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色んな人間がいるから世界は面白い。『セパスチャンネル』紹介

『セパスチャンネル』
 DSi用/RPG
 Gモード/開発:seekz
 2010.9.29発売
 500円(DSiショップ専売)
 セーブデータ数:1
 公式サイト


 このゲームは、元々は携帯電話用のアプリとして発売されていたものをDSiウェアに移植したものです。
 なので、公式サイトのスクリーンショットを見てもらうと、これは本当に2010年のゲームなのか…!と思われちゃうくらいのグラフィックだと思います。スーファミ中期くらいの味わい。それを言ってしまえば、DSiウェアは大抵そんなものという気もしますが(笑)。

 しかし、『セパスチャンネル』はシステム面でもものすごいシンプルです。
 ファミコンの標準的なRPGですら当たり前に入っていたような要素も、このゲームには入っていなかったりします。

・装備品がない
 結果、ダンジョンなどの探索の楽しみがありません。

・お金は基本的に回復アイテムを自販機で買うことのみに使用
 そのアイテムも全8種類+ストーリー上絶対に必要なキーアイテムのみ。

・戦闘中以外は回復魔法が使えない
 これはゲームデザイン上どうしようもないんですけどね(回復アイテムなら使えます)。

・マップが狭く、同じ場所を何度も行ったり来たりさせられる
 逆にコレは「マップの再利用」が上手いと肯定的な気分にもなるんですけど。


 自分はPS以降のRPGは「複雑すぎて面倒だなー」と思っちゃっている人間なので、正直これくらいシンプルなシステムはむしろ歓迎なんですけど………このゲームを絶賛している人でも、「RPGとしては凡作」「戦闘の面白みを期待しちゃいけない」と相当に厳しい評価をされているみたいです。ふーむ、そういうものか。自分はラスボス戦とか超興奮しましたけど、それは自分が懐古厨だからなのか。



 しかし、そういった厳しい評価をされている人でも、このゲームを“絶賛”していたりするのですよ。



 このゲームはストーリーが素晴らしいんです。

 いや、もっと言うと……このシンプルなシステムも、ストーリーを描くための装置の一部なんじゃないかと思うほどなんです。


 このゲームのストーリーが描いているものは「世界には色んな人間がいて、だから面白いんだよ」ということ。RPGという枠組を見事に利用してコレを描いたこの作品は、自分にとっては絶賛に値する作品でした。


↓ 以下、感想はクリックで。




○ “自分”を追い求めて
 記憶をなくしてしまったボーイ
 影を失ってしまったガール
 飼い主がいなくなってしまった犬、ザ・ワン


 このゲームの主人公達はいずれも「自分」にまつわるものを失ったところから始まります。
 言ってしまえば、“なくしたアイデンティティ”を探す物語なんです。この手の題材はそりゃゲームだろうがゲーム以外だろうがごまんと扱われてきたと思いますし、自分も食傷気味だったのですが………このありふれた題材を上手くゲームデザインに落とし込んでいるのです。



 例えば。このゲームの目玉機能。
 『ファイナルファンタジー6』の終盤のように、違った場所にいるキャラを切り替えながら進むというシステムがあって――――このゲームの目玉機能としてPVで扱われているのを観た時には「いやいや!そんなありふれたシステムを前面に押し出されても!」と思ったのですけど。

 このシステムはゲーム内の理屈に基づいていて、「この世界を見ているのは主観でしかなくて」「人間の数だけ主観があって」「実は人間の数だけ見えている世界が違うんだよ」という登場人物のセリフによって解放される機能だったのです。見えている世界が一人一人違うことを利用して突破していく―――つまり、このゲームシステム自体が、このゲームで描きたいものは何なのかにしっかりと基づいているんです。

 とりあえず「よくあるRPGシステム」に「独自のストーリー」をくっつけて足し算的に作られたゲームとはちょっと違うんです。
 むしろ、描きたいもののために要らないものをギリギリまで削った引き算的なゲームなんです。



 「装備品がない」というシステムも、そう考えると納得な話なんです。
 このゲームは「自分とは何か」を描くゲームなんで、成長はキャラクター自身の力でしなければならないんです。伝説の剣と伝説の盾と伝説の鎧を身に着けて「オレはオレなんだ!他の誰でもないんだ!」と叫ばれる従来のRPGって、「え?でもオマエが強いのって、剣と盾と鎧のおかげじゃないの?」と思っちゃうじゃないですか(笑)。


 後述する「好きなときに好きなパラメータを上げることが出来る」成長システムも、「人間はいつだって何にだってなれる」というこの作品のメッセージに即しているし。


 同じ道を何度も行き来させられるのも、「状況とメンバーが違うと同じ世界でも別の見え方をする」という演出だと思いますし。




 いや、ちょっと擁護しすぎな気もしてきました(笑)。
 元が携帯電話用のアプリなんで、容量削減のためにしていることもあると思います。むしろそっち目的の方が大きいと思います。でも、その結果としてこの作品のストーリーのメッセージ性を強固なものにしているというのなら、それで十分じゃないですか。このゲームは間違いなくシステムとストーリーが見事に融合した作品でしたよ。




○ 手軽に遊べるRPG
 といったカンジで「ストーリーは王道かつなかなか考えさせられる」一方で、RPGとしては携帯電話用アプリですから「短時間にちょっとずつ進められる」ように配慮して作られています。まずは戦闘・イベント中以外は、どこでもセーブ&ロード可能。これは携帯機用のRPGでは「なきゃ話にならない」と自分は思っています。

 あとは、レベルファイブのゲームのように「全体マップから次行くべき場所が示される」とか「簡単なあらすじが読める」などといったように、久々にゲームを再開しても詰まないような配慮がされているところもポイントが高いです。欲を言うと、これがちょっと不徹底で中途半端な気もするんですけど、あまり親切にし過ぎるとすぐに終わっちゃうという配慮からだったんですかね。
 個人的には中古に売られちゃうワケでもないダウンロード販売のゲームは、「プレイ時間が短くなること」はそんなに気にしなくてイイと思うんですけどね。


 戦闘難易度はちょっとキツめで、単独行動しなければならない序盤はザコ戦も相当緊張感があるんですけど……HP・MPの回復ポイントが頻繁にありますし、チャンネルを切り替えて他のキャラで回復アイテムを購入とかも出来ますしね。


 このゲーム最大の特徴であるポイント振り分け成長システム。
 レベルが上がった際に「攻撃」「守り」「素早さ」「精神力」の4項目に自由に振り分けられるのですが、これをいつでも振り分け直すことが出来るというのが面白いところです。物理攻撃が効く敵が多いところでは「攻撃」を重視して上げたり、精神攻撃が効く敵が多いところでは「精神」を重視して上げたり、とにかく先手を取りたい時は「素早さ」を重視して上げたり―――状況に応じて能力を切り替えながら進むことが求められます。

 この能力の振り分けによって使える特殊技(ドラクエで言う魔法のようなもの)が変わったり、ガードによってMPが回復したり、シンプルなシステムのRPGとは言っても「レベルを上げて物理で殴ればいい」ゲームではなくて………ちゃんと状況に応じてパラメータや戦い方を変えることで、終盤まではレベル上げをしなくても進める絶妙なバランスになっています。
 それでいて、そういうのが苦手な人はレベルをうんと上げれば何とかなるバランスになっているんじゃないかと思いますよ。隠しボスはちょっと……キツイかもですけど………。



 ということで、自分は「RPGとしても」十二分に面白いと感じたゲームでした。

 ただ、やっぱり装備品がないことでダンジョンが「ただゴールを目指すもの」になっていたのも事実ですし。
 パラメータによって覚えられる特殊技が決まっている分、「コイツは攻撃役」「コイツは回復役」と分けざるを得なくて。
 そうすると自由にパラメータをイジれなくなって、せっかくのシステムを活かしきれているかというと……ちょっと勿体ないとは感じました。

 あ、そうそう。自分はこの「パラメータをイジルと新しい特殊技を覚える」というのを終盤にTwitterで教えてもらえるまで気付きませんでした。ずっと初期の特殊技で進んでいたという(笑)。それは僕がマヌケなせいでもあるんですけど、「パラメータを平均的に上げないと特殊技を覚えない」という弊害でもあったと思います。




○ 総評
 携帯電話用のアプリも、DSiウェアも、少ない予算でソフトを投入できる実験場のような場所だと自分は思っているので。
 『フォトファイターX』のように「アイディアだけで押し切った素晴らしいバカなゲーム」もあってイイと思うし、この『セパスチャンネル』のように「画期的なことは何一つやっていないけどマジメに自分達の描きたいものを描いたゲーム」があってもイイと思います。その結果、その「自分達が描きたいもの」を気に入る人は気に入るし、気に入らない人は気に入らない―――というか。


 そう。

 このゲームで描いている「自分は自分でイイんだ」というメッセージからすると、「このゲームはこのゲームでイイんだ」なんですよ。


 こういうゲームがあってイイ。ダウンロード販売ゲームというのはこういうゲームがあってイイ場所なんです。
 だからこのゲームを気に入るかどうかは、「そうだよね。色んなゲームがあってイイよね」と思うか、「いや!ゲームとはこうあるべきだ!」と思うのかの差であって。その意味では、ダウンロード販売のゲームという市場を象徴しているゲームなのかも知れませんね。

| ゲーム紹介 | 17:20 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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