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シリアスな社会的テーマを、ファンタジーというクッションをはさんで描くこと

※ この記事はテレビアニメ版『亜人ちゃんは語りたい』第5話 「雪女ちゃんは冷たい」までのネタバレテレビアニメ版『小林さんちのメイドラゴン』第4話「カンナ、学校に行く!(その必要はないんですが)」までのネタバレを含みます。閲覧にはご注意下さい。


 久しぶりに書きましたね、この注意文。
 調べてみたら、感想メモまとめ以外ではどうやら2015年8月の『がっこうぐらし!』の記事以来1年半ぶりらしいです。それ以降、放送中のアニメについて語る記事は書いていなかったのか……


 今季の私の推しアニメは『亜人ちゃんは語りたい』『小林さんちのメイドラゴン』です。
 毎季、新アニメの第1話はたくさん観るのだけど、全部を観続けることは時間的に無理なので「どれが気に入って」「どれを残すのか」を選別しなくてはならなくて……その時にどんな作品を残すのかで「今の自分がアニメに求めているもの」が分かるし、それは言ってしまえば「今の自分の精神状態」が分かるんじゃないかと思うのです。

 私が推している『亜人ちゃんは語りたい』と『小林さんちのメイドラゴン』は、まさに1月の自分の精神状態を反映していたというか……この二作品、とにかく「前向きになる」作品だったんですね。2017年に入ってから落ち込むことばかりだった自分に前を向かせてくれるパワーがあって、この二作品を楽しみに一週間を乗り切っていました。



 冬アニメが始まる前の12月の時点で、私は「来季は日常+ファンタジーな作品が多いですね。最近のトレンドなのかしら」みたいなことを書いていました。この二作品はまさにそういう作品ですよね。

 『亜人ちゃんは語りたい』は男性教師を主人公にした学園モノでありながら、バンパイアやサキュバスといった亜人(デミ)がヒロインとして登場するファンタジー要素が強く。
 『小林さんちのメイドラゴン』は疲れ気味の独身OL小林さんの家に、人間に変身できるドラゴン少女が訪れてきて、人間とドラゴンの同居生活が始まるという“日常+ファンタジー”の象徴のような作品で。


 もちろんこれは2017年に突然現れたジャンルというワケではなくて……
 例えば『ドラえもん』のような藤子・F・不二雄先生の作品は、普通の子どもの「日常」に未来から来た猫型ロボットとかエスパーとか発明品とかのような「非日常」を加えるSF(すこしふしぎ)というジャンルを確立していました。

 “日常+ファンタジー”って、言ってしまえば古典的というか超王道なジャンルなんですね。



 しかし、この『亜人ちゃんは語りたい』と『小林さんちのメイドラゴン』がその中でも私に響いたのは……この二作品が描いているものってバンパイアやドラゴンがいない私達の世界にもある「社会的な問題」だと思うんですね。
 でも、そういうシリアスな題材をバンパイアやドラゴンといったファンタジー要素をクッションとしてはさむことで重くなりすぎないようにしつつ、主人公である高橋先生や小林さんがそこに向き合ってそこから前に向かおうとすることで、私達の世界にもまだまだ希望があるように思えたからなのかなぁと思います。


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 『亜人ちゃんは語りたい』の世界では、バンパイアやサキュバスといった亜人は遺伝(親がそうだから子もそうなる)ではなく突然変異でなることが多く、ヒロインの一人である小鳥遊ひかりはバンパイアだけど双子姉妹の妹のひまりは普通の人だったりします。
 んで、どの亜人も「普通の人」の中で生活していくには不便もあるので、『亜人ちゃんは語りたい』の世界では社会福祉でサポートされていて、例えばバンパイアのひかりは国から「血液」が支給されているといった描写があります。


 これって、私達の世界での「どうすれば障害者と共生していけるのか」という問題に近いと思うのです。
 車椅子の人が通れるようにスロープにしたり、目の不自由な人でも読めるように点字で案内をしたり、私達の世界にも「障害」を持つ人がしっかりと生きられるような社会福祉のサポートがあります。かつては差別があって、現在ではそういう人も生きられるような様々な制度もあるのだけど、それでも偏見だったり逆に気を遣ってしまったり「迂闊に話題にするのはタブー」だとする空気もあります。


demi1.jpg
<画像はテレビアニメ『亜人ちゃんは語りたい』第1話より引用>

 『亜人ちゃんは語りたい』の第1話にも、デュラハンの町京子がクラスメイト達から「デュラハンであること」の話題を避けられていることに気付くシーンがあります。クラスメイト達は別に悪い人達ではないし、特に町京子に対して悪気があるワケではないのだけど、どこまで触れてイイのか分からずに戸惑って話題を避けてしまったのです。これって私達の世界での、「障害について迂闊に話題にするのはタブーだ」というあの距離感にすごく近いと思うのです。


 先ほどから私は「亜人」ではない人を「普通の人」と書いてきましたが、この言い方だって差別的というか「亜人」に対して失礼な表現だと思いますし、でもじゃあ「何が失礼で何が失礼じゃないかが分からないので話題を避ける」のだったらそれはそれで相手を傷つけることになるワケですし。


 しかし、『亜人ちゃんは語りたい』の「亜人」は私達の世界にはいないあくまでもファンタジーな存在です。故に、この「迂闊に話題にするのはタブーだ」という感覚を“作中の人達”は持っていても“読者・視聴者である私達”は持っていないので、デリケートでシリアスな題材を俯瞰的に見ることが出来ているのだと思うのです。
 例えばこれが車椅子の人だったり視覚障害者だったり聴覚障害者だったりを描いた作品だったのなら、私達のすぐ近くに確かにいる存在なので、距離はそれぞれ違っても「当事者意識」が生まれてしまって「他人事」では見られなかったと思うのです。私の周りにはバンパイアもデュラハンもサキュバスもいないので、『亜人ちゃんは語りたい』は適切な距離で見られるのです。






 では、もう一作品『小林さんちのメイドラゴン』はどうかというと……
 私は当初この作品を「頭からっぽにして観られる日常コメディ」だと思って観ていて、別にそういう楽しみ方をしていても良いと思うし、カンナちゃん可愛いカンナちゃん可愛いだけでも十分楽しいアニメだと思うのですが。

maidragon1.jpg
<画像はテレビアニメ『小林さんちのメイドラゴン』第4話より引用>

小林「これでイイの。こういうのはみんな同じにしておかないと」
トール「どうしてですか?」
小林「……差異をなくすためだよ。男子も女子も日本人も外国人も関係なく、みんな一緒。それが大事」
トール「みんなとちがうとどうなるんですか?」
小林「排除される……こともある。ドラゴンにはそういうのないかも知れないけどね。人間は異物を好まないんだ」
トール「ふーん……愚かですね」
小林「うん、愚かだと思う。でもみんな怖いんだよ、普通とちがうものって」
トール「なんか、分かります……」



 でも、この作品の根底にあるのは「異種族の共生」なんですよね。
 人間はドラゴンを恐れるし、ドラゴンであるトールだって(小林さん以外の)人間を見下していましたが。それでも小林さんとトールは一緒に暮らし始めたし、カンナは人間の学校に通い始めたし。「みんなとちがうと排除される」世界の中で、みんなとはちがうドラゴンと一緒にどう生きていくのかを描くというのなら。

 これもまた、ドラゴンのいない私達の世界が今まさに直面している「様々な人を受け入れる多様性」か「“みんな”を守るために異物を受け入れない排他主義」かという問題に近いと思うんですね。アメリカの大統領令の件もそうですし、イギリスのEU離脱の件もそうですし、日本だって他人事ではない話です。


 でも、そういう政治的な話を漫画やアニメで描こうとすると、すぐに左か右かみたいな話にされたり、作品で描いているものは作者の思想の押し付けだみたいな話にされたりして、フィクションをフィクションと思えない人達が群がってくるので。最初からどう考えてもファンタジーな存在なドラゴンをヒロインにしておくことで、難しい題材を「ま!カンナちゃん可愛いから深く考えるのはやめよう!」とライトに観られるようになっているのかなと思います。




 漫画やアニメにおけるファンタジー要素って、「タケコプターで空が自由に飛べたらとても楽しそうだ」と思わせたり「超能力バトル燃えるぜええええ!」とワクワクさせられたりするだけじゃなく、私達の世界の中の“描きづらいもの”や“描くと重くなってしまうもの”を取っつきやすく描ける効果もあるんだなとハッとさせられました。今までファンタジー要素をこんな風には見ていなかったので。

 そして、『亜人ちゃんは語りたい』と『小林さんちのメイドラゴン』の主人公達は難しい問題に直面してもめげずに前を向こうとするので、これらの作品はあくまでフィクションだしファンタジーだし私達の世界とはちがうのだけど、私達は私達で私達の世界と向き合って前を向いていかなくちゃならないんだと思わせてくれて―――その前向きさが今季の私を元気づけてくれたのです。


 あと、『小林さんちのメイドラゴン』はナチュラルに百合が描かれているのがイイと思います!


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| アニメ雑記 | 17:52 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

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