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他者と共有できない感情――『あの夏で待ってる』が面白い

※ この記事はテレビアニメ『あの夏で待ってる』第6話「先輩にライバル。」までのネタバレを含みます。閲覧にはご注意下さい。


 今季の自分のプッシュアニメは『あの夏で待ってる』です(公式サイト)。
 もっと早く「面白いぞー!みんな観るんだー」と布教を始めておけば良かったと後悔しています。テレビアニメは後から追いかけるのが難しいですし、6話まで進んでしまっていると「今からでも楽しめますよ!」とは言いづらいものですからね。


 自分はこのアニメ、第1話の頃はそんなに面白いとは思わなかったんです。
 当時の自分の感想を抜粋しますと、「90年代のアニメを現代技術でリメイクしたみたいで、絵作りは凄いんだけど新鮮さは感じない」と……今でもその印象は変わっていないです。新鮮さはそんなにないです。でも、面白いんです。

 「90年代ってこんなだったなー」と、現代のアニメ作品にはあまりないものを感じるようになりました。
 2話のラストシーン(美桜がそっと目を開けて哲朗を見るシーン)辺りから。




 この作品の特徴は「片想いの連鎖」です。
 “美桜→哲朗→柑菜→海人→イチカ先輩”+観察者としての檸檬先輩というキャラ配置で、メインキャラはそれぞれ誰かに片想いをしているのです。


 そして、この作品を「面白い」と私が感じているのは、「そのことをそれぞれのキャラは知らない」という部分です。視聴者(と、多分檸檬先輩)しか知らないんです。

 例えば、「哲朗が柑菜を好き」ということは美桜しか知りません(メインキャラ5人の中では)。
 「柑菜が海人を好き」なことは、美桜と哲朗しか知りませんでした。5話のラストで海人とイチカ先輩がそれを知ってしまうのですが、「柑菜が海人を好きなことを海人が知っている」ことを美桜と柑菜は知りませんし、「柑菜が海人を好きなことをイチカ先輩が知っている」ことはイチカ先輩しか知りません。

 「美桜が哲朗を好き」に関しては、美桜以外の誰もが気付いていないほどです。


 それぞれのキャラクターが「知っている情報」が違うことで何とか成り立っている非常に危うい人間関係がゆえに、毎週毎週「この後どうなっちゃうんだろう??」と目が離せないのです。




 さっき「視聴者(と、多分檸檬先輩)しか知らない」と書きましたが、実はまだいました。モノローグです。この作品は『あの夏で待ってる』という作品名にあるように、作品から数年後と思われる海人やイチカが「あの夏」を回想しているモノローグが入っています。


「あの頃の俺はそんなことがあったなんて知りようもなく。
 谷川の気持ちも……哲朗の気持ちも……北原の気持ちも……知りようがなく」



 この作品の舞台となっている「あの夏」ではそれぞれの感情が共有できずにすれちがってしまっていることを示唆するモノローグですよね。これが、この作品の肝なんだと言わんばかりに。





 もういっちょ。
 「感情が共有できずにすれちがってしまう」ことを象徴するためか、この作品には「携帯電話」も「インターネット」も出てこないんですよね。
 6話に「アドレス交換」というセリフがあるので存在しないというワケではないみたいなんですが、連絡は常に家電話で、それゆえに「電話をかけたら家にいなかった」シーンとか、連絡網のように「じゃー俺は○○に電話しておくから、お前は××に電話しておいてな」みたいなシーンが起こるのです。


 今だったら「メールの一斉送信」で済んでしまう話ですよね。
 しかし、この作品の中には「携帯電話」も「インターネット」も出てこないために、情報を共有できないことで起こり得る“それぞれのキャラクターのすれちがい”を描けているのです。自分がこの作品に感じていた「90年代っぽさ」の正体はこの辺のこともあったのかなぁと。


 携帯電話が普及し始めた頃、「これではドラマが描けなくなる!待ち合わせ相手が来なくてすれちがってしまうシーンとか!」と言っている人がいて―――自分は鼻で笑っていました。携帯電話がないことで描けていたドラマがあったように、携帯電話があることで描けるドラマだってあるだろうが、と。
 今では漫画もアニメもドラマも携帯電話があることが普通ですし、だからといって作品がつまらなくなったことはありませんし、携帯電話があることで成り立っている作品もたくさん観てきました。



 でも、携帯電話がないことで成り立つ作品もあるんですよね。
 『あの夏で待ってる』はそういう作品です。だからこそ「他人と感情を共有できずにすれちがってしまう」ことに説得力が増すという。


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 ……と、この流れで、無粋にもこの作品の結末を予測するならば。
 「全員が共有できる感情」がポイントになるのでしょうし、そのためにアレとかコレとかが最初から仕込まれているのかなと思います。


 でも、SF要素とか檸檬先輩とかよく分からない時代設定とかがあるので、そんな伏線を全部吹っ飛ばしたとてつもなくぶっ飛んだ結末になる可能性もないことはないか(笑)。実は世界は一巡していたのだ!とか、檸檬先輩はディストピア化した未来を変えるためにタイムマシンでやってきた戦士(CV.田村ゆかり)だったのだ!とか。


 檸檬先輩についてはちゃんと作中で説明して終わってくれるんですよね?


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| アニメ雑記 | 17:54 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

『90年代のアニメを現代技術でリメイクしたみたい』と
書かれていらっしゃいますが、ホントその通りで
恐らくご存じかと思いますが『おねがいティーチャー』のリメイクですよねw?
『あの夏で待ってる』は

| ああああ | 2012/02/21 00:32 | URL |

>檸檬先輩はディストピア化した未来を変えるためにタイムマシンでやってきた戦士(CV.田村ゆかり)だったのだ!

さらっとネタバレww

| ああああ | 2012/02/22 11:21 | URL |















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