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「分かりやすい作品」は愚かか

 最近自分が考えていることに重なる話が幾つかラジオでされていたので御紹介。
 どちらも今もポッドキャストで聴けるんでどうぞ。


 『キラ☆キラ』町山智浩さんが語る「カーネーションの魅力」
 『タマフル』シネマハスラー「ALWAYS 三丁目の夕日'64」編


 今回の記事に関する部分だけ意図的に抜き取って要約するんで、どういう文脈で語られているかはポッドキャストで流れを聴いて欲しいんですが……

 一つ目はNHKの連ドラ『カーネーション』を通じて、カーネーション以外の近年の日本のテレビドラマは「何でもかんでもセリフで説明してしまう傾向がある」という話です。本来は演出や演技で伝えるべきものを説明セリフで分かりやすく伝えようとしてしまうのは、視聴者に読解力がないと作り手がバカにしているからだ、と。

 二つ目は、『ALWAYS』シリーズが「登場人物が思ったことを何でも口に出してしまう」ことでやたら説明的になり、結果として作品全体の時間が長くなってしまっているという話――――この二つの話は、自分が最近特に考えていることなので気になりました。




 この件に限らず、小説でも漫画でもゲームでもイイんですけど……
 「分かりやすい作品」が売れて、それに対して評論家が「あんな薄っぺらい作品が売れるなんて嘆かわしい!」と言う、みたいな話はどこの業界でも見かける光景ですよね。むしろそうじゃない業界が珍しいくらいです。

 「普段本を読まない人でも読む本がベストセラー」ですから、大ヒットするものは大抵「普段映画を観ない人」「普段小説を読まない人」「普段漫画を読まない人」「普段ゲームをしない人」に売るために“分かりやすくしている”ことが多いですからね。



 最初に私のスタンスを表明しておきますと、「どっちの気持ちも分かる」です。
 「分かりやすい作品」を作る気持ちは分かりますし、それを嘆く気持ちも分かります。どっちにもいい顔をしたいからそう言っているワケじゃなくて、「色んな人がいるから世界は面白い」からこそ「みんなが一つの作品で幸せにはなれない」んです。




 まず、テレビについて。
 テレビが「分かりやすさ」を目指すのは当然のことです。

 テレビ番組はザッピングで見られるメディアだからです。
 一つの番組の最初から最後までテレビの前に座って、毎週だか毎日だか欠かさずに観られていたのがテレビ―――なんて風景は大昔のものです。
 テレビにはたくさんのチャンネルがあって、テレビ以外にもたくさんの娯楽があって、娯楽以外にもたくさんのやらなければいけないことがある情報中毒者の我々は瞬間瞬間にテレビを付けたりチャンネルを切り替えますし、ビデオリサーチも「瞬間視聴率」を調査しています。

 だから、「この回だけ見ても」「この数分だけ見ても」「この数秒だけ見ても」視聴者が面白いように番組を作っていくしかなくなりますし、全体の傾向として「分かりやすい番組」が増えていくのは当然のことです。
 HDDレコーダーなんかで録画した番組は最初から最後までテレビの前に座って観る人が多いでしょうけど、そういう人は「視聴率」には反映されませんからね。CMスキップされるからそれも当然なんですが。

(関連記事:テレビって“ちゃんと観ていない人”もいるメディアなんだよね


 それでは、映画はどうかと言うと……
 映画は基本的に「最初から最後まで席に座って観てもらう」ことが前提のメディアなので、テレビドラマのように瞬間視聴率を気にする必要はないと思うんですけど。テレビ局が出資している映画はちょっと別ですよね。
 何故なら、テレビ局が出資している映画は「その後にテレビでも放送すること」まで含めた企画なのですから。




 なので、セリフで感情を全部説明してしまうような「分かりやすい作品」が作られるのも仕方がないと私は思っています。それはそういうメディアなのだから。
 テレビを観る人がたくさんいて、だからたくさんの広告費が投入されて、だからたくさんの予算を投入した番組や映画が作られて、たくさんの利益をあげる―――テレビが日本最大のメディアである限り、この“大作病”からは逃げられないと思いますし、私は「分かりやすい作品を作るスタッフは愚かだ」とも「分かりやすい作品を作るスタッフは視聴者をバカにしている」とも思いません。



 私自身が好きかどうかは別の話ですけどね。
 自分はそもそも「200円のDSiウェア面白えー!」って人なので、たくさんの人が楽しめるようにたくさんの予算が投入された“巨大テレビ帝国”のコンテンツは面白いとは思えません。だから、町山さんや宇多丸さんが言っていることは分かりますし、どちらかと言えば私自身はそちらに近いんだと思います。




 要は「どういうメディアで」「誰に向けた」「どのくらいの規模の」コンテンツかによって、作品の目指す方向は違うよねってことです。

 で、この話―――我々にも無関係な話ではないですよね。
 ブログだってそうです。「分かりやすい文章」は愚かか?


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 自分は昔っから「文章が長い」「読むの面倒くさい」「もうちょっと読者が行間を読んでくれることを信じて短くしろ」と言われ続けてきました。現に意識的に短くした時期もあります。


 でも、ブログってそんな一生懸命読んでくれる人ばかりじゃないんですよ。
 いやいやいや、一生懸命読んでくださる人がいることも重々承知ですし、そういう人がいてくださるから今日まで続けることが出来ているのですとかまあこういう話は誰の得にもならないのでこの辺にして。


 自分も他のブログを読む時はそうですけど、ブログって基本「ナナメ読み」ですよね。
 だから「書き手の意図を汲んで書いていないことまで読み取る人」なんて人は、よっぽどの熱心なファンか、よっぽどの熱心なアンチだけだと思います。でも、そういう人にだけ向けて書くワケにはいきませんよね。


 なので、じゃあ長くなってもいいからちゃんと一から十まで書こうとしたら、今度は「長すぎて読まれない」という(笑)。
 「読まれない」というか、全部を読んでくれないというか、前段と後段がこう繋がってこういう意味になるみたいなのは読み取ってくれないのはもちろんのとこと、本文どころかタイトルも読んでいなかったり、ニュースサイトやTwitterで紹介された際の文だけを読んで本文読まずに「オマエの言っていることは間違っている」と言われたり、「やっぱり○○は最高だぜ!」と書いた記事に「○○を批判するなんて許せない」というコメントがついたり。


 こういう話をすると、大抵「なら記事の最初に結論を書いておけば誤解されないんじゃないですか?」という意見をいただいてやってみるんですけど―――そもそも一行にまとめらないから、長い文章にしてわざわざ「これこれこういう理由でこういうことが起こっているんですよ」と書いているのですよ!

 「一行の結論」部分で説明が出来るならTwitterに書きますよ!
 つか、長い文章の最後の「一行の結論」だけ読んで記事全部を理解した気になるんじゃねえええええ




 はあ………はあ……


 でも、長い文章は「全部読んでくれる人が限られている」上に、「書くのにも時間がかかる」ためにこちらにも負担がかかるワケで―――今後はなるべく短くコンスタントにまとめて、余計な部分をバッサリ切り落とした記事を心がけていこうかなと思います。
 その方が「ブログ」というメディアには向いているのでしょうし。パッと見でそこそこ言いたいことは伝わるけど、じっくり読むともっと深く考えさせられる、みたいなのが理想的かなぁ。短くまとめれば読み返したりもしやすいでしょうしね。



 漫画に関しても同様で、なるべく全員に伝わるように説明セリフなどを使うとページ数が長くなって、制作期間も長くなってしまうので―――削る部分はなるべく削って、セリフじゃなくて演出でメッセージを伝えていくことを心がけようかなと思っています。
 次描く予定の漫画も、クライマックスのシーンで作品全体の意味を表すセリフを入れるべきか削るべきか悩んでいます。入れれば「10人中7~8人は理解できる作品」になる。でも、それじゃ読者から「考えることを奪う」ことにもなる―――どちらを狙うべきか、と。




 ふむ。ここまで読んでくださった皆様の中にはこうお思いの方もいらっしゃるでしょう。
 「この記事こそ、後半部分をバッサリ切り落とした方が良かったんじゃ……」と。その通りだ!


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