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「面白いから」買うのではない、「面白そうだから」買うのである

 自分が何度か書いている話に、「こんなに面白くない映画がヒットしているなんてこの国はどうかしている!」とか言っている映画評論家が一番どうかしているという話があります。

 試写会にしか行かない御先生方は知らないのかも知れませんが、映画というのは前払い制です。映画を観る前にお金を払って入場して席に座って携帯電話の電源を切って映画が始まって終わって、ようやくそこで「面白かったかどうか」が分かるのです。

 同じ映画を映画館で何回も観る人はともかく、大多数の人間は「何この映画!超つまんねえええええ!」と思った時には既にお会計を終えているのです。「つまんなかったから金返せ!」と言ってももう遅いのです。



 つまり、「大ヒットしている映画」が必ずしも「満足した人が多い映画」ではないのです。
 「面白い」からお金を払うのではないのです。「面白そう」だからお金を払うのが映画なんです。




 これはもちろん映画に限った話ではありません。
 ゲームもよく「どうしてこんな面白いゲームが売れないんだ!この国のゲーマーはおかしい!」とか言う人がいますけど、ゲームも買ってみて遊び終わるまで「面白い」かどうかなんて分からないんですよ。
 体験版があれば片鱗くらいは味わえるかも知れませんが、ゲームって「20時間目辺りから面白くなる」とか「10時間超えた辺りでダレてくる」とかしょっちゅうじゃないですか。序盤だけ見せる体験版で面白いかどうかなんて判断出来ません(もちろん、ないよりはマシでしょうけど)。

 「大ヒットしたゲーム」が必ずしも「満足した人が多いゲーム」ではないのです。
 「面白い」からお金を払うのではないのです。「面白そう」だからお金を払うのが映画なんです。




 この法則に当てはまらないものもあります。
 「リピート率が高い」「単価の安い」商品は、満足度が売上げにつながります。

 毎朝飲んでいる缶コーヒーは、以前に飲んで美味しかったものを選ぶことが多いですよね。
 毎週読んでいる漫画雑誌は、先週読んで面白かったから今週も買うんですよね。
 毎巻買っている漫画単行本は、前の巻が面白かったから続きを読みたいんですよね。


 逆に言うと、「滅多に買われない」「高額」な商品は、みんなの評判などを聞いて「面白そう」と判断して選ぶしかなくなります。
 みなさんも、自分の詳しい分野ならば「こんな面白くない映画がヒットしているなんて」とか「こんなに面白いゲームが売れないなんて」と思うかも知れません。「メディアの情報に踊らされて真に良いものを選ぶ力のない情弱どもめ!」とまで思っているかも知れません。



 でも、詳しくない分野のものはそうはいかないんです。
 先日我が家のミニコンポがぶっ壊れてしまったために、近所の家電量販店にて新しいものを買おうと物色していたんですが―――ミニコンポなんて4~5年に1回しか買わないものだから何が何やら分からず、「当店人気No.1!」という札が付いたものを「へー、これが評判イイんだ」と思ってしまいましたもの。

 この記事の冒頭で書いたように―――
 その「当店人気No.1!」のミニコンポは別に「満足度の高い商品」ではありません。「これを買えば満足できそうだと思われた商品」なだけです。でも、そう誤解してしまったのです。



 誰だって、詳しくない分野のものは「みんなが選んでいる」に弱いんです。
 まずはそこを受け入れなければなりません。だからこそ、「ステマ」は悪なんです。

(関連記事:「あんなのが売れるなんて理解できない」とか言っている評論家って何なの?


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 「ステマ」が話題になっていた頃、こういうことを言っている人を見かけました。

 「ステマ」を問題視する人は、自分に“真に良いもの”を見定める力がないだけ。
 「ステマ」されようがされまいが、質の悪いものは評判を落として淘汰されるだけ。



 違うよ。それは“自分が詳しい分野”でしか考えていないだけですよ。
 漫画が大好きな人は漫画に当てはめて考えているだけで、映画が大好きな人は映画に当てはめて考えているだけで、グルメが大好きな人はグルメに当てはめて考えているだけで、ゲームが大好きな人はゲームに当てはめて考えているだけですよ。


 「ステマ」が問題なのは、“自分が詳しくない分野”の場合ですよ。
 漫画が大好きな人はクラシックバレエに当てはめて考えてください。
 映画が大好きな人はドラム式洗濯機に当てはめて考えてください。
 グルメが大好きな人は息子を通わせる幼稚園に当てはめて考えてください。
 ゲームが大好きな人は結婚式の二次会の会場に当てはめて考えてください。


 “自分が詳しくない分野”に手を出さなくちゃならなくなった時(いや、これらがたまたま詳しい分野だった場合はゴメンなさい。)―――やっぱり「評判」というものを頼りにしてしまうものですし、その「評判」が「偽物の評判」かどうかなんて判別できないですよ。

 「当店人気No.1!」と書かれても、他のお客さんが買っているかどうか1週間張り込んで本当かどうか調べるワケにはいかないじゃないですか。







 ネット上での「ステマ」が問題になる背景には―――冒頭の映画評論家の話にも通じる話で。

 「評論家の意見」があんまり信用されなくなったというのが一つあると思います。
 「アイツらがおすすめしている映画って面白くないよな」→「マスコミでのおすすめなんて全部買収されてんじゃねえの?」→「うわー、評論家なんて信用ならねえ」→「これからはネットの情報を頼りにしよう」→「ネットの情報も買収されてた!」なう


 本当にプロの評論家が買収されているかってのは、よく知りませんけど……
 「評論家が好きなものと俺らが好きなものは違うよね」ってのは間違いなく言えることです。だって、人間の好みなんて人間の数ほどあるんですもの。年間200本の映画を観ている人と、年間2本の映画を観ている人の好みが一緒のワケがありません。




 映画もゲームも「続編モノ」「シリーズもの」というのがありますよね。
 あれは“リピート率の高い商品”というのに近くて、「前作が面白かったから今作も面白そうだ」という信頼があるからというのが大きいです。よく言われる話ですけど、「ファイナルファンタジー8の売上げが歴代最高なのはファイナルファンタジー7の満足度が高かったからだ」「ファイナルファンタジー9の売上げが落ちたのは(以下略)」とかね。

 「面白そう!」と思ってもらうには、前作の満足度というのはコレ以上ない材料になるんですよね。


 映画の話で言うと、「テレビで人気のあのドラマorアニメの映画版」なんかも多いですよね。
 それの良し悪しとか好き嫌いは意見が分かれるでしょうけど、そうした作品にたくさんのお客さんが入るのも、そうした作品が数多く作られるのも不思議はないですよ。テレビ版の満足度がそのまんま「面白そう」という材料になるのですから。

 僕自身は嫌いですけどね。




 音楽の話をすると、J-POPのCDがバカみたいに売れていた90年代。
 『カウントダウンTV』のようなランキング形式の番組でPVが流れるため、そこで流れる十数秒(サビの部分)をとにかくキャッチーに作って残りはテキトーみたいな人もいましたよね。誰とは言いませんけど!



 “「面白いから」買うのではない、「面白そうだから」買うのである”なんてことは、商品を売る立場の人はメーカーも小売店もとっくの昔から分かっていることだと思います。「当店人気No.1」という札だってそうですからね。

 でも、“自分の詳しい分野”だとそれを忘れてしまうことがあるんです。
 「面白そう」という事前の予想と「面白い」という結果がイコールに繋がれば繋がるほど、「どうしてこんなに面白いのに売れないんだろう」とか思ってしまうんです。
 でも、その二つは別物で、“その分野に詳しくない人”ほど、この二つを繋げるのが難しいって分かるだけで、「どうして?」の説明が出来ると思うんです。




 いや、ホントね……
 こういうブログ記事だって、読んでもらうためには「面白そう」って思われなきゃ読んでもらえないワケですよ。無料でも、大して時間を割かれるワケでもなくても。
 一年に一回くらい自分でも「すげえ面白い記事が書けた!」と自画自賛するようなものが出来るんですけど、そういう記事でも事前に「面白そう」って思われなきゃ読んでもらえないのです。

 「面白いものを作る」のと同じくらい、「面白そうと思ってもらう」のって大事なんですよ。


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| ひび雑記 | 17:56 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

>「こんなに面白くない映画がヒットしているなんてこの国はどうかしている!」とか言っている映画評論家が一番どうかしている
>年間200本の映画を観ている人と、年間2本の映画を観ている人の好みが一緒のワケがありません。

自分が前から感じていた違和感をうまく言葉にされたなあ
ゲーマーとは一部のマイノリティ、これを本当にわかってる人が少ないなあと思います

自分たちのほうが普通とは違うという事がわからず、ゲームを特別視し人をけなす人が多いため、
かつては輝かしく見えたゲーマーという言葉が腐臭を放つ害を示す言葉にしか見えなくなってしまいましたよ
(初期からのゲーム世代が中年になって思考が固くなり、新しいものが受け入れられない老害になってしまうという面もあるんでしょうが)

例えば、オタクの世界には、どれだけいろいろな作品を見たかがステータスになっている部分があるけど
若者に「こんなのも知らないなんて」とかいってるのって

「お前も俺と同じ20年分の経験をつめ」

という無茶苦茶を言ってるのと同じなんですよ
ゲーマーも、自分達がその手の滅茶苦茶を言ってるのは自覚するべきだと思いますわ

そんな事してるより、自分の生活環境でできる範囲で
現在ある作品をどう楽しむかに精力傾けたほうがいいと思うんですわ

| ml3 | 2012/02/09 06:01 | URL |

長くなるんで別に分けましたが(連投すいません)

 >「ステマ」を問題視する人は、自分に“真に良いもの”を見定める力がないだけ。
 
これも、上記に書いたオタクの問題そのものだと思います
そもそも、見る目がないということを貶す事自体がおかしいんですよ

生活や仕事や自分の生命に関わる事ならともかく、趣味の世界ってのは
わざわざそこまで精力を傾けるべき物ではないんですね、普通は

だから多くの人は評判のいい物、多くの人が見てる、はっと見て面白そうなものを選ぶわけです
それか、実績のあるシリーズ物かを
選ぶことに精力を注ぎ込んでいるのは、趣味に比重を高く持って類一部の人だけなんですね

だから、評判をでっち上げ、軽く趣味を済ませている人をだまそうとする
ステルスマーケティングは問題というのは、本当にその通りだと思います

| ml3 | 2012/02/09 06:22 | URL |















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