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| 「収穫逓増」に挑んだ任天堂の戦略 |
そろそろ6月も終わるということで、気付けば次世代据置ゲーム機も既に「今世代」になりつつあるのかなぁという時期になってきましたね。ランキング上位を(DS勢を除けば)Xbox360やPS3の新作ソフトが占めるようなこともありましたし、そろそろPS2市場も縮小の方向に進んでいるっぽいですね。
次世代機の売上げに関しては―――世界で見れば、1年アドバンテージのあったXbox360にWiiが迫りPS3が蚊帳の外。日本国内で見れば、Wiiが抜け出るもソフト不足が不安視され、PS3が着実に2番手をキープ、1年早くスタートしたXbox360が遥か彼方の周回遅れ。というのが現状だと思います。
まぁ、現状は現状。 全ての陣営に良さと不安材料はありますし、最終的に全ての陣営と世界中の人々が幸せになれれば良いんじゃないかなぁなんてイイコぶってみる。
でも、こんな状態でも「任天堂は(PS3やXbox360のように)スペックを求めるべきだった」みたいな意見を言う人もいるんですよね。 まぁね……Wiiの思想や操作体系に共感できない人や、家族をゲームに巻き込もうなんて気のない人、とにかく今までのゲームの進化が大好きだった人からすると許せないというのも当然だとは思います(どうしてそんな人がWiiを買ったのだろうとは思うけど)。考え方は人それぞれですから。
それでも、ただ一つ言えることは「Wiiがハイスペックを目指してリモコン操作でもなかったらここまで売れなかった」のは間違いないでしょうね。そもそもその場合はWiiという名前ではなかったろうし、『Wii Sports』もゲームキューブからの移植組のソフトもなかったから発売はもっと遅かったろうし、価格も上がっていたでしょうしね。
「いや、そんなことはない。任天堂のゲームは面白いから少しぐらい高くてもPS3よりは売れたはずだ!」と言う人もいるでしょうし、その可能性もないことはないでしょうね。 ただ、僕個人の意見としては―――スペック勝負では任天堂が適うワケがなかったと思いますし、何より「収穫逓増」が重く圧し掛かって負ける可能性が高かったんじゃないかと推測しています。
「収穫逓増」とは元々は経済用語らしいんですが、経済学を学んだことのない自分にとっては「名前は聞いたことあるかもなー」くらいの言葉でした。 んで、この言葉を深く記憶するようになったのは、僕が氏の小説にハマるきっかけとなった西尾維新作の『クビキリサイクル』にてこの言葉が効果的に使われていたからです。後々で調べてみると、本来の経済用語とはちょっとズレていたっぽいんですが、まぁその辺は娯楽作品なので気にすんな。
言ってしまえば、「強者は強者になるアドバンテージを持ち、弱者には逆転の可能性が残されていない」みたいな意味ですかね。少なくとも『クビキリサイクル』ではこういう意味で使われていました。
モテる男には「アイツは格好良い」とい評判がステータスになるからますますモテるけど、モテない男には「アイツはキモイ」という評判が足枷になってますますモテない―――と説明すると分かりやすいですかね。キモイとか言うな。うるっさい!
作中で使われていた例で、「MacがWindowsに勝てない理由」と言った方が分かりやすいか。Windowsが一旦シェアを握ってしまえば、ソフトはWindows用ばかりが出るし、パソコン教室などで教わるのはWindows機になるし、ショップでもWindows機を勧められる―――ってなカンジで。後、イメージというか先入観もありますね。負け組イメージというか。
負け組イメージも昔のauみたいに上手に使う方法もありますが、最近のMacのCMとかゲーム業界で言えばドリームキャストのCMみたいに裏目に出ることも多いですよね。正直、一旦負けイメージが付いてしまうと逆転は難しいと僕は思います。 日本でXbox360が売れないのはこの面での理由が強いんでしょう。日本ではちっとも売れなかったXboxの後継機と言われても、強く根付いた負けイメージの方が強い。そこそこ売れたアメリカでは「おぉっ!Xboxの進化型だ!」と思われたネーミングなんでしょうが、日本じゃ逆効果だろうがと。
んで、任天堂の話。 64・GCと二連敗を喫した任天堂の据置機ですが、真の敗北理由は「ROMカセットだから」でも「DVDが観れなかったから」でも「互換性がなかったから」でも「FFとドラクエがPSに行っちゃった」でもないと思います。最後のは確かに大きいと思うけど、何故行っちゃったかの方が重要でしょうが。
結果的には「64の発売がPSから一年半遅れた」が全ての理由でしょう。 ・94年12月3日―――初代PS発売(定価39,800円) ・95年5月―――PS、日本国内100万台の生産出荷台数到達 ・95年7月21日―――PS、型番変更(29,800円に値下げ) ・96年2月9日―――『FF7』のPSでの発売決定 ・96年3月28日―――PS、型番変更(24,800円に値下げ) ・96年6月22日―――PS、型番変更(19,800円に値下げ) ・96年6月23日―――NINTENDO64が発売(定価は25,000円)
資料はWikipedia参考です。 見て分かるように初代PSと64も、発売時の価格は1万5千円もPSの方が高かったんですよね。 ですが、1年半のアドバンテージを利用してPSの値下げ攻勢が功を奏し(てゆうか、64発売の前日に値下げしてたんだ…)、「PSの方が安い!しかもソフトがいっぱいある!FFもPSで出るよ!」とアピールできたワケですよ。これがPS3とWiiのようにほぼ同時期の発売だったら、こんな戦法は使えません。
もちろん64のソフトが揃っていれば状況も変わったのでしょうが、『時オカ』が遅れたり64DDとか謎なことを始めたりしている間に、97年1月に「ドラクエ7のPS発売決定」と「FF7の発売」と事実上の決着。97年の末にはPSの国内1000万台(生産出荷台数)達成となったそうです。
当時圧倒的なシェアを握っていたスーファミ&ゲームボーイの任天堂を、如何にして叩き落したかが分かりますね。日本国内にてゲーム機のトップシェアが入れ替わったのは、据置・携帯あわせても、この一度きりなのだから(WiiとPS3はまだ決着がついていないと考えれば)当時のSCEがどれだけ神がかっていたか伝わるでしょうか。どれだけ当時の任天堂が嫌われていたかということもあるんだろうけど(笑)
PS2とGC(+Xbox)の頃も同じように1年半のアドバンテージと値下げ攻勢でPS2が勝利したワケですが、一旦PSで勝利をしている分だけサードメーカーは集まってくるし続編タイトルは豊富に持っているしで、もっと楽に戦えていましたね……正直、GCの発売時には既に勝負が決まっていたような気がします。「DVDが観れないからGCは負けた」とは僕はどうしても思えません。
で、任天堂とSCEの三度目の対決です。 ハイスペック勝負で挑んだ過去2回の対戦で敗北した身ですから、同じことを繰り返して負けるワケにはいきませんよね。 もちろん携帯機の牙城と日本一のソフトメーカーがあるので、据置で負けたくらいで任天堂自身が崩れることはなかったでしょうが、カリスマだった山内氏から社長を受け継いだ岩田社長にとっては敗北は進退に関わることだったでしょう。
「収穫逓増」を考えるなら任天堂は試合開始前からビハインドを背負っているようなものです。PS2とGCのシェアから考えれば、6−0から1回の表が始まるくらいのハンデがあります。その上で、任天堂が得意なのは送りバントでコツコツ1点を取る野球だという(笑)。コレでは勝ち目がありません。
ならば、自分の得意な土俵で勝負するべきだと。 全体のシェアで負けていたとは言え、任天堂には“みんなで遊ぶゲーム”で一定の評価を持っていたワケですからコレを延長していこう。その為には、これまでに積み上げてきたアイディアが使えるんじゃないか―――と。 DSやWiiって岩田体制になってパッと出てきたアイディアじゃなくて、山内時代からのアイディアを寄せ集めたものなんですよね。Wiiリモコンのポインタはスペースバズーカ(スーファミ周辺機器)だし、似顔絵チャンネルはタレントスタジオ(64DDのソフト)だし、バーチャルコンソールはファミコンミニ(GBAソフト)みたいなものだし、振動はもちろん64の振動パックだし。
S「勝負すっべー。そのかわし、6−0からのスタートだかんなぁ」 任「おう、イイよ。でも、今日は野球じゃなくて相撲で勝負だ!」 S「げげっ!!」
みたいなね。「ゲーム人口の拡大」とか「生活を彩るゲーム機」とか、夢が沢山詰まったことを岩田社長や宮本さんは仰ってくれますし、僕はそれらを応援したいと思っていますが。
「スペック勝負でPS3やXbox360と勝負しても、ますますシェアを失うから」
これが最大の理由だと思います。 もちろん「仕方なく」なのか「俺たちの得意分野でやってやろうじゃないか!」で言えば後者なんでしょうけど、こう思えたのはスペック勝負で敗れた過去2回の対戦があったからでしょう。 なので永田さんなんかは岩田社長に「もしトップシェアを取れている状況でもゲーム人口が減少していたら同じことができたか?」なんてイヤらしい(でもナイスな)質問をしたんでしょう。
なので、「どちらが勝つか」ではなくて僕は「Wiiが成功するか」に注目してきたのです。勝ち組は勝ち組、負け組は負け組と二極化させて逆転の余地を残さない今の社会に於いて―――ひとつの答えを見せてくれるんじゃないかと。
もちろん、携帯ゲーム機では依然として無敵で、ゲームソフトの売上げは10年近く日本一だった任天堂に「負け組」という言葉は失礼だとは思いますが。
「時代の流れ」とか「最先端の技術」とか「業界はこういう方向で競い合うべきだ」とか、もうどうだって良いじゃないか。自分たちが一番得意なものを最高の形で出すだけだと。なので、方向性が全然違う3機種ともが成功してくれたら嬉しいとイイコぶってみるのです。
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テーマ:▼ゲームの話 - ジャンル:ゲーム
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