やまなしなひび-Diary SIDE-

変わらない価値のあるもの

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

「鬼ごっこ」や「かくれんぼ」から、ゲームの複雑化を考える

 「ボタンがごっちゃになってしまう病」という記事から派生して、ゲームの使うボタン数についてTwitterであれこれ喋っていたら興味深い反応をもらいました。「パックマンなんかボタンを使わずにレバー1本で遊べますもんね」と。


 これって忘れがちですけど、重要なことだと思うのです。
 『パックマン』(80年)もそうですし、もっと古い『PONG』(72年)とか『ブロックくずし』(76年)とかも確か「ボタンを使わないゲーム」でしたよね。しかし、当時大ブームだった『スペースインベーダー』(78年)は「方向操作+1ボタン」でしたし、後の『ゼビウス』(83年)や『スーパーマリオブラザーズ』(85年)の頃には「方向操作+2ボタン」が主流になっていました。

 『パックマン』って実は、複雑化していく当時のコンピューターゲームの中で「敢えてボタンを使わないゲーム」を提案した“ゲーム人口の拡大”を狙ったソフトだったんですよね。(ポップなデザインも女性受けを狙ったと言われています)




 ところで、この『パックマン』というゲーム―――
 子どもの頃に遊んでいた「鬼ごっこ」とほぼ同じルールなんです。
 『スペースインベーダー』という「敵を殲滅するゲーム」「敵から防衛するゲーム」が大ブームになった後、「ゲーム人口の拡大」を狙って「鬼ごっこ」をゲーム化したというのは興味深いなと、ふと思いました。

 ということで今日は、「遊び」の複雑化と「ゲーム」の複雑化の共通点、及び僕らの根底にある「遊び」がどの程度「ゲーム」の中に落とし込まれているのかを考えていこうかなと思います。「コンピューターゲーム好きが、“遊び”を再分析するとこう見える」という切り口と言えばイイですかね。





ケース1.鬼ごっこ
【ルール】 参加者を「鬼」と「子」に分け、「鬼」は「逃げ回る子」を追いかけて捕まえ(タッチすれ)ば勝利となる。


 流石に「遊び」回の看板タイトル。非常にシンプルで分かりやすいルールです。
 複雑なルールを覚える必要がないので小さな子どもでも遊べますし、道具は不要・場所も問わないためにいつでもどこでも遊べるという“非常にユーザーフレンドリー”な「遊び」になっています。全国に普及しているのも頷けます。発明した人は偉い!(笑)


【似たようなゲーム】
 何と言っても、『パックマン』。
 パックマンは「子」となって、モンスター(鬼)から逃げ回りつつドットを全て回収するという―――言わば「鬼ごっこ」のゲーム版のようなゲームなのです。
 パックマンは通常モンスターから逃げ回る「子」の役目なのですが、パワークッキーを取った時だけは攻守交替して逃げ回るモンスターを追いかける「鬼」の役目になるというのも面白いですね。




ケース2.かくれんぼ
【ルール】 参加者を「鬼」と「子」に分け、隠れた「子」を「鬼」が全て見つけることが出来たら「鬼」の勝利となる。


 「鬼ごっこ」と並ぶ「遊び」回の二大メジャータイトルですね。
 「かくれんぼ」が秀逸なのは、「鬼ごっこ」が持つアクション要素を廃することで“誰にでも遊べる”遊びという位置を確率しているところだと思います。「鬼ごっこ」は足の速い子が有利なため、どうしても年齢差や運動神経が響いてしまいます。そのために、ハンデだったり手加減だったりをしないと「遊び」として成立しないことが多くなってしまうんですよね。

 それに比べて「かくれんぼ」は、体の小さい子どもは子どもなりに有利だったり、知恵を使うことでより見つからない場所に隠れられるなどの要素も多くなり―――鬼ごっこよりは複雑なのだけど、その分だけ万人に楽しめる「遊び」になっていると思います。


 「鬼ごっこ」と「かくれんぼ」は『スーパーマリオブラザーズ』と『ドラゴンクエスト』の関係に似ているかもしれませんね。『マリオ』で挫けてしまった人でも、『ドラクエ』なら「自分にも遊べる!」と大ブームになったのですから。


【似たようなゲーム】
 「隠されたものを見つける」というゲームは非常に多いですね。
 それこそ『ドラゴンクエスト』の宝箱なんかは「スタッフが隠したアイテムをプレイヤーが見つける」という遊びですし、『さんまの名探偵』や『逆転裁判』のようなアドベンチャーゲームにも「該当する箇所を見つける」楽しみがあります。

 逆に「プレイヤーが隠れる」というのは、プログラムされたコンピューターから隠れるという限定的な遊びになってしまうためにそれほど数が多くないですね。厳密には「かくれんぼ」とはちょっと違うんですが、『メタルギア』シリーズに代表されるスニーキングアクションくらいでしょうか。


 面白いアイディアだなと思ったのは『Wii Party』の「リモコンかくれんぼ」です。
 「かくれんぼ」というのは立地が極めて重要な「遊び」ですから、ガチでゲーム化しようとすると箱庭空間を作らねばなりません。隠れた痕跡まで分かる箱庭空間を作るのは大変なのですが、そこを裏返して「隠すのはアナタの部屋です」と発想したのはお見事。アイディアの勝利ですね。




ケース3.高鬼
【ルール】 大まかには「鬼ごっこ」に似たルールだが、「高いところにいる子を鬼は捕まえることができない」「子は一定時間以上は同じ高い場所にいることは出来ない」というルールが追加されている。


 非常に多くの派生系タイトルと、ローカルルールを擁するこれらの「遊び」。
 他にも代表的なものとして……「指定した色に触っている間は捕まらない」という「いろ鬼」や、「こおりと宣言すると鬼に捕まらないが味方にタッチしてもらわないと動けない」という「こおり鬼」、「影を隠すことで自分の身を守ることできる」という「かげ鬼」などの「遊び」があります。


 これらは全て、「鬼ごっこ」に「子の無敵時間」という要素を加えた「遊び」です。
 「鬼ごっこ」というのは非常にシンプルで誰にでも分かる「遊び」なんですが、前述したように「足の速さ」で有利・不利が決まってしまう欠点を抱えています。なので、その不利さを解消するために「子の無敵時間」という要素を加えたんですね。


 「熟練者以外でも楽しめる遊び」を目指した結果、「ルールの複雑化」と「タイトルの多様化」を生んだという……コンピューターゲームの世界でも似たようなことはたびたび起こりますよね。



【似たようなゲーム】
 『パックマン』が「ボタンを使わないシンプルなゲーム」として大ヒットした後、「基本的には敵からは逃げ回る」けど「やり過ごす方法はある」というゲームが沢山出てきます。
 『マッピー』(83年)はドアの開閉によって、『バーガータイム』(82年)は胡椒によって、『ロードランナー』(83年)は穴を掘ることによって「敵をやり過ごす」ことが出来ます。ジャンプによって敵を避けられる『ドンキーコング』(81年)もここに入れてもイイのかも。

 これらのゲームの目的は敵を殲滅することではないのですが、敵から逃げ回るルールにそれぞれのソフト独特の「やり過ごし方」を加えることで戦略性を増している―――という。
 もちろんこれらのソフトも名作だったんですけど、「ゲームが複雑になっている」印象と、当時のゲームに詳しくない人は「どれも似たようなゲームに見える…」感はあるんじゃないかなと思います。




ケース4.缶けり
【ルール】 「かくれんぼ」の発展形の「遊び」。隠れた「子」を「鬼」が探すのは一緒だが、「鬼」は「所定の位置にある空き缶」を踏むことで「子」の捕獲を確定することが出来、「子」は「所定の位置にある空き缶」を蹴りだすことで捕獲済みの「子」を解放することが出来る。


 「かくれんぼ」に「防衛」の要素を加えた高度な「遊び」です。
 「かくれんぼ」の隠れる能力・「鬼ごっこ」の走力に加えて、“どう攻略するか”の戦略性が重要になってきます。「子」は「鬼」の目を引きつけている間に缶を蹴ろうとし、「鬼」はそう見せかけることで「子」をあぶりだそうとするのです。
 また、缶を蹴ることで捕獲されていた仲間を解放できるというルールで、「目的」に爽快感と達成感が増し、「子」同士で連帯感を持つことも出来るという側面があります。


 様々な「屋外遊び」が持つ色んな要素を一つに集約したようなタイトルなため、非常に奥深く、コアな「遊び」ファンからは高い支持を集めている一方で………ルールが複雑なために小さい子どもにはなかなか理解出来なかったり、人数によってはあまり面白くならなかったりするというマイナス点も否めません。


 ルールが複雑化・高度化することで、コアなファンから支持される一方でライトなファンを切り捨ててしまっている……うーむ。このブログで何度書いてきた文言でしょうか。



【似たようなゲーム】
 まんま似たようなゲームというワケではありませんが……
 「様々なゲームの要素を一つに集約」した点や、「目的地に到達することが目的」という点を考えると、『スーパーマリオブラザーズ』なんかが近いのかなぁと思います。ほら、最終目的地に辿り着くとピーチ姫から「もう1回最初からやり直しね」と言われるところも似ていますし(笑)。




ケース5.ドロケイ(ケイドロ)
【ルール】 基本的な構造は「缶けり」と一緒だが、「ドロケイ」は「鬼=警察」「子=泥棒」と“チーム戦”が前提のゲームデザインになっている。また、「缶けり」が「かくれんぼ」のように「見つけること」で捕獲出来るのに比べ、「ドロケイ」は「鬼ごっこ」のように体に直接タッチしなければ捕獲したことにならない。


 非常に多くのローカルルールがありますし、呼び名すら様々だと思いますが、一応基本的なルールはこんなカンジでしょうか。チーム戦になったことで「缶けり」よりも更に戦略性が増し、タッチをされなければ捕獲されないために走力が重要になっています。

 「警察」側には見張り役や巡回ルートの割り振りなどの役割分担が必要で、「泥棒」側は「泥棒」側で囮役や情報伝達役などの役割分担が必要になってきます。そうした役割分担があるために、「警察」側は誰を優先して捕まえるのかという部分まで重要になるという。


 「屋外遊び」の究極の形ですね。もはやこれはスポーツなんじゃないかというほどに。
 隠れる能力・走る能力・作戦を練る能力・チームワーク・予想外の事態に対処できる能力……などなど、総合的な能力がなければこの「遊び」を制することは出来ないのです。


 この奥深さゆえ絶大な人気と熱中度を備えている「遊び」ですが、それゆえに「缶けり」以上に「間口が狭い」のも確かです。誰かが小さい弟なんかを連れてきちゃうと「戦略」を理解されないどころか、捕まった際に「○○くんはどっちに逃げたよー」とあっさりゲロっちゃったりする事態も起こりかねません。

 また、「非常に時間がかかる」のも確か。
 1時間あっても遊び足りず、本格的にやると午後をまるまる消化することになってしまい、いつの間にか「塾の時間だ」「スイミングの時間だ」と人数が減っていることもしばしば。


 ハマれば物凄く面白いのだけど、それを楽しむ環境はかなり限定されている―――という。
 ふーむ。この文言も何度書いてきたことか。



【似たようなゲーム】
 “チーム戦”ということで考えると、タワーディフェンスのようなリアルタイムストラテジー(RTS)のゲームがコレに近いのかも知れませんが……「ドロケイ」の魅力というのは、一人で全てを指揮する楽しさではなく、別の意志と視点を持った仲間との協力にありますからね。「自分が捕まってもう終わりだと絶望していたら、○○くんが颯爽と助けに来てくれた」みたいな。

 そう考えると、(自分がほとんど知らない)海外製FPSのように大人数でチームを組んで戦えるオンラインゲームがコレに一番近いのだと思いますし―――逆に考えると、そこから銃を撃つ要素を廃して「ドロケイオンライン」を作った方が日本では受けるんじゃないかと思ったり。



PAC-MAN & Galaga DIMENSIONS (パックマン&ギャラガディメンションズ)PAC-MAN & Galaga DIMENSIONS (パックマン&ギャラガディメンションズ)

バンダイナムコゲームス 2011-06-23
売り上げランキング : 974

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

 小学校高学年くらいになると、「屋外遊び」で言えば「ドロケイ(ケイドロ)」、「トランプ遊び」で言えば「大富豪(大貧民)」なんかが人気になると思います。ルールが複雑な分だけ、戦略性に富み、毎回違った展開で楽しませてくれるからです。

 しかし、そうした複雑なルールを理解できない年少者がいる場合や、時間や体力が十分でない場合は、そうした複雑な「遊び」ではなく―――「屋外遊び」で言えば「かくれんぼ」とか、「トランプ遊び」で言えば「ババ抜き」なんかが重宝すると思うのです。



 どちらが優れているか、ということではなく。
 TPOに合わせて、求められる複雑さが違う―――というだけの話だと自分は思います。





 「ドロケイこそが“遊び”らしい“遊び”だろうが!」とか、
 「かくれんぼなんかやっているヤツはにわかファンだから、すぐに“遊び”をやめるに決まっている!」とか、「コアゲーマーvsライトゲーマー」の構造にしたがる人々の意見に当てはめてみると不思議なカンジになりました(笑)。




○ 蛇足
 この記事を書く際に、「そういやこんなソフトがあったらしいなー」と検索してみました。

 『パックマンvs.』(ゲームキューブ版)
 『パックマンvs.』(ニンテンドーDS版)


 一人のプレイヤーはパックマン(「鬼ごっこ」で言う「子」)になって、残りのプレイヤーはモンスター(「鬼ごっこ」で言う「鬼」)になるという対戦用パックマンがあったらしいです。自分はゲームキューブを持っていなかったんで存在も「聞いたことがある」程度でしか知らなかったんですが、調べてみたらこの記事の切り口に非常に近いものを感じるソフトだったと思います。


 Wii Uの液晶画面付きコントローラなら、こういうゲームも普通に出せそうですよね。
 E3で試遊ソフトとして出ていた『Chase Mii』というゲームはまんま『パックマンvs.』でしたし(そもそも『パックマンvs.』自体がナムコと任天堂のコラボで作られたゲーム)、“もう一つの液晶画面”があることでこういう遊び方が出来るんだという典型例ですよね。


 Wiiが得意だった多人数プレイのゲームは、液晶コンがあることでまた新たな領域に入るのかも知れませんね。

ナムコミュージアムDSナムコミュージアムDS

ナムコ 2007-10-11
売り上げランキング : 9416

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

| ひび雑記 | 18:22 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

ステルスゲーといえば、アサシンクリードの街中で市民に隠れて行動する、敵兵に囲まれると絶望的というコンセプトは箱庭ゲーとしても斬新だったと記憶しています。ボスと戦闘するときに正面からではなく気づかれないように近づいて暗殺する。だけど正面からでもごり押しで行くこともできるというのは当時、新しく感じました。

| sakuden | 2011/07/19 19:01 | URL | ≫ EDIT

こういう遊びは、年齢層に合わせて複雑になっていく物事と同じだと解釈してました。
ついていける人といけない人がいるのも同じだと。

「隠れても進めるし全員殺しても進める」は、メタルギアソリッドが最初かなと思います。
アサシンクリードの特異性は、人混みに紛れて隠れるソーシャルステルスにあったかと。(一作目はあまりできませんでしたけど)

| 通りすがり | 2011/07/20 13:18 | URL |

ルールが簡単でありつつ戦略(思考)と運が適度なバランスのゲームが理想なんでしょうけど、なかなか見あたりませんね。
トランプの大富豪は基本ルールこそ単純ですが、大富豪の象徴として大貧民とカード交換する特権があるため大富豪が勝ち続けてしまう問題があります。
それを救済する措置として革命等の特殊ルールが設けられたように思いますが、ウィキペディアを見ると特殊ルールが多くて驚いた記憶があります。

| sakura | 2011/07/20 18:41 | URL | ≫ EDIT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://yamanashirei.blog86.fc2.com/tb.php/1270-c38a0ca4

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT