイイかなー、『moon』と同日だし、と思っていたけどやっぱ買おうかな!


 そして、更に2019年秋に『イカすぜ!小林さん』という新たな外伝をSteam、PS4、Xbox One、Nintendo Switch用に発売予定だそうです。
 いや、流石に「くにおくんシリーズ」出しすぎでは……(笑)。

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≫ EDIT

『じんるいのみなさまへ』紹介/満点ではないけれど、唯一無二の「日常系アニメの中に入れる」ゲーム

わかった!Switchだね!
<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
「女のコ達が無駄話をするだけ」、それこそが楽しいんだという執念で作られたゲーム
荒廃した秋葉原でサバイバルをする――のは、プレイヤーじゃなくてキャラクター達
ストーリーには文句なし!有料DLCのやり方には文句しかない!


『じんるいのみなさまへ』
・発売:日本一ソフトウェア、開発:アクワイア
 プレイステーション4用ソフト:2019年6月27日発売
 Nintendo Switch用ソフト:2019年6月27日発売
  ※ Nintendo Switch本体機能でのスクリーンショット撮影○、動画撮影○
・ガールズアドベンチャー
・セーブスロット数:4


 私が1周クリアにかかった時間は約18時間でした
 有料DLCの2周目は既読スキップを使いまくって、1+2周合計で約27時間かかりました
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください

【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:△(重い設定もあるけれど、終始明るい展開です)
・恥をかく&嘲笑シーン:×(失敗することはあるけれども不快レベルではない)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:○(男性は存在しません、そんな生物はいません)
・動物が死ぬ:△(グロ描写はないけど動物を捕らえて食するサバイバルなんで)
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:○(「恋愛感情」はハッキリ描かれてるけど「肉体関係」とかはない)
・BL要素:×
・ラッキースケベ:△(CERO:Bなのはシャワーシーンのことか?)
・セックスシーン:×

↓1↓

◇ 「女のコ達が無駄話をするだけ」、それこそが楽しいんだという執念で作られたゲーム
 このゲームは「日本一ソフトウェア」と「アクワイア」のコンビで作られたガールズアドベンチャーです。
 「アドベンチャーゲーム」という言葉で『ゼルダの伝説』とか『トゥームレイダー』みたいなアクションアドベンチャーを想像してしまう人もいるかもですが、『逆転裁判』とか『ひぐらし』みたいなテキストアドベンチャーの方が近いです。言っちゃえばノベルゲームですし、「ソシャゲのストーリー部分」と言った方が若い人には分かりやすいかも知れません。

 PS4とNintendo Switchで出ていますが、私がプレイしたのはNintendo Switch版の方ね。



 「日本一ソフトウェア」という会社に対して、「インディーゲームをフルプライスで売る会社」と表現している人がいて言い得て妙だなと思いました。その表現をした人は恐らく、ダウンロード専用ソフトとして2000~3000円で買えるクオリティのものを定価7500円のパッケージソフトで売る―――という皮肉で言ったのだと思いますし、私もまぁ同意する部分はあります。開発費は抑えているのに、販売価格は抑えねえのかよとは思います。

 ただ、それは見方を変えれば「他の大手メーカーがやらない挑戦的なゲームを作ってパッケージソフトとして売る会社」とも言えると私は思うのです。挑戦的なゲームだから万人受けはしないし、大失敗することもあるけど、刺さる人には刺さる―――


 「インディーゲーム」という単語を、「安いゲーム」と捉えるか「挑戦的なゲーム」と捉えるかで、その意味は180度変わるんですね。


 『じんるいのみなさまへ』は本当にハートフル日常系百合なのか、百合愛好家が菅沼Pを小一時間問い詰めてみた

 発売前のプロデューサーのインタビューを読むと、その辺りのことも語られています。
 日本一ソフトウェアには『ディスガイア』のような本流と、「ある一部分を尖らせた、チャレンジングな性質のゲームを作る」という2つの方向性があって、このゲームは後者だったと。しかし、後者の代表例は『嘘つき姫と盲目王子』とか『世界一長い5分間』なんかだと思うのですが、今回はその中でも特に尖った企画らしく社内では全く賛同されなかったそうなんですね。

 その尖った企画というのが「百合」


 「百合」とは、女性同士の関係性を主題として描いた作品のことで―――漫画・アニメなんかでは「ガッツリと女性同士の恋愛を描いたもの」から、「女のコが集まってイチャイチャするだけのライトのもの」までたくさんあります。特に、『けいおん!』とか『ゆるゆり』のアニメがヒットしたあたりからライトな百合は「日常系アニメ」として一大ジャンルになったと言えます。

 しかし、ゲーム業界―――特にゲーム機用のゲームソフトでは「百合ゲー」なんてほぼ存在していません。
 たまたま『じんるいのみなさまへ』と『夢現Re:Master』が同じ月に出たから世に百合ゲーがたくさんあるように錯覚するかも知れませんが、工画堂スタジオですら『白衣性恋愛症候群』が2011年、『白衣性愛情依存症』が2015年、『夢現Re:Master』が2019年ですから、4年に1本くらいのペースでしか「百合ゲー」って発売されないんですよ。


 だから、一百合好きとしての意見を言わせてもらえれば、まずは「発売してくれてありがとう」なんです。売れそうにないどころか、そもそも市場が存在していないニッチなところを開拓してくれようとしたワケですから。
 このプロデューサーさんは学生時代から百合姫を買っているくらいの百合好きだったそうなのですが、社内で誰も「百合」が分かる人がいない―――からの、企画を通して、開発をしていく過程は大変だったろうなぁと思います。まぁ、それでもゲームとして許せないところはありましたが(笑)。



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<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

 「百合ゲー」なんだから、一番重要なのは「どんなキャラクターが登場するのか」でしょ!ということで、ここからは登場する女性キャラクターを紹介します。まずは、主人公「榛東 京椛(しんとう きょうか)」ちゃん。おばあちゃんっこなため妙に知識が古臭い、アニメオタク。

 いわゆる「アホの子」系の主人公で、明るいムードメーカーです。
 タイプ的には『けいおん!』の平沢唯とか、『ゆるキャン△』の各務原なでしこの系統なんですが、みんなからイジられるタイプなので『ごちうさ』のココアちゃんが一番それっぽいかと思っていたのですが、プロデューサーが『ゆるゆり』好きということを踏まえると赤座あかりなのかも。なんだかんだ、私はきょうかちゃん推しです。

 アニメ好きという設定なんだけど、序盤以外にそれをにおわせることを言わないので「シナリオ書いた人、あまりアニメ詳しくないと見た……」と思ってしまいました。

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<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

 ネタが微妙に古いし!



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<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

 恐らくこのゲームのキャラクターで人気投票をしたら1位になるであろう、ゲームオタク「菓子 永里那(かし えりな)」ちゃん。
 背が小さくて釣り目で、全体的に猫っぽいカンジなので、『けいおん!』のあずにゃんとか『ごちうさ』のチノちゃん系統なのかなと思いきや……そちらは有料DLCの朱香さんの担当で、えりなちゃんはノラリクラリとみんなにツッコミを入れていく『バンドリ!』の青葉モカとか『少女終末旅行』のユーリみたいなキャラでした。

 シナリオを書いている人も同じようにゲーム好きなんだろうなーと思うくらい、普段の言動から自然にゲームネタをはさみこんでくるのが好きなところ。テンプレのヲタクキャラじゃなくて、普通にゲーム好きの女のコってカンジなんですよね。まぁ、ちょっと知識が「本当に13歳ですか?」と言いたくなるくらい昔に偏ってはいますが(笑)。

ロードしてる?ディスク交換のタイミングかー?
<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>



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<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

 続いては、おっとりおっぱい「少弐 勇魚(しょうに いさな)」ちゃん。
 女のコ達が4~5人集まるアニメでは必ず一人はいるであろう、「おっとりしていて」「おっぱいが大きい」「母性あふれる」キャラです。『けいおん!』で言えばムギちゃんとか、『がっこうぐらし!』で言えばりーさんとか。

 その溢れる母性を活かして、このゲームでは料理担当を一手に担うのだけど、ひたすら前に突き進むメンバーと比べて自分が役に立っていないんじゃないかと不安になってくるという側面も描かれます。このポジションのコが一番闇が深いというのは伝統なのかも知れない。


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<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

 体力担当が「小松 和海(こまつ かずみ)」ちゃん。どうしてこのコだけ平々凡々な名前なんだ……というのは、特に伏線でもありませんでした。『デスノート』みたいな際どいテーマを扱う作品は「実在の人物と名前が被らないように突飛な名前を付ける」ことがよくありますが、このコだけ「よくある名前」なんですよねぇ。

 ボーイッシュで、でもおっぱいは大きいという、『きんいろモザイク』の猪熊陽子や『となりの吸血鬼さん』の夏木ひなた系のキャラですね。背が高くて体力があるだけじゃなくて、キャンプ知識があるというスーパープレイヤー。遭難したときには一人は欲しい逸材です。



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<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

 頭脳担当が「邑楽 幽々子(おうら ゆゆこ)」ちゃん。
 年少組だけどクールで頭が良くて、トラブルの解決方法をしっかり考えてくれる学者タイプのキャラです。あまり日常系アニメにはいないタイプのコかなぁと思いましたが、『となりの吸血鬼さん』のソフィーとかはそれっぽいか。

 所持アイテム一覧のところの解説なんかは、彼女の口調なんですよね多分。
 このコがいなかったらどうなっちゃっていたんだろうというくらいのMVPなのだけど、有料DLCでは上位互換みたいな朱香ちゃんが出てくるので活躍の場を半々に分けられるという可哀想な目に合います。朱香ちゃんについては後で書きますが、やっぱり有料DLCは失敗だったんじゃないかって思いますわ。

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<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

 本人も言っている。



 ということで、キャラクターは日常系アニメっぽいキャラが揃っていて。
 「女性同士の恋愛をガッツリ描く」百合作品というよりかは、「女のコがたくさん集まってみんな仲良し!」という日常系アニメに近い作品だと思います。実際、先のプロデューサーのインタビューでも『けいおん!』や『ゆるゆり』、『ゆるキャン△』なんかを楽しんでいた(る)人に向けたと書かれていますし、そういった日常系アニメの主人公になれるというコンセプトのゲームだと思うんですね。


 『ゆるキャン△』って百合かなぁって話をし始めると、5時間くらいかかりそうなのでやめておきます(笑)。

 カップリングは固定で、「プレイヤーの行動によってくっつくカップルが変わる」みたいなことはありません。ストーリー展開も(有料DLCを除けば)一本道です。個人的にはゲームなんだから自由にカップリングを選ばせて欲しかったんですけど、マルチシナリオを実装するような開発期間はなかったんでしょうね。そこはホント残念……

 メインストーリーはフルボイスで、声優さん達は正直名前を聞いたことのないような方ばかりだったのですが、みなさんしっかり上手いし、「初めて聴く声」だからこそ「この作品にしか存在しないキャラ」に聴こえるというのは日常系アニメでもよくあるキャスティングかなと思います。終盤のきょうかちゃんの演技がね、すごく良くてね……



 開発中に社内で「このゲームは無駄話が多すぎないか?」と言われたそうなんですが、「そういう日常的な会話を楽しんでもらう作品なんだ」と押し切った執念は見事だったと思います。
 ゲーム機用のゲームじゃないですけど、スマホ用で大ヒットしている『バンドリ』なんかは「今日は買いたかったパンが売り切れてた」みたいな心底どうでもいい話を女のコ同士がしているのを眺めるのがホーム画面だったりしますし……「無駄話」にこそ百合が宿るんですよ!

 それなのに、百合に理解のない人間が「女が喋っているだけで中身がない」とか言ってくるのは、それこそ『けいおん!』のアニメがヒットした10年前に出てきた「ストーリーがない」「成長を描かなければアニメではない」みたいな10年遅れの価値観なんですよ!ゲーム業界は(百合に関しては)10年遅れている!




 ということで、基本的には「女のコ達がイチャイチャするのを眺めるノベルゲー」で、百合好きとしてはそのコンセプトを絶賛したいのですが……ノベルゲーとして致命的な欠点がありまして、このゲーム「セーブが各章の終わりか1日の終わりにしか出来ない」んです。会話の途中でセーブ出来ないんですね。
 特にどこにでも持ち運べるNintendo Switchなら、空き時間にちょっと起動して読み進められるからノベルゲーとの相性が無茶苦茶イイはずなんですけど……このゲームは好きなタイミングでセーブが出来ないため、「空き時間にちょっと起動する」のが難しいのです。

 スリープモードを使えばええやんってことなのかも知れませんし、実際自分はスリープモードをフル活用してちょっとずつ読み進めてクリアしましたが、そうすると「他のゲームと並行して遊ぶ」ことが出来ないんでストレスになるんですよ。おかげで『スーパーマリオメーカー2』ほとんど起動できなかったよ!


 『バイオハザード』みたいに「セーブするタイミングを考える」ことまでゲーム性に落とし込んでいるのならともかく、そうでないなら「セーブできるタイミングが限られている」ことがプレイヤーにとってプラスに作用するところは1ミリもありません。開発期間が短いとか言い訳にならず、ノベルゲー作るなら「どこでもセーブ」はマストで実装しなきゃいけません。
 料理自体は美味しいのに、「お皿を買ってくる時間がありませんでした」とテーブルの上に直で盛り付けてくる料理屋くらい、「自分達の良さを台無しにしている」ところですからね!

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<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

 1日の終わりに「セーブしますか?」と聞かれるのをスキップして必ずセーブすることを「オートセーブ」と言い張って、オプションでオン/オフ出来るとかドヤ顔で言ってくるのも神経を逆なでしてくれる。それを世間では「オートセーブ」とは言わないですよ……


 セーブデータ周りではもう一つ許せないことがあって……エンディング後にセーブしたデータは「2周目のオープニングから始まる」セーブデータになるため、クリア直前の世界を歩き回りたい場合はセーブデータを分けておく必要があります。
 これはまぁ許せるのですが、有料DLCのルートだと最終日のセーブデータは「エンディングを見る」以外のことが出来なくなります。有料DLCルートではクリア直前の世界を歩き回りたい場合は「最終日の1日前のセーブデータ」を分けて保存しておかなくちゃならないのです。初見でプレイしていたらいつが最終日かも分からないし、セーブデータ4つしか保存できないのにいちいち細かくセーブデータ分けられないでしょ!

 そのため、せっせと集めたレシピや、つくった料理の一覧も、全部確認できなくなってしまいました。「女のコ達の日常を楽しんで欲しい」というゲームなのに、強制的に日常が終わるという。


 セーブデータ周りはプレイしたら真っ先に不満に思うところだろうに、クロスレビューで酷評したファミ通はこういうところに触れないんですよね。「遊ばずにレビューしたんじゃないの」とまでは言いませんけど、ユーザー目線に立ったレビューだとはとてもじゃないけど思えませんよ。


↓2↓

◇ 荒廃した秋葉原でサバイバルをする――のは、プレイヤーじゃなくてキャラクター達
 「女のコ達が4~5人集まってイチャイチャする日常系アニメ」と言っても、例えば『けいおん!』だったら「バンド」、『ごちうさ』だったら「喫茶店」、『ゆるキャン△』だったら「キャンプ」と、作品によって描いているものは違います。

 「日常系アニメのようなゲーム」を目指して作られた『じんるいのみなさまへ』が描いているのは、ズバリ「サバイバル」です。


 自分達以外誰もいなくなった世界で、力を合わせて生きていこうというストーリーなんですね。

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<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

 なので、「誰もいなくなった街」を歩き回る探索パートというのがあります。
 舞台となるのは秋葉原で、『AKIBA'S TRIP』などを開発してきたアクワイアの開発なので、荒廃した秋葉原が3Dマップで作りこまれています。ホテルの外に出たら、街の端から端までシームレスで移動可能。『AKIBA'S TRIP』では「この店、ゲーム内ではまだ○○だけど、現実ではもう潰れて△△になっちゃったんだよな」みたいなこと言われていましたが、『じんるいのみなさまへ』なら大丈夫!全部の店が平等に潰れている!(笑)


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<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

 秋葉原なので実際に秋葉原に行ったことのある人はもちろん、行ったことがない人も「この景色は『ラブライブ!』で観たことある」とか「ここにあの駿河屋ゲーム館があったのか」みたいな楽しみ方が出来ます。
 写真は「ガンダムカフェ」の跡地、『ガンダムビルドダイバーズ』ではすぐそこの階段でリクとチャンピオンが喋っていたっけ。



 という探索パートの映像で「このゲームはガチなサバイバルアクションゲームなのか」と勘違いしてしまい、「自分には難しそう」と尻込みしてしまう人だったり、逆に『7 Days to Die』みたいなゲームだと期待していたのに全然ちがったという人だったりが続出してしまったみたいなんですが……このゲーム、基本的には「ノベルゲー」で、探索パートは「目的の場所に着くとストーリーが進行するだけ」くらいに捉えてイイと思います。

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<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

 あの黄色い光が、「ストーリーが進行する場所」です。
 ストーリーを読んでいれば「次に行くべき場所」は説明されますし、もし読み逃しちゃってもLボタンを押せば「○○に行こう!」と教えてくれるので親切。

 「荒廃した秋葉原で自給自足のサバイバル生活をしなくてはならない」のですが、食料調達や道具の作成、インフラの整備などもストーリーを進めるだけでキャラクター達が全部やってくれます。プレイヤーがあれこれ悩んだりする必要はありません。
 だってこのゲーム、「日常系アニメみたいな百合を楽しむゲーム」ですもの。襲ってくる敵もいなければ、シビアな食糧管理なんかも必要ありません。ゲームが下手な人が遊ぶと女のコ達がズタボロになっていって最終的に餓死するみたいなゲームだったら、ちっとも「日常系アニメ」っぽくないじゃないですか!



 まぁ、後半は大雑把な場所しか指定されず、どこに行けばイイのか分かりづらいところは不満なのですが……その根本的な原因が。

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<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

 「黄色い光」が背景に溶け込んで見つけづらい!
 いや、マジで、どうしてこんな色にしたの……もっと見やすい色にしようよ。レインボーカラーにしてキラキラ光って遠目にも見つけやすいくらいで丁度イイでしょう。お店探索と色が被っているし。


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<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

 逆に、ファミ通のクロスレビューなどで批判された「地図に現在地が表示されない」というのは、それを受けて公式でもパッチで追加するとアナウンスしているのですが……個人的には、それは雰囲気ぶち壊しなのではと思いました。

 このゲームは、「スマホなどの電子機器がなくなった世界」で地図と地形を見比べて探索することによって、ゲームが進むにつれて「どんどん街の構造を覚えてくる」「庭のようになってくる」ところにプレイヤーとキャラクターの一体感があるというのに―――「他のゲームではマップに現在地が表示されるのが普通だから」って理由で、そこを批判するファミ通のゲームセンスのなさよ!他に批判するところあるでしょ!よりによってそこかよ!


マップ把握はゲーマーの基本
<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>



 「移動速度が遅い」という批判はまぁ分かる。
 大して運動神経も良くなさそうなきょうかちゃんの移動速度ならこんなもんだとは思うので、移動速度を上げるよりもファストトラベル機能を付けて欲しかったとは思います。

 欲を言えば、ゲームが進むことで「自転車」とか「馬」とかを入手できるようになって、それで移動速度が上がる―――みたいな要素があれば完璧だと思うんですが。このゲーム、開発の予算がなさすぎて主人公のきょうかちゃん以外の3Dモデルが作れなかったくらいなんで。「自転車に乗るモーション」とか「馬に乗るモーション」とか、とてもじゃないけど作れなかったのでしょう。

 出来ることならば、きょうかちゃん以外のキャラも3Dモデルを作ってそうしたキャラが街を歩いているみたいなこともやって欲しかったですよねぇ。畑に行けば和海が農作業をしていて、川に行けばえりなちゃんとゆゆちゃんが釣りしてて、ホテルに戻ったら勇魚さんが夕食の下ごしらえをしている――――そうした日常を見せてくれたら、もっと「日常系アニメっぽいゲーム」になったと思うんですけどねぇ。


 その代わりと言っちゃなんだけど、きょうかちゃん以外に連れ歩く2人を選ぶことで歩いている最中にその2人が会話する要素はあります(ボイスはなし)。これ、地味に「どのキャラとどのキャラの組み合わせか」と「今ストーリーが何章か」で会話内容が変わるという優れものなのですが……パターンがそれぞれ2~3ずつしかないので、同じ会話を延々とループして読まされるという。

 ここはマンパワーで頑張るところでしょ!
 こういうところこそ『バンドリ』とかやって見習ってほしかったです。


 特定キャラと特定キャラを連れている時に特定の行動をすると特殊イベントが起こるという要素もあるみたいなんですが、自分は朱香とえりなちゃんで釣りをした時に1回見ただけです。他のキャラの組み合わせでもあったのかも知れないけど、メンバーの入れ替えも1日の終わりにしか出来ないので組み合わせを試しづらいんですよねぇ。



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<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

 多くのオープンワールドゲーが「目的地に着けばストーリーが進行する」「けど、横道に逸れて延々とサブクエストをクリアしたりも出来る」みたいなカンジで、このゲームも「メインストーリーを進める」ことを無視して秋葉原を自由に探索することが出来ます。

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<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

 「お店の探索」「畑での作業」「釣り」などは、素材や食材が手に入る代わりに時間を消費します。これによって探索時間が12時間を超えるとホテルに強制的に戻されて1日を終えます。
 1日の最後に料理を作れないと翌日「空腹状態」で探索に必要な時間が倍になるというペナルティを受けるので、メインストーリーから逸れた横道の遊びとしては「毎日の食事を作れるくらいに食材やレシピを集めて色んな料理を作る」のが目的になりますかね。

 ぶっちゃけ探索時間が倍になるペナルティを受けても、探索せずにメインストーリーを進めればイイし、イザとなったら大量のカップラーメンもあるので、ペナルティは激ゆるですけどね。



 いろんな食材を集めていろんな料理を作っていくのは、それなりに楽しいです。『牧場物語』系のゲームでも「あの食材が手に入ったら、この料理もこの料理もこの料理も作れるようになる!」という楽しさがありますが、それに近いものがあります。ただ、素材に関しては一部の消耗品以外はほぼ何の役にも立ちません。

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<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

 というのもこのゲーム、「ノベルパート」と「探索パート」が上手く噛み合っていないんです。序盤から自由に「探索」して大量に持っている素材も「ノベルパート」のストーリーでは持っていないことになっていて、「○○を作るためには××が必要だから△△にないか探しに行こう!」と大量の××がアイテム欄にあるのに言うんですよ。頭にメガネ載せながら「メガネメガネ」言う人かよ!

 ただまぁ、こういうこと自体は他のゲームでもよくあって……『The Escapists2』でも「既にそのアイテムは持っている」のに「指定された場所にあるアイテムを取ってこなくちゃいけない」仕様だったため、既に持っているこれじゃダメなのと思ったものでした。だから、あまりそこを批判したくはないのですが。


 でも、100円玉硬貨だけは「ノベルパート」と「探索パート」がしっかりと連動して、あれだけ大量に貯めた100円玉硬貨がストーリーの都合で全部なくなったのは許してねえかんな!プレイヤーの都合のいいようには連動しないのに、都合のわるいようには連動するダブルスタンダード!
 この辺が「遊ぶ人の気持ちに立ってゲームが作られていない」と思ってしまうところです。強制的に100円玉を全部失うことによってゲームが面白くなったと思いますか?と訊きたい。



 「メインストーリー」を進めずに、秋葉原中を「探索」して遊ぶ要素がある―――と言っても、このゲームだと料理は1日1つしか作れないし、作った効果も「採取量が1.1倍になる」みたいなショボショボなものだったりで、あんまりカタルシスがないんですよね。
 例えば『ルーンファクトリー』みたいに作った料理を複数持ち運べて、探索中に「○○を食べて移動速度アップ!」「××を食べて釣り効果4倍!」「△△を食べて畑の収穫量が10倍だー!」みたいにガンガンパワーアップしていけば楽しかったと思うんですけどね。

 あとは「作った料理で図鑑が埋まっていく」とか「釣った魚で図鑑が埋まっていく」みたいな要素があるとか、他のキャラがメインストーリーとは関係ないサブクエストを出してくれるとか、そういう目的があったならもっと横道に逸れるのも楽しかったと思うのですが……そういうものもありません(PS4版には一応「料理をたくさん作る」みたいなトロフィーがあるし、今までにどの料理を作ったのかは料理一覧の画面から見ることはできる)


 一つ一つの要素は良いのに、それが上手く噛み合わなかったというか……
 「ゲームとしてどう遊ばれるのか」の完成したビジョンがないまま作られたような気がします。

 それとも実装させるはずの仕様が、開発期間の短さで実装できなかったとかですかね。もったいない作品でした。


↓3↓

◇ ストーリーには文句なし!有料DLCのやり方には文句しかない!
 このゲーム―――「ダメなところ」「行き届いていないところ」を挙げればキリがないんです。
 しかし、じゃあ「ダメなところしかないゲームなのか」と言ったらそんなことはないし、冒頭から書いているように日常系百合ゲーという「他のゲームにはやらなかったことをやろうとした」ことは確かですし、ストーリーは文句なしで良かったと思います。


 そういや、夏から始まるアニメには「無人島で遭難したり」「宇宙空間で遭難したり」「世界中の人が石化したり」、サバイバルものがやたら多いのですが……“他に頼れる人がいない”状況で限られたキャラクター達が試行錯誤して生き延びようとする話は、やっぱり面白いんですよ。


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<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

 『じんるいのみなさまへ』もそうです。
 「魚を食べたいけど、魚を捕まえられるような網がない」→ いろんなお店を探索→ 「ハンモックで代わりにならないかな!」と、生活に必要なものを秋葉原にあるもので代用したり作ったりするのが楽しかったです。


 そうしてみんなで力を合わせて生きていく内に、一人一人に劣等感だったり憧れだったりが芽生え、感情が少しずつ変化していくものを描いているので……「サバイバル」と「百合」を上手く組み合わせたストーリーになっていたと思われます。ネタバレになるので何かは言わんけど、大量のアレも良かったです。


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<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

 そして、誰もが気になるであろう「どうして秋葉原に誰もいなくなっていたのか」という世界の謎も――――序盤からガンガン伏線が張られて、先が気になるストーリーになっていました。
 プロデューサーのインタビューによると「日常系の百合はゲームとは相性が悪いので、大きな物語として謎で引っ張ることにした」とのことで、実際「百合」に興味がない人も「序盤は女が喋っているだけで退屈だったが終盤の謎が明かされていく展開は面白かった」という感想の人をチラホラ見かけたので狙い通りだったのかなと思います。


 「ノベルパート」と上手く噛み合っていなかった「秋葉原の探索パート」も、あのメインビジュアルがなかったら買っていなかったという人も多いだろうし、百合ゲーの今の市場規模では「百合以外の要素」を売りにしなきゃいけないんだなぁとちょっと悲しくなりますけどね……



 それでも、「サバイバル」「百合」「世界がどうしてこうなったのかという謎」が組み合わさったストーリーは見事だったし、自分はエンディングに向けた展開はすごく好きでした。
 ノベルパートの背景がストーリーとあまり合っていないみたいな不満点がないワケじゃないですけど、低価格のノベルゲーにはよくあることですしね(このゲームはフルプライスですけど)。





 だが、有料DLC。オマエはダメだ。
 このゲームの有料DLCは500円で、1周目のクリアデータがあると、6人目のキャラが追加された「別ルートのストーリー」が楽しめるという売り文句でした。

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<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

 追加された6人目は「朱香 CyxaЯ(しゅか すはーや)」ちゃん。
 日本人とロシア人のハーフで、12歳で大学生をしている天才留学生だそうです。


 ふむふむ。
 「2周目以降限定」ということは、この天才設定を活かして「1周目ではなかなか気づかなかったことに彼女が早めに気付いたり」「1周目では謎だったところが彼女がいると分かったり」するのかな?と思うじゃないですか。そういうのはほとんどないです。

 ストーリーの8割はほぼ同じ内容で、終盤のみ彼女がいることで別展開に進む程度です。確かに終盤の展開で「1周目では明らかにならかった真実が判明する」ところはあるんですけど、私は有料DLCの方のエンディングはあまり好きじゃありませんでした。エンディングに向けてのストーリーの盛り上がりみたいなのがまったくないんですもの。


 そもそも、どうして有料DLCは「2周目以降限定」だったのかって話ですよ。
 有料DLCを売るなとは言いません。ニッチなゲームだから、少ない購入者から更に集金したい気持ちは分かります。でも、500円払った人に8割同じ話をもう1回読ませるってどういうことよ。1周目の時点で有料DLCを使わせてくれたって良かったじゃないですか。終盤で選択肢によってルート分岐するようにしておけば、事前にセーブデータ分けておくとかで対応できたじゃないですか。


わたくしたちは全員で力を合わせてきた
<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

 8割同じ展開をするのに「わたくしたちは全員で力を合わせてきた」みたいに言われても、オマエがいなくても問題のなかった1周目をオレ達は知っているぞ……!と言いたくなってしまいます。



 「百合」部分のストーリーはそれなりに良かったのですが、そのためだけにもう1周遊ぶ時間が必要なことを考えるとあまりオススメは出来ませんね。2周プレイしようとすると、「セーブできるタイミングが限られている」のと「探索パートの移動の遅さ」が更にのしかかってくるという。
 自分はそれでも「1周目ではあまり作れなかった料理をなるたけコンプしたいな」と思ってがんばってプレイしたのですが、前述したように最後の最後でセーブデータがおじゃんになったので持っていた匙をぶん投げました。


 このゲーム……
 「コンセプト」も「キャラクター」も「ストーリー」も良かったと思いますし、一つ一つの要素は光っているのに、盛り付け方でとことん台無しにしているゲームだなぁと思いました。このゲームがそこそこ売れたことで、もしまた「百合ゲー」を作る機会があったなら、もうちょっと遊ぶ人の気持ちを考えて作ってほしいと思いますわ。


◇ 結局、どういう人にオススメ?
ちゃんと考えた方が良い気もするんだけど、すっごく眠い
<画像はNintendo Switch版『じんるいのみなさまへ』より引用>

 いろいろと書いてきましたが、私の不満点は……

・基本的にはノベルゲーなのに好きなときにセーブできない
・目的地に行けばストーリーが進むゲームなのに、目的地の色が保護色で見づらい
・消えた100円玉
・有料DLCを買うと、8割同じ話をもう1回読まされる


 大体この4つに集約されるので。
 これらを許容できる人で、『けいおん!』『ゆるゆり』『ゆるキャン△』などの日常系ライト百合アニメが好きな人や、「サバイバル」「百合」「世界がどうしてこうなったのかという謎」が組み合わさったストーリーに興味がある人にはオススメです。

 実際「似たようなゲームがあるか」って言われたらありませんし、唯一無二のゲームなのは間違いないです。このゲームをきっかけに「百合ゲー」がもっともっとたくさん作られるようになって、全体的なクオリティが上がってくれることを期待しています。


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『Her Story』紹介/このゲームに名探偵はいない。調べるのも考えるのもアナタ自身な、究極の一人称推理ゲーム

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<画像はSteam版『Her Story』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
自分の頭で考えて「検索」する、ゲームでしか味わえない調べものアドベンチャー
細切れになったインタビュー動画を、一つ一つメモして整理して真実を導き出せ!
「答え合わせ」などない、だからこそ「人と話したくなる」ストーリー


『Her Story』
・開発者:Sam Barlow氏、公式日本語化:PLAYISM
 Steam版:2015年6月24日発売(※公式日本語版は2016年11月24日より)
 PLAYISM版:2016年11月18日発売
・インタラクティブムービー+推理アドベンチャー
・セーブスロット数:1


 私がエンディングまでかかった時間は約6.5時間でした
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:○(人が死ぬのも重いけど、彼女の人生が壮絶すぎて……)
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:△(女性目線で「好きな男が別の女とヤった」のって寝取られに入ります?)
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:△(これが果たして百合なのかどうかで一晩は議論できる)
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:△(セックスについて語るシーンが度々出てくる)

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◆ 自分の頭で考えて「検索」する、ゲームでしか味わえない調べものアドベンチャー
 このゲームを日本語で遊ぶには、2019年6月現在はパソコンで遊ぶしか選択肢がありません。iOS版Android版は出ているのだけど日本語訳がなく、ゲーム機用には海外含めても移植されていないみたいです。

 それでもこのゲーム、海外では様々な賞にノミネートされ、高い評価も受けた話題作なため―――私はずっと「パソコンを新しく買い換えたら遊ぼう」と楽しみにしていました。遊んでみた結果、万人にオススメできるものではないけれど、「ゲームとは何か」「アドベンチャーゲームとは何か」を議論するのに欠かせない“ターニングポイントになる作品”だと思ったので紹介記事を残しておきます。


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<画像はSteam版『Her Story』より引用>

 これが、このゲームのメイン画面です。ウィンドウ部分だけじゃなくて、スクショ全部がゲームの画面ね。
 Windows95あたりを彷彿させる昔のパソコンのデスクトップ画面そのもので、操作も「マウスでカーソルを合わせて」「ダブルクリックでソフトを開く」とか「キーボードで文字を打ち込む」とか、パソコン操作そのものです。ゲーム機用に発売されないのは、ゲームコントローラで遊んでも没入感が味わえないからかなと思います。


 デスクトップにある「Readme.txt」にも書かれていますが、このゲームは警察のデータベースに残された「1994年に起こったとある事件についてのアーカイブ映像を調べる」ゲームです。
 古いデスクトップな理由はよく分からないんですが、「主人公がこのパソコンで調べている年」=「私がこのゲームを遊んでいる今の年」みたいなので、時代の変化に左右されないように敢えて逆に90年代相当のパソコンを再現しているのかなと思います。


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<画像はSteam版『Her Story』より引用>

 初期設定では「ブラウン管のような表示」になっているのも芸が細かい(笑)。
 私は「スクショを撮るのに向いていないな」とアンチグレアにチェックを入れて普通の画面にしちゃいましたが、各所のレビューを読むと「ブラウン管のような表示」のままにした方が活きる演出があったとか。まぁ、お好きな方で。


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<画像はSteam版『Her Story』より引用>

 ごみ箱の中には「オセロ」的なゲームまで入っています。
 P1もP2も自分でやらなきゃいけないのでこれで遊べるワケではありませんが、昔のデスクトップ画面をイジっているような雰囲気は抜群ですよね(笑)。「これがクリア条件だったりするのだろうか?」と一応最後まで自分vs.自分で遊んでみたのは私だけで良いです。


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<画像はSteam版『Her Story』より引用>

 このゲームでプレイヤーがやることは、「検索窓」に語句を入力して、出てきた「動画」を観る―――これだけです。観ているのはあくまで「過去の動画」なため、プレイヤーが質問をしたり、行動を起こしたりすることは出来ないんですね。
 「動画」は、数日に渡る同じ女性の事情聴取らしく、この警察のデータベースは彼女の一言一句が検索できるようにしてくれています。例えば、ゲームを始めた直後はプレイヤーが分かりやすいように「殺人」という言葉が予め検索窓に入っていて、そのまま検索すると「殺人」という言葉を彼女が発した動画が全て出てくるという塩梅です。イギリスの警察は有能ですね。


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<画像はSteam版『Her Story』より引用>


 「バラバラの日」に撮影された、「同じ人物」の発言を観ていくことで、事件の真相が徐々に浮き彫りになっていくのですが……この警察のデータベースは「時系列順に動画を観る」ことは出来ず、あくまで「検索ワードで出てきた動画を観る」ことしか出来ません。「この発言の前後の動画を観たい」と思っても、前後の動画に出てきそうなワードを予想して検索するしか手段がないのです。イギリスの警察は無能か!


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<画像はSteam版『Her Story』より引用>

 また、このゲームの「バランス」として非常に優秀なところなんですが……
 どんな検索ワードで出てきた動画も、再生できるのは「最初の5件」だけなんです。

 よく使われるワード……例えば「今」というワードで検索すると11件の動画が出てくるのですが、プレイヤーが再生できるのは時系列順で「最初の5件」だけです。当然ながら、後半の動画の方が「事件の真相」に近いため、プレイヤーは「前半には出てこない」「後半にだけ出てくる」ワードを推測して検索しなくてはならないのです。イギリスの警察はどうしてこんな仕様で構わないと考えたんだ……!(笑)


 ついこないだキンドル本で推理小説の短編集を発売したくらいなので、私は「推理もの」の小説も漫画も映画もゲームも大好きですが、この『Her Story』は「ゲームでしか味わえない」体験だったと思います。プレイヤーが自分で推理して、自分で考えて、自分で真相に近づいていく―――これは小説や漫画や映画には出来ない、ゲームならではの強みですよ。


↓2↓

◆ 細切れになったインタビュー動画を、一つ一つメモして整理して真実を導き出せ!
 このゲームを今から遊ぼうという人に一つアドバイスをしていくと、「メモを取りながらプレイしましょう」ということです。数日間に渡る事情聴取の動画を断片的に見るだけだと、ミスリードを誘う描写も多いし、この女の人が言っていることが二転三転するために混乱してしまうと思うんですね。

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<画像はSteam版『Her Story』より引用>

 例えば、↑の動画なら「1994年6月18日」の「19時25分02秒」と書かれています。
 「6月18日の発言はどうだったのか」「前後の文脈はどうなのか」といったことを整理するためにも、一つ一つの動画の「日付」と「時間」と「簡単な内容」くらいはメモを取っておいた方がイイでしょう。私はiPadのメモ帳に記録していましたが、単語帳みたいなカードタイプのものの方が順番を後から変えられるからイイかも。

 メモをとらなくてもクリアだけなら出来ないことはないというか……次の項で述べますが、このゲームは「事件の真相」がよく分かっていなくてもエンディングは迎えられるのでメモを取らない遊び方も出来なくはないのですが、しっかりと「事件の真相」に向かうためにもメモを取りながら遊ぶことを推奨します。


 フラグ管理に縛られることなく自分で考えた検索ワードから出てきたバラバラの動画を観て、事件の全体像を想像していく様は、他の作品では味わえない感覚でした。「バラバラの物語から真実を導き出す」のなら『ひぐらしのなく頃に』なんかもそれっぽいですし、「時系列がバラバラのストーリーを集めていく」のなら(このゲームより後の発売ですが)『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』にも当てはまると思うのですが、そこに「自分で推理して検索ワードを考える」要素が入るため、プレイヤーの数だけ「真実への辿り着き方」がちがうのが面白いと思うんですね。


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<画像はSteam版『Her Story』より引用>

 絶対に「事件に直結するワード」だろうと推理して「死体」で検索したら、何故だかギター弾いて熱唱している動画が始まって、その歌詞に出てきただけだったというのは笑いました。

 どこまで計算しているのかは分からないのですが、「一つの単語で一気に真相が分かる」みたいなのがなくて、「徐々に、徐々に真実が浮き彫りになっていく」感覚があって……台詞の一言一句まで計算しているのかなと思いましたし、ましてや元々は英語のゲームだったのを日本語に翻訳したPLAYISMの功績スゲエって思いますよ。英語の分からない私みたいな人間でも、問題なく楽しめました。


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<画像はSteam版『Her Story』より引用>

 全部の動画の中で、どれを観て、どれを観ていないかが分かる「データベースチェッカー」というソフトもあります。とは言え、クリックしたらその位置の動画が観られるなんてことはなく、ただ単に「既に観たかどうか」しか分からないんですけどね。でも、本当に手探りで調べていくゲームなので、これがあるとないとでは大違い。

 ものすごく斬新なゲームかつ、インディー精神にあふれた作品なので、「ちょっと飯野賢治さんっぽいかな?」と思いながら遊んでいましたが、飯野さんだったらこんな「プレイヤーに対する気遣い」なんて絶対しない!綺麗な飯野さんだ!貴様、ニセモノだな!



↓3↓

◆ 「答え合わせ」などない、だからこそ「人と話したくなる」ストーリー
 ここから先は「クリア条件」についての話を書くので、ストーリーのネタバレはしませんが「クリア条件」なんて知りたくないという人は読まない方が身のためです。実際にこのゲームをプレイして、クリアしてからお読みください。


 さっきの項で「データベースチェッカー」なんて出したから、ひょっとしたら「なるほど、このゲームはこれを全部埋めていくゲームなんだな」と勘違いしちゃった人もいるかも知れません。確かにSteamの実績には「全部の動画を観る」というものもあるみたいですが、全部の動画は観なくてもクリアは出来ますし、私は観ていません。


 そもそもこのゲーム、プレイヤーが「事件の真相」が分かったかどうかすら重要視していないのです。
 普通この手のゲームだったら「証拠は集めた!あとは、この証拠で犯人を追い詰めるだけだ!」という展開になっていくと思うのですが、このゲームにはそういったものはありません。ある程度の動画を観たら「そろそろ終わりにするか?」と聞かれるので、「ハイ」と答えるとエンディングです。『逆転裁判』で言えば、「探偵パート」だけやって「裁判パート」がないみたいなことです。


 だから、メモを取らずにプレイするとエンディングを迎えてもなお「え?どういうことだったの?」と分からない人もいちゃうと思うんですね。普通の推理小説なら「探偵役」のキャラが事件の真相を明らかにしてくれますし、『逆転裁判』だったら裁判の果てに真相が見えてくるものですが……このゲームはあくまで「過去の事件を調べる」だけなので、真相はプレイヤー自身が考えなくちゃいけないし、真相にたどり着けなかったとしてもエンディングを迎えられちゃうのです。

 でも、現実の世界では「答え合わせ」なんかしてくれないし、「答え合わせ」をしてくれないからこそ「え?あれってどういう意味だったの?」と周りと話したくなると思うんです。「彼女の生い立ち」「事件に至るまでの道」、そして「彼女がその後どうなったのか」を誰かと話したくてウズウズしてくるのです。



 私はこれをものすごい英断だったと思います。
 それまでは「一本道」路線だったから一つでもクリア出来ないところがあると詰むしかなかった『ゼルダの伝説』シリーズが、『ブレス オブ ザ ワイルド』で「チュートリアルとラスボス以外は行っても行かなくても良い!」としたことでクリア出来ないところがあっても無視できるようになったように――――
 どうしたって「一本道」路線になりがちな推理アドベンチャーというジャンルに、「プレイヤー自身が好きなように調べれば良い」という圧倒的な自由度を取り入れたことで、「事件の真相」にすら気付かなくたってイイじゃないかとしたこの作品―――推理アドベンチャーというジャンルにおいて、一つの「ターニングポイント」になると思うんですね。


 実際、主人公は「過去に起きた事件を調べる」だけの人ですからね。この証言を元に誰かを逮捕する警察役でも、この証言を元に誰かを追い詰める検事役でもありません。ただ「調べる」だけの人だから、プレイヤーが「もうこの事件について調べるのはイイや」と思ったところでエンディングなのです。

 この没入感はすごいし、だから私「全部の動画を観よう」とか「Steamの実績をコンプしよう」なんて思わず、ある程度のところで「もういいや」とエンディングにしちゃったんですね。全部の動画を自力で観るのはものすごく大変なのだけど、だからといって攻略サイトを観ながら動画を埋めていく作業というのは、この作品の「プレイヤー=主人公」の没入度にふさわしくないと思いましたんで。

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<画像はSteam版『Her Story』より引用>



◇ 結局、どういう人にオススメ?
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<画像はSteam版『Her Story』より引用>

 「好き嫌い」の分かれるゲームだと思うんですが、このジャンルの一つのターニングポイントとして「推理アドベンチャー」が好きな人には遊んで覚えておいてもらいたいタイトルだなと思います。定価も600円弱と安いですし、クリアまでのプレイ時間もそれほどではありませんし(私はむしろものすごくかかった方で、他所のレビューを読むと私の半分くらいの時間で終わらせている人が多かったみたい)。

 あと、「ゲームとは」という表現に興味がある人にもオススメです。
 他のゲームにはない体験をさせてくれるのに、これはゲームならではの体験と断言できるもので、「ゲームとは何か」についても語りたくなる作品ですね。


 余談ですが、今作の精神的続編と言われる『Telling Lies』も今回のE3でトレーラー映像が出てきたみたいです。
 前作のヒットのおかげで、明らかに予算が上がっている……(笑)。登場人物は4人になり、持ち主不明のノートパソコンから4人の映像を再生して真実を解明していくというものみたい。Steamのページによると、最初から日本語字幕に対応しているみたいなので楽しみに待ちます!

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『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』紹介/没入感抜群!これぞ『ドラクエ』の主人公になれるアクションゲーム

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<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
「主人公=自分」のコマンドRPG:ドラクエを、アクションゲームにするとこうなる!
ジャイロセンサーのなかったWiiリモコンで剣を振るゲームを作る四苦八苦
シリーズおなじみの敵キャラが、「アクションゲームの敵」として上手く調理されている


『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』
・発売:スクウェア・エニックス、企画:ジニアス・ソノリティ、開発:エイティング
 Wii用ソフト:2007年7月12日発売
・体感アクションRPG
・セーブスロット数:2


 私がエンディングまでかかった時間は約12時間でした
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:△(ドラクエ本編に比べれば鬱度は弱い)
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:△(敵モンスターに蜂などはいる)
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×

↓1↓

◆ 「主人公=自分」のコマンドRPG:ドラクエを、アクションゲームにするとこうなる!
 このゲームはWii初期に発売された『ドラゴンクエスト』シリーズのスピンオフ作品で、「Wiiリモコンを剣に見立てて振って攻撃」する体感アクションゲームになっています。

 元々このゲームの4年前にあたる2003年に、(ゲーム機のソフトではなく)テレビに直接つないで遊べる体感ゲームマシン『剣神ドラゴンクエスト 甦りし伝説の剣』が発売されていて、『ドラゴンクエストソード』はそのコンセプトを受け継いだ精神的続編のようなものです。
 エポック社の体感ゲーム(2000年~)、バンダイのLet's! TV プレイ(2004年~)、コナミのPLAY-POEMS(2004年~)など、Wiiが発売される前の2000年代前半ってちょっとした「テレビに直接つないで体を動かして遊ぶゲーム」のブームめいたところがありました。

 同じ時期にプレイステーション2もEyeToy(2004年)を出していましたし、ドリームキャストは釣りコントローラやマラカスコントローラを出していましたし(2000年前後)、任天堂もゲームキューブではタルコンガを出していましたし(2003年)……「突然変異なゲーム機」のように言われるWiiですが、実は体感ゲームブームの流れを引き継いだとも言えるんですよね。


 もちろん、それまでは「専用のマシン」や「専用の周辺機器」が必要だった体感ゲームが、標準のコントローラだけで遊べるというのがWiiの“英断”で……そのため、Wiiではたくさんの体感アクションゲームが発売されたのですが。
 実はこの『剣神ドラゴンクエスト』や『ドラゴンクエストソード』って、当時たくさん発売された体感アクションゲームとはちょっとちがっていて、単に「体感アクションが流行っているからそれにドラクエを当てはめよう」ってゲームではないと思うんですね。どちらかというと、『ドラゴンクエスト』を忠実にアクションゲーム化しようとしたら体感アクションになった―――というか。


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<画像はNintendo Switch版『ドラゴンクエストヒーローズI・II』体験版より引用>
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<画像はNintendo Switch版『ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ』体験版より引用>

 近年ではアクションゲームの『ドラクエ』スピンオフ作品も珍しくなくなりました。『ドラゴンクエストヒーローズ』(2015年~)や、『ドラゴンクエストビルダーズ』(2016年~)、もっと前になるとスライムを主人公とした『スライムもりもりドラゴンクエスト』(2003年~)というゲームもありました。

 しかし、それらのゲームは“『ドラゴンクエスト』をアクションゲームにしたゲーム”とはちょっとちがうと思うんですね。
 『ドラゴンクエストヒーローズ』は「ドラクエキャラを使った無双系アクションゲーム」だし、『ドラゴンクエストビルダーズ』は「ドラクエの世界で遊ぶマイクラ風サンドボックスゲーム」だし、スライムはスライムが主人公だし。


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<画像はWii版『ドラゴンクエスト』より引用>

 『ドラクエ』の画面って、元々はこうじゃないですか。
 「プレイヤー=主人公」の目線から見た“一人称視点のゲーム”じゃないですか。

 そのため、イベントシーンも主人公は喋らないし、戦闘中も主人公以外のキャラはAIで行動するのに対して「主人公だけはオートにできない」し、主人公の名前は「プレイヤーが付ける」ため公式の名前が存在しません。戦闘の画面も主人公の目線なので、敵キャラだけがズラっと並びます(戦闘中に味方キャラが映るようになった『8』以降も、まずは敵キャラがズラっと並ぶ)。

 これを『ファイナルファンタジー(以下FF)』シリーズなんかと比べると分かりやすくて、『FF』は主人公キャラにもセリフがあるし、オート戦闘は『FF』だとあまりないけどスマホ版などでは全キャラオートに出来るみたいで、主人公の名前は変更できるけど公式のものも存在していて(『5』のバッツとか『7』のクラウドとか)、戦闘の画面も「味方キャラも敵キャラも全員映る横からの視点」でした。


 『ドラクエ』は一人称視点(主人公=プレイヤー)のRPGで、『FF』は三人称視点(主人公=キャラクター)のRPGなんですね。
 この発想で見ると、『ドラゴンクエストヒーローズ』も『ドラゴンクエストビルダーズ』も『スライムもりもりドラゴンクエスト』も三人称視点のアクションゲームになっているため、「ドラクエをアクションゲームにしたもの」ではなく「アクションゲームのキャラや世界にドラクエを当てはめたもの」だろうというのが先ほどの私の話だったのです。


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<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

 それに比べて、このゲーム『ドラゴンクエストソード』は一人称視点のアクションゲームです!主人公の目線なので敵がズラっと並びますし、味方キャラはAIで動きますし(「めいれいさせろ」にすることも可能)、これぞ「ドラゴンクエストを忠実にアクションゲームにした形」でしょう!


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<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

 操作は、「Wiiリモコンを振ると剣を振って攻撃」「Bボタンを押すとポインターの位置に盾を構えて防御」です。戦闘中の移動はできないので、「華麗なステップで敵の攻撃を避ける」みたいなことはできません。
 魔法は主人公は使えず、味方がAIで使ってくれる他、コマンドを開いて味方に使ってくれるよう指示を出すことも可能です。アイテムもコマンドを開いて自分で使います。コマンドを開いている間は敵の動きが止まるのがありがたい。

 闇雲にWiiリモコンを振るゲームというよりかは、「攻撃をするタイミング」と「防御するタイミング」を見極めて、敵に攻撃を出来るタイミングで的確に攻撃を加えるというのが中心のゲームで―――「ターン制のコマンドバトル」をアクションゲームにするとこうなるというカンジで、これも『ドラクエ』っぽいなぁと思いました。


 何というか、「ドラクエをなるべく忠実にアクションゲームにしてください」というお題を出されて作ったみたいなゲームで。ゲームとして面白いかどうかはさておき、ドラクエシリーズが好きな人には「こうやってアクションゲームに落とし込んだのかー」と見てもらいたい作品でした。



↓2↓

◆ ジャイロセンサーのなかったWiiリモコンで剣を振るゲームを作る四苦八苦
 しかし、この作品は発売当時あまり評判が良くなかったんですね。
 当時のWiiリモコンというのはまだジャイロセンサーが搭載されておらず、Wiiリモコンにジャイロセンサーを搭載するモーションプラスの発売はこの2年後の2009年6月、モーションプラスと一体化されたWiiリモコンプラスの発売は更に1年後の2010年11月でした。


 ジャイロセンサーのないWiiリモコンでは思ったような動きが反映されず、Wiiリモコンを縦に振っているのに横斬りと判定されるみたいなこともしょっちゅう起こります。そのため、「Wiiリモコンってイマイチじゃない?」「剣神ドラゴンクエストの方がマシだった」「期待してたのに……」と言われ、Wiiというハードの張子の虎が崩れていってしまい、その矢面に立たされたのがこの『ドラゴンクエストソード』だったのだろうと思うのです。


 その後に任天堂がモーションプラスを発売したようにジャイロセンサーのないWiiリモコンには限界があったのだから、その中でなんとかゲームとして形にしようとした『ドラゴンクエストソード』が責められるのはちょっと可哀想だと思うんですけどね。


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<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

 ジャイロセンサーのないWiiリモコンで「ちゃんとゲームとして成立させよう」と編み出されたであろうシステムが、このポインターロックシステムです。Wiiリモコンのポインターを合わせて「あらかじめ斬りたいところをAボタンでロック」してから振ると、その地点を通る攻撃になります。
 私はクリア後に攻略サイトを見るまで分かっていなかったんですが、ポインターロックをしていないで振ると必ず画面の中心を斬ることになるんですって。マジかよ……だから、終盤敵の攻撃を弾けなかったワケだ。


 「なるほど!ポインターロックのシステムがあれば思ったところが斬れるから余裕だね!」と思いきや、ゲームが進むと「素早くポインターをロックしつつ縦斬り・横斬り・ナナメ斬りを正確に繰り出さなくてはならない」場面も多く、またポインターをロックしてからWiiリモコンを振るというのは2つの動作が必要で時間がかかるため「敢えてポインターロックを使わないで素早く斬撃を出す」場面もあったりして、全然余裕ではありません。

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<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>


 要は、「思ったように動いてくれないWiiリモコン」を逆手にとって、それをうまく使いこなせるかどうかのゲームデザインにしているのです。
 前述したように、Wiiリモコンは後にモーションプラスを装着してジャイロセンサーが付きますし、現在のNintendo SwitchのJoy-Conにはジャイロセンサーが付いています。そのため、「Nintendo Switchで『ドラクエソード』のリメイクを出してくれないかな。そうすれば思ったような斬撃が出せて楽しいだろうに」という声もよく聞きますし、私もそう思う気持ちもなくはないのですが(その時は『剣神ドラゴンクエスト』とセットにしてくれたら嬉しい)、ジャイロセンサーで思ったような斬撃が出せるようになったらこのゲームはムチャクチャ簡単になっちゃうんですね。

 そうすると、もうゲームスピードから全部作り直さなくちゃいけなくなるから移植とかリメイクとかは難しいんじゃないかなぁと思います。
 「体感アクションゲームとしてのドラクエ」は専用アリーナで遊ぶ『ドラゴンクエストVR』が出てきているので、もし新作が出るとしたらVRっぽいヤツになりますかねぇ。VRだと私、3D酔いしちゃうので遊べないのが残念ですが……


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<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

 その点、この『ドラゴンクエストソード』は安心です!
 一人称視点のゲームですが、基本はレールに沿って前に進むだけで、視点を動かしたりは出来ません。3D酔いが起こる場面は、ゼロとは言いませんが、一人称視点のゲームの中ではかなり少ないゲームだったと思います。


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<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

 ただまぁ、そこがゲームとしての不満点でもあるんですよねぇ。
 「イカダに乗って川を進む」みたいな場面はあるものの、基本的にどのステージも「前に進みながら敵をやっつけていく」だけなので、もっと変化のあるステージも欲しかったところ。町がモンスターの群れに襲われているから防衛する、みたいな毛色のちがうステージがあればよかったのに……とは思うんですが。それはあまりドラクエらしくないってことなのかなぁ。


↓3↓

◆ シリーズおなじみの敵キャラが、「アクションゲームの敵」として上手く調理されている
 『剣神ドラゴンクエスト』は、『ドラゴンクエストI』のストーリーを追体験する作品で。
 『ドラゴンクエストVR』は、『ドラゴンクエストIII』の舞台をVRで再現したものなのですが。

 今作『ドラゴンクエストソード』は、まったく新しい舞台とストーリーとキャラクターの完全新作となっていました。


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<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

 しかし、敵キャラはドラクエシリーズおなじみのモンスター達です。
 当時すでに『ドラゴンクエストVIII』で3D化されていたとは言え、リアルタイムに動くアクションゲームの敵キャラとしてドラクエのモンスター達が出てくるのはテンション上がりますね。


 原作では「レベルを上げて物理で殴れば倒せる」モンスター達ですが、今作ではアクションゲームの敵なので、各キャラごとに「攻撃の後に隙ができるのでまずは防御してからカウンター」とか「遠方から矢を放ってくるのでそれを斬撃で弾き返す」といった対処法を見つけなければなりません。
 ボス戦なんかは「このモーションの時はこの攻撃をしてくるので素早く4回防御して、直後の隙に2発叩き込む」みたいにパターンを覚えて見切っていくゲームになるので、ちょっとした『SEKIRO』ですよ。

 まぁ、『ドラクエ』というよりかは『ゼルダ』っぽいなとは思うのですが、「ドラクエでお馴染みのあのキャラ達をアクションゲームにするとこうなる」という再現が面白かったし、アクションゲームの敵としてちゃんと個性が出ていたのは良かったと思います。


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<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

 私のお気に入りは「メタルスライム系」の扱いでした。
 他の敵と戦っている際に高速で下を駆け抜けるので、ここで咄嗟に斬りかからないとそのまま逃げられるという。もちろん倒せば経験値がドカッと入ります。

 ガンシューティングゲームにおけるレアアイテムみたいな扱いだと思うんですが、「メタルスライムが出た時の驚きと喜び」と「逃げられた時の喪失感」という原作の要素を見事に再現していると思うんですね。


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<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

 「くさったしたい」の登場が、ホラーゲーム的というかお化け屋敷的なのも好き。
 そういやコイツ、ゾンビだったな!



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<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

 メーカー公式のジャンルは「体感アクションRPG」とのことで、確かにレベルアップのシステムや装備の概念もあるのですが、ゲームとしての骨格は「ステージクリア型のガンシューティングゲーム」に近いと思われます。
 レールに沿って一本道を進み、ランダムエンカウントやシンボルエンカウントではなく毎回必ず同じ敵が同じ場所で登場して、ステージクリア時にはスコアが集計されてハイスコアが残り、同じステージを何度も遊んでハイスコア更新を目指す―――――

 「ボリュームが少ない」「すぐに終わってしまった」という人もいましたが、ガンシューティングゲームとして考えればステージ数はそれほど少ないとは思いません。同じ時期に出たWiiのガンシューティングゲームで比較すれば、セガの『ゴースト・スカッド』なんて全3面ですからね(笑)。
 どっちかというと、先ほど書いたように「凝られたシチュエーションでの戦闘がない」ことの方が私は不満なのですが、このゲームの場合はその分の労力を「様々な敵との戦闘」にかけたとも言えて、まぁその方がドラクエらしいと言えばドラクエらしいとは思います。


 難易度は決して低くないと思うのですが、「対処法」が分かるとダメージを一気に抑えられたり、一つ装備をグレードアップするだけでものすごく強くなれたり、ステージに持ち込める回復アイテムの数が限られているため「このまま進むか町に引き返すか」の葛藤が大きかったり、ゲームバランスはとても良かったと思います。
 「対処法」に気付くまでは「なんだよこのゲーム、クソかよ」と愚痴っていたら、「あ、こうすればイイのか」と気付いて、「やっべ、オレ天才かも」と掌返したことが何度もありましたからね。


◇ 結局、どういう人にオススメ?
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<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

 ドラクエシリーズのキャラや世界が好きで、ゲームジャンルとしてはガンシューティングゲームが好きな人に是非オススメです。そんな人、あんまりいない気がするけど(笑)。

 「あのドラクエの要素をこう落とし込んだのか!」が面白いので、ドラクエに全く興味がない人にはさほど楽しめないと思いますし。アクションゲームが苦手だからドラクエ遊んでいるという人には、このゲームみたいに「何度も死んで対処法を覚える」タイプのアクションゲームはキツイように思えるし。人を選ぶゲームだとは思うんですよねぇ。

 ただ、「主人公=自分」になりきって戦えるドラクエのアクションゲームとして他にはない魅力を持っていると思いますし、個人的にはとても楽しめました。この路線もまた復活して欲しいですね。あ、福引はもうなくてイイです。


 

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『Yoku's Island Express』紹介/移動もクエストもボス戦も、全部ピンボールで解決だ!

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<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
「敵」にやられることのない2D探索アクションアドベンチャー
様々な場所、様々なギミック、様々なシチュエーションで楽しめるピンボールゲーム
主人公はフンコロガシ!絵も音楽も美しい童話のような世界を冒険する


『Yoku's Island Express』
・発売:Team17、開発:Villa Gorilla
 Nintendo Switchダウンロード専用ソフト:2018年5月29日発売、2150円
  ※本体機能でのスクリーンショット撮影可能、動画撮影も可能
 Steam版:2018年5月30日発売、2050円
 プレイステーション4ダウンロード専用ソフト:2018年10月11日発売、2150円
・2D探索アクションアドベンチャー+ピンボール
・セーブスロット数:3


※ 一見すると普通のPVなのに、最後まで見ると突然罵倒されるの笑う。翻訳ミスなんだろうけど。
 私の1周クリア時間は約08時間でした
 コンプ(100%達成)までは15時間くらいだったかな
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:×
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:○(主人公の虫はかわいいけど、蜘蛛やナメクジはキツイかも)
・百合要素:×(そもそもこの作品に男女の概念があるのか?)
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×

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◆ 「敵」にやられることのない2D探索アクションアドベンチャー
 このゲームはスウェーデンの「Villa Gorilla」というインディースタジオが開発した「メトロイドヴァニア」型のピンボールゲームです。
 私はちょっと前のセールでこのゲームを買って積んでいたのですが、「よゐこのインディーでお宝探し生活2」の次回予告でこのゲームが映ったので「ネタバレされる前に遊ばなきゃ!」と急いで起動したのでした。1週間かけてクリア、久々に100%コンプリートまで遊ぶくらいに夢中になって遊んだゲームでした!





 このゲームを分かりやすく説明すると「メトロイドヴァニアの皿にピンボールを盛ったゲーム」なんですが、「メトロイドヴァニアって何?」という人もこのブログを読んでいるでしょうから、その説明から始めようと思います。

 「メトロイドヴァニア」とは、『メトロイド(1986年~)』と『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲(1997年~)』を合わせた造語です。「悪魔城ドラキュラ」が海外では『キャッスルヴァニア』というタイトルだったので、合体して「メトロイドヴァニア」と呼ばれるようになった―――この話から分かるように、日本で生まれたゲームが元になっているのに「日本よりも海外で使われている言葉」なんですね。
 ゲームとしては「2D横スクロールアクションゲーム」でありながら、『スーパーマリオ』シリーズのように「右に行けばクリア」というゲームではなく、ステージクリア型でもなく、広大なマップを上下左右に「探索」することに特徴があります。マップを埋めていく楽しさだったり、それまでは行けなかった場所にアイテムを手に入れた後は行けるようになる成長の楽しさだったりがあることが多いですね。


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<画像はファミリーコンピュータNintendo Switch Online版『メトロイド』より引用>

 しかし、この「メトロイドヴァニア」というジャンル―――「探索」に重きを置いたゲームなため、「探索」要素が大好きな私にとってさぞ好物だろうと思いきや、初代の『メトロイド』からして「敵との戦闘」がむっちゃ過酷で心をへし折られてしまうことが多かったです。
 まぁ、もし『メトロイド』に敵が出てこなかったら、あっという間にマップの端から端までを踏破されてしまうでしょうから、ゲームとして「行けそうで行けない」バランスを保つために「敵との戦闘」が必須なのは分かるのですが……「敵との戦闘」が苦手な私にとっては「新しいエリアに行けるぞー」という探索のワクワクよりも、「新しいエリアにはまた敵がいる……ライフがもうない、つらい」という戦闘の憂鬱さが上回ってしまうゲームでした。


 海外ではこの「メトロイドヴァニア」のジャンルが非常に人気で数多くのゲームが出ているため、上述した私のように「探索は好きだけど戦闘はちょっと」という人のための「メトロイドヴァニア」のゲームも出ていたりもするのです。

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<画像はWii U版『クニットアンダーグランド』より引用>

 例えば、Wii Uでフライハイワークスがローカライズして発売してくれた『クニットアンダーグランド』もそうです。このゲームもスウェーデン人が開発者なんですよね。スウェーデン人はよっぽど「メトロイドヴァニア」が好きなのか嫌いなのかどっちなんだ。

 『クニットアンダーグランド』は「メトロイドヴァニア」に「アクションパズル」を足したようなゲームです。本家『メトロイド』では広大なマップの移動を妨害するために「敵との戦闘」がありましたが、こちらのゲームは各エリアがアクションパズルにようになっているので、隣のエリアに移動するために「敵との戦闘」ではなく「このギミックをどう使えばあの場所まで行けるのかを閃く」ことが必要なのです。
 「敵との戦闘」が嫌いだけど「アクションパズル」が大好きな私は、だからこのゲームをむっちゃ楽しめました。Wii Uのゲームの中でも上位に入るくらいお気に入りのゲームです。

(関連記事:とうとう見えたMiiverseの真価。『クニットアンダーグラウンド 』紹介



 「メトロイドヴァニア」についての話をまとめると、広大なマップを上下左右に「探索」させるこのジャンルは、単に「探索」をさせるだけならあっという間に端から端まで踏破されてしまうため、『メトロイド』だったら「戦闘」、『クニットアンダーグランド』だったら「アクションパズル」の要素を入れて、そのゲーム部分を解かないと「行けそうで行けない」隣のエリアに進めないようにしているのです。

 つまり、「メトロイドヴァニア」というのは皿であって、そこに「戦闘」とか「アクションパズル」といった料理が盛られているんですね。
 他のジャンルで分かりやすく言うと、スマホ向けの「ガチャでキャラを集めて育成するゲーム」は皿の部分はどれも似たようなシステムですよね。ただし、それに盛られている料理部分に独自性があって、『パズドラ』だったら「パズル」だし、『消滅都市』だったら「ランアクション」だし、『デレステ』だったら「リズムゲーム」だし、なので「どれも似たようなゲーム」でありながら「全然別のゲーム」なのです。


 んで、ようやく『Yoku's Island Express』の話です。
 このゲームは皿の部分は「メトロイドヴァニア」というジャンルですが、『メトロイド』でいう「戦闘」部分、『クニットアンダーグラウンド』でいう「アクションパズル」部分―――つまり、皿に盛られた料理部分が「ピンボール」なのです。

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<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>



 通常は↓の画面のように、2Dアクションゲームという雰囲気です。
 主人公のヨクの操作は左スティックで移動のみ。ジャンプは出来ません。フンコロガシですからね。自分より巨大なフンと一緒にジャンプすることなんて無理に決まっていますよね。

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<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 ただし、この島には何故だか至るところに「フリッパー」が設置されています。
 青いフリッパーはZLボタン、黄色いフリッパーはZRボタン、両方の色のフリッパーはそのどちらのボタンでも押すと動きます。島中のフリッパーを一斉に動かせる私(=プレイヤー)は一体何者なんだ……

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<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 その反動を活かして、ヨク(と巨大なフン)は跳ね上がる!
 このゲームの主人公は自分ではジャンプできないので、ピンボールのフリッパーを利用してジャンプしていくのです。


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<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 マップはかなり広大。
 そのところどころにピンボールのような仕掛けがあるので、そこに主人公がたどり着くとシームレスにピンボールが始まります。この「フィールドの中にピンボールが埋め込まれているから自然とピンボールが始まる」のが良いんですわ。


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<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>


 ということで、このゲーム―――
 「敵」が出てこないメトロイドヴァニアなのです。

 いや、正確にはボス敵はいるのですが……「敵にやられてゲームオーバー」ということがないので、敵との戦闘が苦手という私のようなヘッポコゲーマーでも安心して楽しめます。

 落下したらまた登り直しな局面はあるし、アクションゲームが苦手な人でも全く問題がないとは言いませんが(特にコンプを目指すとかなりシビアなアクションも求められますし)、トゲに落ちても集めたフルーツを少量失うだけで、大したペナルティがないのがありがたいところです。一応トゲに落ちた回数はカウントされていて、一定数を越えるとイベントが発生するみたいですが、多分「普通に遊んでいれば誰でも発生する数」なんで気にすることでもないと思います。多分……

 ということで、このゲーム……「メトロイドヴァニアってジャンルが気になるんだけど、なんだか難しそうだよなー」と思って手を出してこなかったような人に是非オススメです。


↓2↓

◆ 様々な場所、様々なギミック、様々なシチュエーションで楽しめるピンボールゲーム
 さて、ここまで書いてきてちょっと気になることがありました。
 この記事を読んでいるみなさん、そもそも「ピンボール」って分かりますかね?

 「メトロイドヴァニアにピンボールを加えたようなゲーム」を説明するために、せっせと「メトロイドヴァニア」の説明から始めていましたが、ひょっとしたら「ピンボール」の方も知られていないかもと不安になってきました。


 ピンボールとは1930年代にアメリカで生まれたアナログゲーム機で、1947年に「フリッパー」が付いて玉を撃ち返せるようになった機種が登場、現在「ピンボール」と呼ばれるものはこの「フリッパー付きピンボール」のことを指すそうですね。
 1970年代には日本でも流行、ゲームセンターやボウリング場に数多く置かれていました。日本国産初の「フリッパー付きピンボール」はセガが作ったそうです。セガはいつだって時代の最先端を進むぜ!1985年にリリースされた尾崎豊さんの名曲『卒業』にも、「仲間達と夜な夜なピンボールで遊びました」的な歌詞がありますね(JASRACに配慮して言い回しを変えました)。

 つまり、『スペースインベーダー』とか『パックマン』とかが登場してゲームセンターがビデオゲームで溢れる以前の、ゲームセンターの主役みたいな存在だったそうなんです。近年ではほとんど見かけなくなっちゃいましたけどね。


 そのため、ビデオゲーム黎明期の頃から「ピンボール」はデジタルで再現しようと試みられることが多く、例えばファミコンの『ピンボール』(1984年)なんかは後に任天堂の社長になる岩田さんがプログラムを担当していたことでも有名ですよね。

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<画像は『どうぶつの森+』収録の『ピンボール』より引用>

 私、「ピンボール」というゲームはずっと「真ん中に玉が来たら終わりの運ゲー」だと思っていたのですが……「限られた残機でハイスコアを目指すゲーム」と認識を変えてみたら、リスクとリターンの駆け引きが非常に熱く、常に予想外なことも起こるアドリブ性もあって、延々と遊べてしまう中毒性にハマってしまいました。

 これって多分、後の『テトリス』とかの落ちモノパズルゲームを延々と遊んでしまう感覚に近いのかなと思いました。アクション要素がないワケではないけれど、求められる操作が限定的なため覚えることが少なくてイイ、なのに毎回毎回ちがう展開をしていく点も近いですし。



 『Yoku's Island Express』の場合、前項で述べたように「広大なフィールドの中にピンボールのような場所が埋め込まれている」ため、様々なピンボール台(?)に挑むことになります。延々と果物を集めてもイイのだけど、基本的には「あの穴に入れると次のエリアに行ける」といった目的があるのでそれを達成していくカンジですね。先ほども書きましたが、青いフリッパーはZLボタン、黄色いフリッパーはZRボタン、両方の色のフリッパーはそのどちらのボタンでも押すと動きます。

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<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 例えば、この場面――――
 進みたいのは右上なのですが、ピンク色のゲートが閉じていてこのままでは進めません。ここを開くためにはピンク色の宝石みたいなヤツを全部集める必要があります。もちろん「ピンボール」で。凍っているものは何度がぶつけて破壊する必要があるので、下部のフリッパーだけでなく横のフリッパーも使わなきゃですね。

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<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』のものに手を加えました>


 全部集めたらこんなカンジでゲート開放!
 これで右上のルートに進めます(再度ここを通るときにはゲートは開いたままなので助かる)。

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<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』のものに手を加えました>



 また、ギミックが変わるだけでなく、様々なシチュエーションを「ピンボール」で解決していくのもこのゲームの特徴です。↓は「逃げ出したススを全員集めて欲しい」というクエストで、当然のように「ピンボール」でススを見つけて捕まえていきます。
 やってることはさっきの「ゲートを開くためにピンクの宝石を集める」のと変わらないのですが、住民達から頼まれているシチュエーションが一枚はさまるだけで印象が変わるんですよねー。

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<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>




 そして、ボス戦もあります!
 「ピンボールでボス戦~?」と半笑いで始めてみたら、なかなかに熱いシチュエーションのボス戦もあったりで侮れません。ちゃんと「ボス戦だけの特別感」があるのはポイント高いです。

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<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 そして、その上で「このゲームにはゲームオーバーがない」ため、こんな凶悪な見た目のボスですがこちらがやられることはないんですね。いつまでも倒せないといつまでも終わらないんですが「敵に攻撃されるプレッシャー」みたいなものはないため、このゲームのボス戦は「強い敵と戦うから憂鬱」とかではなく「普段とちがうシチュエーションでピンボールが楽しめる」だけなんですね。

 「敵と戦う」のが苦手な私みたいな人間には、ピッタリのゲームでした。




↓3↓

◆ 主人公はフンコロガシ!絵も音楽も美しい童話のような世界を冒険する
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<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 このゲームの主人公は、新しく島にやってきた「フンコロガシの郵便配達員」です。
 どう考えても前任の配達員の方が配達に向いているだろう!空飛べるし!と、恐らく全プレイヤーがツッコミを入れたところから始まるのですが……遊んでいるうちにこのフンコロガシも可愛く見えてくるし、この小さなフンコロガシが島のみんなの問題を解決していく様は「小さな主人公が大きな敵をやっつける」少年漫画的な構図にも思えてきます。


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<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 登場するキャラクターは牧歌的で、どのキャラも「かわいい」ようで「ちょっと不気味」なところもありますね。コイツは前の配達員の伝言を録音機代わりに再生してくれるオウム。


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<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 郵便配達員だから、島の隅から隅までをまわって荷物や手紙を届けなくちゃいけないし、そこで出会った人達の頼み事も聞かなくちゃいけない―――「メトロイドヴァニア」というジャンルに、この「郵便配達員の主人公」という設定はドンピシャにハマっていたと思います。


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<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 砂浜。

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<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 雪山。

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<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 古代遺跡。


 島中を「探索」しなくちゃいけないゲームだから、たどりつく場所が特徴的かつ美麗なのも嬉しいところ。手描きで描かれた風景は、『レイマン』シリーズや『オリとくらやみの森』、スタジオジブリの映画なんかに影響を受けているとか。
 BGMに関しては「癒される」と評されることも多く、「敵」が襲ってこないゲームなこともあって、童話の世界にリゾートに来たかのような雰囲気になれます。


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<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 翻訳もまずまず。
 同じTeam17の『The Escapists2』は「最低限ゲームを遊ぶことは可能」なレベルの翻訳でしたが(まぁ、それも監獄にぶちこまれた不自由さの雰囲気にマッチしていたとも思いますが)、こちらは違和感のない日本語で楽しめました。

 主人公がフンコロガシという独特のセンスはありますが、丁寧に作られたゲームで、年齢・性別・ゲームの腕前を問わず誰にでも楽しめる1作になっていると思います。




◇ 結局、どういう人にオススメ?
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<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 誰にでも「達成感」と「成長」を感じさせるゲームデザインに、直感的な操作感覚、かわいらしくも不気味さも持ったキャラクター、美麗なグラフィックと癒されるBGM、時には熱く・時には考えさせるストーリー――――非常に高い完成度で、幅広い人にオススメしたいゲームになっています。

 敢えて「オススメできない人」を考えるなら、ゲームにはヒリヒリするような厳しい難易度を求める―――なんて人にはオススメできないかな。コンプを目指すと難しいのは確かなんだけど、アレは難しいというよりシビアなだけというか……

 広大なマップを「探索」するメトロイドヴァニア系のゲームが好きな人はもちろん、メトロイドヴァニアに興味はあるけど難しそうって尻込みしている人には是非オススメしたいです。
 ピンボールに関しては、最初は興味がなくても遊んでいるうちに徐々に好きになっていって、クリアする頃には「ピンボールの他のゲームも遊びたい!」と思ってしまうんじゃないかな。

 PS4版にあるかは分かりませんでしたが、Nintendo Switch版Steam版には「体験版」があるので「えー?でも、ピンボールでしょー?」という人は、まずは「体験版」に触れてみて判断するのがイイのかも。

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『巨人のドシン』紹介/あなたが求めるのは「自由」か、「労働」か

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<画像はゲームキューブ版『巨人のドシン』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
「大容量のセーブが可能になった」64DDだからこそ実現できた新しいゲーム
シビアな要素は少ない、ゆる~く楽しめる箱庭シミュレーション
幻のプレミアディスクに込められた「自由を楽しめない人々」へのメッセージ


『巨人のドシン』
<配布:ランドネットDD、開発:パーラム>
 NINTENDO64 64DD専用ソフト:1999年12月11日配布
<発売:任天堂、開発:パーラム>
 ゲームキューブ用ソフト:2002年3月14日発売
・南国の島で暮らす人々を自由に見守るシミュレーションゲーム

 私がエンディング到達までにかかった時間は約11時間でした
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください

↓1↓


◇ 「大容量のセーブが可能になった」64DDだからこそ実現できた新しいゲーム
 私がプレイしたのはゲームキューブ版ですが、元々このゲームはNINTENDO64の周辺機器64DD専用に作られたゲームです。

 「64DDって何?」どころか、「NINTENDO64って何?」という若い人もこのブログを読んでくださっていることを期待して、今日の記事はそれらの説明から始めます。
 NINTENDO64は1996年6月に任天堂が発売した据置ゲーム機です。「据置ゲーム機」というのはテレビにつなげるタイプのゲーム機ですね。分かりやすく、ファミコン以降に任天堂が発売した据置ゲーム機を一覧にしてみました。

・1983年~ ファミリーコンピュータ
・1990年~ スーパーファミコン
・1996年~ NINTENDO64 ←これ
・2001年~ ゲームキューブ
・2006年~ Wii
・2012年~ Wii U
・2017年~ Nintendo Switch

 NINTENDO64というゲーム機は、2年先行で発売されたソニーのプレイステーションとのシェア争いに敗れたハードではあるんですが……
 3D空間を描写することに特化していて、アナログスティックを標準装備したことで、『スーパーマリオ64』や『ゼルダの伝説 時のオカリナ』などで3Dアクションゲームの雛型を作っただけでなく。マルチタップを使わずに4つのコントローラを挿せることで「4人対戦のゲーム」が多数作られたり、振動パックを付けることでコントローラがブルブル震えたり、その後のゲームの基準点になった部分も多いゲーム機なのです。『スマッシュブラザーズ』『どうぶつの森』『マリオパーティ』など、現在も続く人気シリーズ1作目が生まれたのもこのゲーム機でしたね。


 64DDは、そんなNINTENDO64を拡張する周辺機器でした。
 当初は64本体発売から半年後の1996年末に発売予定で、多くのタイトルが64DD専用で発売されるという話でした。『ゼルダの伝説 時のオカリナ』や『MOTHER3』といった任天堂タイトルだけでなく、『ファイナルファンタジーVII』や『ドラゴンクエストVII』も64DD用に作られているという話があったんですよね。

 しかし、卵が先か鶏が先かは分かりませんが、64DDはちっとも発売されず、「64DD用タイトルとして発売予定だったソフト」も通常の64ソフトだったり他機種だったりで発売されていくことになります。最終的に64DDが出てきたのは1999年末で、専用ソフトはたった10本しかありませんでした。
 その10本の内の1本が『巨人のドシン1』で、1本が『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』ですから、全ソフトの5分の1が『巨人のドシン』というハードになってしまったのです(笑)。


 とまぁ、結果だけ見れば「大失敗商品」なんですが……
 64DDが出る以前の1997~1998年あたりの宮本茂さんのインタビューを読むと、「NINTENDO64はそれ単体では不完全、64DDによってようやく新しい遊びが提案できるようになる」と仰っていて、64DDで新しいゲームが生まれると熱く語っていたんですね。



 1998年1月に発売された別冊宝島に宮本茂さんのインタビューが載っているので、これを引用させていただきます。

<以下、引用>
―――「もう一つの柱=スーファミにはなかった新しい遊びの可能性」というのは、どのようなものですか。

宮本「これはN64単体で実現されるものではなく、「64DD」を使うことで広がる“遊びの構造″といったものです。
 64DDによって、ユーザーが個々に、自分だけのゲームデータの書き換えをするということ。それにどんな可能性が生まれるかといえば、大きく三つのポイントがあります。それは「育成」「交換」「追加」といった楽しさです。
 ゲームの世界を自分なりに育て、記録として残し続ける。育てた自分のゲーム内容を他人と交換することでコミュニケーションをはかる。さらに、新たに内容を付け足し盛り込み、自分のゲーム世界を変貌させる。―――そうやってユーザーがゲーム世界を独自に広げていくことが、64DDというツールによって楽しめるんです。
 いわば「ゲームをカスタマイズする楽しさ」というわけです。」

―――ということは逆に言えば、N64本体だけではそうした新しい楽しさは得られないわけですね。

宮本「そう言えます。N64は“本体だけで完結した機械”ではありません。データを記録・交換するDDがつながり、ユーザーがさまざまな働きかけをするための、さまざまなインターフェイスがつながり、さらに「ゲームポーイ」といった他ゲーム機ともデータがつながる。そのように、たんなる一個の機械ではない「遊びのシステム」としての広がりにこそ、N64ならではの楽しさがあるんです。」

</ここまで>

 64DDの一番の特徴は、「磁気ディスク」なことです。
 ファミコン、スーファミ、64のようなROMカセットではなく、プレステやサターンのようなCD-ROMでもない特殊なメディアを採用していました。容量自体は64MBと、CD-ROM媒体に比べれば決して大きくないのですが、その内の38MBをセーブに使うことが出来るというのが圧巻でした。
 プレステのメモリーカードは120KB、セガサターンのパワーメモリーは512KB、PS2初期のメモリーカードでも8MB……これらのゲーム機は1つのメモリーカードに幾つものゲームのセーブデータを書き込むのに対して、64DDの場合は1つのゲームごとに最大で38MBをセーブデータに使うことが出来たのです(もちろんセーブ領域に容量を使うとゲームの容量も減るのでしょうが)。


 これによりゲームが変わるというのが先の宮本さんのインタビューなのですが、当時の自分にはその意味がよく分かりませんでした。例えば『RPGツクール』みたいなゲームだったら確かに大容量のセーブデータはありがたいでしょうが、大容量のセーブデータを活用できるジャンルのゲームなんて極一部じゃないかと思ったんですね。「大容量のセーブが可能になったところでゲームは変わらないだろう」「FFにもドラクエにも逃げられて宮本さんも苦しいのかな」なんて、その時の私は思っていました。


 ただ、よくよく考えてみると、「プレイヤーがゲームの進行状況を保存(セーブ)できる」ようにしたことでゲームが激変したという経験が、任天堂にはあったんですよね。それがファミリーコンピュータの周辺機器ディスクシステムです。

・1983年~ ファミリーコンピュータ ←これ
・1990年~ スーパーファミコン
・1996年~ NINTENDO64
・2001年~ ゲームキューブ
・2006年~ Wii
・2012年~ Wii U
・2017年~ Nintendo Switch

 ディスクシステムも、ファミコン本体発売から3年後の1986年に発売された周辺機器で、磁気ディスクをメディアに採用したハードでした。
 ディスクシステムと言えば、当時のファミコン用ROMカセットよりも大容量(約3倍!)なことや、持っているディスクを別のゲームに書き換えることで安価にゲームが買えるのがよく話題にされます。特に書き換えシステムは今でいうダウンロード販売のようなものと考えることも出来ますし、時代を先取りしていたと思うのですが……

 しかし、ゲームの歴史から考えると「ファミコンのゲームに“データをセーブする”という概念を持ち込んだ」ことこそが画期的だったのかもと思うのです。ディスクシステム以前のファミコンのゲームは「セーブ」がありませんから、毎回1面から始めるか、パスワードを入力する必要がありました(唯一の例外はファミリーベーシックなのだけど、その話は長くなりそうなので割愛します)。

 そのため、任天堂が発売したディスクシステム専用ゲームには「データをセーブ出来る」ことを活かしたものが多かったんですね。
 『ゼルダの伝説』『メトロイド』『パルテナの鏡』なんかは、主人公が成長するゲームで、最初は貧弱な主人公がどんどんパワーアップしていくのを楽しむゲームでした。『新・鬼ヶ島』や『ふぁみこん探偵倶楽部』は長い物語を途中セーブ出来るだけでなく、それを引き継ぐことで「前編」の続きを「後編」で楽しめるというゲームでした。
 タッチパネルを採用したニンテンドーDSではそれを活かして『nintendogs』や『脳トレ』を出したり、加速度センサーを採用したWiiでは『Wii Sports』や『はじめてのWii』を出したりしたように、ディスクシステムの頃から任天堂は「そのハードでしか出来ない新しい機能を使ったゲーム」を出していたんです。

 1987年になるとファミコン用ROMカセットにもバッテリーバックアップを採用するソフトが出てきて、セーブ出来ることがディスクシステムだけの特権ではなくなってしまい、1988年の後半には任天堂自身もディスクシステムに見切りを付けてROMカセットでの新作ソフトを出していくようになるのですが……ディスクシステムがなければ「セーブ機能を活かしたゲーム」として『ゼルダの伝説』や『メトロイド』が作られることはなかったと考えると、その意義は大きかったのかなと思うのです。


 64DDに話を戻します。
 なので、任天堂は「セーブ出来る容量が大きくなること」によってゲーム自体が変わることを確信していたのでしょうし、確かに実際に出てきた64DDのソフトを見ると未来を先取りしていたようにも思えなくもないのです。

 例えば、『マリオアーティスト タレントスタジオ』。
 Miiの原型になったことで有名なソフトですが、自分でキャラを作り、ショートムービーを製作して、ランドネットというインターネットサービスに投稿することも出来たそうな。キャプチャーカセットを使えばデジカメやデジタルビデオカメラも使うことが可能。YouTubeやニコニコ動画なんかが生まれるよりももっと前から、「動画作成の楽しさ」「それをみんなで共有する楽しさ」をゲームに落とし込もうとしていたのだから凄いです。

 例えば、『F-ZERO X エクスパンションキット』。
 64のROMカセットで発売された『F-ZERO X』の拡張ディスクで、追加のコースが入っているだけでなく、自分でコースやマシンを作成することが可能でした。『マリオアーティスト』シリーズとちがって作ったコースをネットにアップロード・ダウンロード出来なかったそうなのだけど、もし出来ていたら「早すぎた『マリオメーカー』」になっていたかも知れません。

 また、「自分で作る」ことばかりが注目されがちですが、アペンドディスク的に「コースを追加する」ことも可能ですから、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』や『マリオパーティ』なんかは64DDに対応してダンジョンやミニゲームを追加する計画があったように思われます。
 それ自体はプレステやサターンの「アペンドディスク」や「前後編」に近いと思うのですが……64DDはインターネットにも接続できるので、ひょっとしたらインターネット経由で追加ステージを配信するみたいなことも考えられていたんじゃないかと思われます。それ以前にサテラビューがありましたからね。そう考えると64DDの大容量保存領域は、単なる「セーブデータ」ではなく、現在の「ゲーム機本体のストレージ容量」に相当するものだったのかもと。


 そして、ようやくです。お待たせしました、『巨人のドシン1』です。
 『巨人のドシン1』は64DDで遊べる64DD専用のゲームで、『アクアノートの休日』や『太陽のしっぽ』の飯田和敏さんがディレクターです。ここまで長々と説明したように、64DDで出すゲームなので「セーブ出来る容量が大きくなること」を活かしたゲームになっています。

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<画像はゲームキューブ版『巨人のドシン』より引用>

 一見するとこのゲーム、3D空間を自由に暴れまわる3Dアクションゲームに思われてしまいそうなのですが……実際には「フィールド」を自由自在に操れるシミュレーションゲームです。南国の島に暮らす住民を好きな場所に移動したり、木を移動したりするだけでなく……地面の高低までを自由にコントロールできるので、海を埋め立てて島を作ったり、山を平らにしてそこに住民を住まわせたりなんてことも、自分の好きなようにやって良いのです。

 そうしたフィールドの変化をいちいち全部セーブするのだから「大容量のセーブ領域」が必要ということですね。
 ゲームキューブ版は64DD版よりもフィールドが狭くなったみたいなのですが、それでも当時のゲームキューブのメモリーカード(512KB)をほぼ丸々1コ使いますからね。プレステ1のメモリーカードが120KBでしたから、もしプレステ1で発売していたらメモリーカードを4枚挿さなくちゃいけなくなります(笑)。


 飯田和敏さんのゲームは『アクアノートの休日』にしても『太陽のしっぽ』にしても「世界を自由に遊びまわれるゲーム」でしたが、『巨人のドシン』の「世界を自分の好きなように作り替えることが出来る」楽しさはそこに「砂場遊び」的な面白さを加えたゲームに思えます。

 砂場遊び……サンドボックス……
 そう、実はこのゲーム―――「早すぎた『Minecraft』」なんですよ。


 もちろん『Minecraft』と『巨人のドシン』では出来ることが全然ちがいますし、『Minecraft』の作者が『巨人のドシン』の影響を受けているだなんて思いませんけど……64DDなんて周辺機器まで出した任天堂が「セーブ出来る容量が大きくなること」で夢見た未来の一つの形が、『Minecraft』のようなゲームだったんじゃないかなって思うんですね。

 よくセガに対して「セガはいつも10年早いんだ」と言われることがあります。最新技術を取り入れた超すごいものを投入するも、商業的には成功せず、10年後・20年後に他の会社がそれに似たものを商業的に成功させて「その道はセガが10年前に通過したのに……」となるヤツです。

 それに対して任天堂は「枯れた技術の水平思考」という言葉でイメージされるように、既に使い古された技術を応用して商業的に成功する会社のように思われているかも知れません。DS以前からタッチパネルはありましたし、Wii以前から体感ゲームはありましたが、それを本格的に取り入れたことで成功したという。
 しかし、任天堂も「ディスクシステムは早すぎたダウンロード販売」でしたし、「サテラビューは早すぎたデータ通信で遊ぶゲーム」でしたし、「バーチャルボーイは早すぎた立体視対応ゲーム」でしたし、10年・20年後を先取りすることは結構あるんですね。任天堂は10年・20年後に自分達でリベンジして成功させることも多いので、セガみたいに「10年早いんだ」とは言われませんが。


 社長が訊く ゲームセミナー2008~『どうぶつの森』ができるまで~

 64DDの話で言えば、64DDを活かしたゲームとして開発していたのにROMカセットに移行させられて全然別のゲームになった『どうぶつの森』の話がめっちゃ面白いんで、読んだことがない人はこの機会に是非どうぞ!
 他の機種にはない大容量のセーブデータを使ったゲームを開発していたのに、会社の事情でROMカセットに移行することになり、そうするとセーブ領域が1メガビット=125KBしかなくなってしまいました。それでもまぁ、プレステのメモリーカード1枚分なのですが、『巨人のドシン』で使ったセーブデータの4分の1しかありません。その結果、広大なフィールドをどんどん狭くしていって、最終的に「村だけのゲーム」になっていったという(笑)。

 こうして生まれた『どうぶつの森』は大ヒットシリーズになるんですけど、元の構想のゲームも「オープンワールド的」というか「サンドボックス的」なゲームに思えて面白そうですよね。

 この社長が訊くが公開されたのが2009年1月26日なので、ちょうど64DDから10年後の年なんですね。そして、この2009年の末に、『Minecraft』の最初のバージョンがリリースされるのです。


 64DDが当初の任天堂の目論見通りにリリース出来ていたのなら『Minecraft』のようなゲームは日本から生まれていたのかもなんて妄想してしまうのですが、とりあえずこの言葉は言っておきましょう。「64DDは10年早かった」のだと。

↓2↓


◇ シビアな要素は少ない、ゆる~く楽しめる箱庭シミュレーション
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<画像はゲームキューブ版『巨人のドシン』より引用>

 プレイヤーが出来ることは、先に説明した「土地の高低をいじくる」ことと、「住民や建物、木などを運ぶ」こと、破壊の巨人に変身して建物を破壊することくらいです。
 住民はやたらめったら「ここの土地を上げて!」とか「ここに木を持ってきて!」と頼んでくるので、「何をして良いのか分からない」ということはないでしょうし、むしろ住民の要望を全部聞いていたらめっちゃ忙しいゲームになると思います。もちろん自由に遊べるゲームなので、住民の要望なんて無視する遊び方でもOK!


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<画像はゲームキューブ版『巨人のドシン』より引用>

 「何をしても自由とか言われても困る。目的を設定してくれ」という人のためにあるのが、「モニュメントリスト」です。「ハズレのモニュメント」を除いてモニュメントは16種類あって、それを全部作らせるとエンディングになります。

 住民の要望に応えていくと「集落」が発展していって、ある程度のところまで行くと、その集落に住む「住民の色」に合わせたモニュメントが作られます。赤の住民だけの集落なら「赤一色のモニュメント」、赤と青の住民がいる集落なら「赤青二色のモニュメント」といったカンジに。

 また、モニュメント建設のタイミングで住民は「花」を要求してきます。
 「花」は島の中にある木を調整することによって生まれる(詳しくはゲーム内で説明されます)ので……「どの色の住民をどこに運ぶのか」と「限られた本数の木をどこに運ぶのか」という、リソース管理が重要なゲームとも言えますね。


 とは言え、シミュレーションゲームとして考えると難易度は無茶苦茶低いと思います。私は「シミュレーションゲームが下手」と自称するだけあって、初日のプレイで取り返しのつかないことをやっちまったんですが、時間さえかければちゃんとリカバリーできました。『シムシティ』や『A列車』みたいなゲームとちがってお金に縛られることもありませんし、『ポピュラス』のように敵対勢力も存在しませんからね。とあることをしなければ、ゲームオーバーにもなりません。

 「火事を踏み消す」とか「住民を踏まないように歩く」とかはアクションゲームが苦手な人にはシビアに思えるかも知れませんが、ぶっちゃけた話人間の1人や2人殺したところで大した問題はないのがこのゲームなんで、「ハッハッハー!うっかり踏み殺しちゃったぜー」と笑いながら遊べるような人に向いているゲームだと思います。


 『シムシティ』とか『A列車』みたいに集落がどんどん近代的に発展していく要素はないのですが、集落が発展していって住民が作る建物は「巨人への好感度」で変わるそうです。巨人のことを嫌っている集落だと、巨人に対抗して「大砲」とか作るんですって。そんなこと知らなかった私は、「おー、ここの集落は大砲なんか作ってるよー。立派になったもんだなぁ」なんて言っていました(笑)。


 なので、シビアな都市開発ゲームというより、『アクアゾーン』(1993年)とか『たまごっち』(1996年)とか『シーマン』(1999年)のような「育成」よりも「観察」に重点を置いたペットと共に生きるゲームの系譜なのかもと思います。大容量のセーブが出来る64DDを使った結果、その規模が「一つの水槽」から「大きな島」に広がったのがこのゲームというか。
 そう考えるとこの延長線上にあるのは『トモダチコレクション』とかかも知れませんね。あちらが自由度の高い人形遊びだとしたら、こちらはだだっ広いフィールドの砂場遊びなので、『トモダチコレクション』次回作はその2つを融合してフィールドも好き勝手イジれるように出来たら楽しそう。

↓3↓


◇ 幻のプレミアディスクに込められた「自由を楽しめない人々」へのメッセージ
 ということで、このゲームを1行で説明すると「大容量のセーブ領域を活かしたゆる~く遊べる育成シミュレーションゲーム」といったカンジになるのですが……
 そうやってゆるく遊んでいると、終盤の展開やエンディングが「なんじゃこりゃ?」と理解できないんじゃないかと思います。私はエンディングまで生配信でプレイしていたのですが、私も視聴者も「どういうこと?」と戸惑ったまま終わってしまいました。


 ただ、その後にこのゲームのことを調べてみて合点がいきました。
 このゲーム、元々の64DD版は『巨人のドシン1』と『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』という2つのソフトが出ていたんですね。1本目が基本ディスクで、2本目が拡張ディスクというか。

 しかし、ゲームキューブ版の『巨人のドシン』は『巨人のドシン1』の移植であって、『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』にあたる部分は移植されていません。
 64DD自体がほぼ普及しなかった周辺機器なんですが、『巨人のドシン1』はランドネット会員に配布されたため64DDを入手した人の多くがプレイしたのに対して、『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』はランドネットのホームページから購入しなければならないため入手した人は更に少なく、現在では超プレミア化しているソフトとなっています。
 Amazonでは取り扱いがありませんでしたが、駿河屋だと85000円ですね。8500円じゃないですよ、85000円ですよ。




 プレイ動画をアップして下さっている人がいらっしゃいました。感謝感謝。

 簡単に説明しますと、『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』は『巨人のドシン1』とセーブデータを連動して「ディスクを入れ替えながら遊ぶゲーム」です。
 『巨人のドシン1』でモニュメントを作ると、『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』にもパビリオンが立ちます。そうすると、そのパビリオンのコンパニオンから「こうやって『巨人のドシン1』をプレイしなさい」というお題のようなものが出されるので、ディスクを入れ替えて『巨人のドシン1』でそれを実行します。再び『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』に戻ってそれが実行されたことが確認されると、ムービーを観ることが出来るようになる――――と。




 流石に「プレイしたことのある人数」が激少ないので、コンパニオンさんからどういうお題が出されるのかの情報がインターネット上を探し回ってもほとんど見つからないのですが。アップされているプレイ動画から確認されたのは、「ずっとピョンピョン飛び跳ねていろ」というお題でした。通常のプレイでは決してやらない遊び方ですよね。

 要はですね……後の時代のゲームが「クエスト」とか「実績」とか「トロフィー」と呼んでいる“やりこみ要素”をするとムービーが観られるという拡張ディスクなのです。


 恐らく、『アクアノートの休日』『太陽のしっぽ』『巨人のドシン』と自由度の高いゲームをいち早く作っていた飯田和敏さんは、その後のゲームがどういう方向に進むのかを予測していたんじゃないかと思うんですね。
 ゲーム機のスペックが上がっていけば「自由度の高いゲーム」というのは今後どんどん増えていく、しかし「自由度の高いゲーム」が増えると「どうやって遊べばイイのか分からない」という人もたくさん出てくる、そうすると「自由度の高いゲーム」も遊び方を迷わないように「こうやって遊びなさい」というお題を入れるようになるだろうと。


 『巨人のドシン』というゲームは、そういうゲームの未来を予測した上で「クエスト」とか「実績」とか「トロフィー」のためにゲームを遊ぶのなんてクソつまんねえから!と先回りして言っていたゲームだと私には思えます。
 『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』で出されるお題というのは、「ずっとピョンピョン飛び跳ねていろ」みたいに、意図的につまらなくしているお題ばかりみたいなんですね。「せっかく自由に遊べるゲームなのに、こんなことをやらされる」と、わざとプレイヤーに苦痛を与えるお題にしているのです。自由を楽しめないプレイヤーに対する警鐘とも言ってイイかも知れません。



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<画像はゲームキューブ版『巨人のドシン』より引用>

 そもそも、『巨人のドシン1』でもモニュメントリストをコンプリートしろなんて言われません。「最後のモニュメントを建設すると災いが起こるから、作るかどうかはプレイヤーが決めてイイ」的なことも言われます。
 なのに、我々はリストがあればコンプリートしたくなっちゃうし、エンディングがあるならばそれを観るのがクリアーだと思い込んで、それを目指しちゃうじゃないですか。自由に遊んで良いゲームなはずなのに、「住民の言うことを聞かなきゃ」「集落を発展させなきゃ」「新しいモニュメントを作らせなきゃ」と、住民の言いなりになって労働してしまうじゃないですか。

 その皮肉が、あのエンディングなんだと思うんですね。
 住民の言うことを聞いた「労働」の果てにあるのがコレかよと。



 『巨人のドシン1』にもそのメッセージは込められていましたが、『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』は更にそのメッセージを強めた拡張ディスクなんだと思います。
 「ゲームの自由度が高くなるとお題ばかりを課せられるお使いゲーになる」というのも飯田和敏さんからの皮肉なんですけど、「お題をクリアしたご褒美がムービー」というのも当時の「ムービーを観るためにストーリーを進める」というゲーム業界への皮肉でもありそうですよね。当時はプレステの『ファイナルファンタジー』シリーズが300万本とか売れている時期ですから。


 そして、ようやく自分の中でつながったことがありました。
 飯田和敏さんは『巨人のドシン』の後しばらく商用ゲームを作っていなかったのですが、『巨人のドシン』からちょうど10年後の2009年にWiiウェアで『ディシプリン*帝国の誕生』というゲームを出します(発売はマーベラス)。私はこのゲーム、「クソつまんねえ」と思ったのですが……『巨人のドシン』をプレイして納得がいったのです。

 『ディシプリン*帝国の誕生』は、刑務所のようなところに入れられた主人公が、同じ牢屋に入れられている仲間の「睡眠」や「排泄」の世話をするというゲームでした。『アクアノートの休日』や『巨人のドシン』のようにフィールドを動き回れる「自由」はなく、牢獄の中でひたすら「労働」をするだけです。この、ひたすらつまらない「労働」を延々とやらされる作業は『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』につながるものがあるように思えます。

 『アクアノートの休日』で「自由」を描き、『巨人のドシン』『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』でそれを台無しにする「労働」をぶちこみ、『ディシプリン』でただただ「労働」を強制されるだけのゲームを作った――――
 田中圭一さんの『若ゲのいたり』でインタビューされた際、飯田和敏さんは「今の異端が未来のスタンダードになる」と仰っていましたけど、『ディシプリン』の「労働」ってこの後に携帯電話やスマホで出てくるソーシャルゲームなんかへの皮肉だったのかもと今なら考えることが出来ます。



◇ 結局、どういう人にオススメ?
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<画像はゲームキューブ版『巨人のドシン』より引用>

 いやー……これは難しい。
 ものすごく「人を選ぶゲーム」なのは間違いないと思いますからね。

 一つには、1990年代の『アクアゾーン』『たまごっち』『シーマン』のように「ペットを鑑賞&ペットに干渉するゲーム」が好きだった人には、「それの人間版だよ」とオススメ出来るかなと思います。熱帯魚を飼う感覚で、人間共の世話をするゲームだと考えるとイメージしやすいかな。

 そして、もう一つには「このゲームにこめられた皮肉」を楽しめる人なんですけど……ゲームの進化と変化の歴史を把握した上で、それを斜に構えて見られる人じゃないと理解も共感も出来ないと思いますから。一つ目と被る部分もあるんですけど、人間社会を俯瞰的に捉えて、人類全体を見下しているところがある人にはオススメかなぁと思います。


 こう書いて、「そうか!俺も人類を見下しているところがあるから、きっとこのゲームが楽しめるはずだ!」と思える人がどれだけいるんだって話ですが……(笑)。私は楽しかったです!人類なんて滅べばイイって日々思っていますからね!(良いのかそれで)



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