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やまなしなひび-Diary SIDE-

変わらない価値のあるもの

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ゲームに時計機能が付いた頃

 私は現在1997年に発売されたセガサターンの『デビルサマナー ソウルハッカーズ』に実況プレイで挑戦しているのですが、なかなか興味深い場面がありました。

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<画像はセガサターン版『デビルサマナー ソウルハッカーズ』より引用>

 このゲームの主人公は「持ち運べる銃型のコンピューター」を持っていて、そのコンピューターに自分の好きなアプリをセットすることが出来ます。「どこでもセーブできるようになるアプリ」とか「周辺のマップが表示されるアプリ」とかを、自分で選んでセットするんですね。今でいうスマートフォンをイメージすれば分かりやすいかなと思います。

 そうした様々な種類のアプリの中に、「現在時刻を表示する」というだけのアプリがあったのです。
 いやいや、こんなもん要らないでしょ。時計ならすぐそこの壁にかかっているのを見るし、ゲームウォッチかよ!―――と思ったのだけど、生配信中にいただいたコメントでハッとしました。これ、セガサターンに付いている「時計機能」を活かそうとしたのか!と。



 「セガサターンって何?」という人だっているでしょうから説明します。

 セガサターンは1994年11月に発売されたセガの据置ゲーム機です。
 3DO(海外では1993年10月発売)、ネオジオCD(1994年9月発売)、プレイディア(1994年9月発売)、セガサターン(1994年11月発売)、プレイステーション(1994年12月発売)、PC-FX(1994年12月発売)、バーチャルボーイ(1995年7月発売)、ピピンアットマーク(1996年3月発売)、そしてNINTENDO64(1996年6月発売)――――と、様々な会社の様々な機種が乱立し、最も過酷なシェア争いが繰り広げられたと言われる据置ゲーム機第5世代の一機種です。

 この世代、「標準メディアにCD-ROMを採用する機種が多かった(それ以前は周辺機器で対応していた)」「それに伴ってムービーや音声が収録しやすくなって、ゲームがマルチメディアと呼ばれるようになっていった」「ソフトの単価も下がった」、「ポリゴンによる3Dグラフィックの表現が標準となっていった」「アナログスティックを採用するゲーム機が現れた」「コントローラを振動させるギミックが出てきた」といったカンジに、ゲームが大きく変わった世代なんですけど……
 話題にされることは少ないのですが、「時計機能を活かしたゲーム」が生まれたというのもこの時代の革新の一つだったんじゃないかと思うんですね。


 今では恐らくすべてのゲーム機に付いている「時計機能」ですが、この時代ではまだ珍しく、(唯一かどうかは自信がありませんが)セガサターンは本体に時計機能が付いている稀有なゲーム機だったのです。

 もちろん「ゲーム」と「時計」の融合の歴史を語ると「ゲーム&ウォッチ」(1980年~)があるのですが、単に時計が付いているのではなく「時計と連動したゲーム」の歴史はこの1990年代中盤あたりが始まりかなと思います。
 今では当たり前に付いているし、スマホ用のゲームなんかはインターネットにつながることが前提なので、逆に「時計なんかと連動したところでゲームが面白くなるの?」と思う人もいるかも知れませんが、これが現在のゲームの礎になっているところがあると思うのです。

 「時計と連動したゲーム」とは、「ゲームを起動していない間も(疑似的に)ゲームが進む」ということですからね。



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<画像はゲームキューブ用ソフト『どうぶつの森+』より引用>

 恐らく世界一有名な「時計と連動したゲーム」は、2001年4月に1作目が生まれた『どうぶつの森』シリーズでしょう。
 時計機能を活かして「前回起動した時から今回の起動までに何日空いたのか」を計測しているので、数ヶ月ぶりに起動したら住民が自分のことを忘れているとか、住民が引っ越しているとかが起こるのです。
 今のはあまり良い例ではありませんでしたが……例えば「お店に売っている品物がリアル1日ごとに変わる」ため、毎日起動してお店をチェックしたくなるとか、昼に子供が買って品切れになっているのを親が夜に起動すると分かるとか、現実世界とあの村がリンクしているカンジが楽しいんですよね。

 また、時計機能はカレンダー機能も兼ねているため、「今日はクリスマスだからクリスマスのイベントが起こる」とか「夏だから夏の虫が捕れる」といったように―――起動する日によってゲーム内容が変わるのも特徴ですね。これは、現在のスマホ向けゲームなどでよくある「季節限定イベント」の先駆けのように思えます(こちらは時計と連動というよりインターネットと連動といった形ですけど)。

 ちなみに、『どうぶつの森』初代が発売されたNINTENDO64には時計機能がありません。同じ第5世代の据置ゲーム機であっても、セガサターンには時計が内蔵されていますが、プレイステーションやNINTENDO64には時計が付いていなかったんですね。
 元々『どうぶつの森』の原型は64の周辺機器64DD向けに開発されていて、64DDには時計機能が付いていたのでそれを使った「時間差のコミュニケーション」の遊びを目指していたんですね。それが、64DDでの開発がストップとなり、通常の64のROMカセットで発売することになったので、ROMカセットの中に時計機能を内蔵したという。

 64がROMカセットを採用したこと、64DDが大失敗に終わったこと―――NINTENDO64というゲーム機は、必ずしも任天堂が当初思い描いた未来にたどりつかなかったと思うのですが、その二つが功を奏して『どうぶつの森』という大ヒットシリーズが生まれたのだから分からんものですよねぇ。




 さてさて。
 しかし、『どうぶつの森』よりも前に「カートリッジに時計機能を付けたゲーム」はいくつも存在します。例えば、1999年11月に発売となった『ポケットモンスター 金・銀』です。『ポケモン』シリーズ第2作目ですね。
 現実時間と連動して「朝にしか出ないポケモン」や「この曜日にしか開かない店」といった要素が出てきました。『ポケモン』は元々、制作者が子供の頃に体験した“昆虫採集”を拡張したようなゲームなので、この進化はなるほど納得―――なのですが、そのせいでバッテリーバックアップの電池の消耗が激しく、およそ2年で電池が切れてセーブデータも消えるという問題が生まれたのだという。

 「時計とちゃんと連動したゲーム」の歴史を考えると、「セーブ機能」の歴史とも絡んでくるんですね。



 歴史を更に遡れば、1995年12月に発売になったスーパーファミコン用ソフト『天外魔境ZERO』も「カートリッジに時計・カレンダーを内蔵して連動するゲーム」でした。
 RPGでありながら、プレイヤーの誕生日を祝ってくれたり、特定の曜日にしか開いていないお店があったり、3月はひな祭り・7月は七夕といったカンジに季節と連動したお祭りが開催されたり―――後の『ポケモン』や『どうぶつの森』がやることを、この時代に先取りしてやっていたんですね。恐るべし、広井王子。

 開発スタッフは別ですが、ハドソンはこの流れを継承して1996年8月発売の『大貝獣物語II』にもこのシステムを採用。セガサターンでも1997年1月発売の『天外魔境 第四の黙示録』なんかに採用されているそうです。
 しかし、『天外魔境ZERO』や『大貝獣物語II』も『ポケモン金銀』と同様にバッテリーバックアップの消耗が激しくて、セーブデータが消えやすいと言われていて、カートリッジに時計機能を内蔵している特殊な仕様なためレトロフリークで遊ぼうとしても正しく進行しないそうなんです。どうしても遊びたかったら、自分で電池を交換して実機で遊ぶしかないのか。




 また、ここまで敢えて触れてきませんでしたが……
 「時計と連動したゲーム」のターニングポイントとして忘れてはいけない商品が、1996年11月に発売された『たまごっち』です。ゲーム機用のゲームではなく、キーホルダーのような形状の玩具で、普段ゲームを遊ばないような層にも大ヒットしました。
 『たまごっち』という名称は恐らく「たまご」と「ウォッチ」の合成でしょう。ゲーム&ウォッチのように時計を見ることが出来るだけでなく、ゲームそのものが時計と連動するようになっています。プレイヤーがゲームを遊んでいない間でもゲーム内時間が生きているため、「餌やり」や「トイレの世話」を一定時間ごとにやらないといけなくて、学校に隠れて持ってくる子供も多発しました。

 その面倒くささと、その後のブーム終焉とで、ゲームの歴史の中ではあまり語られることが多くない『たまごっち』ですけど―――要は、現実時間と連動した育成シミュレーションの先駆けですし、ゲーム内の時間に現実のプレイヤーが縛られるという体験の先駆けだったと思われます。そう考えると、現在のスマホ向けアプリのほとんどは『たまごっち』の礎の上に立っていると言えなくもないのではなかろうか!たまごっち先輩!

 ちなみにゲーム機用にも『たまごっち』のゲームは出ていて、初期のゲームボーイ版は「ゲームボーイの電源を入れている時だけ時間が進む」という仕様だったのが、1998年1月の『ゲームで発見!!たまごっち オスっちとメスっち』はゲームボーイのカートリッジに時計を内蔵するという『ポケモン金銀』仕様だったそうです。




 ゲームボーイやスーパーファミコン、NINTENDO64はROMカートリッジに時計機能を組み込めた一方、プレイステーション(初代)はメディアがCD-ROMだったため時計機能を活かしたゲームは作れませんでした。
 しかし、セガサターンは記事の冒頭に書いたように本体に時計機能が付いています。本体に時計機能が付いているのだから、さぞかし「時計と連動したゲーム」がたくさん出たのだろうと思いきや……この機能、セガはあんまり使わなかったんですよね。何のために付けたのか聞きたくなるし、「付けた機能は意地でも使う」任天堂との差だなと思わなくもないのですが。

 サードメーカーのソフトでは冒頭に紹介した『ソウルハッカーズ』のように「時計を表示する」みたいな使い方をしたり、誕生日を祝ってくれたり、新年のメッセージがあったり……オマケ要素のようなソフトはチラホラあるのですが、『たまごっち』や『どうぶつの森』のようにガッツリと時計を活かしたゲームというのは数少なかったと思います。


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<画像はセガサターン用ソフト『クリスマスナイツ』より引用>

 『クリスマスナイツ』はそんな中、セガ自身が作った数少ない1本と言ってイイでしょう。
 1996年7月に発売された『ナイツ NiGHTS into Dreams...』の体験版というかファンディスクのようなもので、ステージは1つしか収録されていないのですが、クリスマスの期間(11/25~12/25)に起動するとゲームのグラフィックやサウンドがクリスマス仕様にガラッと変わるのです。
 季節によってフィールドがガラッと変わってしまうというのは『どうぶつの森』の先取りと言えると思うのですが、これを製品版ではなく体験版というかファンディスクのようなものでやっているのがセガらしいというか何というか。



 その他でセガサターンの「時計機能を活かしたゲーム」の有名どころと言えば、1997年2月に1作目が発売された『ROOMMATE~井上涼子~』ですね。『ときめきメモリアル』の大ヒット以降、挑戦的なギャルゲーがたくさん生まれましたが、データム・ポリスターのこれもかなり時代を先取りしていたと思われます。
 主人公とヒロインが同居するという設定のゲームなのだけど、時計・カレンダーとガッツリ連動しているため、昼に起動しても彼女は学校に行っていて、深夜に起動しても彼女は寝ているというギャルゲーなのです。

 『たまごっち』のヒットを受けて考えられたのかと思ったけど、『たまごっち』の3ヶ月後に1作目が出ているということは「たまたま同じようなアイディアで生まれたゲーム」みたいですね。
 私は全く知らなかったのですが、同じ1997年2月にパソコン用のゲームで『リトルラバーズ』というこちらも現実時間と連動したギャルゲー(兄、または父になってヒロインを育成するゲームらしい)が発売になっているので……やはりこの時期のトレンドだったみたいなんですよね、「現実時間と連動したゲーム」は。

 話を『ROOMMATE~井上涼子~』に戻します。
 カレンダーとも連動しているので、クリスマスに起動したらクリスマスのイベント、正月に起動したら正月のイベントが見られるのだけど……深刻なバグが多いゲームなので、クリスマス→正月と年をまたぐとバッドエンドになるそうな(笑)。
 セガサターンの前座枠でプレイしようかなと考えたこともあるのですが、調べてみたらこのゲーム、サターンのパワーメモリーの中に入っている全セーブデータをクラッシュさせるバグがあるそうで、流石に『ソウルハッカーズ』の前座には使えませんでした。セーブが消えても惜しくないタイプのゲームに挑戦する際、パワーメモリーを抜いて本体だけにセーブして前座枠に使いますかね。

 バグのところはともかく、「現実時間と連動したギャルゲー」ということでニンテンドーDSで『ラブプラス』(2009年~)が発表された際にはオジサンゲーマー達が「井上涼子じゃねえか!」とザワザワしたという経緯があります。
 また、このゲームはプレイステーション版も出ているのですが、先ほども書いたように初代プレイステーションには時計機能が付いていないため、ポケットステーションをメモリーカードとして使用しないと遊べないらしい。ムリヤリすぎるが、そのおかげでポケットステーションでどこででも井上涼子とお出かけできるみたいな発想は、やはり『ラブプラス』を彷彿とさせなくもない。


【今日の記事で出てきたゲームのまとめ】
・1994年11月 時計機能を内蔵したセガサターン本体発売
・1995年12月 スーパーファミコンで『天外魔境ZERO』発売
・1996年11月~ セガサターンで『クリスマスナイツ』配布開始
・1996年11月 キーチェーン玩具『たまごっち』発売
・1997年2月 セガサターンで『ROOMMATE~井上涼子~』発売
・1997年2月 Windows 95用『リトルラバーズ』発売
・1999年11月 ゲームボーイで『ポケットモンスター 金・銀』発売
・2001年4月 NINTENDO64で『どうぶつの森』発売



 熾烈なシェア争いを繰り広げた据置ゲーム機の第5世代の後、第6世代になると恐らくプレイステーション2もゲームキューブも本体に時計機能を付けていたはずです。携帯ゲーム機でも、ニンテンドーDSやPSPの世代になると時計機能が標準で付くようになります。
 リアルなグラフィックや、インターネット通信の対応などばかりが「ゲーム機の進化」と考えられがちですけど、64DDの話で出てきた「大容量のセーブが出来るようになる」とか、今回のこの「時計と連動したゲーム」もあまり語られないゲーム機の進化だと私は思います。今日の記事に書いた90年代の試行錯誤が、「あるのが当たり前」の時代になった2000年代になると――――

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<画像はWii Uバーチャルコンソール版『東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング』より引用>
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<画像はWii U用ソフト『Wii Fit U』より引用>

 世界中で大ヒットした『脳トレ』(2005年~)や『Wii Fit』(2007年~)は、カレンダーと連動して毎日起動することでスタンプを押していくというゲームでした。一気にプレイするのではなく、毎日ちょっとずつでも起動することで継続して遊ばせようとしたこれらのゲーム……これも、要は「時計と連動したゲーム」なんですよね。

 『どうぶつの森』が1000万本クラスに大化けしたのもこの時期ですし、2000年代中盤あたりは1990年代中盤以降に種を蒔いた「時計と連動したゲーム」が花開いた時代と見ることも出来ます。そして、そこから10年が経つ2010年代中盤になると、みながみな「ログインボーナス」のために毎日ゲームを起動する時代がやってきて、「時計と連動したゲーム」なんて当たり前になっているという。


 時計機能を内蔵したセガサターンの発売が1994年。
 時計機能を活かした『脳トレ』や『おいでよ どうぶつの森』の大ヒットが2005年。

 なんか……うん……
 いつもいつもこういうオチにするのは「またかよー」と飽きられそうなんですけど。



 セガってここでも10年早かったんだな! 


  

| ゲーム雑記 | 17:51 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

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