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やまなしなひび−Diary SIDE−
hinnyu is the best!
「緻密なグラフィック=美麗なグラフィック」への違和感
・緻密(ちみつ)
 (1)きめの細かい・こと(さま)。
 (2)細かくくわしいこと。細かい所まで行き届いていること。また、そのさま。
 (3)細工が細かくこみ入っている・こと(さま)。

・美麗(びれい)
 美しく立派な・こと(さま)。

 Infoseekマルチ辞書より


 高校生の頃、小論文を書くテクニックとして「小論文とはそれ自体が自分の考えを述べる文章なのだから、“自分は”とか“と思う”などとは書いてはならない(文字数のムダだ)」と教わったことがありました。
 だから―――なのかは分かりませんが。ネット上における文章は往々にして“主語”が抜けがちで、それ故に余計な誤解を生むことも多いです。その一文に「自分にとって」と加えるだけで相手に与える印象は大きく変わるのになぁ……と、常日頃僕は思ってきました。


 「脳トレとかクソつまんねえのに、なんで売れてんだ?」
 これにチョイチョイッと手を加えて、「脳トレとか(自分にとっては)クソつまんねえのに、(世の中では)なんで売れてんだ?」とするだけで印象は違いますよね。口調まで変えてしまえば、「脳トレは自分にとっては面白くないのですが、世の中ではとても人気があるのは何故なんでしょうか?」。ほら、完璧。微妙に意味変わってる気もしますが、小っちゃいこと気にすんな!

 「PS3なんて碌なソフトもないくせに買うヤツの気が知れない」
 これも直してみましょう。「PS3なんて(自分にとっては)碌なソフトもない(と思う)くせにので、買うヤツの気が(自分には)知れない」。口調を直してみると、「PS3は自分にとっては興味を惹かれるソフトがないので、購入する人の気持ちはなかなか想像が難しいです。」。ほら、完璧。


 要は、あくまで“自分の意見”としてそれを言ってくれるのなら一意見として非常に面白いのに、主語(=思っている人)を省くことであたかも世の中のほとんどの人がそう思っているかのように読ませてしまうから、余計な誤解を生むんじゃないかという話。



 「ゲームはグラフィックかゲーム性か」
 こっからが本題。
 「ゲームはグラフィックかゲーム性か」なんて議論は「ブレザーとセーラー服のどちらに萌える?」くらい究極の選択だというのに、どうしてかPS3とWiiの発売前(2006年末)くらいには「ゲーマーはみんなグラフィックを求めているんだ」「いやいや、ファミコン時代からのゲーマーはグラフィックなんかどうでもイイと思っている」みたいに、勝手に“みんなを代弁する”論争が巻き起こっていました。

 「ゲーマーは」とか「ファミコン世代は」とか、関係ないでしょ。
 「俺が(私が)そう思う」で良いじゃん、人それぞれ好みがあって当然。


 ……というのを大前提にして、敢えて言わせてもらいましょう。
 「緻密なグラフィック=美麗なグラフィック」だなんて、誰が作ったか分からないウソ極まりない等式があたかも存在するかのようなことを言うのは辞めてもらいたい。

 ここでもし「誰もそんなこと言ってないと思いますよー」と思った人は、それで結構。ここから先の文章は起こってもいない架空の事件に対して熱弁を繰り広げているだけなので、読む価値はありません。


 「ゲームで一番重要なのはグラフィックだ」。
 そういう意見があるのは認めます。僕だって「一番重要」とまでは思いませんが、同じ内容・同じ価格でグラフィックが良いもの/悪いものを選べと言われたら「良いもの」の方を選びます。

 「緻密なグラフィックにこそゲームの未来がある」。
 ゲームが“3D空間”を描くものである以上、CGの緻密さ・リアルさに未来を感じるのは分からなくもないです。僕は3Dゲーム自体が苦手で、その進化の向こうにあるものを自分が楽しめるとは思えないので、その方向だけに向かわれると困るとは思っていますが。

 「緻密なグラフィックを描くには高性能なゲーム機でなければならない」。
 これはもう意見どうのこうのじゃなくて、純然たる事実なんでしょう。
 PS2とPS3の見分けが付かない僕が言えることではありませんが、WiiとPS3&Xbox360の間には大きなマシンスペックの差があるのは当然ですし、僕にはもうとんと区別がつきませんがPS3とXbox360の間にも大きな差があるんでしょう(HDとフルHDの違いもよう分からん)。
 ここまではまぁ「そういう意見もあって当然」と思います。

 「緻密なグラフィックは美しい」
 これが納得いかんのですよ。

 これは「自分にとって」とかの次元じゃなく、もう文章として意味が分からない。「ペンはおいしいです」とか言われているくらいワケが分からない。「今日の天気はコーヒーカップです」くらいアベコベに思えてしまいます。
 百歩譲って「緻密なグラフィックは美しい」を自分一人の意見として語っているのだとすれば「そ……そういうものですか…」とムリヤリ頭に押し込めるとしても、それを「世の中のゲーマーは皆そう思っている」みたいに言う人いるじゃん。もうなんか趣味趣向とかじゃなくてさ、「男ってホント製図用インクを一気飲みするのが好きだよね」と言われているくらい謎。飲んだことねえよ、そんなもん!というツッコミしか出来ないくらい謎。


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○ 美しい絵とは何か?
 誤解されると不本意なので、もう一度書いておきますが……僕は「ゲームはグラフィックが大切」と言う人も、「緻密なグラフィックで描かれるゲームが好き」と言う人も否定したいワケじゃないです。むしろ、自分とは違う価値観を持った人ということで、どんどん話を聞きたいくらいです。
 言うまでもなく、「PS3やXbox360には価値がない」なんてことも言ってはいません。自分が実際に買うかはともかく、願わくば据置三機種とも共存して長く生き続けて欲しいと思っています。


 僕が違和感を覚えるのは、「緻密なグラフィックは無条件に美しい」という意見だけです。

 まずコレがゲーマー全員の意見でないのは当然ですよね。
 喩えば漫画で考えれば、大友克洋氏の緻密な絵を「美しい」と思う人もいれば、鳥山明氏のダイナミックな絵を「美しい」と思う人もいます。漫画ファンだからと言って、どちらか全員が一方を好きだなんてことは絶対にありえません。


1.被写体の問題
 今から屁理屈を言いましょう。
 大友克洋氏の緻密な漫画を「美しい」と思う人であっても、大友氏が何を描いても「美しい」と思えるかは別の話です。喩えば、大友氏の新作が「ゴキブリとゴキブリが交尾をして大量の卵を産む漫画」だったとしたら、幾ら大友氏のファンであっても「美しい」とは思えないでしょう。ゴキブリの交尾マニアは思うかも知れませんが。

 ハイビジョンテレビのCMを観れば分かりやすいんですけど、ああいうCMで映される映像って大自然などの“生で見ても美しいと思う”ものを被写体にしていますよね。幾ら高画質でモノの陰影までハッキリ見えるからと言って、ゴミ溜めとかは映しませんよね。


 「映像の美しさ」とは被写体の美しさに依るものが大きいのです。
 もちろん被写体が美しければ、映像が緻密になればなるほど美しく見えるのでしょうが……それはあくまで被写体が美しいという前提での話で、「緻密なグラフィックは無条件に美しい」という主張は「何を描くか」という議論を飛び越えてしまっていると思うのです。


 実際問題、ゴキブリの交尾とかゴミ溜めを描くゲームがそうそうあるとは思わないので空論っちゃ空論なのですが……「緻密さ」ばかりが取り上げられて、「キャラクターデザイン」の方は疎かにならないかと心配になるのです。

 喩えば僕は現在Wiiの『パンヤ2』にハマっているので、(Wiiリモコンの操作はひとまず置いといて)「PS3のスペックで女性キャラをより緻密に描くよ」と言われれば「クーのパンツがよりリアルに!」と喜んでPS3を買うかも知れません。
 ですが、「でも、アメリカでも売りたいからキャラクターは全員アメリカ人が好きそうなデザインに差し替えたから」と言われたら、その場で割腹自殺してしまうと思います。


 まぁ……今の喩えは極論ですけど。
 日本の萌え燃え文化が好きな僕からしてみると、海外で作られたゲーム&海外向けに作られたゲームのキャラデザが可愛いとも格好イイとも思いませんし、それがどんなに緻密になっても興味が湧かないというのが本音です。
 これは『マリオ』とか『ゼルダ』もそう。アメリカ市場のデカさはバカに出来ないので、任天堂作品であっても大量に開発費をかける作品はアメリカ向けのキャラデザになってしまいます。『トワイライトプリンセス』のキャラが『ファイアーエムブレム』みたいなキャラデザだったら、断言しますけど僕はもうちょっと頑張れましたもの。

 「緻密なグラフィック=開発費がかかる=アメリカ向けの作品になる」という等式も正しくなく、『アイドルマスター』みたいに国内でのダウンロードアイテム課金で元を取る作品もありますし、こうした作品がもっと増えればイイと思いつつ。『アイマス』は特殊例なのだとも分かってしまうのです。



2.構図の問題
 それがゲームであれ漫画であれアニメであれ映画であれ絵画であれ―――
 “画面”を作る立場の人間は、この「緻密なグラフィックは無条件に美しい」という意見には違和感を覚えると思います。ストーリーがあって、音楽があって、画面が動くゲームならば尚更。

 喩えば、『ファイナルファンタジー』シリーズのムービーシーンに感動した人達が、「リアルだったから」とか「緻密なグラフィックだったから」という理由で感動したとは思えません。あくまで画面の中での“見せ方”でワクワクドキドキさせた結果であって、“緻密さ”はその一要素でしかないと思うのです。正直、『FF8』のムービーシーンの時点で「緻密さ」や「リアルさ」はある程度行き着いちゃっているんじゃないでしょうか。
 ですが、そうしたムービーシーンの評価は「リアルだったか」とか「緻密だったか」とか「解像度がどうのこうの」とかばかり。


 アニメで言えば……演出や絵コンテを軽視して、作画(原画と動画)にしか注目されないのと一緒ですよね。

 作っている側が限られた“画面”という枠の中を使ってどう演出していくかに命賭けているのに、解像度がどうのこうのしか見てもらえないんだったらゲームの中から“演出”力が消えていくと思うんですよ。


 これは別にムービーシーンに限った話ではなく……
 『マリオギャラクシー』のスタッフが「今回はプレイヤーが酔いにくいようにカメラワークに気を使って作りました!」と自信たっぷりに発言されているのを読んで、オイオイ今まではカメラワークに気使ってなかったのかよ…と思ったりもしました。それは他の3Dゲームもそう。

 光源がどうこうとか陰影がどうこうとかで「緻密さ」を追求しているくせに、「みんなが遊びやすいカメラワーク」を軽視してきたのだとしたら……そりゃ「ゲームらしいゲームが売れない!酷い時代だ!」って、それ当然のことじゃねーの?と思うのです。



 まぁ、売れるか売れないかはブランド戦略的なものが大きいでしょうけどね。
 CMや雑誌媒体でアピールしやすかったからか「緻密さ」ばかりをウリにしたプロモーション活動を続けていれば、実際に遊んでみた時のコンテやカメラワークの秀逸さなんてものは買う前の消費者に伝わりませんし。ゲームを買う際の判断材料になってこなかったということもあるんでしょうね……


 極端な話……僕にとっては、「緻密なグラフィックは美しい!」と叫んでいるゲームは「あー、全然映像に力入れていないゲームなんだな」くらいの印象です。その緻密なグラフィックで「何を」「どう」描くかが重要なんじゃねえかと思うのです。


 ここで………こんなに長文書いた後に、一行で済ませられる言い回しに気付きました。

 ゲームグラフィックの進化って、「手段」が「目的」に変わっちゃっているんですよね。


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 一行で言えることをこんなにも長々と数日間かけて書いている間に、PS3の『戦場のヴァルキュリア』の発売日が4月24日に決まったそうです。決算期にムリヤリねじ込んできたりしなくて良かった。
 PS3の「緻密なグラフィック能力」を、「リアルな映像」ではなく「手描きイラストが動いているような映像」に使うというソフト。ゲームシステムは難しそうなんですが、その映像手法は興味深く、僕個人としてPS3&Xbox360のソフトで一番「見てみたい」のはこのソフトかなーと思っています。

 売れるかどうかで言うと……毎度毎度「10年早い」せいで逆に売れないセガらしい結果になっちゃうんじゃないかと不安なのですが、裏を返せば10年後のゲームグラフィックがこっちの方向(リアル系とイラスト系の共存)に進んでいてくれると僕としては面白いかなと思っています。アニメ絵、大好き。



 あー、でもそうか。
 僕のこの長ったらしい文章構造を見れば分かるんですけど、「Wiiリモコンを“振る操作”にばかり使われることへの嘆き」と「PS3&Xbox360の映像表現力を“リアルなグラフィック”にばかり使われることへの嘆き」は似ているんですね。振る操作もリアルなグラフィックも否定したいワケじゃないんだけど、それだけに留まらないで下さいよ、と言いますか。


 喩えば、Wiiリモコンの使い方で言えば『Wii Fit』の「ながらジョギング」とか、『NO MORE HEROES』の“トドメだけ振る操作”とか……転換点になりそうなソフトがチョコチョコと出てきていて、ここからが円熟の勝負になるんじゃないかという時期だったりするので。

 ハイスペック機……特にPS3なんかは、ここからが“PS3ならではの映像表現”を実現したソフトが出てくるのかも知れませんね。単に「リアル」とか「現実に近い」ということではなく、『戦場のヴァルキュリア』みたいな形もそのひとつという。


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