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どうして私には4コマ漫画が描けないのか

 久々に「漫画を描く立場」からの記事を書きます。

 縦書きの漫画を、横書きにする海外展開
 「縦書きの漫画を、横書きにする海外展開」の続き


 これは2008年に書いた記事で、漫画家は読者の視線がこう動くようにと考えてコマや絵やセリフを配置しているのだけど、海外向けにセリフを外国語に変えるとそういう演出が全部台無しになっちゃうよね―――みたいな話でした。

 この記事自体は当時そんなに反響は大きくなかったんですけど―――実はこの時に使った「漫画はこうやって読者の視線を誘導することを狙って描かれているんだ」と説明した画像が、後々に中学校の美術の授業とか、外国での日本語の授業に使われたそうなんです。長くブログを続けているとこういうこともあるんですね。




 ということで、「漫画を描く立場」からすると当たり前すぎてわざわざ言語化していないようなことも、「漫画を描かない人」からすると新鮮で面白い話なのかも知れないなーと、こういう記事も書いていこうと思うのです。

 「4コマ漫画」と「普通の漫画」の話。

 「普通の漫画」とは……適切な言葉が思いつかなかったのでとりあえずこの言葉を使ったのですが、「4コマ漫画」でも「1コマ漫画」でもない、コマの並びも大きさも数も均等ではない漫画のことです。とりあえずこの記事では「普通の漫画」という言葉で表したいと思います。


 「どうしていきない普通の漫画を描き始めたのか。最初は4コマ漫画くらいから始めれば良かったのに」と、漫画を描き始めたばかりの頃にはよく言われました。
 あずまきよひこ先生のように4コマ漫画で『あずまんが大王』をヒットさせ→普通の漫画の『よつばと!』をヒットさせた人もいますし、手塚治虫先生も「4コマ漫画は漫画のスジ立ての基本になっている」と著書で書いていたそうですし。
 4コマ漫画は普通の漫画を描き始める前のステップアップとして描かれる―――みたいな認識があるみたいなんです。


 「みたいなんです」と書いたけど、自分の中にもちょっとそういう認識はありました。
 2010年に『モテナイ4コマ』を描き始めたのは、長い時間をかけて普通の漫画を描いている間、サイトやブログに漫画を1本も公開しないのは「やまなしの漫画を読みたい人」に申し訳ないな―――と思い、ファンサービスと息抜きを兼ねて軽い気持ちで描き始めたんです。自惚れてましたね、何だよファンサービスって。そんな立場かよ、バカかよ俺。

 軽い気持ちで描き始めた4コマ漫画でしたが、すぐに後悔をしました。
 4コマ漫画は普通の漫画とは別のメディアなんだと。


 4コマ漫画の延長線上に普通の漫画があるワケでも、普通の漫画の基本が4コマ漫画で学べるワケでもなかったのです。上手い表現が思いつかないのですが……
 陸上の100m走と110mハードル走が別の競技、みたいなカンジで。一見似てるし、共通している部分もなくはないんだけど、特化している部分は全然違うし、どんなに110mハードルを練習しても100mが速くなるのには効率が悪いよね、みたいなカンジだったのです。


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 視線誘導の話は画像がないと分かりづらいと思うので、宣伝も兼ねて自分の漫画の画像を貼ります。まずは「普通の漫画」、『コマンド?→A/B/C』から。『コマンド?→A/B/C』みんな読んでね!


 32-33mini.jpg



 視線誘導の流れはこんなカンジ。
 もちろん「読み手」の状況によって視線の動きは変わりますんで(急いで読む人とじっくり読む人では違う、みたいな話)、必ずしもみんながそうなるというワケではありませんが。一例としてはこんなカンジです。


 32-33akamini.jpg



 黒髪のキャラ(睦月くん)がまくし立てる右ページは横移動でダイナミックに画面の横幅いっぱいに動かせ、茶髪のキャラ(青石)がじっくりと喋る左ページは縦移動でセリフと淡々と読ませ、最後に横移動で一気に次ページへ―――と配置しています。

 読者の視線が横や縦に目まぐるしく動くように作ってあるんです。
 自分が「漫画というメディア」を好きな理由はまさにコレで、コマを自由に配置して読者の視線を自由に動かせるこの特性は、映画やテレビなどの映像メディアにも小説などの活字メディアにもない、「漫画ならではの武器」だと思っているからなんです。




 では、対照的に「4コマ漫画」を。
 『モテナイ4コマ』を、敢えて「普通の漫画」と同じ見開きサイズに並べてみました。


 mote4mini.jpg



 視線誘導はこんなカンジ。



 mote4akamini.jpg




 当然のことながら、4コマ漫画は「コマの配置」がテンプレで決まっているため、視線を横に動かしたり縦に動かしたりが制限されているのです。悪く言えば「そういう演出が出来ない」、良く言えば「そういう演出で誤魔化せない」。

 純粋に「起こっている出来事の面白さ」で勝負をしなくてはならない―――
 自分はその辺のことをよく分かっておらず、「普通の漫画」と同じようなことをやろうとしたため、「淡々と会話をしているだけ」の4コマ漫画になってしまったんですね。まぁ、そもそも内容が内容なんですけど(笑)、これを「普通の漫画」で描けばもう少し面白く出来たかもなぁって思います。



 こう考えると手塚先生の「4コマ漫画はスジ立ての基本となっている」というのはその通りで、この記事を書きながら「じゃあやっぱり4コマ漫画から描き始めなきゃダメだったんじゃ」と思い始めてきたんですけど(笑)。

 4コマ漫画だけを描いていると、普通の漫画のコマ配置の勉強は出来ないので―――やっぱり「普通の漫画を上手くなりたいのなら普通の漫画をたくさん描いて」「4コマ漫画を上手くなりたいのなら4コマ漫画をたくさん描く」ってのが一番じゃないのかなというすごく当たり前な結論になってしまうのでありました。






 それはそうと。
 4コマ漫画はこれから先ますます「主流」になっていくんじゃないかなとも思うのです。
 例えば、幼少期に漫画をほとんど読まないで育った人って、大人になってから漫画を読もうとしても「コマをどういう順番で読めばイイのか分からない」らしいんです。読者の視線誘導を考えた作者の思惑がどうのこうのなんて意味のない次元の話です。
 4コマ漫画はその点、どういう順番で読めばイイのかは分かりやすい。


 また、「携帯電話やスマートホンの画面サイズでも読める電子書籍の漫画」で考えると、普通の漫画のコマ配置による演出なんてジャマでしかなくて、4コマ漫画のように1コマ1コマ均一化されたコマを順番に読んでいく方が向いているとも言えます。
 「普通の漫画」でも独自技術で1コマ1コマ順番に表示してあげるから携帯電話でも読めるよ!というサービスもあるんですけど、「視線誘導こそが漫画ならではの武器だ」と思っている自分からすると、一番大事なところを捨てちゃってるじゃねえか!と思うのです。


 じゃー、俺もこれからは4コマ漫画を描こうかな!とはいかないんだよ、というのはこの記事で散々書いてきたことなのですが。「4コマ漫画」と「普通の漫画」の違いは、これから先はますます重要になってくるんじゃないかなーと思うのです。


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