やまなしなひび-Diary SIDE-

変わらない価値のあるもの

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

どうして「弱い敵から順に戦うのか」という勘違いが生まれるのか問題

 今日の記事はどうしても色んな作品の緩いネタバレを含んでしまうので、御容赦下さい。なるべく最近の作品については触れないようにして、10~20年前に完結した漫画を中心に例に出していこうと思います。


 バトル漫画の「弱い敵から順番に出て来る」問題の克服法の考察
 (アニメな日々、漫画な月日さん)

 バトル漫画における「敵をどう用意するのか」問題という記事を書いた際に、「バトル漫画はどうして弱い敵から順に戦うのか」という話題が出てきました。コメント欄でも指摘されましたし、ニュースサイトさんでも指摘されましたし、こんな風に記事にして書いてくださる方もいました。


 なので、この記事で書いてもらっていることと重なることも多いのですが、一応自分の考えを書いておこうかなと思います。




 「バトル漫画は弱い敵から順に戦う」という考え自体が勘違いだと思います。

 『ダイの大冒険』は初っ端にいきなりハドラーと戦っていますし、中盤で戦うことになるバランはラスボス級の強さで恐らくその後に戦った敵キャラ(親衛騎団など)よりも強かったと思います。

 『幽遊白書』でも6巻で戸愚呂兄弟と戦いますが、戸愚呂(弟)の強さはその後に戦う酎や陣よりも遙かに上だったと思われます(少なくともあの時点では)。また、中盤で戸愚呂(弟)を倒した後に戦う、神谷や刃霧や御手洗は強さは戸愚呂(弟)には遙かに及ばないものの、“戦い方”を工夫することで主人公達を追い詰めていました。

 上述の記事にも例として出されていますが、『るろうに剣心』では刃衛や蒼紫よりも雷十太の方が弱かったと思いますし、斎藤一よりも尖閣の方が明らかに弱かったです。

 インフレバトルの象徴のように思われている『ドラゴンボール』ですら、完全体セルよりもその後に戦うプイプイやヤコンの方が絶対弱かったです。



 なので、「何故バトル漫画は弱い敵から順に戦うのか?」と言われたら「それは気のせいです」としか答えようがないんですが……自分が興味深いのは、それでは何故「何故バトル漫画は弱い敵から順に戦うのか?」と思われているのか――――という点です。

 一つには、序盤で戦う強敵―――『幽遊白書』における戸愚呂(弟)なんかは分かりやすいんですが、「その気になれば主人公達を瞬殺で全滅させることが出来た」のにそれを敢えてしなかったワケで。
 序盤で登場するあまりに強い敵は“RPGのイベントバトル”のようにカウント対象外になっているんじゃないかと思うのです。

 この「序盤で明らかに強い敵と戦っているのに何故主人公達は死なずに済んだのか」は作品によって違うので、実は一番面白いところだったりするんですよね。
 戸愚呂(弟)は主人公達が強くなってから真剣勝負で戦いたかったとか(これは『H×H』のヒソカにも通じる)、ハドラーの場合はダイの竜の紋章の力が発動して退けられたのだとか、『ドラゴンボール』の最初のピッコロ大魔王戦は「悟空が死んだと思って」その場を立ち去ったとか。色んなパターンがありますね。

1.主人公の成長を期待して敢えて殺さないパターン(『幽白』『H×H』など)
2.主人公が実力以上を発揮して奇跡的に退けるパターン(『ダイ大』など)
3.主人公が死んだと思っていたら生きていたパターン(この高さから落ちれば無事では済むまい)



 “何故「何故バトル漫画は弱い敵から順に戦うのか?」と思われているのか”という話に戻しますと、もう一つの理由として「ザコ戦はカウント対象外」にされてしまうというのが大きいと思います。
 完全体セルの後に戦ったプイプイなんかはべジータに瞬殺されてしまったので、読者の記憶にもほとんど残っていないのかも知れません。斎藤一の後に戦った尖閣も一撃で倒されてしまったので、ザコ戦扱いで忘れ去られてしまったのでしょう。
 「何故バトル漫画は弱い敵から順に戦うのか?」と思っている人は恐らく彼らを認識していないんだと思うのです。

 完全体セルの後に戦ったのは、魔人ブウ。
 斎藤一の後に戦ったのは、瀬田宗次郎。

 こんな風に記憶が改竄されてしまっているのではないでしょうか。
 「何故バトル漫画は弱い敵から順に戦うのか?」という疑問が出てくることが逆に証明してくれるように、「こないだ倒した敵よりも弱い敵はザコ戦扱いになってしまう」「こないだ倒した敵よりも強い敵しか記憶に残らないので、どんどん敵が強くなっているように勘違いしてしまう」のかなと。




 ということで……自分はむしろ、「バトル漫画はどうして序盤に最強クラスの敵と戦わせるのか」の方が気になります。
 
 バトル漫画から一歩引いてみてみると、負けたからと言って死ぬわけではないスポーツ漫画は「序盤に最強クラスのチームと戦う」ことが多いですよね。
 上述の記事でも指摘されていましたが、『H2』では序盤で英雄のいる明和第一高校と練習試合をしていますし、『スラムダンク』でも仙道のいる陵南高校と最初に練習試合をしていますし、『帯をギュッとね!』でも1巻で藤田恵と練習試合をしていますし、『アイシールド21』でも最初期に王城ホワイトナイツと試合をしていますよね。


 序盤に最強クラスの敵と戦うことで、「主人公達」の現状の強さを相対化できる上に、今後戦う“目標”として主人公達にも読者にも認識させることが出来るのです。
 往々にして、序盤に戦う最強クラスの敵には主人公達は負けるのですが、それによって「もっと強くならなければならない」という動機付けと、最終的にその敵を打ち破った際には「序盤では負けた○○をとうとう倒した!」というカタルシスを生むことになるのです。



 これは、バトル漫画にも通じる話だと思います。
 序盤に最強クラスの敵と戦うことで、主人公達がまだまだ未熟なことを見せて、その“目標”に向けてどう成長していくかというストーリーの柱を作ることが出来るのです。

 それほど主人公の成長を描いていなかった『るろうに剣心』ですら、瀬田宗次郎との最初の対決は「実質的には敗北」で、それによって再戦に向けて「新しい刀」と「新しい技」を習得する――――というストーリーの軸が出来たワケですしね。




 なので、主人公達の成長を描くタイプのバトル漫画・スポーツ漫画においては、「弱い敵から順に戦う」だけでなく「序盤に強敵を出す」というのがセオリーになっていて。「最強クラスの敵」を出すことによって、主人公達の成長をより読者に見せることが出来るのだと思います。

 例えば……これは実は「敵」である必要はなくて、『ドラゴンボール』の初期なんかはこのポジションをずっと師匠である亀仙人が担っていたワケです。
 初期の亀仙人は明らかに悟空より強く、多彩な技を繰り広げて、悟空にとっても読者にとっても強さの象徴のようなキャラでした。その後に悟空がどんどん強くなって、亀仙人自ら「悟空はもう自分を超えている」「これからは若者の時代」と言っていても、亀仙人がみんなの精神的支柱になっていたのは間違いありません。

 だから、「亀仙人のいなくなった世界」で悟空が巨悪に立ち向かうピッコロ大魔王編の絶望感は凄まじかったし、それでも悟空が世界を救ったあの時が初めて「悟空が亀仙人を超えた瞬間」とも言えて。あれも一種のカタルシスだったのかなーと。

(関連記事:「ピッコロ大魔王」編の衝撃は半端なかった
(関連記事:『ドラゴンボール』終了のタイミングを考える





 この話は、恐らくバトル漫画やスポーツ漫画の数だけ語れる話だと思います。何気なく描かれているように思われる作品であっても、どのタイミングでどういう敵を出せばどういう効果があるのか――――ちゃんと考えて描かれているのです。
 例えば『機動戦士ガンダム』におけるシャアの役割は、とか。主人公がどんどん強くなる話だと思っていた『バガボンド』が強くなりきった後どうなったのか、とか。語りたいことは尽きないんですけど、キリがないんでこの辺で。


| 漫画読み雑記 | 17:52 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

強敵が主人公を見逃すのって人によっては興ざめだのなんだの言われがちですが、勝ったら勝ったで文句言われたりという…。
途中で強敵が出る衝撃の方が重要だと思うんですけどね。

| ああああ | 2013/11/05 00:52 | URL |

あー、なんか騒ぎになっていたのですね。
火元の1人として言わせてもらうと。
それは「天佑」です。
「拳児」という名作拳法漫画に出てくる中国古来の考えですが、天の道を真っ直ぐ進む者には、天がその者の成長を促すような障害を与えてくれるということ。
少なからぬ者がその時点での実力には大きすぎる障害に潰される中にあって、主人公を張れるような器の大きい人物には天が道を示してくれるということですね。
御都合主義のような気もしますがw
これについてはいろいろ言いたいことがあるんで、そのうち考えをまとめます。

| 児斗玉文章 | 2013/11/05 10:15 | URL |

色々と突っ込みどころ満載ですな

| ああああ | 2013/12/01 01:32 | URL |

ボスが強くなってるのは事実だね

| ああああ | 2017/02/13 11:25 | URL |















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://yamanashirei.blog86.fc2.com/tb.php/1662-fa2c4e52

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT