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同じ空を見上げて~『けいおん!!』が描いた卒業~

※ この記事はアニメ版1期『けいおん!』全14話及び、2期『けいおん!!』の全26話及び、原作コミックス版の全4巻のネタバレを含みます。閲覧にはご注意下さい。


 今日の記事は、2期26話「訪問!」までのネタバレと、
 原作コミックス4巻までのネタバレを含みます。



 『けいおん』面白かったね語りの第2弾です。
 こればっかしは“ケジメ”として書かなきゃならんでしょう。20話放送時点で書いたこの記事。


 梓は「幸せです!」と言った、「幸せでした!」ではなく。


 ぶっちゃけこの考察間違ってましたね、スミマセン。

 「間違っていた」と言い切っちゃうのはアレか。「早合点だった」と言う方が正確ですね。
 アレは最終回で梓が「未来の自分達」を信じられるようになる伏線だったと思うんですけど、伏線の時点で「梓は未来を信じられるようになった!」と書いてしまったという。正直、あの時点ではあんなに梓一人に尺を使って描くとは思っていなかったので……ゴニョゴニョ。


 言い訳はいいや。
 あの記事をたくさんの人に読んでもらって、それは嬉しかったんですけど……その後の展開で「全然違うじゃねえかやまなし!」とたくさんの人を混乱させてしまったのかもなぁと反省しました。でも、オンタイムで作品を追いかけるというのはこういうことも楽しさの一つだと思って……あぁ!これも言い訳だ。口を開けば言い訳ばかり。




 済んでしまった過去の言い訳をするよりも、
 26話まで観た上で「梓にとって(先輩達の)卒業とは何だったのか」を語った方が建設的だよね、と今日は気合入れて書きます。



 24話の「天使にふれたよ!」は素晴らしく感動的でしたよね。
 自分は「泣きじゃくっている2年生を卒業生が慰めている」→「卒業生に上履きをもらってニコニコしている2年生」→「卒業生二人が飛行機雲を見つけて一緒に空を見上げる」と繋がっている3つのシーンが凄く好きで。何度観てもあそこで泣いてしまいます。あの徐々に解放されていくカンジが、梓の心を解放していくカンジにマッチしているんですよ。


 そのシーンの歌詞がこちら――――


「駅のホーム 川原の道
 離れてても 同じ空を見上げて ユニゾンで歌おう」

 ――「天使にふれたよ!」の歌詞より



 歌詞とカットがシンクロしているのはもちろんなんですけど、
 この「同じ空を見上げて」の部分には、伏線があったんですよね。

 いや、もっと踏み込んで書くのなら……『けいおん!!』アニメ2期は繰り返しコレを描いていたとも言えます。だからあのシーンは非常に心を打ったし、「天使にふれたよ!」の「これからも仲間だから」の歌詞が説得力を持って、決して薄っぺらくはならないんです。



 ということで、今日はその辺の話をします。
 唯達よりも前の世代の卒業生―――「曽我部 恵」先輩と、「山中 さわ子」先生が鍵だったよねというお話。


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○ 「曽我部先輩の卒業」のちょっと前に……(気にならない人は読み飛ばし推奨)
 梓の話をする前に、曽我部先輩の話をしなくてはならないのだけど……
 その曽我部先輩の話の前に片付けなきゃならない説明があるんですよね。「曽我部先輩は何学年上だったのか」問題。言ってしまえばミスなんですけど、これが実は『けいおん!!』2期全体を読み解くのに混乱の原因になってしまったというか……。


 まずは“発表順”で説明すると分かりやすいですかね。

 原作漫画版『けいおん!』に曽我部先輩が初登場するのは、まんがタイムきららH21年3月号だと思われます。雑誌の「月号」は数ヶ月早く出るものなので、2009年の1~2月ってところでしょう。多分。自分はコミックス派だったので違っていたらゴメンなさい。

 この頃は唯達は2年生。唯達の学年をプラマイ0だとすると、こういう学年順になります。


+1:曽我部先輩(3年生)
0:唯・澪・律・ムギ・和(2年生)
-1:梓・憂・純(1年生)




 んで、アニメ1期『けいおん!』。放送は2009年4~6月でした。
 曽我部先輩のエピソードは1期には入りませんでした―――が、実は1期もチョイ役で曽我部先輩(らしき人)が映っているんですよね。6話と11話。EDのキャスト表には「生徒会長」としか書かれていませんが、見た目は一緒だし、中の人も一緒でした。恐らく原作ファンに向けてのサービスという意味があったんだと思います。
 アニメ版6話ではリボンの色で学年が確認できますし、11話では唯達が2年時に生徒会長をしているのだから3年生以外はありえませんよね。

+1:曽我部先輩(リボンは緑)
0:唯・澪・律・ムギ・和(リボンは青)
-1:梓・憂・純(リボンは赤)




 ここまでは無問題。
 しかし……どうやら推測するに「アニメ1期に曽我部先輩をチョイ役で出していた」ことを忘れていたためか(各話を分担しているのだから仕方ない気もする)、アニメ2期だと設定が変わっているんですよね。ただし関東組だけの話。

 2期7話の回想シーンに出てきた曽我部先輩は赤いリボンを付けているんですよ。
 そして、優等生の梓が「曽我部先輩って誰ですか?」と訊いている。梓は唯と違って生徒会長の存在くらいは知っているでしょうから、“同じ時期に学校にいなかった”と考えられます。つまりはこういう設定に変わったのです―――

+2:曽我部先輩(リボンは赤)
+1:(リボンは緑)
0:唯・澪・律・ムギ・和(リボンは青)
-1:梓・憂・純(リボンは赤)


 つまり、曽我部先輩の卒業と入れ替わりで梓が入学してきたので、梓は曽我部先輩を知らない―――と。これが「梓の物語」に重要な要素になってきます。



 ですが、「1期と設定変わってるじゃねえか!」とツッコミが入ったせいか。
 どうやら関東(TBS)以外の地域での放送では、1期の選定に準拠する形で曽我部先輩のリボンは緑色に直されたそうです。

 リボンの色だけを直せばイイって話じゃないと思うんですけど(笑)。


 当然、アニメ2期全体の構成を考えれば「梓と曽我部先輩は3学年差」という前提でストーリーが作られているワケです。2期7話が伏線となって、2期24話や26話にかかってくるワケです。あの段階ではもうストーリーの見直しなんか出来るスケジュールじゃありませんしね。
 関東以外でのテレビ放送では修正されましたけど、ストーリーラインとしては「3学年差」が前提なので、この記事の中でも「3学年差」という設定のつもりで書こうと思います。




○ 「曽我部先輩の卒業」
 2期7話の内容を覚えていないって人もいらっしゃるでしょうし、簡単におさらい。

 曽我部先輩が作った「秋山澪ファンクラブ」は、曽我部先輩が卒業した後も存続して、新入生もファンクラブに入っていたほどでした。色々あってファンクラブ会長を引き継いでいた和は、ファンクラブのみんなを喜ばせるために「お茶会」を開いてくれないかと軽音部に提案します。


和「曽我部先輩の望みは、ファンクラブを継続させて盛り上げることだから…って。
 お茶会で、ファンクラブの現役会員達が楽しんでくれればそれで満足だから…って。」



 ファンクラブを作った曽我部先輩は、自分が去った後もファンクラブが続くことを願ったのです。
 曽我部先輩自身はサークルの旅行でお茶会には来られないのだけど、「それでも構わない」とのこと。


唯「なんか、大人な発言……」
ムギ「女子大生だもんね」
律「卒業して大人になって、澪ファンも卒業したってことかー」


 “大人”になった曽我部先輩を軽音部のみんなは「そりゃそうだよね」と受け入れます。
 梓一人を除いては。


梓「そんなことないです!きっと予定がたまたま重なって仕方なかったんですよ!」

 梓は「先輩の卒業」を経験したことがありません。
 軽音部には1学年上の先輩しかいなかったし、唯達と違って曽我部先輩との接点もありません。唯達は曽我部先輩の卒業を目の当たりにして「先輩が学校に来なくなること」「大人になっていく先輩を見送ること」を経験しているのだけど、この時点での梓はしていないんです。


 だから、一人で足掻くんです。
 曽我部先輩が「大人になった」としても、この場所を大切に思っているはずだ―――と。


梓「送ってあげるんです、曽我部先輩に―――」


 梓は曽我部先輩のことを知りません。
 ファンクラブの現役会員達も(3年生以外は)曽我部先輩のことを知りません。

 でも、ただ真っ直ぐに「曽我部先輩にも届けなきゃ」と思った梓の想いは、学年の差も距離の遠さも飛び越えて届くんです。


曽我部「またステキな贈り物……もらっちゃった」


 この2期7話のラストシーン―――
 梓からお茶会の写真メールを受け取った曽我部先輩は旅行先の夕空を見上げ、同じ時間、桜高で和もまた夕空を見上げているというシーンで幕を閉じます。「同じ空を見上げて」いるんです。


 この回、ここのシーン以外でも「空」のカットが物凄く多いんです。
 元々『けいおん』という作品は空のカットが多いとは思うんですが、この7話は「窓に映った空」や「池に映った空」などまで繰り返し描かれています。
 当時の自分は、これは「梅雨明けを表現している」とか「ピュアピュアハートの歌詞に合わせてある」とか思っていたんですが(もちろんこの意図もあると思います)、24話の「天使にふれたよ!」の伏線でもあったんだなと今なら思います。


 ちなみにちなみに、この回のエピソードの後日譚として。
 20話のライブシーンの観客にこそっと曽我部先輩が描かれています(19話ではムギちゃんがそのことを話していました)。梓の想いが届き、曽我部先輩の中にも「卒業しても変わらないもの」があったという話ですよね。


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○ 「山中さわ子の卒業」
 続いて、2期10話。
 ファンクラブの話を描いた7話以降、8・9・10話と「大人になることに戸惑う唯」についてストーリーが進みます。ずっとこのままみんなで仲良くしていられると思っていたのに、大人にならなくてはいけなくて、いつかはみんなと別れなくてはならなくて――――


 さわちゃん達デスデビルは、かつて桜高軽音部にいた先輩達。
 だから、唯達にとって「現在のデスデビル」は「未来の放課後ティータイム」だったんですよ。


 デスデビルだった過去を封印したさわちゃんにも、自分とは全く違う世界で生きているような紀美さんにも、唯は戸惑います。


唯「ねぇ……憂。大人ってすごいね。
 私も大人になったら大人になるのかな……」



 変わってしまうこと。今の自分と違う自分になってしまうこと。

 でも、「大人になっても変わらないもの」はあったのです。
 さわちゃんは封印を解いてデスデビルの歌を熱唱し、かつての仲間達は熱狂し、唯は気付くのです。


唯「なーんだ。結局、どのさわちゃんでも人気あるんだね」


 このデスデビルのライブシーン、さわちゃん達の回想シーンが入るのですが―――
 卒業式を終えたデスデビルの4人が空を見上げるというカットから、現在の空に繋がっているというところで現在の時間軸に戻るんですよね。ここでもまた4人が「同じ空を見上げて」いるんです。

 “仲間”は時間を飛び越えるんです。



 ちなみにちなみに。
 26話で、紀美さん達がさわちゃん宅にお見舞いに来るシーン……その直前に唯達4人も同じ空を見ているんですよね。アレは2期10話と繋がっているシーンなんでしょう。どちらの回も花田先生の脚本ですし。





○ 「平沢唯・秋山澪・田井中律・琴吹紬の卒業」
 梓は22話で「一人になること」を受け入れました。
 「笑顔でみんなを見送ろう」と決意しました。それは先輩達を想うがゆえの決意だったのだけど、かつて曽我部先輩の時には「卒業しても変わらないものがある」と信じられた梓が、大好きな先輩達には信じられなくなってしまったのです。梓は、経験をしていないから―――“先輩達との別れ”を。


律「なぁ、梓……」
梓「は、はい」
律「これからのこと、なんだけど……」
梓「大丈夫です!」
唯「でも、私達…今まであんまり……」
梓「本当に大丈夫ですから!新入部員ビシビシ勧誘しますし、絶対ゼッタイぜーったい廃部にはしません!」




 24話のこの言葉は、精一杯強がった拒絶の言葉。
 「私一人でも大丈夫です!」と。

 オデコに貼られた絆創膏のように、必死に隠し続けた梓の感情―――


 でも、剥がれた絆創膏は唯が貼り直してくれるんですよ。
 ボロボロになってクシャクシャになっても、全部受け入れて「一緒に前に行こう」と言ってくれるのが“仲間”なんですよ。



「卒業は終わりじゃない
 これからも“仲間”だから」

 ―――「天使にふれたよ!」の歌詞より



 僕らは知っている。
 世代も距離も飛び越えた曽我部先輩の例も、
 時間を飛び越えて“変わらない仲間”だったさわちゃん達の例も―――


 だから、この5人が「ずっと永遠に一緒だよ!」と歌う重みが増すんです。
 


○ 「梓のこれから――」
 アニメ2期終盤の話は、原作終盤の話が出来ていない頃に書かれたこともあって、アニメ版と原作漫画版は細かいエンディングが違います。でも、僕はどちらが正しいかというよりも、アニメも原作も描いてきたものが違うので着地がそれぞれ違うのも当然だと思いますし、違ったおかげでそれぞれ独立したキレイな物語になったと思います。


 象徴的なのが、梓のこれから――の描き方。
 原作漫画版だと、唯達3年生が卒業した後の軽音部に憂と純ちゃんが入部して終わるんですよね。これは原作漫画版がキャラとキャラの関係性を重視して描いてきたから。これで完璧に成立するんですよ。


 でも、アニメ版のエンディングはちょっと違う。
 憂も純ちゃんも「入部する」というハッキリとした描写はないし、憂に至っては「手伝い」であることを明言していました。ラストは「新歓ライブに向けて練習する梓」で締めくくられているんですよね。
 これはアニメ版が“引き継がれていく想い”を描いてきたから。かつて澪がデスデビルのテープを発掘したように。曽我部先輩が卒業した後も澪ファンクラブが存続したように。

 唯達がいなくなった後も、桜高軽音部は残るんです。
 そのためには梓が新入生を入部させなくてはなりませんし、そこで演奏される曲が「ふわふわ時間」なんですよ―――唯も澪も律もムギもいないけれど、4人を知らない新入生の世代に向けて「ふわふわ時間」が演奏されるんですよ。梓はそのために残らなきゃならないんです。


 非常に美しいエンディングでした。
 やっぱり「原作は原作」「アニメはアニメ」でどっちも好きだったなー。


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○ 余談
 1期1話で演奏された曲が「翼をください」で、2期最終話(24話)で演奏された曲が「天使にふれたよ!」というのは……この作品が描いてきたものを象徴しているなぁと思います。


「いま私の願いごとが かなうならば翼がほしい
 この背中に鳥のように 白い翼つけてください

 この大空に翼をひろげ 飛んで行きたいよ
 悲しみのない自由な空へ 翼はためかせ 行きたい」

 ――「翼をください」の歌詞より



 彼女らは「翼」を得られたのだろうか?
 「あの空を自由に飛び回りたい」と願った彼女らが、最終話では「離れてても 同じ空を見上げて ユニゾンで歌おう」と歌っているのだからきっと彼女らは「翼」を得ることは出来なかったのでしょう。


「でもね 会えたよ 素敵な天使に」
 ――「天使にふれたよ!」の歌詞より



 でも、この3年間で出会えた大切なものがある―――
 『けいおん』という作品はこれを描いてきたんだと僕は思います。

(関連記事:「U&I」の歌詞に込められた、『けいおん』を愛した人達へのメッセージ


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| ひび雑記 | 17:59 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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