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『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』紹介/「服を着て家から出る」だけでも冒険になる愉快なマニュアル生活へようこそ!

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<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
右足、左足、息を吸って、吐く……全部ボタンで操作する面倒臭さを楽しもう!
でも、実は難易度は高くなくて、万人が楽しめるように設計されている
ブラックなノリと世界観だけど、ストーリーもアートワークもむっちゃ凝ってる!



『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』
・発売:テヨンジャパン、開発:Perfectly Paranormal
 Nintendo Switchダウンロード専用ソフト:2018年11月1日発売、1000円
  ※本体機能でのスクリーンショット撮影可能、動画撮影は不可
 ※海外ではPS4XboxOneSteamなどでも発売されていますが、日本語化はされていません

・アクションアドベンチャー…?
・セーブスロット数:3




 私の1周クリア時間は約02時間でした
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:×(死を扱う話ですが終始明るいノリです)
・恥をかく&嘲笑シーン:△(終始ナレーションの人に笑われてるゲームと言える…)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:◎(サムの動きはグロいし、地獄で並んでいる人達が……)
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×

↓1↓

◇ 右足、左足、息を吸って、吐く……全部ボタンで操作する面倒臭さを楽しもう!
 『Manual Samuel』は海外では2016年にPS4、Xbox One、WindowsPCで発売されていたダウンロードソフトです。
 しかし、日本語化はどこも対応していなかったようで、どうやら日本語化は今回テヨンジャパンが出してくれたNintendo Switch版が初みたい……?何気にセリフの量が多いゲームなんで日本語化はムチャクチャありがたい!ありがとうテヨンジャパン!ありがテヨン!


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<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 このゲームを一言で説明すると、「サムという主人公をマニュアル操作しなくてはならないゲーム」です。
 普通のゲームだったら左スティックを倒すだけで主人公キャラは移動してくれると思うのですが、このゲームの場合「ZRボタンを押すと右足を前に出す」「ZLボタンを押すと左足を前に出す」とイチイチ片足ずつ操作しなくては歩けません。これは右向きの場合であって、左向きになると逆になるので、「画面手前の足がZRボタン」と覚えておくとイイと思います。


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<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 間違えて、前に出ている方の足のボタンを押してしまうとこの通り。
 二足歩行の大変さを思い知ります!


 また、マニュアル操作をしなくてはならないのは「右足」「左足」だけではありません。「右手を使う操作はRボタン」「左手を使う操作はLボタン」と割り当てられていますし、サムの動きは全てボタンで制御しなくてはなりませんから一定間隔で「Bボタンを押してまばたき」をする必要もあります。
 更には呼吸もマニュアル操作なので、「Yボタンを長押しして息を吸う」「Aボタンを長押しして息を吐く」こともやらねばなりません。息を吸うのと吐くのが別のボタンに割り当てられているのがニクたらしい!焦ると連続で吸うボタンを押してしまったり、吸った量以上に吐いてしまったり、大混乱だ!


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<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 「歩く」のも「まばたきをする」のも「呼吸する」のも大変なのに、それだけで1日が過ぎるワケではありません。サムがしなければならないのは、「歯を磨いて」「トイレに行って」「シャワーを浴びて」「ズボンを履いて」「ジャケットを着て」「靴を履いて」「朝食を食べて」「コーヒーを飲んで」家を出るという私達が普段やっている普通の行為です。これらを全部ボタン操作でやっていくのです。

 例えばスクリーンショットの場面は「歯磨き」のシーンです。
 Lボタンを押しっぱなしで歯ブラシを持ち(Lボタンをうっかり離すと歯ブラシを落としてしまいます)、Xボタン連打で歯を磨きます。こういう一つ一つの動作を特殊な操作で乗り切っていかなくてはならないのですが、この間にも「まばたき」をしないと目がシパシパしてきてしまうし……

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<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 うっかり「歯磨き」中に「呼吸」してしまうと、水が肺に入ってムセてしまうという!


 こうして「やらなくてはならないこと」と「やってはいけないこと」が次々と変化していくので混乱するし、飽きさせないのです。


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<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 また、この操作というのが単に「次から次へと新しい操作を覚えなくてはならない」だけでなく、さっき覚えた操作の応用を効かせる面白さなんかがあるのが私の好きなところです。

 例えば、ここは「コーヒーを飲む」シーン。熱々のコーヒーを冷ますためにはフーフーしなければならないのですが、その操作はここまでで散々やってきた「息を吐く」操作と一緒なんですね。
 『ゼルダの伝説』で新しく手に入ったアイテムは「基本的な使い方」だけでなく「こんな意外な使い方もできるんだ」と複数の場面で役立つみたいなことで、さっき覚えた操作が「こんな意外な使い方もできるんだ」と複数の場面で役立つのが面白いのです。



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<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 こうしてやっとの思いで「家から出る」ことが出来たら1面終了。
 2面はなんと「車を運転して職場に行く」だ!歩くのもままならない人が、車を運転するの!?

 しかも、サムが勝手にマニュアル車に改造してしまったので、「ZRボタンを押して左足でクラッチペダルを踏む」→「ZLボタンを押して右足でアクセルペダルを踏む」→「ZRボタンを離してクラッチペダルから足を離す」をしないと車が発進しませんし、ギアチェンジをするためには「十字キー上を押して右手をシフトレバーへ」→「ZRボタンを押して左足でクラッチペダルを踏む」→「Lボタンを押してシフトレバーを引く」をしないといけません。ブレーキをかけるためにはもちろん「Rスティックで右足を動かす」→「ZLボタンを押してブレーキペダルを踏む」をしないといけなくて……ややこしいわ!

 この間ももちろん「まばたき」と「呼吸」を続けなくてはなりません(笑)。


 こんな風に「結構操作に慣れてきたかな……」と思った絶妙なタイミングで次の面に移り、また面倒くさい新しい操作を強いられるという(笑)。
 エンディングまでのプレイ時間はさほど長くないんですけど、これくらいが「丁度飽きないボリューム」だと思うので私はアリだと思います。ダラダラと同じような面を繰り返されても、このゲームの場合「操作に慣れて普通に動かせるようになってしまったらシンプルな動きしか出来ないアクションゲーム」になっちゃいますからね。


↓2↓

◇ でも、実は難易度は高くなくて、万人が楽しめるように設計されている
 ……と、書くと「ムチャクチャ難しいゲーム」のように思えてしまうかも知れませんが、実は難易度はあまり高くありません。というのもこのゲーム、「ゲームオーバーになってコンティニューポイントからやり直し」みたいなのがないんですね。

 一定周期で「Bボタンを押してまばたきをしなくてはならない」のだけど、それをサボっても画面が見づらくなるだけだし。
 一定周期で「Yボタンを長押しして息を吸って、Aボタンを長押しして息を吐かなくてはならない」のだけど、それをサボってもその場でぶっ倒れるだけで、また呼吸をして立ち上がればイイのです。


 「面倒臭い操作」を強いられるゲームですが、ゲームとしては「面倒くさいやり直し」が極力ないように設計されているのです。


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<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 また、「右足」「左足」「右手」「左手」「まばたき」「息を吸う」「息を吐く」を全部ボタンでこなさなくてはならないゲームと書きましたが、ゲーム開始時からいきなりそういう状態になるのではなく、まずは“チュートリアル面”と言えるところから始まります。彼女に瓶でぶんなぐられたサムは……

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<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 脳震盪を起こして、歩き方を忘れてしまいます。
 最初のチュートリアル面は「右足」「左足」を交互に押して歩くことを学ぶんですね。「まばたき」「息を吸う」「息を吐く」はまだやらなくてイイのです。ぶっ飛んだゲームのようで、実は堅実にプレイヤーを導いてくれる「遊びやすいゲーム」なのです。



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<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 「クリアまでのプレイ時間」も短く、「難易度も高くない」のだったら、すぐに終わってしまうゲームでは? と思われるかも知れません。私としては1000円のダウンロード専用ソフトなんだから、「すぐに終わる」「時間がない人でも存分に楽しめる」長所だと思うんですけど……

 「長く遊びたい人」に向けたやりこみ要素として、「タイムアタック」だったり「実績」だったりの仕様も入っています。「実績」コンプは恐ろしく難しいことでしょう。私はチャレンジする気すら起きませんでしたが、「実績」を見ると「靴を履かないで出勤する」みたいに「こんな遊び方も出来るんだ」という発見があったりもします。


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<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 更に、サムのマニュアル操作を2人で分担する協力モードも搭載しています。Nintendo Switchならではの「おすそ分けプレイ」にも対応しています。“協力モード”って書かれてても絶対に1人用より難しくなるぞ、これ!(笑)

 友達が遊びに来たら、一緒に実況してみたいなぁコレ。



 ということで、「アクションゲームが苦手な人」にも「ゲームはとことんやりこみたい人」にも「友達と一緒に楽しみたい人」にもオススメできる作品です。家族で一緒に遊ぶのも面白そうですね。CEROの判定はC(15歳以上対象)ですけど!


↓3↓

◇ ブラックなノリと世界観だけど、ストーリーもアートワークもむっちゃ凝ってる!
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<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 このゲームの大好きなところはたくさんたくさんあるんですけど、例えばゲームを始める前のモード選択が「アメコミのようなイラストになっている」ようなところも大好きです。ゲームの細部まで丁寧に作りこんでいるし、遊び心に満ちていると思うんですね。


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<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 協力モードのおじさん is 誰?




 「コーヒーを飲む」という一つのシーンでも、「冷まさずに飲んで口の中が熱い」、「口ではなく目に入れてしまって熱い」、「脊椎が折れている時に飲もうとして後ろの方に吹っ飛んでいく」と失敗のシーンが多彩なのも面白いです。こちらのとったヘンテコな行動に、ちゃんとゲームがリアクションしてくれるんですね。


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<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 ストーリーが進むのとは敢えて逆の方向に歩いても、ちゃんとリアクションがある!


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<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 ストーリーのデモシーンが「Bボタン長押しでスキップできる」のは、最近のゲームとしては珍しくないと思うのですが……ただ単にデモシーンをカットするのではなく「スキップした時専用のセリフ」が流れてストーリーを大まかに説明してくれるという凝りよう。こういうゲームは私、初めて見ました。


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<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 スキップばっかしてたら嫌味まで言われました(笑)。


 こんなカンジに細部までむっちゃ作りこんでいるし、中身がギュ~ッと詰まっているゲームなんですよ!こういうゲームを「クリアまでが短いからボリューム不足」と言っちゃうのは勿体ない!


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<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 ローカライズも見事。
 音声は流石に英語だけど、字幕はちゃんと雰囲気抜群に日本語に翻訳されています。

 海外版の動画を見てみたんですが、キャラの名前も日本版はちょっと変わってて……「Mr.Welthenburg」というキャラが、日本版だと「カネモチバーグさん」。


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<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 海外版では「Death」というキャラが、日本版だと「デスオ」。


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<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 海外版では「War」というキャラが、日本版だと「キルミちゃん」。





 待って待って待って待って。

 どんなセンスやねん、テヨンジャパン!

 でも、この「デスオ」とか「キルミちゃん」という名前がこのゲームの雰囲気にピッタリで、まさか海外版では全然違う名前だとは思いませんでした。ローカライズは本気で見事だと思いますよ。



 ストーリーは「死」を扱いながらそれを笑い飛ばす「軽薄さ」がウリだと思うのですが、単なるブラックユーモアとして笑い飛ばせるだけでなく。
 全ての操作をマニュアルで行わなければならないゲームシステムにマッチして、「あるのが当たり前だと思っていたことがとても大事だったんだと(プレイヤーとサムが)気付かされる」ストーリーとも言えてこれも見事でした。私はこういう「システム」と「ストーリー」がしっかりマッチしているゲームが好きなんです。ゲームでしか味わえないストーリーになっていますから。



◇ 結局、どういう人にオススメ?
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<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 私にとっては、これまでに遊んだNintendo Switch用のゲーム全部の中でも5本の指に入るくらいにお気に入りのゲームです。
 Wii Uダウンロード専用ソフトには『U-EXPLORE SPACE ADVENTURES』という怪作があったけど、Nintendo Switchダウンロード専用ソフトにはこの『マニュアル サミュエル』があるぜ!と推していきたいゲームでした。

 ゲームに「長いプレイ時間」を求める人には勧めませんが、「短くても濃密な体験」を求める人には是非オススメしたいゲームです。クリアを目指すだけなら難易度もそれほど高くないところも好きなところです。
 細かい部分までよく作りこんでいるし、そういうものを発見するのも面白いです。おすそ分けプレイにも対応しているので、いつか友達と一緒にも遊んでみたいですね。小学生の甥っ子にも遊ばせたいけど、親は顔をしかめそうだ!


使える!活かせる!マニュアルのつくり方 (実務入門)
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¥1,944
売上げランキング: 18264


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『リアルサウンド ~風のリグレット~』紹介/疑いようもなく『Dの食卓』の続編!

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<画像はドリームキャスト版『リアルサウンド ~風のリグレット~』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
「映画の主役になれるゲーム」の次は「ラジオドラマの主役になれるゲーム」だ!
音しかないことを活かして、それぞれの「地元の風景」を思い起こさせる
良くも悪くも「遊ぶ人の気持ちを考えない」飯野さんの作家性を許容できるか



『リアルサウンド ~風のリグレット~』
・発売:ワープ
 セガサターン版:1997年7月18日発売
 ドリームキャスト版:1999年3月11日発売
・インタラクティブサウンドドラマ
・セーブスロット数:1(オートセーブ)


 私の1周クリア時間は約04時間でした
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:○(家庭環境の話がちょっとつらいかも……)
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:◎(うん、これは寝取られと言ってイイんじゃないかな…)
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×

↓1↓

◇ 「映画の主役になれるゲーム」の次は「ラジオドラマの主役になれるゲーム」だ!
 1990年代後半のゲーム業界を暴れまくった飯野賢治さんという人がいました。

 1995年、3D空間を歩き回る「映画の主人公になったようなゲーム」『Dの食卓』を発売して一気に脚光を浴びると……
 1996年にはプレイステーションのイベントで「やっぱりセガサターン専用で出します!」と宣言して度肝を抜いた『エネミー・ゼロ』を発売して。
 1997年にはこの『リアルサウンド ~風のリグレット~』を発売するなど、毎年毎年斬新なゲームを出してくる人だったんですね。しかも、大手の会社に所属するワケでもなく、当時まだ20代の若者が独立して作った会社で自由なゲームを連発して「時代の寵児」と呼ばれる様は、煙たがる人も少なくありませんでしたが夢もあったんだと思うのです。


 『Dの食卓』紹介/“不自由”を遊びにした唯一無二のゲームデザイン!

 『Dの食卓』は6月に実況して最後までプレイして、紹介記事も書きました。
 当時は斬新だった「CGで作られたキャラが3D空間を歩き回るゲーム」は今ではもう珍しくもなんともないですし、グラフィックも現代の水準で見るとチープに見えてしまうのですが、時代を切り開いた作品というのは得てしてそうなってしまいがちですよね。もっともっとブラッシュアップされたものが次々と出てくるので。

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<画像はドリームキャスト版『リアルサウンド ~風のリグレット~』より引用>

 しかし、この『リアルサウンド ~風のリグレット~』は全く古びれません!
 20年前のゲームなら大抵の場合は「今見るとチープなグラフィック」と思われがちなのですが、そもそもこのゲームにはグラフィックがありませんからね!20年前でも真っ暗、今遊んでも真っ暗!時代の流れに左右されないのです!

 そして、この20年ちょっとの間にゲーム業界は様々なゲームを生み出して、個人制作のフリーゲームだったり、少人数で作ったインディーゲームだったり、アイディア勝負のゲームは山ほどあったと思うのですが……『リアルサウンド』のように「画面が出ないゲーム」は他にはなかったように思われます(私の知らないところであったらゴメンなさい)。

 故に、2018年の今遊んでも「他にはない唯一無二のゲーム」と感じられるのです!



 というワケで、このゲームには「画面」がありません。
 テレビに何かが映るのは「タイトル画面」と「ディスクを入れ替えてください」の表示だけ。ゲーム中はずっと画面は真っ暗です(※1)。視覚障碍者の人にも遊んでもらいたいという狙いもあったようで、その「タイトル画面」や「ディスクを入れ替えてください」の画面でも音声ガイダンスも流れます。

(※1:ドリームキャスト版にはイメージ映像みたいなものを表示し続けるモードもあります)


 さて、『Dの食卓』や『エネミー・ゼロ』でCGをフル活用した「映画のようなゲーム」を作った後に、『リアルサウンド』と謳って「画面が出ないゲーム」を出してきた当時、私は正直「逃げたんだな」と思いました。1997年と言えば、もうスクウェアが『ファイナルファンタジーVII』を出している年です。グラフィックで競い合えばスクウェアみたいな大会社には太刀打ちできないワープは、グラフィック以外を攻めますよーと「逃げた」のだと思っていました。

 そういう理由がなかったとは言い切れませんが……
 今年の6月に『Dの食卓』をプレイして、11月にこの『リアルサウンド ~風のリグレット~』をプレイして(※2)、その考えは浅はかだったなと思いました。

(※2:『エネミー・ゼロ』はゴメンなさい。超難しいゲームという話なので、私は今後もプレイはしないと思います)


 というのも、『Dの食卓』も『リアルサウンド ~風のリグレット~』も、全然ちがうジャンルのゲームだと思うんですが、遊んでみて得た“体験”はすごく似ているんですね。『Dの食卓』は「映画の主人公」を自分で操作して正しいエンディングまで導くゲームでしたが、この『リアルサウンド ~風のリグレット~』は音声だけの「ラジオドラマやドラマCDの主人公」のセリフを自分で選ぶことで正しいエンディングまで導くゲームでした。

 恐らく飯野さんにとっては「CGを駆使すること」は最優先ではなくて、プレイヤーに「主人公になって物語を動かす体験」をしてもらうことこそが最優先だったのだろうと思いましたし、そういう意味では『Dの食卓』も『リアルサウンド ~風のリグレット~』も似たゲームなのです。
 エンディングの分岐に「主人公がどれだけ記憶のカケラを集められたのか」が左右するのも一緒なのは、「また記憶を集めるのかよ!」とは思いましたが(笑)。


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<画像はドリームキャスト版『リアルサウンド ~風のリグレット~』より引用>

 ということで、ここからはゲームの説明です。
 ゲームを始めると音声だけの「ラジオドラマ」というか「ドラマCD」のようなものが再生されます。一時停止や早送り・巻き戻しのようなものは一切できません。流れるストーリーをひたすら聴くだけ。

 しかし、ところどころで「主人公のセリフ」を二択か三択の中から選ぶ場面が出てきて、ここのみゲームの進行が止まります。トイレに行きたいときなどはひたすら選択肢を選ぶシーンが来るのを待ちましょう(笑)。
 スクリーンショットの場面では、左を押すと「ここは俺の家だよ」、右を押すと「とにかく逃げよう!」と主人公が喋るので、主人公に喋らせたい方のボタンを押しながらAボタンでそのセリフを喋らせます。

 選んだセリフによってヒロイン達の好感度が変わってくるなどして、最終的なエンディングが変わる仕様みたいです。ただ、チュンソフトのサウンドノベル(『弟切草』や『かまいたちの夜』)のように遊ぶたびにストーリー展開が大きく変わるということではなく、基本的なストーリーの流れは共通で、主人公達が訪れる場所や終盤の展開が変わるという仕組みのようです(エンディングは5種類)。


 個人的には……もうちょっと「自分の選択肢によってストーリーが大きく変化する」実感を味わわせて欲しいなとは思いました。「自分が主人公を動かしている」カンジがしないと、「普通にラジオドラマを聴けばイイのでは?」と思われてしまう致命的な部分なので。
 サウンドノベルのような文章とちがって、音声でストーリーが進む今作は容量の問題もあって「様々なストーリー展開」を入れづらかったのだろうとは思うのですけどね(実際、『リアルサウンド』はシリーズ作品になる予定で続編の広告も出ていたのだが、音声圧縮が上手くいかなくて開発中止になったとの話ですし)。


↓2↓

◇ 音しかないことを活かして、それぞれの「地元の風景」を思い起こさせる
 とは言え、「ラジオドラマ」として考えるととてつもなく豪華な布陣だとも思います。

 脚本の坂元裕二さんは、何といっても1990年代を象徴するドラマ『東京ラブストーリー』の脚本家で、最近では『カルテット』なんかでも高い評価を受けた人ですし。
 音楽の鈴木慶一さんは、はちみつぱいやムーンライダーズで知られる一線級のミュージシャンで。ゲーム好きな人達にとっては『MOTHER』『MOTHER2』などの名前が分かりやすいかも知れませんが、後に『座頭市』や『アウトレイジ』などの北野武監督の映画の音楽も手掛けていますし、最近では『若おかみは小学生!』の劇場版アニメの音楽を担当されていますね。
 EDテーマは、なんと矢野顕子さんの名曲『ひとつだけ』。


 キャスト陣は実写のドラマ・映画などで活躍している人達を起用していて、当時の水準からしても「豪華だなー」と思いましたが、その後に更なるビッグネームになっていく人達です。……ですが、もしこの記事を読んでいるアナタが今後にプレイする予定があるならば、キャストは知らずにプレイした方がイイと思います。
 本来ならばプレイヤー一人一人に「自分だけの主人公像」「自分だけのヒロイン像」を想像させるゲームなので、役者の顔がイメージされてしまうのは勿体ないです。みんなに顔が知られている有名な俳優さんだからこそ、顔がイメージ出来てしまうのがこのゲームにおいてはマイナス点になるという。


 ということで、フルプライスのパッケージソフトで出すんだからそれくらいやってくれなきゃ困るという話なんですが、『Dの食卓』や『エネミー・ゼロ』をヒットさせたワープからこそ実現した「ものすごく豪華なラジオドラマ」と言えますね。


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<画像はドリームキャスト版『リアルサウンド ~風のリグレット~』より引用>

 ストーリーも「画面がない」「音だけのゲーム」なことを(それなりに)活かしたものとなっています。

 大まかに説明しまうとこんなカンジ。
 東京で大学生をしている主人公:野々村博司の恋人が、ある日突然失踪してしまう。博司と彼女は同じ小学校に通っていた幼馴染だが、小学生の頃にも「駆け落ちの約束をしたのに待ち合わせ場所に彼女が来ずにずっと会えなかった」ことがあった。博司は失踪した彼女を探すため、生まれた町に帰るのだった――――

 ということで、親元を離れて東京に出ていた主人公が、田舎の故郷に帰るという話なんですね。しかし、このゲームは「プレイヤーにラジオドラマの主人公を体験してもらうゲーム」です。描かれる故郷がプレイヤーそれぞれの故郷と遠く離れたものでは、没入感を損なってしまいます。
 なので、例えばスクリーンショットは「主人公が通っていた小学校を大人になった今訪れる」シーンなのですが、当然のように画面には何も映っていないので、プレイヤー一人一人がそれぞれの母校を思い浮かべるワケですよ。自分の思い浮かべた職員室、自分の記憶している体育館……グラフィックがないからこそ自分の記憶の中からそれぞれのグラフィックを引っ張ってきてイメージさせるのです。


 まぁ、その割には「板張りの廊下」とか「海のある町」とか、割と特殊な特徴を描写していて「俺の育った町とちがうぞ!」と思わせるところも多かったですけど……(笑)。


 それはそうと、この時期のゲーム業界って「ノスタルジー」を喚起させるものが一つの流行りだったような気がしますね。このブーム、何がきっかけなんでしょう??

・1997年:『リアルサウンド ~風のリグレット~』(セガサターン)
・1999年:『ファミコン文庫 はじまりの森』(スーパーファミコン)
・2000年:『ぼくのなつやすみ』(プレイステーション)


 このゲームをプレイし終えた後、色んな人の感想を見たくてネットでレビューを読み漁ったんですが……賛否両論真っ二つで、「賛」の人はこの「小学生の頃の淡い初恋を思い出させるストーリー」について言及する人が多かったですね。ストーリーがメインのゲームなので、評価のポイントはストーリーになるのは当然のことで。

 私は、実はここがあんまりで……「画面が出ないゲーム」「音だけのゲーム」という斬新さは評価したいし、この方向性はもっともっと可能性があると思うんですけど、ストーリーがちょっとありきたりに思えてしまった(20年前のゲームにこれを言うのもあんまりだとは思いますが)のと、終盤が「終わりそうで終わらない」時間がダラダラと続いていたことでそこまで「賛」にはなれませんでした。
 飯野さんはファミ通にこのゲームを評価するなら「10点」か「評価不能」にして欲しいと仰ったらしいのですが、私がもしレビュアーだったら「7点」くらいの微妙な点数を付けたと思います。意気込みは買う!この方向性は支持したい!でも、そこまでは面白くはなかった!


↓3↓

◇ 良くも悪くも「遊ぶ人の気持ちを考えない」飯野さんの作家性を許容できるか
 んで、まぁ……ここなんですよね。

 飯野さんの有名な逸話の一つに、宮本茂さんの『スーパーマリオ64』について「開発途中のものは自由で良かったが、製品版はスターを集めるだけのゲームになってしまった」と批判して、宮本さんに「それは僕の仕事ではなく、飯野くんや飯田(和敏)くんがやること」と言われた―――というものがあるんですけど、この『リアルサウンド ~風のリグレット~』をプレイしてそのやり取りの意味がようやく分かりました。


 宮本さんのゲームは、任天堂の新型ゲーム機を買ってもらうためのソフトであって「大勢に売れる」必要があって、そのためには「分かりやすく」「プレイヤーを導く」必要があるんですね。だから、スター集めという分かりやすい目標をプレイヤーに提示するワケですし、宮本さんはゲームソフトを「自分達が作った作品」とは呼ばずに「お客さんに買ってもらう商品」と呼ぶんですね。

 一方の飯野さんは、「刺さる人に刺さればイイ」というゲームを作るので、「プレイヤーを突き放す」ことをしてまで自分の作家性を貫くことが多いんですね。
 例えば、『Dの食卓』には「セーブ機能がない」「ゲーム開始から2時間経ったら強制終了で最初から」「がんばって終盤まで行ってもワンミスで容赦なくバッドエンド」という普通では考えられないような仕様でしたし。『エネミー・ゼロ』も頑なに難易度を下げずに発売して賛否両論になりましたし。「お客さんが遊びやすいように」なんて考えずに、「ついてきたいヤツだけついてこい!」ってスタンスの人なんですよね。


 故に、この『リアルサウンド ~風のリグレット~』もとにかく遊びづらい……
 「画面がない」からとか、「音しかない」からとかでなく、根本的なところで「お客さんが遊びやすいように」なんて考えていないのです。

 このゲーム……ええっと、記事冒頭では「ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください」とクリア時間を隠していたんですけど、もうここには書いちゃってイイですよね。説明書にも書いてあるのだし。1周クリアまでにおよそ4時間かかります。2時間で終わった『Dの食卓』とちがって、流石に「セーブ機能なし」はマズイだろうとオートセーブ機能が付いているのですが。

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<画像はドリームキャスト版『リアルサウンド ~風のリグレット~』説明書より引用>

 説明書にドヤ顔で「オートセーブにしました」とか書いてあるのよ!
 セーブ機能が付いていることくらい普通だから!普通のゲームなら付いているから!

 それでも「出来ればセーブ機能を使わずに一気にプレイして欲しい」とも書いているし、そもそもこの「オートセーブ機能」がどこでセーブされているか分からないのでやめづらい!セーブされたと思って再開したら10分前からやり直す羽目になったみたいなこともあるそうですし、終盤は選択肢が1つもないまま1時間くらい進むので「トイレに行きたいけど席を立つこともできない」時間が続きます。

 普通のアドベンチャーゲームなら「任意セーブ」をいくつも記録できるので、「選択肢によってストーリーが分岐する前」にセーブして次はそこから再開とかが出来るのですが……このゲームは「オートセーブ」な上に、「選択肢を選んだ後」で強制セーブされるそうなので、選択肢から再開ということは出来ません。
 1周目のエンディングを迎えて、別のエンディングを観たい時も、毎回ゲームの最初からプレイしなくてはならないのです。早送りみたいなものはありませんし、フローチャートみたいなものももちろんありません。毎回必ず最初から4時間かかるプレイをしなくてはならないのです。エンディングを除けばストーリー展開はだいたい似たような展開をしていくゲームなのに!


 『Dの食卓』はまだ「1周目で得た知識」を「2周目で活かす」といったように、「不自由さ」がゲームの面白さに繋がっているところがあったのですが……『リアルサウンド ~風のリグレット~』は、ただただ「不自由」なだけ。「ラジオドラマやドラマCDの主人公になれるゲーム」と書いたのですが、ドラマCDなら「再生するトラックを選べたり、早送りしたりできる」から気楽に再生できますよ!

 そのため、私は1周目でハッピーエンドを迎えたら2周目を遊ぶ気にはなれませんでした。流石にまたほぼ同じ話を4時間聴くのはしんどいです。ストーリーを忘れた5年後くらいにプレイするのはイイと思いますけど……


 ただ、それも飯野さんの作品の魅力の一つなんですよね。
 賛否両論の「賛」の人達はそこも含めて好きなんだろうし、私も『Dの食卓』では「その不自由さが面白いんだよ!」と言っていたので気持ちは分かります。ダウンロード専用ソフトとかインディー制作のソフトが大ヒットするようになった2010年代にゲームを作っていたなら、どれだけ尖ったゲームを作っていたんだろう……と、若くして亡くなられたことを心から惜しく思います。



◇ 結局、どういう人にオススメ?
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<画像はドリームキャスト版『リアルサウンド ~風のリグレット~』より引用>

 「斬新なゲーム体験」のために、4時間テレビの前に座る覚悟がある人ならば……最低でも1周は楽しめると思うのでオススメです。今、なかなか据置ゲーム機を4時間遊ぶって難しいとは思うのですが……逆に考えると、「画面のないゲーム」なので4時間ぶっ通しでプレイしても目は疲れません!(笑)


 でも、マジメな話……「画面を使わないゲーム」って、スマホが普及した今ならもっと活きそうなアイディアだと思うんですよねぇ。例えば、スマホを出すこともできないような満員電車の中でもイヤホンを付けて遊べるワケですし、勉強しながら、家事をしながら、お風呂に入りながら、好きな時に遊べるゲームになりうるワケで(今なら音声入力で操作することも出来るでしょうし)。
 ジャンルを考えても、このゲームのような「選択肢を選ぶだけのアドベンチャーゲーム」だけでなく、アクションゲームだって、RPGだって、シミュレーションゲームだって、自由じゃないですか。『ラブプラス!』みたいな恋愛ゲームでも面白そう。電話でしかコミュニケーションが取れない彼女と会話する疑似体験ができる!テレクラかな!?


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『白衣性愛情依存症』紹介/なんだか…想像してたのと全然ちがうぞっ!

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<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
「男が出ない百合」どころか、「男が存在しない世界の物語」
ポンコツ「アホの子」主人公:大幸あすかが可愛い
「看護学生の日常を描いた作品」とも「可愛い女のコ達のイチャラブ」ともちがう…何だこれ


『白衣性愛情依存症』
・発売:工画堂スタジオ
 PlayStation Vita版:2015年4月30日発売、パッケージ版5800円、DL版4800円
 Windows 7/8/10版:2015年12月25日発売、パッケージ版8800円
  ※グッドエンド後を収録した録り下ろしドラマCDなどの特典が付く
 Steam版:2016年7月7日発売、DL専用4400円
 Nintendo Switch版:2018年5月24日発売、DL専用4800円
  ※ スクリーンショット撮影可能、動画撮影可能
公式サイト
・テキストアドベンチャー
・セーブスロット数:64


<PVはPlayStation Vita版のものです>
 私の1周クリア時間は約08時間でした
 全エンディング到達にかかった時間は約20時間でした
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:◎(グッドエンドに到達すればそこまでだけど、バッドエンドが…)
・恥をかく&嘲笑シーン:◎(良いシーンだけど、共感性羞恥の人にはきついシーンかも)
・寝取られ:○(寝取りですよね、コレ)
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:△(欠損はないです。人が刺されたりするけど)
・人が食われるグロ描写:◎(食われるワケではないけど、食うシーンがある!)
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:◎(百合ゲーですよ?)
・BL要素:×
・ラッキースケベ:○(おっぱい触っちゃう程度ですが…)
・セックスシーン:○(直接的な描写はないけど、事前・事後をにおわす描写がそれなりに)


↓1↓

◇ 「男が出ない百合」どころか、「男が存在しない世界の物語」
 このゲームを開発・販売している工画堂スタジオという会社は、実は創業100年を超える歴史のある会社で、ゲーム制作も1980年代からPCゲームを中心に行っている老舗メーカーだったりします。
 ゲーム機用に移植されたものや、ゲーム機用に作られたものは多くないので、ゲーム機だけを遊んでいた私みたいなゲーマーにはあまり馴染みのある名前じゃありませんでしたが……初期の『Emmy』という作品は、1984年のPCソフトながら女性キャラとチャットして親密度を上げてエッチな絵を見る「ひょっとしたら世界初のギャルゲーでは?」と言われている作品なんですって。

 2011年、社内チーム「しまりすさんちーむ」のデビュー作となる『白衣性恋愛症候群』(通称:『白恋』)がPSP用ソフトとして発売されます。これは恐らく、2007年に発売したPC用ゲーム『ソルフェージュ』を2008年にPSP向けに移植して成功したことが大きかったんじゃないかと推測できます。「PSPで百合ゲー、行ける!」みたいな。

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<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 そして、『白恋』の流れを汲んで2015年にプレイステーションVita向けに発売になったのがこの『白衣性愛情依存症』』(通称:『白愛』)です。名前は似ていますが、前作は病院の看護師が主人公で、今作は看護学校の看護学生が主人公なので、ストーリーは独立しています。実はこの看護学校が前作キャラの一人の母校だったみたいな小ネタがあったりもしますが、特に知らなくても問題はなさそうです。
 その後、PC版、Steam版、Nintendo Switch版と移植されて―――この多機種路線を引き継いでか、この「しまりすさんちーむ」の3作目『夢現Re:Master』は2019年2月にVita/PS4/Nintendo Switch/Windows/Steamの同時期発売が発表されています。こちらは病院や看護学校を舞台にした『白衣性~』2作から一転、ゲーム会社を舞台にし百合ゲーを作るアドベンチャーゲームになるそうです。対応機種、多いな!ありがたいけど!


 さて、ここからは今作『白衣性愛情依存症』』(通称:『白愛』)についての話です。
 どうしてわざわざ前作の話とかを書いたのかは後程。

 このゲーム、分類をするなら間違いなく「ゲーム機用ソフトでは珍しい百合ゲー」です。私もカワチさんが書いた以下のタイトルの記事を読んで購入しましたからね。「百合の世界に疎い人でも、百合入門に向いている1作」みたいなね。

 『白衣性愛情依存症』を男女両方の目線でレビュー! 少しでも百合に興味ある人なら誰でも楽しめる!


 ただ、実際にプレイしたら「なんか…思ってたのとちがうぞ」と戸惑いの連発でした。
 「百合ゲー」という言葉だけを見ると「女性同士の恋愛を主題にしたゲーム」とイメージすると思うのですが、共通ルートと言える前半は特に“恋愛”の描写はほとんどなく、「女性しかいない看護学校に入学した主人公達の日常を描く作品」といったカンジでした。普通の女のコ達が看護師になっていく勉強を描き、その厳しさや尊さをリアルに&等身大に描いていっているんですね。
 なので、前半は「百合作品」というより、女のコだけのゆるふわな部活を描いた『けいおん!』系の作品とか、女のコだけで目標に向かって突き進むスポ根の『ラブライブ!』系の作品に近いという印象でした。んで、後半は前半に選んだ選択肢によって各ヒロインの個別ルートに分岐して、そこで“恋愛”をしていくカンジです。「女性しかいない看護学校」だからそりゃ女性同士の恋愛になるよね、という。


 さて……

 「女性しかいない看護学校……?」と思った人は鋭いですね。
 現実の看護学校って多分、男性もいますよね。男性の看護師が存在するのですから。多分。

 しかし、この作品の看護学校には男性キャラがいません。というか、この作品には男性キャラが出てきません。ただの一人も。
 『ラブライブ!』ですら小さな男の子や父親の後ろ姿は出てくるというのに、この作品では子供も老人も全員「性別:女」ですし、もっと言うと「父」や「お父さん」といった単語すらこの作品には出てきません。『ラブライブ!』すらも凌駕する徹底した「男性が排除された世界」なのです。

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<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 というのも、この作品世界はiPS細胞によって「女性同士で子作り」が可能になっていて、それが一般的とされているそうなんです。そのため「女性同士の結婚」も普通ですし、「女性同士の交際」だってもちろん普通です。


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<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 例えば、細かいですがこのシーン。
 ヒロインの一人:さくやの母親が倒れ、さくやと母親の関係をいつきから訊くというシーンなのですが……普通(まだ「女性同士で子作り」が可能ではない私達の現実世界)だったら「母親の話は分かったけど父親はどうしているの?」と言うであろうシーンで、「片親」「もう片方」という言葉を使って性別を言及していないんですね。


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<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 例えば、ここのシーンも……普通だったら「父が○○、母が××」と書きそうなところを、「両親が○○と××」と書いていて、性別をぼかしているのです。男と女の夫婦かも知れないけど、女と女の夫婦かも知れない―――どちらにも取れるようにしてあるんですね。

 これはエンディングまでのガッツリとしたネタバレを含むインタビューで語られていることなんですけど、前々作『ソルフェージュ』ではまだ「女性同士の恋愛」が認められていない世界で、前作『白恋』では男の人は存在しているけど「女性同士の恋愛」「女性同士の結婚」が認められてきた世界で、今作『白愛』でとうとう男の人の存在が確認できない「女性同士の恋愛」「女性同士の結婚」が一般的になっている世界になっている……と、意図的にそういう世界を作ったことが語られています。


 「百合」と呼ばれる作品にも、「男が出てこない百合」と「男が出てくる百合」の二種類があると言われています。
 前者には『ストロベリー・パニック』や『ゆるゆり』があって、後者には『青い花』や『やがて君になる』がありますが――――前者はどうしてもファンタジー色が強くなってしまい、リアリティを求めると後者になっていくと思うんですね。外界から完全に隔離された『ストロベリー・パニック』ですら「高校を卒業したら許嫁(男)と結婚する」みたいなセリフがありますし、男性メインキャラがまったくいない『桜Trick』にも男性モブキャラは出てきます。


 そんな中、この『白愛』は「iPS細胞によって女性同士で子作りができる」という(現実とはちがうという意味での)ウソを一つ作ることによって、「男が出てこない百合」の世界にリアリティを持たせたんですね。
 この発案はどうやら男性ディレクターだったみたいですが、私も同じように男性の百合好きなので気持ちがよく分かります。いっそのこと世界から(自分も含めて)男性が消滅してくれたら、残った女性達が百合ってくれるのでは―――みたいな妄想をすることがあって、その妄想世界を本当に作っちゃったのがこのゲームだと思うんですね。




 ただ、その弊害もあって……
 この『白愛』には男性がいないため、本来なら男性キャラが担うはずの「ナンパ男」とか「酔っ払い」とか「○○の売人」とかも全部女性なんですね。例えばそれが女性らしい「ナンパ男」とか「酔っ払い」とか「○○の売人」とかになっているならともかく、設定上は女だけど台詞や行動はすごく「テンプレな男キャラ」みたいなのばかりで。そこはちょっと工夫がないかなぁと思いました。

 まぁ……よく言われる「女性しかいない街があれば、その街では夜中でも女性が安全に歩き回れるのでは?」「いやいや、女性しかいなくなったとしても女性の犯罪者が増えるだけだ」という議論からすると、男が完全に消滅した世界ではそれがリアルな姿なのかも知れませんが。


↓2↓

◇ ポンコツ「アホの子」主人公:大幸あすかが可愛い
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<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 可愛い。


き(気)のせいだ、うん
<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 可愛い。



き(着替えよう
<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 可愛い。


 割とヘビーなストーリーと、なかなかバッドエンドを抜け出せない難易度と……かなり癖があって「好き嫌いは分かれる」ゲームだと思うんですが、このゲームを好きになれるかどうかはやはり「主人公を気に入るかどうか」次第だと思うんですね。私は途中めげそうになったけど、あすかが可愛かったので最後まで付き合うことが出来ました。


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<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 大幸あすかという主人公を一言で説明すると「ポンコツお姉ちゃん」です。
 朝は起きれず、身の回りは全て年子の妹任せ、学校の成績も下から数えた方がイイ劣等生―――「何でもできる」上に、「お姉ちゃんのことが大好き」な妹であるなおちゃんが支えてくれているから何とかなっているようなコです。『けいおん!』の平沢唯・憂姉妹のような黄金姉妹ですね。妹であるなおちゃんもヒロインの一人なので、もちろん攻略可能です。

 でも、ポンコツなお姉ちゃんだけど、その前向きさだったり明るさだったりが周囲を引っ張っていってるのも確かで―――そういう意味では『ラブライブ!』シリーズの穂乃果ちゃんや千歌ちゃんみたいな「主人公らしい主人公」と言えるのかも知れません。こんなポンコツだった彼女が……的なストーリーになっていったり、ならなかったりするゲームなので。



 没個性の「どこにでもいる投影型の主人公」というより、個性的な「キャラとして立っている主人公」なので、この主人公を好きになれるかが全て……ということなのか、例えば私服もピンクピンクしていて一番可愛いと思うし、髪型とかも「誰からも嫌われないデザイン」を意識されていると思います。

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<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 個人的にすごく好きなのは、「言葉遣いが乱れる」ところ。
 普段は可愛い可愛い声で女の子らしい言葉遣いをしているのだけど、焦ったりすると素が出るのか低い声で荒い言葉遣いになるのが可愛いです。と思ったら、ゆるーいシーンではおばあちゃんみたいな口調になったりして、コロコロ変わる表情と、それに合わせて声優さんのトーンも変わって、日常シーンでも観てて飽きないんですね。
 プレイ時間の大半はこのコと一緒に過ごすのだから、「観てて飽きない」ってのは大事ですよね。スクショ映えするテキストも豊富です。


 あすかを演じる声優さんは浅倉杏美さん。
 『アイドルマスター』の萩原雪歩や、『中二病でも恋がしたい!』のくみん先輩のように、大人しいキャラやおっとりとしたキャラが多い印象の声優さんなので、こういう明るくて元気な主人公らしい主人公は新鮮な気持ちで演じられたのだとか。


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<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 脇を固める声優さんは、超甘々な妹:なおちゃん役はスーパー甘々ボイスの加隈亜衣さん、お嬢様:さくやさん役は田村ゆかりさんと、こちらは逆に安定の配役です。特に、加隈亜衣さんの声って私は「たくさんいる声優さんの中でも一番可愛い声」だと思っているので、この声でずっとずーっと「お姉ちゃん大好き」とイチャイチャしてくれたのは眼福・耳福でした。

 どうも、このチームのディレクターさんは「姉妹百合」が好きらしく、この『白愛』もメインヒロイン一番手が妹だし、次の『夢現Re:Master』もストーリーを読む限りは思いっきり「姉妹モノ」っぽいんですよね。うむ!私と気が合うな!


↓3↓

◇ 「看護学生の日常を描いた作品」とも「可愛い女のコ達のイチャラブ」ともちがう…何だこれ
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<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 さて、ここからですよ。
 このゲーム、「どういうゲームだったのか」を説明するのが非常に難しいのです……

 もちろんアドベンチャーゲームですから「ネタバレに配慮して書きたいことが全部書けない」というのもあるのですが、ネタバレなんか気にしなくても全ルートをクリアしてもなお「何だったんだこのゲーム…」感が強いのです。


 まぁ、ここはもう「ネタバレ」とか関係なく書いちゃっても構わないと思うので書きますが、このゲーム―――前半はどのプレイヤーも通る共通ルートで「看護学生の日常を描いた作品」なんですね。
 最初に書いたように『けいおん!』とか『ラブライブ!』みたいな雰囲気で私はすごく好きでした。看護婦になるための勉強はすごく大変だけど、入学から、病院実習、夏休みに海に行くとか、文化祭の準備とか……ザ・青春!ってカンジのストーリーが楽しかったです。

 んで、前半に選んだ選択肢によって、それぞれのヒロインの個別ルートに分岐していくのですが……個別ルートに入った途端、看護学校の描写が希薄になるし、「え?この作品ってそういう作品だったの?」と言いたくなる展開になっていきます。
 そして、その個別ルート内の選択肢によって「各ヒロインごとのグッドエンド」「各ヒロインごとのバッドエンド」に分岐するという形なのですが、特にこの「各ヒロインごとのバッドエンド」が……なかなかなものでして。

 他の人のレビューでは「前半と後半でライター変わった?」と言っている人もいたくらい前半と後半の温度差が激しいのです。



 ただ、これはどうやらスタッフの狙い通りみたいなんですよねぇ……
 というのも、ここで前作『白衣性恋愛症候群』(通称:『白恋』)の話が出てくるのですが、前作もまた「可愛い可愛い百合ゲーだよ!」と言っておきながら割とヘビーな話だったため、前作を通過したファンには「どうせまたヘビーな話なんでしょ?」と警戒されているだろうとこういう構成になったそうです。

 ガッツリネタバレ含むインタビューにそのことが書かれているので引用しますが、核心部分はここでは伏字にさせていただきます。

<以下、引用>
みやざー氏「個別ルートに入ったら、◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ながら、それぞれのヒロインと近づいていくので、そこだけ見せると重いゲームになってしまうこともあり、共通ルートは日常の積み重ねでとにかく可愛らしい、とにかく萌えるイベントを多く入れようということにしました。」

向坂氏「共通ルートが長いというのにも関わってくると思うのですが、みやざーさんからは「白恋」のファンの方たちは絶対“キラ☆ふわ”だとは信じてくれずに入ってくるだろうから、そんな人ですら「今回は本当に“キラ☆ふわ”なの?」と油断してしまうくらい、共通ルートは影が一切無い、明るくふわふわ、ゆるゆる、萌え萌えでいきたいという話がありました。それを受けて、夏の海のような季節イベントを充実させたりといったところにつながったのかなという気もします。」

みやざー氏「そこまでの溜めがあるからこそ、◆◆◆◆◆のシーンが映えるだろうと。」

</ここまで>
※ 強調・伏字など一部手を加えています


 つまり、本当に描きたいのは「個別ルート後の後半」なのだけど、それを衝撃的に見せるために「共通ルートの前半」は平和に描いたとのこと。この手法……ネタバレになるから具体的な作品名は挙げませんが、ゼロ年代の鬱アニメで見たことある!

 なので、例えばこの記事の序盤で紹介したカワチさんのレビューとかが象徴的なんですけど、このゲームを紹介する人って「共通ルートの前半」にしか触れずに「個別ルートの後半」には一切ネタバレしないようにする人が多いのです。それも一つの手だと思いますし、「後半に衝撃的な展開が待ってるよ!」と紹介するのは作品の魅力を損なうんじゃないかと迷ったんで、「このゲーム、「どういうゲームだったのか」を説明するのが非常に難しいのです……」と書いたのですが。



 ぶっちゃけ、このゲームの魅力を語るに「衝撃的なバッドエンド」に触れないワケにはいかないと思うんですよ。

 私、最初に到達したエンディングが「先生ルートのバッドエンド」だったのですが、その時点では「グッドエンド/バッドエンド」の仕組みも分かっていなかったので、「ひょっとしてこのスタッフはこれをハッピーエンドだと思って作っているのか……?」と震えました。

 全ルートをクリアした後、ネット上を周って色んな人のレビューを読んでもみんな、「○○のバッドエンドがキツかった」「私は◆◆のバッドエンドが一番つらかった」「△△のバッドエンドはある意味では一番幸せなのでは?」みたいにバッドエンドについて熱く語っているし。あすかを演じた浅倉さんですら全ルート制覇後に解禁されるオマケメッセージで「○○のバッドエンドを演じてから×××が食べられなくなった」と言っていて。


 このゲームを語る人は、みんな「どのバッドエンドがキツかった」と語る時が一番熱量が上がるのですよ。かく言う私も先月の活動報告では、「先生ルートのバッドエンド、ひどすぎるでしょ!」と書いていましたし(笑)。私、チュンソフトのサウンドノベルとかケムコのデスゲームものとかを結構遊んでいて「惨たらしいバッドエンド」には耐性が出来ていると思ってたんですけど、またそれとはちがう心にダメージが来るバッドエンドだったというか。

 それってやっぱりこのゲームの欠かせない魅力の一つだと思うんですね。
 そんなにみんなが熱く語りたがるのだから。

 だからまぁ、最初のVita版の発売から3年半、最後のNintendo Switch版の発売から半年近くが経過しているのだから、これくらいまでなら書いてもイイかなぁと書くことにしました。



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<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 ただ、「衝撃的なバッドエンド」に比べて「グッドエンド」がイマイチ地味というか記憶に残らないというのが若干の不満ですかねぇ。まぁ、「グッドエンド」とは得てしてそういうものなのかも知れませんが、「やっぱりそうなるよね」以上のものがない、予想できる未来しか与えられなかったというか。
 そういう意味では、一人のルート(ネタバレになるので文字反転させますが、さくやさんルート)は予想を上回る展開をしていって面白かったです。最後に「そうなるのかー」と思わせるのも美しい着地点だったと思います。

 また、このゲームもう3年半も前のゲームなこともあって、サイト上で行われた特別企画なんかも残っていて……各ヒロインのグッドエンド後の「その後どうなったか」を描いたオマケストーリーが公式ブログに掲載されていたりもします。当然ゲームラストのネタバレを含むので、まだゲームをプレイしていない人は読んじゃダメよ?さくやルートなおルートいつきルート

 書いているのはゲームと同じライターさんなのでストーリー的に破綻もありませんし、面白いです。なおちゃんルートはこれを読んで「ようやく報われた」という気になれました。


◇ 結局、どういう人にオススメ?
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<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 ということで、このゲーム「前半」と「後半」でテイストが変わるので「どういう人にオススメ」って言いづらいんですよねぇ。「前半が好きな人」には後半はヘビーだろうし、「後半が好きな人」には前半は長ったらしく思えるだろうし。

 ただ、そもそもチュンソフトが『弟切草』を作ったころからマルチシナリオのアドベンチャーゲームは「様々なテイストの話が入っているゲーム」だったようにも思えます。それはまぁ、ルートによってテイストが変わるという意味であって、前半と後半でテイストが変わるという意味ではないのですが(笑)。

 「様々なテイストの話が入っているアドベンチャーゲーム」を求めている人には、このゲームもオススメかなと思いますね。あとは、「男性が完全にいなくなった世界」を見てみたいという人にもオススメかな!これは俺が夢見た「俺達がいない世界」だ!早く死にたい!


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『スーパーマリオブラザーズ3』紹介/新ディレクターによって、シリーズは新たな領域へ

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<画像はファミリーコンピュータNintendo Switch Online版『スーパーマリオブラザーズ3』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
砂漠の国、海の国、空の国……世界中を冒険する旅がここから始まる!
新変身はアクションが苦手な人の救済を兼ねるシリーズ伝統の始まり
以後のシリーズには受け継がれなかった2人協力プレイの面白さ


『スーパーマリオブラザーズ3』
・発売:任天堂、プログラム:SRD
 ファミリーコンピュータ用ソフト:1988年10月23日発売
 ゲームボーイアドバンス版:2003年7月11日発売 ※リメイク
 Wiiバーチャルコンソール版:2007年12月11日配信開始
 3DSバーチャルコンソール版:2013年1月1日配信開始
 Wii Uバーチャルコンソール版:2013年12月25日配信開始
 GBA版のWii Uバーチャルコンソール版:2015年12月29日配信開始 ※リメイク
※その他、ニンテンドークラシックミニファミリーコンピュータに収録されていたり、『ファミリーコンピュータNintendo Switch Online』で遊べるラインナップだったりする他、スーパーファミコン用ソフト『スーパーマリオコレクション』そのWii移植版にもリメイク版が収録されています
・横スクロール2Dアクションゲーム
・セーブ機能やパスワードコンティニューはなし
(原作は。リメイク版やバーチャルコンソール版などの移植には追加されている)


※ 紹介映像はニンテンドークラシックミニ版のもので期間限定公開だそうです

 全ワールドクリアに私達がかかった時間は約12時間でした
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください
↓1↓

◇ 砂漠の国、海の国、空の国……世界中を冒険する旅がここから始まる!
 「マリオ」というキャラクターとシリーズが世界中で大人気になっていくシンデレラストーリーは、元々はデザイナーとして任天堂に入社していた宮本茂さんがゲームディレクターとして大活躍していくストーリーにシンクロしています。

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<画像はアーケードアーカイブス版『ドンキーコング』より引用>

 1981年、宮本茂さんのデビュー作となるアーケード版『ドンキーコング』は、同時に「マリオ」のデビュー作でもありました(当時はまだマリオという名前も付いていませんでしたが)。「ジャンプというアクション」を軸に「全4面」のバラエティに富んだステージに挑む作品は世界中でヒットして、ゲームディレクターとしての宮本茂さんのキャリアが始まります。
 1982年、今度はマリオを敵にして、前作のジャンプアクションに「ツルの昇り降り」という新アクションを加えたアーケード版『ドンキーコングJR.』が稼働し。
 1983年、横井軍平さんとの合作で2人同時プレイが可能な『マリオブラザーズ』がアーケード版とファミコン版で出てきました。

 そして、1985年―――『スーパーマリオブラザーズ』が「ファミコンROMカセットの集大成」という一大プロジェクトとして作られて、全世界的に超大ヒットします。


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<画像はファミリーコンピュータNintendo Switch Online版『スーパーマリオブラザーズ』より引用>

 しかし、世界中で大ヒットして『スーパーマリオ』が「任天堂の顔」どころか「ファミコンの顔」「ゲームの顔」とすら言えるようになったタイミングで、「マリオ」シリーズは若手に引き継がれるのです。
 1986年に発売されたディスクシステム用ソフト『スーパーマリオブラザーズ2』が、当時まだ入社3年目とかの手塚卓志さんのディレクターデビュー作ですからね。

 『スーパーマリオブラザーズ2』は、「1作目の素材を活かして上級者向けに作った」高難度版なので、まだ若手に任せることが出来た―――と考えることも出来ますが、完全新作となるこの『スーパーマリオブラザーズ3』も引き続き手塚卓志さんがディレクターを務めることになります。
 しかも、「宮本さんがアイディアを出すから手塚さんはそれをまとめるだけ」みたいなことではなく、宮本さんに反対されながら当初は俯瞰視点のゲームにしようとしていたとか、全体的に絵柄が可愛くなったとか、手塚さんは独自色をどんどん入れていったんですね。

 もちろん手塚さんは元々1作目の頃からスタッフとして参加していましたし、宮本さんも『3』の開発後半には各要素をまとめるために現場に入ったみたいなんですが……『スーパーマリオブラザーズ3』『スーパーマリオワールド』の頃の「マリオ」シリーズって、実は宮本茂さんよりも手塚卓志さんのテイストが強い作品なんです。


<以下、引用>
 こうしてマリオとゼルダの二大シリーズを手がけることになった宮本氏だが,会社組織的にも個人のモチベーションを持続するうえでも,そればかりをやっているわけにはいかない。そこで,それまで務めていたディレクターを他者に譲り,自分は直接開発に携わらずに,プロデューサーとして複数のタイトルを同時に手がけることになっていく。
</ここまで>

 「人生に無駄なし」「チャレンジしていれば悩まない」──任天堂 宮本 茂氏,30年にわたる自らの仕事史を振り返る

 この記事は2009年10月の「DIGITAL CONTENT EXPO 2009」というイベントの宮本茂さんの講演をまとめたもので、“直接開発に携わらずに”というのはスーパーファミコン以降の話として語られたみたいなのですが、タイミング的にはファミコン後半のこの時期にはもう「若手への切り替え」を始めていたのかなぁと思います。


 「漫画は作者のもの」「映画は監督のもの」といった考え方を拡張して、「ゲームはディレクターのもの」とついつい私達は考えてしまいがちですし、それも一つの考え方だと思うのですが。
 任天堂はこの頃も今も「生まれたシリーズはディレクター一人の作品」とは考えていないと思うんです。『ゼルダ』をカプコンに作らせたり、『スターフォックス』をナムコに作らせたり、『メトロイド』をテクモに作らせたり、むしろ新しい風を取り込むことを重視していて……最近でも『Splatoon』1作目の功労者である阪口翼さんが、2作目ではディレクターから外れていてどうしたのかと思ったら段ボールを作ってたみたいな会社ですからね。

 だから、「マリオ」という看板タイトルであっても「宮本茂という一人の天才」に背負わせ続けるのではなく、若い開発者達が作る体制を作れたのかなぁと思います。


<以下、引用>
宮本「そうなんですよね。だから、そこは説明が難しいところなんですけど、『Wii Fit』にしろ『マリオギャラクシー』にしろ、直接ぼくがつくっているところって、ないんです。
 だから、こういうところでこうしてしゃべると、「あなたはなにもつくってないんじゃないの?」というふうに言われるようなこともある。たしかに、それはそのとおりなんです。でも、ぼくが決めることを決めてないと、これはできていないぞ、というプライドもあって。」

糸井「それはそうでしょう。」

宮本「その意味からいうと「これはぼくがつくりました」なんですが、じゃあ物理的にどこをつくったかと言われると「すいません、なにもつくってません」っていうことになる。」

糸井「ああ、わかる、わかる(笑)。」

宮本「ファミコンのころのゲームならね、細かいデータも自分で決めたし、仕様も全部自分で書きましたから、ある程度「つくりました」と言えたんですけど、もうここ15年くらい、自分で直接は作業してないですからね。
 でも、どっちにしろゲームって組織じゃないとつくれないし、たったひとりが欠けてもそれは完成しない。そういうものをつくってるわけです。
 そうなると、全員のクリエイティブをどれだけ引き出すかというのがやっぱり自分の大切な仕事になるんです。」

糸井「そうですね。」

宮本「現場が淀まないように見渡しながら、「淀まないためのクリエイティブ」をやる、みたいなところがぼくの仕事で、それは、ネタ出しもあるし、肩もみもあるし、日によって変わってきますね。」

糸井「「ちゃぶ台返し」も(笑)。」

宮本「「ちゃぶ台返し」もあるし(笑)。
 そういうことをやってるねんな、と自分では分析しているんですけど、なかなかうまく説明できなくて、で、久しぶりに会う人なんかから「最近、つくってないですね」って言われると、「ああ、そう言われるとつくってないですね」って、しょうがなく答えたりして。」

糸井「つまり、プレイング・マネージャーじゃないと、「つくっている」と思わないタイプの人がいるんですよね。」

宮本「そうなんですよね。
 だから、最低限のこととして思うのは、開発チームの中心メンバーがぼくを「いてくれてよかった」と思っているかどうか。ま、そこが、ぼくの存在価値かな(笑)。」

糸井「わかる、わかる(笑)。」

宮本「ただ、うちの組織としては、もう、ぼくがいなくてもできる組織にせなあかんので、そこが悩みどころなんですけどね。」

</ここまで>
※ 改行・強調など一部手を加えました

 「ディレクターではなくプロデューサーを続けている」ことについて、宮本さんは10年前の『ほぼ日刊イトイ新聞』で糸井さんと話されています。プロデューサーとして関わっているものすべてを「宮本茂が作ったゲーム」と評されるのも、かといって「宮本茂は何もしていない」というのもちょっとちがう、複雑な立ち位置が垣間見える対談ですよね。



 ということで、ようやく『スーパーマリオブラザーズ3』の話に入れます(笑)。
 要は、この作品は「宮本茂のゲーム」であった「マリオ」シリーズが、「手塚卓志のゲーム」ないしは「任天堂のゲーム」へと切り替わったターニングポイントの作品なんですね。そして、以後(『スーパーマリオ64』を除けば)「マリオ」シリーズは様々な若いディレクターが担当していくことになるという。

 しかし、こういった形で「一人の突出した超天才が作り上げたもの」を「他の人に引き継がせようとする」と、原作の劣化コピーが延々と続くだけだったり、原作の良さを全く理解していないものが出来上がったりしてしまいがちなのですが……ところがどっこい、後を引き継いだ手塚卓志さんもまた超天才だった上に、『スーパーマリオ』1作目からスタッフとして参加していたこともあって「スーパーマリオの面白さのツボ」を熟知していたんですね。


 そのため、この『スーパーマリオブラザーズ3』は『スーパーマリオ』1作目の面白さを分析してそれを拡張させつつ、1作目にはなかった新要素を次々と取り入れていて、以後のシリーズに引き継がれる“新たな原点”になったところが多々あるのです。
 ここが任天堂の恐ろしいところなんですよ!宮本茂を倒しても(倒れてません)、手塚卓志が出てくるし、どんどん才能ある若手が出てくるという……この辺が「宮崎駿の後継者を作れなかったジブリ」と対照的だと思うのですが、その話は流石に横道にも程があるのでこの記事では触れません。



 では、『スーパーマリオ』1作目にはなかったけど、『スーパーマリオ』1作目の魅力を拡張していった新要素とは何なのか―――この記事はそれを紹介していこうと思います。まずはこれ。

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 砂漠

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 海

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 巨大

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 空

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 氷

 「世界中を冒険するゲーム」になったところです(画像はファミリーコンピュータNintendo Switch Online版『スーパーマリオブラザーズ3』より引用しました)


 『スーパーマリオブラザーズ』1作目の特徴は、全32ステージという数もさることながら「地上」「地下」「水中」「アスレチック」「敵の城」といった様々なシチュエーションのステージを進むバリエーションの豊富さがあるんですね。同時期のファミコン版『スペランカー』なんて、全4ステージな上に全部「洞窟」でしかないのに!(笑)

 というのも、『スーパーマリオブラザーズ』というゲームの開発コンセプトは「大型のキャラクターを使って、陸・海・空を舞台にしたアスレチックゲームをつくりたい」から始まったらしいんですね。
 陸は分かるでしょう。海もありました。あの面だけ操作がちがうので子供の頃はすげー苦手意識ありましたねぇ。空は……というと、元々は「マリオがロケットや筋斗雲に乗ってビーム銃を撃つ」シューティングゲームみたいなステージを入れるという構想があったのだとか。しかし、メモリの関係で没になって、その代わり「豆の木」による空中ボーナスステージが出来たという

 この「ステージごとに全くちがうゲームになる」ところは『ドンキーコング』の全4面の話にも通じますし、シューティング面があるのはゲームボーイの『スーパーマリオランド』で実現しているけれどスタッフは共通じゃないよなぁ……とか、いろいろなことを思うのですが。


 その「陸・海・空を舞台にしたアスレチックゲーム」という1作目のコンセプトを引き継いでパワーアップさせたのが、「色んな国を冒険するゲーム」という『スーパーマリオブラザーズ3』なのです。
 1作目の舞台になった「キノコ王国」は、実は「キノコワールド」という大きな世界の入口の国にすぎませんでした。その奥には、砂漠の国、海の国、巨大な国、空の国、氷の国……と様々な国があって、クッパ軍団がそこで大暴れしているので助けに行かなくては!といったストーリーが説明書には書かれています。


 こうして『スーパーマリオ』シリーズは旅行記のように様々な場所を訪れつつ、そこで様々なアスレチックステージに挑むシリーズになっていったんですね。
 続編の『スーパーマリオワールド』は謎に満ちた「恐竜ランド」を開拓していくというゲームで、ドームがあったり、迷いの森があったりと様々なロケーションのステージが待っています。『スーパーマリオ64』ではキノコ城の中にある様々な「絵の世界」に飛びこむという設定で、海賊の入り江や空中に浮かぶ雪山など様々な場所を舞台にして冒険します。『スーパーマリオギャラクシー』は様々な惑星が舞台で、『スーパーマリオオデッセイ』は様々な国を冒険していく旅行記で……と、この流れは『スーパーマリオブラザーズ3』が作ったのです。


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<画像はファミリーコンピュータNintendo Switch Online版『スーパーマリオブラザーズ3』より引用>

 そして、ただ単に舞台が様々な国になっただけでなく……
 ステージも「スクロール」が自由になったことで「上にスクロールするステージ」や「迷路のようにゴールを探すステージ」など様々なものが生まれ、更には「強制スクロールのステージ」もあったりで、“バリエーションの豊富さ”がとてつもなくなりました。その分、1ステージあたりの長さはそんなでもない印象なのですが、ステージ数はなんと90!(多分)

 1作目が32ステージだったことを考えると、ほぼ3倍な上に、同じようなステージの使いまわしはなく、1つ1つのステージに「このステージにしかない遊び」が詰まっているのがすごいです。


 しかし、欠点はその裏返しで……
 そんな大ボリュームのゲームなのに「セーブ機能」も「パスワードコンティニュー」もありません。実機では電源を入れたら毎回1-1から始まります。そのために「笛」というアイテムを使ってワールドをすっ飛ばせるようになっているのだけど、「笛」は隠しアイテムだし、「笛」で一気に最終ワールドに進むとアイテムをあまり持っていないので苦しむことになったりもします。

 また、後の『スーパーマリオワールド』などでは「高難度ステージはエンディングとは関係のないやりこみ要素に」移動させられたのですが、まだそういう文化のなかった『スーパーマリオブラザーズ3』は「やりこみ要素クラスの高難度ステージ」がワールド7やワールド8のステージになっているため、エンディングを目指すだけでも難易度はかなり高いです。

 まぁ……今から遊ぶ人は、ほとんどの人が途中セーブの出来るバーチャルコンソールとかクラシックミニとかファミコンOnlineとかレトロフリークとかで遊ぶと思うので、欠点は克服されたとも言えるのですが。「マリオだから誰にでもクリアできるもの」なんて思ってプレイすると苦労しますよとは言っておきます。


↓2↓

◇ 新変身はアクションが苦手な人の救済を兼ねるシリーズ伝統の始まり
 『スーパーマリオブラザーズ3』と言えば、パッケージの絵やロゴにも入っている「しっぽマリオ」でしょう。1作目ではスーパーマリオ状態以上のパワーアップは「ファイアーフラワーを取ったファイアーマリオ」だけでしたが、今作は「スーパーこのはを取ったしっぽマリオ」が加わりました(この2つは併用できません)。

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<画像はファミリーコンピュータNintendo Switch Online版『スーパーマリオブラザーズ3』より引用>


 「しっぽマリオ」と言えば、Bダッシュジャンプ後にAボタンを連打することで「空中を飛べる」ことと。Bボタンを押すことで「敵を攻撃できる」ことが、分かりやすい新アクションと言えます。
 前者は1作目ではメモリの関係で没にせざるを得なかった「空中ステージ」へのリベンジと言えますし、後者はどうやら「俯瞰視点」で開発していた時に自分の周囲を攻撃できるアクションとして考えられたようで、1つの変身でその両方の新アクションが出来る―――というのがポイントだったみたいなのですが。



 「ファミリーコンピュータNintendo Switch Online」で遊べるようになった今回、私は生配信でプレイしながら「Bダッシュをしない方が『スーパーマリオブラザーズ3』は簡単なのかを検証する」ということをやって、しっぽマリオの本当のすごさは「ジャンプ後に下降する際にAボタンを連打すると落下スピードが落ちる」ことにあると実感しました。
 それを利用して「狙ったところに着地しやすくなる」というのももちろんあるのですが、「単純にジャンプの飛距離が伸びる」んです。

 その結果―――本来なら「Bダッシュジャンプをしないと届かない距離」であっても、しっぽマリオでしっぽを振りながら落下すれば届いてしまうため、Bダッシュジャンプが出来ない人への救済措置になっているのです。

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<画像はファミリーコンピュータNintendo Switch Online版『スーパーマリオブラザーズ3』より引用>


 アクションゲームの続編が出る際、新たなアクションが加わったことをウリにするゲームは多いです。前作までには出来なかった「タメ撃ちが出来るようになったよ」とか「上方向への攻撃が出来るようになったよ」とか。
 しかし、じゃあゲームとしてプレイヤーに有利になるかというと、「タメ撃ちを使いこなさないと倒せない固い敵」が出てきたり、「上方向に攻撃しないとどうにもならないくらい四方八方から敵が押し寄せてくる」とかだったりで、ゲームが複雑になってプレイヤーに求められるスキルが増えるだけということも多々あります。「最近のゲームは難しいと思いませんか?」ってヤツですよ。

 しかし、『マリオ』シリーズの場合はちょっと特殊で……基本的には(※1)全てのコースは、変身を使わない「チビマリオ」の状態でクリアできるようになっているんですね。新変身によって追加された新たなアクションを駆使しないとどうにもならないゲームにするのではなく、「チビマリオ」のままでもクリア出来るけど「しっぽマリオ」だとちょっと楽になるというバランスにしてあるのです。

(※1:「しっぽマリオ」で空中を飛ばないとクリアできないステージは実はいくつかあるし、変身関係ない「モノを持って投げる」アクションが必須のステージもありますが)


 「Bダッシュジャンプが苦手な人への救済措置」というのは、後のシリーズにも引き継がれていて……『スーパーマリオワールド』の「マントマリオ」は「しっぽマリオ」とほぼ同じ能力なので当然として、『スーパーマリオワールド』では「ヨッシーを切り離す2段ジャンプ」が出来ますし、DSの『Newスーパーマリオブラザーズ』ではBダッシュジャンプをしなくてもジャンプの飛距離が伸びる「マメマリオ」という変身があります。

 『マリオ』シリーズにおける、新変身は「アクションゲーム上級者のため」だけではなくて「アクションゲームが苦手な人のためにある」というスタンスはこの時に固まったのかなと思います。



 とは言え、理論上は「Bダッシュジャンプをしなくてもしっぽマリオなら届く」と言われても、アクションゲームが苦手な人はしっぽマリオを維持するのが難しいでしょう。
 『スーパーマリオワールド』以降のように、既に1回クリアしたステージをやり直してアイテムを取ってくるということが『3』では出来ませんし、ステージ中にいつでも出せる「ストックアイテム」も『3』にはありません。なので、『3』では必要な時にしっぽマリオを使うということが(後のシリーズに比べて)難しいんですね。

 逆に考えれば、『3』の仕様では「アクションゲームが苦手な人への救済措置」としては不十分だということで、『スーパーマリオワールド』以降は「1回クリアしたステージもやり直せる」「ストックアイテムでステージ中いつでもアイテムを出せる」仕様になったとも考えられます。
 そういう意味では、この「アクションゲームが苦手な人への救済措置」は続編の『スーパーマリオワールド』で完成するのであって、『3』ではまだ(救済措置という点では)プロトタイプのような形に留まっていると言えるのかも知れません。


↓3↓

◇ 以後のシリーズには受け継がれなかった2人協力プレイの面白さ
 ここまでは「以後のシリーズの定番となった“様々な世界を冒険する”要素」と、「以後のシリーズのプロトタイプとなった“アクションゲームが苦手な人への救済措置としての新変身”」について語ってきました。以後のシリーズの原点になっている要素が『3』には多いという話ですね。

 ただ、そうすると「じゃあ別にわざわざ『3』やらなくてもイイんじゃない?」「『スーパーマリオワールド』はやったことあるから似たような『3』はやらなくてイイかな」と思ってしまった人もいるかも知れません。ということで、最後の項目は「以後のシリーズには引き継がれなかった要素」に敢えて触れることで、『マリオ』シリーズの中でも『3』だけが持っている魅力を語ろうかなと思います。


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<画像はファミリーコンピュータNintendo Switch Online版『スーパーマリオブラザーズ3』より引用>

 ただ、その前に基本的な情報を先に書いておきます。
 『マリオ』シリーズの中でも、「次に遊ぶステージ」を「すごろくのようなフィールドマップ」を歩いて選ぶスタイルが初めて採用されたのはこの『3』です。
 『スーパーマリオブラザーズ3』以前にもこういう「フィールドマップから次に遊ぶステージを“選ぶ”」ゲームはあったのかなとTwitterで情報を募ったところ、1985年の『ドラゴンバスター』(ナムコ)がそれっぽいですね。フィールドマップがあって、ゴールがあって、それに向かってどちらのルートに進むか選べる2Dアクションゲームです。任天堂のゲームで言えば1987年の『リンクの冒険』のようなアクションRPGもそれっぽい気もします。


 しかし、それらのゲームと比べても『スーパーマリオブラザーズ3』の「すごろくのようなフィールドマップ」はものすごくよく出来ていて……例えば上のワールド1のマップを見れば分かるように、「1-3」と「1-4」は特にクリアしなくても良いステージなんですよね。でも、どちらか片方をクリアすれば「キノコハウス」に着いてアイテムがもらえるという……つまり、クリアには関係のない「寄り道」と、どちらのステージを選んでも良い「分岐」が最初の3ステージ目で既に提示されているという。




 そして、ここからが『スーパーマリオワールド』以降には引き継がれなかった『3』にしかない要素ついての話です。

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<画像はファミリーコンピュータNintendo Switch Online版『スーパーマリオブラザーズ3』より引用>

 この『スーパーマリオブラザーズ3』では、クリアしたステージは「マリオならM」「ルイージならL」のマークが付いてステージの上を通過できるようになります。しかし、残機がなくなってゲームオーバーになってしまった場合、そのプレイヤーがクリアしたステージは復活するようになっています。

 ただし、「砦」や「ハンマーブロス」など特定のステージはゲームオーバー→コンティニューでも復活せず、「砦」をクリアすると扉が開いてショートカットの道が出来ることが多いので、『スーパーマリオワールド』以降の「ゲームオーバーになったらセーブしたステージからやり直し」と同じようなものかなと思います。
 またワールド7までの各ワールド最終面は「飛行船」となっていて、クリアできないとその度にフィールドを逃げ回るので、ゲームオーバー→コンティニューで復活してしまったステージの間に逃げ込まれるとまた同じステージをクリアしなくてはならないのが厄介です。

 この辺の仕様は、面白かったんですけどアクションゲームが苦手な人の心を折る仕様とも言えるので、以後のシリーズには引き継がれなかったのだと思われます。


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<画像はファミリーコンピュータNintendo Switch Online版『スーパーマリオブラザーズ3』より引用>

 さて、ここまでの仕様……「確かに『スーパーマリオワールド』以降とは細かいところがちがうけど、そこまで突出した魅力じゃなくない?」と思われたかも知れません。実際、1人用を遊ぶだけなら『スーパーマリオブラザーズ3』も、『スーパーマリオワールド』以降のシリーズもあまり変わらないと私も思います。

 『スーパーマリオブラザーズ3』が化けるのは2人用で遊んだ時なんです。

 プレイヤーは「1Pのマリオ」「2Pのルイージ」が交代でステージに挑むのですが、フィールドマップは共通なので1Pがクリアしたステージは2Pがクリアする必要がありません。
 ファミコン時代はコントローラがデフォルトで2つ付いていたため、ゲーム開始時に「1人で遊ぶ」「2人で遊ぶ」を選べるゲームが多かったのですが、初期の画面固定アクションならともかく、『スーパーマリオブラザーズ』のような横スクロールアクションゲームが主流になっていくと「2人同時に遊ぶ」ことがマシンスペックの問題で難しくなっていきます。そのため、「2人で遊ぶ」を選んでもただ単に1Pと2Pが交互に遊ぶだけのゲームが結構あったんですね。

 『スーパーマリオブラザーズ3』開発時も2人同時プレイが出来ないかと模索したらしいのですが、実際に2人同時プレイを実現した『スーパーマリオ』シリーズはWiiの『NewスーパーマリオブラザーズWii』が最初なのでファミコンのスペックじゃとてもじゃないが無理でした。そこで出てきたのが「フィールドマップを交代で進めていく」この仕様です。

 『スーパーマリオブラザーズ』1作目は1Pも2Pもそれぞれ1-1から別々にスタートするので、例えば「ゲームが上手いお兄ちゃん」はサクサク進んで8-2とかまで進んでも、「ゲームが下手な弟」はいつまでも1-1から先に進めなかったりしたものです。
 しかし、『スーパーマリオブラザーズ3』は「お兄ちゃん」がクリアしたステージは「弟」はもうプレイしなくて構わないので、極端な話「弟」が1面もクリア出来なかったとしても、「お兄ちゃん」と一緒にどんどん先のステージ・先のワールドを遊ぶことが出来るのです。

 もちろん同じくらいの実力の人でも「得意なステージ」「苦手なステージ」がちがうでしょうからそれを補ったり、1Pがミスしたのを見て2Pがそこを注意して突破したり、「1Pと2Pが交互に遊ぶだけ」なのにちゃんと協力している感があるんですね。


 そして、『スーパーマリオブラザーズ3』特有の「アイテムがもらえるキノコハウス」や「残機が増える絵合わせ」など、1人が入るともう1人は入れないボーナスステージもあるので、譲り合いだったり奪い合いだったりになることもありますし。
 先ほども書いたように、このゲームは「残機がなくなってゲームオーバーになってしまった場合、そのプレイヤーがクリアしたステージは復活する」上に、「各ワールド最終面は「飛行船」となっていてクリアできないとその度にフィールドを逃げ回る」ため、どちらがステージをクリアしたのかが後々に重要になっていくんです。


 生配信した際のアーカイブのスクショなので、ちょっと画面がクッキリしていないんですが御勘弁を。

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<画像はファミリーコンピュータNintendo Switch Online版『スーパーマリオブラザーズ3』より引用>

 やっとの思いでワールド5の最終面までたどり着いたのに、飛行船を1発クリアできなくて、復活してしまった5-4と5-5の間に逃げ込まれるの図!5-4もものすごく苦戦してやっとの思いでクリアしたのに、またクリアしなくちゃいけないのか……


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<画像はファミリーコンピュータNintendo Switch Online版『スーパーマリオブラザーズ3』より引用>

 やっとの思いで再び5-4をクリアしたのだけど……


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<画像はファミリーコンピュータNintendo Switch Online版『スーパーマリオブラザーズ3』より引用>

 またも飛行船をクリアできずに、逃げられる――――!


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<画像はファミリーコンピュータNintendo Switch Online版『スーパーマリオブラザーズ3』より引用>

 飛行船を追って、地上まで降りてきました!3度目の挑戦!


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<画像はファミリーコンピュータNintendo Switch Online版『スーパーマリオブラザーズ3』より引用>

 また逃げられる―――!
 各ワールド序盤のステージは難易度はそこまで高くありませんが、序盤のステージほど「ゲームオーバー→コンティニュー」で復活している確率が高いので、逃げ回られると復活したステージの間に入りやすいってことですね。


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<画像はファミリーコンピュータNintendo Switch Online版『スーパーマリオブラザーズ3』より引用>

 とうとう一番端まで逃げられた!

 ……ここのワールドの飛行船、確か40分くらい苦戦していましたよね。
 でも、この独特の緊張感は後のシリーズにはない『3』ならではの魅力だと思うんです。フィールド全部を使って、逃げ回る飛行船を追いかけるのはむっちゃ楽しかったです。


 また、このゲームは全体的には難易度は高いんですが……「キノコハウスなどでもらえる所持アイテム」を使うことで、正面からクリアしなくても何とかできるという救済措置もあります。
 1ステージだけすっとばせる「ジュゲムの雲」、フィールドマップ上のブロスorパックン面をスルーできるようになる「オルゴール」、1ステージだけ空中を飛び続けられる「パタパタの羽」など――――昨今のシリーズの「同じステージで何度もミスしているとクリア扱いにしてくれる救済措置」に通じるものがありますが、アイテムを使うタイミングを考える戦略性がある分『スーパーマリオブラザーズ3』の方がゲームシステムの中にきっちり組み込まれているようにも思えます。


 ということで、初めて『マリオ』シリーズで「フィールドマップ」を採用した作品にも関わらず、2人協力プレイや、逃げ回る飛行船、所持アイテムを使う戦略性などなど……後のシリーズのどの作品よりも、「フィールドマップ」を活かした色々な遊びが詰め込まれているのです。
 「アクションゲームが苦手な人への救済措置」「万人向けゲーム」にならなくてはならないシリーズとしては仕方がないことなんですけど、それ故に『スーパーマリオブラザーズ3』は未だに「同じようなゲームが存在しないオンリーワン」として輝き続けているのです。


◇ 結局、どういう人にオススメ?
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<画像はファミリーコンピュータNintendo Switch Online版『スーパーマリオブラザーズ3』より引用>

 『マリオ』シリーズが更に一段階高い領域に上がって、新たな基準となった一作。

 1人で遊ぶのでももちろん面白いのですが、2人プレイで遊べる環境にある人には是非2人プレイで遊んで欲しいですね。同時プレイを実現したWii版以降とはまたちがう面白さの協力プレイだと思いますし、Nintendo Switchならオンライン越しで一緒に遊ぶことも出来ます(アプリを使えばボイスチャットも可能です)。

 30年前のゲームなんですけど、同じ1988年のファミコンタイトルと比べても未だに古さを感じさせない色あせない名作です。触れたことがないという若い人も是非どうぞ!



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『Ultimate Chicken Horse』紹介/これぞ対戦&協力型『マリオメーカー』の形!

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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
みんなの思惑が交錯してできる「予測不能コース」を攻略せよ!
ルールもステージも自由にカスタマイズ可能だから、遊び方も自由!
見知らぬ人とのオンラインプレイだからこそ、「楽しく遊ぼうぜ!」と読む空気


『Ultimate Chicken Horse』
・開発:Clever Endeavour Games
 Steam版:2016年3月5日発売、1480円
 プレイステーション4版:2017年12月14日発売、1500円
 Xbox One版:2017年12月15日発売、1620円
 Nintendo Switch版:2018年9月25日発売、1480円
  ※ スクリーンショット撮影可能、動画撮影不可
・2~4人プレイ用の2D横スクロールアクションゲーム
・セーブスロット数:1


<PVはNintendo Switch版のものです>


<PVは2017年末のアップデート内容です>

<PVは2018年9月のアップデート内容です>
 
↓1↓

◇ みんなの思惑が交錯してできる「予測不能コース」を攻略せよ!

 このゲームはカナダの小さなゲーム開発会社:Clever Endeavour Games(従業員は6人!)による2D横スクロールアクションゲームです。

 PC版が最初に発売されたのは2年半も前らしいのですが、PS4版が出た昨年末やNintendo Switch版が出た先月に合わせて全機種でアップデートして、様々な新機能や新ブロックなどが追加されたそうです。Nintendo Switch版から入った私からすると「この機能、今までなかったの!?」と思う部分もあるので、他機種版を随分前に遊んだっきりという人も久々に起動してみましょう!

 ちなみに「PS4版とPC版」「Nintendo Switch版とPC版」はクロスプラットフォームで遊べるそうです。過去のブログ記事ですが、Xbox One版は残念ながらクロスプラットフォームでは遊べないとの記述がありますね……


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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

 ゲームはまず、ツリーハウスに並ぶ「羊」や「アライグマ」、「馬」、「鶏」などの可愛らしい動物達の中から自分が操作するキャラクターを選びます。マルチプレイの時は、当然「他の人が既に選んでいるキャラクター」は選べません。


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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

 キャラクターを選んだらプレイ開始!
 操作方法は「Xボタンを押しっぱなしでダッシュ」「Aボタンでジャンプ」という『スーパーマリオブラザーズ』シリーズに似た形ですね。キーコンフィグは出来ません。キャラクターによる性能差もなし。
 『スーパーマリオワールド』の「Yボタンを押しっぱなしでダッシュ」「Bボタンでジャンプ」から一列ズレているので最初は戸惑いましたが、じきに慣れました。

 2Dアクションゲームとしての“触り心地”の特徴としては、キビキビ動く(慣性があまり付かない)のと、壁キックが自由に出来て「1つの壁だけで壁キックで登っていける」のが重要ですね。




 このゲームにはいくつかモードがあるのですが、メインモードと言って良いであろう「パーティ」「クリエイティブ」について説明します。これらのモードは2~4人による対戦モードで、ローカルプレイはもちろん、オンラインプレイにも対応しています。Nintendo Switchの場合は片方のJoy-Conだけで遊べるので、おすそ分けプレイも出来ますね。

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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

 このゲームの基本は、「スタート地点」から「ゴール地点の旗」まで走って跳んでたどり着くだけ!その順位によってポイントがもらえ、それを例えば12ラウンド繰り返して、設定されているスコアに誰かが到達したら優勝です。


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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

 ですが、それだけだと当然ゲームにはなりませんよね。
 「パーティ」モードの場合は、与えられたパーツの中から1人1つずつを選んで……
 「クリエイティブ」モードの場合は、全てのパーツの中から自由に1人1つずつ……


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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

 好きな場所に設置することが出来ます。


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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

 設置が終わったら競争開始!


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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

 競争が終わったらまた設置。


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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

 設置が終わったらまた競争!

 というのを繰り返していくと………


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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

 最終的には、こんな殺意に満ちたコースになるという!



 このゲームは「ルールのカスタマイズ」が可能なので様々な遊び方が出来ますが、基本的には「自分が真っ先にゴールすればポイントになる」のと「自分の仕掛けたトラップで他のキャラを倒せればポイントになる」ため―――
 イジワルなトラップを仕掛けて「自分以外」を殺しに行くのか、はたまた凶悪なトラップをすり抜ける救済パーツを置いて自分が真っ先にクリアするのか、“「スタート地点」から「ゴール地点の旗」まで走って跳んでたどり着くだけ”のゲームなのに様々な思惑が交錯するのです。

 自分の仕掛けた弓矢のトラップが他の人のブロックによって防がれる、とか。
 せっかくゴールしやすくなるようにと置いた階段が爆弾で破壊される、とか。
 良かれと思ってワープ扉を置いたら、ワープ扉の向こうから延々と矢が飛んでくるようになった、とか。

 全員の思惑が交錯するからこそ、「俺の思ったようにならない!」という予測不能なコースが出来上がっていくという。


 遊んでいる感覚は『スーパーマリオメーカー』の100人マリオで出会った「クソコース」に頭抱えながら挑んでいるのに近いような、むしろ敢えて「クソコース」を作って相手を困らせるゲームのような、その「クソコース」に1つのパーツを加えて「自分だけ真っ先にクリアできるコース」に変えてしまうゲームのような……
 まだゲームがオンラインにつながる前の時代、ファミコンの『エキサイトバイク』や『レッキングクルー』で友達と一緒にアホみたいなコースを作って「こんなんクリアできないだろうガハハハハハ」と笑いあっていたのを、オンラインで世界中の知らない人と一緒に「ちゃんと競技として成り立つ形で」遊べるようにしたみたいなゲームかなと思います。


 オンラインプレイで知らない人と一緒に遊ぶのなら、『エキサイトバイク』や『レッキングクルー』並に何でもありになりがちな「クリエイティブ」モードよりも、最初の内は制限のある「パーティ」モードの方がオススメです。「どのパーツが与えられるか」というランダム要素が強いので、毎回ちがった展開になりますし、そのパーツの中で出来ることしか出来ないので空気を読む必要もありませんし(この辺は記事の後半に書きます)。


↓2↓

◇ ルールもステージも自由にカスタマイズ可能だから、遊び方も自由!
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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

 この機能はどうやらNintendo Switch版の発売に合わせた2018年9月のアップデートで追加されたそうで、私としては「こんな根幹に関わる機能が今までなかったの!?」と驚いたのですが……このゲーム、「どういうプレイをしたらポイントが入るのか」を自分達で自由にカスタマイズできるのです。しかも、「ON/OFF」だけじゃなくて、「ポイントの量」まで細かく調整できます。


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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

 ゲームで一番重要なのは、実は「ルール」です。
 例えば「サッカー」という競技は「相手のゴールにボールを入れたら1点が入る」というルールだから、みんなゴールに向かってボールを蹴るし、守備側はそれを防ぐために相手を密着マークしたりするのです。これにもし仮に「相手選手のパンツを脱がせても1点」というルールが追加されたら、守備側も密着マークなんか出来なくなりますよね。パンツを脱がされちゃうから。

 『スーパーマリオ』だって「横から敵に当たったらダメージ」というルールだから、プレイヤーは敵を避けて進むのであって。もし「敵に当たると敵が吹っ飛んでマリオのレベルが上がる」というルールだったら、逆に敵に向かってぶつかりに行くゲームになりますよね。『イース』みたいなカンジに。



 つまり、「ルールのカスタマイズが可能」というのは「遊び方を自由に変えられる」ということなんです。
 例えば、「自分の仕掛けたトラップで相手を倒した時のポイント」を高く設定したら、みんなこぞってトラップを仕掛けて、殺意に満ちたコースが出来上がっていくでしょうし。
 「コインを取ってゴールした時のポイント」を高く設定したら、一か八かでコインで大逆転できるギャンブル性の高いゲームになっていくでしょうし。
 このゲームのデフォルトルールだと「簡単すぎるコースはゴールしてもポイントにならない」のですが、私はそれだと序盤のラウンドが盛り上がらないと思って「どんなコースでもゴールすればポイントになる」ようにしています。


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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

 何点獲ったら優勝になるのか、の「獲得ポイント」。
 誰も優勝にならなかったらいつまで続けるのか、の「長さの制限」。
 パーツを置く制限時間、の「配置タイマー」。
 競争の制限時間、の「ランタイムリミット」。

 これらも自由に変更可能です。
 「ランタイムリミット」を短くするとレースゲーム的になりますね。

 「ダブルパーティボックス」はパーティモード時に、プレイヤーが少ない時に「1ラウンド2個ずつ」パーツが置けるようになるという機能です。これはオンの方がオススメ。

 クリエイティブモードは各ラウンドに1つずつ「好きなパーツ」を選んで置けるモードなのですが、1ラウンドごとに置ける個数を増やすと「パーツとパーツを組み合わせた大掛かりな仕掛け」を作る人も出てきて、よりガチ度の高い対戦型『マリオメーカー』っぽくなっていきます。


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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

 パーティモード時に出現するパーツの確率も1個ずつ細かく調整できます。
 例えば、「コインを取ってゴールした時のポイント」を高く設定したからコインの出現確率を低くしようみたいな遊び方が出来ますね。
 「出てくるパーツが全部ノコギリ」みたいなことも出来ますし、逆に人が死ぬトラップは1コも出ないようにしてゴールまでの競争を純粋に楽しむレースゲーム的な遊び方も出来ますね。


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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

 また、『マリオメーカー』のようにステージを自作してそれをインターネット上にアップロードしたり、誰かが作ったステージをダウンロードして遊んだりも出来ます。
 「敵キャラクター」や「パワーアップアイテム」などが存在しないゲームなので、『マリオメーカー』のような多彩なステージを作れると期待すると物足りないというか、「じゃあ『マリオメーカー』やればイイんじゃない?」となってしまうと思いますが……『マリオメーカー』とはちがって、このゲームでは4人まで同時プレイが可能なんですね。自分の作ったステージや、誰かが作ったステージを、オンライン・オフラインともに一緒に遊ぶことが出来るのです。


 先ほどまでに説明していた「パーティ」と「クリエイティブ」モードだけでなく、このゲームにはパーツを増やすことなく純粋にスタートからゴールまでのタイムを計る「チャレンジ」というモードもあります。これは1人から4人まで同時プレイが可能。
 つまり、誰かが作った凶悪なステージを、誰が一番早くゴールできるか―――みたいな遊び方も出来るんですね。

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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

 遊び方は無限大!

 開発者の一人Kyler Kellyは、ブログにてこう書いています。「 I expect the community to find other interesting rulesets that we would have never imagined.」
 つまり、「開発者である私達が想像もしていないような面白いルールセットを、遊び手のみんなが思いついてくれることを期待しています」と。「こうやって遊んでね」と開発者の思った通りのレールに沿うのではなく、プレイヤー自身が楽しい遊び方を考えていくゲームなんですね。


 修正パッチが来てエラー落ちしにくくなったら、このゲームを特殊なルールで遊ぶ配信もいつかやってみたいですね。特殊ルールなので流石に野良の人は入れられないし、4人揃うかどうかが不安ですけど!

↓3↓

◇ 見知らぬ人とのオンラインプレイだからこそ、「楽しく遊ぼうぜ!」と読む空気
 このゲームはオフラインでのローカルプレイでも4人まで一緒に遊ぶことが出来ますが、ここから先はオンラインプレイについての説明を書こうと思います。


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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

 自分で部屋を作る場合は「ゲームをホストする」。
 野良で、誰かの部屋に入って遊びたい場合は「公開ゲームを探す」。
 友達の部屋に入りたい場合は「招待コードを入力」です。

 ルールのカスタマイズは(多分)部屋を作った人にしか出来ないと思います。
 招待コードはプレイするごとに変わるみたいなので、リアルタイムに「部屋開くから来てね~、招待コードは○×△◇」と教えなきゃいけないのがちと面倒。


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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

 「公開ゲームを探す」を選ぶとこんなカンジ。
 ホストの人の地域(アジア、ヨーロッパ、アメリカ)や、どのくらい人が入っているのか、遊んでいるモードなんかが表示されますね。


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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

 (Nintendo Switch版の場合)ZLボタンと右スティックの組み合わせで「定型文チャット」を送ることが出来ます。「定型文チャット」なので恐らく海外の人にも翻訳されて伝わっているので、言語を越えて「(こんなコース)無理!」と叫んだり、穴に落ちて「ハハハ!」と笑ったりするのが楽しいです。



 さて、ここからが重要な話。
 置けるパーツが決まっている「パーティ」モードだとあまり気にしなくてイイと思うんですが、好きなパーツが置けてしまう「クリエイティブ」モードの場合、「1位を目指す」だけでなく「みんなで楽しむために空気を読む」ことがある程度は必要になるかなぁと思うんですね。

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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

 例えば、これは1ラウンドごとに5つ好きなパーツが置ける「クリエイティブ」モードの部屋だったのですが……
 一度に5つも好きなパーツが置けるので「大掛かりな仕掛け」を作る人がいました。右上の傘を指している犬(?)の人が、何ラウンドもかけて木材をつなげているなぁ……とは思ったのですが。

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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

 なんと!このつながった木材、ベルトコンベアに溶接されていて、ゲーム開始から一定時間が経過するとステージを全部なぎ倒すように動いてくるという!(笑)


 「こんなんやったら誰もクリア出来なくなっちゃうじゃん」という仕掛け。
 でも、好きなパーツを置ける「クリエイティブ」モードだからって、例えば「爆弾」でその仕掛けをぶち壊したり、「ワープドア」でゴールまでショートカットしたりしちゃったら……勝ち負けにこだわってそんなことをしても面白くないよね!と、全員この仕掛けを残して活かした上でゴールを目指す方法を生み出すプレイを最後までしていました。みんな「空気を読んだ」のです。


 このゲーム……特に「クリエイティブ」モードの場合は、勝ち負けだけに執着したらきっと「凶悪なトラップは無効化する」方向に進んじゃって面白くなくなっちゃうんです。
 「勝ち負け」よりも「みんなが面白くなるためには」を考えて空気を読んでプレイする、良い意味での“緩さ”を楽しめる人に向いたゲームかなぁと思います。そういう意味では「対戦型『マリオメーカー』」というだけでなく、「みんなで一緒になって遊ぶ協力型『マリオメーカー』」でもあると思うんですね。



 なので、どのゲームもエンジョイ勢寄りの自分としては大好きなゲームなのですが……
 大きな難点が一つあります。Nintendo Switch版は「頻繁にエラー落ちする」のです。オンラインプレイをしようとすると3回に1回はエラー落ちするし、自分はエラー落ちしていなくても誰かはエラー落ちするので「4人全員がそろう」ことが本当に稀。

 公式もそのことを把握しているので、修正パッチを作っていることを公式発表しているのですが……「言語を日本語に変更するとクラッシュしにくくなるよ」と言っていて、こちとら最初から日本語でやっとんじゃーーい!とずっこけたので、修正パッチの完成を待つのにも若干の不安が(笑)。

 すっごい面白いゲームだと思うので、ここは残念ですね。
 修正パッチの完成、首を長くして待っています。



◇ 結局、どういう人にオススメ?
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<画像はNintendo Switch版『Ultimate Chicken Horse』より引用>

 記事内にも書きましたが……ファミコンの『エキサイトバイク』とか『レッキングクルー』みたいにステージエディットのあるゲームで、無茶苦茶なステージを作ってゲラゲラ笑っていたような人は絶対に遊ぶべきゲームです。それをちゃんと「対戦用ゲーム」として成立させているのが凄いです。

 また、「厳密な勝負にこだわる人」や「ストイックに上達を目指す人」よりも、「楽しいことを優先できる人」や「自分なりの遊びを考えたくなる」人にオススメで――――「本当の意味でのエンジョイ勢」向けのゲームですね。


 私はまだステージやキャラを全解放させていないんですけど、一旦プレイを中断して修正パッチが出るのを待とうかなと思います。エラー落ちが減ったら再開して、オリジナルルールでの対戦を生配信しながら遊びたいですね。修正パッチの完成が待たれる!


Ultimate Chicken Horse (Original Soundtrack)
Posted with Amakuri
¥1,600
売上げランキング: 21595
これはゲームじゃなくてサウンドトラックね

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『UNDERTALE』紹介/コマンドバトルRPGに飽きちゃった人達に向けた「ポストJRPG」

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<画像はNintendo Switch版『Undertale』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
「日本のゲームが大好きなアメリカ人」による「ポストJRPG」
コマンドバトルだけどテキストアドベンチャー?弾幕シューティング?『パンチアウト』?
「お約束を覆す」ことを斬新と思えるか、既に通った道と思ってしまうか


『UNDERTALE』
・開発者:Toby Fox
 Steam版:2015年9月15日発売、2017年8月22日に日本語化対応、980円
・日本版パブリッシャー:ハチノヨン
 プレイステーション4版:2017年8月16日発売、1620円
 プレイステーションVita版:2017年8月16日発売、1620円
 Nintendo Switch版:2018年9月15日発売、1620円
  ※ スクリーンショット撮影可能、動画撮影可能
 ※PS4版、Vita版、Switch版にはパッケージソフト版もあります
・コマンドバトルRPGにいろんなジャンルの要素を加えたゲーム
・セーブスロット数:1


<PVはNintendo Switch版のものです>
 私の1周クリア時間は約06時間でした
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください

【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:◎(ポップな絵ですが話はむっちゃ重いです)
・恥をかく&嘲笑シーン:△(嘲笑はないけど空回りするキャラがつらい人はいるかも)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:○(死ぬかどうかはあなた次第ではあるけど)
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:△(性別不明の主人公を女として見るなら若干…)
・BL要素:△(性別不明の主人公を男として見るなら若干…)
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×

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『オクトパストラベラー』紹介/スクウェア時代のDNAを受け継いだ、でも2018年にふさわしい新しい冒険のRPG!

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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
主人公も、仲間も、どの道を進むのかも……選ぶのは君だ!
「ここは○○の村です」と言うだけだった村人Aを、仲間にしたり倒したり盗んだり――
シールドを削って大技を叩きこむ!シンプルなコマンドバトルなのに爽快感がバツグン!


『オクトパストラベラー』
・発売:スクウェア・エニックス、開発:アクワイア
 Nintendo Switch用ソフト:2018年7月13日発売
  ※ Nintendo Switch本体機能でのスクリーンショット撮影○、動画撮影×
・コマンドバトル式RPG
・セーブスロット数:9+オートセーブ用が1つ


 8人のメインストーリークリアに私がかかった時間は86時間でした
 追記:その後のサブクエストなどもすべてクリアで計108時間かかりました
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください

↓1↓

◇ 主人公も、仲間も、どの道を進むのかも……選ぶのは君だ!
 全世界で大ヒット中の『オクトパストラベラー』、むちゃくちゃ面白かったんで紹介記事を書きます!大作・傑作の多いNintendo Switchのゲームの中でも、今のところ私は一番好きだというくらいに楽しみました。


 このゲーム―――「進化したドット絵のグラフィック」だったり、「ターン制のコマンドバトル」だったり、スーファミ世代を直撃する要素が満載で。そのせいで発売当初から「『ロマサガ』っぽい」とか「いや、『FF6』っぽい」といったように、往年の名作のどれに似ているかみたいなことが話題になっていました。

 確かに『ロマサガ』っぽいところも、『FF6』っぽいところもあるのですが……私としてはこのゲームは、一つの作品を挙げて「○○に似ている」とは言いたくありません。


 どちらかと言うと、スクウェア時代のいろんなゲームのいろんな要素が混ざって復活した“スクウェアの集大成のようなゲーム”だと私は思うのです。
 「『ロマサガ』っぽい」とか「いや、『FF6』っぽい」と言っている人達に対して、「いやいや!このゲームはスクウェアっぽいんだ!」と言うのは反則な気もしますけど……(笑)。

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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 ひょっとしたら若い人達の中には「スクウェアって何……?」という人もいらっしゃるかも知れないので解説しますと、現在のスクウェア・エニックスという会社は、かつては『ドラゴンクエスト』のエニックスと『ファイナルファンタジー』等のスクウェアという2つの会社でした。そのライバル同士が合併したのが2003年―――

 合併する前のスクウェアという会社は、ファミコン後期に『ファイナルファンタジー』1作目をヒットさせて以降、ゲームボーイ・スーパーファミコン・プレイステーションと様々なRPGを発売していきました。『ファイナルファンタジー』『SaGa』『聖剣伝説』『フロントミッション』『クロノトリガー』『ライブ・ア・ライブ』『ゼノギアス』『キングダムハーツ』―――アクションRPGやシミュレーションRPGなんかもありますが、様々なRPGを挑戦して作っている会社だったのです(中には“ハイスピード・ドライヴィングRPG”なんてものもありました)。

 しかし、エニックスと合併した2003年以降になると、ゲーム機のスペックは高くなり、開発費も高騰の一途をたどり、挑戦的な新規ソフトというものをなかなか作りづらくなって、『ドラクエ』『FF』シリーズの派生作品やリメイク作品が多くなってしまったり。
 ゲーム機のスペックが高くなったことで、海外市場の中心がFPSやTPSといった「3Dアクションシューティング」や、「オープンワールド」のゲームになっていって……コマンドバトル式のRPGはあっという間に「古臭いジャンル」になってしまったり。(『ファイナルファンタジー』シリーズ最新作の『XV』だって、オープンワールドのアクションバトルになりましたからね)


 スクウェアという会社は合併してなくなり、開発費が高騰して挑戦的な新規ソフトは鳴りを潜め、コマンドバトル式のRPGは時代遅れになってしまった―――そんな現代に現れたコマンドバトル式のRPGである新規ソフト『オクトパストラベラー』は、「スクウェア時代のRPG」っぽいゲームになっていたのです。


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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 ゲームはまず、各地にいる8人のキャラクターの中から主人公を1人選ぶところから始まります。このシステムは1992年に発売されたフリーシナリオRPG『ロマンシング サ・ガ』に似ていますよね。誰を主人公にして、どの道に進んで、誰を仲間にして、どのイベントをこなすのかをプレイヤーが自由に決められるRPGでした。


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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 『オクトパストラベラー』の場合、主人公に選ばなかった残りの7人も彼らのいる街に行けば仲間にすることが出来ますし、彼らのストーリーも遊ぶことが出来ます。8人の主人公がいるからと言って8周ゲームを遊ばなくてはならないのではなく、1周で8人全員のストーリーを遊べるんですね。これは『ロマサガ』とはちがうところで(『ロマサガ』は主人公に選ばなかったキャラはどんな境遇なのか分かりませんでしたから)、この辺は現代に合わせたチューニングだとも言えます。



 彼らを仲間にした第2章以降は、大陸地図に記された街にそのキャラクターをパーティに入れた状態で向かうと「そのキャラクターが主人公のメインストーリー」が進む――――というのは、1994年発売の『ファイナルファンタジーVI』の後半っぽいところです。
 あのゲームも「特定の主人公」がいるワケではなく「仲間になるキャラクターは全員が主人公」という群像劇で、後半はそうしたキャラ達を仲間にしても仲間にしなくても自由だし、仲間にしてパーティに入れた状態で特定の場所に連れていくとイベントが起こるというゲームでした。

 『オクトパストラベラー』も、主人公に選んだ1人以外のキャラクターは、仲間にするのもメインストーリーを進めるのも「やってもやらなくても自由」です。その辺は『ファイナルファンタジーVI』っぽいですし、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のような現代のオープンワールドゲームっぽいところでもあります。

 私のクリア時間を見て、「面白そうだけどこんなに遊ぶ時間はないなー」と尻込みしている人は、8人全員を仲間にしてストーリーを全部クリアするのではなく、8人の中から好みのキャラ4人に絞って進めるというのでも全然かまわないと思いますよ。そうすればクリアまでの時間は半減しますし、ゲームバランス的にもそれでちょうどいいくらいじゃないかと思います。
 エンディング後のやりこみ要素には「8人全員クリアしていないと出ないサブクエスト」もありますが、少なくともエンディングまでは「主人公の一人旅でもクリアできる」ように作っているそうですし、実際に2周目はそうやって遊んでいるという人もTwitterのタイムラインで見かけました。主人公の一人旅だとフィールドコマンドが限られるからサブクエストが全然クリアできないでしょうけど(笑)。



 私はトレサを主人公に選び、通常だったらすぐ北の街にいるサイラスか、南の村にいるオルベリクを仲間にするのがセオリーだと思うのですが……私は敢えてサイラスを飛ばして、真っ先にオフィーリアのところに行って仲間にして、最後までトレサとオフィーリアをパーティから外さない遊び方をしていました。

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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』のパッケージ画像
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 何故なら、このパッケージ画像を見てください……!
 8人のキャラクターがみんなそれぞれ目を合わせずに歩いているというのに……

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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』のパッケージ画像より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 トレサとオフィーリアだけは仲良く談笑しながら歩いているのです……
 これは、圧倒的な百合―――!

 ということで、クリアまでずっとこの2人をパーティに入れていました。


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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 こういう「私だけのパーティ」という感覚を補強してくれるのが、第2章から出てくるパーティチャットというシステムです。メインストーリーを進めている時、パーティにいるメンバーに合わせて「ストーリーを進めているキャラとその仲間」の掛け合いが見られるもので……

 この発生条件にはヒントのようなものがない上に、メインストーリーを進めてしまうともう見られないため、「全員分のパーティチャットを見るには攻略サイトをいちいちチェックしてパーティを入れ替えないとならない!」という批判もあるみたいなんですが―――私はこれは「全員分の会話を見て欲しい」のではなく、どのキャラクターをパーティに入れているかで「プレイヤーごとに見られる会話が変わる」システムだと思うので。私はこの仕様で全然かまわないと思っています。

 一度見たパーティチャットは、後で見返せるようにはしてほしかったですけど。





 ――――と、こんな風に「誰を主人公にするのか」も「誰を仲間にするのか」もプレイヤーが自由に選べるこのゲーム。更に「どの道を進むのか」もプレイヤーの自由です。

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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 街から街へは「道」でつながっています。
 昔のRPGでは当たり前のように採用されていた「縮尺を変えたワールドマップ(フィールドマップ)」とか、『ロマサガ』のように「地図で行先を指定して移動」とかではなく、街と同じ縮尺の道を歩いていきます。スクウェア時代のRPGでムリヤリ喩えるなら『ファイナルファンタジーX』(2001年発売)が近いですかね。スクウェア以外なら『MOTHER』が一番有名だと思うんですけど。

 ただ、一本道をひたすら進む『ファイナルファンタジーX』とはちがって、「左に行けば○○の街、右に行けば××の村」といったように道が分かれていて……大陸地図を見ながら「○○の街に行けばオフィーリアのストーリーが進むみたいだな」と次に行く道を決めるのが通常の遊び方なのですが、敢えてストーリーに関係のない洞窟に入って宝箱を漁ったり、本来なら後半に行くはずの街に序盤から「逃げる」を駆使して進み高い武器を先に買ったりみたいな遊び方も出来ます。

 「そういう遊び方をするとゲームバランスが崩れちゃうのでは?」と、昔のゲームだったら道を閉鎖して「3章をクリアするまで4章の街には入れません」みたいにしたと思うんですが……このゲームは、ゲームバランスよりも「プレイヤーのやりたいことが出来る」方が優先されて頑張れば行けるようにしてあるんですね。その制限のなさが「自由度」を感じる要因なのかなぁと思います。



 ただ、これは「不満点」というより、自由度を優先したゲームの「代償」とも言えることなんですけど……
 プレイヤーが好きなタイミングで好きな街に行って、やりたいイベントだけ進めるようにした結果、例えば『ファイナルファンタジーV』とか『ファイナルファンタジーVI』みたいに「世界地図が激変してしまうようなダイナミックなストーリー展開」には出来ないんですね。これは『ブレス オブ ザ ワイルド』でも思いましたが。

 ストーリーはそれぞれの街とそれぞれのキャラクターで完結していて、描かれるのはあくまで「個人の話」です。世界を救うために戦う勇者みたいな大きな展開にはならず、このキャラクターの第2章とこのキャラクターの第3章は同じ町で展開するみたいな時でもそれぞれのストーリーに出てくるサブキャラクターは別で、それぞれの話がつながらないようになっています(メインストーリーをクリアした後にはこういう要素も実はあるので、「8人分のメインストーリーをクリアしてからが本番」とも言えるのですが……クリア時間を考えるとそこまで遊べる人は多くないでしょうし)


 また、“ゲームバランスよりも「プレイヤーのやりたいことが出来る」方が優先されている”ため……8人全員のメインストーリーを律儀にクリアしていると、こちらのレベルが上がりすぎてしまって終盤になればなるほど楽勝の展開になってしまったところがあります。裏ボスを除けば、一番苦戦したのは主人公1人でクリアしなくちゃならない最初のダンジョンのボス戦だったわ……

 まぁ、それこそ『ロマサガ』だってそうだったので、「自由度」と「難易度」のバランスって難しくて、「自由度」を優先するとどうしても「難易度」はおおざっぱになってしまうのでしょうけれども。



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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 とは言え……そんなことが「不満点」にならないくらいに、楽しい旅でした。
 「HD-2D」と謳われたグラフィックは、スーファミ後期の緻密なドット絵のようでもあり、きっちりと作り上げられた3D空間の上にそれが載っていて、更に光やボカシなどの画面効果もあって……「ドット絵で出来た世界」を本当に歩き回れているような、このゲームにしかない独特な感覚がありました。砂漠、雪山、市場……新しい場所の新しい風景に出会うのがこんなに楽しいのかと、久々にゲームのグラフィックに感動しましたよ。


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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 すごいのは背景だけでなく、ドット絵で描かれたキャラクター達が動き回ってストーリーが語られるのも『ファイナルファンタジーV』(1992年発売)や『ファイナルファンタジーVI』(1994年発売)のようで見ていて楽しかったです。
 プレステ以降は3DCGが普及して「映画っぽい演出」が主流になったためこういう作品は少なくなってしまったのですが、カメラアングルが固定された状態でキャラクターが動き回る様は「舞台演劇っぽいというか人形劇っぽい演出」で、更にスーファミ時代にはなかった「キャラクターボイス」が付くことでそれが強化されたかなと思います。


 『オクトパストラベラー2』と言わずとも、「HD-2D」を使った新作RPGがまた作られることがあったなら、今度こそ「オペラ」が欲しいですねぇ!声優さんへの負担が半端なくなるだろうだけど!

↓2↓

◇ 「ここは○○の村です」と言うだけだった村人Aを、仲間にしたり倒したり盗んだり――
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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 さてさて。
 「グラフィックが良い!」とか「自由度が高い!」みたいなことを言っても、そういう宣伝をするゲームは耳にタコができるほどたくさんあるので、「わざわざこのゲームを買わなくてもなぁ」と思われてしまうかも知れません。なので、あまり他のゲームでは体験したことがない要素として、私はこのゲームの「フィールドコマンド」というシステムを推したいと思います。



 これは一言で説明すれば、村人に対して「話す」以外のことが出来るシステムです。

 「フィールドコマンド」は、8人のキャラクターそれぞれちがうものを持っていて、主人公に選んだキャラはもちろんパーティに入れているキャラのものも使えます。大きく分けて4種類――――

・商人:トレサは「買い取る」、盗賊:テリオンは「盗む」
← 村人が持っているアイテムを入手できるコマンド

・神官:オフィーリアは「導く」、踊り子:プリムロゼは「誘惑」
← 村人を一時的に仲間にして連れ歩けるコマンド

・剣士:オルベリクは「試合」、狩人:ハンイットは「けしかける」
← 村人に戦いを仕掛けるコマンド

・薬師:アーフェンは「聞き出す」、学者:サイラスは「探る」
← 村人の個人情報を知るコマンド


 それぞれ「正道/邪道」のちがいはありますが、得られる結果は一緒なので……「8人全員仲間にして育てると時間がかかるから、仲間にするのは4人に絞って遊ぼう」という人はこの4種類のフィールドコマンドが上手く分散するように選んだ方がサブクエスト攻略には良いと思います。

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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 例えば、これが普通に「話す」をした時の反応です。
 「ここは○○の村です」といったような、どこのRPGでも見かける定番のセリフですね。典型的な村人Aのキャラです。


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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 次に、アーフェンの「聞き出す」をした反応です。
 単なる「村人A」だと思っていたキャラが、実は「近隣の村々にまで伝えられるほどの腕っぷしの女性」だったことが分かります。それで求婚が絶えないというこの世界の男どもよ!強さこそが女性の魅力だ!


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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 更に、トレサの「買い取る」をしてみると……所有物は「鉄の斧」1本!
 しかも、売ってくれないという!(笑)


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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 そして、オフィーリアの「導く」をすると、連れ歩けるばかりか、戦闘中に呼び出して戦ってもくれます!村一番の腕っぷしを見せてもらおう!(呼び出せる回数には限りがあって、その回数を使い切ると帰ってしまいます。また街に戻って「導く」をすれば連れていけますが)

 必要がないのでやりませんでしたが、オルベリクの「試合」やハンイットの「けしかける」を使えば敵として戦うことも出来ます。村一番の腕っぷしを見せてもらおう!(二度目)


 この「フィールドコマンド」というのは、メインストーリーを進めるためにも使いますが……主な用途としては、大陸中にいる「困っている人」を助けるサブクエストに使います。
 この「フィールドコマンド」と「サブクエスト」と、先の項で述べた「自由度」はガッツリ噛み合っていて―――例えば、こっちの村で困っている人を助けるためには、あっちの街であの人からアイテムを「買い取る」か「盗む」かしなければならないのだけど、実はそっちの村にいるその人から「聞き出す」情報でもクリアできるといったカンジに。人それぞれ「自分の選んだ道」「自分の選んだ仲間」によってちがう解決方法をして、その後の彼らの人生が変わったりするみたいなんですね。

 また、ストーリーやクエストの攻略とは別に、純粋にゲーム攻略のためになることも多々あって。
 その辺にいるおばあさんがすげえイイ武器を持っているので、それをトレサで「買い取る」と、その辺の店で売っている武器よりも数段高い戦力で進めることが出来たり。次の項で説明しますが、序盤は特にオフィーリアの「導く」やプリムロゼの「誘惑」で連れ歩いた人にも戦ってもらうことで助かることが多いシステムだったりします。



 ただ……そういう「ゲームの攻略がうんぬんかんぬん」みたいなだけの話じゃなくて、私としては「ここは○○の村です」と言うだけだった村人Aにも人生があって個性があることが分かるのがすげえ面白いと思うんですよ。
 例えば、子供のキャラに「買い取る」をするとキャンディを持っているとか、ただ川を眺めているだけのおばあちゃんが実はムチャクチャ悪いことしていた元盗賊で「導く」で連れていくと超強いとか、「聞き出す」をすることでトレサのお母さんはむっちゃ美人で親子と間違えられるような夫婦だと分かるとか(というか、この一家のモデルって……)。

 倫理上、子供のキャラを連れ歩いたり戦いをしかけたりは出来ないようになっていますが……話しかけられる村人のほとんどは「仲間にした時のパラメータ」「敵にした時のパラメータ」がちゃんと用意してあるだけじゃなく、トレサで「買い取る」をした際のセリフとか、オフィーリアで「導く」をした際のセリフとか、逆に「別れる」を選んだ際のセリフとかが、一人一人の村人でちゃんと全部ちがうんですよ!


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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 こんなの汎用セリフにしてもおかしくないのに、ちゃんと一人一人ちがうセリフを書いているところに、村人一人一人の個性が見えてくるものですし、すげえ手が込んでいると思いますよ。

 ついつい小さな女の子から「ありがとう」と言ってもらえたくて、ほぼ使わないキャンディを買い取ろうとする私、そしてそういう時に限って値切るトレサ!「良い買い物ができました」じゃなーい!



 こんな風に村人に「話す」以外のことが出来るRPGは珍しいと思うのですが……例えば1988年発売の『ファイナルファンタジーII』には「ワードメモリーシステム」というものがあって村人との会話を「覚える」「尋ねる」といったことができましたし、「話すだけでは見えてこない村人の個性が垣間見える」システムと捉えるなら1999年発売の『ファイナルファンタジーVIII』でカードバトルを仕掛けられたり2001年発売の『ファイナルファンタジーX』でブリッツボールに勧誘できたりするシステムに通じるのかなと思います。

 こういうところにもスクウェア時代のDNAが受け継がれているです!(ちょっと強引)


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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 先ほどはサラっと流してしまいましたが、サブクエストも「村人にも個性があり人生がある」を感じられる大好きな要素です。
 『オクトパストラベラー』というタイトルは「8人の旅人」という意味だと思うんですが、旅をしているのは8人の主人公達だけじゃなくて、村人達の中にもサブクエストを進行していくことで旅をする者達がいます。彼らにもいろんな「旅をする理由」があって、旅の中でそういう人に出会い、また別の場所でその人と再会して……というのがすごく良かったです。

 私は、「実の母親からの手紙」を拾ってしまった女性の話がすげえ好きだったなぁ……


↓3↓

◇ シールドを削って大技を叩きこむ!シンプルなコマンドバトルなのに爽快感がバツグン!
 RPGの華と言えば「戦闘」!

 RPGのプレイ時間の大半は「戦闘」をしなくちゃならないので、どのゲームも『ドラゴンクエスト』と同じ「戦闘システム」だったら飽きられてしまうし、「同じシステムだったらドラクエやるよ」となってしまうため、ゲームごとに独自の「戦闘システム」を組み込んできたのがRPGの歴史だと言えます。

 差別化を図るために、「戦闘」にアクションを加えてみたり、シミュレーション要素を加えてみたり、様々なソフトが様々な挑戦をしてきたのですが……例えばアクション要素が入ると「アクションゲームが苦手な人が遊べなくなってしまう」とか、シミュレーション要素が入ると「1回の戦闘に時間がかかってしまう」とかの問題も生まれてきました。


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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 そんな中、『オクトパストラベラー』は「ランダムエンカウント」の「ターン制」「コマンドバトル」というクラシックなRPGのシステムを踏襲していて、アクション要素もシミュレーション要素もありません。「俺、スーファミ以降はRPGを1本も遊んだことがないけど、最近のRPGについていけるかなぁ……」という人でも全然大丈夫だと思います。


 しかし、「クラシックなRPGのシステム」なのに、戦略的で、爽快感がバツグンで、他のRPGでは味わえないような「戦闘」が楽しめるのは―――「味方側のブースト」「敵側のブレイク」というこのゲーム独自のシステムが組み込まれているからなのです。


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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 まずは「味方側のブースト」から説明します。
 「トレサ」や「オフィーリア」といった名前の下に、ランプのようなものが1つ灯っているのが見えることでしょう。これは「ブーストポイント(BP)」と呼ばれるもので、味方側は各ターンが始まるたびに1つもらうことが出来ます。

 通常の攻撃や魔法はこのBPを使わなくても出来るのですが、LRボタンを押すことでBPを消費して「攻撃」や「魔法」の効果を上げることができるのです。
 例えば、BPを1つ使って武器攻撃をすると「2回」斬りつけるとか、攻撃魔法や回復魔法はBPを使った分だけ威力が倍化するとか、味方の攻撃力アップ/敵の防御力ダウンといった補助魔法はBPを使った分だけ効果が長くなるとか、「盗む」の成功確率が上がるとか―――BPを使った分だけ、あらゆる行動の効果がアップするんですね(ただし、「アイテム」などブーストできないコマンドもある)

 BPは1度に3つまで使うことができて、すなわち「4倍」がMAXで―――
 BPを3つ使ったMAXでないと出せない技もあったりするんですが……

 ブーストにはリスクもあって、「ブーストをした次のターンはBPをもらえない」んですね。だから、毎ターンブーストをすればイイということでもなく、「勝負どころ」を見極めてブーストする必要があるのですが。


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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 その1つの目安になるのが、「敵側のブレイク」というシステムです。
 このゲームに出てくる敵には、必ず「弱点」「シールドポイント」が設定されています。村人に「試合」をふっかけた時でもです。

 「?」の部分が「弱点」です。
 このゲームの物理攻撃は「剣」「短剣」「槍」「斧」「弓」「杖」の6種類、魔法攻撃は「炎」「氷」「雷」「風」「光」「闇」の6種類で、「?」にはこの12種類のどれかが当てはまるんですね。


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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 オフィーリアが杖で攻撃したら、それが相手の「弱点」だったそうで、一つ「?」が判明しました。一度判明した「弱点」は以後ずっと記憶してくれるので、過去に戦った相手は既に「弱点」が分かっていて楽に倒せるようになっています。主人公達の記憶力はすごいな!

 「弱点」を攻撃したことで敵の「シールドポイント」が1つ減って、0=「ブレイク」状態となりました。
 「ブレイク」状態になった敵は、そのターンと次のターンが行動不能になるだけでなく、「弱点」かどうかに関係なくこちらの攻撃が大ダメージになるため、先ほど説明した「ブースト」をフルに使って大技を叩きこむチャンスです!


 同じプロデューサーの3DSソフト『ブレイブリーデフォルト』(2012年発売)を、より進化させたようなシステムだと思いますが、『ブレイブリーデフォルト』はスクウェア・エニックスに合併した以降のゲームで、「スクウェア時代の集大成」という今日の記事からは外れてしまうので気づかなかったことにします!(笑)


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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 先ほどの敵は最序盤の敵だったので、「弱点」も多くて、「シールドポイント」が1と、「ブレイク」しやすい相手だったのですが……ゲームも進むと「弱点」が少ない敵や、「シールドポイント」が多い敵もたくさん出てきます。

 そうすると「ブレイク」できるタイミングが限られてくるため、「味方がブーストできるターン」に合わせて「敵をブレイクしよう」といったように、次のターンや次の次のターンの展開を予測して戦う必要が出てくるんですね。そのために敢えてシールドを減らす通常攻撃にブーストを使ったり、補助魔法にブーストを使って長い時間効果を持続させたりなんて戦法を取ることもあるでしょう。
 「シミュレーション要素はない」とは書きましたが、先の先の展開を予測して、パズルのように味方の攻撃を組み合わせて、最後に大技を叩きこむのは『スーパーロボット大戦』のようなシミュレーションRPGに近い感覚かも知れません。もはやスクウェアでもスクウェア・エニックスでもない!(笑)

 ということで、ザコ戦であっても戦闘にはちょっと時間がかかるため、一つ一つのダンジョンは短めになっていますね。



 敵の「弱点」を突いて攻撃するゲームと言えば、RPGでは『ファイナルファンタジー』シリーズに代表されるように超定番だと思うのですが……ボス戦で「弱点」が分かったら、その攻撃をひたすら連発するだけと単調になりがちでした。
 また、味方の編成も、どうしても攻撃力の高いキャラが「攻撃」、それ以外は攻撃しても大してダメージにならないから「回復」……みたいに役立つキャラとそうでないキャラに分かれがちでした。

 『オクトパストラベラー』の「戦闘」のどこが好きかというと、攻撃力の低い仲間であっても敵の「弱点」を突いて「ブレイク」するのに必要なところだったり、「弱点」はあくまで「ブレイク」するために突くものであってブーストして叩きこむ大技はそのキャラの一番強い攻撃で良いところだったり。
 昔ながらのRPGと同じ文法のゲームでありながら、昔のRPGとはちがう価値観のゲームなところが私は大好きなのです。「クラシックなシステムのRPG」なのに、「今までに遊んだことのない感覚」が味わえたというか。


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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 敵の「弱点」を突くことが重要なゲームなので、RPGとしては珍しいと思うんですが1つのキャラクターが複数の武器を装備できるのも特徴ですね。商人:トレサは「槍」と「弓」、盗賊:テリオンは「剣」と「短剣」みたいなカンジに職業ごとに装備できる武器の種類がちがうので、幅広い「弱点」の敵をカバーできるようにパーティ4人を考えて編成するのが良いのですが……

 どうしてもこの編成だと「斧」を持っているキャラクターを入れられない、Oh No...という時には、オフィーリアの「導く」やプリムロゼの「誘惑」といったフィールドコマンドを使って、「斧」が使える村人を連れていくということも出来るのです。


 このゲームの「戦闘システム」はとても面白いんですけど、それが何故面白いのかというと……「主人公を自分で選べる」「仲間も自分で選べる」「どの道を進むのかも自分で選べる」という自由度と、村人に「話す」以外のことができるフィールドコマンドというシステムが、このブーストやブレイクといった「戦闘システム」にマッチしたからこそ面白いのだと思うのです。

 ゲームの各要素がガッツリと噛み合わさったからこその面白さで、もしこのゲームが「主人公固定」「仲間も固定」「ストーリーも一本道」だったらこんなに面白くなかったと思うんですね。
 そういう意味では「自由度の高いRPG」を極めた、2018年にふさわしい到達点のような1本だったと言えます!よくぞこんなゲームを作ってくれました!



◇ 結局、どういう人にオススメ?
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<画像はNintendo Switch用ソフト『オクトパストラベラー』より引用
 ©2018 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.>


 本当はこの紹介記事をアップするまでに、エンディング後に出てくるサブクエストも全部クリアしたかったのですが……1時間40分に渡る激闘の末にさっき裏ボスに負けてしまったので、まだ裏ボスだけ倒せていません。
 そういう状態での評価ですが、私はこれまでに遊んだコマンドバトル式のRPGの中で一番好きというくらいにこのゲームが大好きです。自由度を優先した「代償」のあるゲームなので万人がベストワンに挙げる作品だとは思いませんけど、私にとってはこのゲームが歴代ベストワンのコマンドバトル式のRPGです。それくらいムチャクチャ楽しかったです。

 単なる「スーファミ時代を懐古してスーファミ時代にしかない表現にとどめた作品」ではなくて、スーファミ時代に全盛を迎えた「ドット絵」や「コマンドバトル」がその後も進化し続けて現代まで生き続けたらこうなっているという独自進化を遂げた1作でした。


 なので、「スーファミ世代」や「コマンドバトル式のRPGが好きな人」にはもちろんオススメなんですけど、もっと若い世代で「コマンドバトルのゲームなんかやったことがない…」という人にも手に取って欲しい作品でした。
 行ったことのない場所に向かって、いろんな人に出会う―――そういう冒険に胸が躍る人には、きっと楽しいゲームだと思いますよ。


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