FC2ブログ

やまなしなひび-Diary SIDE-

変わらない価値のあるもの

| PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

『Her Story』紹介/このゲームに名探偵はいない。調べるのも考えるのもアナタ自身な、究極の一人称推理ゲーム

herstory-1.jpg
<画像はSteam版『Her Story』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
自分の頭で考えて「検索」する、ゲームでしか味わえない調べものアドベンチャー
細切れになったインタビュー動画を、一つ一つメモして整理して真実を導き出せ!
「答え合わせ」などない、だからこそ「人と話したくなる」ストーリー


『Her Story』
・開発者:Sam Barlow氏、公式日本語化:PLAYISM
 Steam版:2015年6月24日発売(※公式日本語版は2016年11月24日より)
 PLAYISM版:2016年11月18日発売
・インタラクティブムービー+推理アドベンチャー
・セーブスロット数:1


 私がエンディングまでかかった時間は約6.5時間でした
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:○(人が死ぬのも重いけど、彼女の人生が壮絶すぎて……)
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:△(女性目線で「好きな男が別の女とヤった」のって寝取られに入ります?)
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:△(これが果たして百合なのかどうかで一晩は議論できる)
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:△(セックスについて語るシーンが度々出てくる)

↓1↓

◆ 自分の頭で考えて「検索」する、ゲームでしか味わえない調べものアドベンチャー
 このゲームを日本語で遊ぶには、2019年6月現在はパソコンで遊ぶしか選択肢がありません。iOS版Android版は出ているのだけど日本語訳がなく、ゲーム機用には海外含めても移植されていないみたいです。

 それでもこのゲーム、海外では様々な賞にノミネートされ、高い評価も受けた話題作なため―――私はずっと「パソコンを新しく買い換えたら遊ぼう」と楽しみにしていました。遊んでみた結果、万人にオススメできるものではないけれど、「ゲームとは何か」「アドベンチャーゲームとは何か」を議論するのに欠かせない“ターニングポイントになる作品”だと思ったので紹介記事を残しておきます。


herstory-2.jpg
<画像はSteam版『Her Story』より引用>

 これが、このゲームのメイン画面です。ウィンドウ部分だけじゃなくて、スクショ全部がゲームの画面ね。
 Windows95あたりを彷彿させる昔のパソコンのデスクトップ画面そのもので、操作も「マウスでカーソルを合わせて」「ダブルクリックでソフトを開く」とか「キーボードで文字を打ち込む」とか、パソコン操作そのものです。ゲーム機用に発売されないのは、ゲームコントローラで遊んでも没入感が味わえないからかなと思います。


 デスクトップにある「Readme.txt」にも書かれていますが、このゲームは警察のデータベースに残された「1994年に起こったとある事件についてのアーカイブ映像を調べる」ゲームです。
 古いデスクトップな理由はよく分からないんですが、「主人公がこのパソコンで調べている年」=「私がこのゲームを遊んでいる今の年」みたいなので、時代の変化に左右されないように敢えて逆に90年代相当のパソコンを再現しているのかなと思います。


herstory-3.jpg
<画像はSteam版『Her Story』より引用>

 初期設定では「ブラウン管のような表示」になっているのも芸が細かい(笑)。
 私は「スクショを撮るのに向いていないな」とアンチグレアにチェックを入れて普通の画面にしちゃいましたが、各所のレビューを読むと「ブラウン管のような表示」のままにした方が活きる演出があったとか。まぁ、お好きな方で。


herstory-4.jpg
<画像はSteam版『Her Story』より引用>

 ごみ箱の中には「オセロ」的なゲームまで入っています。
 P1もP2も自分でやらなきゃいけないのでこれで遊べるワケではありませんが、昔のデスクトップ画面をイジっているような雰囲気は抜群ですよね(笑)。「これがクリア条件だったりするのだろうか?」と一応最後まで自分vs.自分で遊んでみたのは私だけで良いです。


herstory-5.jpg
<画像はSteam版『Her Story』より引用>

 このゲームでプレイヤーがやることは、「検索窓」に語句を入力して、出てきた「動画」を観る―――これだけです。観ているのはあくまで「過去の動画」なため、プレイヤーが質問をしたり、行動を起こしたりすることは出来ないんですね。
 「動画」は、数日に渡る同じ女性の事情聴取らしく、この警察のデータベースは彼女の一言一句が検索できるようにしてくれています。例えば、ゲームを始めた直後はプレイヤーが分かりやすいように「殺人」という言葉が予め検索窓に入っていて、そのまま検索すると「殺人」という言葉を彼女が発した動画が全て出てくるという塩梅です。イギリスの警察は有能ですね。


herstory-6.jpg
<画像はSteam版『Her Story』より引用>


 「バラバラの日」に撮影された、「同じ人物」の発言を観ていくことで、事件の真相が徐々に浮き彫りになっていくのですが……この警察のデータベースは「時系列順に動画を観る」ことは出来ず、あくまで「検索ワードで出てきた動画を観る」ことしか出来ません。「この発言の前後の動画を観たい」と思っても、前後の動画に出てきそうなワードを予想して検索するしか手段がないのです。イギリスの警察は無能か!


herstory-7.jpg
<画像はSteam版『Her Story』より引用>

 また、このゲームの「バランス」として非常に優秀なところなんですが……
 どんな検索ワードで出てきた動画も、再生できるのは「最初の5件」だけなんです。

 よく使われるワード……例えば「今」というワードで検索すると11件の動画が出てくるのですが、プレイヤーが再生できるのは時系列順で「最初の5件」だけです。当然ながら、後半の動画の方が「事件の真相」に近いため、プレイヤーは「前半には出てこない」「後半にだけ出てくる」ワードを推測して検索しなくてはならないのです。イギリスの警察はどうしてこんな仕様で構わないと考えたんだ……!(笑)


 ついこないだキンドル本で推理小説の短編集を発売したくらいなので、私は「推理もの」の小説も漫画も映画もゲームも大好きですが、この『Her Story』は「ゲームでしか味わえない」体験だったと思います。プレイヤーが自分で推理して、自分で考えて、自分で真相に近づいていく―――これは小説や漫画や映画には出来ない、ゲームならではの強みですよ。


↓2↓

◆ 細切れになったインタビュー動画を、一つ一つメモして整理して真実を導き出せ!
 このゲームを今から遊ぼうという人に一つアドバイスをしていくと、「メモを取りながらプレイしましょう」ということです。数日間に渡る事情聴取の動画を断片的に見るだけだと、ミスリードを誘う描写も多いし、この女の人が言っていることが二転三転するために混乱してしまうと思うんですね。

herstory-8.jpg
<画像はSteam版『Her Story』より引用>

 例えば、↑の動画なら「1994年6月18日」の「19時25分02秒」と書かれています。
 「6月18日の発言はどうだったのか」「前後の文脈はどうなのか」といったことを整理するためにも、一つ一つの動画の「日付」と「時間」と「簡単な内容」くらいはメモを取っておいた方がイイでしょう。私はiPadのメモ帳に記録していましたが、単語帳みたいなカードタイプのものの方が順番を後から変えられるからイイかも。

 メモをとらなくてもクリアだけなら出来ないことはないというか……次の項で述べますが、このゲームは「事件の真相」がよく分かっていなくてもエンディングは迎えられるのでメモを取らない遊び方も出来なくはないのですが、しっかりと「事件の真相」に向かうためにもメモを取りながら遊ぶことを推奨します。


 フラグ管理に縛られることなく自分で考えた検索ワードから出てきたバラバラの動画を観て、事件の全体像を想像していく様は、他の作品では味わえない感覚でした。「バラバラの物語から真実を導き出す」のなら『ひぐらしのなく頃に』なんかもそれっぽいですし、「時系列がバラバラのストーリーを集めていく」のなら(このゲームより後の発売ですが)『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』にも当てはまると思うのですが、そこに「自分で推理して検索ワードを考える」要素が入るため、プレイヤーの数だけ「真実への辿り着き方」がちがうのが面白いと思うんですね。


herstory-9.jpg
<画像はSteam版『Her Story』より引用>

 絶対に「事件に直結するワード」だろうと推理して「死体」で検索したら、何故だかギター弾いて熱唱している動画が始まって、その歌詞に出てきただけだったというのは笑いました。

 どこまで計算しているのかは分からないのですが、「一つの単語で一気に真相が分かる」みたいなのがなくて、「徐々に、徐々に真実が浮き彫りになっていく」感覚があって……台詞の一言一句まで計算しているのかなと思いましたし、ましてや元々は英語のゲームだったのを日本語に翻訳したPLAYISMの功績スゲエって思いますよ。英語の分からない私みたいな人間でも、問題なく楽しめました。


herstory-10.jpg
<画像はSteam版『Her Story』より引用>

 全部の動画の中で、どれを観て、どれを観ていないかが分かる「データベースチェッカー」というソフトもあります。とは言え、クリックしたらその位置の動画が観られるなんてことはなく、ただ単に「既に観たかどうか」しか分からないんですけどね。でも、本当に手探りで調べていくゲームなので、これがあるとないとでは大違い。

 ものすごく斬新なゲームかつ、インディー精神にあふれた作品なので、「ちょっと飯野賢治さんっぽいかな?」と思いながら遊んでいましたが、飯野さんだったらこんな「プレイヤーに対する気遣い」なんて絶対しない!綺麗な飯野さんだ!貴様、ニセモノだな!



↓3↓

◆ 「答え合わせ」などない、だからこそ「人と話したくなる」ストーリー
 ここから先は「クリア条件」についての話を書くので、ストーリーのネタバレはしませんが「クリア条件」なんて知りたくないという人は読まない方が身のためです。実際にこのゲームをプレイして、クリアしてからお読みください。


 さっきの項で「データベースチェッカー」なんて出したから、ひょっとしたら「なるほど、このゲームはこれを全部埋めていくゲームなんだな」と勘違いしちゃった人もいるかも知れません。確かにSteamの実績には「全部の動画を観る」というものもあるみたいですが、全部の動画は観なくてもクリアは出来ますし、私は観ていません。


 そもそもこのゲーム、プレイヤーが「事件の真相」が分かったかどうかすら重要視していないのです。
 普通この手のゲームだったら「証拠は集めた!あとは、この証拠で犯人を追い詰めるだけだ!」という展開になっていくと思うのですが、このゲームにはそういったものはありません。ある程度の動画を観たら「そろそろ終わりにするか?」と聞かれるので、「ハイ」と答えるとエンディングです。『逆転裁判』で言えば、「探偵パート」だけやって「裁判パート」がないみたいなことです。


 だから、メモを取らずにプレイするとエンディングを迎えてもなお「え?どういうことだったの?」と分からない人もいちゃうと思うんですね。普通の推理小説なら「探偵役」のキャラが事件の真相を明らかにしてくれますし、『逆転裁判』だったら裁判の果てに真相が見えてくるものですが……このゲームはあくまで「過去の事件を調べる」だけなので、真相はプレイヤー自身が考えなくちゃいけないし、真相にたどり着けなかったとしてもエンディングを迎えられちゃうのです。

 でも、現実の世界では「答え合わせ」なんかしてくれないし、「答え合わせ」をしてくれないからこそ「え?あれってどういう意味だったの?」と周りと話したくなると思うんです。「彼女の生い立ち」「事件に至るまでの道」、そして「彼女がその後どうなったのか」を誰かと話したくてウズウズしてくるのです。



 私はこれをものすごい英断だったと思います。
 それまでは「一本道」路線だったから一つでもクリア出来ないところがあると詰むしかなかった『ゼルダの伝説』シリーズが、『ブレス オブ ザ ワイルド』で「チュートリアルとラスボス以外は行っても行かなくても良い!」としたことでクリア出来ないところがあっても無視できるようになったように――――
 どうしたって「一本道」路線になりがちな推理アドベンチャーというジャンルに、「プレイヤー自身が好きなように調べれば良い」という圧倒的な自由度を取り入れたことで、「事件の真相」にすら気付かなくたってイイじゃないかとしたこの作品―――推理アドベンチャーというジャンルにおいて、一つの「ターニングポイント」になると思うんですね。


 実際、主人公は「過去に起きた事件を調べる」だけの人ですからね。この証言を元に誰かを逮捕する警察役でも、この証言を元に誰かを追い詰める検事役でもありません。ただ「調べる」だけの人だから、プレイヤーが「もうこの事件について調べるのはイイや」と思ったところでエンディングなのです。

 この没入感はすごいし、だから私「全部の動画を観よう」とか「Steamの実績をコンプしよう」なんて思わず、ある程度のところで「もういいや」とエンディングにしちゃったんですね。全部の動画を自力で観るのはものすごく大変なのだけど、だからといって攻略サイトを観ながら動画を埋めていく作業というのは、この作品の「プレイヤー=主人公」の没入度にふさわしくないと思いましたんで。

herstory-11.jpg
<画像はSteam版『Her Story』より引用>



◇ 結局、どういう人にオススメ?
herstory-12.jpg
<画像はSteam版『Her Story』より引用>

 「好き嫌い」の分かれるゲームだと思うんですが、このジャンルの一つのターニングポイントとして「推理アドベンチャー」が好きな人には遊んで覚えておいてもらいたいタイトルだなと思います。定価も600円弱と安いですし、クリアまでのプレイ時間もそれほどではありませんし(私はむしろものすごくかかった方で、他所のレビューを読むと私の半分くらいの時間で終わらせている人が多かったみたい)。

 あと、「ゲームとは」という表現に興味がある人にもオススメです。
 他のゲームにはない体験をさせてくれるのに、これはゲームならではの体験と断言できるもので、「ゲームとは何か」についても語りたくなる作品ですね。


 余談ですが、今作の精神的続編と言われる『Telling Lies』も今回のE3でトレーラー映像が出てきたみたいです。
 前作のヒットのおかげで、明らかに予算が上がっている……(笑)。登場人物は4人になり、持ち主不明のノートパソコンから4人の映像を再生して真実を解明していくというものみたい。Steamのページによると、最初から日本語字幕に対応しているみたいなので楽しみに待ちます!

| ゲーム紹介 | 18:00 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』紹介/没入感抜群!これぞ『ドラクエ』の主人公になれるアクションゲーム

draquesowrd1.jpg
<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
「主人公=自分」のコマンドRPG:ドラクエを、アクションゲームにするとこうなる!
ジャイロセンサーのなかったWiiリモコンで剣を振るゲームを作る四苦八苦
シリーズおなじみの敵キャラが、「アクションゲームの敵」として上手く調理されている


『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』
・発売:スクウェア・エニックス、企画:ジニアス・ソノリティ、開発:エイティング
 Wii用ソフト:2007年7月12日発売
・体感アクションRPG
・セーブスロット数:2


 私がエンディングまでかかった時間は約12時間でした
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:△(ドラクエ本編に比べれば鬱度は弱い)
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:△(敵モンスターに蜂などはいる)
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×

↓1↓

◆ 「主人公=自分」のコマンドRPG:ドラクエを、アクションゲームにするとこうなる!
 このゲームはWii初期に発売された『ドラゴンクエスト』シリーズのスピンオフ作品で、「Wiiリモコンを剣に見立てて振って攻撃」する体感アクションゲームになっています。

 元々このゲームの4年前にあたる2003年に、(ゲーム機のソフトではなく)テレビに直接つないで遊べる体感ゲームマシン『剣神ドラゴンクエスト 甦りし伝説の剣』が発売されていて、『ドラゴンクエストソード』はそのコンセプトを受け継いだ精神的続編のようなものです。
 エポック社の体感ゲーム(2000年~)、バンダイのLet's! TV プレイ(2004年~)、コナミのPLAY-POEMS(2004年~)など、Wiiが発売される前の2000年代前半ってちょっとした「テレビに直接つないで体を動かして遊ぶゲーム」のブームめいたところがありました。

 同じ時期にプレイステーション2もEyeToy(2004年)を出していましたし、ドリームキャストは釣りコントローラやマラカスコントローラを出していましたし(2000年前後)、任天堂もゲームキューブではタルコンガを出していましたし(2003年)……「突然変異なゲーム機」のように言われるWiiですが、実は体感ゲームブームの流れを引き継いだとも言えるんですよね。


 もちろん、それまでは「専用のマシン」や「専用の周辺機器」が必要だった体感ゲームが、標準のコントローラだけで遊べるというのがWiiの“英断”で……そのため、Wiiではたくさんの体感アクションゲームが発売されたのですが。
 実はこの『剣神ドラゴンクエスト』や『ドラゴンクエストソード』って、当時たくさん発売された体感アクションゲームとはちょっとちがっていて、単に「体感アクションが流行っているからそれにドラクエを当てはめよう」ってゲームではないと思うんですね。どちらかというと、『ドラゴンクエスト』を忠実にアクションゲーム化しようとしたら体感アクションになった―――というか。


draqueheroes.jpg
<画像はNintendo Switch版『ドラゴンクエストヒーローズI・II』体験版より引用>
draquebuilders.jpg
<画像はNintendo Switch版『ドラゴンクエストビルダーズ アレフガルドを復活せよ』体験版より引用>

 近年ではアクションゲームの『ドラクエ』スピンオフ作品も珍しくなくなりました。『ドラゴンクエストヒーローズ』(2015年~)や、『ドラゴンクエストビルダーズ』(2016年~)、もっと前になるとスライムを主人公とした『スライムもりもりドラゴンクエスト』(2003年~)というゲームもありました。

 しかし、それらのゲームは“『ドラゴンクエスト』をアクションゲームにしたゲーム”とはちょっとちがうと思うんですね。
 『ドラゴンクエストヒーローズ』は「ドラクエキャラを使った無双系アクションゲーム」だし、『ドラゴンクエストビルダーズ』は「ドラクエの世界で遊ぶマイクラ風サンドボックスゲーム」だし、スライムはスライムが主人公だし。


doraque1.jpg
<画像はWii版『ドラゴンクエスト』より引用>

 『ドラクエ』の画面って、元々はこうじゃないですか。
 「プレイヤー=主人公」の目線から見た“一人称視点のゲーム”じゃないですか。

 そのため、イベントシーンも主人公は喋らないし、戦闘中も主人公以外のキャラはAIで行動するのに対して「主人公だけはオートにできない」し、主人公の名前は「プレイヤーが付ける」ため公式の名前が存在しません。戦闘の画面も主人公の目線なので、敵キャラだけがズラっと並びます(戦闘中に味方キャラが映るようになった『8』以降も、まずは敵キャラがズラっと並ぶ)。

 これを『ファイナルファンタジー(以下FF)』シリーズなんかと比べると分かりやすくて、『FF』は主人公キャラにもセリフがあるし、オート戦闘は『FF』だとあまりないけどスマホ版などでは全キャラオートに出来るみたいで、主人公の名前は変更できるけど公式のものも存在していて(『5』のバッツとか『7』のクラウドとか)、戦闘の画面も「味方キャラも敵キャラも全員映る横からの視点」でした。


 『ドラクエ』は一人称視点(主人公=プレイヤー)のRPGで、『FF』は三人称視点(主人公=キャラクター)のRPGなんですね。
 この発想で見ると、『ドラゴンクエストヒーローズ』も『ドラゴンクエストビルダーズ』も『スライムもりもりドラゴンクエスト』も三人称視点のアクションゲームになっているため、「ドラクエをアクションゲームにしたもの」ではなく「アクションゲームのキャラや世界にドラクエを当てはめたもの」だろうというのが先ほどの私の話だったのです。


doraquesowrd-2.jpg
<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

 それに比べて、このゲーム『ドラゴンクエストソード』は一人称視点のアクションゲームです!主人公の目線なので敵がズラっと並びますし、味方キャラはAIで動きますし(「めいれいさせろ」にすることも可能)、これぞ「ドラゴンクエストを忠実にアクションゲームにした形」でしょう!


doraquesowrd-3.jpg
<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

 操作は、「Wiiリモコンを振ると剣を振って攻撃」「Bボタンを押すとポインターの位置に盾を構えて防御」です。戦闘中の移動はできないので、「華麗なステップで敵の攻撃を避ける」みたいなことはできません。
 魔法は主人公は使えず、味方がAIで使ってくれる他、コマンドを開いて味方に使ってくれるよう指示を出すことも可能です。アイテムもコマンドを開いて自分で使います。コマンドを開いている間は敵の動きが止まるのがありがたい。

 闇雲にWiiリモコンを振るゲームというよりかは、「攻撃をするタイミング」と「防御するタイミング」を見極めて、敵に攻撃を出来るタイミングで的確に攻撃を加えるというのが中心のゲームで―――「ターン制のコマンドバトル」をアクションゲームにするとこうなるというカンジで、これも『ドラクエ』っぽいなぁと思いました。


 何というか、「ドラクエをなるべく忠実にアクションゲームにしてください」というお題を出されて作ったみたいなゲームで。ゲームとして面白いかどうかはさておき、ドラクエシリーズが好きな人には「こうやってアクションゲームに落とし込んだのかー」と見てもらいたい作品でした。



↓2↓

◆ ジャイロセンサーのなかったWiiリモコンで剣を振るゲームを作る四苦八苦
 しかし、この作品は発売当時あまり評判が良くなかったんですね。
 当時のWiiリモコンというのはまだジャイロセンサーが搭載されておらず、Wiiリモコンにジャイロセンサーを搭載するモーションプラスの発売はこの2年後の2009年6月、モーションプラスと一体化されたWiiリモコンプラスの発売は更に1年後の2010年11月でした。


 ジャイロセンサーのないWiiリモコンでは思ったような動きが反映されず、Wiiリモコンを縦に振っているのに横斬りと判定されるみたいなこともしょっちゅう起こります。そのため、「Wiiリモコンってイマイチじゃない?」「剣神ドラゴンクエストの方がマシだった」「期待してたのに……」と言われ、Wiiというハードの張子の虎が崩れていってしまい、その矢面に立たされたのがこの『ドラゴンクエストソード』だったのだろうと思うのです。


 その後に任天堂がモーションプラスを発売したようにジャイロセンサーのないWiiリモコンには限界があったのだから、その中でなんとかゲームとして形にしようとした『ドラゴンクエストソード』が責められるのはちょっと可哀想だと思うんですけどね。


doraquesowrd-4.jpg
<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

 ジャイロセンサーのないWiiリモコンで「ちゃんとゲームとして成立させよう」と編み出されたであろうシステムが、このポインターロックシステムです。Wiiリモコンのポインターを合わせて「あらかじめ斬りたいところをAボタンでロック」してから振ると、その地点を通る攻撃になります。
 私はクリア後に攻略サイトを見るまで分かっていなかったんですが、ポインターロックをしていないで振ると必ず画面の中心を斬ることになるんですって。マジかよ……だから、終盤敵の攻撃を弾けなかったワケだ。


 「なるほど!ポインターロックのシステムがあれば思ったところが斬れるから余裕だね!」と思いきや、ゲームが進むと「素早くポインターをロックしつつ縦斬り・横斬り・ナナメ斬りを正確に繰り出さなくてはならない」場面も多く、またポインターをロックしてからWiiリモコンを振るというのは2つの動作が必要で時間がかかるため「敢えてポインターロックを使わないで素早く斬撃を出す」場面もあったりして、全然余裕ではありません。

doraquesowrd-5.jpg
<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>


 要は、「思ったように動いてくれないWiiリモコン」を逆手にとって、それをうまく使いこなせるかどうかのゲームデザインにしているのです。
 前述したように、Wiiリモコンは後にモーションプラスを装着してジャイロセンサーが付きますし、現在のNintendo SwitchのJoy-Conにはジャイロセンサーが付いています。そのため、「Nintendo Switchで『ドラクエソード』のリメイクを出してくれないかな。そうすれば思ったような斬撃が出せて楽しいだろうに」という声もよく聞きますし、私もそう思う気持ちもなくはないのですが(その時は『剣神ドラゴンクエスト』とセットにしてくれたら嬉しい)、ジャイロセンサーで思ったような斬撃が出せるようになったらこのゲームはムチャクチャ簡単になっちゃうんですね。

 そうすると、もうゲームスピードから全部作り直さなくちゃいけなくなるから移植とかリメイクとかは難しいんじゃないかなぁと思います。
 「体感アクションゲームとしてのドラクエ」は専用アリーナで遊ぶ『ドラゴンクエストVR』が出てきているので、もし新作が出るとしたらVRっぽいヤツになりますかねぇ。VRだと私、3D酔いしちゃうので遊べないのが残念ですが……


doraquesowrd-6.jpg
<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

 その点、この『ドラゴンクエストソード』は安心です!
 一人称視点のゲームですが、基本はレールに沿って前に進むだけで、視点を動かしたりは出来ません。3D酔いが起こる場面は、ゼロとは言いませんが、一人称視点のゲームの中ではかなり少ないゲームだったと思います。


doraquesowrd-7.jpg
<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

 ただまぁ、そこがゲームとしての不満点でもあるんですよねぇ。
 「イカダに乗って川を進む」みたいな場面はあるものの、基本的にどのステージも「前に進みながら敵をやっつけていく」だけなので、もっと変化のあるステージも欲しかったところ。町がモンスターの群れに襲われているから防衛する、みたいな毛色のちがうステージがあればよかったのに……とは思うんですが。それはあまりドラクエらしくないってことなのかなぁ。


↓3↓

◆ シリーズおなじみの敵キャラが、「アクションゲームの敵」として上手く調理されている
 『剣神ドラゴンクエスト』は、『ドラゴンクエストI』のストーリーを追体験する作品で。
 『ドラゴンクエストVR』は、『ドラゴンクエストIII』の舞台をVRで再現したものなのですが。

 今作『ドラゴンクエストソード』は、まったく新しい舞台とストーリーとキャラクターの完全新作となっていました。


doraquesowrd-8.jpg
<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

 しかし、敵キャラはドラクエシリーズおなじみのモンスター達です。
 当時すでに『ドラゴンクエストVIII』で3D化されていたとは言え、リアルタイムに動くアクションゲームの敵キャラとしてドラクエのモンスター達が出てくるのはテンション上がりますね。


 原作では「レベルを上げて物理で殴れば倒せる」モンスター達ですが、今作ではアクションゲームの敵なので、各キャラごとに「攻撃の後に隙ができるのでまずは防御してからカウンター」とか「遠方から矢を放ってくるのでそれを斬撃で弾き返す」といった対処法を見つけなければなりません。
 ボス戦なんかは「このモーションの時はこの攻撃をしてくるので素早く4回防御して、直後の隙に2発叩き込む」みたいにパターンを覚えて見切っていくゲームになるので、ちょっとした『SEKIRO』ですよ。

 まぁ、『ドラクエ』というよりかは『ゼルダ』っぽいなとは思うのですが、「ドラクエでお馴染みのあのキャラ達をアクションゲームにするとこうなる」という再現が面白かったし、アクションゲームの敵としてちゃんと個性が出ていたのは良かったと思います。


doraquesowrd-9.jpg
<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

 私のお気に入りは「メタルスライム系」の扱いでした。
 他の敵と戦っている際に高速で下を駆け抜けるので、ここで咄嗟に斬りかからないとそのまま逃げられるという。もちろん倒せば経験値がドカッと入ります。

 ガンシューティングゲームにおけるレアアイテムみたいな扱いだと思うんですが、「メタルスライムが出た時の驚きと喜び」と「逃げられた時の喪失感」という原作の要素を見事に再現していると思うんですね。


doraquesowrd-11.jpg
<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

 「くさったしたい」の登場が、ホラーゲーム的というかお化け屋敷的なのも好き。
 そういやコイツ、ゾンビだったな!



doraquesowrd-10.jpg
<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

 メーカー公式のジャンルは「体感アクションRPG」とのことで、確かにレベルアップのシステムや装備の概念もあるのですが、ゲームとしての骨格は「ステージクリア型のガンシューティングゲーム」に近いと思われます。
 レールに沿って一本道を進み、ランダムエンカウントやシンボルエンカウントではなく毎回必ず同じ敵が同じ場所で登場して、ステージクリア時にはスコアが集計されてハイスコアが残り、同じステージを何度も遊んでハイスコア更新を目指す―――――

 「ボリュームが少ない」「すぐに終わってしまった」という人もいましたが、ガンシューティングゲームとして考えればステージ数はそれほど少ないとは思いません。同じ時期に出たWiiのガンシューティングゲームで比較すれば、セガの『ゴースト・スカッド』なんて全3面ですからね(笑)。
 どっちかというと、先ほど書いたように「凝られたシチュエーションでの戦闘がない」ことの方が私は不満なのですが、このゲームの場合はその分の労力を「様々な敵との戦闘」にかけたとも言えて、まぁその方がドラクエらしいと言えばドラクエらしいとは思います。


 難易度は決して低くないと思うのですが、「対処法」が分かるとダメージを一気に抑えられたり、一つ装備をグレードアップするだけでものすごく強くなれたり、ステージに持ち込める回復アイテムの数が限られているため「このまま進むか町に引き返すか」の葛藤が大きかったり、ゲームバランスはとても良かったと思います。
 「対処法」に気付くまでは「なんだよこのゲーム、クソかよ」と愚痴っていたら、「あ、こうすればイイのか」と気付いて、「やっべ、オレ天才かも」と掌返したことが何度もありましたからね。


◇ 結局、どういう人にオススメ?
doraquesowrd-12.jpg
<画像はWii用ソフト『ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔』より引用>

 ドラクエシリーズのキャラや世界が好きで、ゲームジャンルとしてはガンシューティングゲームが好きな人に是非オススメです。そんな人、あんまりいない気がするけど(笑)。

 「あのドラクエの要素をこう落とし込んだのか!」が面白いので、ドラクエに全く興味がない人にはさほど楽しめないと思いますし。アクションゲームが苦手だからドラクエ遊んでいるという人には、このゲームみたいに「何度も死んで対処法を覚える」タイプのアクションゲームはキツイように思えるし。人を選ぶゲームだとは思うんですよねぇ。

 ただ、「主人公=自分」になりきって戦えるドラクエのアクションゲームとして他にはない魅力を持っていると思いますし、個人的にはとても楽しめました。この路線もまた復活して欲しいですね。あ、福引はもうなくてイイです。


 

| ゲーム紹介 | 17:49 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

『Yoku's Island Express』紹介/移動もクエストもボス戦も、全部ピンボールで解決だ!

yoku-1.jpg
<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
「敵」にやられることのない2D探索アクションアドベンチャー
様々な場所、様々なギミック、様々なシチュエーションで楽しめるピンボールゲーム
主人公はフンコロガシ!絵も音楽も美しい童話のような世界を冒険する


『Yoku's Island Express』
・発売:Team17、開発:Villa Gorilla
 Nintendo Switchダウンロード専用ソフト:2018年5月29日発売、2150円
  ※本体機能でのスクリーンショット撮影可能、動画撮影も可能
 Steam版:2018年5月30日発売、2050円
 プレイステーション4ダウンロード専用ソフト:2018年10月11日発売、2150円
・2D探索アクションアドベンチャー+ピンボール
・セーブスロット数:3


※ 一見すると普通のPVなのに、最後まで見ると突然罵倒されるの笑う。翻訳ミスなんだろうけど。
 私の1周クリア時間は約08時間でした
 コンプ(100%達成)までは15時間くらいだったかな
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:×
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:○(主人公の虫はかわいいけど、蜘蛛やナメクジはキツイかも)
・百合要素:×(そもそもこの作品に男女の概念があるのか?)
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×

↓1↓

◆ 「敵」にやられることのない2D探索アクションアドベンチャー
 このゲームはスウェーデンの「Villa Gorilla」というインディースタジオが開発した「メトロイドヴァニア」型のピンボールゲームです。
 私はちょっと前のセールでこのゲームを買って積んでいたのですが、「よゐこのインディーでお宝探し生活2」の次回予告でこのゲームが映ったので「ネタバレされる前に遊ばなきゃ!」と急いで起動したのでした。1週間かけてクリア、久々に100%コンプリートまで遊ぶくらいに夢中になって遊んだゲームでした!





 このゲームを分かりやすく説明すると「メトロイドヴァニアの皿にピンボールを盛ったゲーム」なんですが、「メトロイドヴァニアって何?」という人もこのブログを読んでいるでしょうから、その説明から始めようと思います。

 「メトロイドヴァニア」とは、『メトロイド(1986年~)』と『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲(1997年~)』を合わせた造語です。「悪魔城ドラキュラ」が海外では『キャッスルヴァニア』というタイトルだったので、合体して「メトロイドヴァニア」と呼ばれるようになった―――この話から分かるように、日本で生まれたゲームが元になっているのに「日本よりも海外で使われている言葉」なんですね。
 ゲームとしては「2D横スクロールアクションゲーム」でありながら、『スーパーマリオ』シリーズのように「右に行けばクリア」というゲームではなく、ステージクリア型でもなく、広大なマップを上下左右に「探索」することに特徴があります。マップを埋めていく楽しさだったり、それまでは行けなかった場所にアイテムを手に入れた後は行けるようになる成長の楽しさだったりがあることが多いですね。


metoroid2018-12.jpg
<画像はファミリーコンピュータNintendo Switch Online版『メトロイド』より引用>

 しかし、この「メトロイドヴァニア」というジャンル―――「探索」に重きを置いたゲームなため、「探索」要素が大好きな私にとってさぞ好物だろうと思いきや、初代の『メトロイド』からして「敵との戦闘」がむっちゃ過酷で心をへし折られてしまうことが多かったです。
 まぁ、もし『メトロイド』に敵が出てこなかったら、あっという間にマップの端から端までを踏破されてしまうでしょうから、ゲームとして「行けそうで行けない」バランスを保つために「敵との戦闘」が必須なのは分かるのですが……「敵との戦闘」が苦手な私にとっては「新しいエリアに行けるぞー」という探索のワクワクよりも、「新しいエリアにはまた敵がいる……ライフがもうない、つらい」という戦闘の憂鬱さが上回ってしまうゲームでした。


 海外ではこの「メトロイドヴァニア」のジャンルが非常に人気で数多くのゲームが出ているため、上述した私のように「探索は好きだけど戦闘はちょっと」という人のための「メトロイドヴァニア」のゲームも出ていたりもするのです。

WiiU_screenshot_GamePad_017B7_20141026204645159.jpg
knytt4.jpg
<画像はWii U版『クニットアンダーグランド』より引用>

 例えば、Wii Uでフライハイワークスがローカライズして発売してくれた『クニットアンダーグランド』もそうです。このゲームもスウェーデン人が開発者なんですよね。スウェーデン人はよっぽど「メトロイドヴァニア」が好きなのか嫌いなのかどっちなんだ。

 『クニットアンダーグランド』は「メトロイドヴァニア」に「アクションパズル」を足したようなゲームです。本家『メトロイド』では広大なマップの移動を妨害するために「敵との戦闘」がありましたが、こちらのゲームは各エリアがアクションパズルにようになっているので、隣のエリアに移動するために「敵との戦闘」ではなく「このギミックをどう使えばあの場所まで行けるのかを閃く」ことが必要なのです。
 「敵との戦闘」が嫌いだけど「アクションパズル」が大好きな私は、だからこのゲームをむっちゃ楽しめました。Wii Uのゲームの中でも上位に入るくらいお気に入りのゲームです。

(関連記事:とうとう見えたMiiverseの真価。『クニットアンダーグラウンド 』紹介



 「メトロイドヴァニア」についての話をまとめると、広大なマップを上下左右に「探索」させるこのジャンルは、単に「探索」をさせるだけならあっという間に端から端まで踏破されてしまうため、『メトロイド』だったら「戦闘」、『クニットアンダーグランド』だったら「アクションパズル」の要素を入れて、そのゲーム部分を解かないと「行けそうで行けない」隣のエリアに進めないようにしているのです。

 つまり、「メトロイドヴァニア」というのは皿であって、そこに「戦闘」とか「アクションパズル」といった料理が盛られているんですね。
 他のジャンルで分かりやすく言うと、スマホ向けの「ガチャでキャラを集めて育成するゲーム」は皿の部分はどれも似たようなシステムですよね。ただし、それに盛られている料理部分に独自性があって、『パズドラ』だったら「パズル」だし、『消滅都市』だったら「ランアクション」だし、『デレステ』だったら「リズムゲーム」だし、なので「どれも似たようなゲーム」でありながら「全然別のゲーム」なのです。


 んで、ようやく『Yoku's Island Express』の話です。
 このゲームは皿の部分は「メトロイドヴァニア」というジャンルですが、『メトロイド』でいう「戦闘」部分、『クニットアンダーグラウンド』でいう「アクションパズル」部分―――つまり、皿に盛られた料理部分が「ピンボール」なのです。

yoku-2.jpg
<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>



 通常は↓の画面のように、2Dアクションゲームという雰囲気です。
 主人公のヨクの操作は左スティックで移動のみ。ジャンプは出来ません。フンコロガシですからね。自分より巨大なフンと一緒にジャンプすることなんて無理に決まっていますよね。

yoku-3.jpg
<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 ただし、この島には何故だか至るところに「フリッパー」が設置されています。
 青いフリッパーはZLボタン、黄色いフリッパーはZRボタン、両方の色のフリッパーはそのどちらのボタンでも押すと動きます。島中のフリッパーを一斉に動かせる私(=プレイヤー)は一体何者なんだ……

yoku-4.jpg
<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 その反動を活かして、ヨク(と巨大なフン)は跳ね上がる!
 このゲームの主人公は自分ではジャンプできないので、ピンボールのフリッパーを利用してジャンプしていくのです。


yoku-6.jpg
yoku-5.jpg
<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 マップはかなり広大。
 そのところどころにピンボールのような仕掛けがあるので、そこに主人公がたどり着くとシームレスにピンボールが始まります。この「フィールドの中にピンボールが埋め込まれているから自然とピンボールが始まる」のが良いんですわ。


yoku-7.jpg
<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>


 ということで、このゲーム―――
 「敵」が出てこないメトロイドヴァニアなのです。

 いや、正確にはボス敵はいるのですが……「敵にやられてゲームオーバー」ということがないので、敵との戦闘が苦手という私のようなヘッポコゲーマーでも安心して楽しめます。

 落下したらまた登り直しな局面はあるし、アクションゲームが苦手な人でも全く問題がないとは言いませんが(特にコンプを目指すとかなりシビアなアクションも求められますし)、トゲに落ちても集めたフルーツを少量失うだけで、大したペナルティがないのがありがたいところです。一応トゲに落ちた回数はカウントされていて、一定数を越えるとイベントが発生するみたいですが、多分「普通に遊んでいれば誰でも発生する数」なんで気にすることでもないと思います。多分……

 ということで、このゲーム……「メトロイドヴァニアってジャンルが気になるんだけど、なんだか難しそうだよなー」と思って手を出してこなかったような人に是非オススメです。


↓2↓

◆ 様々な場所、様々なギミック、様々なシチュエーションで楽しめるピンボールゲーム
 さて、ここまで書いてきてちょっと気になることがありました。
 この記事を読んでいるみなさん、そもそも「ピンボール」って分かりますかね?

 「メトロイドヴァニアにピンボールを加えたようなゲーム」を説明するために、せっせと「メトロイドヴァニア」の説明から始めていましたが、ひょっとしたら「ピンボール」の方も知られていないかもと不安になってきました。


 ピンボールとは1930年代にアメリカで生まれたアナログゲーム機で、1947年に「フリッパー」が付いて玉を撃ち返せるようになった機種が登場、現在「ピンボール」と呼ばれるものはこの「フリッパー付きピンボール」のことを指すそうですね。
 1970年代には日本でも流行、ゲームセンターやボウリング場に数多く置かれていました。日本国産初の「フリッパー付きピンボール」はセガが作ったそうです。セガはいつだって時代の最先端を進むぜ!1985年にリリースされた尾崎豊さんの名曲『卒業』にも、「仲間達と夜な夜なピンボールで遊びました」的な歌詞がありますね(JASRACに配慮して言い回しを変えました)。

 つまり、『スペースインベーダー』とか『パックマン』とかが登場してゲームセンターがビデオゲームで溢れる以前の、ゲームセンターの主役みたいな存在だったそうなんです。近年ではほとんど見かけなくなっちゃいましたけどね。


 そのため、ビデオゲーム黎明期の頃から「ピンボール」はデジタルで再現しようと試みられることが多く、例えばファミコンの『ピンボール』(1984年)なんかは後に任天堂の社長になる岩田さんがプログラムを担当していたことでも有名ですよね。

pinball2019-1-2.jpg
<画像は『どうぶつの森+』収録の『ピンボール』より引用>

 私、「ピンボール」というゲームはずっと「真ん中に玉が来たら終わりの運ゲー」だと思っていたのですが……「限られた残機でハイスコアを目指すゲーム」と認識を変えてみたら、リスクとリターンの駆け引きが非常に熱く、常に予想外なことも起こるアドリブ性もあって、延々と遊べてしまう中毒性にハマってしまいました。

 これって多分、後の『テトリス』とかの落ちモノパズルゲームを延々と遊んでしまう感覚に近いのかなと思いました。アクション要素がないワケではないけれど、求められる操作が限定的なため覚えることが少なくてイイ、なのに毎回毎回ちがう展開をしていく点も近いですし。



 『Yoku's Island Express』の場合、前項で述べたように「広大なフィールドの中にピンボールのような場所が埋め込まれている」ため、様々なピンボール台(?)に挑むことになります。延々と果物を集めてもイイのだけど、基本的には「あの穴に入れると次のエリアに行ける」といった目的があるのでそれを達成していくカンジですね。先ほども書きましたが、青いフリッパーはZLボタン、黄色いフリッパーはZRボタン、両方の色のフリッパーはそのどちらのボタンでも押すと動きます。

yoku-8.jpg
<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 例えば、この場面――――
 進みたいのは右上なのですが、ピンク色のゲートが閉じていてこのままでは進めません。ここを開くためにはピンク色の宝石みたいなヤツを全部集める必要があります。もちろん「ピンボール」で。凍っているものは何度がぶつけて破壊する必要があるので、下部のフリッパーだけでなく横のフリッパーも使わなきゃですね。

yoku-8-2.jpg
<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』のものに手を加えました>


 全部集めたらこんなカンジでゲート開放!
 これで右上のルートに進めます(再度ここを通るときにはゲートは開いたままなので助かる)。

yoku-8-3.jpg
<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』のものに手を加えました>



 また、ギミックが変わるだけでなく、様々なシチュエーションを「ピンボール」で解決していくのもこのゲームの特徴です。↓は「逃げ出したススを全員集めて欲しい」というクエストで、当然のように「ピンボール」でススを見つけて捕まえていきます。
 やってることはさっきの「ゲートを開くためにピンクの宝石を集める」のと変わらないのですが、住民達から頼まれているシチュエーションが一枚はさまるだけで印象が変わるんですよねー。

yoku-9.jpg
yoku-9-2.jpg
<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>




 そして、ボス戦もあります!
 「ピンボールでボス戦~?」と半笑いで始めてみたら、なかなかに熱いシチュエーションのボス戦もあったりで侮れません。ちゃんと「ボス戦だけの特別感」があるのはポイント高いです。

yoku-10.jpg
<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 そして、その上で「このゲームにはゲームオーバーがない」ため、こんな凶悪な見た目のボスですがこちらがやられることはないんですね。いつまでも倒せないといつまでも終わらないんですが「敵に攻撃されるプレッシャー」みたいなものはないため、このゲームのボス戦は「強い敵と戦うから憂鬱」とかではなく「普段とちがうシチュエーションでピンボールが楽しめる」だけなんですね。

 「敵と戦う」のが苦手な私みたいな人間には、ピッタリのゲームでした。




↓3↓

◆ 主人公はフンコロガシ!絵も音楽も美しい童話のような世界を冒険する
yoku-11.jpg
<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 このゲームの主人公は、新しく島にやってきた「フンコロガシの郵便配達員」です。
 どう考えても前任の配達員の方が配達に向いているだろう!空飛べるし!と、恐らく全プレイヤーがツッコミを入れたところから始まるのですが……遊んでいるうちにこのフンコロガシも可愛く見えてくるし、この小さなフンコロガシが島のみんなの問題を解決していく様は「小さな主人公が大きな敵をやっつける」少年漫画的な構図にも思えてきます。


yoku-12.jpg
<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 登場するキャラクターは牧歌的で、どのキャラも「かわいい」ようで「ちょっと不気味」なところもありますね。コイツは前の配達員の伝言を録音機代わりに再生してくれるオウム。


yoku-13.jpg
<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 郵便配達員だから、島の隅から隅までをまわって荷物や手紙を届けなくちゃいけないし、そこで出会った人達の頼み事も聞かなくちゃいけない―――「メトロイドヴァニア」というジャンルに、この「郵便配達員の主人公」という設定はドンピシャにハマっていたと思います。


yoku-15.jpg
<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 砂浜。

yoku-14.jpg
<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 雪山。

yoku-16.jpg
<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 古代遺跡。


 島中を「探索」しなくちゃいけないゲームだから、たどりつく場所が特徴的かつ美麗なのも嬉しいところ。手描きで描かれた風景は、『レイマン』シリーズや『オリとくらやみの森』、スタジオジブリの映画なんかに影響を受けているとか。
 BGMに関しては「癒される」と評されることも多く、「敵」が襲ってこないゲームなこともあって、童話の世界にリゾートに来たかのような雰囲気になれます。


yoku-17.jpg
<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 翻訳もまずまず。
 同じTeam17の『The Escapists2』は「最低限ゲームを遊ぶことは可能」なレベルの翻訳でしたが(まぁ、それも監獄にぶちこまれた不自由さの雰囲気にマッチしていたとも思いますが)、こちらは違和感のない日本語で楽しめました。

 主人公がフンコロガシという独特のセンスはありますが、丁寧に作られたゲームで、年齢・性別・ゲームの腕前を問わず誰にでも楽しめる1作になっていると思います。




◇ 結局、どういう人にオススメ?
yoku-18.jpg
<画像はNintendo Switch版『Yoku's Island Express』より引用>

 誰にでも「達成感」と「成長」を感じさせるゲームデザインに、直感的な操作感覚、かわいらしくも不気味さも持ったキャラクター、美麗なグラフィックと癒されるBGM、時には熱く・時には考えさせるストーリー――――非常に高い完成度で、幅広い人にオススメしたいゲームになっています。

 敢えて「オススメできない人」を考えるなら、ゲームにはヒリヒリするような厳しい難易度を求める―――なんて人にはオススメできないかな。コンプを目指すと難しいのは確かなんだけど、アレは難しいというよりシビアなだけというか……

 広大なマップを「探索」するメトロイドヴァニア系のゲームが好きな人はもちろん、メトロイドヴァニアに興味はあるけど難しそうって尻込みしている人には是非オススメしたいです。
 ピンボールに関しては、最初は興味がなくても遊んでいるうちに徐々に好きになっていって、クリアする頃には「ピンボールの他のゲームも遊びたい!」と思ってしまうんじゃないかな。

 PS4版にあるかは分かりませんでしたが、Nintendo Switch版Steam版には「体験版」があるので「えー?でも、ピンボールでしょー?」という人は、まずは「体験版」に触れてみて判断するのがイイのかも。

  ← サントラ

| ゲーム紹介 | 17:56 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

『巨人のドシン』紹介/あなたが求めるのは「自由」か、「労働」か

doshin5.jpg
<画像はゲームキューブ版『巨人のドシン』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
「大容量のセーブが可能になった」64DDだからこそ実現できた新しいゲーム
シビアな要素は少ない、ゆる~く楽しめる箱庭シミュレーション
幻のプレミアディスクに込められた「自由を楽しめない人々」へのメッセージ


『巨人のドシン』
<配布:ランドネットDD、開発:パーラム>
 NINTENDO64 64DD専用ソフト:1999年12月11日配布
<発売:任天堂、開発:パーラム>
 ゲームキューブ用ソフト:2002年3月14日発売
・南国の島で暮らす人々を自由に見守るシミュレーションゲーム

 私がエンディング到達までにかかった時間は約11時間でした
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください

↓1↓


◇ 「大容量のセーブが可能になった」64DDだからこそ実現できた新しいゲーム
 私がプレイしたのはゲームキューブ版ですが、元々このゲームはNINTENDO64の周辺機器64DD専用に作られたゲームです。

 「64DDって何?」どころか、「NINTENDO64って何?」という若い人もこのブログを読んでくださっていることを期待して、今日の記事はそれらの説明から始めます。
 NINTENDO64は1996年6月に任天堂が発売した据置ゲーム機です。「据置ゲーム機」というのはテレビにつなげるタイプのゲーム機ですね。分かりやすく、ファミコン以降に任天堂が発売した据置ゲーム機を一覧にしてみました。

・1983年~ ファミリーコンピュータ
・1990年~ スーパーファミコン
・1996年~ NINTENDO64 ←これ
・2001年~ ゲームキューブ
・2006年~ Wii
・2012年~ Wii U
・2017年~ Nintendo Switch

 NINTENDO64というゲーム機は、2年先行で発売されたソニーのプレイステーションとのシェア争いに敗れたハードではあるんですが……
 3D空間を描写することに特化していて、アナログスティックを標準装備したことで、『スーパーマリオ64』や『ゼルダの伝説 時のオカリナ』などで3Dアクションゲームの雛型を作っただけでなく。マルチタップを使わずに4つのコントローラを挿せることで「4人対戦のゲーム」が多数作られたり、振動パックを付けることでコントローラがブルブル震えたり、その後のゲームの基準点になった部分も多いゲーム機なのです。『スマッシュブラザーズ』『どうぶつの森』『マリオパーティ』など、現在も続く人気シリーズ1作目が生まれたのもこのゲーム機でしたね。


 64DDは、そんなNINTENDO64を拡張する周辺機器でした。
 当初は64本体発売から半年後の1996年末に発売予定で、多くのタイトルが64DD専用で発売されるという話でした。『ゼルダの伝説 時のオカリナ』や『MOTHER3』といった任天堂タイトルだけでなく、『ファイナルファンタジーVII』や『ドラゴンクエストVII』も64DD用に作られているという話があったんですよね。

 しかし、卵が先か鶏が先かは分かりませんが、64DDはちっとも発売されず、「64DD用タイトルとして発売予定だったソフト」も通常の64ソフトだったり他機種だったりで発売されていくことになります。最終的に64DDが出てきたのは1999年末で、専用ソフトはたった10本しかありませんでした。
 その10本の内の1本が『巨人のドシン1』で、1本が『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』ですから、全ソフトの5分の1が『巨人のドシン』というハードになってしまったのです(笑)。


 とまぁ、結果だけ見れば「大失敗商品」なんですが……
 64DDが出る以前の1997~1998年あたりの宮本茂さんのインタビューを読むと、「NINTENDO64はそれ単体では不完全、64DDによってようやく新しい遊びが提案できるようになる」と仰っていて、64DDで新しいゲームが生まれると熱く語っていたんですね。



 1998年1月に発売された別冊宝島に宮本茂さんのインタビューが載っているので、これを引用させていただきます。

<以下、引用>
―――「もう一つの柱=スーファミにはなかった新しい遊びの可能性」というのは、どのようなものですか。

宮本「これはN64単体で実現されるものではなく、「64DD」を使うことで広がる“遊びの構造″といったものです。
 64DDによって、ユーザーが個々に、自分だけのゲームデータの書き換えをするということ。それにどんな可能性が生まれるかといえば、大きく三つのポイントがあります。それは「育成」「交換」「追加」といった楽しさです。
 ゲームの世界を自分なりに育て、記録として残し続ける。育てた自分のゲーム内容を他人と交換することでコミュニケーションをはかる。さらに、新たに内容を付け足し盛り込み、自分のゲーム世界を変貌させる。―――そうやってユーザーがゲーム世界を独自に広げていくことが、64DDというツールによって楽しめるんです。
 いわば「ゲームをカスタマイズする楽しさ」というわけです。」

―――ということは逆に言えば、N64本体だけではそうした新しい楽しさは得られないわけですね。

宮本「そう言えます。N64は“本体だけで完結した機械”ではありません。データを記録・交換するDDがつながり、ユーザーがさまざまな働きかけをするための、さまざまなインターフェイスがつながり、さらに「ゲームポーイ」といった他ゲーム機ともデータがつながる。そのように、たんなる一個の機械ではない「遊びのシステム」としての広がりにこそ、N64ならではの楽しさがあるんです。」

</ここまで>

 64DDの一番の特徴は、「磁気ディスク」なことです。
 ファミコン、スーファミ、64のようなROMカセットではなく、プレステやサターンのようなCD-ROMでもない特殊なメディアを採用していました。容量自体は64MBと、CD-ROM媒体に比べれば決して大きくないのですが、その内の38MBをセーブに使うことが出来るというのが圧巻でした。
 プレステのメモリーカードは120KB、セガサターンのパワーメモリーは512KB、PS2初期のメモリーカードでも8MB……これらのゲーム機は1つのメモリーカードに幾つものゲームのセーブデータを書き込むのに対して、64DDの場合は1つのゲームごとに最大で38MBをセーブデータに使うことが出来たのです(もちろんセーブ領域に容量を使うとゲームの容量も減るのでしょうが)。


 これによりゲームが変わるというのが先の宮本さんのインタビューなのですが、当時の自分にはその意味がよく分かりませんでした。例えば『RPGツクール』みたいなゲームだったら確かに大容量のセーブデータはありがたいでしょうが、大容量のセーブデータを活用できるジャンルのゲームなんて極一部じゃないかと思ったんですね。「大容量のセーブが可能になったところでゲームは変わらないだろう」「FFにもドラクエにも逃げられて宮本さんも苦しいのかな」なんて、その時の私は思っていました。


 ただ、よくよく考えてみると、「プレイヤーがゲームの進行状況を保存(セーブ)できる」ようにしたことでゲームが激変したという経験が、任天堂にはあったんですよね。それがファミリーコンピュータの周辺機器ディスクシステムです。

・1983年~ ファミリーコンピュータ ←これ
・1990年~ スーパーファミコン
・1996年~ NINTENDO64
・2001年~ ゲームキューブ
・2006年~ Wii
・2012年~ Wii U
・2017年~ Nintendo Switch

 ディスクシステムも、ファミコン本体発売から3年後の1986年に発売された周辺機器で、磁気ディスクをメディアに採用したハードでした。
 ディスクシステムと言えば、当時のファミコン用ROMカセットよりも大容量(約3倍!)なことや、持っているディスクを別のゲームに書き換えることで安価にゲームが買えるのがよく話題にされます。特に書き換えシステムは今でいうダウンロード販売のようなものと考えることも出来ますし、時代を先取りしていたと思うのですが……

 しかし、ゲームの歴史から考えると「ファミコンのゲームに“データをセーブする”という概念を持ち込んだ」ことこそが画期的だったのかもと思うのです。ディスクシステム以前のファミコンのゲームは「セーブ」がありませんから、毎回1面から始めるか、パスワードを入力する必要がありました(唯一の例外はファミリーベーシックなのだけど、その話は長くなりそうなので割愛します)。

 そのため、任天堂が発売したディスクシステム専用ゲームには「データをセーブ出来る」ことを活かしたものが多かったんですね。
 『ゼルダの伝説』『メトロイド』『パルテナの鏡』なんかは、主人公が成長するゲームで、最初は貧弱な主人公がどんどんパワーアップしていくのを楽しむゲームでした。『新・鬼ヶ島』や『ふぁみこん探偵倶楽部』は長い物語を途中セーブ出来るだけでなく、それを引き継ぐことで「前編」の続きを「後編」で楽しめるというゲームでした。
 タッチパネルを採用したニンテンドーDSではそれを活かして『nintendogs』や『脳トレ』を出したり、加速度センサーを採用したWiiでは『Wii Sports』や『はじめてのWii』を出したりしたように、ディスクシステムの頃から任天堂は「そのハードでしか出来ない新しい機能を使ったゲーム」を出していたんです。

 1987年になるとファミコン用ROMカセットにもバッテリーバックアップを採用するソフトが出てきて、セーブ出来ることがディスクシステムだけの特権ではなくなってしまい、1988年の後半には任天堂自身もディスクシステムに見切りを付けてROMカセットでの新作ソフトを出していくようになるのですが……ディスクシステムがなければ「セーブ機能を活かしたゲーム」として『ゼルダの伝説』や『メトロイド』が作られることはなかったと考えると、その意義は大きかったのかなと思うのです。


 64DDに話を戻します。
 なので、任天堂は「セーブ出来る容量が大きくなること」によってゲーム自体が変わることを確信していたのでしょうし、確かに実際に出てきた64DDのソフトを見ると未来を先取りしていたようにも思えなくもないのです。

 例えば、『マリオアーティスト タレントスタジオ』。
 Miiの原型になったことで有名なソフトですが、自分でキャラを作り、ショートムービーを製作して、ランドネットというインターネットサービスに投稿することも出来たそうな。キャプチャーカセットを使えばデジカメやデジタルビデオカメラも使うことが可能。YouTubeやニコニコ動画なんかが生まれるよりももっと前から、「動画作成の楽しさ」「それをみんなで共有する楽しさ」をゲームに落とし込もうとしていたのだから凄いです。

 例えば、『F-ZERO X エクスパンションキット』。
 64のROMカセットで発売された『F-ZERO X』の拡張ディスクで、追加のコースが入っているだけでなく、自分でコースやマシンを作成することが可能でした。『マリオアーティスト』シリーズとちがって作ったコースをネットにアップロード・ダウンロード出来なかったそうなのだけど、もし出来ていたら「早すぎた『マリオメーカー』」になっていたかも知れません。

 また、「自分で作る」ことばかりが注目されがちですが、アペンドディスク的に「コースを追加する」ことも可能ですから、『ゼルダの伝説 時のオカリナ』や『マリオパーティ』なんかは64DDに対応してダンジョンやミニゲームを追加する計画があったように思われます。
 それ自体はプレステやサターンの「アペンドディスク」や「前後編」に近いと思うのですが……64DDはインターネットにも接続できるので、ひょっとしたらインターネット経由で追加ステージを配信するみたいなことも考えられていたんじゃないかと思われます。それ以前にサテラビューがありましたからね。そう考えると64DDの大容量保存領域は、単なる「セーブデータ」ではなく、現在の「ゲーム機本体のストレージ容量」に相当するものだったのかもと。


 そして、ようやくです。お待たせしました、『巨人のドシン1』です。
 『巨人のドシン1』は64DDで遊べる64DD専用のゲームで、『アクアノートの休日』や『太陽のしっぽ』の飯田和敏さんがディレクターです。ここまで長々と説明したように、64DDで出すゲームなので「セーブ出来る容量が大きくなること」を活かしたゲームになっています。

doshin7.jpg
<画像はゲームキューブ版『巨人のドシン』より引用>

 一見するとこのゲーム、3D空間を自由に暴れまわる3Dアクションゲームに思われてしまいそうなのですが……実際には「フィールド」を自由自在に操れるシミュレーションゲームです。南国の島に暮らす住民を好きな場所に移動したり、木を移動したりするだけでなく……地面の高低までを自由にコントロールできるので、海を埋め立てて島を作ったり、山を平らにしてそこに住民を住まわせたりなんてことも、自分の好きなようにやって良いのです。

 そうしたフィールドの変化をいちいち全部セーブするのだから「大容量のセーブ領域」が必要ということですね。
 ゲームキューブ版は64DD版よりもフィールドが狭くなったみたいなのですが、それでも当時のゲームキューブのメモリーカード(512KB)をほぼ丸々1コ使いますからね。プレステ1のメモリーカードが120KBでしたから、もしプレステ1で発売していたらメモリーカードを4枚挿さなくちゃいけなくなります(笑)。


 飯田和敏さんのゲームは『アクアノートの休日』にしても『太陽のしっぽ』にしても「世界を自由に遊びまわれるゲーム」でしたが、『巨人のドシン』の「世界を自分の好きなように作り替えることが出来る」楽しさはそこに「砂場遊び」的な面白さを加えたゲームに思えます。

 砂場遊び……サンドボックス……
 そう、実はこのゲーム―――「早すぎた『Minecraft』」なんですよ。


 もちろん『Minecraft』と『巨人のドシン』では出来ることが全然ちがいますし、『Minecraft』の作者が『巨人のドシン』の影響を受けているだなんて思いませんけど……64DDなんて周辺機器まで出した任天堂が「セーブ出来る容量が大きくなること」で夢見た未来の一つの形が、『Minecraft』のようなゲームだったんじゃないかなって思うんですね。

 よくセガに対して「セガはいつも10年早いんだ」と言われることがあります。最新技術を取り入れた超すごいものを投入するも、商業的には成功せず、10年後・20年後に他の会社がそれに似たものを商業的に成功させて「その道はセガが10年前に通過したのに……」となるヤツです。

 それに対して任天堂は「枯れた技術の水平思考」という言葉でイメージされるように、既に使い古された技術を応用して商業的に成功する会社のように思われているかも知れません。DS以前からタッチパネルはありましたし、Wii以前から体感ゲームはありましたが、それを本格的に取り入れたことで成功したという。
 しかし、任天堂も「ディスクシステムは早すぎたダウンロード販売」でしたし、「サテラビューは早すぎたデータ通信で遊ぶゲーム」でしたし、「バーチャルボーイは早すぎた立体視対応ゲーム」でしたし、10年・20年後を先取りすることは結構あるんですね。任天堂は10年・20年後に自分達でリベンジして成功させることも多いので、セガみたいに「10年早いんだ」とは言われませんが。


 社長が訊く ゲームセミナー2008~『どうぶつの森』ができるまで~

 64DDの話で言えば、64DDを活かしたゲームとして開発していたのにROMカセットに移行させられて全然別のゲームになった『どうぶつの森』の話がめっちゃ面白いんで、読んだことがない人はこの機会に是非どうぞ!
 他の機種にはない大容量のセーブデータを使ったゲームを開発していたのに、会社の事情でROMカセットに移行することになり、そうするとセーブ領域が1メガビット=125KBしかなくなってしまいました。それでもまぁ、プレステのメモリーカード1枚分なのですが、『巨人のドシン』で使ったセーブデータの4分の1しかありません。その結果、広大なフィールドをどんどん狭くしていって、最終的に「村だけのゲーム」になっていったという(笑)。

 こうして生まれた『どうぶつの森』は大ヒットシリーズになるんですけど、元の構想のゲームも「オープンワールド的」というか「サンドボックス的」なゲームに思えて面白そうですよね。

 この社長が訊くが公開されたのが2009年1月26日なので、ちょうど64DDから10年後の年なんですね。そして、この2009年の末に、『Minecraft』の最初のバージョンがリリースされるのです。


 64DDが当初の任天堂の目論見通りにリリース出来ていたのなら『Minecraft』のようなゲームは日本から生まれていたのかもなんて妄想してしまうのですが、とりあえずこの言葉は言っておきましょう。「64DDは10年早かった」のだと。

↓2↓


◇ シビアな要素は少ない、ゆる~く楽しめる箱庭シミュレーション
doshin8.jpg
<画像はゲームキューブ版『巨人のドシン』より引用>

 プレイヤーが出来ることは、先に説明した「土地の高低をいじくる」ことと、「住民や建物、木などを運ぶ」こと、破壊の巨人に変身して建物を破壊することくらいです。
 住民はやたらめったら「ここの土地を上げて!」とか「ここに木を持ってきて!」と頼んでくるので、「何をして良いのか分からない」ということはないでしょうし、むしろ住民の要望を全部聞いていたらめっちゃ忙しいゲームになると思います。もちろん自由に遊べるゲームなので、住民の要望なんて無視する遊び方でもOK!


doshin4.jpg
<画像はゲームキューブ版『巨人のドシン』より引用>

 「何をしても自由とか言われても困る。目的を設定してくれ」という人のためにあるのが、「モニュメントリスト」です。「ハズレのモニュメント」を除いてモニュメントは16種類あって、それを全部作らせるとエンディングになります。

 住民の要望に応えていくと「集落」が発展していって、ある程度のところまで行くと、その集落に住む「住民の色」に合わせたモニュメントが作られます。赤の住民だけの集落なら「赤一色のモニュメント」、赤と青の住民がいる集落なら「赤青二色のモニュメント」といったカンジに。

 また、モニュメント建設のタイミングで住民は「花」を要求してきます。
 「花」は島の中にある木を調整することによって生まれる(詳しくはゲーム内で説明されます)ので……「どの色の住民をどこに運ぶのか」と「限られた本数の木をどこに運ぶのか」という、リソース管理が重要なゲームとも言えますね。


 とは言え、シミュレーションゲームとして考えると難易度は無茶苦茶低いと思います。私は「シミュレーションゲームが下手」と自称するだけあって、初日のプレイで取り返しのつかないことをやっちまったんですが、時間さえかければちゃんとリカバリーできました。『シムシティ』や『A列車』みたいなゲームとちがってお金に縛られることもありませんし、『ポピュラス』のように敵対勢力も存在しませんからね。とあることをしなければ、ゲームオーバーにもなりません。

 「火事を踏み消す」とか「住民を踏まないように歩く」とかはアクションゲームが苦手な人にはシビアに思えるかも知れませんが、ぶっちゃけた話人間の1人や2人殺したところで大した問題はないのがこのゲームなんで、「ハッハッハー!うっかり踏み殺しちゃったぜー」と笑いながら遊べるような人に向いているゲームだと思います。


 『シムシティ』とか『A列車』みたいに集落がどんどん近代的に発展していく要素はないのですが、集落が発展していって住民が作る建物は「巨人への好感度」で変わるそうです。巨人のことを嫌っている集落だと、巨人に対抗して「大砲」とか作るんですって。そんなこと知らなかった私は、「おー、ここの集落は大砲なんか作ってるよー。立派になったもんだなぁ」なんて言っていました(笑)。


 なので、シビアな都市開発ゲームというより、『アクアゾーン』(1993年)とか『たまごっち』(1996年)とか『シーマン』(1999年)のような「育成」よりも「観察」に重点を置いたペットと共に生きるゲームの系譜なのかもと思います。大容量のセーブが出来る64DDを使った結果、その規模が「一つの水槽」から「大きな島」に広がったのがこのゲームというか。
 そう考えるとこの延長線上にあるのは『トモダチコレクション』とかかも知れませんね。あちらが自由度の高い人形遊びだとしたら、こちらはだだっ広いフィールドの砂場遊びなので、『トモダチコレクション』次回作はその2つを融合してフィールドも好き勝手イジれるように出来たら楽しそう。

↓3↓


◇ 幻のプレミアディスクに込められた「自由を楽しめない人々」へのメッセージ
 ということで、このゲームを1行で説明すると「大容量のセーブ領域を活かしたゆる~く遊べる育成シミュレーションゲーム」といったカンジになるのですが……
 そうやってゆるく遊んでいると、終盤の展開やエンディングが「なんじゃこりゃ?」と理解できないんじゃないかと思います。私はエンディングまで生配信でプレイしていたのですが、私も視聴者も「どういうこと?」と戸惑ったまま終わってしまいました。


 ただ、その後にこのゲームのことを調べてみて合点がいきました。
 このゲーム、元々の64DD版は『巨人のドシン1』と『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』という2つのソフトが出ていたんですね。1本目が基本ディスクで、2本目が拡張ディスクというか。

 しかし、ゲームキューブ版の『巨人のドシン』は『巨人のドシン1』の移植であって、『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』にあたる部分は移植されていません。
 64DD自体がほぼ普及しなかった周辺機器なんですが、『巨人のドシン1』はランドネット会員に配布されたため64DDを入手した人の多くがプレイしたのに対して、『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』はランドネットのホームページから購入しなければならないため入手した人は更に少なく、現在では超プレミア化しているソフトとなっています。
 Amazonでは取り扱いがありませんでしたが、駿河屋だと85000円ですね。8500円じゃないですよ、85000円ですよ。




 プレイ動画をアップして下さっている人がいらっしゃいました。感謝感謝。

 簡単に説明しますと、『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』は『巨人のドシン1』とセーブデータを連動して「ディスクを入れ替えながら遊ぶゲーム」です。
 『巨人のドシン1』でモニュメントを作ると、『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』にもパビリオンが立ちます。そうすると、そのパビリオンのコンパニオンから「こうやって『巨人のドシン1』をプレイしなさい」というお題のようなものが出されるので、ディスクを入れ替えて『巨人のドシン1』でそれを実行します。再び『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』に戻ってそれが実行されたことが確認されると、ムービーを観ることが出来るようになる――――と。




 流石に「プレイしたことのある人数」が激少ないので、コンパニオンさんからどういうお題が出されるのかの情報がインターネット上を探し回ってもほとんど見つからないのですが。アップされているプレイ動画から確認されたのは、「ずっとピョンピョン飛び跳ねていろ」というお題でした。通常のプレイでは決してやらない遊び方ですよね。

 要はですね……後の時代のゲームが「クエスト」とか「実績」とか「トロフィー」と呼んでいる“やりこみ要素”をするとムービーが観られるという拡張ディスクなのです。


 恐らく、『アクアノートの休日』『太陽のしっぽ』『巨人のドシン』と自由度の高いゲームをいち早く作っていた飯田和敏さんは、その後のゲームがどういう方向に進むのかを予測していたんじゃないかと思うんですね。
 ゲーム機のスペックが上がっていけば「自由度の高いゲーム」というのは今後どんどん増えていく、しかし「自由度の高いゲーム」が増えると「どうやって遊べばイイのか分からない」という人もたくさん出てくる、そうすると「自由度の高いゲーム」も遊び方を迷わないように「こうやって遊びなさい」というお題を入れるようになるだろうと。


 『巨人のドシン』というゲームは、そういうゲームの未来を予測した上で「クエスト」とか「実績」とか「トロフィー」のためにゲームを遊ぶのなんてクソつまんねえから!と先回りして言っていたゲームだと私には思えます。
 『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』で出されるお題というのは、「ずっとピョンピョン飛び跳ねていろ」みたいに、意図的につまらなくしているお題ばかりみたいなんですね。「せっかく自由に遊べるゲームなのに、こんなことをやらされる」と、わざとプレイヤーに苦痛を与えるお題にしているのです。自由を楽しめないプレイヤーに対する警鐘とも言ってイイかも知れません。



doshin6.jpg
<画像はゲームキューブ版『巨人のドシン』より引用>

 そもそも、『巨人のドシン1』でもモニュメントリストをコンプリートしろなんて言われません。「最後のモニュメントを建設すると災いが起こるから、作るかどうかはプレイヤーが決めてイイ」的なことも言われます。
 なのに、我々はリストがあればコンプリートしたくなっちゃうし、エンディングがあるならばそれを観るのがクリアーだと思い込んで、それを目指しちゃうじゃないですか。自由に遊んで良いゲームなはずなのに、「住民の言うことを聞かなきゃ」「集落を発展させなきゃ」「新しいモニュメントを作らせなきゃ」と、住民の言いなりになって労働してしまうじゃないですか。

 その皮肉が、あのエンディングなんだと思うんですね。
 住民の言うことを聞いた「労働」の果てにあるのがコレかよと。



 『巨人のドシン1』にもそのメッセージは込められていましたが、『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』は更にそのメッセージを強めた拡張ディスクなんだと思います。
 「ゲームの自由度が高くなるとお題ばかりを課せられるお使いゲーになる」というのも飯田和敏さんからの皮肉なんですけど、「お題をクリアしたご褒美がムービー」というのも当時の「ムービーを観るためにストーリーを進める」というゲーム業界への皮肉でもありそうですよね。当時はプレステの『ファイナルファンタジー』シリーズが300万本とか売れている時期ですから。


 そして、ようやく自分の中でつながったことがありました。
 飯田和敏さんは『巨人のドシン』の後しばらく商用ゲームを作っていなかったのですが、『巨人のドシン』からちょうど10年後の2009年にWiiウェアで『ディシプリン*帝国の誕生』というゲームを出します(発売はマーベラス)。私はこのゲーム、「クソつまんねえ」と思ったのですが……『巨人のドシン』をプレイして納得がいったのです。

 『ディシプリン*帝国の誕生』は、刑務所のようなところに入れられた主人公が、同じ牢屋に入れられている仲間の「睡眠」や「排泄」の世話をするというゲームでした。『アクアノートの休日』や『巨人のドシン』のようにフィールドを動き回れる「自由」はなく、牢獄の中でひたすら「労働」をするだけです。この、ひたすらつまらない「労働」を延々とやらされる作業は『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』につながるものがあるように思えます。

 『アクアノートの休日』で「自由」を描き、『巨人のドシン』『巨人のドシン解放戦線チビッコチッコ大集合』でそれを台無しにする「労働」をぶちこみ、『ディシプリン』でただただ「労働」を強制されるだけのゲームを作った――――
 田中圭一さんの『若ゲのいたり』でインタビューされた際、飯田和敏さんは「今の異端が未来のスタンダードになる」と仰っていましたけど、『ディシプリン』の「労働」ってこの後に携帯電話やスマホで出てくるソーシャルゲームなんかへの皮肉だったのかもと今なら考えることが出来ます。



◇ 結局、どういう人にオススメ?
doshin1.jpg
<画像はゲームキューブ版『巨人のドシン』より引用>

 いやー……これは難しい。
 ものすごく「人を選ぶゲーム」なのは間違いないと思いますからね。

 一つには、1990年代の『アクアゾーン』『たまごっち』『シーマン』のように「ペットを鑑賞&ペットに干渉するゲーム」が好きだった人には、「それの人間版だよ」とオススメ出来るかなと思います。熱帯魚を飼う感覚で、人間共の世話をするゲームだと考えるとイメージしやすいかな。

 そして、もう一つには「このゲームにこめられた皮肉」を楽しめる人なんですけど……ゲームの進化と変化の歴史を把握した上で、それを斜に構えて見られる人じゃないと理解も共感も出来ないと思いますから。一つ目と被る部分もあるんですけど、人間社会を俯瞰的に捉えて、人類全体を見下しているところがある人にはオススメかなぁと思います。


 こう書いて、「そうか!俺も人類を見下しているところがあるから、きっとこのゲームが楽しめるはずだ!」と思える人がどれだけいるんだって話ですが……(笑)。私は楽しかったです!人類なんて滅べばイイって日々思っていますからね!(良いのかそれで)



| ゲーム紹介 | 17:57 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』紹介/「服を着て家から出る」だけでも冒険になる愉快なマニュアル生活へようこそ!

manualsam-1.jpg
<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
右足、左足、息を吸って、吐く……全部ボタンで操作する面倒臭さを楽しもう!
でも、実は難易度は高くなくて、万人が楽しめるように設計されている
ブラックなノリと世界観だけど、ストーリーもアートワークもむっちゃ凝ってる!



『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』
・発売:テヨンジャパン、開発:Perfectly Paranormal
 Nintendo Switchダウンロード専用ソフト:2018年11月1日発売、1000円
  ※本体機能でのスクリーンショット撮影可能、動画撮影は不可
 ※海外ではPS4XboxOneSteamなどでも発売されていますが、日本語化はされていません

・アクションアドベンチャー…?
・セーブスロット数:3




 私の1周クリア時間は約02時間でした
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:×(死を扱う話ですが終始明るいノリです)
・恥をかく&嘲笑シーン:△(終始ナレーションの人に笑われてるゲームと言える…)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:◎(サムの動きはグロいし、地獄で並んでいる人達が……)
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×

↓1↓

◇ 右足、左足、息を吸って、吐く……全部ボタンで操作する面倒臭さを楽しもう!
 『Manual Samuel』は海外では2016年にPS4、Xbox One、WindowsPCで発売されていたダウンロードソフトです。
 しかし、日本語化はどこも対応していなかったようで、どうやら日本語化は今回テヨンジャパンが出してくれたNintendo Switch版が初みたい……?何気にセリフの量が多いゲームなんで日本語化はムチャクチャありがたい!ありがとうテヨンジャパン!ありがテヨン!


manualsam-2-0-2.jpg
<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 このゲームを一言で説明すると、「サムという主人公をマニュアル操作しなくてはならないゲーム」です。
 普通のゲームだったら左スティックを倒すだけで主人公キャラは移動してくれると思うのですが、このゲームの場合「ZRボタンを押すと右足を前に出す」「ZLボタンを押すと左足を前に出す」とイチイチ片足ずつ操作しなくては歩けません。これは右向きの場合であって、左向きになると逆になるので、「画面手前の足がZRボタン」と覚えておくとイイと思います。


manualsam-2-2.jpg
<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 間違えて、前に出ている方の足のボタンを押してしまうとこの通り。
 二足歩行の大変さを思い知ります!


 また、マニュアル操作をしなくてはならないのは「右足」「左足」だけではありません。「右手を使う操作はRボタン」「左手を使う操作はLボタン」と割り当てられていますし、サムの動きは全てボタンで制御しなくてはなりませんから一定間隔で「Bボタンを押してまばたき」をする必要もあります。
 更には呼吸もマニュアル操作なので、「Yボタンを長押しして息を吸う」「Aボタンを長押しして息を吐く」こともやらねばなりません。息を吸うのと吐くのが別のボタンに割り当てられているのがニクたらしい!焦ると連続で吸うボタンを押してしまったり、吸った量以上に吐いてしまったり、大混乱だ!


manualsam-3.jpg
<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 「歩く」のも「まばたきをする」のも「呼吸する」のも大変なのに、それだけで1日が過ぎるワケではありません。サムがしなければならないのは、「歯を磨いて」「トイレに行って」「シャワーを浴びて」「ズボンを履いて」「ジャケットを着て」「靴を履いて」「朝食を食べて」「コーヒーを飲んで」家を出るという私達が普段やっている普通の行為です。これらを全部ボタン操作でやっていくのです。

 例えばスクリーンショットの場面は「歯磨き」のシーンです。
 Lボタンを押しっぱなしで歯ブラシを持ち(Lボタンをうっかり離すと歯ブラシを落としてしまいます)、Xボタン連打で歯を磨きます。こういう一つ一つの動作を特殊な操作で乗り切っていかなくてはならないのですが、この間にも「まばたき」をしないと目がシパシパしてきてしまうし……

manualsam-4.jpg
<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 うっかり「歯磨き」中に「呼吸」してしまうと、水が肺に入ってムセてしまうという!


 こうして「やらなくてはならないこと」と「やってはいけないこと」が次々と変化していくので混乱するし、飽きさせないのです。


manualsam-5.jpg
<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 また、この操作というのが単に「次から次へと新しい操作を覚えなくてはならない」だけでなく、さっき覚えた操作の応用を効かせる面白さなんかがあるのが私の好きなところです。

 例えば、ここは「コーヒーを飲む」シーン。熱々のコーヒーを冷ますためにはフーフーしなければならないのですが、その操作はここまでで散々やってきた「息を吐く」操作と一緒なんですね。
 『ゼルダの伝説』で新しく手に入ったアイテムは「基本的な使い方」だけでなく「こんな意外な使い方もできるんだ」と複数の場面で役立つみたいなことで、さっき覚えた操作が「こんな意外な使い方もできるんだ」と複数の場面で役立つのが面白いのです。



manualsam-6.jpg
<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 こうしてやっとの思いで「家から出る」ことが出来たら1面終了。
 2面はなんと「車を運転して職場に行く」だ!歩くのもままならない人が、車を運転するの!?

 しかも、サムが勝手にマニュアル車に改造してしまったので、「ZRボタンを押して左足でクラッチペダルを踏む」→「ZLボタンを押して右足でアクセルペダルを踏む」→「ZRボタンを離してクラッチペダルから足を離す」をしないと車が発進しませんし、ギアチェンジをするためには「十字キー上を押して右手をシフトレバーへ」→「ZRボタンを押して左足でクラッチペダルを踏む」→「Lボタンを押してシフトレバーを引く」をしないといけません。ブレーキをかけるためにはもちろん「Rスティックで右足を動かす」→「ZLボタンを押してブレーキペダルを踏む」をしないといけなくて……ややこしいわ!

 この間ももちろん「まばたき」と「呼吸」を続けなくてはなりません(笑)。


 こんな風に「結構操作に慣れてきたかな……」と思った絶妙なタイミングで次の面に移り、また面倒くさい新しい操作を強いられるという(笑)。
 エンディングまでのプレイ時間はさほど長くないんですけど、これくらいが「丁度飽きないボリューム」だと思うので私はアリだと思います。ダラダラと同じような面を繰り返されても、このゲームの場合「操作に慣れて普通に動かせるようになってしまったらシンプルな動きしか出来ないアクションゲーム」になっちゃいますからね。


↓2↓

◇ でも、実は難易度は高くなくて、万人が楽しめるように設計されている
 ……と、書くと「ムチャクチャ難しいゲーム」のように思えてしまうかも知れませんが、実は難易度はあまり高くありません。というのもこのゲーム、「ゲームオーバーになってコンティニューポイントからやり直し」みたいなのがないんですね。

 一定周期で「Bボタンを押してまばたきをしなくてはならない」のだけど、それをサボっても画面が見づらくなるだけだし。
 一定周期で「Yボタンを長押しして息を吸って、Aボタンを長押しして息を吐かなくてはならない」のだけど、それをサボってもその場でぶっ倒れるだけで、また呼吸をして立ち上がればイイのです。


 「面倒臭い操作」を強いられるゲームですが、ゲームとしては「面倒くさいやり直し」が極力ないように設計されているのです。


manualsam-7-1.jpg
<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 また、「右足」「左足」「右手」「左手」「まばたき」「息を吸う」「息を吐く」を全部ボタンでこなさなくてはならないゲームと書きましたが、ゲーム開始時からいきなりそういう状態になるのではなく、まずは“チュートリアル面”と言えるところから始まります。彼女に瓶でぶんなぐられたサムは……

manualsam-7-2.jpg
<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 脳震盪を起こして、歩き方を忘れてしまいます。
 最初のチュートリアル面は「右足」「左足」を交互に押して歩くことを学ぶんですね。「まばたき」「息を吸う」「息を吐く」はまだやらなくてイイのです。ぶっ飛んだゲームのようで、実は堅実にプレイヤーを導いてくれる「遊びやすいゲーム」なのです。



manualsam-8.jpg
<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 「クリアまでのプレイ時間」も短く、「難易度も高くない」のだったら、すぐに終わってしまうゲームでは? と思われるかも知れません。私としては1000円のダウンロード専用ソフトなんだから、「すぐに終わる」「時間がない人でも存分に楽しめる」長所だと思うんですけど……

 「長く遊びたい人」に向けたやりこみ要素として、「タイムアタック」だったり「実績」だったりの仕様も入っています。「実績」コンプは恐ろしく難しいことでしょう。私はチャレンジする気すら起きませんでしたが、「実績」を見ると「靴を履かないで出勤する」みたいに「こんな遊び方も出来るんだ」という発見があったりもします。


manualsam-9.jpg
<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 更に、サムのマニュアル操作を2人で分担する協力モードも搭載しています。Nintendo Switchならではの「おすそ分けプレイ」にも対応しています。“協力モード”って書かれてても絶対に1人用より難しくなるぞ、これ!(笑)

 友達が遊びに来たら、一緒に実況してみたいなぁコレ。



 ということで、「アクションゲームが苦手な人」にも「ゲームはとことんやりこみたい人」にも「友達と一緒に楽しみたい人」にもオススメできる作品です。家族で一緒に遊ぶのも面白そうですね。CEROの判定はC(15歳以上対象)ですけど!


↓3↓

◇ ブラックなノリと世界観だけど、ストーリーもアートワークもむっちゃ凝ってる!
manualsam-10.jpg
<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 このゲームの大好きなところはたくさんたくさんあるんですけど、例えばゲームを始める前のモード選択が「アメコミのようなイラストになっている」ようなところも大好きです。ゲームの細部まで丁寧に作りこんでいるし、遊び心に満ちていると思うんですね。


manualsam-11.jpg
<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 協力モードのおじさん is 誰?




 「コーヒーを飲む」という一つのシーンでも、「冷まさずに飲んで口の中が熱い」、「口ではなく目に入れてしまって熱い」、「脊椎が折れている時に飲もうとして後ろの方に吹っ飛んでいく」と失敗のシーンが多彩なのも面白いです。こちらのとったヘンテコな行動に、ちゃんとゲームがリアクションしてくれるんですね。


manualsam-12.jpg
<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 ストーリーが進むのとは敢えて逆の方向に歩いても、ちゃんとリアクションがある!


manualsam-13.jpg
<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 ストーリーのデモシーンが「Bボタン長押しでスキップできる」のは、最近のゲームとしては珍しくないと思うのですが……ただ単にデモシーンをカットするのではなく「スキップした時専用のセリフ」が流れてストーリーを大まかに説明してくれるという凝りよう。こういうゲームは私、初めて見ました。


manualsam-14.jpg
<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 スキップばっかしてたら嫌味まで言われました(笑)。


 こんなカンジに細部までむっちゃ作りこんでいるし、中身がギュ~ッと詰まっているゲームなんですよ!こういうゲームを「クリアまでが短いからボリューム不足」と言っちゃうのは勿体ない!


manualsam-15.jpg
<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 ローカライズも見事。
 音声は流石に英語だけど、字幕はちゃんと雰囲気抜群に日本語に翻訳されています。

 海外版の動画を見てみたんですが、キャラの名前も日本版はちょっと変わってて……「Mr.Welthenburg」というキャラが、日本版だと「カネモチバーグさん」。


manualsam-16.jpg
<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 海外版では「Death」というキャラが、日本版だと「デスオ」。


manualsam-17.jpg
<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 海外版では「War」というキャラが、日本版だと「キルミちゃん」。





 待って待って待って待って。

 どんなセンスやねん、テヨンジャパン!

 でも、この「デスオ」とか「キルミちゃん」という名前がこのゲームの雰囲気にピッタリで、まさか海外版では全然違う名前だとは思いませんでした。ローカライズは本気で見事だと思いますよ。



 ストーリーは「死」を扱いながらそれを笑い飛ばす「軽薄さ」がウリだと思うのですが、単なるブラックユーモアとして笑い飛ばせるだけでなく。
 全ての操作をマニュアルで行わなければならないゲームシステムにマッチして、「あるのが当たり前だと思っていたことがとても大事だったんだと(プレイヤーとサムが)気付かされる」ストーリーとも言えてこれも見事でした。私はこういう「システム」と「ストーリー」がしっかりマッチしているゲームが好きなんです。ゲームでしか味わえないストーリーになっていますから。



◇ 結局、どういう人にオススメ?
2018110317340600-EDB84A0E6F2A70A08AE68158D1F68771.jpg
<画像はNintendo Switch版『マニュアル サミュエル ~死神との約束~』より引用>

 私にとっては、これまでに遊んだNintendo Switch用のゲーム全部の中でも5本の指に入るくらいにお気に入りのゲームです。
 Wii Uダウンロード専用ソフトには『U-EXPLORE SPACE ADVENTURES』という怪作があったけど、Nintendo Switchダウンロード専用ソフトにはこの『マニュアル サミュエル』があるぜ!と推していきたいゲームでした。

 ゲームに「長いプレイ時間」を求める人には勧めませんが、「短くても濃密な体験」を求める人には是非オススメしたいゲームです。クリアを目指すだけなら難易度もそれほど高くないところも好きなところです。
 細かい部分までよく作りこんでいるし、そういうものを発見するのも面白いです。おすそ分けプレイにも対応しているので、いつか友達と一緒にも遊んでみたいですね。小学生の甥っ子にも遊ばせたいけど、親は顔をしかめそうだ!


使える!活かせる!マニュアルのつくり方 (実務入門)
Posted with Amakuri
¥1,944
売上げランキング: 18264


| ゲーム紹介 | 17:52 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

『リアルサウンド ~風のリグレット~』紹介/疑いようもなく『Dの食卓』の続編!

kazereg-1.jpg
<画像はドリームキャスト版『リアルサウンド ~風のリグレット~』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
「映画の主役になれるゲーム」の次は「ラジオドラマの主役になれるゲーム」だ!
音しかないことを活かして、それぞれの「地元の風景」を思い起こさせる
良くも悪くも「遊ぶ人の気持ちを考えない」飯野さんの作家性を許容できるか



『リアルサウンド ~風のリグレット~』
・発売:ワープ
 セガサターン版:1997年7月18日発売
 ドリームキャスト版:1999年3月11日発売
・インタラクティブサウンドドラマ
・セーブスロット数:1(オートセーブ)


 私の1周クリア時間は約04時間でした
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:○(家庭環境の話がちょっとつらいかも……)
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:◎(うん、これは寝取られと言ってイイんじゃないかな…)
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×

↓1↓

◇ 「映画の主役になれるゲーム」の次は「ラジオドラマの主役になれるゲーム」だ!
 1990年代後半のゲーム業界を暴れまくった飯野賢治さんという人がいました。

 1995年、3D空間を歩き回る「映画の主人公になったようなゲーム」『Dの食卓』を発売して一気に脚光を浴びると……
 1996年にはプレイステーションのイベントで「やっぱりセガサターン専用で出します!」と宣言して度肝を抜いた『エネミー・ゼロ』を発売して。
 1997年にはこの『リアルサウンド ~風のリグレット~』を発売するなど、毎年毎年斬新なゲームを出してくる人だったんですね。しかも、大手の会社に所属するワケでもなく、当時まだ20代の若者が独立して作った会社で自由なゲームを連発して「時代の寵児」と呼ばれる様は、煙たがる人も少なくありませんでしたが夢もあったんだと思うのです。


 『Dの食卓』紹介/“不自由”を遊びにした唯一無二のゲームデザイン!

 『Dの食卓』は6月に実況して最後までプレイして、紹介記事も書きました。
 当時は斬新だった「CGで作られたキャラが3D空間を歩き回るゲーム」は今ではもう珍しくもなんともないですし、グラフィックも現代の水準で見るとチープに見えてしまうのですが、時代を切り開いた作品というのは得てしてそうなってしまいがちですよね。もっともっとブラッシュアップされたものが次々と出てくるので。

kazereg-2.jpg
<画像はドリームキャスト版『リアルサウンド ~風のリグレット~』より引用>

 しかし、この『リアルサウンド ~風のリグレット~』は全く古びれません!
 20年前のゲームなら大抵の場合は「今見るとチープなグラフィック」と思われがちなのですが、そもそもこのゲームにはグラフィックがありませんからね!20年前でも真っ暗、今遊んでも真っ暗!時代の流れに左右されないのです!

 そして、この20年ちょっとの間にゲーム業界は様々なゲームを生み出して、個人制作のフリーゲームだったり、少人数で作ったインディーゲームだったり、アイディア勝負のゲームは山ほどあったと思うのですが……『リアルサウンド』のように「画面が出ないゲーム」は他にはなかったように思われます(私の知らないところであったらゴメンなさい)。

 故に、2018年の今遊んでも「他にはない唯一無二のゲーム」と感じられるのです!



 というワケで、このゲームには「画面」がありません。
 テレビに何かが映るのは「タイトル画面」と「ディスクを入れ替えてください」の表示だけ。ゲーム中はずっと画面は真っ暗です(※1)。視覚障碍者の人にも遊んでもらいたいという狙いもあったようで、その「タイトル画面」や「ディスクを入れ替えてください」の画面でも音声ガイダンスも流れます。

(※1:ドリームキャスト版にはイメージ映像みたいなものを表示し続けるモードもあります)


 さて、『Dの食卓』や『エネミー・ゼロ』でCGをフル活用した「映画のようなゲーム」を作った後に、『リアルサウンド』と謳って「画面が出ないゲーム」を出してきた当時、私は正直「逃げたんだな」と思いました。1997年と言えば、もうスクウェアが『ファイナルファンタジーVII』を出している年です。グラフィックで競い合えばスクウェアみたいな大会社には太刀打ちできないワープは、グラフィック以外を攻めますよーと「逃げた」のだと思っていました。

 そういう理由がなかったとは言い切れませんが……
 今年の6月に『Dの食卓』をプレイして、11月にこの『リアルサウンド ~風のリグレット~』をプレイして(※2)、その考えは浅はかだったなと思いました。

(※2:『エネミー・ゼロ』はゴメンなさい。超難しいゲームという話なので、私は今後もプレイはしないと思います)


 というのも、『Dの食卓』も『リアルサウンド ~風のリグレット~』も、全然ちがうジャンルのゲームだと思うんですが、遊んでみて得た“体験”はすごく似ているんですね。『Dの食卓』は「映画の主人公」を自分で操作して正しいエンディングまで導くゲームでしたが、この『リアルサウンド ~風のリグレット~』は音声だけの「ラジオドラマやドラマCDの主人公」のセリフを自分で選ぶことで正しいエンディングまで導くゲームでした。

 恐らく飯野さんにとっては「CGを駆使すること」は最優先ではなくて、プレイヤーに「主人公になって物語を動かす体験」をしてもらうことこそが最優先だったのだろうと思いましたし、そういう意味では『Dの食卓』も『リアルサウンド ~風のリグレット~』も似たゲームなのです。
 エンディングの分岐に「主人公がどれだけ記憶のカケラを集められたのか」が左右するのも一緒なのは、「また記憶を集めるのかよ!」とは思いましたが(笑)。


kazereg-3.jpg
<画像はドリームキャスト版『リアルサウンド ~風のリグレット~』より引用>

 ということで、ここからはゲームの説明です。
 ゲームを始めると音声だけの「ラジオドラマ」というか「ドラマCD」のようなものが再生されます。一時停止や早送り・巻き戻しのようなものは一切できません。流れるストーリーをひたすら聴くだけ。

 しかし、ところどころで「主人公のセリフ」を二択か三択の中から選ぶ場面が出てきて、ここのみゲームの進行が止まります。トイレに行きたいときなどはひたすら選択肢を選ぶシーンが来るのを待ちましょう(笑)。
 スクリーンショットの場面では、左を押すと「ここは俺の家だよ」、右を押すと「とにかく逃げよう!」と主人公が喋るので、主人公に喋らせたい方のボタンを押しながらAボタンでそのセリフを喋らせます。

 選んだセリフによってヒロイン達の好感度が変わってくるなどして、最終的なエンディングが変わる仕様みたいです。ただ、チュンソフトのサウンドノベル(『弟切草』や『かまいたちの夜』)のように遊ぶたびにストーリー展開が大きく変わるということではなく、基本的なストーリーの流れは共通で、主人公達が訪れる場所や終盤の展開が変わるという仕組みのようです(エンディングは5種類)。


 個人的には……もうちょっと「自分の選択肢によってストーリーが大きく変化する」実感を味わわせて欲しいなとは思いました。「自分が主人公を動かしている」カンジがしないと、「普通にラジオドラマを聴けばイイのでは?」と思われてしまう致命的な部分なので。
 サウンドノベルのような文章とちがって、音声でストーリーが進む今作は容量の問題もあって「様々なストーリー展開」を入れづらかったのだろうとは思うのですけどね(実際、『リアルサウンド』はシリーズ作品になる予定で続編の広告も出ていたのだが、音声圧縮が上手くいかなくて開発中止になったとの話ですし)。


↓2↓

◇ 音しかないことを活かして、それぞれの「地元の風景」を思い起こさせる
 とは言え、「ラジオドラマ」として考えるととてつもなく豪華な布陣だとも思います。

 脚本の坂元裕二さんは、何といっても1990年代を象徴するドラマ『東京ラブストーリー』の脚本家で、最近では『カルテット』なんかでも高い評価を受けた人ですし。
 音楽の鈴木慶一さんは、はちみつぱいやムーンライダーズで知られる一線級のミュージシャンで。ゲーム好きな人達にとっては『MOTHER』『MOTHER2』などの名前が分かりやすいかも知れませんが、後に『座頭市』や『アウトレイジ』などの北野武監督の映画の音楽も手掛けていますし、最近では『若おかみは小学生!』の劇場版アニメの音楽を担当されていますね。
 EDテーマは、なんと矢野顕子さんの名曲『ひとつだけ』。


 キャスト陣は実写のドラマ・映画などで活躍している人達を起用していて、当時の水準からしても「豪華だなー」と思いましたが、その後に更なるビッグネームになっていく人達です。……ですが、もしこの記事を読んでいるアナタが今後にプレイする予定があるならば、キャストは知らずにプレイした方がイイと思います。
 本来ならばプレイヤー一人一人に「自分だけの主人公像」「自分だけのヒロイン像」を想像させるゲームなので、役者の顔がイメージされてしまうのは勿体ないです。みんなに顔が知られている有名な俳優さんだからこそ、顔がイメージ出来てしまうのがこのゲームにおいてはマイナス点になるという。


 ということで、フルプライスのパッケージソフトで出すんだからそれくらいやってくれなきゃ困るという話なんですが、『Dの食卓』や『エネミー・ゼロ』をヒットさせたワープからこそ実現した「ものすごく豪華なラジオドラマ」と言えますね。


kazereg-4.jpg
<画像はドリームキャスト版『リアルサウンド ~風のリグレット~』より引用>

 ストーリーも「画面がない」「音だけのゲーム」なことを(それなりに)活かしたものとなっています。

 大まかに説明しまうとこんなカンジ。
 東京で大学生をしている主人公:野々村博司の恋人が、ある日突然失踪してしまう。博司と彼女は同じ小学校に通っていた幼馴染だが、小学生の頃にも「駆け落ちの約束をしたのに待ち合わせ場所に彼女が来ずにずっと会えなかった」ことがあった。博司は失踪した彼女を探すため、生まれた町に帰るのだった――――

 ということで、親元を離れて東京に出ていた主人公が、田舎の故郷に帰るという話なんですね。しかし、このゲームは「プレイヤーにラジオドラマの主人公を体験してもらうゲーム」です。描かれる故郷がプレイヤーそれぞれの故郷と遠く離れたものでは、没入感を損なってしまいます。
 なので、例えばスクリーンショットは「主人公が通っていた小学校を大人になった今訪れる」シーンなのですが、当然のように画面には何も映っていないので、プレイヤー一人一人がそれぞれの母校を思い浮かべるワケですよ。自分の思い浮かべた職員室、自分の記憶している体育館……グラフィックがないからこそ自分の記憶の中からそれぞれのグラフィックを引っ張ってきてイメージさせるのです。


 まぁ、その割には「板張りの廊下」とか「海のある町」とか、割と特殊な特徴を描写していて「俺の育った町とちがうぞ!」と思わせるところも多かったですけど……(笑)。


 それはそうと、この時期のゲーム業界って「ノスタルジー」を喚起させるものが一つの流行りだったような気がしますね。このブーム、何がきっかけなんでしょう??

・1997年:『リアルサウンド ~風のリグレット~』(セガサターン)
・1999年:『ファミコン文庫 はじまりの森』(スーパーファミコン)
・2000年:『ぼくのなつやすみ』(プレイステーション)


 このゲームをプレイし終えた後、色んな人の感想を見たくてネットでレビューを読み漁ったんですが……賛否両論真っ二つで、「賛」の人はこの「小学生の頃の淡い初恋を思い出させるストーリー」について言及する人が多かったですね。ストーリーがメインのゲームなので、評価のポイントはストーリーになるのは当然のことで。

 私は、実はここがあんまりで……「画面が出ないゲーム」「音だけのゲーム」という斬新さは評価したいし、この方向性はもっともっと可能性があると思うんですけど、ストーリーがちょっとありきたりに思えてしまった(20年前のゲームにこれを言うのもあんまりだとは思いますが)のと、終盤が「終わりそうで終わらない」時間がダラダラと続いていたことでそこまで「賛」にはなれませんでした。
 飯野さんはファミ通にこのゲームを評価するなら「10点」か「評価不能」にして欲しいと仰ったらしいのですが、私がもしレビュアーだったら「7点」くらいの微妙な点数を付けたと思います。意気込みは買う!この方向性は支持したい!でも、そこまでは面白くはなかった!


↓3↓

◇ 良くも悪くも「遊ぶ人の気持ちを考えない」飯野さんの作家性を許容できるか
 んで、まぁ……ここなんですよね。

 飯野さんの有名な逸話の一つに、宮本茂さんの『スーパーマリオ64』について「開発途中のものは自由で良かったが、製品版はスターを集めるだけのゲームになってしまった」と批判して、宮本さんに「それは僕の仕事ではなく、飯野くんや飯田(和敏)くんがやること」と言われた―――というものがあるんですけど、この『リアルサウンド ~風のリグレット~』をプレイしてそのやり取りの意味がようやく分かりました。


 宮本さんのゲームは、任天堂の新型ゲーム機を買ってもらうためのソフトであって「大勢に売れる」必要があって、そのためには「分かりやすく」「プレイヤーを導く」必要があるんですね。だから、スター集めという分かりやすい目標をプレイヤーに提示するワケですし、宮本さんはゲームソフトを「自分達が作った作品」とは呼ばずに「お客さんに買ってもらう商品」と呼ぶんですね。

 一方の飯野さんは、「刺さる人に刺さればイイ」というゲームを作るので、「プレイヤーを突き放す」ことをしてまで自分の作家性を貫くことが多いんですね。
 例えば、『Dの食卓』には「セーブ機能がない」「ゲーム開始から2時間経ったら強制終了で最初から」「がんばって終盤まで行ってもワンミスで容赦なくバッドエンド」という普通では考えられないような仕様でしたし。『エネミー・ゼロ』も頑なに難易度を下げずに発売して賛否両論になりましたし。「お客さんが遊びやすいように」なんて考えずに、「ついてきたいヤツだけついてこい!」ってスタンスの人なんですよね。


 故に、この『リアルサウンド ~風のリグレット~』もとにかく遊びづらい……
 「画面がない」からとか、「音しかない」からとかでなく、根本的なところで「お客さんが遊びやすいように」なんて考えていないのです。

 このゲーム……ええっと、記事冒頭では「ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください」とクリア時間を隠していたんですけど、もうここには書いちゃってイイですよね。説明書にも書いてあるのだし。1周クリアまでにおよそ4時間かかります。2時間で終わった『Dの食卓』とちがって、流石に「セーブ機能なし」はマズイだろうとオートセーブ機能が付いているのですが。

kazereg-5-2.jpg
<画像はドリームキャスト版『リアルサウンド ~風のリグレット~』説明書より引用>

 説明書にドヤ顔で「オートセーブにしました」とか書いてあるのよ!
 セーブ機能が付いていることくらい普通だから!普通のゲームなら付いているから!

 それでも「出来ればセーブ機能を使わずに一気にプレイして欲しい」とも書いているし、そもそもこの「オートセーブ機能」がどこでセーブされているか分からないのでやめづらい!セーブされたと思って再開したら10分前からやり直す羽目になったみたいなこともあるそうですし、終盤は選択肢が1つもないまま1時間くらい進むので「トイレに行きたいけど席を立つこともできない」時間が続きます。

 普通のアドベンチャーゲームなら「任意セーブ」をいくつも記録できるので、「選択肢によってストーリーが分岐する前」にセーブして次はそこから再開とかが出来るのですが……このゲームは「オートセーブ」な上に、「選択肢を選んだ後」で強制セーブされるそうなので、選択肢から再開ということは出来ません。
 1周目のエンディングを迎えて、別のエンディングを観たい時も、毎回ゲームの最初からプレイしなくてはならないのです。早送りみたいなものはありませんし、フローチャートみたいなものももちろんありません。毎回必ず最初から4時間かかるプレイをしなくてはならないのです。エンディングを除けばストーリー展開はだいたい似たような展開をしていくゲームなのに!


 『Dの食卓』はまだ「1周目で得た知識」を「2周目で活かす」といったように、「不自由さ」がゲームの面白さに繋がっているところがあったのですが……『リアルサウンド ~風のリグレット~』は、ただただ「不自由」なだけ。「ラジオドラマやドラマCDの主人公になれるゲーム」と書いたのですが、ドラマCDなら「再生するトラックを選べたり、早送りしたりできる」から気楽に再生できますよ!

 そのため、私は1周目でハッピーエンドを迎えたら2周目を遊ぶ気にはなれませんでした。流石にまたほぼ同じ話を4時間聴くのはしんどいです。ストーリーを忘れた5年後くらいにプレイするのはイイと思いますけど……


 ただ、それも飯野さんの作品の魅力の一つなんですよね。
 賛否両論の「賛」の人達はそこも含めて好きなんだろうし、私も『Dの食卓』では「その不自由さが面白いんだよ!」と言っていたので気持ちは分かります。ダウンロード専用ソフトとかインディー制作のソフトが大ヒットするようになった2010年代にゲームを作っていたなら、どれだけ尖ったゲームを作っていたんだろう……と、若くして亡くなられたことを心から惜しく思います。



◇ 結局、どういう人にオススメ?
kazereg-6.jpg
<画像はドリームキャスト版『リアルサウンド ~風のリグレット~』より引用>

 「斬新なゲーム体験」のために、4時間テレビの前に座る覚悟がある人ならば……最低でも1周は楽しめると思うのでオススメです。今、なかなか据置ゲーム機を4時間遊ぶって難しいとは思うのですが……逆に考えると、「画面のないゲーム」なので4時間ぶっ通しでプレイしても目は疲れません!(笑)


 でも、マジメな話……「画面を使わないゲーム」って、スマホが普及した今ならもっと活きそうなアイディアだと思うんですよねぇ。例えば、スマホを出すこともできないような満員電車の中でもイヤホンを付けて遊べるワケですし、勉強しながら、家事をしながら、お風呂に入りながら、好きな時に遊べるゲームになりうるワケで(今なら音声入力で操作することも出来るでしょうし)。
 ジャンルを考えても、このゲームのような「選択肢を選ぶだけのアドベンチャーゲーム」だけでなく、アクションゲームだって、RPGだって、シミュレーションゲームだって、自由じゃないですか。『ラブプラス!』みたいな恋愛ゲームでも面白そう。電話でしかコミュニケーションが取れない彼女と会話する疑似体験ができる!テレクラかな!?


リアルサウンド風のリグレット
Posted with Amakuri
¥800
売上げランキング: 7108
リアルサウンド風のリグレット
Posted with Amakuri
¥5,980
売上げランキング: 31819

| ゲーム紹介 | 17:49 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

≫ EDIT

『白衣性愛情依存症』紹介/なんだか…想像してたのと全然ちがうぞっ!

2018101823101000-7236C468C03A7F414FA188ADBB94FD03.jpg
<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
「男が出ない百合」どころか、「男が存在しない世界の物語」
ポンコツ「アホの子」主人公:大幸あすかが可愛い
「看護学生の日常を描いた作品」とも「可愛い女のコ達のイチャラブ」ともちがう…何だこれ


『白衣性愛情依存症』
・発売:工画堂スタジオ
 PlayStation Vita版:2015年4月30日発売、パッケージ版5800円、DL版4800円
 Windows 7/8/10版:2015年12月25日発売、パッケージ版8800円
  ※グッドエンド後を収録した録り下ろしドラマCDなどの特典が付く
 Steam版:2016年7月7日発売、DL専用4400円
 Nintendo Switch版:2018年5月24日発売、DL専用4800円
  ※ スクリーンショット撮影可能、動画撮影可能
公式サイト
・テキストアドベンチャー
・セーブスロット数:64


<PVはPlayStation Vita版のものです>
 私の1周クリア時間は約08時間でした
 全エンディング到達にかかった時間は約20時間でした
 ※ネタバレ防止のため、読みたい人だけ反転させて読んでください


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:◎(グッドエンドに到達すればそこまでだけど、バッドエンドが…)
・恥をかく&嘲笑シーン:◎(良いシーンだけど、共感性羞恥の人にはきついシーンかも)
・寝取られ:○(寝取りですよね、コレ)
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:△(欠損はないです。人が刺されたりするけど)
・人が食われるグロ描写:◎(食われるワケではないけど、食うシーンがある!)
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:◎(百合ゲーですよ?)
・BL要素:×
・ラッキースケベ:○(おっぱい触っちゃう程度ですが…)
・セックスシーン:○(直接的な描写はないけど、事前・事後をにおわす描写がそれなりに)


↓1↓

◇ 「男が出ない百合」どころか、「男が存在しない世界の物語」
 このゲームを開発・販売している工画堂スタジオという会社は、実は創業100年を超える歴史のある会社で、ゲーム制作も1980年代からPCゲームを中心に行っている老舗メーカーだったりします。
 ゲーム機用に移植されたものや、ゲーム機用に作られたものは多くないので、ゲーム機だけを遊んでいた私みたいなゲーマーにはあまり馴染みのある名前じゃありませんでしたが……初期の『Emmy』という作品は、1984年のPCソフトながら女性キャラとチャットして親密度を上げてエッチな絵を見る「ひょっとしたら世界初のギャルゲーでは?」と言われている作品なんですって。

 2011年、社内チーム「しまりすさんちーむ」のデビュー作となる『白衣性恋愛症候群』(通称:『白恋』)がPSP用ソフトとして発売されます。これは恐らく、2007年に発売したPC用ゲーム『ソルフェージュ』を2008年にPSP向けに移植して成功したことが大きかったんじゃないかと推測できます。「PSPで百合ゲー、行ける!」みたいな。

2018102900452900-7236C468C03A7F414FA188ADBB94FD03.jpg
<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 そして、『白恋』の流れを汲んで2015年にプレイステーションVita向けに発売になったのがこの『白衣性愛情依存症』』(通称:『白愛』)です。名前は似ていますが、前作は病院の看護師が主人公で、今作は看護学校の看護学生が主人公なので、ストーリーは独立しています。実はこの看護学校が前作キャラの一人の母校だったみたいな小ネタがあったりもしますが、特に知らなくても問題はなさそうです。
 その後、PC版、Steam版、Nintendo Switch版と移植されて―――この多機種路線を引き継いでか、この「しまりすさんちーむ」の3作目『夢現Re:Master』は2019年2月にVita/PS4/Nintendo Switch/Windows/Steamの同時期発売が発表されています。こちらは病院や看護学校を舞台にした『白衣性~』2作から一転、ゲーム会社を舞台にし百合ゲーを作るアドベンチャーゲームになるそうです。対応機種、多いな!ありがたいけど!


 さて、ここからは今作『白衣性愛情依存症』』(通称:『白愛』)についての話です。
 どうしてわざわざ前作の話とかを書いたのかは後程。

 このゲーム、分類をするなら間違いなく「ゲーム機用ソフトでは珍しい百合ゲー」です。私もカワチさんが書いた以下のタイトルの記事を読んで購入しましたからね。「百合の世界に疎い人でも、百合入門に向いている1作」みたいなね。

 『白衣性愛情依存症』を男女両方の目線でレビュー! 少しでも百合に興味ある人なら誰でも楽しめる!


 ただ、実際にプレイしたら「なんか…思ってたのとちがうぞ」と戸惑いの連発でした。
 「百合ゲー」という言葉だけを見ると「女性同士の恋愛を主題にしたゲーム」とイメージすると思うのですが、共通ルートと言える前半は特に“恋愛”の描写はほとんどなく、「女性しかいない看護学校に入学した主人公達の日常を描く作品」といったカンジでした。普通の女のコ達が看護師になっていく勉強を描き、その厳しさや尊さをリアルに&等身大に描いていっているんですね。
 なので、前半は「百合作品」というより、女のコだけのゆるふわな部活を描いた『けいおん!』系の作品とか、女のコだけで目標に向かって突き進むスポ根の『ラブライブ!』系の作品に近いという印象でした。んで、後半は前半に選んだ選択肢によって各ヒロインの個別ルートに分岐して、そこで“恋愛”をしていくカンジです。「女性しかいない看護学校」だからそりゃ女性同士の恋愛になるよね、という。


 さて……

 「女性しかいない看護学校……?」と思った人は鋭いですね。
 現実の看護学校って多分、男性もいますよね。男性の看護師が存在するのですから。多分。

 しかし、この作品の看護学校には男性キャラがいません。というか、この作品には男性キャラが出てきません。ただの一人も。
 『ラブライブ!』ですら小さな男の子や父親の後ろ姿は出てくるというのに、この作品では子供も老人も全員「性別:女」ですし、もっと言うと「父」や「お父さん」といった単語すらこの作品には出てきません。『ラブライブ!』すらも凌駕する徹底した「男性が排除された世界」なのです。

2018102315504900-7236C468C03A7F414FA188ADBB94FD03.jpg
<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 というのも、この作品世界はiPS細胞によって「女性同士で子作り」が可能になっていて、それが一般的とされているそうなんです。そのため「女性同士の結婚」も普通ですし、「女性同士の交際」だってもちろん普通です。


hakuai1.jpg
hakuai2.jpg
<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 例えば、細かいですがこのシーン。
 ヒロインの一人:さくやの母親が倒れ、さくやと母親の関係をいつきから訊くというシーンなのですが……普通(まだ「女性同士で子作り」が可能ではない私達の現実世界)だったら「母親の話は分かったけど父親はどうしているの?」と言うであろうシーンで、「片親」「もう片方」という言葉を使って性別を言及していないんですね。


hakuai3.jpg
<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 例えば、ここのシーンも……普通だったら「父が○○、母が××」と書きそうなところを、「両親が○○と××」と書いていて、性別をぼかしているのです。男と女の夫婦かも知れないけど、女と女の夫婦かも知れない―――どちらにも取れるようにしてあるんですね。

 これはエンディングまでのガッツリとしたネタバレを含むインタビューで語られていることなんですけど、前々作『ソルフェージュ』ではまだ「女性同士の恋愛」が認められていない世界で、前作『白恋』では男の人は存在しているけど「女性同士の恋愛」「女性同士の結婚」が認められてきた世界で、今作『白愛』でとうとう男の人の存在が確認できない「女性同士の恋愛」「女性同士の結婚」が一般的になっている世界になっている……と、意図的にそういう世界を作ったことが語られています。


 「百合」と呼ばれる作品にも、「男が出てこない百合」と「男が出てくる百合」の二種類があると言われています。
 前者には『ストロベリー・パニック』や『ゆるゆり』があって、後者には『青い花』や『やがて君になる』がありますが――――前者はどうしてもファンタジー色が強くなってしまい、リアリティを求めると後者になっていくと思うんですね。外界から完全に隔離された『ストロベリー・パニック』ですら「高校を卒業したら許嫁(男)と結婚する」みたいなセリフがありますし、男性メインキャラがまったくいない『桜Trick』にも男性モブキャラは出てきます。


 そんな中、この『白愛』は「iPS細胞によって女性同士で子作りができる」という(現実とはちがうという意味での)ウソを一つ作ることによって、「男が出てこない百合」の世界にリアリティを持たせたんですね。
 この発案はどうやら男性ディレクターだったみたいですが、私も同じように男性の百合好きなので気持ちがよく分かります。いっそのこと世界から(自分も含めて)男性が消滅してくれたら、残った女性達が百合ってくれるのでは―――みたいな妄想をすることがあって、その妄想世界を本当に作っちゃったのがこのゲームだと思うんですね。




 ただ、その弊害もあって……
 この『白愛』には男性がいないため、本来なら男性キャラが担うはずの「ナンパ男」とか「酔っ払い」とか「○○の売人」とかも全部女性なんですね。例えばそれが女性らしい「ナンパ男」とか「酔っ払い」とか「○○の売人」とかになっているならともかく、設定上は女だけど台詞や行動はすごく「テンプレな男キャラ」みたいなのばかりで。そこはちょっと工夫がないかなぁと思いました。

 まぁ……よく言われる「女性しかいない街があれば、その街では夜中でも女性が安全に歩き回れるのでは?」「いやいや、女性しかいなくなったとしても女性の犯罪者が増えるだけだ」という議論からすると、男が完全に消滅した世界ではそれがリアルな姿なのかも知れませんが。


↓2↓

◇ ポンコツ「アホの子」主人公:大幸あすかが可愛い
2018102122422800-7236C468C03A7F414FA188ADBB94FD03.jpg
<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 可愛い。


き(気)のせいだ、うん
<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 可愛い。



き(着替えよう
<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 可愛い。


 割とヘビーなストーリーと、なかなかバッドエンドを抜け出せない難易度と……かなり癖があって「好き嫌いは分かれる」ゲームだと思うんですが、このゲームを好きになれるかどうかはやはり「主人公を気に入るかどうか」次第だと思うんですね。私は途中めげそうになったけど、あすかが可愛かったので最後まで付き合うことが出来ました。


2018100422463600-7236C468C03A7F414FA188ADBB94FD03.jpg
<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 大幸あすかという主人公を一言で説明すると「ポンコツお姉ちゃん」です。
 朝は起きれず、身の回りは全て年子の妹任せ、学校の成績も下から数えた方がイイ劣等生―――「何でもできる」上に、「お姉ちゃんのことが大好き」な妹であるなおちゃんが支えてくれているから何とかなっているようなコです。『けいおん!』の平沢唯・憂姉妹のような黄金姉妹ですね。妹であるなおちゃんもヒロインの一人なので、もちろん攻略可能です。

 でも、ポンコツなお姉ちゃんだけど、その前向きさだったり明るさだったりが周囲を引っ張っていってるのも確かで―――そういう意味では『ラブライブ!』シリーズの穂乃果ちゃんや千歌ちゃんみたいな「主人公らしい主人公」と言えるのかも知れません。こんなポンコツだった彼女が……的なストーリーになっていったり、ならなかったりするゲームなので。



 没個性の「どこにでもいる投影型の主人公」というより、個性的な「キャラとして立っている主人公」なので、この主人公を好きになれるかが全て……ということなのか、例えば私服もピンクピンクしていて一番可愛いと思うし、髪型とかも「誰からも嫌われないデザイン」を意識されていると思います。

2018101823274100-7236C468C03A7F414FA188ADBB94FD03.jpg
<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 個人的にすごく好きなのは、「言葉遣いが乱れる」ところ。
 普段は可愛い可愛い声で女の子らしい言葉遣いをしているのだけど、焦ったりすると素が出るのか低い声で荒い言葉遣いになるのが可愛いです。と思ったら、ゆるーいシーンではおばあちゃんみたいな口調になったりして、コロコロ変わる表情と、それに合わせて声優さんのトーンも変わって、日常シーンでも観てて飽きないんですね。
 プレイ時間の大半はこのコと一緒に過ごすのだから、「観てて飽きない」ってのは大事ですよね。スクショ映えするテキストも豊富です。


 あすかを演じる声優さんは浅倉杏美さん。
 『アイドルマスター』の萩原雪歩や、『中二病でも恋がしたい!』のくみん先輩のように、大人しいキャラやおっとりとしたキャラが多い印象の声優さんなので、こういう明るくて元気な主人公らしい主人公は新鮮な気持ちで演じられたのだとか。


2018102916191800-7236C468C03A7F414FA188ADBB94FD03.jpg
2018110102155200-7236C468C03A7F414FA188ADBB94FD03.jpg
<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 脇を固める声優さんは、超甘々な妹:なおちゃん役はスーパー甘々ボイスの加隈亜衣さん、お嬢様:さくやさん役は田村ゆかりさんと、こちらは逆に安定の配役です。特に、加隈亜衣さんの声って私は「たくさんいる声優さんの中でも一番可愛い声」だと思っているので、この声でずっとずーっと「お姉ちゃん大好き」とイチャイチャしてくれたのは眼福・耳福でした。

 どうも、このチームのディレクターさんは「姉妹百合」が好きらしく、この『白愛』もメインヒロイン一番手が妹だし、次の『夢現Re:Master』もストーリーを読む限りは思いっきり「姉妹モノ」っぽいんですよね。うむ!私と気が合うな!


↓3↓

◇ 「看護学生の日常を描いた作品」とも「可愛い女のコ達のイチャラブ」ともちがう…何だこれ
2018110101285700-7236C468C03A7F414FA188ADBB94FD03.jpg
<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 さて、ここからですよ。
 このゲーム、「どういうゲームだったのか」を説明するのが非常に難しいのです……

 もちろんアドベンチャーゲームですから「ネタバレに配慮して書きたいことが全部書けない」というのもあるのですが、ネタバレなんか気にしなくても全ルートをクリアしてもなお「何だったんだこのゲーム…」感が強いのです。


 まぁ、ここはもう「ネタバレ」とか関係なく書いちゃっても構わないと思うので書きますが、このゲーム―――前半はどのプレイヤーも通る共通ルートで「看護学生の日常を描いた作品」なんですね。
 最初に書いたように『けいおん!』とか『ラブライブ!』みたいな雰囲気で私はすごく好きでした。看護婦になるための勉強はすごく大変だけど、入学から、病院実習、夏休みに海に行くとか、文化祭の準備とか……ザ・青春!ってカンジのストーリーが楽しかったです。

 んで、前半に選んだ選択肢によって、それぞれのヒロインの個別ルートに分岐していくのですが……個別ルートに入った途端、看護学校の描写が希薄になるし、「え?この作品ってそういう作品だったの?」と言いたくなる展開になっていきます。
 そして、その個別ルート内の選択肢によって「各ヒロインごとのグッドエンド」「各ヒロインごとのバッドエンド」に分岐するという形なのですが、特にこの「各ヒロインごとのバッドエンド」が……なかなかなものでして。

 他の人のレビューでは「前半と後半でライター変わった?」と言っている人もいたくらい前半と後半の温度差が激しいのです。



 ただ、これはどうやらスタッフの狙い通りみたいなんですよねぇ……
 というのも、ここで前作『白衣性恋愛症候群』(通称:『白恋』)の話が出てくるのですが、前作もまた「可愛い可愛い百合ゲーだよ!」と言っておきながら割とヘビーな話だったため、前作を通過したファンには「どうせまたヘビーな話なんでしょ?」と警戒されているだろうとこういう構成になったそうです。

 ガッツリネタバレ含むインタビューにそのことが書かれているので引用しますが、核心部分はここでは伏字にさせていただきます。

<以下、引用>
みやざー氏「個別ルートに入ったら、◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ながら、それぞれのヒロインと近づいていくので、そこだけ見せると重いゲームになってしまうこともあり、共通ルートは日常の積み重ねでとにかく可愛らしい、とにかく萌えるイベントを多く入れようということにしました。」

向坂氏「共通ルートが長いというのにも関わってくると思うのですが、みやざーさんからは「白恋」のファンの方たちは絶対“キラ☆ふわ”だとは信じてくれずに入ってくるだろうから、そんな人ですら「今回は本当に“キラ☆ふわ”なの?」と油断してしまうくらい、共通ルートは影が一切無い、明るくふわふわ、ゆるゆる、萌え萌えでいきたいという話がありました。それを受けて、夏の海のような季節イベントを充実させたりといったところにつながったのかなという気もします。」

みやざー氏「そこまでの溜めがあるからこそ、◆◆◆◆◆のシーンが映えるだろうと。」

</ここまで>
※ 強調・伏字など一部手を加えています


 つまり、本当に描きたいのは「個別ルート後の後半」なのだけど、それを衝撃的に見せるために「共通ルートの前半」は平和に描いたとのこと。この手法……ネタバレになるから具体的な作品名は挙げませんが、ゼロ年代の鬱アニメで見たことある!

 なので、例えばこの記事の序盤で紹介したカワチさんのレビューとかが象徴的なんですけど、このゲームを紹介する人って「共通ルートの前半」にしか触れずに「個別ルートの後半」には一切ネタバレしないようにする人が多いのです。それも一つの手だと思いますし、「後半に衝撃的な展開が待ってるよ!」と紹介するのは作品の魅力を損なうんじゃないかと迷ったんで、「このゲーム、「どういうゲームだったのか」を説明するのが非常に難しいのです……」と書いたのですが。



 ぶっちゃけ、このゲームの魅力を語るに「衝撃的なバッドエンド」に触れないワケにはいかないと思うんですよ。

 私、最初に到達したエンディングが「先生ルートのバッドエンド」だったのですが、その時点では「グッドエンド/バッドエンド」の仕組みも分かっていなかったので、「ひょっとしてこのスタッフはこれをハッピーエンドだと思って作っているのか……?」と震えました。

 全ルートをクリアした後、ネット上を周って色んな人のレビューを読んでもみんな、「○○のバッドエンドがキツかった」「私は◆◆のバッドエンドが一番つらかった」「△△のバッドエンドはある意味では一番幸せなのでは?」みたいにバッドエンドについて熱く語っているし。あすかを演じた浅倉さんですら全ルート制覇後に解禁されるオマケメッセージで「○○のバッドエンドを演じてから×××が食べられなくなった」と言っていて。


 このゲームを語る人は、みんな「どのバッドエンドがキツかった」と語る時が一番熱量が上がるのですよ。かく言う私も先月の活動報告では、「先生ルートのバッドエンド、ひどすぎるでしょ!」と書いていましたし(笑)。私、チュンソフトのサウンドノベルとかケムコのデスゲームものとかを結構遊んでいて「惨たらしいバッドエンド」には耐性が出来ていると思ってたんですけど、またそれとはちがう心にダメージが来るバッドエンドだったというか。

 それってやっぱりこのゲームの欠かせない魅力の一つだと思うんですね。
 そんなにみんなが熱く語りたがるのだから。

 だからまぁ、最初のVita版の発売から3年半、最後のNintendo Switch版の発売から半年近くが経過しているのだから、これくらいまでなら書いてもイイかなぁと書くことにしました。



2018102901245600-7236C468C03A7F414FA188ADBB94FD03.jpg
<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 ただ、「衝撃的なバッドエンド」に比べて「グッドエンド」がイマイチ地味というか記憶に残らないというのが若干の不満ですかねぇ。まぁ、「グッドエンド」とは得てしてそういうものなのかも知れませんが、「やっぱりそうなるよね」以上のものがない、予想できる未来しか与えられなかったというか。
 そういう意味では、一人のルート(ネタバレになるので文字反転させますが、さくやさんルート)は予想を上回る展開をしていって面白かったです。最後に「そうなるのかー」と思わせるのも美しい着地点だったと思います。

 また、このゲームもう3年半も前のゲームなこともあって、サイト上で行われた特別企画なんかも残っていて……各ヒロインのグッドエンド後の「その後どうなったか」を描いたオマケストーリーが公式ブログに掲載されていたりもします。当然ゲームラストのネタバレを含むので、まだゲームをプレイしていない人は読んじゃダメよ?さくやルートなおルートいつきルート

 書いているのはゲームと同じライターさんなのでストーリー的に破綻もありませんし、面白いです。なおちゃんルートはこれを読んで「ようやく報われた」という気になれました。


◇ 結局、どういう人にオススメ?
2018103022493100-7236C468C03A7F414FA188ADBB94FD03.jpg
<画像はNintendo Switch版『白衣性愛情依存症』より引用>

 ということで、このゲーム「前半」と「後半」でテイストが変わるので「どういう人にオススメ」って言いづらいんですよねぇ。「前半が好きな人」には後半はヘビーだろうし、「後半が好きな人」には前半は長ったらしく思えるだろうし。

 ただ、そもそもチュンソフトが『弟切草』を作ったころからマルチシナリオのアドベンチャーゲームは「様々なテイストの話が入っているゲーム」だったようにも思えます。それはまぁ、ルートによってテイストが変わるという意味であって、前半と後半でテイストが変わるという意味ではないのですが(笑)。

 「様々なテイストの話が入っているアドベンチャーゲーム」を求めている人には、このゲームもオススメかなと思いますね。あとは、「男性が完全にいなくなった世界」を見てみたいという人にもオススメかな!これは俺が夢見た「俺達がいない世界」だ!早く死にたい!


白衣性愛情依存症 - PS Vita
Posted with Amakuri
¥5,530
売上げランキング: 15174

工画堂スタジオ 白衣性愛情依存症 PC普及版
Posted with Amakuri
¥5,694
売上げランキング: 3898
グッドエンド後を収録した録り下ろしドラマCDなどの特典が付く

白衣性愛情依存症 ホワイト・メモリアル ([バラエティ])
Posted with Amakuri
¥3,456
売上げランキング: 609258
ファンブック

| ゲーム紹介 | 17:50 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

| PAGE-SELECT | NEXT