やまなしなひび-Diary SIDE-

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「ガチでモテない主人公」でストーリーは描けるか

 バスケットボール経験者がその経験を元に描いたバスケ漫画が大ヒットしたり、元体操選手が原作を描いた体操漫画がヒットしたり、「漫画作品」と「作者独自の体験談」は切っても切り離せない関係と言えます。
 もちろんそうした漫画が全てではありませんが、自分が体験したことなら取材する必要がないから費用ゼロで済ませられる!のは間違いないので、こういう作品は多いですよね。使える予算が少なくて、個人の力で描かれる“漫画”は特にその傾向が強いと思います。


 ならば、「日本一モテない男」を自認している自分は、「モテない男」を主人公にした漫画こそを描くべきではないか―――ずっとそう思ってきました。
 世の中にあふれている「モテない男」を主人公にした漫画など笑止千万!サッカーのルールを知らないヤツが描いたサッカー漫画のように、「妄想でモテない男を描くんじゃねえよ!リアリティの欠片もねえ漫画だな!」と一笑に付してきたではないか。ならば己でそれを具現化するべきではないか、そう自問してきました。


 しかし、これが上手くいきません。
 企画段階で「面白くなりそうにない」んです。モテない男を主人公にして、リアリティ重視の漫画を描こうとしても全然面白くならないんです。
 だってそりゃそうですよ。そういや俺の人生もちっとも面白くなかった、と気付くんです。それを漫画に描いても面白くなるワケがありません。




 そもそも「ストーリーとは何だ?」という話。
 これは特に短編の読みきり漫画を描くようになって考えたことなんですが、極限まで切り詰めていくと「ストーリー」とは「設定」→「出来事」→「結末」の3つで出来ていると思うのです。

 例えば『ももたろう』で言えば、
 「設定」は「桃から生まれたももたろう」とか「鬼によってみんなが苦しめられています」とかの辺り。「出来事」は「ももたろうが旅立ってからなんやかんやあって鬼をやっつけました」という辺り。「結末」は「財宝を持ち帰っておじいさんとおばあさんと幸せに暮らしました」みたいなアレ。


 「出来事」をはさんだ「設定」と「結末」にどれだけの落差(ギャップ)があるかが、ストーリーの“肝”になると言えます。悲惨な設定から幸せな結末に上がれば「カタルシス」が生まれ、その逆ならば「悲劇性」が生まれ―――といったカンジに。


 例えば『シンデレラ』。
 「設定」は見るも無残な状態から始まります。継母や義姉からイジメ抜かれて、自分一人だけがみすぼらしい姿で家に残されてしまいます。その後、なんやかんや「出来事」があって、シンデレラは王子様と幸せな結婚をしましたとさという「結末」になります。「底辺」から「幸せの頂点」に上り詰める、まさにシンデレラストーリー!


 逆に『うらしま太郎』。
 「設定」は「イジメられていた亀を助けました」という美談から始まります。その後なんやかんやあって、「結末」は「浦島太郎は老人になってしまいました」という悲惨なもので終わります。この結末には色んな解釈が出来ると思いますが、多くの子どもはショックを受けたことと思います。「何も悪いことしていないのに酷い!」と。

 この結末が「玉手箱を開けたら浦島太郎は足首に全治1週間の捻挫の怪我をしてしまいました」だったら、「設定」と「結末」の落差がそれほどでもないので「その程度で済んでよかったね」くらいにしか思えません。「設定」と「結末」の落差が大きいから、『うらしま太郎』のラストは衝撃的なんです。




 「設定」と「結末」の間に落差をつけること。
 その落差に説得力が持てるくらいの「出来事」を描くこと―――これがドラマ性だと思うので。



 モテない主人公という「設定」で始めて、モテないまま終わる「結末」で終わると、何も起こらんのですよね。「成しあがるストーリー」も「転落していく話」も描けないのです。

 でも、モテない主人公という「設定」で始めて、最後は彼女が出来て幸せになりましたーという「結末」で終わると、「ふっざけんな!どこがモテない主人公なんだよ!彼女できてんじゃねえかよ!全然モテてんじゃねえかよ!こんな生半可な気持ちでモテない男を描くつもりだったら最初からモテない主人公を描くんじゃねえよ!覚悟がっ!この作者には覚悟が足りねえんだよおおおおおおおおおおおおおおお!」と言いたくなってしまいますし、私自身が今まで何百回と言ってきたことなので。それも出来ません。



 つまり、「ガチでモテない主人公で漫画を描こう」と思った時点で、「設定」と「結末」が動かせないという重い制約を背負わされてしまうのです。



 もちろん抜け道はなくはないんですけど。
 例えば『こち亀』の両さんが事業で大もうけをしても最終的には転落して来週も警察官に戻ってる、みたいなカンジで。「モテない男がモテると思ったら結局はモテてなかった!」というオチを付けるとか。

 「モテない主人公」が別の何かで成功する、とか

 「モテない主人公」が更に更に更に悲惨な事態に追い込まれる、とか。

 ストーリーの落差とかどうでもいいから、ただ単に「モテナイあるある」を描くとか。



 あれ……どれも結構面白そうな……
 この中からしれっとアイディア採用していても、見なかったことにしてください(笑)。


 ただやっぱり「王道」からはちょっと外れてしまう印象はありますね。
 そう考えると、「モテない男を主人公にして始まった漫画」が、「彼女が出来て終わる」とか「実は彼のことを好きな幼馴染がいたんだ」とか「最終的には女キャラみんなこの主人公のこと好きになってね?」というモテない読者が1ミリも感情移入できないような展開になってしまいがちなのも、分からなくもないんですよね。

 「モテない」という設定が、「モテる」という結末になれば、そこにはカタルシスが生まれるんですから。
 それで「良かったなー。コイツがモテるようになって本当良かったなー」と思わせられるような主人公だったら問題ないですしね。そうじゃないから問題なんですけどね(笑)。


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| 彼女はいません | 17:57 | comments:18 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

体験談を創作に生かすなら
設定段階の0の状態から結末段階を書く為に設定段階からの脱却も体験してないと
ダメってことですかねー
モテない→モテる を体験してないと結末段階は書けないそっちは体験してねーよと!

だがしかし日常系ならいけるのではないか、
あれは結末段階へ行かない落差がない話だからいけるのではないか

ということでただただモテない日々を書いた4コママンガを是非
是非?お願いします!(なんかオタリーマンみたいな話とダダかぶりしそうだなー)

| ああああ | 2012/08/12 19:43 | URL |

「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い」なんかはわりとその辺をうまく漫画化してヒットした例じゃないでしょうか。
いわゆる日常系で、結末に向かって動く話ではないですが。

結末の意外性を重視しない作りだと、ギャグ以外にハードボイルド系なんかもいけるんじゃないかと思います。黒田硫黄の漫画はそういうのが多いかも。

| あわれ | 2012/08/12 20:38 | URL | ≫ EDIT

「NHKにようこそ!」なんかは物語としてのご都合主義と現実とのギャップで最後まで苦しんだ作品だったと思います
原作→アニメ→漫画とメディア化を重ねるにつれて「引きこもりの妄想」から「普通のラブストーリー」に変わっていく過程なんかも興味深かったですし

| ああああ | 2012/08/12 23:23 | URL |

愛しのアイリーンは当てはまりそうです。
アイリーンを主人公とするとちょっと違いますけど。

| ああああ | 2012/08/12 23:51 | URL |

浦島太郎のその後は諸説ありますが、鶴に変身して蓬莱山で亀と一緒に夫婦の神になったという話もありますから一概に悲惨とはいえないかと。

とは言え一般の話では老人になったところで終わっていますからね、なんでこんなところで終わらせたんでしょうか、別になんの教訓も得られないですし謎ですね。

| ああああ | 2012/08/13 07:40 | URL |

神聖モテモテ王国とか
稲中のあいつらとか結局モテたんだっけ?

| 非モテ | 2012/08/13 18:09 | URL |

漫画ではなく映画ですが、
『男はつらいよ』シリーズはガチでもてない人物を主人公に据えて成功した例ではないでしょうか

| ああああ | 2012/08/13 18:29 | URL |

バスケが上手くない男の漫画も
新体操が上手くない女の漫画も
そりゃあ面白くするのは難しいでしょうね。
運動音痴あるある?

| 児斗玉文章 | 2012/08/14 12:40 | URL |

「モテない主人公」と「モテないことをネタにした漫画」と「モテない人の人生を元にした漫画」とでは全然ちがいますよね。
スラムダンクの桜木花道だって「モテない」のカテゴリのはずですし

| ああああ | 2012/08/14 18:45 | URL |

「モテない」主人公を「モテない」ままで終わらせるなら「モテる」ではなく「内面の成長」を最終目標にすると良いんじゃないですかね。
性格に問題があって自分が愛される事ばかり考えてる主人公が相手の事を思いやるようになるとか。

| taida | 2012/08/14 20:41 | URL |

黒沢…

| ああああ | 2012/08/15 02:07 | URL |

いくらでも書けるだろう。

銭ゲバとかアシュラとか、蔵六の奇病とか火の鳥未来編とか。

| ああああ | 2012/08/15 05:42 | URL |

自称・日本一モテない男達を集めて日本一モテない男決定トーナメントをやる漫画とか?
これなら最後までモテないままで終われますよw

| AAA | 2012/08/15 07:21 | URL |

俺もアシュラがでた。

| 名無しさん | 2012/08/15 07:29 | URL |

もてない男に彼女ができる話に感情移入できないってのは、自分も何か行動してたらこうなれていたかもしれないという、現状が自分の責任てあることを突きつけられるのが嫌なだけですね。
そして、そういう奴は自分を直視するのも嫌いですからもてない奴がもてないまま終わるのもよみたがらないでしょう。
なので、そのコンセプトはどうやっても成功しないか、想定してた読者層と違うところにうけるかになると思われます。

| ああああ | 2012/08/15 09:02 | URL | ≫ EDIT

 女に縁が無い、だといくらでも探せばいるけど。
 そうじゃなくて『もてない』だと、女から嫌われる描写が必要になるから書けたとしても読者が食いつかなくて一巻切りに遭うだろうな。

| 名無しさん | 2012/08/15 14:06 | URL |

もてない男の話だとして、なんで恋愛のみにジャンルを固定するのかわからないのだが?
逆に言うと非恋愛系でもてない男が主人公ってのは存外あるのかなっと? 

| ゆりゆりな名無しさん | 2012/08/15 17:15 | URL |

その設定の感情移入の上手い使い方は

エロ漫画ならその設定最高だと思うんですよね

モテない主人公なら感情移入しやすく、そして、何かしらまあ エロい出来事に巻き込まれ、ついつい性欲に先走る様も描きやすい!

モテない主人公がする初めてのセックスっていうシチュエーションはかなり個人的に好きなのでー

| 堀歩 | 2012/08/29 04:52 | URL |















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