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栗山未来は「何」になったのか――アニメ『境界の彼方』ラストシーン考察

※ この記事はアニメ版『境界の彼方』最終話までの全12話のネタバレを含みます。
 閲覧にはご注意下さい。



 ラストシーンの考察なので、当然ラストシーンのネタバレも含みます。
 まだ『境界の彼方』のアニメを観ていない人、これから観る予定の人は読まない方が絶対に良い記事です。今月ようやくブルーレイ&DVD1巻が発売されますし、1月8日にはニコニコ生放送で全話一挙放送もあります(タイムシフト予約は出来ません)。全話を観てからこの記事を読まれることを推奨します。





 さて。最終話の放送直後に、このブログでは「初見では絶対にワケが分からないであろう『境界の彼方』の伏線をまとめました」という記事を書きました。「急いで書いて良かったなー」と思うことに、その後にあいばたんが素晴らしい考察記事を書かれているんです。


 境界の彼方/第12話(最終回)感想(少しラストシーンの解説含む)

 自分は伏線まとめの記事で「何故、栗山さんは最後この世界に戻ってこられたのか―――」に完璧な説明は出来ないと書いたのですが、ちゃんと作中にヒントは描かれていたのです。
 詳しくはあいばたんの記事を読んでもらいたいですが、作中で分かりやすく描かれているものとしては、“境界の彼方”は世界を具現化していたし“境界の彼方と融合した栗山さん”は秋人を具現化していた、ならばラストシーンで栗山さんを具現化させたのは“境界の彼方を再び取り込んだ秋人”に他ならないはずだ、と。


 他人様の記事を「すごいね!すごいね!」と言うだけだとウチを読みに来てくれている人に申し訳ないので、このあいばたんの考察を踏まえて自分なりにもうちょっと考えてみようと思います。
 伏線まとめの記事に私は「最終話を迎えてもまだなお説明が付かない“謎”が大量に残っている」と書きました。しかし、あのラストシーンを踏まえて、以下のような仮説を立てると、そうしたたくさんの“謎”に説明が付くと気付いたのです。もっと言うと、あのシーンはコレを説明するためのシーンだったんじゃないかと思うくらいです。





 それはつまり。

 栗山未来は「神原秋人と同じような存在」になったのではないか――――





 これは恐らく本編中に出てこなかった表現だと思うのですが、アニメ放送開始前に公開されたPVにはきっちりこう書かれています。



 存在しないはずの「半妖」の少年――――
 秋人のことをそう説明しているのです。


 そう。「半妖」というのは本来は存在しないんです。
 妖夢である愛ちゃんと、人間の男性が結婚したからと言って、「半妖」は生まれないんです。妖夢は「人の心の憎しみが形になって生まれる」と言われているので、妖夢には恐らく生殖機能はないんです。愛ちゃんは猫又の妖夢が、彩華さんは九尾の狐の妖夢が、普段は人間の姿に変化している―――ってカンジなんでしょうしね。


 秋人は本来「存在しないはずの存在」……それが何を意味しているかというと、
 この作品には、最初から「存在しないはずの存在」が存在していたということなんです。



「先輩の中に“境界の彼方”は戻ったんです。
ここはもうすぐ崩壊します。私も多分……消えます。
“境界の彼方”が先輩の中に戻った今、私は存在できないはずです。本当の私は…もうとっくにいませんから」



 最終話のラストシーン。「存在できないはずの栗山さん」があそこに存在していたのは、唐突でも不思議でも御都合展開でもなく、最初から明示されていたんです。「存在しないはずの神原秋人」の存在が、「存在できないはずの栗山未来」の復活を裏付けていたんです。





 そして、このアニメのラストシーンに描かれる「栗山未来の復活」は、これまでずっと“謎”だった部分の説明も担っていると考えられるのです。それが、「神原秋人の出生の秘密」――――――

 最終話のAパート、神原弥生のこんな台詞があります。


「博臣くん、美月ちゃん。
秋人と未来ちゃんは、ただの“妖夢”と“異界士”ではない。特別な存在なの。
……よろしく頼みます!続くぅ!!」


 「特別な存在」というのを、最初自分は“半妖”と“呪われた血の一族の生き残り”だと思っていました。そして「続く」で、何も説明せずにこの作品は幕を閉じてしまったのだと思っていました。
 でも、違います。順序立てて考えれば、分かるのです。この状況で“半妖”だとか“呪われた血の一族の生き残り”だとか、分かりきったことを言うはずがないのです。

 というのも……弥生は、“境界の彼方”が作り出した世界の中で栗山さんがどうなっているのかを正確に把握していました。
 “境界の彼方”が勝てば世界が滅ぶことも分かっていたのですから、栗山さんが勝てば栗山さんも消滅することは分かっていたはずなんです。なのに、最後に「よろしく頼みます!」とだけ博臣と美月に言って去っていくのです。

 つまり、弥生は「栗山さんが復活すること」を分かっていたんですね。



 何故か?
 それはきっと――――


弥生「“境界の彼方”には栗山未来が作り出した…彼女の強い想いが作り出した“秋人の傀儡”がいるわ。それを捕まえなさい……全力で。後は、その妖夢石が運んでくれるはずよ。」
秋人「なんで……そんなこと、知ってるんだよ……」
弥生「分かるでしょ……貴方の母親は、神原弥生よ。」
秋人「……いずれ僕のことも、きちんと話してもらうからな」



 彼女はきっと経験しているのです。
 「母親だから知っている」というのなら、きっとかつて生まれてきた「存在しないはずの存在」を経験しているから知っているのです。
 “父親”がそれを望んだのか、“母親”がそれを望んだのかは分からないけれど、「存在しないはずの神原秋人」は、最終話で栗山さんがそうして復活したように、“境界の彼方”の力によって具現化された子どもだったんじゃないかと推察されるのです。


 もちろんこれは仮説でしかありませんが。
 そう考えれば、「弥生の言動」も「秋人の出生の秘密」も「栗山さんが何故復活できたのか」も全て作品内で説明されていることになりますし、「栗山さんの復活」によって今までの“謎”がことごとく解明されるラストシーンだったと言えるんじゃないかと思うのです。





 そもそもの話、物語の帰結として―――
 恐らく栗山さんは“境界の彼方”を殺せば自分が消滅することは分かっていて、それでも秋人を「普通の人間」にしてあげるために自分の身は犠牲になっても“境界の彼方”を殺せばイイと思っていたんじゃないかと思います。
 でも、秋人はそれを許しませんでした。“嫉妬”も“絶望”も“哀しみ”も“後悔”も“我侭”も“猜疑心”も“憎悪”も“諦め”も“狡猾”も“保身”も受け入れて、「普通の人間」になんて戻らなくてイイ、人間の汚い部分も最強の妖夢としての恐ろしい部分もあってイイじゃないかと“境界の彼方”と生きていくことを選んだのです。

 その選択の結果として、栗山さんが戻ってこられた―――というのなら、これ以上ないほど美しいエンディングだったと思いますし。



 「人の心の憎しみが形になって妖夢が生まれる」というこの作品世界において、
 栗山さんと、恐らく秋人は、

「予めそう定められていたのか……
それとも、栗山さんが頑張ったおかげかは分からない。
それとも、僕の栗山さんへの想いが届いたのか――――」


 栗山さんと、恐らく秋人は、誰かの純粋な「存在して欲しい」という想いから生まれているんです。人間の心の闇が集まって出来た“境界の彼方”が、実はそんな純粋な想いを具現化してくれていた―――最終話のタイトル「灰色の世界」には、そんな意味が込められていたんじゃないかと思います。



 アニメではあまり描かれませんでしたけど、原作の秋人は「死にたくても死ねない」というキャラでした。栗山さんはアニメでも原作でも「死んでしまいたいとどこかで思っていた」というキャラでした。闇を抱え、後悔を抱え、普通の人間になれない絶望を抱え、自身の生を肯定出来ないキャラでした。

 そんな彼らに、闇も後悔も絶望も抱えたまま、「存在してイイんだ」と言ってあげられたこのラストシーンはこれ以上ないほど優しくて美しかったと思いますし。だから、私はこのアニメが大好きだったんだなと心の底から思いました。








 ……ということで、このまま「いやー、あのラストシーンは凄かったんだねぇ」と『境界の彼方』語りを締めくくっても良かったのですが。やはりこうなると無視出来ない問題が出てきますよね。

 あれ?美月、何もやってなくね……?

 伏線まとめの記事に書いた、「残されたたくさんの“謎”」――――
 「博臣の能力」については原作である程度の説明はされていました(この記事参照)。
 「弥生の言動」と、「秋人の出生の秘密」はこの記事に書いた内容で説明出来ます。
 「栗山さんが何故戻ってこられたのか」も言うまでもなく。
 「泉の正体」と「弥勒の目的」もある程度推察は出来ますし、そもそもこれは詳細に説明するのは野暮だとも思うのです。秋人達には分からない大人の事情もあるだろうよと。

 でも、「美月が何をしていたのか」だけはやっぱり説明が出来ないのです。
 「弥生と連絡を取っていたっぽい」のは確定としても、「栗山さんと何を話していたのか」は最後まで分かりませんでした。何かを話していたのは間違いないと思うのだけど、美月は結局何もしていない(ように見える)し……ここまで徹底して説明されないというのは、やはりブルーレイ7巻で明らかになるのか、2期をやるのか。



 『境界の彼方』の2期があるのかは分かりませんが……
 もし2期をやるのなら、博臣を主人公にしてくれた方が面白いんじゃないかと思います。

 今日の記事に書いたように、秋人と栗山さんに関してはもう完全に「やりきっちゃった」と思うんですね。二人が完全に生を肯定出来るようになって、二人ともお互いに「好き」と言っちゃっているし。この二人の物語はもうここで完結してしまっていて、あとはひたすらイチャイチャするしかないと思いますもの(笑)。

 でも、博臣はこれから過酷な現実と戦わなければならないし、秋人との関係もこのまま続けられるかは分からなくなるし、ヒロイン(妹)との関係がどう変わっていくのかも面白そうですし、ニノさんがフラグ立てていたし(笑)。まだまだ描き足りない博臣の話があるのですよ!



 ……ということで心の底から言おうじゃないですか。
 2期、希望!!と。




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| アニメ雑記 | 17:51 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

この記事をはじめとした一連の考察をすべて読み返してから『境界の彼方』2周目に挑んだのですが・・・作品の印象がガラッと変わってしまいました。1周目も楽しく観てはいたのですが、さらに大好きなアニメになりました。ありがとうございました。
”ほろ苦さ”=感情のグラデーションの多様さを追求した『氷菓』や、さまざまな対立や想いを包みこむ理想郷としての商店街を描いた『たまこま』がその多様性を祝福していたのと同様に、この作品では善悪、正邪が分ち難く結びついていて、とても最近の京アニらしいアニメだったなあ、とおもいました。
栗山さんが存在を祝福される裏で、美月が恋愛面で報われないというラストの余韻もせつなくて美しかったですが、「脱・お留守番」を決意した彼女のその後も気になります。というか、あのかわいいキャラ達(野郎2人含む)をもっと眺めていたい。名瀬兄妹が主役の続編、見たいですね!

| TOP5レコーズ | 2014/01/05 03:19 | URL |

>TOP5レコーズさん

 そう言ってもらえて、『境界の彼方』についての記事を書き続けてきて本当に良かったと思えました。
 自分は結局この記事を書くために、トータル6周見たことになるんですけど(笑)6周目でも新しい発見のあるアニメでした。観れば観るほど細かいところに気を配っているすごい脚本だったんだなーと。


>とても最近の京アニらしいアニメだったなあ
 なるほど。自分も何となくその二作品が好きだったんですけど、言われてみるとそういう多様性の部分が好きで。『境界の彼方』が物語の中心にそれを取り込んでいたのもその流れであり、自分がハマったのも頷けるというものです。


>あのかわいいキャラ達(野郎2人含む)をもっと眺めていたい。
 すごく同意(笑)。
 名瀬兄妹の物語は「ここが始まり」だとも言ってイイと思うので、やっぱり続編が観たいですねー。

| やまなしレイ(管理人) | 2014/01/05 21:10 | URL | ≫ EDIT

境界の彼方、ラストシーンについて

初めまして、nick312といいます。境界の彼方についての記事を読み、コメントさせていただきました。
普段は定期的にアニメを観ることは無いないのですが、境界の彼方は珍しく毎週水曜日深夜を待ち望むほど大好きな作品でした。それでも、栗山さんが帰還するラストシーンは自分の中でどうしても解決出来ていなかったのですが、この記事に行き着いた後再視聴をすると、自然と涙が出ました。栗山さんと秋人のお互いの存在の結びつきの強さが分かる、とても美しい解答だと思います。
少し以前の記事へのコメントになりますが、本当にありがとうございました。

| nick312 | 2014/03/03 01:11 | URL | ≫ EDIT

1年も前の記事なのですがコメントさせていただきます、境界の彼方の世界の中で栗山未来の強い想いで作り出した秋人はは傀儡でしかありませんでした。なら秋人が親の強い想いで作り出されたならそれもまた傀儡でしかないんじゃないかって思うんですけどどう思いますか?栗山未来が復活した件栗山未来と境界の彼方が融合して境界の彼方の一部になってた栗山未来を具現化したってことで説明がつくかなと思うんですが秋人はどうなっているんでしょうか?

| kan | 2015/02/12 14:48 | URL |

ひとつだけ、
秋人の両親は母弥生が人間で父が妖夢だったはずです。
一度目の手紙を受け取った時、猫の妖夢ですか、いや趣味だ的なやりとりがあったと覚えがあります。
どうでもいいツッコミ申し訳ないm(__)m

| ああああ | 2016/02/16 07:08 | URL |















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