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アイディア勝負の作品は怖くて作れない

 消費者の立場では好き勝手に、「どこででも見たことのないような斬新な漫画が読みたい」とか、「アイディア勝負の奇抜なゲームが遊びたい」とか言ってしまうものです。
 漫画でもゲームでも映画でも音楽でも小説でも、たくさんの作品を知っている人ほど「斬新なもの」「画期的なもの」「アイディア勝負なもの」を欲していくんじゃないかと思います。自分も、消費者の立場では気楽にそんなことを言っていましたし、言ってしまいます。



 じゃあ、作る立場に立って、誰も描いたことのない「斬新な漫画」を描けばイイじゃない―――


 漫画を描き始めた頃は、確かにそんなことを思っていました。
 「漫画を描いたことのない人」は、「斬新なブログ記事」にでも置き換えて読んでください。誰もやったことのない、自分だけが切り開いた”斬新な作品”を目指したいとは誰もが考えることだと思うんです。むしろ、それがなければ始めようとしないでしょうし。


 しかし、「斬新な作品」を実際に作ろうとするのは難しいんです。
 だって、この世界には無数の漫画が既にあるんですもの。「誰もまだ切り開いていない斬新な作品」を生み出すためには、既にあるそうした作品達を全てチェックして、その上で誰もやっていないことをやらなければいけないのですが―――当然、そんな無数の作品をチェックすることは時間的に不可能です。


 「漫画を描く」には膨大な時間がかかりますから、世に溢れている無数の「漫画を読む」時間なんてありません。ゲームも映画も音楽も小説もブログ記事もそうでしょう。作る時間がかかればかかるほど、世に溢れている他の作品をチェックする時間は削られます。

 いや、仮に世に溢れている他の作品をチェック出来たとしても結果は一緒なのかも知れません。
 「俺の知らないところにまだ作品はあるのかも知れない……」「俺が作っている間に、同じようなものを作っているヤツがいるかも知れない……」



 「アイディア勝負の作品」を作ろうとすると、ずっとこの不安に取り付かれるのです。
 「果たしてこれは本当に“斬新なアイディア”なのか?」と。似たような作品が実は存在するんじゃないのか、今はまだ存在していなくても俺より1日早く発表するヤツがいるんじゃないか。

 どんな作品だってそうです―――
 登場人物全員がいきなり自殺する漫画を描いた時ですら、「なんて斬新な作品を思いついちゃったんだ俺!天才!」→「こんな面白いアイディアを俺以外の誰も思いつかないもんか……?」→「うわああああああ!こんな作品、誰かが描いているに決まっている!!」→「俺なんかが描いたところで意味なんてないよな……」→「死のう」と思ったもんです。


 重要なのは「こんな面白いアイディアを俺以外の誰も思いつかないもんか……?」の部分ですね。
 アイディアに自信があればあるほど、自分以外も考えているだろうと思ってしまうもので。



 なので、「アイディア勝負」ではなく「クオリティ勝負」の作品が増えるのも、自分がその立場に立って考えるとすごくよく分かるんです。

 ゲームや映画の続編モノとか、アニメの2期とか――1作目が持っていた「アイディアの斬新さ」ではなく、「クオリティ」を上げることで勝負しているような作品を自分はあまり好きじゃないんですけど。そういう作品が生まれる理由は分かるんです。

 短編漫画はまだ数ヶ月単位で完成しますけど、ゲームも映画もアニメも完成までに年単位がかかっちゃいますからもっと事態は深刻ですね。「斬新なアイディアだ!」と作成がスタートしても、完成した頃には古臭くなっていることも多いでしょうし、「アイディア勝負」で押し切るのは更に難しいでしょう。

(関連記事:違うんだ!パクったんじゃない!たまたま同じ電波を受信しただけなんだ!



 ということで、「アイディア勝負の作品」ってある程度の土壌がないと難しいんだろうなと思うのです。「低予算で作れる」とか「短期間で作れる」とか「ビジネス的に失敗しても取り返しが効くくらいの蓄えがある」とかの条件の業界でないと、アイディア勝負の作品はなかなか生まれてこないんだろうな、と。

(関連記事:漫画はお金がなくても作れるエンターテイメント


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| 漫画作成 | 18:00 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

開拓地へのロードマップを引くは胴元の義務なんじゃないかと思います
任天堂やソニー、ジャンプあたりは意識して広野に線路を引いてますよね

| ああああ | 2012/04/25 19:41 | URL |

>ああああさん

>任天堂やソニー、ジャンプあたりは意識して広野に線路を引いてますよね

 今のソニーはちょっと微妙かもですが、そういうことが出来るのは「ビジネス的に失敗しても取り返しが効くくらいの蓄えがある」のがデカイんです。「もし脳トレがヒットしなくても任天堂は痛くも痒くもなかった」という話で。

| やまなしレイ(管理人) | 2012/04/25 19:54 | URL | ≫ EDIT

若い頃、創作関係の先生に、「SFを書くならスタートレックを全話見ろ。その上でそこに登場しないアイディアを思いついたなら、プロットを見せにこい」と言われました。
お金を稼ぐために作る作品なら、少なくとも競合する大手は全てチェックし、その上で「ここが今までと違うんです!」とやらないと駄目なんですよね。
そうしなきゃ、スポンサーや上司はお金を出してくれませんから・・・

| 通りすがり | 2012/04/26 22:47 | URL |

>通りすがりさん

>お金を稼ぐために作る作品なら、少なくとも競合する大手は全てチェックし、その上で「ここが今までと違うんです!」とやらないと駄目なんですよね。

 「私はそうは思わない」という記事を書いたつもりなので、「なんですよね」と言われても(笑)。

| やまなしレイ(管理人) | 2012/04/27 20:20 | URL | ≫ EDIT

物語に関していえば、基本的に古事記、源氏物語、徒然草、
の文化の継承(パクリ)であり、これに類似点が無い存在なんて多分無いと思われる。
大抵その国で作る物語は、その国の神話の何処かしらに類似する。

| ああああ | 2012/09/09 18:25 | URL |















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