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『兄の嫁と暮らしています。』1~3巻が面白い!/この感情は「百合」なのか、何なのか

 「漫画紹介」や「この漫画が面白い!」のカテゴリーで紹介する漫画は、「私がハマったもの」でなければ紹介しないのはもちろんなのですが、ブログに「オススメだよ!」という記事を書く以上は「その作品がどういう作品なのか」をある程度は見極めないと書けません。

 この作品はちょっと前からハマっていたんですけど、2巻のラストで「え?え?このシーンってそういうことなの?」と確信が持てなかったので、3巻の発売を待って、3巻を読んで「やっぱりそういうことか」と確認してから書くことにしました。
 このブログで「現在3巻が出たばかり」くらいの漫画を紹介することが多いのは、そういう理由なんですね。


【三つのオススメポイント】
・「他人」だけど「家族」になって生きていく
・ヘビーな境遇を周りから支えてくれるサブキャラクター達
・本人にもまだ分からない「百合」なのか「家族愛」なのか微妙な感情


【紙の本】
兄の嫁と暮らしています。(1) (ヤングガンガンコミックス) 兄の嫁と暮らしています。(2) (ヤングガンガンコミックス) 兄の嫁と暮らしています。(3) (ヤングガンガンコミックス)

【キンドル本】
兄の嫁と暮らしています。 1巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス) 兄の嫁と暮らしています。 2巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス) 兄の嫁と暮らしています。 3巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:◎(そもそもが「兄が死んだ」から始まる設定なので)
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:×(今のところは…)
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:△(グロくはないけど虫と戦う回はあるw)
・百合要素:○(百合かどうかは確定していないけど、耐性ない人にはオススメしません)
・BL要素:×
・ラッキースケベ:△(風呂に入ろうとしたら既に入ってたというシーンがある)
・セックスシーン:×


◇ 「他人」だけど「家族」になって生きていく
 この作品は、くずしろ先生が2015年からヤングガンガンにて連載している日常センシティブストーリー漫画です。公式サイトにそう書いてあったから載せたのだけど「センシティブストーリー」って何だ?
 その公式サイトから読める読み切り版(設定がちょっとちがうのでプロトタイプみたいな作品だと思います)は「日常ハートフルホームコメディー」と書かれていたので、連載版は読み切り版よりもセンシティブ=繊細な感情を意識して描かれているのかなと思います。


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<画像は『兄の嫁と暮らしています。』1巻Diary.4より引用>

 主人公は、岸部志乃ちゃん。
 17歳(※1)で高校2年生。サバサバしていて、クールに感情を表に出さないタイプ……のように見えて、内心では色々考えているし、時折それが表情に出るところが可愛いです。

 小さいころに両親を亡くしているので、ずっと「兄」と二人暮らしをしていました。


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<画像は『兄の嫁と暮らしています。』2巻Diary.11より引用>

 もう一人の主人公は、岸部希さん。
 24歳(※1)で小学校教師。おっとりしていて、優しくて、清楚で、料理が上手で、おっぱいが大きくて、女子力というか嫁力の塊のような女性です。

 志乃の「兄」と高校生の頃から付き合っていて、社会人になって晴れて結婚しました。



 ということで、「妹」と「兄」と「兄の嫁」という関係性の三人暮らしだったのですが……その家族を繋ぎとめていた「兄」が突如亡くなってしまい、元々は他人だった「妹」と「兄の嫁」だけが残されて二人暮らしを続けているという設定です。

 これ、片方が男だったら「エロゲーかよ!」と言われる設定のヤツですよ!




 でも、志乃ちゃんの方は「たった一人の肉親」を失ってひとりぼっちになってしまい、希さんの方は高校生の頃からの「たった一人愛した人」を失ってしまい―――二人とも行き場のないその気持ちを、「妹」と「兄の嫁」というよく分からない関係性の二人暮らしで埋めているのです。そこにはちゃんと「この二人が一緒に暮らす」という設定の必然性があるのです。


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<画像は『兄の嫁と暮らしています。』1巻Diary.2より引用>

 この「いなくなった兄の存在」というのはシリアスな話だけでなく、ところどころで「ついつい希さんが過去のノロケ話を暴露しちゃって自爆する」というギャグにもなっているのがすごくイイのです。当たり前なんですけど、「兄」が死んだからといって「兄」の話が全てシリアスになるワケじゃなくて、笑い話にもなるんですよね。



 「妹」と「兄の嫁」、「17歳」と「24歳」の女のコ、「ずっと両親がいなくて兄と暮らしてきた妹」と「一人っ子で両親に反発もしてきた嫁」と――――「恋人」でも「姉妹」でもない、歩んできた道がまるでちがう「他人」の二人が、もう今はいない「兄」への想いによって繋ぎとめられて、「家族」になっていくという。その微妙な距離感が溜まらないのです。

(※1:志乃ちゃんの17歳、希さんの24歳という設定は公式サイトやコミックスの説明文にそう書いてあるからそのまま載せたんですけど……志乃ちゃんの誕生日は3月で、高2なのは確定しているので、恐らくは作中の年齢は16歳ですよね。後輩がどうのって話があったので留年という可能性もなさそうですし。
 希さんの方も「教員2年目」という話があって、誕生日が10月なのでこちらも多分23歳じゃないかなと思われます。こちらは浪人や留年の可能性もゼロじゃないですけど、)




◇ ヘビーな境遇を周りから支えてくれるサブキャラクター達
 しかし、よくよく考えなくてもこの主人公達の境遇は相当ヘビーです。
 志乃ちゃんからすると、小さいころに両親が死んで、親戚達からはほぼ絶縁されてて、それでも兄が必死に高校に通いながらバイトなりして育ててくれて、その兄も就職して結婚してようやく幸せな時間が送れるかと思ったら過労で死んでしまって、もう誰も残っていないと思ったところ「兄の嫁」だけが残ってくれて――――


 全面的に暗い話ばかりになってもおかしくないと思うのですが、明るい話として読めるのは「この主人公達の周りにいるキャラクター達」が善い人ばかりだからなんですね。



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<画像は『兄の嫁と暮らしています。』2巻Diary.15より引用>

 このキャラを一番最初に挙げるのもどうかと思うんですが……(笑)。
 私がとても好きなのが、目時先生です。志乃ちゃんの通う高校の先生なんですが、その高校は「兄」や希さんがかつて通っていた高校でもあって、目時先生は当時の二人を知っているんですね。


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<画像は『兄の嫁と暮らしています。』2巻Diary.15より引用>

 だから、志乃ちゃんの前では「しっかりしたおねえさん」な希さんも、目時先生の前では「生意気な生徒」に戻って軽口を叩いたりするのがすごく好きです。目時先生の方もすっごく強面で、志乃ちゃんも希さんも「生意気な生徒」だと思うのだけど、さりげなく気にかけているところが立派な先生だなーと思いますし。



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<画像は『兄の嫁と暮らしています。』1巻Diary.6より引用>

 志乃ちゃんの幼なじみで同級生の、みなとと翔太郎のコンビもイイキャラしています。
 みなとはバレー部のエースでさっぱりした性格で、翔太郎はイケメンなのにゲームヲタク(特に美少女ゲームが中心)で美少女ゲームをソースにした教訓めいたことを言ってくるのが残念なコです。

 というか、翔太郎がゲーム好きだからか何なのか、このゲーム油断するとやたら『パワプロ』ネタがぶち込まれているのは何故なんでしょう!
 キャラクター達も別に「64で『パワプロ』」な世代ではないと思うんですけど!64って20年前のゲーム機ですよ、17歳の志乃ちゃんや翔太郎がどうして64を「思い出のゲーム機」として遊んでいたのか!……でも、そうか。古いゲーム機の古いゲームソフトを中古か何かで買って遊んでたと考えると、志乃ちゃんの野球知識が「野茂」とか「川相」とか90年代に偏っているのも分からなくはないか(笑)。



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<画像は『兄の嫁と暮らしています。』1巻Diary.4より引用>

 希さんは小学校の教師でもあるので、同僚の先生とか、生徒も登場します。
 それの何が重要かというと……同じ家で暮らしている志乃ちゃんと希さんですけど、志乃ちゃんが友達に見せる顔とか、希さんが同僚の先生に見せる顔はまた別にあって。そこに二人がそれぞれ相手に言えない本音と、更に本人にもよく分かっていない迷いのようなものが見えるからなんです。

 どんな立体物も一つの面からではその形がよく分からず、色んな方向から見ることでその立体的な形が分かるように……志乃ちゃんと希さんの関係も、お互いはお互いの一面しか知らないのだけど、実は色んな形をしていることに気づいていく話だと思うんですね。




◇ 本人にもまだ分からない「百合」なのか「家族愛」なのか微妙な感情
 私がこの作品を知ったのは、どこかのサイトで「百合漫画」と紹介されていたからです。
 しかし、この作品を実際に読んだ私の感想は「この作品を百合漫画ってカテゴリーで紹介しちゃダメじゃね?」でした。


 それは別に「百合」というカテゴリーを下に見ているとかそういうことではなくて、この作品の一番の肝は主人公である志乃ちゃんにすら「希さんに対する気持ち」の正体が何なのかがよく分かっていないことだと思うんですよ。

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<画像は『兄の嫁と暮らしています。』1巻Diary.8より引用>

 志乃ちゃんは、気付いているのです。
 「死んでしまった旦那の妹」なんか放っておけば、希さんは幾らでも新しい恋を見つけられるし、幾らでも新しい幸せを手に入れられるということを。


 その「捨てられたくない」負い目というのは、「家族愛」なのか「恋愛」なのか―――
 志乃ちゃんにもまだ答えが出せていない以上、「この漫画は百合漫画だ」とカテゴライズしてしまうのは野暮だと思うんですね。例えば、「百合漫画だ」とカテゴライズされた時点で、男女でくっついて「めでたしめでたし」というラストは許されなくなってしまいますが、現時点ではまだまだ「志乃ちゃんが翔太郎とくっつくラスト」も「希さんが藤先生とくっつくラスト」も全然あると思いますからね。



 一緒に暮らしている人を大切に想うこの気持ちは、「家族愛」なのか「恋愛」なのか―――もう一人の主人公である希さんの方は「姉妹」になりたいことを繰り返し強調していて、時折それが志乃ちゃんにはグサリと来るんですね。

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<画像は『兄の嫁と暮らしています。』2巻Diary.19より引用>



 ということで、今この流れを書いていて思ったんですけど……


 この作品、女同士版『エロマンガ先生』なんですね。

 「他人」が「家族」になる話で、それが「恋愛」なのか「家族愛」なのかの気持ちがすれちがって、主人公が素直になれないのが読者としてはもどかしくて、ヘビーな境遇なのに登場人物みんな善い人なので明るくて楽しい話で、そして何より主人公の職業が「先生」と呼ばれる職業だ!!(無理矢理感)




 ということで、「センシティブストーリー」というのは、この微妙な関係性と距離感の間に揺れる繊細な感情を描いている作品だってことだと思います。どういう結末になるかは分からないのですが、そのドキドキ感も含めて今私がイチオシしたい作品です。

 公式サイトにはバックナンバーとして1~3話と、プロトタイプとも言える読み切り版が掲載されているみたいなんで、気になった人はまずこちらをどうぞ。2017年8月1日現在、キンドル版は1巻が半額みたいなんで「とりあえず1巻だけ」手に取ってみるのもイイと思いますよ!

| この漫画が面白い! | 17:56 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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『三ツ星カラーズ』1~3巻が面白い!/クソガキ女子小学生ってやっぱりかわいくて面白い!

 2017年一発目の漫画レビューはこちらです!
 「買ったままずっと読んでいなかった」のだけど、このタイミングでこの作品を読めて本当に良かった!


【三つのオススメポイント】
・上野の街を舞台に、女子小学生3人が走り回る!
・クソガキだけど、女子小学生ってやっぱりかわいい!
・大人たちも楽しそうでワクワクする!


【紙の本】
三ツ星カラーズ (1) (電撃コミックスNEXT) 三ツ星カラーズ (2) (電撃コミックスNEXT) 三ツ星カラーズ3 (電撃コミックスNEXT)

【キンドル本】
三ツ星カラーズ1<三ツ星カラーズ> (電撃コミックスNEXT) 三ツ星カラーズ2<三ツ星カラーズ> (電撃コミックスNEXT) 三ツ星カラーズ3<三ツ星カラーズ> (電撃コミックスNEXT)


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:×
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×


◇ 上野の街を舞台に、女子小学生3人が走り回る!
 この作品は、月刊コミック電撃大王にて2014年からカツヲ先生が連載しているショートギャグ漫画です。

 『ひとりぼっちの○○生活』1~2巻が面白い!/作れ!友達ハーレム!

 カツヲ先生の作品と言えば、このブログでも猛プッシュしている『ひとりぼっちの○○生活』が有名ですが、作品としての方向性は対照的です。

・『ひとりぼっちの○○生活』は4コマ漫画、『三ツ星カラーズ』は普通のコマ割りの漫画
・『ひとりぼっちの○○生活』は笑いあり涙ありな総合力が魅力、『三ツ星カラーズ』はギャグ一点突破
・『ひとりぼっちの○○生活』は友情賛歌であり“良い子”たちの話、『三ツ星カラーズ』は“クソガキ”たちのいたずら話
・『ひとりぼっちの○○生活』はどんどん友達を増やしていく話なのでキャラが増えていくけど、『三ツ星カラーズ』はずっと同じメンバーでの日常が描かれる


 「女のコの可愛さ」とか「ちょっとブラックなギャグ」とか「オチに対するフリの構成が何気にしっかりしている」とかの共通点ももちろんあるので、そこが作者ならではの“個性”となっているのですが……その“個性”以外の部分は見事なまでに対照的なのが面白いですし、その作風の“幅”はすごいなと思います。普通なら「4コマ漫画」と「普通のコマ割りの漫画」の両方を描くのですら難しいのに。

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<画像は『三ツ星カラーズ』3巻25話「クリーンアッププロジェクト」より引用>

 この作品をスーパー分かりやすく説明するのなら、『苺ましまろ』のキャラで描く『よつばと!』です。憎たらしいクソガキ感あふれる女子小学生3人が、街中を走り回って「面白いもの」に出会っていく作品です。

 一つの作品を紹介するために他の作品を引き合いに出すのは私はあまり好きではないですし、レビューなどを見るとやはりその2作品からの影響とかパクリだとかと指摘する人が多くてイヤんなるのですが……この作品は、『苺ましまろ』や『よつばと!』と同じ雑誌で連載されている作品なので、恐らく編集部レベルでポスト『苺ましまろ』・ポスト『よつばと!』を意識して企画していると思うんですね。

 「雑誌の色」として意図的に企画された作品をパクリだって言っちゃうと芳文社の日常4コマとかも全部パクリになっちゃいますし、ここは「電撃大王の伝統的な系譜」と言っておくべきじゃないかなぁと私は思います。



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<画像は『三ツ星カラーズ』1巻6話「どうぶつえん」より引用>

 しかし、もちろんこの作品には“この作品ならではの魅力”もあって、その一つが「上野」という街を舞台にしているところだと思います。

 アメ横、上野動物園、不忍池、そしてごくごく稀に秋葉原……などなど。
 東京になじみのない人でも名前くらいは聞いたことがあるであろう場所が舞台になっていて、“どこかは分からない県”が舞台になっている『よつばと!』や“静岡県”が舞台になっている『苺ましまろ』とちがって“都会”が舞台だし、この子たちは“都会っこ”で、放課後の遊び場所がアメ横とか上野公園とかなんです。


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<画像は『三ツ星カラーズ』2巻17話「大佐撮ってるカー」より引用>

 “都会”が舞台でも子どもたちは元気に走り回り、商店街には活気があって、大人もいっぱい笑顔で――――読んでいると、どんどんこの街が好きになっていくんですね。あくまで「家」を中心に描かれる『よつばと!』や『苺ましまろ』とちがうのは、こんな風に「街」を中心に描いているところかなぁと私は思います。

 あと、上野が舞台ということもあって「パンダ」がモチーフになっているものも多々出てくるので、パンダが好きな人にもオススメ!



◇ クソガキだけど、女子小学生ってやっぱりかわいい!
 同じ作者の『ひとりぼっちの○○生活』が「登場人物みんな良い子」なのとは対照的に、こちらの作品の主人公となる女子小学生3人組“カラーズ”は基本的にやかましくていたずらばかりするクソガキ集団です。

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<画像は『三ツ星カラーズ』3巻25話「クリーンアッププロジェクト」より引用>

 結衣は3人の中では比較的マジメだけど、こんな風に「しょうがないなぁ」と言って一緒になって色々やってしまうコです。“カラーズ”の中では赤担当で、リーダー。


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<画像は『三ツ星カラーズ』2巻12話「花よりベビーカステラ」より引用>

 さっちゃんは3人の中で一番「クソガキ」感が強くて、やかましくて行動力のあるコです。どことなく『苺ましまろ』の美羽っぽい。果物屋の娘で、“カラーズ”の中では黄色担当です。


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<画像は『三ツ星カラーズ』1巻4話「かくれんぼ」より引用>

 私の推しキャラは琴葉です。黒髪ロングで、いつもオシャレな帽子とポーチとワンピースで「お嬢様」っぽいルックスなのに、3人の中で一番「ブラック」で「残虐的なものが大好き」で「携帯ゲーム機で遊んでいる」というコです。でも、「ゲームのせいで性格が歪んだ」のではなく「元からこう」という本人談(笑)。この子がたまに子どもらしい表情を見せる時がかわいい。“カラーズ”の中では青担当です。




 とまぁ、ここまでいつも以上に引用する画像を多めにさせてもらったのですが、ここまでの画像を見てもらえば分かるように女子小学生達の服が毎回ちがっていて、どれもかわいいのです。それでいて服装がキャラごとに個性があって(結衣は優等生っぽい服、琴葉はお嬢様っぽいワンピースが多いなど)、琴葉に至っては毎回帽子とかポーチとかも凝っていて、見てて飽きません。

 中身はどーしようもないクソガキどもなのに、すんごいかわいい服をオシャレに着こなしているために「あー、やっぱり女子小学生ってかわいいなぁ」と思わされてしまうあたりは、確かに『苺ましまろ』っぽくはあります。



 それじゃー「ロリコン御用達マンガ」なのかっていうと、パンチラなどの性的な描写は一切ないし、『苺ましまろ』の伸ねえのような「かわいい女のコを愛でるロリコン風のキャラ」もいないし、徹底して性のにおいが排除されている漫画だと思います。そもそもこの子らが何年生なのかもよく分かりませんしね。

 この辺は『よつばと!』のよつばや恵那が「性の連想をさせないデフォルメされた子ども体型」として描かれているのに近いですね。そこが逆に興奮するという人もいるかもですが(笑)、『三ツ星カラーズ』は「エロくてかわいい」ではなく「子どもらしくてかわいい」を追及した作品じゃないかなと思います。


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<画像は『三ツ星カラーズ』2巻12話「花よりベビーカステラ」より引用>

 それは、さっちゃのお母さんのこのシーンにも見て取れます。
 この作品の「かわいい」はあくまで母親が娘に対して思う「かわいい」なんだ……というか、さっちゃんあんなクソガキなのに、母親からすればやっぱり「かわいーねぇ」という存在なんですね(笑)。



◇ 大人たちも楽しそうでワクワクする!
 この作品の主人公たちは“カラーズ”という女子小学生3人組ですが、上野という「街」を舞台にしていることもあって大人たちもサブキャラクターとして登場します。


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<画像は『三ツ星カラーズ』1巻9話「まんなかのめさがし」より引用>

 まずはアメ横でなんかよく分からないものを売っている「おやじ」。
 上野の街を守りたい“カラーズ”に事件を提供してくれたり、おもちゃをくれたりする、“カラーズ”の一番の遊び相手です。毎回変なサングラスを付けているのが特徴。


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<画像は『三ツ星カラーズ』2巻14話「ミジン子」より引用>

 次に“カラーズ”の宿敵である「斎藤」。
 交番勤務のおまわりさんなので、上野の街を守りたい“カラーズ”の目の上のたんこぶです。“カラーズ”のいたずらは主にこの斎藤に向けられたもので、斎藤も斎藤で子ども相手に本気で応戦するのでいつもバトルをしています。


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<画像は『三ツ星カラーズ』3巻27話「バイトっす」より引用>

 そして、パン屋の娘「ののか」。
 かわいい。友達がバイトしているというので多分高校生、セーラー服にエプロン姿がかわいいです。“カラーズ”をかわいがっているのだけど、ちょっと抜けているところがあるので“カラーズ”からはなめられています。そこもかわいい。



 とまぁ……
 言ってしまえば、「ジャンボ」「ヤンダ」「風香」なんですが(この他に「あさぎ」っぽいキャラもいる)、先ほども書いたように同じ雑誌のポスト『よつばと!』を意識している作品だと思いますし、子どもを主人公にキャラ配置していくと似たような配置になってしまうのはある程度は仕方ないのかなとは思います。ののかがかわいいので、イイじゃないですか!

 これは『よつばと!』もそうなんですが、大人のキャラがいて、大人の中で子どもである主人公たちが日常を過ごしている姿が描かれると、読者は大人の目線で子どもたちを見られるんですね。『よつばと!』でよつばが悪いことをしたら読者はとーちゃんの目線で叱りたくなるし、よつばがジャンボと一緒に遊んでいる時はジャンボの目線で甘やかしたくなるし。

 『三ツ星カラーズ』も、“カラーズ”がひどいイタズラをしている時は「斎藤」の目線で「このクソガキどもめ!」と思うし、“カラーズ”が誰にも迷惑かけずに楽しそうに走り回っていると「おやじ」の目線で「よーし、次はこのおもちゃをやろう」と思うし、大人キャラがいるからこそ子どもたちの行動にワクワク出来るんですね。




 私は2017年に入ってからどーも落ち込むようなことばかりで、何も上手くいかないなーと心が病みつつあったのですが、買ったまま読んでいなかったこの作品を一挙に読んだおかげで「そうだそうだ!世界ってこんな楽しいんだった!」とすっかり元気になりました。

 こういう作品は貴重なので、雑誌としても大切に育ててほしいし、一人でも多くの人に手に取って欲しいと思います。


 2017年2月1日現在、作者さんのPixivで「1巻の最初の3話」と「2巻の3話」が無料公開されています。この記事を読んで興味を持たれた人は是非どうぞ。

第1話「カラーズ」
第2話「チュカブる」
第3話「お宝さがし」

第10話「特務!隠密行動」
第11話「公園の真ん中で昼寝した子供」
第14話「ミジン子」

 今見ると、最初の頃は頭身が低いですね。サザエさん時空の作品か思いきや、実はこの子たちって成長している……?
 この6話の中では私のオススメは第14話「ミジン子」です。続きを知らないと楽しめない作品でもないと思うので、どの回からでもどうぞ。

| この漫画が面白い! | 17:59 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

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『かぐや様は告らせたい』1~3巻が面白い!/告白一歩手前というラブコメの一番美味しいところ!

 週刊ヤングジャンプという週刊誌に連載されている漫画なため、刊行ペースが3か月に1冊というハイペースな上、集英社のキンドル本は「紙の本より1か月遅れ」なのでキンドルで読んでいる私が新刊を読む頃には「2か月待てば(紙の本の)次の巻が出る」という状況で……一体どのタイミングで紹介すればイイんだ!と思って紹介できなかったのですが。

 これを紹介しないまま2016年が終わるのもアレなんで、紹介します!
 1月にはもう(紙の本の)4巻が出ちゃいますけどね!



【三つのオススメポイント】
・“恋愛”を描くからこそ、面白いネタが尽きない!
・「主人公がヒロインを好きすぎる」のも「ヒロインが主人公を好きすぎる」のも好きだ!
・天才、ボンボン、お嬢様だらけなのに、どうしてこんなにキャラが愛おしいのか


【紙の本】
かぐや様は告らせたい 1 ~天才たちの恋愛頭脳戦~ (ヤングジャンプコミックス) かぐや様は告らせたい 2 ~天才たちの恋愛頭脳戦~ (ヤングジャンプコミックス) かぐや様は告らせたい 3 ~天才たちの恋愛頭脳戦~ (ヤングジャンプコミックス)

【キンドル本】
かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ 2 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL) かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ 3 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:×
・恥をかく&嘲笑シーン:△(恥をかかないように必死になる作品ではあります)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:△(固定観念をネタにしているところはあります)
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:○(グロくはないけど虫と戦う回はあるw)
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:△(本人は自覚していないけど……)
・セックスシーン:×


◇ “恋愛”を描くからこそ、面白いネタが尽きない!
 この漫画は、集英社のミラクルジャンプ→ 週刊ヤングジャンプへと掲載誌を移して連載されているラブコメ漫画で、現在のところコミックスが3巻まで発売されていて来月にはコミックス4巻の発売が予定されています。

 舞台は富豪名家に生まれた者達が集まる超エリート校:秀知院学園という高校で、主人公はその超エリート校の中でもトップ2の超天才の生徒会長と副会長という男女です。絵に描いたような「お金持ち学校」なため、出てくるキャラはちょっとしたモブみたいなキャラでも「社長の子ども」と徹底しています(例外はあるんですが、それはまた後で)。

 そんな超エリートの中のエリートな2人ですから、非常にプライドが高く。
 お互いにお互いを「そっちがどうしても付き合いたいと告白して来たら付き合ってやってもイイかな!」と思っていたのだけど、どちらもそう思っているから2人とも全然告白しなくて、いつからか「どうにかして相手から告白させてやる」という心理戦をずーーっとずーーーっと生徒会室で繰り広げるようになったという作品なのです。


 なので、この作品。
 文字が多くて、登場人物も少なく(生徒会長の白銀くん、副会長の四宮さん、書記の藤原さんの3人が基本)、半分以上の話は「生徒会室」という狭い空間の中だけで行われていて―――なのに、面白いんです。ネタが尽きないんです。


 具体名は挙げませんが……こういう「シチュエーションを限定したコメディ漫画」って最初の頃はものすごく斬新で面白いのだけど、ずっと同じことをやろうとしてもネタギレするし、全然ちがうことをやろうとすると「好きだったのとちがう」とコレジャナイ感が出てしまいますし、新キャラを投入して新しい風を起こそうとすると最初に頃に持っていた面白さの密度がどんどん薄まってしまって。

 1巻はとてつもなく面白かったのに、2巻・3巻と続いていく内にどんどん面白くなくなっていくなーという作品も世の中には多いんですけど……



 『かぐや様は告らせたい』は「恋愛」という何からでもつなげられる普遍的な題材を描いているため、全然ネタが尽きずに巻数が進んでもパワーが落ちないのです。
 極端な話、人間が2人いれば「恋愛」話は描けるワケですからね。お昼にお弁当を食べるとか、Gが出てきたので退治するとか、携帯電話を買ったのでLINEのIDを聞きたいとか、そんな些細な日常の出来事からでも恋愛にはつなげられるので、「見栄の張り合い」「相手に見下されないように」「相手に自分を好きになってもらうように」「でも、自分の好意はバレないように」という攻防戦が始まるのです。

 また、『ババ抜き』『20の質問』『NGワードゲーム』みたいなアナログゲームで対戦する回もお気に入りです。シンプルなゲームだからこその読み合いの面白さがしっかり描かれているし、真剣に見栄を張る2人の本気が面白いのです。

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<画像は『かぐや様は告らせたい』2巻18話「生徒会は言わせたい」より引用>


◇ 「主人公がヒロインを好きすぎる」のも「ヒロインが主人公を好きすぎる」のも好きだ!
 この作品の正式タイトルは『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』と、頭の良い人達の心理戦がクローズアップされていますし、実際に心理戦の面白さもあるんですけど……この作品の本質は、「お互いに好き同士なのに2人とも素直になれないからなかなかくっつけない」というラブコメど真ん中なところにあると思うんですね。


 この2人――――「そっちがどうしても付き合いたいと告白して来たら付き合ってやってもイイかな!」みたいなスタンスだった割に、他の女や男には一切興味がなく、相手が他の女や男と仲良くなりそうだと(勘違いすると)全力で阻止しようとしていて、キミたちお互いがお互いを大好きだよね?と言いたくなります。

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<画像は『かぐや様は告らせたい』2巻12話「かぐや様は止められたい」より引用>

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<画像は『かぐや様は告らせたい』2巻17話「かぐや様は愛でたい」より引用>


 主人公がヒロインを好きすぎる作品、が好きです

 昔こんな記事を書いたことがあるのですが、「“誰か”を好きなことがハッキリしているキャラクターはそれだけで魅力的」なのかなぁと思うんですね。「食べ物を美味しそうに食べるキャラは善人に見える」みたいな話で、「誰かを好き」とか「熱中するものがある」とか「大切な人がいる」とかの情報を読者・視聴者に見せるということはそれだけで“裏表のないキャラ”と親近感を抱かせる―――上の記事にはそう書いてありました。


 『かぐや様は告らせたい』の2人は、超天才だったり超お嬢様だったりするし、喋っていることのほとんどがブラフだったり、相手を罠にハメようとしたり(自分に告白させようとする罠)するのですが―――「だって、相手のことが本当に大好きだもんな」ということが読者にも分かるからこそ、応援したくなっちゃうんですね。

 「白銀くんは四宮さんのことが大好き」「四宮さんは白銀くんのことが大好き」、その両方を知っているのは読者だけだからこそニヤニヤ出来る―――って考えれば、これも一種の「読者だけがすべてを知っている」からこその面白さなのかも。

(関連記事:「視聴者だけが全てを知っている」というシチュエーションに私は弱い



◇ 天才、ボンボン、お嬢様だらけなのに、どうしてこんなにキャラが愛おしいのか
 この作品の説明で、冒頭の私は“舞台は富豪名家に生まれた者達が集まる超エリート校:秀知院学園という高校で、主人公はその超エリート校の中でもトップ2の超天才の生徒会長と副会長という男女”と書きました。登場人物のほとんどが親が社長みたいな世界観ですし、主人公2人は超天才ですから、この説明だけだと鼻につきそうだなって思う人も多いかなって思います。私も読み始める前は、その辺が不安でした。


 でも、実際には主人公の一人:白銀御行(しろがねみゆき)くんだけは一般階層の生まれで、「ひたすら努力をする」ことで超エリート校のトップ1まで上り詰めた努力の人なのです。1日10時間の勉強と、バイトの日々と、それでいてお人よしだから困っている人を助けることに労を惜しまなくて、だから生徒会長なんかをやっている人なのです。
 
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<画像は『かぐや様は告らせたい』3巻30話「白銀御行は負けられない」より引用>

 しかし、本質的には普通の人なので、「泳げない」「虫が苦手」「運動音痴」だし、「詰め込んだ勉強以外は得意ではない」と思えるところもあるし―――実は無茶苦茶弱点が多くて、でもそれを人には見せないように人一倍の努力をしている主人公なのです!



 もう一人の主人公、というかヒロインというか。
 四宮かぐやさんは超巨大財閥グループの令嬢で、勉学・芸事・音楽・武芸すべてにおいて生まれながらの超天才と白銀くんとは対照的なのですが。「お嬢様キャラ」の鉄板で世間知らずなところもあって、「何でも知っているかぐや様だけど我々が知っている当然のことを知らなかったりする」その隙が彼女をこんなにも愛おしくしているのかなぁと思います。

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<画像は『かぐや様は告らせたい』1巻5話「かぐや様はいただきたい」より引用>



 白銀くんも四宮さんも、全校生徒が憧れて尊敬する「超天才」の側面と、その裏にある「普通の高校生」の側面とのギャップがしっかりあって―――この漫画のキャラは(数は多くないけど)、みんなそうしたギャップを持っているからこそ魅力的なのかなーと思うのです。

 書記の藤原さんはゆるふわ天然キャラで、実際に白銀くんと四宮さんの心理戦の間で「超天才が計算できない不確定要素」としてかき乱してくれるんだけど、実は生徒会の中では一番しっかりしている常識人とも言えるし。そもそも、四宮さんからはかなりひどい仕打ちを受けていると思うのに全く気付かずに仲良くしているのがすごいし。

 会計の石上くんもコミックス3巻にてようやく本格的に登場し始めて、「男キャラが増えても全然嬉しくねーな」と登場する前は思っていたのだけど登場4ページ目で「がんばって生きてくれー(涙)」と応援したくなっていたくらいです。
 他の作品に出ていてたら、クール系のイケメンライバルキャラみたいなポジションに収まりそうなルックスしているくせに!

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<画像は『かぐや様は告らせたい』3巻28話「かぐや様は入れたい」より引用>


 たまにしか登場しないけれど、四宮さんの護衛と召使と雑用を一人でこなす早坂さんも良いキャラ。このコの前だけでは四宮さんは素を見せるというのもあるけど、早坂さん自身も冷静沈着なようでいてただの仕事じゃなくて四宮さんのためになることをしようとしていて、キャラ紹介のページにも書かれているけどどっちかというと「姉妹ポジション」のキャラなんですよね。



 3巻までの時点ではメインキャラと呼べるのはこの5人で、この作品の主題である「白銀くんと四宮さんが互いに自分に告白させようとするラブコメ」からズレさせずに、色んなことを起こす良いバランスの5人になっているのです。
 連載が長期化していくとその内に新キャラ投入とかもしていくのかも知れないけど、キャラが増えると主題がブレてしまいそうで、やっぱり今のこのバランスが最高だと思います!


 「くっつきそうでくっつかないラブコメ」って、くっついたら終わりですから(※1)「如何にしてくっつけないか」という引き延ばしが必要なのだけど、離れすぎちゃうと告白一歩手前のドキドキ感は薄れてしまうので面白さを保つのが難しいと思うんですけど。
 「互いが互いを告白させようとする」この作品は、くっつきそうでくっつかないのに常に告白一歩手前が続くので、ラブコメの一番面白いところがずっと続いているような作品だと思います。

(※1:この2人が主人公ならくっついた後を描いても面白くなりそうですけどね)


 12月11日現在、「となりのヤングジャンプ」で5話まで試し読みできるみたいなので……興味のある方は是非!(スクロールした真ん中あたりにあります)
 キンドルだと現在全巻が20%ポイント還元対象ですし、今の内に買って年末年始のお供にでもどうぞ!キンドル版は紙の本から1か月遅れでの発売ですけどね!


【紙の本】
かぐや様は告らせたい 1 ~天才たちの恋愛頭脳戦~ (ヤングジャンプコミックス) かぐや様は告らせたい 2 ~天才たちの恋愛頭脳戦~ (ヤングジャンプコミックス) かぐや様は告らせたい 3 ~天才たちの恋愛頭脳戦~ (ヤングジャンプコミックス)
かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~(4): ヤングジャンプコミックスかぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~(4): ヤングジャンプコミックス
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【キンドル本】
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| この漫画が面白い! | 18:01 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

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『ダンジョン飯』1~3巻が面白い!/“ザコ戦”を楽しく描く逆転の発想

 こんな超有名作・超人気作をわざわざブログで紹介しなくても……と思われるかも知れませんが、どんな有名作であっても知らない人はいると思って書くのがウチのブログのスタンスなので堂々と紹介します!
 「ゲームは大好きだけどマンガはあまり知らない……」という人もウチのブログの読者さんには多そうですし、この作品はそういう人にこそまだまだ知ってもらえる余地があると思いますしね!


【三つのオススメポイント】
・このファンタジー世界は「リアル」でなくても「リアリティ」がある!
・ファンタジー作品の有名モンスター達との“ザコ戦”にスポットライトをあてた作品!
・RPGの定番“4人パーティ”、一人一人のキャラがしっかり魅力的に描かれる!


【キンドル本】
ダンジョン飯 1巻<ダンジョン飯> (ビームコミックス(ハルタ)) ダンジョン飯 2巻<ダンジョン飯> (ビームコミックス(ハルタ)) ダンジョン飯 3巻<ダンジョン飯> (ビームコミックス(ハルタ))

【紙の本】
ダンジョン飯 1巻 (ビームコミックス) ダンジョン飯 2巻 (ビームコミックス) ダンジョン飯 3巻 (ビームコミックス)


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、実験的にリスト化しました。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:×
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:◎(動物というか……モンスターを殺して食う作品なので)
・人体欠損などのグロ描写:△(人間の欠損はないけど血はドバドバ出ます)
・人が食われるグロ描写:○(グロくはないけど丸呑みにはされる)
・グロ表現としての虫:○(グロくはないけど虫のモンスターは出てくる)
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×


◇ このファンタジー世界は「リアル」でなくても「リアリティ」がある!
 この漫画は、エンターブレインが年10回刊行している漫画誌『ハルタ』にて2014年から連載されているファンタジー漫画です。作者の九井諒子先生は短編集はいくつも発売されていますが、長期連載はこの『ダンジョン飯』が初めてとなります。
 そうして始まったこの作品、現役のマンガ編集者が選ぶ「コミックナタリー大賞」の2015年度の1位、宝島社の「このマンガがすごい!」でも2016年のオトコ編1位になる(参照サイト)など……数々の賞を受賞しているすごい作品なのです。

 九井諒子先生の短編集も(全部ではありませんが)読んだことがあるのですが、「ファンタジーな世界観の中で暮らす人々を“ちゃんとそこで生活しているように”描く作品」が多いという印象で―――なるほど、この作風をキャッチーかつ長期的にネタ供給ができる連載向けの作品にしていくと『ダンジョン飯』になるのかと思いました。



 主人公は、ライオス達・冒険者の一味です。
 ダンジョンの最深部でレッドドラゴンと戦うも、空腹によって敗北。ライオスの妹ファリンによる脱出魔法で一行は地上に戻ることが出来ましたが、ドラゴンに呑み込まれたファリンだけは戻りませんでした。ファリンが完全に消化される前にダンジョンの最深部まで戻りたいけれど、脱出魔法によって荷物は最深部に置いてきたので一文無しです。これでは食料を買い込むことが出来ない―――よし!じゃあ、ダンジョン内のモンスターを倒して料理して食いつなぎながら最深部に向かおう!というのがこの作品の基本設定です。

 「やまなしの下手くそな説明だとよく分かんねーや」という人は、ComicWalkerで第1話は無料で読めるのでそちらをどうぞ。


 ということで、この作品……ドラゴンとかゴブリンとかスライムとかが出てくるファンタジー世界だけれども、敵が出てきた!やっつける!というだけでなく、「食事」とか「睡眠」とか「トイレ」のような“生きるために必要なもの”をしっかり描いていて。作中ではダンジョン内で「歯を磨いている」とか「洗濯物を干している」なんてシーンも見られます。ファンタジー世界だけど、彼らはそこでしっかり生きていることを描いているんですね。


 んで、ここからが九井諒子先生の本領だと思うのですが……
 ファンタジー世界でも彼らが私達と同じような生活をしているかと言うとそうでもなく、「魔法が現実にある」「エルフやドワーフが生きている」「モンスターがうようよ歩いている」というファンタジー作品の“お約束”を独自の解釈で描き直すことによって、ファンタジー世界なのに「リアリティのある世界」のように見せることが出来ているんだと思うのです。

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<『ダンジョン飯』3巻15話「雑炊」より引用>

 例えば、このシーン。
 このダンジョン内では「死んでも蘇生魔法でよみがえることが出来る」ため、死んだ冒険者を蘇生魔法でよみがえらせて金銭をもらう「死体回収屋」が存在しているんですね。

 また、「蘇生魔法がある」という世界観なので、私達が「初めて交通違反で切符を切られた時は~~」と話すみたいな感覚で、「初めて死んだ時はこうだった」と思い出話として話をしたりするのです。なんか、この辺の死生観がすごく「リアリティ」があるなぁというか、「本当に蘇生魔法があったらこんなカンジなんだろうな」と思わせるのです。



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<『ダンジョン飯』2巻9話「オーク」より引用>

 例えば、このシーン。
 私達の感覚では「美しい」という形容詞の代表のようなエルフの美女を、オークは「見た見た?噂には聞いてたけどエルフってブサイクだなー」ってなカンジに見ているのです。そりゃオークはオークの女性を美しいと思うんだから、その対極にあるエルフはブサイクに見えますよね。ものすごく細かい描写かも知れませんが、こういうものが私は「リアリティ」だと思うし、世界観を深くしてくれると思うんですね。



◇ ファンタジー作品の有名モンスター達との“ザコ戦”にスポットライトをあてた作品!
 とは言え……ここまでの話は、ファンタジー世界を描いた作品の中では珍しくない描写かも知れません。『ダンジョン飯』が『ダンジョン飯』として不動の地位を築いているのは、やはり「モンスターを倒して食べる」という要素に特化したことだと思います。


 実際にこの漫画を読む前は「モンスターを倒して食べる…?グロをギャグにした一発ネタの漫画なのかな?すぐに飽きちゃうんじゃないの?」と思ったのですが、読んでみると「なるほどこれは逆転の発想だ!」と思いました。グロくはないし、ギャグだけではないし、一発ネタでも飽きやすくもありませんでした。むしろ「次はどんな話が来るんだろう」とワクワク出来る作品でした。


 というのも……この作品に出てくるモンスターは、スライムとかゴーレムとかミミックといったファンタジー作品によく登場する“お馴染みのモンスター”達です。『ドラゴンクエスト』とか『ファイナルファンタジー』のようなRPGを遊んできた人にとっては、現実の動物以上に「よく知った顔」に思えることでしょう。
 しかし、ライオス達は本来ならレッドドラゴンと戦えるくらいのレベルの冒険者です(空腹によって負けたけど)。スライムなんてAボタン連打でやっつけられちゃうのですが、この作品は「敵を倒す」のが目的ではありません、「敵を倒して料理して食べる」のが目的の作品です。どんなに彼らが強くても食事を疎かにすれば負けるというところから始まっているのですからね。

 だからこそこの作品は……レベルの低い“ザコ敵”相手であっても、Aボタン連打の消化試合にはならないんです。
 九井諒子先生独特の独自解釈された“お馴染みのモンスター”達が、実はこういう構造でこういう生態系を持っていると描かれ、それをどう調理したら食えるのかと考え、実際に調理して、食べる、美味い!!


 1ページ丸々引用するのはちょっと心苦しいのですが、少しでもこの作品の魅力が伝わればと思うので私が特に好きな回を引用させていただきます。

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<『ダンジョン飯』1巻5話「かき揚げ」より引用>

 ダンジョンの中に仕掛けられた数々の“罠”は、なるべくなら発動させずに通りすぎたいし、発動してもさっさと抜ければイイのだけど……この回は、火の“罠”には油が使われているはずだから、この油で「かき揚げ」を作ろう!というのです。
 本来ならササッと通りすぎられてしまうような要素に注目して、それを独自解釈して1話使って描く―――「モンスターを倒して食べる」というのは決して一発ネタではなくて、“お馴染みのモンスター”1匹1匹との戦いにちゃんと注目して1話使ってまるまる描くという、“ザコモンスターとの戦い”を丁寧に描くための逆転のアイディアだと思うのです。


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<『ダンジョン飯』1巻5話「かき揚げ」より引用>

 作られた料理はレシピも載っています!材料が入手困難!




 “ザコ戦”にスポットを当てたファンタジー作品と言えば『灰と幻想のグリムガル』も延々とゴブリンやコボルトと戦っていましたが、あちらにはボスっぽいキャラもいるし、どっちかというと「Aボタン連打で延々とレベル上げをしている」感覚だったのですが(だからこそ……という話は置いときます)。

 『ダンジョン飯』は「栄養バランスも大事」と色んなモンスターを倒して食べなくてはならないため、1話ごとに新しいモンスターが登場して、それを倒して食べるので……「次はどのモンスターが出てくるんだろう」とワクワクさせられるのです。
 一発ネタどころか、毎回毎回「このモンスターはこう解釈したか!」というのが面白いし、ダンジョンの地形や魔法を活かして戦うバトルは凝っていて「実はバトル漫画としても面白い」ですし、本当に力のある漫画だなーと思います。




◇ RPGの定番“4人パーティ”、一人一人のキャラがしっかり魅力的に描かれる!
 主人公パーティは4人です。
 『ドラゴンクエストIII』など、RPGの定番人数とも言えますね。


<ライオス>
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<『ダンジョン飯』1巻1話「水炊き」より引用>

 パーティのリーダーで剣と鎧を装備した戦士。種族は人間(トールマン)。
 温厚でマジメ、戦闘でも頼りになるパーティの大黒柱だが、実は重度の魔物ヲタクで「魔物が好きすぎて食べてみたくなった」とモンスター食を提案した張本人となる。


<マルシル>
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<『ダンジョン飯』1巻2話「タルト」より引用>

 魔法が得意なエルフ。
 かわいい。エルフのイメージ通りに美しく、髪の手入れなどオシャレも欠かさず、魔法の腕はかなりのもの。かわいい。だが、パーティの中でも一番の常識人なので、モンスター食には常に反抗するし、ライオスの魔物ヲタクっぷりにはドン引きしていることも多い。
 ある意味では「読者の視点」に一番近いキャラで、モンスター食を最も嫌がる彼女が「食べてみたら意外に美味しい」という反応をすることで読者もカタルシスを体感できる。かわいい。


<チルチャック>
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<『ダンジョン飯』1巻5話「かき揚げ」より引用>

 小柄だが感覚が鋭敏なハーフフットという種族で、鍵開けや罠発見が得意。
 童顔だけどパーティの中では精神年齢的には一番の大人で、マルシルほどじゃないけど常識人でモンスター食にも消極的だった。軽口を叩いたり、ツッコミを入れたり、パーティの中でもムードメーカーなところがある。


<センシ>
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<『ダンジョン飯』1巻3話「ローストバジリスク」より引用>

 10年以上モンスター食の研究を続けていたというドワーフ。
 ライオス達と出会うまではダンジョン内に一人で生活していたこともあって、戦闘力・生活力ともに高いのだが、ドワーフのくせに鍛冶や鉱石に疎いためにドワーフの中では浮いた存在だったそうな。料理については人一倍うるさいし、調理の腕は確かだが、それ以外の常識はあまりなく、マルシルやチルチャックからはよくツッコまれている。



 という4人がこの作品の主人公です。
 ハーフフットはよく分からなかったのですが、雑誌掲載時には「ハーフリング」と記述されていたこともあったそうで(単行本では修正されている)……詳しい経緯は説明を省きますが、『指輪物語』などに出てくる「ホビット」のような種族と考えて間違いはないと思います。

 ということで、人間、エルフ、ホビット、ドワーフの4人パーティで。
 職業(クラス、ジョブ)は、戦士、魔法使い、シーフ、戦士といったところか。

 戦力的にはちょっとマルシルの負担が大きい気もしますね……攻撃魔法・回復魔法・補助魔法と全部マルシルがやらなくちゃいけないので、マルシルのMPが尽きたら一気に総崩れしそうなパーティのような。


 ただ、漫画としてはこの4人のバランスがとてもよく出来ているんですね。
 常識人と非常識人、ツッコミとボケ、話を動かす役と振り回される役……4人のキャラが立っていて、キャラ同士が互いを活かしあっていて、それぞれがそれぞれを魅力的に見せていると思います。

 あと、人間=マジメだがヲタクっぽいところもある、エルフ=美人で賢くて魔法が得意、ホビット=小さくて器用、ドワーフ=職人気質と……割と私達が思うファンタジー作品での種族ごとのイメージに沿いつつ、少し外している辺りがキャラクターとして魅力なのかもとも思います。
 マルシルはエルフで美人だけど感情の起伏が激しくて見てて飽きないしかわいいし、ドワーフは職人だけど鍛冶ではなく料理に特化しているとか。イメージに沿いつつ、独特のキャラになっているというか。




 ということで、少なくとも「スライム」とか「ゴーレム」とか「ミミック」といった言葉に反応するような人には是非是非オススメな作品です。私にとっては、ファンタジー世界を描いたどんな作品よりも「そうだ!オレが子どもの頃に読みたかったファンタジー漫画はこういうものだったんだ!」と思わせてくれる作品でした。

 ずっと長く続いてくれて、このキャラ達の冒険を長く読みたい気もしますが……元ネタとなる“お馴染みのモンスター”にだって限度があるだろうし、階層が進むにつれて戦いも激しくなっているので、そんなに長く続く作品でもないのかなぁと思っています。ひょっとしたら4~5巻、続いても7~8巻くらいで完結ですかねぇ。今から完結したときのことを考えて寂しくなるほどです(笑)。

 あと、マルシルがかわいいということは繰り返し言っておきたいです。

| この漫画が面白い! | 17:56 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

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『おおきく振りかぶって』1~27巻が面白い!/続いている「もう一つの世界」の高校野球

 毎年、夏の高校野球の時期になると「1巻から読み返したいなぁ」と思っていながらなかなか読む時間が作れなかったのですが、今年は7月に入ったタイミングで1巻から読み返してそのまま「買っていたけど読んでいなかった巻」「買っていなかったのでこの機会に買った巻」も一気に読みました。
 今月22日に発売された最新27巻も読んだので、「この漫画が面白い!」というカテゴリーで紹介しようと思います。


【三つのオススメポイント】
・あたかも「もう一つの世界」があるかのような描写の細かさ
・野球漫画の面白さって「読者だけが全てを知っている」情報戦なんだ!
・描かれているのは実は「負け犬たちのワンスアゲイン」



【キンドル本・まとめ買い】
[まとめ買い] おおきく振りかぶって(アフタヌーンコミックス)

【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、実験的にリスト化しました。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:○(青春に挫折はつきものだけど、三橋の過去の話はつらい…)
・恥をかく&嘲笑シーン:△(三橋の普段の行動を「恥をかく」と言ってイイのか…)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:×
・BL要素:△(私は「チームメートとの絆」くらいだと思いますけどね)
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×


◇ あたかも「もう一つの世界」があるかのような描写の細かさ
 「え?今更この漫画を紹介するの?必要なくない?」と思った人もいるかも知れません。
 この作品は2003年から月刊アフタヌーンで連載されているひぐちアサ先生の高校野球漫画で、2016年7月現在までにコミックスは27巻まで発売されていて、2007年にはテレビアニメ1期、2010年にはテレビアニメ2期が放送されていました。監督は後に『ガールズ&パンツァー』や『SHIROBAKO』を手がける水島努さんでした。

 言ってしまえば超人気作だし、超有名作なのですが……
 どんな有名作だって知らない人・食わず嫌いをしている人はいますし、長く続いている作品ほど「後から入る」のは難しいものですし。テレビアニメの2期からもう6年が経っているので、テレビアニメが放送されていた頃には夢中になっていたけどその後は読んでいないという人もいるんじゃないかと思います。

 コミックスは現在27巻まで出ていますが、テレビアニメでやったのは恐らくコミックスの14~15巻あたりまでだったと思います。そこで終わるのは確かに非常に「区切りが良い」と思うのですが、「テレビアニメで描かれた話」と「テレビアニメ以降の話」がそろそろ同じくらいの量になりますから、「テレビアニメでやったところまでしか知らない」という人にも是非その続きを読んでもらいたいなと思います。
 「この後こんな展開になるんだ!」とか「あのキャラって初期から顔だけは出ていたけどちゃんとガッツリ出番あるんだ!」と驚くと思いますから。長期連載の宿命で、7年前に張った伏線をようやく消化!とかザラにありますからね(笑)。



 さて……この漫画の特徴を一言で説明すると「すげー細かい」です。
 試合の描写も一球一球丁寧に描かれるのですが(この話は二つ目のオススメポイントのところに書きます)、キャラの設定、世界観の設定の作り込みも半端ないです。一キャラごとに家族構成やクラスが設定されていて、例えば「このキャラの親は試合の応援に来ていなかったけど何故か」とか「このキャラとこのキャラはクラスが一緒なので行動を一緒にしていることが多い」とか、膨大な量の設定に裏付けされた各キャラの行動が描かれているのです。


 まー、長い連載なので「この設定は後付けなんでは……?」と思うところも正直あるんですけど(笑)、作者がこの作品の世界を好きで細かいところまで設定を考えているため、メインストーリーにはさほど絡まないところでも人間が生きているのがしっかり分かって……『イチゴーイチハチ!』を紹介する時にも使った表現ですが、「実際にこの世界があるんじゃないのか」と思わせる圧倒的な実在感を持っているのです。

 高校野球の漫画ですが、父母会とか、応援団とか、チアリーダーとかまでしっかり描かれていて……
 例えば、父母会が分担して他校の試合をビデオで撮影、その配球をマネージャーがデータ化して、バッテリーがそれを覚えて試合に活かすという描写があって。試合に出ている選手以外のキャラのおかげで、如何に試合が成り立っているのかが分かるという。
 メンタルトレーニングや栄養学とか故障しないためのトレーニングとか……「試合に入る前」の描写も数多く。私は子どもの頃から野球漫画をたくさん読んできましたけど、こんなところまで描写されている作品は初めて読みました。



 私はこの漫画、連載開始当初から大好きで新刊が出るたびに1巻から読み返していたのですが……流石に10巻を越えたあたりから「新刊が出るたびに1巻から読み返す」時間はなく、しかし前巻の内容は覚えていないということで、ここ最近は「数年に1回1巻から読み返して読んでいなかった巻も全部読む」というサイクルにするようにしました。
 今回は27巻まで読みましたけど、前回はどうやら2012年に20巻まで読んでいたようで、21巻以降は今回が初めて読む内容でした。

 こういう楽しみ方が正しいファンの楽しみ方なのかは賛否両論ありそうですが、私はそうすることで「自分の見ていないところでも彼らの高校生活は続いていて、知らない間に成長しているんだな」という感覚がして、それがすごく楽しいんです。「もう一つの世界」があって、久しぶりにそこを覗いてみたら随分と人々が成長していた―――みたいな。


 読書メーターとかメディアマーカーのコミックス1冊ごとの登録者数を見ると、1巻~16巻までは安定した人数が続いていたのに対して、17巻以降や21巻以降でグッと人数が減っている傾向があります。アニメが終わってから原作も追わなくなっちゃったという人も結構いるみたいなんですね。

 そういう人も、続きを読んで久しぶりに「おおきく振りかぶっての世界」を覗いてみましょう!「今こんなことになっているんだ!」「高校生なんか、しばらく見ない内に随分と変わるんだなぁ」と思えるでしょうから。



◇ 野球漫画の面白さって「読者だけが全てを知っている」情報戦なんだ!
 一つ目のオススメポイントは「青春モノ」の部分に焦点をあてましたが、二つ目のオススメポイントは「野球漫画」としての面白さについて語ろうと思います。


 私は漫画ではないリアル野球の試合を観るのも好きなのですが、「リアル野球」と「野球漫画」の最大の違いは「キャラクターの心理」が分かるところです。この選手は今こういうことを考えているんだなということが、野球漫画では知ることが出来るのです。しかも、両チームの。

 例えば、ピッチャーのキャラが「ストレートを投げるぞ」と考えているとします、バッターのキャラが「カーブを待つぞ」と考えていたとします、読者である我々は「いやいやいや!来るのはストレートだよ!カーブ待ちじゃ打てないよ!」とやきもきさせられるのです。つまり、野球漫画というのは「読者だけが全てを知っている」ことでハラハラさせられるのが面白いのです。

(関連記事:「視聴者だけが全てを知っている」というシチュエーションに私は弱い


 また、野球というのは「情報戦」です。
 相手ピッチャーの球種、相手バッターの得意なコース・苦手なコース、作戦、選手のコンディション……などなどなどなどが重要で、如何にして「手の内を隠すか」と、どうやって「相手の手の内を読むのか」が勝敗を左右します。


 あんまり書きすぎるとネタバレになってしまうので、一つだけにしますが……
 『おおきく振りかぶって』を「野球漫画」として分類していくと、「豪速球」も「魔球」も投げられない貧弱なピッチャーが「配球」で相手を打ち取っていくという野球漫画です。そのポイントとなるのが「遅いんだけど浮いたように感じる」=「ストレートではないまっすぐ」というクセ球。

 クセ球なので、慣れてしまったり、カラクリが見破られてしまったりすれば簡単に打たれてしまうのだけど……相手はそんな球を持っていることを知らないので、「配球」によってそれに気付かせないように、それでいてここぞという時に打ち取るために使うのです。
 読者は「主人公チームの会話」も「敵チームの会話」も両方知ることが出来るので、この「ストレートではないまっすぐ」がいつバレるのかとか、バレていないのにバレているんじゃないかと疑心暗鬼になって投げられなかったりとかにハラハラさせられるのです。


 今のはあくまで一例ですが、この作品の試合はいずれも「相手の手の内に気づくか」がポイントとなっています。
 そのため試合のシーンは一球一球細かく描写され、「この打者には1打席目に何と何と何を投げて何を振って何を振らなくて、2打席目に何と何と何を投げて何を振って何を振らなくて―――」という過去のデータから、バッテリーとバッターの読み合いが行われて……ということを細かくやっているから、1つの試合を描くのに膨大な時間がかかって、13年も連載が続いているのに作中時間はまだ数か月しか経っていないという(笑)。

 ここまで来たら「何十年かかっても構わないから、このキャラ達が3年生になって夏の大会で引退するまで描いて欲しい」「中途半端なところで打ち切らないで欲しい」と私は思っているのですが……単純な「作中で経過している時間」と「それを描くのに使ったリアル時間」を計算すると、3年の夏の大会まで描こうとすると60年くらいかかるという(笑)。

 「打ち切られるかどうか」とか「漫画雑誌という媒体がそれまで生きているかどうか」どころか、私が生きていられるかどうかも微妙だぞこれ!



◇ 描かれているのは実は「負け犬たちのワンスアゲイン」
 一つ目のオススメポイント、二つ目のオススメポイントはともに「この漫画が持っている“この漫画にしかない魅力”」を書きましたけど……三つ目のオススメポイントは「みんなが大好き」な王道な話を書こうと思います。この『おおきく振りかぶって』を久々に1巻から読み返して思ったんですけど、『おおきく振りかぶって』という作品は「王道中の王道」を突き進んでいるからこそ面白いんです。


 構造的には「弱小チームが、強豪チームに挑む」話ですからね。
 主人公チームとなる西浦は「1年生が10人だけいるチーム」な上に、この選手だけは全国レベルだからこの選手の力だけで勝てるみたいな選手もいません。


 エースピッチャーの三橋はコントロールは良いけど球速は遅く、クセ球である「まっすぐ」と「配球」で何とか何とかかわして打ち取っていくことしか出来ません。
 三橋は中学時代に「経営者の孫」ということでヒイキでピッチャーをやらせてもらい、それによってチームが負け続けたことでチームメートからは「いないもの」のように扱われるイジメを受け、野球をやめるつもりでエスカレーター式ではない別の高校(西浦)に入学してきました。

 キャッチャーの阿部は、中学時代にシニアで1つ上の榛名というスーパーピッチャーとバッテリーを組んでいたのだけど、問題を抱えている榛名は「今」よりも「将来」を考えて野球をしていたので「今の試合」に全力になってもらえず。榛名のいる武蔵野第一ではなく、野球部が新設されたばかりの西浦に入学してきました。


 二人とも「中学時代」には悔しい思いがあって、一念発起して“別の高校”に進んだことで出会い―――三橋にとって阿部は「ダメな自分でも勝たせてくれるリードをくれるキャッチャー」として、阿部にとって三橋は「自分の求めた通りに投げてくれるピッチャー」として、お互いに足りない部分を補いあっているんです。

 女性的な絵柄だとか、非常に理論的な描写ばかりに気を取られて、今まであまり意識してこなかったんですけど……この漫画、根っこにあるのは「悔しい思いを抱えた男たちが集まって、“高校野球”で今度こそ!」と強豪校に挑んでいくという泥臭い熱血要素なんですよ。


 三橋と阿部以外のキャラも……
 例えば、チームのムードメーカーで4番である「田島」は抜群の野球センスで誰もが一目を置いているんだけど、体が小さいことでホームランが打てないと自覚していて、そこにコンプレックスがあって。
 キャプテンの「花井」は体が大きくて攻守の要になれるはずの素質を持っているにも関わらず、「田島」という輝かしい才能の前にコンプレックスを抱えていて―――と。


 みんなどこかしらに「悔しい思い」を抱えていて。
 ストーリーが進んでいくと、それは決して主人公チームだけの話じゃなくて、対戦している敵チームだったりの中にも色んな思いを抱えているキャラが登場していて。そういう思いがぶつかりあうからこそこの漫画は面白いのだし、理論的な部分だけでなくて、熱血的な要素があるからこそ「王道の高校野球漫画」として君臨しているのだと思います。





 27冊もコミックスが発売されていて、その上ストーリー的にも「まだまだ続きそう」なので、この記事を読んで「今まで食わず嫌いで読んでいなかったけど読んでみようかな!」と思った人もなかなか手を出しづらいかも知れませんが……
 目安として、テレビアニメの1期は8巻まででしたし、2期は14~15巻までだったので、そこらを区切りとしてひとまずその区切りまで読んでみるのも手かも知れませんね。「テレビアニメ以降の話は知らない」という人は20~21巻あたりで区切りがあって、26~27巻あたりにも区切りがあるのでそこを目安にすればいいかなぁ。


【紙の本】
おおきく振りかぶって (1) おおきく振りかぶって (2) おおきく振りかぶって (3) おおきく振りかぶって(4) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(5) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(6) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(7) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(8) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(9) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(10) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(11) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(12) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(13) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(14) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(15) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(16) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(17) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(18) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(19) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(20) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(21) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(22) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(23) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(24) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(25) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(26) (アフタヌーンKC) おおきく振りかぶって(27) (アフタヌーンKC)

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『イチゴーイチハチ!』1~2巻が面白い!/また青春を走りたい人へ

 「まだ完結していない漫画」だけど、どうしてもみなさんにオススメしたい漫画を紹介する「『○○』が面白い!」というカテゴリー……本当にガチでオススメしたい作品に出会わない限りは更新しないカテゴリーなので、ようやく2本目です。

 「面白い漫画に出会う」って本当に難しいですもんね。
 だからこそ、「本当にガチでオススメしたい作品」に出会ったなら、みなさんにも是非オススメして出会ってもらわなければ……!


【三つのオススメポイント】
・「高校入学」から始まる、ど真ん中な学園青春物語!
・「実際にこの高校があるんじゃないのか」と思わせる圧倒的な実在感
・“夢に敗れた者”だからこそ、高校生活では負けずに楽しむ!


【紙の本】
イチゴーイチハチ!(1)   (ビッグ コミックス〔スピリッツ〕) (ビッグコミックス) 1518! イチゴーイチハチ! 2 (ビッグコミックス)
【キンドル本】
イチゴーイチハチ!(1) (ビッグコミックス) イチゴーイチハチ!(2) (ビッグコミックス)

【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、実験的にリスト化しました。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:○(一応、“青春の挫折”を描いている作品なので)
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×(身体能力の差、みたいなのはありますが)
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×


◇ 「高校入学」から始まる、ど真ん中な学園青春物語!
 この漫画は、『GUNSLINGER GIRL』で有名な相田裕先生がビッグコミックスピリッツにて不定期連載中の青春群像譚です。少女たちにガンアクションをやらせた『GUNSLINGER GIRL』とは全くちがうジャンルの作品で、主人公の女のコ・丸山幸ちゃんが高校に入学するところから始まる学園モノです。

 私は知らなかったんですけど、元々は2009年~2013年に同人誌として発表されていた『バーサス・アンダースロー』という作品があって、『GUNSLINGER GIRL』とは別方向の「日本の日常が舞台」「トーンを使わずにラフに描く」という実験を行う意図があったそうです。そう言えば、『イチゴーイチハチ!』も網トーンを使っていませんね多分。

 その『バーサス・アンダースロー』は同人誌ながら、文化庁メディア芸術祭マンガ部門の審査員推薦作品に入選しているなど高く評価されていて……その作品を原案に、商業誌向けにイチから作り直したのが『イチゴーイチハチ!』だそうです。
 ストーリーが被っていたらネタバレになっちゃうなぁ……と『バーサス・アンダースロー』の方は私は読んでいないのですが(今だとネットオークションとかじゃないと入手できないっぽいですし)、そちらの主人公は烏谷くんみたいですね。



 はてさて。
 突然なんですけど、私……「高校入学のところから始まる学園モノ」が読みたくなる時期が定期的に来るんです。
 中学生から高校生になって出来ることが増えて、新しい学校に通い、新しい友達が出来て、そこには自分以外の生徒も生きていて、部活に入ったり入らなかったり、好きな人が出来たり出来なかったり―――そういうど真ん中の「青春!」を描いた作品を読みたくなる時期が定期的に来て、その時期にそういう作品に触れるとどっぷりハマる傾向があります。『けいおん!』のアニメにハマった時なんかは、まさにそんなカンジだったんですね。
 ただ、欲しいのは「高校生活の日常」であって、「恋愛」に寄りすぎていたり、「部活」に寄りすぎていたりする作品はそんなでもなかったりするのです。


 どうしてそういう気分に定期的になるのか……自分なりに考えたことがあるんですけど。
 恐らく、「高校生活」という“青春”をもう一度ロールプレイしたいって気持ちがあるのかなと結論づけました。

 「高校入学」って、人生の中では数少ない「生まれ変わる」タイミングだと思うんですね。幼稚園→小学校→中学校と上がってきた後、自分でどこの高校に入学するかを選んで、今までの友達と離れて、新しい友達が出来て、新しいことを始められるタイミングで。
 「もっと違う青春があったんじゃないか」とあの日々をやり直したい自分の気持ちと、新しい生活を始める「主人公」がピッタリにハマるので……日々の生活に疲れていたり、人生やり直したいなぁと思ったりする時期に、「高校入学のところから始まる学園モノ」を読みたくなるのかなぁと思います。


 んで、最近の私がまさにそういう気分だったんですけど―――と書くと、「やまなしさん、人生やり直したいのか。精神状態が追い詰められているんじゃないのか。」と心配されるかも知れませんが(笑)。
 大丈夫です!こんな時のために、と買ったまま読まずに積んでおいた『イチゴーイチハチ!』を読んで「丸山幸ちゃんの青春」をロールプレイしていますから!私は、今、15歳のちょっと背が低いボブカットが可愛いヒンヌー美少女なのだ!私は今!青春を謳歌している!!



 でもまぁ、やまなしさんの精神がヤヴァイって話は置いといて、世の中にたくさん「高校入学から始まる物語」があるということは大なり小なりそういう「高校生活のロールプレイもの」を求めている人がいるんじゃないかと思います。
 特にアニメでは4月新番に「高校入学から始まる物語」を持ってくる作品は多いですよね。さっき例に出した『けいおん!』もそうですし、今年の4月新番で自分が見た作品では『あんハピ』なんかがそうか。去年で言えば『響け!ユーフォニアム』とか『俺物語』とか、その前で言えば『ごちうさ』とか『ハイキュー』とか……毎年4月新番には「高校入学から始まる物語」がありますね。

 そうです!だから、私だけが可哀想な人ではないのです!きっと、そうなんです……




◇ 「実際にこの高校があるんじゃないのか」と思わせる圧倒的な実在感
 そんなカンジで「高校生活のロールプレイもの」を求めていた今の自分にとって、『イチゴーイチハチ!』はこれ以上ない作品でした。この作品にはとにかく圧倒的な「実在感」があるんです。

 高校生活をもう一度やり直したいのだから、記号的で作り物と分かる世界よりも、リアルに「実際にこの高校があるんじゃないのか」と思わせる世界の方が没入できるというもの。
 では、どうしたらそうした「実在感」が出せるのかといったら……単に「現実に近い」だけじゃダメなんですね。魔法とか出てこないとか、ロボットとか出てこないとか、そういうのは関係がないんです。魔法が出てきても「私が魔法を知らないだけで、本当にこの学校はありそう」と思わせたから『ハリー・ポッター』なんかは世界中で大ヒットしたのですからね。


 私が「実際にありそう」と思える作品は、「カメラが回っていないところにも人が生きていることを実感できる」作品です。
 私達は普段の生活では「自分」以外のカメラを持ちません。たくさんの登場人物の視点を行ったり来たり出来る映画や漫画とちがって「自分の見たもの」しか見えないんですね。当然、「自分の見たもの」以外のところにも人がいて、生きています。高校生活だったら同じ学校に何百人という人がいて、何百人がそれぞれ自分の人生を生きています。誰と誰が友達になってて、誰と誰はケンカしてて、誰それは部活を頑張っていて、誰それは委員会で働いて―――といった他人の人生を私達は直接は見ないのだけど。同じ学校に通っていて何となくそれを感じる時があって。



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<画像は『イチゴーイチハチ!』第1巻6話「アイス大作戦(3)」より引用>

 すっごい地味なところだと思うんですが、私はこの漫画のこういうシーンが大好きです。

 この漫画のメインキャラは、高校の「生徒会執行部」の6人で、いろんな行事だったり生徒からの要望だったりに影で奔走するのが仕事で……このシーンは「生徒会執行部」がしかけた「アイス大作戦」にいろんな生徒が乗ってくれているというシーンなのですが、漫研の生徒は別に出てこないんです。

 でも、出てこないこの漫研の生徒……彼だか彼女だかも分からないこの生徒が「アイス大作戦」に乗って、ここぞとばかりにイラストを描いて、確かに生きていることを実感させてくれるんです。この「誰だか知らない人も、確かにこの学校にたくさんいる」感覚が、圧倒的な「実在感」を生んでいるのだと思うのです。



 学校の設定だったり家庭の設定だったりもよく作りこまれていて。
 メインとなる「生徒会執行部」以外にも、「HR委員」「運動部会」「文化部会」「応援部」「保健委員」などがあって、それらが集まる「中央委員会」とか「代議員会」とかが行われて―――ほとんどよく分からないんだけど、「そう言えば学校って色んな委員とかあったし、よく分からない委員会とか集められてたなぁ」と思い出します。んで、そこでしか接点のない先輩を「○○に出てた人だ」と認識していたり。

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<画像は『イチゴーイチハチ!』第2巻16話「新勧マラソン!(2)」より引用>

 この、「あの人、知ってる」くらいの感覚がリアルだなぁ……と。




 あと、家族の描写もイイんですよ。
 私の好きなキャラは、烏谷くんのお兄さんです。



◇ “夢に敗れた者”だからこそ、高校生活では負けずに楽しむ!
 「青春をやり直したい」みたいな個人的かつ超後ろ向きなことばっかり書いていて、ここまでちっとも作品の紹介になっていないと思われたかも知れませんが……実は、この作品を語る上で「青春をやり直したい」は重要な視点だと思うんですね。

 この作品、「高校入学」から始まることは先に書きましたが、第1話の冒頭で「この学校は県内の公立トップ校を受験する子が併願で受ける私立校で、受験に敗れた生徒が集まる」という丸ちゃんのモノローグから始まるのです。
 「高校入学」から始まる作品はたくさんありますが、いきなり「学力レベル」とか「受験の難易度」の設定から説明する作品はそうそうないんじゃないかと思います。しかも、「超底辺校」とか「お金持ちが集まる学校」とかならともかく、「公立トップ校に入れなかったレベルの学校」というなんかすごい微妙な設定という(笑)。

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<画像は『イチゴーイチハチ!』第1巻1話「15番の彼」より引用>

 でも、この設定がこの作品にとっては一番と言ってイイくらい重要な設定で―――だからこそ、この学校の生徒は「高校生活をめちゃめちゃエンジョイしてやんぞ!」と気合い入っていて、言ってしまえばこの作品が「一回負けたとしても、また青春はやり直せる」と描いている作品だと最初に見せているんじゃないかと思うのです。

 もう一人の主人公とも言える烏谷くんは、肘を故障して野球をやめた元エース。
 スポーツ万能な生徒会長も、とある夢をとある理由で諦めた過去があって。
 まだ描かれてはいないけど、主人公の丸ちゃんもこの学校に入ったのには何か理由があると匂わされていて……

 どのキャラも「高校入学」のタイミングで「生まれ変わって」、一から青春をやり直しているように見えるのです。傷を負っているキャラクター達と、それでも落ち込む暇もなく前に進ませようとするこの学校を見ると、もうとっくに青春など通り過ぎたオッサンの身でも「またやり直せばいいじゃないか」と前向きになれるのです。心がグッと前に押されるのです。


 また、先ほど画像を載せた場面に「三途の川」というフレーズが出てきていましたが、この漫画は通学路にこの「川」があるため、電車なり徒歩なりで「橋」を渡るシーンが度々出てきます。「FUMIKIRI理論」の記事でも書きましたが、「橋」は本来なら断絶されているはずのこちら側とあちら側をつなぐ装置。

 「橋」を越えて「三途の川」のこちらとあちらを行ったり来たりするのは、「生まれ変わり」の象徴ですもんね。




 突然ですけど、1巻の表紙で微笑んでいる超イケメンのキャラ↓
イチゴーイチハチ!(1) (ビッグコミックス)

 女子ですからね。
 読み始める前、ほほーこのイケメンとボブカットの女の子が恋愛する漫画なのかな。あと、野球と……アイス大作戦?どんな漫画なんだ?と思っていたら、イケメンは女子だったし、野球漫画じゃなかったし、アイス大作戦は『ガルパン』における「こそこそ作戦」みたいなことを野球でやるワケでもなかったし、思っていたのと全然違っていました。でも、すげー面白かったです!





 ということで、青春漫画を読みたい人には是非に是非にオススメしたい作品です!
 完結までにどれだけ時間がかかってもいいから、じっくりと彼ら・彼女らの高校生活を描ききって欲しいなぁと思います。


 そうそう、第1巻が発売されたタイミングで、東山奈央さんのナレーションでPVが作られていたそうです。1巻のがっつりとしたネタバレが含まれていると思うのですが、ネタバレ気にならない人は参考にしてください。ネタバレが気になる人は1巻を買って読んでからにしてください(笑)。



 「丸ちゃんの声、東山さんかよ!イメージと違うな」と再生前は思っていたのですが。
 「丸ちゃんの声、東山さん以外に考えられないよ!イメージ通りだよ!」と再生後には思っていました。

 最近こういう「アニメ化しているワケではないけれど、人気の声優さんに声をあてさせる漫画のPV」って多いですよね。でも、この声はあくまでPV用の声なので、もし今後そうした作品がアニメ化などに展開していっても同じキャストになるとは限らないんですよね。スケジュールの問題なんかもありますし。PVでイメージ付けちゃうと、今後いろいろ大変だよなぁなんて考えてしまいました。

| この漫画が面白い! | 17:57 | comments:7 | trackbacks:0 | TOP↑

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『ひとりぼっちの○○生活』1~2巻が面白い!/作れ!友達ハーレム!

 この記事に書いた「まだ完結していない漫画でも面白かったらどんどんオススメしていこう!」という記事を書き始めます!第1弾は2巻が超面白かったこの作品だー!

 タイトル表記としては、「既に完結している漫画」を紹介する場合は「『○○』紹介」という記事タイトルにして、「まだ完結していない漫画」を紹介する場合は「『○○』が面白い!」という記事タイトルにして区別することにします。

【三つのオススメポイント】
・超コミュ障だからこそ、主人公は「友達」を否定しないのがイイ!
・「友達」になろうとするからこそ見えてくるクラスメイト達の色んな一面
・侮れない画力!構成力!


【紙の本】
ひとりぼっちの○○生活 (1) (電撃コミックスNEXT) ひとりぼっちの○○生活 (2) (電撃コミックスNEXT)

【キンドル本】
ひとりぼっちの○○生活(1)<ひとりぼっちの○○生活> (電撃コミックスNEXT) ひとりぼっちの○○生活(2)<ひとりぼっちの○○生活> (電撃コミックスNEXT)

【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、実験的にリスト化しました。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:△(ギャグ風に描かれているので深刻ではないけど)
・恥をかく&嘲笑シーン:○(恥はしょっちゅうかいているけど嘲笑はない)
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:△(女のコ同士でイチャイチャしてるけどあくまで友達として)
・BL要素:×(そもそも男キャラがほとんど出ない)
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×


◇ 超コミュ障だからこそ、主人公は「友達」を否定しないのがイイ!
 この作品は、『月刊コミック電撃大王』の増刊として「可愛い女の子×ショートギャグ&4コマ漫画」というコンセプトで創刊された『コミック電撃だいおうじ』に連載中の4コマ漫画です。

 ニコニコ静画Pixivでは『ひとりぼっちの○○生活』第一話から第三話までが無料公開されています。
 「《毎日更新》ひとりぼっちの○○生活」の方はコミックスにも収録されていない前日譚なのだけど、「エピソード0」的な外伝なのでコミックスを読んでからの方がイイかも。


 「女のコだらけの4コマ漫画」ということで、分類するのなら「萌え4コマ」とか「日常4コマ」といったカテゴリーに入るのかと思いますが……その中では、ボケツッコミがしっかりしている「ギャグ寄り」の4コマ漫画かなぁと思います。「1.笑える、2.じーんとする、3.可愛い」、こんなカンジ。


 ストーリーは、友達が一人しかいない主人公「一里ぼっち」が、その唯一の友達と別の中学に進む際に「中学を卒業するまでにクラス全員と友達にならないと絶交する」と言われ、クラスメイトである28人全員と友達になることを目指す話です。

 「主人公がコミュ障で友達がいない」という作品はたくさんあると思うのですが、割と私はそういう作品が苦手だったりします。自分を見ているようで直視しがたいんですね。
 しかし、この作品の主人公「ぼっち」ちゃんは、コミュ障の部分がデフォルメされていて「ギャグとして受け止められる」けど「ちょっと共感できる」くらいの絶妙なバランスに収まっていて―――そして何より、「友達が欲しいな」「友達が出来たらこんなことをしたいな」と、友達という存在を全肯定している主人公なのが気持ち良いんです。

 コミュ障で友達のいないキャラを作ろうとすると「友達なんて邪魔なだけだ」「人間は一人でも生きていける」みたいなことを言う斜に構えたひねくれたキャラにしてしまいがちなのですが、「ぼっち」ちゃんは絶対にそんなことを言わないし、友達の悪口も言いません。「友達と一緒に下校できるなんて夢のよう」なんて言ってしまうコなのです。



 漫画やアニメでは、「お金持ちの家に生まれたお嬢様がファーストフード店などの庶民の暮らしに感動する」みたいに“読者が何気なく経験してきたことに感動するキャラクターを描くことで、その良さを読者に再認識させる”といった描写がよくあります。例えば『よつばと!』は我々が普段生きている世界も「よつばから見るとこんなに輝いているんだ」と再確認させられる作品ですよね。
 『ひとりぼっちの○○生活』で描かれる日常も本当に些細なものなんだけど、「友達がいるのってこんなに楽しいことなんだ」「友達ってイイもんだなぁ」と思い出させてくれる作品なんです。それもこれも「一里ぼっち」という“友達という存在を全肯定している主人公”の力だと思います。



◇ 「友達」になろうとするからこそ見えてくるクラスメイト達の色んな一面
 ストーリーの流れとしては「超コミュ障の主人公がクラスメイトと友達になろうとする」→「なんやかんやある」→「友達になる」→「超コミュ障の主人公がまた別のクラスメイトと友達になろうとする」→「なんやかんやある」→「友達になる」→……といったカンジに友達を一人ずつ増やしていくのがベースとなります。

 ということで、やっていることは実は「ハーレムアニメ」に近いんですよね(笑)。
 「主人公とヒロインAは最初はそんなに親密な関係ではない」→「ヒロインAの悩みを解決する」→「ヒロインAが主人公に落ちる」→「また次のヒロインBの攻略に向かう」……という「ハーレムアニメ」とやっていることは変わらないんです。
 この作品は主人公も女のコですし、「恋愛」ではなく「友達」になることが目的なのですが、以前に書いた「ハーレムアニメと日常アニメは実は近い」なんて話もありますからね。


 さて、そうなると「攻略対象」となるヒロイン達=クラスメイト達はどういうキャラが揃っているのかが重要になると言えます。
 しかし、「どういうキャラがいるのか」を語ってしまうと一番美味しいところをネタバレしてしまうので、もう少し捻ったことを書こうと思います。この作品は「友達になる」ということに重きを置いているため、どのキャラも「友達になる前」と「友達になった後」で違う印象を受けると思います。友達になって初めて見えるその人の一面をしっかり描いているんですね。

 また、ストーリーが進めば進むほど「友達」は増えていきますから、「友達グループ」の中で「既に友達になったキャラ」が「新しく友達になったキャラ」に新たな一面を見せる場面もあります。「友達」を増やすことでぼっちちゃんが成長するように、「友達」達もぼっちと「友達」になったことで成長して変わっていく部分もあります。


 人間が持っている「多面性」を、友達という視点から多角的に描いていて……可愛い絵柄とテンポの良いギャグに隠れていますが、「友達が出来るということはどういうことなのか」に真剣に取り組んでいて、意外にストーリーの構成もしっかりしている作品なのです。
 ちなみに、私が好きなキャラは「本庄アル」ちゃんです!このコは特に「友達になる前」と「友達になった後」で印象が全く違うキャラですし、友達になった後でも「それぞれのキャラ相手に見せる印象」が全然違うキャラですし、色んな側面と表情が見られるのが可愛いです。「なこ×アル」は鉄板よね。



◇ 侮れない画力!構成力!
 「女のコばかりが登場する4コマ漫画」というカテゴリーだと、ひょっとしたら「絵柄が萌え系ならば誰にだって描ける」とか「画力がなくても描ける」とか「ストーリーがテキトーでもヲタクに買ってもらえる」みたいな偏見を持っている人もいるかも知れません。何とは言いませんけど、確かにそういう作品もありますもんね。

 しかし、私がこの『ひとりぼっちの○○生活』を読み始めて最初に思ったのが「絵、上手いなー」ということでした。4コマ漫画なんだけどカメラを上下に動かして角度つけたアングルから描いていたり、背景も表情演出もデフォルメも技術が非常に高かったり。そもそも「28人のクラスメイトと友達になる」という作品ですからキャラの描き分けも大事ですし、画力があるからこそ成り立っている作品じゃないかなーと思います。


 同じ作者さんが『電撃大王』の方で連載している『三ツ星カラーズ』も、第1話~第3話までニコニコ静画Pixivで試し読みできるのですが、こちらは4コマ漫画ではない普通のコマ割の漫画で背景の描き込みもものすごいです。同じ雑誌の『よつばと!』とか『苺ましまろ』を彷彿とさせるクオリティ。


 ということで、「普通のコマ割の漫画」でもクオリティ高いものを描く漫画家さんが描いている「4コマ漫画」が『ひとりぼっちの○○生活』なんですね。というか、両方描けるってすごいですね……「4コマ漫画」と「普通のコマ割の漫画」は別物だと私は思っているので、野球で言えばピッチャーもバッターもやる大谷翔平みたいなイメージですよ。


 また、ストーリーの構成力も侮れなくて、2巻を読んだ時は昂ぶりすぎてしまって「(外出先じゃなくて)家で読んで良かった!」と思ったくらいです。「女のコばかりが登場する4コマ漫画」が嫌いでない人ならば、是非オススメです!



 自分は同じ作者さんの『三ツ星カラーズ』はこの記事を書いている最中に知ったので、余裕が出来たら買って読もうと思います。こちらも楽しみ!

【紙の本】
 三ツ星カラーズ (1) (電撃コミックスNEXT) 三ツ星カラーズ (2) (電撃コミックスNEXT)

【キンドル本】
 三ツ星カラーズ1<三ツ星カラーズ> (電撃コミックスNEXT) 三ツ星カラーズ2<三ツ星カラーズ> (電撃コミックスNEXT)

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