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『グラスリップ』にプンプン感じる「面白くなりそう」な素材

※ この記事はアニメ『グラスリップ』第4話「坂道」までのネタバレを含みます。閲覧にはご注意下さい。

 夏アニメも大体3~4話目に突入して、アニメクラスタの皆さんは「どの作品を視聴し続けるのか」を決めている頃かと思います。
 私の場合、冬アニメや春アニメの時期と違って精神的にゆとりが出てきたからなのか、逆に「アニメくらいしか生きている楽しみがない」と追い詰められているからなのか、今季はいつもにも増して面白いアニメばかりで「どの作品を視聴し続けるのか」を絞れそうにない状態です。


 しかし、「第3話の時点で面白い」ものだけを残すと、第3話がピークな作品ばかりを視聴し続けることになり―――夏アニメが終わる頃には「第3話の頃が一番面白かったな」ということになりかねません。
 「今現在面白い作品」だけでなく「これから面白くなりそうな作品」も残したい―――と、毎回思いながら選ぶんですけど、なかなかそれが難しいんですよね。

(関連記事:たくさんあるアニメ作品を「食わず嫌い」すること
(関連記事:「原作が絶賛連載中」作品のアニメ化による物足りなさ


 「これから面白くなりそうな作品」をどう判別すればイイのか。
 原作付きのアニメだったら「原作の評判」で期待値が分かるとか……
 アニメのスタッフに詳しい人なら「スタッフの実績」で判断するとか……
 そうでもなかったら、「3話までに描かれている設定や伏線」から今後面白くなりそうかを判断するとか……



 ということで、『グラスリップ』の話です!公式サイト
 今季プッシュするアニメとして放送開始前には1番手に挙げていたP.A.WORKSのオリジナルアニメですが―――現時点では正直よく分かりません!「面白い」か「面白くない」か以前に、「何やってんのかよく分からない」状態です。

 全てのシーンが意味深で、会話の一つ一つが後で活きてきそうな気もするんだけど……4話まで観た段階では「意味深なシーンが意味深なまま消化されない」ので、ひょっとしてこのアニメは何も考えずに作っているのか……?と不安になってきてしまうくらいです。
 『花咲くいろは』は第3話で一区切りのカタルシスを与えてくれたし、『TARI TARI』は第2話で「イイ最終回ダッタナー」と思わせてくれましたが、『グラスリップ』は第4話まで来てもまだモヤモヤしたまま。あれ、これあかんやつか……?と思わなくもないのですが。


 脱落しちゃうと後悔しそうなくらい「面白くなりそう」な素材は揃っているのです。
 それは、「設定」と「キャラ配置」の絶妙さ。恐らく「設定」を最大限面白く出来る「キャラ配置」から逆算してキャラクターを作っているんじゃないかなと思うのです。


 『グラスリップ』を語る前に、P.A.WORKSの前作『凪のあすから』公式サイト)の話をします。中盤辺りまでの軽いネタバレがあるのを許してください。

 『凪のあすから』のキャラ配置は……
 「AはBのことが好き」「BはCのことが好き」「CはDのことが好き」「DはEのことが好き」―――と、“片想い”が連鎖しているというキャラ配置でした。これ自体は珍しくもなんともないよくあるキャラ配置ですし、同じジェネオン(現・NBCユニバーサル)製作でオープニングとエンディングのアーティストが同じ『あの夏で待ってる』も同じようなキャラ配置でした。

 なので、正直「またこれか……」と思いましたし、「わざわざP.A.にこういうのを作らせんでもなぁ」と思い、私は『凪のあすから』は2話で脱落してしまいました。


 しかし、その3ヶ月後くらいに『凪のあすから』の評判がものすごく良いのをTwitterで見かけたので「今どんなカンジになっているのかなぁ……」と中盤から合流したところ、「これが狙いだったのか」と膝を打ちました


 「AはBのことが好き」「BはCのことが好き」「CはDのことが好き」「DはEのことが好き」―――というよくある“片想い”連鎖のキャラ配置から、BとDを退場させるということをやっていたのです。
 つまり、“片想い”連鎖はそれ自体を描くのが目的ではなく、“片想い”連鎖の中からキャラを退場させることで「Aは好きだった人を失う」し、「Cは自分のことを好きだったBを失う」し、“想い”は残るけど“人”はいなくなっているという状況で「好きって感情の正体」を描こうとしていて――――

 “片想い”連鎖という「キャラ配置」と、中盤で主要キャラの数人がいなくなってしまう「設定」が、掛け算のように組み合わさって面白さが何倍にも膨れ上がっていたのが『凪のあすから』だったのです。流石にこれを第2話の段階で予想するのは無理だっ!あと、みうなかわいいよ、みうな。




 『グラスリップ』に話を戻します。
 『グラスリップ』のキャラ配置は、主人公である透子を中心とした相関図です。

 やなぎ→雪哉→透子←幸←祐

 「恋愛禁止」だった男女5人のグループも、透子以外は誰かを好きで。
 ここに透子と秘密を共有している駆と、透子とイチャイチャしてくる妹が加わり。

 言ってしまえば「透子ハーレム状態」です。
 男女入り乱れたハーレム構造ですけど(笑)。


 「ハーレム構造のアニメ」なんてそれこそ石を投げれば当たるくらいたくさんありますが……ここに透子の「未来が見える」という設定が掛け算のように加わります。

 そもそも「ハーレム状態」って嬉しいのか?という話。
 以前にウチのブログにも書きましたが、ハーレム状態というのは“誰ともくっ付くない”状態だからこそバランスが保てているのであって、誰かとくっ付いた時点でそれは壊れてしまうのです。


 「未来が見える」透子の設定は、透子が“自分一人が幸せになればそれでイイ”という性格だったら何の問題もないですが、“みんなが幸せになって欲しい”という性格だと悲劇にしかなりません。
 雪哉とくっ付けばやなぎが泣くし、幸とくっ付けば祐が泣くし、駆とくっ付けば雪哉と幸が泣く――――「誰かを選ぶとそれ以外の誰かが哀しむ」未来が見えてしまうからです。



 第1話の祭りのシーンにこんな会話があります。

<以下、引用>
やなぎ「このメンツも今年で最後ねー」

雪哉「なんでそこまでネガティブになるんだよ。また来ればイイだろ、みんなで」

透子「そうそう!来年も再来年もずっと友達なんだから!」

やなぎ「ずっとって……先のことなんて分かるワケないじゃん」

透子「えー、卒業したら友達じゃなくなるの?やだよー、そんなの」

やなぎ「そうじゃないけど……何があるか分かんないって意味で」

祐「願い事って……口にすると自分自身が叶えてくれるんだって。だから“もう来れない”より“また来よう”の方がイイんじゃない?」

やなぎ「幸の受け売り?」

祐「そうだけど」

透子「じゃあ!何があっても、未来の私が全部解決してくれますように!

</ここまで>


 『グラスリップ』とは、恐らくこういう物語なのです。
 「何があるか分かんない」未来でも、みんなが一緒にいられるように透子が奔走し……きっと苦しむ物語だと思います。


 オープニングの映像なんて、すごく象徴的ですよね。
 例外はありますけど……普通アニメのオープニングって「第1話よりも先の姿」を描くものです。『ハナヤマタ』のオープニングなら、まだあの時点では知り合っていない5人が仲間になって踊る映像だし。『アルドノア・ゼロ』のオープニングなら、第1話の時点ではただの学生だった伊奈帆が戦場へと向かう映像だし。

 でも、『グラスリップ』のオープニングは「過去の映像」なんです。
 冒頭、陽菜がランドセルを背負っていて、透子が今より短い髪で高校の制服を着て走っていて、雪哉は恐らくまだ怪我をする前で、祐は幸に恋をする頃―――2年前と思われる映像から始まり、そこから一気に時間は進んで「仲良くなった5人」の姿が繰り返し描かれるのですが。そこに沖倉駆の姿がないことから、恐らくアレは「第1話より前の5人」の姿です。


 『グラスリップ』で「未来」を見ることが許されているのは透子(と駆)だけだから、オープニングの映像は「過去の映像」を描いていて、そこでは離れ離れになるなんて想像もできない5人の姿が描かれているのです。



 第1話が放送された当時は、この作品がこういうことをやろうとしているのかがよく分かっていなかったため―――正直、「何やってんのこの人達……」と思っていた“5羽の鶏を家に連れて帰る”エピソード。5羽という数字が象徴するように、鶏は透子・やなぎ・幸・雪哉・祐の5人を象徴していたんですよね。

<以下、引用>
駆「かわいそう……?」

透子「好きなとこ歩けた方がイイでしょ?」

駆「それは透子の価値観だろう。」

透子「え?えーっと……自分から檻に入る動物なんていないし」

駆「それは彼らに選択肢が不足しているだけだよ。ここは港町だし、猫もたくさんいる。襲われる可能性は考えない?」

透子「魚でお腹いっぱいだから大丈夫!多分……今まで猫に襲われたっていう話、聞いてないし!」

駆「猫以外は?」

<中略>

駆「俺は敵?味方?」

透子「それならジョナサンは私が守るから!

</ここまで>

 5羽の鶏が透子達で、そこにやってくる“外敵”が駆だと重ね合わせてみると……
 “恋愛禁止”でずっと仲良くやってきた5人が駆の登場によってバランスを失い、雪哉が透子に告白をして、祐が幸に告白をしようとしていて――――というその後の状況を示唆していたようにも思えますし、「鶏は檻の中にいた方が幸せなのか?放し飼いされる方が幸せなのか?」という問いを「未来が見える」透子に突きつけているようにも思えます。


 透子によって「未来を見られて」得た幸せは、本当に幸せなのだろうか――――


 ここまで書いて、なんだか私自身「やっべ、『グラスリップ』超傑作なんじゃないの」とテンション上がってきたのですが……第4話の時点ではこの「未来が見える」設定を大して使っていないので、揃っている素材から私が「こういう素材を揃えているということはこういう調理をするつもりなのかな!面白くなりそう!」と妄想しているだけであって、現時点では「面白い」アニメだとは私もまだ思っていません(笑)。

 ただ……ホント「面白くなりそう」な素材を用意してあるので、ここで脱落しちゃうと後悔しそうなんですよねぇ。

 あと、オープニングの映像は文句なしで大好き。サビが始まるところで一気に2年の時間が飛ぶところと自転車の疾走感とか、最後に透子が次々と見る「幸せな5人」の姿とか。もうこれを観るために最終回まで付き合ってもイイんじゃないかと思うほどに。

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