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戦闘力はアテにならない

※ この記事は漫画版『ドラゴンボール』全編のネタバレを含みます。閲覧にはご注意下さい。

 今日は『幽遊白書』についての記事を書くつもりだったのですが……
 先にこっちについて書いておかないと説明不足になっちゃいそうだと思ったので、『ドラゴンボール』の戦闘力についての話を今日は書こうと思います。



 “戦闘力”とは?
 『ドラゴンボール』のサイヤ人編~ナメック星編に登場する「スカウター」というアイテムで測定できる、相手の「強さ」の数字です。「このキャラはどのくらい強いのか」が数字化されたことにより、当時の子ども達のテンションは物凄く上がりました。

・ヤムチャとクリリンはどちらが強いのか?
・亀仙人は今どのくらいの強さなのか?
・一般人と比べて彼らの強さはどのくらいなのか?

 それまでみんなが想像の範囲内で議論していた答えを「戦闘力」は出してくれました。
 また、その一方で強さが「数値化」されたことにより、“より強い敵”の登場がしやすくなり、次々に強い敵が出てくるインフレバトルへと突入していく――――というのが一般的な見解だと思いますし、結果的にはそうなっているのですが。



 以前に書いたように、「“インフレバトルだけでは限界がある”ことに気付いて、逸早く脱インフレバトルを目指したのも『ドラゴンボール』だったんじゃないか」と私は思っているので、実はこの「戦闘力」についても誤解があるんじゃないかと思うのです。

 もちろん作品の楽しみ方は人それぞれですから文句を言うつもりはないんですけど……ナメック星編終了後以降の各キャラクター達にも「今のコイツの戦闘力はどのくらいだろう」みたいな考察が行われているのは『ドラゴンボール』の本質ではないと自分は思っているのです。それを今日は書こうかなと。

(関連記事:『ドラゴンボール』におけるインフレバトルの葛藤


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○ 「戦闘力」とは何か?
 まずこのスカウターという装置の存在理由として大事なことに、「“戦闘力”は常に一定である」という前提があるんです。

 ラディッツやナッパ、フリーザ一味の各キャラクターは戦闘前にスカウターで敵の「戦闘力」を測定する様子が見られます。これは「“戦闘力”は常に一定である」という前提の下に、相手が自分よりも強いかどうかを事前に知るためです。
 彼らの業務を考えると、宇宙にある様々な星に下りて未知の生物と戦う必要がありますから、事前に相手が強いかどうかを知ることでリスクを減らさなければなりません。フリーザやべジータといった最強クラスの戦士ならばともかく、クリリンに瞬殺されるような一般兵でも色んな星に行って色んな生物と交戦しなければなりませんからね。「あ、やべー。コイツには勝てねえや」と思ったら撤退or応援要請をする必要があるんです。


 だから、彼らはスカウターを大事にしていましたし、スカウターで測る「戦闘力」というのを絶対視していたんです。



○ 「戦闘力」では測れない勝敗
 しかし、悟空やピッコロを含む“地球チーム”やナメック星人達は「戦闘力をコントロールできる種族」だったんです。ナメック星人と交戦したドドリアは、戦闘力をコントロールできる種族を「めったにいないタイプ」と言っていました。
 地球人が普通に出来ることなのでこれが常識なのかと思っていたら、宇宙規模で言えば「イレギュラーな存在」だったという。スカウターという製品の存在価値を一気に下げる厄介な存在だったんです、私ら地球人は。株式会社スカウターも株価暴落です。困った困った。


 そもそも、悟空がかめはめ波を撃つ時やピッコロが魔貫光殺砲を撃つ時には戦闘力が変わるのに、どうしてラディッツやフリーザがエネルギー波を撃つ時には変わらんのだ……とは思うのですが。そこはまぁ、「宇宙には色んな種族がいるんだなぁ」で納得しましょう。



 ということで、サイヤ人編は――――

 「戦闘力が高い敵」を「戦闘力が低い味方」がどうやって倒すのか、という構図になっているんです。

 通常時の戦闘力は常に敵側の方が高いんです。
 しかし、ラディッツ戦は「一時的に戦闘力を上げることが出来る」悟飯やピッコロの魔貫光殺砲で、戦闘力の高いラディッツを倒しました。
 ナッパ戦も、戦闘力が圧倒的に高いナッパに対して、戦闘力の劣るピッコロ・悟飯・クリリンが力を合わせて戦うという構図でした。負けましたけど。

 そして、ベジータ戦に関しては―――
 ベジータの戦闘力は18000、悟空の戦闘力は平時8000くらいなのですが、悟空だけが「戦闘力を2倍・3倍に上げることが出来る」界王拳という必殺技を持っていて。悟空が3倍界王拳を使えばベジータの戦闘力を上回れるのだけど、それを使うと反動で悟空の体がボロボロになってしまう―――という絶妙なバランスになっているんです。

 




 つまり、この『ドラゴンボール』の「戦闘力」描写。
 強さを「戦闘力」というもので数字化しながら、でも本当に大事なのは数字じゃ測れないよねと描いているんです。

 フリーザ一味の考え方で言えば、スカウターで「戦闘力」を測って「あー、こりゃ勝てないから逃げようっと」というのが正しい行為です。でも、地球人は足掻くんです。必死になれば何かが変わるだろうから、適わない相手にだって立ち向かうんです。


 その最たるものがベジータ戦のクライマックスですよね。
 圧倒的な強さを誇る大猿ベジータに悟空もやられた絶体絶命のピンチに、地球を救ったのはヤジロベーだったという。インフレバトルの象徴のように語られる『ドラゴンボール』ですけど、最後はちゃんと「弱い者が勝つ」んです。「諦めない者」が勝つんです。


 だから、あれだけ多くの人に支持されたんですよ。
 私達は、子どもも大人も数字で評価されています。テストの点数、成績、大学の偏差値、年収、身長、おっぱいのカップ数……などなど。でも、全ての数字が優れた人間にはなかなかなれません。誰しもがどこかに劣等感と敗北感を抱いて生きています。
 だからこそ、そんな数字だけでは測れないものを信じさせてくれる『ドラゴンボール』が大ヒットしたんですよ。



 ………鳥山先生にそんな「社会風刺」の意図があったとは思いませんけどね(笑)。
 天然で「ただ面白いもの」を描こうとしたらそういう深いものが出来てしまうから天才なワケで。

(関連記事:ベジータは誰に敗れたのか?




「サイヤ人は生まれてすぐ戦士の素質を検査される…
 そのときの数値が低いクズ野郎が、きさまのようにたいした敵のいない星へ送り込まれるのだ…
 ようするに、きさまは落ちこぼれだ」


「そのおかげでオラはこの地球に来れたんだ。感謝しなきゃな
 それによ……落ちこぼれだって必死で努力をすりゃエリートを超えることがあるかもよ。」



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○ 蛇足なお話
 ここで締めておけばキレイな着地になるのに、まぁでも書かないと「なんであのことについて書かないんですか!」と言われるんだろうなぁ……と思うので書いておきます。


 この戦闘力の描写は、ナメック星編に移るとまた違った側面を見せます。
 「戦闘力は常に一定」という設定があるせいで、敵の強さは最初から見えてしまっているんですね。

 スカウターを使えばフリーザの戦闘力は530000と分かってしまうのです。
 だから、ベジータなんかはフリーザ一味の強さをそれぞれ知っていて、「現時点で勝てる敵」を確保撃破していきました。が、フリーザ一味にも隠し玉があって、フリーザやザーボンは“変身”によって戦闘力を飛躍的に上げることが出来ましたし、ギニューはボディチェンジによって敵と戦闘力を交換することが出来ました。



 敵側も“戦闘力をコントロールできる”んです。
 「めったにいないタイプ」とかドドリアさんは言っていましたが、その場にいたオマエ以外は全員そういうタイプだったんだぞ。知らないのはドドリアさんだけだったという。カワイソス。

 ということで、ナメック星編以降は敵もパワーアップ→こちらもパワーアップを繰り返すインフレバトル化していくという。
 なので、「戦闘力の数字化がインフレバトルを招いた」というのは当たらずも遠からずで、「敵も味方も戦闘力で測れない強さを描こうとしたらインフレバトルになっていた」ということなのかなと。


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| 漫画読み雑記 | 17:51 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

元祖は筋肉マンでしょうか? ウォーズマン100万パワー・バファローマン1000万パワー

| kouka | 2011/12/15 07:22 | URL |

私なんかは戦闘力の数値化で最初に思い浮かべるのはキン肉マンですねって書こうとしたら、先に書かれてしましたw
でもキン肉マンに対しては、考察もへったくれもないわけで、伏線と言い出したら、こっちが恥ずかしくなるような漫画ですし、あえて除外したんですよね。


| たまに読んでます | 2011/12/16 12:28 | URL |















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