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『けいおん!』は“仲間”を描き、『かなめも』は“孤独”を描いた

※ この記事はアニメ版『けいおん!』全13話及び、アニメ版『かなめも』全13話のネタバレを含みます。閲覧にはご注意下さい。


 今日は『かなめも』アニメの話です。
 夏アニメが始まる際、自分は当初この作品を視聴予定リストに入れていなかったのですが……大好きだった『けいおん!』が6月に終わってしまって暫く放心状態だった時に、たまたまTVCMで「だいじょーぶい」が流れていまして。
 「あ、『かなめも』も豊崎さんが主役やるんだ」と、視聴することにしたのです。


 言ってしまえば、『けいおん!』→『かなめも』の流れで入ったクチです。
 掲載雑誌もそうですし、主役が豊崎さんってのもそうですし、作品のテイストも似たようなカンジで。ラジオで読まれたメールを聴いても、自分以外にも『けいおん!』からの流れで『かなめも』を観始めたって人は多かった印象です。まぁ、『けいおん!』を観ていた人が多かったというだけかも知れませんが。


 「祖母を亡くして一人ぼっちになってしまった中町かなが、女だらけの新聞専売所に住み込みで働く話」

 『けいおん!』同様、この作品も「女のコ同士のキャッキャッウフフ」を描いた作品でして。
 “楽器”が“新聞”に変わっただけで、やることは大差ないんだろうなーと思って観ていました。3話くらいまでは。
 4話の水着回、5話のお風呂回辺りで心がくじけそうになって、6~7話で持ち直して、8話からは本質的なモノが見えてきて、序盤に感じていた違和感の正体にようやく気付けました。


 『かなめも』は『けいおん!』を裏返した作品だったのだと。
 「大差ない作品」どころか、どっちかというと「正反対の作品」だと気付いたのです。


 もっと直接的な言葉を使いますと―――
 中町かなは、「平沢唯になれなかった」主人公だったのです。


 原作者もスタッフも制作会社もレコード会社も違う作品ですし、アニメの制作スケジュールを考えるに恐らくは「偶然」だと思うんですが。結果的に、『かなめも』は『けいおん!』に対する一つの回答になっていたのが興味深かったです。


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○ 『かなめも』はサブキャラクターを掘り下げない
 「女だらけの新聞専売所」ということでキャラクターが7人もいる作品なのですが、『かなめも』は終始“かな”を中心にして物語が進み、かな以外のキャラクターが「何故この専売所にいるのか?」は最後まで明かされませんでした。
 もっと言うと、かな(と美華)以外のキャラクターは既に“成長しきった”状態で第1話から登場しているので、第1話の彼女らと第13話の彼女らにはほとんど変化がありませんでした(それは、8話で描かれた過去編でも一緒)。

 『かなめも』はあくまで“中町かな”一人の成長を描いた物語だったのです。
 (敢えて言うならば美華も成長したのかも知れないけど……したのかなぁ…)


 『けいおん!』と比較すると凄く分かりやすいですよね。
 『けいおん!』の場合は順々に“メインとなるキャラクター”を入れ替え、1~3話は唯、4~6話は澪、7話は憂で、9~10話が梓、11話は律……と、それぞれメインの回を設け、それぞれが成長して軽音部の“仲間”になっていく過程を描きました。
 その結果、『けいおん!』はサブキャラクターの人気が非常に高い作品となりました。というか、澪や梓を「サブキャラクター」と評するのは抵抗あるくらいですもんね。



 なので、自分は『かなめも』に対して中盤くらいまで「こんだけキャラ揃っているのにどうして掘り下げないんだろう」と疑問でした。これだけのキャストがいるのに、勿体ないなーと思っていました。


 でもそれは、この作品が“かなの孤独”を描いていたからこそだったんですよね。
 必要以上に関係を深くは出来ない。もっと言うと、互いを「掛け替えのない存在」と思っているゆめ&ゆうきや、幼女ならば誰でもイイはるかさんなんかが、“かなの孤独”を際立たせていたというか。
 かなを象徴する「バリアー、バリアー、バリアー」という台詞は、言ってしまえばATフィールドですもんね。他人を拒絶する心の壁。



○ “大切な場所”や“掛け替えのない仲間”なんて出来やしない
 このアニメが牙を剥き始めたのは、間違いなく8話の「マリモ姉さん」からでしょう。

 「祖母を亡くして一人ぼっちになってしまった中町かなが、女だらけの新聞専売所に住み込みで働く話」って言葉にしてしまえば1行ちょっとで終わってしまうのだけど、よくよく考えなくても物凄く悲惨な境遇ですよね。
 そのため、かなは“独り”になることを恐れ、怖がり、「もう2度と体験したくない」と思っていた―――だから、専売所にやってきて“仲間”が出来たのが嬉しかったし、この場所にずっといたいと考えていたんじゃないかと思います。

 でも、専売所は「そんな場所」ではない。
 かつて専売所にいたマリモ姉さんが専売所を辞めて寂しくないかと尋ねたかなに、代理は「あなたもいつかはここを出て行くのよ」と言いました。かなだけじゃなく、ゆめもゆうきもひなたもはるかも、いつかは専売所を出て行くのです。

 象徴的だったのは11話。
 メンバーが順々に風邪で寝込んでしまう回だったのですが、かなが「代理がいなかったらここはどうなってしまうのー!」と焦っていたのとは対照的に、代理がいなくてもみんな普通に通常業務をこなしたんですよね。
 それはゆうきもゆめもかなも一緒。かつてこの場所にいたマリモ姉さんも一緒。誰かが抜けても、他の誰かで補えてしまう……当然ながら組織とはそういうものなのです。


 専売所は「永遠にいて良い場所」ではないし、従業員は「永遠の仲間」ではない―――
 そのことに気付いたかなは、ずっと“孤独”の恐怖と戦い続けることになります。



 この視点で『けいおん!』と比較してみると、残酷なまでに対照的ですよね。
 「勇気を出して一歩を踏み出せば大切な場所が見つかるから!」と、唯は言っていました。
 「律っちゃんの代わりなんていません!」「唯先輩がいないなら辞退すべきです!」、軽音部の5人は“あの5人”でしか成り立たない大切な掛け替えのない存在でした―――

 でも、誰もがそんな場所を見つけられるワケではありませんよね。
 『かなめも』の関係は、“たまたまあの専売所で働いている”関係に過ぎません。
 中町かなは平沢唯にはなれなかった―――“大切な場所”も“掛け替えのない仲間”も見つけられず、いつか再び自分が独りになる日を恐れていたのです。



○ 私もまだ“旅の途中”―――
 そんなかなの葛藤を救ってくれるのが、たまたま道端で会ったマリモ姉さん……というのは、「いくらなんでも御都合主義だろ!」と思わなくもなかったんですが(笑)。でも、マリモ姉さん以外にかなを救えるキャラはいないんですよね。


 マリモ姉さんは、かつて“かな”のポジションにいた人物。
 専売所を卒業した彼女は、新しい場所でまた彼女らしく生きていました。
 残してきた故郷を想って泣くよりも、旅で出会える沢山の楽しいことを大切にしたい―――


 おばあちゃんが死んでしまって“孤独”になってしまい、
 これから先も沢山の別れがあって“孤独”に直面していくんだろうけど、だからこそまた新しい出会いや出来事があるはず。


 最終話、自分の書いた日記帳をパラパラとめくっていたかなは、白紙のページ=おばあちゃんが死んでしまった日を見つけます。哀しい、とても哀しかった日の記憶。
 でも、13週かけてちょっとずつだけど成長したかなは、白紙のページを眺めながら「だいじょーぶい」と優しく微笑みます。ページをめくると、専売所のみんなや美華に出会えた日のページが―――またこれからも、沢山の楽しいことが待っているはず。

 新しい日記帳を欲しがっているかなのために、専売所のみんながこっそりとカンパをしてかなに渡します。そして、それに気付いたかなは、ひっそりとみんなへのお辞儀をします。
 “永遠にいられる場所”ではなかったかも知れない、“掛け替えのない仲間”ではなかったかも知れない。でも、ここで出会えた沢山の出来事や仲間は紛れもなく“掛け替えのない思い出”で、だからこそ今度は「迎える側」として新しい出会いを楽しみたい―――


 ずっとずっと“孤独”を描いてきたからこそ、
 それらが昇華されていくラスト2話はとてつもなく感動しました。本当に良い作品でした。


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 『けいおん!』と比較して「『かなめも』は素晴らしかった!」と言ってしまうと、『けいおん!』がダメな作品だと言っているように誤解されてしまうかも知れませんが……そういうことではないです。僕は『けいおん!』も大好きです。平沢唯は俺の嫁です。


 でも、『けいおん!』が描いていた「キラキラした青春の時間」は誰にでも訪れるワケではない、とも思うのです。
 『かなめも』は「それでもイイじゃない」と言ってくれました。かなは最後まで自転車に乗れませんでした。新聞屋さんとしてダメダメなのは本人が一番分かっているはず。でも、それもまた“旅の途中”なんですよ。



 ハデな作品ではなかったと思います。
 サブキャラクターを掘り下げない手法なんかは、この御時世ではリスキーな選択をしたとも思います。

 でも、この作品がそうまでして描きたかったものを自分は大切にしたいです。
 アニメの後半まで待たずに脱落してしまった人や、逆にラスト付近だけ観たって人もいるかも知れません。そういう人達に向けて、『かなめも』アニメが描こうとしていたものが少しでも伝われば良いなと思い、この記事を書きました。


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| アニメ雑記 | 18:02 | comments:7 | trackbacks:1 | TOP↑

COMMENT

実は、軽音部ですら「永遠にいて良い場所」ではないということを
やまなしさんみずから、けいおん!最終回の考察記事でおっしゃっていたので
ご同意頂けるんじゃないかと思うんですが。

結局はいつかは一人立ち?しなきゃいけないということを
中町かなは劇中で気づけてしまった分、平沢唯より成長したと言えるんじゃないかと思うんですよね。

そりゃあ唯みたいに派手に何かができるようになったわけじゃないですし
専売所の仲間達ともそんなに強い結びつきではないかもしれない。
けれども、仲間に貴賤なんてあるのでしょうか。いやない! と思いたい!
その瞬間仲間であったのなら、それはもう大事にしなくてはならない仲間なんですよ。
むしろ短い付き合いになるであろうことがわかってしまった分、
その付き合いを大切に出来るハズなんです。
ああ、これはアレだ。ひと言でいうと「一期一会」だ。

とにかく一期一会で諸行無常な世の中を体得してしまったかなは
成長した…というよりは
「大人にならざるを得なかった」ってことなんじゃないでしょうか。

…保護者を亡くすってそういうことなのか。辛いよ。

| t | 2009/10/03 01:51 | URL | ≫ EDIT

かなめも観ておけば良かった・・・
読んでて鳥肌たって、涙でそうになりましたわ

| he-he- | 2009/10/03 03:23 | URL |

かなめもは原作と違って、かなが黒くなかった。
放送後に原作買ったが、何故黒いところを出さなかったのかって思った。

| ああああ | 2009/10/03 21:31 | URL |

致命的に癇に障る様な話は予想に反して無かったものの、結局どういう話だったのかバランバラン。
途中にあった一期一会を仄めかすかなの不安も、自分の存在意義に悩む流れも、ほとんど消化すると言うより垂れ流すだけでした。
日常を描くのならば、もっと生活臭を増やすべきだったのに、ウケ狙いが多過ぎ。

| ああああ | 2009/10/19 02:43 | URL |

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

| | 2009/11/04 15:46 | |

かなめも二期

管理人さんの洞察力は鋭いですね
私もかなめも大好きです
二期をやって欲しいです

| かな | 2010/07/14 20:20 | URL |

かなめもの原作を読み終わって検索かけたら
ここにたどり着きました。
ブログ主さんは最終巻読まれたでしょうか。
最終巻の6巻はまさにこのブログに書いてある
専売所は「永遠にいて良い場所」ではないし、従業員は「永遠の仲間」ではない
という内容ぴったしでした。
この考察が2009年に書いてあるのはすごいと思いました。
かなめもって色んなネタが入ってて
本当に読み応えあって面白かったです。

| hghgf | 2014/02/11 12:22 | URL |















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