「そして、あなたが教えてくれたこと………この映画の中と同じです。 人間には二種類いる。立ち上がり戦う者と、とっとと逃げ出す者…… でも一番哀れむべきは、逃げ出して魂までも失くしてしまう奴だ。」
浦沢直樹のブレーンとしても名を馳せた超一流編集者:長崎尚志と、『金魚屋古書店』の芳崎せいむ。二人の才能が重なり、その上で扱う題材は“傑作映画”なんだから面白くならないワケがない。 『MASTERキートン』のようでもあり『金魚屋古書店』のようでもあり、そのどちらでもない一大傑作。この漫画に出会えて良かった、この漫画が存在してくれて良かった―――第1話をスピリッツで立ち読みして衝撃を受けてからの3年間、きっと僕は幸福だったんだろう。
ドラマのプロデューサーを目指してテレビ局に入社した野村マキノは、深夜の映画放送枠に回されて東崋山に出会う。かつて天才クリエイターと呼ばれていた崋山は深夜映画番組のプロデューサーをしながら、悩める人々を勇気付けるためにオススメ映画を提供し続けている変人だったのだが……
というのが、冒頭のあらすじです。 悩んでいる人がいて、主人公サイドが映画を見せてあげて悩みが解決する……言ってしまえば、最近の芳崎先生の作品『OPEN MIND』とか『金魚屋古書店』と同じような構図の物語です。 だからこそ、1話1話を単調にさせず、ありとあらゆる手法でこちらの琴線を揺さぶってくる作業はお手のもの。似たような話はほとんどないですからね。この辺は、18冊もあるのに全く飽きさせない『MASTERキートン』にも近く、なるほど浦沢先生と一緒に話を考えていたという長崎さんらしくもあるなぁという印象。
1話完結のお話としてだけでも素晴らしい出来なのに、“テレビ局”という舞台だからこそ「クリエイターとは」「出世とは」「会社内の勢力争いとは」と訴えかけてきます。 終盤の話の加速はそれこそ『MASTERキートン』を彷彿とさせる“ゆったりとした急展開”でありながら、脇をおろそかにしない完璧な内容で、それでいてちゃんと映画が絡んでくるのだから―――この脚本は芸術ですらあるなと感服しました。『カサブランカ』の回なんか、もう凄まじすぎて言葉にするのが勿体ないくらい。
その他にもお気に入りの回が沢山ありました。 『サンセット大通り』の回は苦しい時に読み返して何度も元気をもらったし、『紳士同盟』の回は涙が出なくなるまで泣きました。泣いた度で言えば『アラバマ物語』の回も凄かったなー。『ふるえて眠れ』の回は最後のマキノの台詞さえなければ神だったのになーと勝手に悔しがったものでしたし、『シェナンドー河』の回も震えまくったものでした。最終巻でも『スティング』の回に号泣したし……
この漫画が終わってしまったのは寂しいけれど、一点の不満もなく全4巻と美しすぎる完結をしてくれたことに感謝をしたいです。漫画の神様、ありがとう。
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テーマ:漫画の感想 - ジャンル:アニメ・コミック
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