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終わった物語の“その後の話”―――2冊の『けいおん!』に思ったこと

※ この記事は原作漫画版『けいおん!』全4巻のネタバレと、『けいおん!college』『けいおん!highscool』のネタバレを含みます。閲覧にはご注意下さい。


 自分は元々「その後の話」が苦手なんだと思います。
 アニメ版の『けいおん!』ですら、1期が大好き過ぎたために2期はそれほど楽しめませんでした。劇場版も未だに観られていません。恐らく気に入れないし、気に入れないまま『けいおん!』という作品が終わってしまうのが怖いからです。


 キレイにまとまった最終回の「その後」を描くのはそれだけリスキーなんだと思います。
 自分が大好きだったアニメ『ちはやふる』や『とある科学の超電磁砲』なんかも2期の製作が発表されましたけど、楽しみだと思う反面、1期以上に好きになることはないだろうとも思ってしまうのです。
 特に『超電磁砲』1期はアニメ独自のエピソードで「一つの物語」として上手く完結させましたしね。



 だから、『けいおん!』原作版にも思うところがあったのです。
 原作漫画版はアニメ2期の終了とタイミングを合わせるように終了→原作最終巻が発売されていたのですが、劇場版アニメが公開されるのに合わせて「その後」の話が連載再開されたのです。しかも2本も。


・一つは、高校を卒業して大学に進学した唯達の「その後」を描いた『けいおん!college』
・もう一つは、高校に残って新生軽音部を始める梓達の「その後」を描いた『けいおん!highscool』


 正直なことを書きます。
 『けいおん!college』を読んだ時、「読まなければ良かった……」と思ってしまいました。

 面白くないワケじゃないです。相変わらずな唯達4人のキャラクターは魅力的ですし、掛け合いを見ているだけで楽しいです。かきふらい先生は4コマ作家としてガンガンスキルを上げていると思うので、まっさらな気持ちで読んだら酷評するような内容ではないです。

 でも……高校生じゃなくなってしまった唯達を見るのが辛いんです。
 私がロリコンだからどうのこうのという話だけではなくて。
 『けいおん!』は「高校生活」という限られた時間の中にしかないキラキラした一瞬を切り取った作品でした。そして、そのラストは高校を卒業して「私達はこれからどんな大人になっていくんだろう」と締めくくっていたんです。

 だから、大人になった姿は見たくなかったんです。知りたくなかったんです。
 『college』の作中では「高校時代の制服」が登場します。唯なんてセーラー服まで着ていますし。でも、それはコスプレなんです。「もう戻れないあのキラキラした時間」の頃のコスチュームプレイなんです。



 ちょっと別の話。
 たまたま最近家族が「スラムダンクを読みたい」と言ってきたので全巻引っ張り出してきて、渡して。ついでに10年くらい前に行われた「スラムダンク、あれから10日後―――」というイベントの特集をしている雑誌も引っ張り出してきて、井上雄彦先生のインタビューをパラパラめくっていたんですが。

 『スラムダンク』のその後は作者である井上先生にも分からないそうなんです。
 作中の終盤であるキャラがある状態になってストーリーは幕を閉じるんですが、井上先生にもそれがどういう状態なのかは分からないそうなんです。「スラムダンク2は書かないんですか?」みたいに言われても、それは作者にすら想像出来ないことなんだそうです。


 この年齢になると、よく分かります。
 あのラストの「その後」は多分、読者によって全然違う想像をしていると思うのです。
 すぐに元の状態に戻るだろうと思う人もいれば、もう戻れないだろうと思う人もいるのです。『スラムダンク2』をもし描いたとしたら、その読者一人一人の「想像」に「正解」を与えてしまう行為になってしまいます。

 それは果たして幸せなことなのか――――――




 大学生になった『けいおん!』メンバーを見た時の寂しさはそれに近いのかも知れません。
 いや、もっと言うとアニメ1期の後のアニメ2期にガッカリしてしまったのもそれだったのかも知れません。

 「正解」を知りたくはなかった!と。




 ……だから、「読まなければ良かった……」と思ったのです。
 唯達がどんな大学生になったのか、「正解」を知らないままでいたかったと思ってしまったのです。

 そうして自分の中の『けいおん!』熱というものがいよいよ消えて、やっぱりアレは一瞬の輝きだったんだなと悟ったような気持ちになって、それならそれで「楽しかった時間をありがとう」と思いながら、2009年からハマった『けいおん!』に別れを告げよう と 思ったら









 『けいおん!highscool』は号泣していました。

 超ーーーーー面白かったじゃないか!
 何だよ!「その後の話」でも楽しめるじゃないか!楽しかったじゃないか!この違いは何なのだ!


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○ 「普通のコ達のキラキラした一年間」
 これは別に私が「女子大生より女子高生の方が好きなロリコンだから」って話じゃないですよ!
 私が本当に好きなのは女子中学生です!でも、『けいおん!』は女子高生だから『けいおん!』なんですよ!まだまだ大人にならない女子中学生でも、もう大人と呼べてしまう女子大生でもないから、「限られた時間の中のキラキラした時間」があんなにまぶしいんです。




 『けいおん!college』は「その後の話」でした。
 キラキラした青春の時間が終わった後の話―――唯達はこれから大学生活の4年間があって社会人になって、プロのミュージシャンになるかは分からないけど、これからは無限の可能性を秘めた人生を生きるんです。


 『けいおん!highscool』は違う。
 これは「新しい物語」なんです。
 梓達は新生軽音部としての「最後の高校生活1年間」を描き、新入生である菫や直は「高校生最初の1年間」を描いているんです。だから、終わりが来る―――このバンドはたった数ヶ月で終わってしまう、それが分かっているから眩しく見えるんです。

 「…ごめん」のコマとか!ボロボロ泣かされましたよ!



 それと、これは梓やさわちゃんが言っていたことにも通じるんですけど。
 『けいおん!』の元々の5人って実はスター軍団なんですよね。音楽的な実力もそうですけど、キャラクターとして「誰が主役でもやっていける」メンツが揃っているし、そう育ってしまったんだと思います。

 それに比べると『highscool』の5人はすごく地味。
 梓はともかく、憂は元々「引き立て役」としての脇役だったし、純ちゃんなんてチョイ役だったし、菫や直は設定は個性的ですけどキャラクターとしては旧メンバーに比べると弱いキャラだと思うんです。

 でも、そこがイイんです。
 その「普通っぽさ」がすごくイイんです。どこにでもいそうな、どこかにいそうな感がイイんです。



 これは原作版じゃなくてアニメ版のエピソードですけど、アニメ1期4話で澪がさわちゃん達の頃の軽音部のテープを発掘して「こんな凄い演奏は自分達には出来ない……」と打ちのめされるシーンがありました。あれと同じことを今度は『highscool』のメンバーでやるんですよ。

 唯や澪達「放課後ティータイム」のライブ映像を観て、「あんな凄いライブは私達には出来ない……」と打ちのめされる―――でも、みんなそうなんです。上級生は常に「凄い存在」で、自分達はそれに比べて何にも出来なくて、でもだからこそ必死になれるんで。さわちゃんだけは横で見ているからそれが分かるんですよね。


 「わかばガールズ…放課後ティータイムに負けず劣らずいいバンドじゃない」




 『college』を読んだ時は「かきふらい先生はもう『けいおん!』を描きたくないんじゃないのか」と思ったのですが、『highscool』を読んだ時には「かきふらい先生は次は『けいおん!』じゃない完全新作を描いてください!マジで!」と思ったほどです。「普通のコ達」をこんなに魅力的に描けるんですから。

 梓や憂が「下級生からはこう見える」というのも面白かったです。
 特に梓は『highscool』でどんどん化けの皮が剥がれていったので、人間的にすごく好感が持てるようになりました(笑)。そうなんだよ、梓や憂も「普通のコ」なんですよね。『けいおん!』という作品の最後でこれを描いてくれて本当に良かったです。


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○ シンクロしないファンサービス
 2作品同時連載に、2冊がほぼ同時期発売ですから―――この2作品はもっと「シンクロしたストーリー展開」になるのかと思っていましたが、むしろ徹底してシンクロしませんでしたね。憂が唯が帰省していたことを喋ったくらいで。

 これは多分、『highscool』の中では「唯達のその後」は描いてはいけないと思ったからじゃないかと思うのです。回想シーンとか電話での声以外では徹底して登場させませんでしたしね。何も考えていない作品だったら、ファンサービスのために「文化祭のライブを観に来る先輩達」を描いちゃうと思うんですけど―――わざわざ描きませんでした。



 それと、憂だけはどっちの作品にも登場するんですけど。
 『college』の方は唯視点なので、憂は唯を特別視していないんですよね。
 でも、『highscool』は梓や純視点なので、憂は唯を溺愛している様が描かれているという―――「誰の視点で描かれるかによって世界が違って見える」ことをしっかり描いている辺りも侮れませんね。『けいおん!』本編を読んでいる時はここまで考えて描かれているとは思っていませんでした。

(関連記事:憂はいつから唯を好きなんだろう



 アニメ版の大ヒットによって、『けいおん!』の原作版は引っかきまわされたと思います。「原作は大したことないけどアニメによって化けた作品」みたいに挙げられることも多かったです。自分もアニメがなかったら原作に手を出さなかったでしょうから、それに対して偉そうなことも言えません。

 でも、最後の最後に『highscool』を見せられて、原作版の熱量に圧倒されました。
 大好きな作品でした。もっともっとこのメンバーを見ていたかったという気持ちもありますが、「その後」はやっぱり知りたくないんです。梓や憂がどの大学に行くのかは、知らないままでイイんです。


 『けいおん!』ありがとう。
 この作品に出会えて幸せでした!


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| 漫画紹介 | 17:59 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

原作けいおん

初めましてU・Mと申します。
自分は、アニメも、原作も終わった昨年11月頃「けいおん」
にハマった超遅組です汗

でも原作、アニメ共に凄く面白いですね!

因みに…

自分は原作は無印全4巻&高校編までは買いましたが、
大学編は買ってません。当時、大学編はイマイチと言う
感想が結構ネットに流れてたので買うのが怖かったんです
よ(その頃はまだハマってませんでしたが)

でも大学編は買わずに無印&高校編だけにして本当に良か
ったと思ってます。「大学編も良いぞ!」と言ってる
人達に自分の意見を押し付ける気は全く無いですが・・・
やっぱり唯達の物語は、あの卒業のシーンで完全に完結
してると思うので。因みに梓達のその後を描いた高校編は
無印4巻を読んだ後すぐ「見たい!」と言う気持ちになり
ました。

| U・M | 2013/04/20 18:04 | URL | ≫ EDIT

なんというか、主観的すぎて伝わってこないですね。

| ああああ | 2015/12/11 17:08 | URL |















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