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Wiiが成し得なかった“革命”~その1.アイディア勝負のWiiウェア

 来週の12月2日にてWiiは3周年を迎えまして、4年目に突入します。
 「アレはまだ3年前の話なのか…」というのが正直な気持ちです。母親は『脳トレ』でゲームに引き込んでいましたが、それすらも遠い目で見ていた父親が『Wii Sports』に引き込まれたあの日の衝撃は凄まじかったなあと思い出します。


 「Wiiのバブルは終わった」「体感ゲームは飽きられやすい」
 そういう声もチラホラ聞こえますし、実際に本体売上げは下降しているのでそれを否定するつもりはないんですけど。『Wii Sports Resort』は130万本を突破、『Wii Fit Plus』は80万本を突破で恐らくミリオン当確というところで、これらのソフトが100万本前後売れる土壌を作ったというのは素直に評価したいなと思います。

 ゲームキューブで100万本を超えるソフトは『スマブラDX』1つでしたからね。
 状況を変えたという意味では間違いなく“革命”だったと思います。(“革命”によって既得権益を失う人々がいるというのも当然と言えば当然。この話はまた違う機会に)



 しかしね、2005年の頃からWii(当時はレボリューションというコードネームだった)の方向性を支持してきた身としては。成し得た沢山の“革命”に「ホントにこれだけのことをやってのけたんだなぁ」と感慨深くなる一方、「成し得なかったことも沢山あったよね」とも思うのです。

 それはもちろん10割打てるバッターなんて存在しないワケで。
 「出来ていないじゃないか!けしからん!」と怒鳴り散らすのではなく、「ここから先はこういうところに力を入れて改善して欲しいかな」という想いを込めて幾つか書いていこうかなと思います。「Wiiの3年間」を自分なりに振り返って感じたことと言いますかね。



 ということで、第1弾はコレ。
 「今の時点では、Wiiウェアは成功とは言えないよね」というお話。


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○ 10年越しの岩田社長の“悲願”
 ちょっとは脚色が入るとは思いますが、ご容赦下さいな。
 自分にとっても思い入れのある話題なので。


 物語は10年前―――
 『大乱闘スマッシュブラザーズ』の初代が発売された直後の1999年から始めたいと思います。現在任天堂の社長である岩田さんは、HAL研究所の社長でした。
 ほぼ日刊イトイ新聞にて『スマッシュブラザーズ』の開発者インタビューが掲載されていて、今日注目する部分は最終ページの6ページ目の岩田さんのお話です。ちょっと長めの引用になるので申し訳ないというか心苦しいのですが、2009年の今に読むと考えさせられる話なので引用させていただきます。


<以下、引用>
岩田「最近は1本のソフトを作るのに、本当にたくさんの人手と時間がかかるようになっています。
 ハードの性能が上がっているので当然ですし、ソフトのクオリティを高めるうえでも、ある程度はそれは必要なことだとも思っていますが、今までの文法をなぞりつつ、より複雑で、より大規模で、より豪華になっていくいっぽうのソフト群が作り出す未来が明るいとは誰も言えませんよね。

 大作であるために作業量は膨大で、スタート時に見込んだ開発期間よりも遅れて完成するのは半ば慣例化していて、企画が生まれたときの、新鮮なアイディアや特長を鮮度の良いうちにお客さんに届けることが非常に難しくなっているんです。

 また、ゲームにおける、あらゆるジャンルの開拓はすでにし尽くされたかのように言われているほどの現在の状況のもとで、まだ誰も手がけていない土地を発見し、開拓するのは一筋縄ではいきません。
 大作志向の延長に、これからのゲーム作りの答えがあるとは私は思っていないんです。

―中略―

 ただ、物量ではない部分で満足していただくためには、その代わりになるもので勝負できなくてはいけません。
 もちろん商品ごとに違う方法で構わないから「他人と違う角度でアプローチする」ということをこれからもますます大事にしたいと思っています。だからこそ、チャレンジのしがいがあるのだと思いますし、言い換えれば、「他人がしないことをする」、「他人がしないやりかたをする」ということかも 知れません。」
</ここまで>

※ 改行など、一部手を加えました


 これが99年の岩田さんの言葉。
 96年にNINTENDO64が発売され、HAL研究所は64用のソフトを開発していたのですが……99年になるまで『スマッシュブラザーズ』も『ポケモンスナップ』も発売することが出来ず、『カービィ64』は2000年発売、64版『MOTHER3』に至っては開発中止という時代背景です。

 64がベラボウに開発が難しいハードだったというのもあるんですが。
 “1999年の日本のゲーム業界”の話題を言うと、当時の大ヒットソフトはPSの『ファイナルファンタジー8』。お金をかけた美麗なムービーが話題になった頃です。そして、この傾向はPS2へと引き継がれていきます。


 その後の岩田さんは、2000年に任天堂に入社。2002年に社長に就任。
 2004年の末にニンテンドーDSを発売させ、
 2005年には『脳トレ』『nintendogs』が登場。
 2006年にはWiiと『Wii Sports』が発売となります。


 “大作志向”のアンチテーゼとして“Touch!Generations”がゲーム業界を席巻して……今ではまぁ、アレなんですけど(笑)。DS&Wiiの方向性は、90年代後半に64ソフトの開発に非常に苦労した背景があったからこそというのは間違いないでしょう。





 そして、ようやくWiiウェアの話です。
 Wiiウェアというか「オリジナルのダウンロードソフト」の話題が出てきたのは、Wii発売前の2006年春くらいだったと記憶しています。『N-Styles』さんが2006年6月の経営方針説明会のテキスト起こしなんという凄まじいことをやっておられますので、引用の引用になってしまうのですがちょっと拝借させてもらいます。すみません。

 「テキスト起こし6」のページより。


<以下、引用の引用>
岩田「例えば…、私はよくテトリスの例を挙げるんですけれども、今、テトリスのように遊べばすごく面白いゲーム、でも、画面にはなんの魅力もないと言っていいぐらいシンプルなゲームがあったとして、人はそれを遊んでくれるのかと。テトリスは「テトリス」という名前を知っているからみんな遊んでくれるんです。

 でも、この「ナントカ」っていう新しいゲームは、例えば「5,800円です。これを買ってください。」と言っても、5,800円分にしようと思ってゲームの本筋とはなんの関係もないゲームモードをいっぱい付けたり、ストーリーモードを付けたり、ムービー付けたり、豪華な絵…絵をいっぱい描いたり、キャラクターを乗せたりというようなことが、起こらざるを得ないのが今のパッケージビジネスの宿命なんですね。ですから、これを根本的に変えたいと思っております。

-中略-

 その意味で、ゼルダのような大作もあって良いし、Touch!Generationsのようなユーザー拡大商品もあっていいし、バーチャルコンソールもあっていい。

 我々がしたいことはソフトのボリューム…いわば、プレイ時間とか物量と、値段についてのダイナミックレンジ(最小値と最大値の幅)を広~くとって、今のままでは、えー、ゲーム売り場にはね、分厚い百科事典だけがだぁ~っと並んでいるというような本屋さんであるかのような、大作ばかりがどんどん並んでいく流れになっています。その中には、雑誌も文庫本も、漫画本も今のままではなくなってしまいます。その意味で、こういうダイナミックレンジを広くとるという、えー、ことが必要だと思われます。」
</ここまで>



 この頃には「Wiiウェア」という言葉はなく、「バーチャルコンソール」という言葉の中に「旧作ソフト(現在のバーチャルコンソール)」も「新作ソフト(現在のWiiウェア)」も含まれています。

 99年のインタビューと合わせると分かりやすく。
 喩えば『トワイライトプリンセス』のような開発に数年かけた大作ソフト(ワールドワイドで大きな売上げが期待できる)をパッケージで売る一方で。
 アイディア勝負の完全新作ソフトを500円や1000円で売り出すためにダウンロード販売の道を作れば、「少人数で」「短期間で」作られたソフトが話題になるかも知れない―――ファミコンとかそれ以前の時代のように、そうやって有名になったクリエイターさんが沢山出てくるかも知れない。

 だから、自分はWiiウェアに大きな期待をしていました。
 サービス開始は他の機種に比べて後発でしたが、ソフト投入やCM展開など、Wiiというハードを挙げてWiiウェアをプッシュしていると強く感じます。


 ということで、Wiiウェアは岩田社長が10年近くかけてようやく実現した“悲願”だったんだね!
 良かった良かった!これでみんなが幸せになれるね!




 とはいきませんでした。
 少なくとも2009年の段階では、思ったようにはいかなかったと言わざるを得ません。


 Wiiウェア&バーチャルコンソールのプレイ人数ランキング(2009年8月)

 Wiiウェアのランキング上位勢を並べてみると……
 『ポケモン牧場』『小さな王様と約束の国 FFCC』『もじぴったん』『ロックマン9』『ピンポン』『珍ポ』『Dr.マリオ』『ボンバーマン』『ポケモンスクランブル』……


 ほとんどシリーズソフトなんですよ。
 『ポケモン』や『FFCC』は元々ブランド力のあるシリーズで、多分パッケージソフトとして売り出してもそれなりに売り上げるであろうソフトですよね(『クリスタルベアラー』なんか知らねえよ)。
 『ロックマン9』やコナミのReBirthシリーズはバーチャルコンソール的な根強い人気を持つソフトで、『珍ポ』や『ディシプリン』なんかはネット上での口コミを狙ったソフトで―――



 「Wiiウェアに期待していたことってこういうことか?」と思ってしまうのです。
 何と言うか……物凄く「マーケティング重視」のソフトばかりが上位に来ていて、それはある意味では当然のことなんですが。資本を持たない人(会社)がアイディア勝負のソフトを出して一気に注目をあびるような未来をイメージしていたのに……と、思ってしまうというか。

 “アイディア勝負のWiiウェアソフト”と言えば、
 『ロストウィンズ』とか『グーの惑星』とかが話題になりましたけど、この2作品はどちらも海外から生まれたソフトです。「大金を集めた超豪華なソフトは海外メーカーには適わないけど、日本のゲームメーカーには“アイディア”があるからね!」みたいなことって、よく言われると思うんですけど……

 少なくともWiiウェアでは全然“アイディア勝負”のソフトが出てきていないというか。


 『珍ポ』は“アイディア勝負”?
 でも、アレは「話題になるためには何をしたらいいのか」みたいなアイディアですしねぇ。





 そんなこんなで、Wiiウェアにテコ入れが入ったのはつい先日。
 ショッピングチャンネル内から「Wiiウェアの体験版ソフト」がダウンロード出来るようになりまして……そのラインナップが。


・『ポケモンスクランブル』
・『ポケモン不思議のダンジョン』
・『グーの惑星』
・『光と闇の姫君と世界征服の塔 FFCC』


 シリーズソフトばかりという(笑)。
 権利上の問題もあるんでしょうけど、これらのソフトは(特にポケモンは)放っておいても売れるじゃん!とは思わなくもないです。『オーバーターン』とか『Madsecta』とか、ああいう「売れていないけど評価が高いソフト」を期待していたんだけど……



 というのも、このWiiウェア体験版って「売れていないけど評価が高いソフト」に注目を集めるためのサービスではないんですよね。先月の決算説明会での質疑応答にて、岩田社長のコメントをまたしても引用させてもらいます。


<以下、引用>
 それから、WiiウェアやDSiウェアの現在の販売状況ですが、それほど大きな市場になっていないのは事実でして、WiiのショッピングチャンネルやDSiショップという売り場があるんですが、今の売り場は、指名買いのできる人が商品名を知っていてお店に入って一目散にその商品の所へ行き、それを取り上げてわき目も振らずにレジに持って行き、立ち去っていくという構造にしかなっていないと思うんです。
 私は社内でも同じことを言っていまして、要するにこれでは、知っているお客さんしか買えないので、知らないお客さんも入れるようにしようということです。

 ちょっと実験的に、「Wiiウェアにもし試遊版があったらお客さんは広がるだろうか」ということで来月にも(少数のソフトで)実験をするつもりなのですが、ただ、私自身は、実は試遊版は決定的な答えだとは思っていません。
 恐らく、用もないのにそういう場所(WiiショッピングチャンネルやDSiショップ)に行く理由ができない限りは、デジタルに物を売るということは盛んにならないと思っています。
</ここまで>

※ 改行・強調など、一部手を加えました



 つまり、「Wiiウェアは売れるソフトと売れないソフトが決まっているよね」という次元ではなく
 「Wiiウェアって全然売れていないよね」というところから体験版サービスが始まっているのです。


 そう考えると、体験版に『ポケモン』のような人気シリーズを出すのも当然ですよね。
 Wiiウェアを知らない&興味ない人を「Wiiウェアってのがあるんだよー!」と呼び寄せるのに、『ポケモン』と『Madsecta』のどちらが有効かは言うまでもありませんから。


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 個人的には、「ショッピングチャンネルの起動が遅い」というのが一番のウィークポイントだと思っています。だから体験版の配信では状況は変わらないんじゃないかと。

 喩えば『ニンテンドーチャンネル』でソフトの映像を眺めていて、「ちょっと公式サイトを見てみたいな」とか「ショッピングチャンネルで買おうかな」と思っても、他のチャンネルを起動するためには『ニンテンドーチャンネル』を終了しなくてはならないというのは非常に面倒です。


 以前書いた「マルチタスク化」の話は夢物語だとしても……
 現状のように「紹介映像を観るのはニンテンドーチャンネル」「公式サイトを観るのはインターネットチャンネル」「ダウンロード購入はショッピングチャンネル」と用途が分かれていて、それぞれの切り替えに時間がかかるというのは非常に痛いと思うんですよ。

(関連記事:Wiiチャンネルはマルチタスク化してこそ真価を発揮すると思いました


 この辺は「オンラインに弱い」上に「OS作りに(マイクロソフトのような)ノウハウがない」任天堂だから仕方がないところもあるんですけどね……そして、現行機ではもうどうしようもないという気もするんですけどね。



 ダメだ!ネガティブになってきた。こういう時こそポジティブシンキング!

 じゃあ、出来ることは何なのかと言えば―――
 面白いWiiウェアのソフトを遊んだらブログにて猛プッシュするとか、そういう地味なところから応援していくしかないのかなぁと思ったり。それで『珍ポ』は売れたワケですからねぇ。そうやって「面白いソフト」を話題に出していく方が、「Wiiウェア全然売れてねえ!」と嘆くよりも健全な気がします。


 この記事の存在意義は何だ。
 1年後か2年後かにこの記事を読み返して、「こんな時期もあったんだねぇ」と思えるようになっていればと思います。

| ゲーム雑記 | 18:26 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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