やまなしなひび-Diary SIDE-

変わらない価値のあるもの

2017年02月 | ARCHIVE-SELECT | 2017年04月

| PAGE-SELECT |

≫ EDIT

何故に『けものフレンズ』のアニメはこうまで楽しいのか

※ この記事はテレビアニメ版『けものフレンズ』第8話 「ぺぱぷらいぶ」までのネタバレを含みます。閲覧にはご注意下さい。

 以前に『けものフレンズ』の感想を聞きたいというコメントをいただいていて、先週末のGyaO!の一挙配信のおかげで全話観ることが出来たので感想を書いておこうと思います!


 記事タイトルに「楽しい」と書いたのでバレバレですが、私は大好きです!
 それぞれの「動物」によって得意なことがちがうのを決してダメなこととせず、「ヒト」であるかばんちゃんの知恵によって、「動物」たちがそれぞれ得意なことを活かして苦手なことを補い合って一人ではできないことをみんなで成し遂げる―――とまぁ、非常に私が大好きな構造の話である上に。

 舞台が、廃墟となった巨大施設というところもワクワクしますし。
 ロードムービーで、基本的に「1話完結」で毎回出てくるゲストキャラがちがうので気楽に観られるのもイイところですね。



 しかし、やっぱり自分がこの作品の「魅力の根本」にあるのはコレだと思うんですね。
 元ネタが「動物園」だということ。

 
 「艦艇」の擬人化である『艦隊これくしょん』や「刀」の擬人化である『刀剣乱舞』なんかが超有名ですが、たくさんのキャラを登場させなければいけないソーシャルゲームは「何かを元ネタに擬人化した作品」はそれはもうたくさんたくさんあります。城、車、駅、家電、競走馬、きのこ、寿司、深海魚、大腸菌……ありとあらゆるものが今の時代は擬人化されています。元ネタがあると、新作ゲームの全く知らないキャラでも「とうとう○○が出たー」と思えますからね。

 擬人化の文化自体はソーシャルゲーム以前よりもあって、それこそ『アンパンマン』なんかはパンの擬人化ですし、美少女化・美少年化の流れも『びんちょうタン』(2003年~)や『ヘタリア』(2006年~)などゼロ年代の中盤あたりにブームがあったんですね。私の大好きな『P.S.すりーさん』も2006年からですし。


 そういう状況ですから、「動物の擬人化」なんてメジャーもメジャー過ぎてこすり尽くされているようなネタだと思うんですね。例えば『つるのおんがえし』なんて鶴の擬人化ですし、犬や猫が人になる漫画やアニメなんて数え切れないほどあることでしょう。実際「動物を擬人化したソーシャルゲーム」は『けものフレンズ』以外にもたくさんあるみたいですしね。



 ですが、『けものフレンズ』は「動物の擬人化」というよりかは「動物園を擬人化した世界で再現している」んです。
 出てくる動物は「犬」や「猫」ではなく、「サーバルキャット」や「コツメカワウソ」といった「名前は聞いたことがあるような気もするけどどういう動物なのかはよく知らないなぁ……」という動物たちばかりです。私達の身の回りにいる動物たちというよりかは、動物園に行って見られる動物たちなんですね。

 『けものフレンズ』のアニメを観ていると、例えば「ジャガーは泳げる」とか「プレーリードッグは挨拶にキスをする」とか知らなかった動物の特性を知ることができるし、逆に「カバは力持ち」「ライオンは普段はダラダラしている」といった自分が知っている特性が描かれるとニヤリとできるし……この感覚は、まさに私達が動物園に行って動物を見ているときの感覚なんですね。

 元ネタとなる「動物」の特徴がみな「キャラが立っている」から、『けものフレンズ』に出てくるキャラもみな「キャラが立っている」ため、サーバルちゃん以外の動物はほぼ1話しか出ていないにも関わらずどのキャラも人気で、Twitterのタイムラインでも連日いろんなキャラのイラストが投稿されているのを見かけます。
 そうしたイラストを見て『けものフレンズ』を知って、「今季のアニメはこれが話題なんだー」とアニメも観るようになった―――というか私もそうなんですが、そういう人は「あれだけたくさんイラスト描かれているからメインキャラかと思ったら1話で出番が終わりなのか!」と驚いたり(笑)。


 でも、こうして順繰りに進むことで「いろんなエリア」を回って「いろんな動物」を見ていくのも、非常に動物園っぽいですよね。「ここは○○のエリアだー」「ライオンが出てくるのはまだかなー」「その前に象がいたぞ!」みたいな。
 動物園をぐるぐるまわっていろんな動物を見て楽しむ休日の一日を、1クールのアニメに落とし込むとこうなるというカンジですよね。「かばんちゃんの謎」や「ジャパリパークの謎」といったストーリーを引っ張るフックも用意してありますが、この作品の根本にあるのはあくまで「動物園って楽しいよね!」ってことだと思うんですね。




 この作品を象徴する「わーい」「すごーい」「たのしー」といった“全肯定”感や、「君は○○が得意なフレンズなんだね!」という相手の長所を褒めて短所を責めない作風や、第1話の冒頭で「食べないよ!」と動物同士で捕食したりされたりの関係にならない世界観だと提示していたことって……『けいおん!』とか『ごちうさ』のような日常アニメの「現実を超越した優しい世界」のように一見は思えるのですが。

 でも、「動物園」って元々そういうところですよね。
 「わーい」「すごーい」「たのしー」で溢れていて、動物たちは個性を尊重されて「そのままでイイ」とされていますよね。「この動物は泳げないのが短所だから無理やりにでも泳げるように教育しよう」なんてしません。それぞれがちがってイイのが「動物園」なんです。
 しかし、本当に野放しにすると肉食動物がほかの動物を食べてしまったりもするだろうから、しっかりと管理された“餌”を与える―――というのは、『けものフレンズ』の中ではジャパリまんで表現されています。

kemono.jpg
<画像はアニメ『けものフレンズ』第7話「じゃぱりとしょかん」より引用>

 7話で博士がジャパリまんについて「各個体向けで、栄養バッチリで、お腹も満たされますが…」と言っています。動物によってちがうジャパリまんが与えられているというのは、動物園での“餌”が動物によってちがうことにも通じますよね。


 『けものフレンズ』の、それぞれがそれぞれを褒めあって、食事の心配もなく、殺しあうこともない理想的な世界って―――決して「フィクションの中だけの夢物語」なんかではなく、「動物園」という確かに実在している場所にあるし、それを作ったのは他でもない「ヒト」なんですね。


 そろそろまとめます。
 記事タイトルの「何故に『けものフレンズ』のアニメはこうまで楽しいのか」という疑問文の答えを一行で説明するのなら、「動物園が楽しいから」だと思います。

 異種族の共存という点では『亜人ちゃん』や『メイドラゴン』に近い作品なようにも思えるのですが、あちらが「人間の世界が“異なるもの”を受け入れられるのか」という社会的なテーマを描いているのに対して、『けものフレンズ』の舞台は「いろんな動物たちが共生できる動物園」なのでアプローチの方向はちょっとちがうかなと思います。

(関連記事:シリアスな社会的テーマを、ファンタジーというクッションをはさんで描くこと


ようこそジャパリパークへ(初回限定盤)ようこそジャパリパークへ(初回限定盤)
どうぶつビスケッツ×PPP

ビクターエンタテインメント 2017-02-07
売り上げランキング : 45

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

◇ 余談
 ここからは最新話(8話)のネタバレもガッツリ含みます。







 8話を観て「今週はかばんちゃんあまり活躍しなかったなー」と思ったのだけど、なるほどそういうことか。
 『けものフレンズ』が描いているものが「動物園」で、管理者となる「ヒト」がいなくなった「動物園」で、たまたま現れた「ヒト」であるかばんちゃんが動物たちの悩みを解決してきたこの作品ですが――――かばんちゃんが介入している部分って実はちょっとずつ減っているようにも思うんですね。

・1話:サーバルとセルリアンとの戦いに直接介入
・2話:動物たちに指示を出して浮き橋を完成させる
・3話:カフェを訪れるフレンズが増えるように目印を作る
・4話:非常口を見つける
・5話:家を作るために二人が協力すればイイのではと提案する
・6話:両陣営がケガをせずに勝負できるルールを提案する
・7話:図書館の本を読んでカレーを作る
・8話:ほぼ何もしていない

 7話のカレーは例外ですが、例えば6話は「ルールを提案」と「それぞれの特徴を活かした戦い方を提案」しているけどかばんちゃん自身は戦わずにライオンとヘラジカの戦いを見ていただけなんですね。5話もビーバーとプレーリードッグが協力することを提案した後は、あまりやれることがありませんでした。

 アルパカのカフェ、ビーバーのログハウス、ハカセたちの料理、ペンギンたちのライブは図書館に遺された情報を元に再現されたもので……言ってしまえば、「動物」たちが「ヒトのいなくなった動物園」で「ヒトの文化を蘇らせている」ってことなんですね。そして、カレーを除けばかばんちゃんはそこに介入せず、あくまで動物たちの手で蘇らせているという。

 そう考えると、この作品のラストは――――





 『けものフレンズ』というプロジェクトは2015年3月からソーシャルゲームが始まり、同年の月刊少年エース7月号から漫画連載が始まり、そして今年の1月からアニメが始まって、始まる順番はバラバラでしたがそれらが同時進行で企画されていたそうです。
 しかし、ソーシャルゲームはアニメが始まる直前の2016年12月で終了、漫画版も2017年1月に発売された号で終了して最終巻が2月に発売されました。アニメが人気になることを予測できず、ゲームや漫画が打ち切られた後にアニメが大人気になった―――と言われているのですが。

 ただ、正直……「それは本当なのか?」という気がするんですね。
 例えば漫画原作のアニメだって、アニメ化によってその作品を知った人が原作を買うことで「原作が一気に売れる」ということがあります。ソーシャルゲームだって、アニメ化のタイミングでその作品を知った人が始めることで「ダウンロード数が一気に増える」ということが想像できます。もっと早く終了していたならともかく、1年9か月も続けていたのなら「来月アニメが始まるんだからそれまで粘れ」って考えるんじゃないですかね。

 そもそもソーシャルゲーム版は、アニメ化(映像化)の発表の際に完全無料化しているので「収益がどうこう」という話でもないと思いますし……



 ソーシャルゲーム版も漫画版も、ジャパリパーク内に「ヒト」がいて、「ヒト」が「動物たち」を管理していた―――と考えると、ジャパリパークから「ヒト」がいなくなったアニメ版はそこからうんと未来の話と想像できるので、ソーシャルゲーム版や漫画版の終了後にアニメ版が始まるのは「収まりが良すぎる」とも思うんですね。
 最初からすべてが計算されていたワケではないにしても、「ソーシャルゲーム版の完全無料化」のタイミング(2016年3月)で終わるタイミングは「アニメ版が始まる前」と考えられていたんじゃないですかねぇ……そもそもどうして完全無料化したのかというと、「お金を払ったのに突然終わるなんてヒドイ!」という文句を減らすためと考えれば合点がいきますし。


 ネクソンの決算説明会でソーシャルゲーム版の再開の可能性は否定的だったという話が出ていましたが、アニメ版の最終回で「動物たちが自分たちの力でジャパリパークを復活させる」→ そのタイミングで「ソーシャルゲーム版も復活」という流れになったら、これ以上ないメディアミックスの美しい完結になると思うんですけど……

 それはそれで「すべては計算通りだった!」というオチに反発もありそうですね(笑)。


[まとめ買い] けものフレンズ ‐ようこそジャパリパークへ!‐(角川コミックス・エース)[まとめ買い] けものフレンズ ‐ようこそジャパリパークへ!‐(角川コミックス・エース)
フライ けものフレンズプロジェクト


売り上げランキング :

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

| アニメ雑記 | 18:00 | comments:0 | trackbacks:1 | TOP↑

| PAGE-SELECT |