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Twitterの見事なゲーム化。『レンタル武器屋 de オマッセ』紹介

『レンタル武器屋 de オマッセ』
 ニンテンドー3DS用/レンタル武器屋RPG
 レベルファイブ/開発:ネクスエンタテイメント
 2012年11月21日発売
 800円(税込)※3DS eShop専売
 セーブデータ数:1
 公式サイト

GUILD01 (ギルドゼロワン)GUILD01 (ギルドゼロワン)

レベルファイブ 2012-05-31
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※ このソフトはニンテンドー3DSの立体視機能に対応していますが、自分は視力の問題で立体視が出来ません。なので、この紹介記事内では立体視機能については言及しないことを御了承ください。

 このゲームは元々、2012年5月31日に発売された『GUILD01』というパッケージソフトに収録されていた内の1つのゲームです。

 『GUILD』シリーズとは何かをご存知ない方も多いと思うのでそこから解説しますと、発売されるソフトが「大作のシリーズ作品」ばかりになってしまって「アイディア勝負の新作ソフト」が出なくなってしまった時代だからこそ、著名なクリエイターに「アイディア勝負の新作ソフト」を作ってもらってそれらを一つにまとめてパッケージソフトにしよう―――というシリーズでした。

 レベルファイブという会社は『レイトン教授』や『イナズマイレブン』等の新作ソフトをDS時代に大ヒットさせていたので、「面白いゲームを作るんだけど売れないクリエイターを集めて、面白くて売れるゲームを作らせよう」という狙いがあったのだと思います。『428』のイシイジロウさんに『タイムトラベラーズ』を作らせたりしていますしね。


 『GUILD01』に収録されていた4つのゲームは以下の通り。
・『解放少女』須田剛一(代表作:『シルバー事件』『killer7』『NO MORE HEROES』等)
・『レンタル武器屋 de オマッセ』平井善之(芸人。アメリカザリガニ)
・『AERO PORTER』斎藤由多加(代表作:『The Tower』『シーマン』等 )
・『CRIMSONSHROUD』松野泰己(代表作:『タクティクスオウガ』『ベイグラントストーリー』等)※ 敬称略



 しかし、このパッケージ版『GUILD01』の売上げは厳しいものでした。
 初週売上げ2万本以下、(これは後にダウンロード版が出たからというのもあるのですが)数ある3DSソフトの中でも「値崩れしているので安く手に入る面白いソフト」の代表格みたいになってしまいました。「面白いゲームを作るんだけど売れないクリエイターを集めた」結果、やはり「面白いんだけど売れないソフト」になってしまったというか……


 『GULID01』は何故売れなかったのか――――
 「あのパッケージはヒドイ」「CMしなきゃ完全新作が売れるワケがない」
 色んな理由が考えられますし、それらの理由も確かにあると思うんですが、私としてはシンプルに「複数のゲームを一つのパッケージに集めました、というゲームが売れる時代は終わったんじゃないか」と思います。

 確かにこうしたゲームがトレンドだった時代もありました。
 ゲームが重厚長大になって「なんだか面倒くさい……」という人が増えてしまったPS2時代のアンチテーゼとして、GBAの『メイドインワリオ』(2003年)、DSの『脳トレ』(2005年)、Wiiの『Wii Sports』(2006年)等が大ヒットした時代はありました。任天堂以外にも、『GCCX』なんかもDSで意外なヒットをしていましたね。

 これらのソフトに収録されているゲームは一つ一つが長くないことで、好きなものだけ遊べるという気軽さがありました。でも、こうしたゲームがヒットしていたのはせいぜいWii中期辺りまでで。WiiウェアやDSiウェアなどのダウンロード専売ソフトが出てきて、ソーシャルゲームがヒットして、みんながスマホのアプリで遊ぶようになって―――
 「アイディア勝負の新作ソフト」は、わざわざ複数集めてパッケージソフトで売らなくても、ダウンロードで一本一本買えるようになってしまったんです。


 だから、『GUILD01』に限らず「複数のゲームを一つのパッケージに集めました」というソフトは近年では苦戦しているのです。『脳トレ』や『Wii Sports』が数百万本と売上げていたのに比べて、『鬼トレ』や『ニンテンドーランド』は数十万本の売上げですからね。内容がどうこうとかCMがどうこうとかも問題ですが、今や複数のゲームをまとめてパッケージソフトで売るのは難しいと思うのです。



 そんなこんなで、『GUILD01』はパッケージソフト発売の半年後に4つの収録ソフトを各800円でダウンロード販売することになり、『GUILD02』は最初から全ソフトをダウンロード販売することになったのでした。

 言ってしまえば、売上不振による路線変更なんですが……
 ですが、この『レンタル武器屋 de オマッセ』、ダウンロード版だと結構売れているみたいなんですね。
 3DSのeShopでこれまでに売れたRPGランキングで、8位に入っていました。「RPGなのかこれ」とか「セールで半額期間があったからか」とか思うところもあるんですが、9位が『くにおくんの時代劇』で10位が『ドラゴンクエスト7』なことを考えると結構な成績じゃないかなと思います。

 だって、今なら『GUILD01』のパッケージ版は値崩れしていて1600円くらいで新品が手に入るのに、その4作品を800円ずつでバラ売りしてヒットしているのはなかなか凄いことじゃないかと思います。



 ということで、かつてはダウンロード専売ソフトのような「アイディア勝負の新作ソフト」がパッケージソフトとして売られていたのだけれど、やっぱりダウンロード専売ソフトにしたらヒットしたこのゲーム―――遊んでみたらイメージと全然違うゲームでした。


↓ 以下、感想はクリックで。




○ 武器屋が「勇者」を派遣する
 『ドラクエ』のような世界観だけど、勇者を主人公にするのでなく、勇者をサポートする「お店」が主人公のゲームは自分は結構好きなジャンルです。初期の頃しか知りませんけどガストの『アトリエ』シリーズや、フリーゲームの『レミュオールの錬金術師』とか、『ドラクエ4』の「トルネコの章」なんかも当てはまるかも知れませんね。


 そうしたゲームをイメージしてプレイしてみたら、全然違いました。
 このゲームは「モノを売ってお金を稼ぐゲーム」ではないんです。経営シミュレーションのように数字とにらめっこしたり、計画的なプレイが必要だったりはしないんです。


 このゲームの世界では武器を作る資材が不足しているために、武器屋は武器を“売る”のではなく“貸す”―――だから『レンタル武器屋』なんですね。
 主人公の武器屋に冒険者が訪れてきます。冒険者の「得意な武器」、今回冒険者が「戦う相手の苦手な攻撃方法」が情報として提示されるので―――プレイヤーはそれらの情報から、どの武器を冒険者に貸すのかを決めます。この冒険者は日本刀が得意で敵は「斬攻撃」が苦手だから、日本刀の中で「斬攻撃」が強い「太刀」を貸してみよう、みたいな。

 冒険者が無事に敵をやっつけて帰ってこれたら、レンタル料の「お金」と取ってきた「資材」をもらえて、「武器の経験値」と「冒険者のレベル」が上がります。良いこと尽くめ。
 逆に、冒険者が敵にやられてしまうと――――貸した武器はなくなってしまいます。何度もレンタルされて強くなった武器でも、冒険者がやられてしまうとなくなってしまうのです。


 だから真剣に「どの武器を貸すか」を吟味しなくてはなりませんし。
 そういう意味では、このゲームは「勇者に適切な武器を与えて派遣するゲーム」と言えるんです。



 武器を作るのはリズムゲームなのでリズム感皆無の自分は心配でしたが、完成した武器がことごとく「なまくら」な武器でもストーリークリアまでは問題なくプレイできました。
 クリア後に攻略サイトを見たら「なまくら」ばかりが出来ていた理由は、決してリズム感のせいじゃなかったんですけどね……理由はネタバレになるので反転させておきます。「このゲームの武器作りは叩いた回数が多いほど攻撃力がアップするので、急いで完成させようとせずになるべく削れる部分が少ないように時間をかけて叩くと攻撃力があがる。炭を使うと耐久が下がるので、そこは悩ましいところ


 ゲストキャラ(へいし)はただ武器を貸して、戻ってきたら「お金」と「資材」がもらえるだけなんですが……メインキャラにはストーリーがあって、派遣に成功するとストーリーが進むという仕組みになっています。
 敵に負けて武器をロストしたり「まだ完成していないから武器は貸せない」と断ったりしても、そのキャラがいなくなったりはしないんですが。そうするとなかなかストーリーが進まないという。





 シミュレーションゲームとして考えると、はっきり言って「出来ることは少ない」です。
 出来ることは「冒険者の得意な武器」に「敵の弱点」に合わせた武器を作って渡すだけなので、プレイヤーの選ぶ余地はほとんどありませんし。少なくともストーリークリアまでは資金がなくなるなんてことはないと思います。
 武器をレンタルさせると成長するシステムも、ストーリークリアまでは次から次へと新しい武器が作れるようになるので「成長させているヒマもない」のが実状です。ストーリークリア後のやり込み要素のためにあるシステムだと思います。


 タイトルだけ見て「経営シミュレーションゲーム」を期待してプレイすると物足りないと思いますし、逆にタイトルだけ見て「経営シミュレーションゲームかな……」と敬遠している人にはそれほど難しいゲームではないですよと言っておかなければなりません。

 レベルファイブのゲームですからね。
 「ストーリークリアまでなら誰でも出来る。やり込み要素は果てしない」というのは、この作品にも当てはまると思います。



 なので、このゲーム……「RPG」だとも「シミュレーション」とも思えなくて、どっちかというと「テキストアドベンチャーゲーム」だと私は思います。テキストがTwitter風に表示される「アドベンチャーゲーム」。

 これこそがこのゲームの「他のゲームにはない絶対的な魅力」ですし、他の要素はこれのためにあると言っても過言ではないほどです。



○ Twitterでしか描けない「物語」
 冒険者達に貸した武器には「ドナイナッター」という装置が付いているため、武器を貸している間だけ彼らの台詞が表示される仕組みになっています。


 omasse1.png

 こんな風に、彼らの呟きは(イベントが起こっている間以外)常に上画面に割り込むように表示されます。なので、こちらが武器作りのリズムゲームに集中している時には「読んでいる余裕なんかねえよ!」となって、いつの間にか急展開が起こっていたりして(笑)。


 omasse2.png

 そういう時は「ドナイナッター」のログ画面を表示して、スクロールして過去ログを読みます。「あぁ!こういう流れでこういう話になっていたのか!」と後から確認する―――Twitterでもよくあることですよね。この人、一体何のことを怒っているんだろう……と過去ログを遡って読む、みたいな。




 現実の話。私は朝から晩まで自宅に引きこもって漫画を描いていたりするので、そういう日は時折パソコンやタブレット端末でTwitterをチェックして、「今日は○○のイベントに来たー!」とか「××のお店で昼食」とか「もうイヤだ帰りたい」などなどみんなが呟いているTLを覗くのが唯一の“外界との接触”だったりします。

 ですから、武器屋に引きこもって、新しい武器を作って、戻ってきた武器をせっせと磨いている主人公が。「ドナイナッター」を覗いて、武器を貸した冒険者達が必死に戦っている姿を眺めるだけ―――というこのゲームは、ものすごく忠実にTwitterを再現しているなと思うのです。




 また、「群像劇」をゲームで描こうとすると―――オムニバス形式にするとか、別々の主人公を切り替えながら進むとか、色んな手法が選ばれてきたと思うんですけど。Twitterのように、各キャラの呟きがズラッと並ぶだけで「群像劇」になるもんだなと感心しました。

 確かにTwitterの魅力って「群像劇」っぽいところがありますよね。TLに現れる人は、みなそれぞれ必死に考えてそれぞれの人生を生きている主人公なワケで。



 このゲームに出てくる冒険者達は、基本的にはそれぞれを知らず、みんなバラバラの目的で武器を借りに来ます。惚れた男のために戦う女海賊、ヒーローになりたいおっさん、両親の形見を取り戻す旅に出ている双子の姉妹……みんなそれぞれの理由でそれぞれの場所で戦っているのですが。

 バラバラな場所で戦っている彼ら・彼女らの呟きを全部眺めている主人公(プレイヤー)だけが、そこで起こっている様々な“事件”の裏にあるものを気付くことが出来る――――「群像劇」の魅力をちゃんと分かった上でのストーリーになっていますし、これはTwitterでしか描けないストーリーだと思います。

 一人一人のストーリーが熱いし、彼らの呟きをずっと眺めている分だけ思い入れが強くなって、ついつい「頑張れー!負けるなー!」と応援してしまうのです。



 欲を言うと……
 このゲームのストーリーは、結局のところ「複数の冒険者が一本道のストーリーを進む」だけなので。プレイヤーの選択によってルート分岐するとか、こっちのキャラを進めるとこっちのキャラに影響が出るとか、そういう要素が欲しかったところです。

 全てのゲームにおいて「一本道のストーリーはダメだ!マルチシナリオが素晴らしい!」とは言いません。ですが、このゲームは「武器屋の主人公が武器を貸していくだけで世界の命運が決まっていくゲーム」なんだから、決められたルートを進むだけでなく、プレイヤーの決断がストーリーに影響を与えるような仕組みが欲しかったと思います。



 あとは、正直……ストーリーのクライマックスがあまり盛り上がらないというのも残念でした。せっかくそれまではそれぞれのキャラクターで熱いストーリーを描いてきたんだから、それを集約したようなクライマックスにして欲しかったかなーと。



○ 総評
 とまぁ……「ここをこうすればもっと最高だったのに!」とか「あとちょっとで大傑作になれたのに!」という不満が尽きないくらい、やっぱりこのゲームは良いゲームだったと思います。不満を言い出しているのは、そのゲームにハマっている証拠説。


 この手のゲームは、実際に「ここをこうすれば…」を実現した続編が出ても1作目のような斬新さがなくて「コレジャナイ」感が出てしまうものなので。これはこれで完成されているんだと思います。このゲームにしかない魅力のあるゲームでしたし、こういうゲームを生んだ『GUILD』シリーズは間違ってはいなかったんだと思います。


 クリア後に「これは面倒くさそうの極みだ!」というやり込み要素が提示されるのも、レベルファイブの様式美だと思いましたが(笑)。
 「レベルファイブって、マーケティング重視の無難なゲームとかシリーズ作品ばかり出しているんでしょ?」と思っている人は、是非どうぞ。マーケティングも何もないワケの分からないゲームも出していて、それでもちゃんと誰でも遊べるようになっているのは流石です。


武器事典武器事典
市川 定春

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| ゲーム紹介 | 17:52 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

架空のNPC同士の会話を楽しむと言えばドリキャスの隠れた佳作「東京バスガイド」の乗客会話を思い出しますが、これはテキストベースですから奥深さはずっと増しているようですね。

| 児斗玉文章 | 2013/10/17 18:25 | URL |

なまくらレンタル商会

>なまくらばかりになる理由
 なんと。こちらも「なまくら」ばっかりできるので、自分のリズム感のなさに絶望していましたが。

 ……まあ確かに、言われてみれば納得です。だって何度も叩きそびれたり、火を入れ直したりした時の方が評価はむしろ高かったんですもの。
 まさかそんなカラクリだったとは。

 この件についてはいちおう序盤のチュートリアルで、「外側からじわじわと叩け」みたいなことを言われたような覚えもあります。
 真ん中に近いあたりをガンガンと叩いた方が、手っ取り早く武器が仕上がり耐久性も高くなりますから、ついついそうしてしまうんですけど。むしろ、どうして外から叩けなんて言ったんだろうと、疑問に思えてしまうくらいに。
 けれどやっぱり、外からチクチク叩いた方が良かったというわけですか。あの助言はつまり、そういう意味……。

 この要素に関してはどっちにしても、説明不足で不親切だと思います。
 ただ「なまくら」ばっかりだって何の問題もなくゲームは進行できますし、総合的に見て良作という評価にも同意です。

| kanata | 2013/10/23 23:44 | URL | ≫ EDIT















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