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どうして任天堂は“Touch!Generations”を辞めたのか

 「何を今更」と思う人もいるかも知れませんが。
 同時期にTwitterで何人かからこの話をされたこともありますし、自分自身も『とびだせ どうぶつの森』と『ニンテンドーランド』をプレイしていて思ったことがありましたので、2012年の内に書いておかなければと思って書きます。



 “Touch!Generations”とは?
 任天堂がDSやWiiで展開していたゲームソフトのシリーズで、「それまでゲームに慣れ親しんでこなかった人でも楽しめる」ブランドとして異色のソフトが発売されて大ヒット、DSやWiiが大ブームになるきっかけとなりました。公式サイトはもう既に閉鎖されてしまっているので、ソフトラインナップはWikipediaを参照してください。

 『nitendogs』『脳トレ』『えいご漬け』『常識力』『Wii Sports』『Wii Fit』『Wii Party』……100万本を越えるソフトがバシバシ発売されていて、『マリオ』や『ポケモン』や『どうぶつの森』と並んで、当時の任天堂にとって“一つの柱”になっていたと思われます。


 しかし、2010年の『Wii Party』を最後に“Touch!Generations”のブランドを冠したソフトは発売されなくなり、2011年のニンテンドー3DS発売前に「Touch!Generationsというブランド名はもう使わない」と言われていたのです。



<以下、引用>
岩田「でも、「タッチジェネレーションズ」というのは、 自分たちで立ち上げたブランドで、ショップにコーナーもつくり、マークを浸透させてきたんですけど、3DSを売るときには、それを使わないようにしようって、会社で正式に決めたんですよ。

糸井「おおー。」

宮本「だから、もう、 「タッチジェネレーションズ」って言わないんです。」

岩田「先日、社内の方針を決める会議で、私からそれを提案して、「みなさんいいですか」って聞いたら、全員が、すぐに賛成してくれたんですよ(笑)。」

糸井「あ、そう! 営業の人も?」

岩田「営業の人もです。
これはね、自分たちの会社ですけど、なかなかすごいことだなと(笑)。」

糸井「はーーー。」

</ここまで>
※ 改行、強調は引用者が行いました


 これを読んだ当時の私は3DSに興味がなかったので、「そうか。“Touch!Generations”も売れなくなってきているもんな。売れないブランド名は引き継ぎたくなかったんだな」くらいにしか思っていませんでした。
 『Wii Party』はバカ売れしていた時期ですけど……DSのラインナップを見ればミリオンセラーを連発していた2005~2006年に比べて、2008年の『美文字トレーニング』や『生活リズムDS』はヒットと言っても数十万本規模で、2009年の『占い生活』や『モノやお金のしくみ』は恐らく存在すら知らない人がほとんどだろうと思います。
 そんな風に、全盛期の面影はなくなってしまった―――だから“Touch!Generations”を辞めるんだろうな、くらいにしか思っていませんでした。


 いや、逆に言うとです。
 “Touch!Generations”というブランド名は使わないけど、DSやWiiと同じようなことを3DSやWii Uでもやるのだろうと思っていたんです。当時はまだWii Uって名前は明らかになってませんでしたけど。


 それから2年弱。
 全然違いました。この2年間に発売された任天堂のソフトラインナップを見て、「Touch!Generationsというブランド名はもう使わない」という宣言の意味を完全に読み違えていたことが分かりました。




 敢えて刺激的な言葉を使えば、

 任天堂は“Touch!Generations”を、ある意味では「失敗だった」と捉えているんじゃないか。

 この2年間のソフトラインナップを見ると、そう思えるのです。
 もちろん「ビジネス的には大成功」でした。たくさんの「ゲーム人口の拡大」に貢献しました。それでいて「たくさんのプレイヤーを楽しませた」、その点で成功していたことはもう間違いないことなんですけど。

 「これを続けてはいけない」という確信が任天堂にはあったんじゃないかと思われます。
 上層部が全員賛成するほどというのは、そういうことだろうと。


<以下、引用>
岩田「私は、慢心を生んだり、溺れたりしたくないので、自分たちに「成功」という表現を使わないように
気をつけているんですけど
あえて言ってしまうと、 タッチジェネレーションズというのはひとつの成功例だったと思うんですよ。
ですけど、その成功例と同じことをやるのはなんか、守りに入っているようなムードがあって。」

糸井「うん(笑)。」

</ここまで>
※ 改行は引用者が行いました




 外から見ている私達は、社会現象化したDSやWiiの熱狂を覚えていますから。
 「3DSやWii Uではああいうことは起こらないの?」「起こせないんじゃ、まだまだだね」「『脳トレ』や『Wii Sports』みたいに、もっとゲーム人口を拡大させるようなソフトを出さなきゃダメだよ」なんて言ってしまうのですが、それは全くの的外れだと思うのです。


 だって、任天堂自身が「もうそれはやらない」と言っているのですから。


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○ 二つに分かれてしまったユーザー
 思い出すことがありました。
 2007年のE3―――流石に当時の特設サイトなどはもうないみたいなんですが、何故かメッセージを載せたページが2つ見つかったので紹介します。ここここ


 当時は『脳トレ』や『Wii Sports』が世界的に大ヒットしている時期で、「今までゲームをやっていなかった人」が大量のライトユーザーとして入ってきた一方で、「ずっとゲームを遊び続けてきた」コアユーザーとの二つに分かれてしまっている――――という講演だったように覚えています。

 なので、その二つのユーザーを橋渡しするソフトとして、DSの『ゼルダの伝説 夢幻の砂時計』とWiiの『スーパーマリオギャラクシー』が紹介されていました。

 こういう言葉はあまり好きではないのですが……つまり、“Touch!Generations”と“ゲームらしいゲーム”のユーザー層は分かれてしまっているので、両方の層を満足させるソフトが重要だという話だったんです。




 CMも確かにそういう作りだった記憶があります。
 『夢幻の砂時計』の方は、『脳トレ』や『どうぶつの森』は遊ぶけど『ゼルダ』は未経験、くらいのイメージの若い女優さんが『夢幻の砂時計』をプレイしている様を横から見ている―――的なCMで。
 『マリオギャラクシー』の方は、『Wii Sports』目当てにWiiを買ったような家庭のお母さんが、ゲームの上手い子どもにアシストプレイをされながら『マリオギャラクシー』を遊ぶ―――みたいなバージョンのCMがあったように思います。


 つまり、「脳トレの次の1本」「Wii Sportsの次の1本」という売り方をしたんですね。




 しかし、成果が上がったかというと……微妙なところでした。
 シリーズ作品の売り上げとしては上々な方で、この2作品は共に続編が作られた程だったんですが。『脳トレ』や『Wii Sports』の売り上げに比べればそれほどでもなく、「“Touch!Generations”のユーザーが“ゲームらしいゲーム”のユーザーになった」と表現出来るほどではなかったと思います。

 この「ユーザーの二極化」問題はこの後も任天堂を苦しめ続け、DSに関しては『レイトン教授』や『ドラクエ』などサードメーカーから「脳トレの次の1本」が発売されて橋渡しが上手くいったと思うのですが、Wiiはそうした1本が出せずに「Wiiのソフトはライト層とコア層に分断されてしまった」と言われ続けました。




 「ゲームに不慣れな人はこのゲームを買ってくださいね」と提案するために“Touch!Generations”というブランドは作られたし、その提案は成功しました。
 しかし、その結果「ゲームに不慣れな人」を“Touch!Generations”という枠の中に閉じ込めて、それ以外の選択肢を奪ってしまったとも言えて――――「次の1本」として『マリオ』も『ゼルダ』も、その向こうにある“ゲームらしいゲーム”も手にとってもらえなかった。


 そう考えると、“Touch!Generations”というブランド名を終わらせたのは必然と思えますよね。



<以下、引用>
岩田「あと、もうひとつ、いえるのは、「シニアの人がゲームをするって言って驚いていた話は、もう過去のこと」なんですよ。
すでにもうゲームの経験がない人が、ゲームと接点を持つようになったし、年齢も性別も経験も超えて、ゲーム機ってみんなのものになったでしょ。」

糸井「うん、うん。」

岩田「だから、そういうことをわざわざ言って、ほかのものと区別する時期は終わったんだよ、っていうことだと思うんですよね。」

糸井「そうですね、その枠の中で考えさせるようなことじゃないですよね。」

</ここまで>
※ 改行、強調は引用者が行いました


 3DSやWii Uのソフトラインナップを見ると―――
 「新しい体験の出来るゲーム」は沢山ありますけど、「ゲーム人口の拡大」を狙った「普段ゲームをやらない人に向けたソフト」はほとんどありません。『花といきもの図鑑』とか、Googleストリートビューのアレとかはありますけど、数えるほどだと思います。


 例えば『ニンテンドーランド』は、ポジション的に『Wii Sports』と同じようなゲームだと思っている人もいるかも知れませんが。全然違います。『ニンテンドーランド』はかなりガッツリと「ゲーム」です。
 ミニアトラクションの6つは特に顕著ですけど、「油断すると一瞬で死ぬ」「ステージは常に最初から」「死んで覚えて上手くなる」タイプのゲームで―――むしろ80年代のファミコンとかゲーセンのニオイのするゲームです。

 ゲームパッドとMiiverseによる新しい体験はもちろんあるけれど、変に「ゲームに不慣れな人でも遊べますよー」と擦り寄ってはいないんです。



 3DSの内蔵ソフト『すれちがいMii広場』や『顔シューティング』にもそれは思いました。
 「すれちがい通信」や「カメラ」による新しい体験はあるけれど、やっていることは結構ガッツリと「ゲーム」なんです。


 「こっちは“Touch!Generations”、こっちは“ゲームらしいゲーム”」とソフトを分けてしまうとユーザー層を分断してしまうので、最初から「どっちの人でも楽しめますよ!」とその真ん中を狙っているソフト―――という印象を、『ニンテンドーランド』や『すれちがいMii広場』や『顔シューティング』には思いましたし、『スーパーマリオ3Dランド』や『とびだせ どうぶつの森』にも感じましたし、『カルチョビット』や『クリエイトーイ』にも感じました。


 「誰にでも楽しめるゲーム」を作ればイイんだ、「ゲームを遊んだことがない人に向けたゲーム」を作るのではなく。



 3DS発売前に「Touch!Generationsというブランド名はもう使わない」という話を聞いた時には、まだピンと来ていませんでした。発表されていたソフトラインナップは「今までのゲームを立体視に変えただけ」という印象でしたし、サードメーカーも含めて3Dアクションゲームが多かったですからね。

 しかし、それから2年。
 『スーパーマリオ3Dランド』や『とびだせ どうぶつの森』や『ニンテンドーランド』をプレイして、ようやくその意味が分かりました。「最初の1本」を“Touch!Generations”に任せるのではなく、『マリオ』や『どうぶつの森』といった看板タイトルが「最初の1本」になればイイんだと。



 個人的にはね、『マリオ3Dランド』よりも『マリオギャラクシー』の方が好きです。
 でも、「3Dマリオ遊んだことない」「そもそも3Dアクション遊んだことない」「なんか難しそう…」という人に自信を持って薦められるのは『マリオ3Dランド』の方なんです。恐らく、そういう覚悟で作られたのが『マリオ3Dランド』なんだと思うのです。


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○ かつて“Touch!Generations”だったゲーム達
 ここまで読んだ人の中には、「Touch!Generationsというブランド名はもう使わないって言って、ゲームをしない人のためだけにゲームを作るのは辞めると言っても、『nintendogs+cats』とか『鬼トレ』とか『Wii Fit U』とか出してんじゃん」と思った人もいると思います。

 なので、任天堂が「Touch!Generationsを辞めた」ということを知らない人もいるでしょうし、ブランド名を使わないだけでDSやWiiと同じようなことを3DSやWii Uでやるんだろうと思っている人もいるでしょう。


 でも、『nintendogs+cats』とか『鬼トレ』とか『Wii Fit U』って、もう「それまでゲームを遊んだことがない人に向けたゲーム」じゃないと思うんです。だって、これらの人気シリーズは前作をプレイした人が何百万人といるワケで、その人達は既に「ゲーム」を経験しているじゃないですか。“ゲームらしくないゲーム”と言われていたものだとしても。

 言ってしまえば、これらのゲームは「前作ファン」のための商品だろうと思うのです。


<以下、引用>
宮本「もちろん、DSを牽引したタッチジェネレーションズのソフトの需要は相変わらずありますから、
それはそれで大事につくっていけばいい。」

糸井「なるほど。」

</ここまで>
※ 改行は引用者が行いました


 ちゃんと宮本さんは明言していました。
 というか、このたった1ページに「それから2年間の任天堂の方針」がちゃんと書かれていたことに驚きます。なのに、「脳トレみたいなソフトは出ないのかー」「ゲーム人口を拡大させるソフトを出さなきゃダメじゃないかー」とかウダウダウダウダ言い続けていた私達は何だったのか!


 なので、『nintendogs+cats』とか『鬼トレ』とか『Wii Fit U』の売上を、前作と比較して「前作は社会現象起こすくらいに売れたのに、今回はその何分の1しか売れませんでしたねーププー」とか言うのは辞めてもらえますかね!『Wii Fit』の続編が出なくなったら私が困りますんで!!



 敢えて言いますと、
 かつて“Touch!Generations”だったソフトを今でも続けている人達って、数はそんなに多くないけど熱心でコアなファンだと思うのです。格闘ゲームとかシューティングゲームが「そのジャンルの熱心なファン」に支えられているジャンルなように、“Touch!Generations”はそういうジャンルになったのだろうと。




 ということで、任天堂さん。『お料理ナビU』もよろしくお願いします!
 そんなに数は売れないだろうけど、Miiverseで面白くなりそうなソフトじゃないですか!


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| ゲーム雑記 | 17:56 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

最後にお料理ナビ推しが来ましたね。
仰るとおり「俺流自慢」がしたくなるソフトですから、WiiUと3DSの連動とは相性がいいと思われます。

| 児斗玉文章 | 2012/12/22 18:33 | URL |

そこら辺の層はアップルにもってかれてしまったから。

| ああああ | 2012/12/22 20:37 | URL |

ユニバーサルデザインてやつでしょうか

| ああああ | 2012/12/23 00:07 | URL |

いやいや、けタッチジェネレーション系のゲームの活躍の場はスマホアプリに移行しただけだよ。
最後のお料理ナビだってソレ系のアプリなんてスマホにたくさんある。

| ああああ | 2012/12/24 13:29 | URL |

“Touch!Generations”というブランドを使わなくなった理由はわかりました。
しかしdsやwiiでもゲームを遊ばなかった層を新しく取り込む、旧来のタッチジェネレーション的な役割を担うためのゲームを出そうという試みまでやめるのは賢明とは思えません。
マリオ3dランドは2dマリオと3dマリおの橋渡しにはなっても、これまでのマリオのどれにも興味を持たなかった層に新しくマリオを始めさせる力は足りないかと。

| ああああ | 2012/12/28 17:38 | URL |

そういった層はアップルのスマホにガッツリ持っていかれてしまったから、
純粋に「コンシューマーゲーム機、『3DS』『WiiU』にしかできないこと」を追求しようとした結果ですね。
かつてのDSの立ち位置はスマホになってしまったのですから

| ああああ | 2013/01/04 14:50 | URL |















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