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長期連載漫画と現実時間の流れ

※ この記事は漫画版『ハンター×ハンター』単行本30巻までのネタバレを含みます。閲覧にはご注意下さい。
※ それと、筆者はジャンプ本誌を読んでいないんで「それ以降」の展開の話はコメント欄には書きこまないでください。よろしくお願いします。



 最近の自分は「買ったけど時間がなくて読んでいなかった漫画」を思い切って読んでいるのですが、続きものの漫画はそこまでの流れを覚えていないことが多いので、『ハンター×ハンター』を1巻から読み返していてちょうど昨日最新刊の30巻まで読み終わりました。超面白かった!早く31巻プリーズ!


 さて、この『ハンター×ハンター』という漫画。
 連載開始は1998年なので今年で14年ということになります。
 この漫画はファンタジー世界が舞台ではあるものの、元々は“僕らの世界の最新の技術”が登場してくる漫画なので、2012年に1巻から一気に読み返すと14年間分の“テクノロジー”の進化を味わえてすごく面白いのです。14年前ってこんなだったっけかーと。作中時間では1~2年しか経っていないはずなのに。



 例えば「インターネット」「携帯電話」
 最初の「ハンター試験編」にはこれらはあまり出てこないんですけど(※ メンチやヒソカは携帯電話を使っている)、「ハンター試験編」が終わった後にインターネット(電脳ページ)や携帯電話がハンターの必須アイテムだとゴンが知るシーンが出てきます。

 そもそもハンター証を手に入れて最初にしたことが「インターネットで調べ物」ですからね(笑)。

 このシーンが描かれたのが“僕らの世界”では1999年。
 まだまだテレホーダイなんかの時代ですけど、インターネットが「詳しい人は使っている」くらいでした。少年漫画の題材としてはちょうどイイくらいですよね。

 ちなみにこの『ハンター×ハンター』の世界では「携帯電話を使ってインターネットサイトを見る」というシーンは出てきません。インターネットはパソコンで見るもの、という世界観なんです。iモードの開始が1999年ですから、これは当然と言えば当然な話。スマートフォンなるものなんて想像もつかなかった時代に始まっているんですよね。




 また、2000年から始まる「ヨークシン編」にはネットオークションなどの言葉が出てきます。
 Yahooオークションの開始が1999年9月ですから、これも連載当時の“新しいもの”でしたよね。

 ちなみにこの「ヨークシン編」にはゴンが携帯電話を買うシーンがあるんですが、「全世界対応」「200種類の言語通訳機能」「テレビも観れるし、録画も出来る」機種で約10万円で購入しているんです。
 2012年の現在読むと「たっけえ!」と思うのですが、当時は「GPS携帯」も「ワンセグ放送」もないのでドラえもんの道具並に「未来の携帯電話」だったんですよね。携帯でテレビ観れるなんて羨ましいなぁ!って思ったものです。今や……ねぇ(笑)。


 この「ヨークシン編」は敵も味方も携帯電話をフル活用していて(シャルナークみたいに携帯電話を武器にしているキャラまでいる)、携帯電話がなければ成り立たないストーリーになっています。
 当時「携帯電話が普及したら待ち合わせに来なくてすれちがってしまう恋人同士のドラマなんかが描けなくなってしまう!」とか言っていた人もいますけど、携帯電話があるからこそ出来るスピーディな群像劇をこの時点で描いていたんだなーと改めて感心します。



 ついで2001年から連載が始まった「グリードアイランド編」。
 グリードアイランドというゲームはMMORPGのようなことを現実で行っているんですけど、『ファイナルファンタジー11』の開始は2002年なんですよね。この辺、私の記憶もごっちゃになっていて「グリードアイランドはFF11を参考にして作られたんだろうな」と思っていたんですけど、グリードアイランドの方が早かったという。

 『ウルティマオンライン』が1997年らしいので、90年代後半のインターネット黎明期のブームを参考に考えられた設定なんですかね。このゲームの設定を冨樫先生がいつ頃考えたのか気になるところです。


 ちなみにちなみに。
 このグリードアイランドというゲームを動かすゲーム機はジョイステーションという機種で、初代プレイステーションに非常に似ています。それが描かれたのは99年後半ということで、まだプレステ2がなかった時代なんですよね。当然DSもWiiもないし、ゲームボーイアドバンスすらありません。「ゲーム機と言えばプレステ」という時代なんですよね。
 2012年の今読み返すと非常に懐かしいデザインです。まぁ、作中でも(ジンが置いてったメモリーカードが使える機種なので)「3世代前のタイプ」と言われているんですけど。


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 こういう現象はもちろん『ハンター×ハンター』みたいなファンタジー世界が舞台の漫画よりも、現代を舞台にした漫画の方がよく起こりますよね。


 何十年も続いている漫画だと、作中で年を取っていないキャラがいきなり携帯電話を使い始めて「え!?この世界に携帯電話なんてあったの!?」と驚かされたりなんて話はあるあるネタですよね。

 何十年も前の『こち亀』で両さんが「アニメ制作会社」の現場を見るという回があって、数年後にまた「アニメ制作会社」に行く回があったんですが。
 前回来た時から両さんはずっと色塗りの練習をしていたのに、色塗り作業は全部デジタル化されていて何の役にも立たなかった―――というネタがあって、自分はすごく好きでした。長期連載と現実時間のギャップを逆手にとっているんですよね。




 スポーツ漫画の場合「現実世界の話題」や「流行の戦術」などが取り入れられるので、「長期連載と現実時間のギャップ」が起こることがあります。

 プロ野球を題材にした漫画『ONE OUTS』は1998年後半に連載開始された漫画なので、作中は1999年のペナントレースとなっていたのですが……連載は2006年まで続いていたので、その間のプロ野球再編問題がチラッとネタになっていました。

 オーナー会議に出席した渡久地がバガブーズ(バファローズをモデルにしたチーム)のオーナーに、「あんたんとこは毎年40億赤字を出し続けているね。彼にオーナーとしての適正はあるかね」と皮肉を言うシーン。
 今読むと何の変哲もないシーンなんですけど、これが連載されていたのは2004年末、ちょうど近鉄バファローズが消滅するかどうかで揉めていた時期なんです。作中1999年の時点で5年後に起こるプロ野球のゴタゴタを予知しているとは流石渡久地だぜ!



 『ホイッスル!』というサッカー漫画は1998年に始まったので(今日話題にしている漫画は1998年開始の漫画が多いですね)、日本が初出場したサッカーW杯フランス大会の直前が舞台になっていました。
 しかし、作中で数ヶ月しか経っていないのに現実世界ではどんどん時間が経っていたため、読者はとっくに結果を知っている「日本代表がW杯で惨敗する」ことが作中で予想されるというシーンがあります。これも今読むと時間軸がごちゃごちゃになってしまうんですけど、連載当時は「長期連載と現実時間のギャップを逆手にとったネタ」だったんですよね。

 そう言えばこの漫画、「フランスW杯の直前が舞台」なのに「フラット3」を使ってくる敵チームがいるんですよね(笑)。
 もちろん連載している頃の現実時間ではトルシエジャパン時代で「フラット3」は日本のサッカーファンで知らない人はいないくらい有名な戦術だったんですけど、作中時間ではまだトルシエが来日していないはずなのに既に中学生が「フラット3」を使っていたという。何という最先端!

 しかし、今の若いサッカー少年がこの漫画を読み返しても「フラット3って何……?」としか思わないんでしょうね。もはや懐かし言葉でしかありませんし!



 同じサッカー漫画でも『オレンジ』みたいに、「近未来」を舞台にする漫画もありました。
 『オレンジ』の連載は2001年から2004年、しかし作中時間は2007年を舞台にしていて「北京五輪の予選」が出てきます。まだアテネ五輪の予選も終わっていなかった時期に。これはある意味で「長期連載と現実時間のギャップを生まない方法」としてすごく新しいなと思ったのですが――――

 「近未来」を舞台にしたがゆえに、「現実」との差が起こっていることが今読むと分かります。
 この『オレンジ』で戦っているFリーグって「秋開幕~春閉幕」というヨーロッパと同じスタイルで、現実にあるJリーグが「春開幕~秋閉幕」としているのとズレているんですよね。

 というのも、『オレンジ』が連載されていた2001年頃には「Jリーグも秋開幕~春閉幕にするべきだ!」という議論が行われていて、未来のJリーグは「秋開幕~春閉幕」になっているだろうと思っていた人も多かった時期なんですよね。
 しかし、日本での「秋開幕~春閉幕」には弊害も多いので、Jリーグは2007年どころか2012年現在も「秋開幕~春閉幕」にはなっていません。


 今読んだら「どうしてこんな設定なんだ…?」と思う人もいるでしょうね。
 自分はこういうのも好きなんです。漫画ってやっぱり「時代」を反映するものですし、昔の漫画を今読むと連載当時の「時代」が見えてくると思いますから。


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| 漫画読み雑記 | 18:05 | comments:7 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

コナンなんか特に…

コナンに至ってはイヤリング型携帯電話や
弁当箱ファックスなど
最新技術を特別な道具にしてコナンくんに持たせていたのに、
今では普通に小学生が携帯いじってますからね…

時間軸だと半年しかたってないはずなのに
当時なかった携帯の機種を使ってたり…
ゴメラシリーズ終了とかも時代反映してる話かな?

コナンで一番問題なのは半年と作中で発言しているシーンがあるに
事件が多すぎなのが…
夏休みの話とかも何度もあって、
時間軸に当てはめようとすると毎週小五郎が新聞に載ってるような事態になっちゃうんですよねw
そこら辺は漫画だから…と割りきっちゃうしか無さそうですが。

| 直哉 | 2012/05/21 23:15 | URL |

小ネタいろいろ

2004年にアニメ化された「ああっ女神さまっ」では恐怖の大王こと究極破壊プログラムがなんとファミコンのディスクカードに転移するのですが、ファミコンのディスクって2004年はおろか原作で当該エピソード作られた1991年にはすでに骨董品になっていたという…

あと、アニメ版「未来日記」でスマホの未来日記が無いことに原作の古さを感じたり。
実写版では未来日記=貸与された試作スマホになってましたが。

| 太田拓也 | 2012/05/22 07:58 | URL | ≫ EDIT

>直哉さん

>夏休みの話とかも何度もあって、

 サザエさんタイプの漫画だとよくあるネタですよね(笑)
 いつになったら進級するんだよ!みたいな。

 『もっけ』という漫画の初期では、「この漫画は各話がシャッフルされています」と「何度も夏が来るのにキャラクターが進級しない」のを説明していたことがあります。でも、『コナン』は明らかに話が繋がっていますからねぇ(笑)。


>太田拓也さん
>ファミコンのディスクって2004年はおろか原作で当該エピソード作られた1991年にはすでに骨董品になっていたという…

 アニメ版はともかく原作はどういう意図なんでしょうね。
 読んでいないのでよく分かりませんが、「敢えてショボイ機器で描くことが恐怖」という演出だったんでしょうか。

| やまなしレイ(管理人) | 2012/05/22 19:53 | URL | ≫ EDIT

キルアがアルカを送り届ける際にレオリオの演説をタブレットデバイスで見ていた時は
こんな最先端のデジタル機器使ってるのに携帯はそういえば(実用性はともかく)まだガラケーなんだな
とか思ってしまいましたね

スパイ作品や昔の近未来観で描かれた作品では
「様々な小道具を用いて情報を収集する」という描写が目立ちましたが
今はそういった事の殆どもスマホ一つで済ませられる訳で
「機器の小型化」自体は予想出来ても「単一デバイスによる機能の統合」というのは予想が出来なかったんですかね?

或いは「全部同じ道具で済ませるのは絵的につまらないので分けた」という事なのかも知れませんが

| 牛 | 2012/05/22 23:07 | URL |

>牛さん

 記事冒頭の注意書きをお読み下さい。

| やまなしレイ(管理人) | 2012/05/23 01:27 | URL | ≫ EDIT

「200種類の言語通訳機能」(「翻訳」ではない)付きの携帯が10万円って
むちゃくちゃ安くないですか?

| undo | 2012/05/30 10:16 | URL | ≫ EDIT

>undoさん

>「200種類の言語通訳機能」(「翻訳」ではない)付きの携帯が10万円ってむちゃくちゃ安くないですか?

 安いも何も現実にはまだ存在しませんからね(笑)
 ただ、それほど学があるように見えないゴンやキルアでも、この機械を使わずに世界中の人と問題なく喋れていることを見ると―――『ハンター×ハンター』の世界ではあんまり重要な機能でもないのかなぁと思います。

| やまなしレイ(管理人) | 2012/05/30 19:08 | URL | ≫ EDIT















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