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生活感のある百合に悶える。『星川銀座四丁目』全3巻紹介

【三つのオススメポイント】
・これぞ文句なしの「禁断の愛」
・一緒にゴハンを食べて、お風呂に入って、寝る―――同棲だから描けるもの
・金髪・碧眼のスーパー美少女・乙女ちゃんが心底かわいい


<紙の本>
星川銀座四丁目 (1) (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ) 星川銀座四丁目 (2) (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ) 星川銀座四丁目 (3) (まんがタイムKRコミックス つぼみシリーズ)

<キンドル本>
星川銀座四丁目 1巻 まんがタイムKRコミックス 星川銀座四丁目 2巻 まんがタイムKRコミックス 星川銀座四丁目 3巻 まんがタイムKRコミックス

○ これぞ文句なしの「禁断の愛」
 百合漫画です。
 この漫画は、芳文社の百合を題材にしたアンソロジー集「つぼみ」にて2009年~2012年に連載されていた作品です。作者は『少女セクト』で知られる玄鉄絢さん。『星川銀座四丁目』自体は“成人向け”ではありませんが、成人向けで活動していた漫画家さんなので、『星川銀座四丁目』にも多少の性的な描写はあります。


 さて……この作品を語る前に、「百合」について語っておきます。
 「恋愛」を題材にストーリーを作っていくとしたら……どういうカップルを描くのであっても、「何かを乗り越える」要素が必要というのが私の持論です。言い換えると、「乗り越えられないもの」を作者が用意して、キャラクター達が「それを乗り越える」からこそストーリーが成り立つと私は思うのです。

 例えば……片想いの女のコに告白をして、付き合う。
 これも立派に「片想いを乗り越える」ストーリーとして成り立ちますし。

 彼氏の元カノが現れて、恋人関係が気まずくなる。
 これも「三角関係を乗り越える」ストーリーになりますし。

 お互い結婚しているのに、好きになってしまった不倫カップル。
 これも「イケナイ関係を乗り越える」ストーリーになるのです。


 もちろんこの「乗り越えられない障壁」が高ければ高いほどストーリーは盛り上がりますし、それを乗り越えた後に結ばれた主人公達のカタルシスは大きくなります。これ、実はバトル漫画における「敵が強ければ強いほど盛り上がる」のと構造的には一緒なんじゃないのかと私は思っているのですが。

 それはさておき、「百合」です。
 「百合」というのは「女性同士の恋愛」を題材に描く作品のことです。これも「恋愛」を題材にした作品なので、「同性愛を乗り越える」ストーリーになると言えます。それ故に、しばしば“禁断の愛”という決まり文句のようなキャッチフレーズが使われます
 「相手は同性の友達としか思っていないのに、好きになってしまった……」という片想いだったり、「女のコ同士で付き合っているってバレたらどうしよう……」というカップルだったり……“本当は女性同士で恋愛はしてはいけない”という社会のルールが「乗り越えられないもの」として立ちふさがってストーリーになるので、“禁断の愛”という表現がされるのだと思います。


 「それはイヤだ」と言う人の気持ちも分かります。
 もちろん“禁断の愛”という表現をしたからといって、本当に女性同士の恋愛が禁じられているワケではなく、「それを乗り越えて恋愛をする主人公達」を描くのだから―――ヒーローもののキャッチフレーズが「地球滅亡の危機!」なのに、実際には地球を救って滅亡しないみたいな話だとは思うのですが……

 そもそも、“本当は女性同士で恋愛はしてはいけない”というルール自体に違和感があるって人も多いと思うんですよね。実際の同性愛者の人や、友人・知人にそういう人がいるって人だけじゃなくて……
 例えば、私は「女のコ同士でイチャイチャするアニメ」をしょっちゅう観ているので、「女のコ同士はイチャイチャするのが当たり前だ」という脳内ルールが出来上がっていて……イザ百合漫画を読んでみて「相手は同性の友達としか思っていないのに、好きになってしまった……」というシーンがあっても、「別にイイんじゃないの?」としか思えないんです(笑)。


 これ、考えてみると皮肉なもので……
 同性愛を許容する世の中になればなるほど、「同性愛」を題材にした恋愛のストーリーは作りにくくなるんですよね。それだけでは「乗り越えられないもの」にならなくなってしまうので、別の「乗り越えられないもの」を用意する必要が出てくるのです。


 ということで、『星川銀座四丁目』です。
 この漫画は百合を題材にしたアンソロジー集に連載されていたくらいなので、「女性」と「女性」の恋愛を描いているのは当然なのですが……この漫画の主人公二人は、実は「大人」と「子ども」です。
 へー、年の差の百合カップルかーと思ったら、それだけじゃなくて「小学校の先生」と「小学校の生徒」です。ほー、それはかなりの“禁断の愛”だなーと思うのは早くて……この「小学校の生徒」は家庭に問題があったために「小学校の先生」が里親制度で引き取ろうとしているので、「親」と「子」でもあるんです。

 つまり……この漫画の主人公二人は、

・「女性」と「女性」
・「大人」と「子ども」
・「先生」と「生徒」
・「親」と「子」


 “禁断の愛”の4乗なのです!!
 「親」と「子」だから二人は一緒に暮らしているけど、恋愛感情が芽生えてしまっていて、でも手を出してしまえば終わってしまう関係なのです。女のコ同士の恋愛を見慣れてしまって、「女のコ同士で付き合っても別にイイんじゃないの?」と思ってしまう私でも、「これはマズイな!」と思うドキドキ感がたまらないのです。



○ 一緒にゴハンを食べて、お風呂に入って、寝る―――同棲だから描けるもの
 「親」と「子」が主人公なので、二人は一緒に暮らしています。
 「親」「子」だけど、百合目線で考えれば同棲百合カップルです。

 だから、物語の舞台の多くは「家の中」になり、そこでの生活を描いていくことになります。どうして「小学校の生徒」を引き取って育てようとしているかにも“FOOD理論”的な理由があるのですが、この漫画自体が生活を描いていくことをものすごく重視していると言えます。

 ゴハンを食べる。そのために、ゴハンを作る。
 そのために、商店街で買い物をする。
 お風呂に入る。
 寝る。

 誰だってする「当たり前のこと」も、好きな人と一緒にするからトキメキが生まれる―――というのを大切に描いているんですね。
 いや、なんかすごくキレイな話のように紹介していますけど……小学生と一緒にお風呂に入って、小学生の裸にドキドキしてしまう若い女教師なんて、ニヤニヤせずには見られないじゃないですか!
 「普通の親子はこうするんだよ」という口実を作って、帰ってくる度にハグをするところもすごい好き。


 こんなに好きで、こんなに近くにいるのに、絶対に手を出してはいけない―――衣食住をしっかり描いて、この二人の日々の生活を読者に感じさせることが出来ているからこそ、このドキドキ感が伝わるんだと思いますし。
 これはこの作品が「同棲カップル」を描いているからこその魅力だと思います。


○ 金髪・碧眼のスーパー美少女・乙女ちゃんが心底かわいい
 心底かわいい。
 小学生と言ったらそれだけでかわいいものかも知れないけど、この漫画の主人公の一人:乙女ちゃんはそんな次元じゃなくかわいい。小さくて、細くて、サラサラの金髪に、豊かな表情、芯の強さに、一途な想い―――と、何ともまぁ、かわいさの塊のようなコ。

 きっと先生の趣味なんだけど、着ている服もいちいちかわいいし、髪型のアレンジもかわいい。かわいいかわいい書きすぎて「か」「わ」「い」「い」という文字の組み合わせがゲシュタルト崩壊を起こしそうなほどかわいいです。


 しかし、この漫画……
 「つぼみ」発売のタイミングと、作中の時間を合わせて描いているので……スタート時が小学5~6年生だった乙女ちゃんも、どんどん成長していきます。「小学生のままでイイのに!」「ずっとこの愛らしい乙女ちゃんを見ていたかったのに!」という気持ちも正直あるのですが……

 でも、子どもって油断するとどんどん大きくなるし、これってよくよく考えてみると「早く乙女に大人になって欲しい」という先生の気持ちを表しているようにも思うんですね。大人になれば堂々と付き合えるのに、なかなかそうならない―――そのもどかしさを描くために、「成長する子ども」をしっかり描こうとしているのかも知れません。


 また、かわいいかわいい子どもだった乙女ちゃんが、少しずつ「女」になっていくのもドキッとするんですよ。身も蓋もない表現をすると「エロイ」。周りからもそういう目で見られるし、乙女ちゃん自身にも性欲が出てくるようになって……枕のシーンは破壊力抜群でした。


○ まとめ
 ということで、お気に入りの百合漫画です。
 電子書籍を利用するようになってから、「置き場所に困らない!」と百合漫画をよく読むようになったのですが……その中でもトップクラスに好きな作品でした。

 そんなに急スピードで成長しないで欲しいという気持ちも正直あったのですが、それを惜しいと思うくらい自分の中に「この二人」への愛着が大きくなっていたんだなぁと思います。それくらいお気に入りの作品です。


 「百合」というだけでイヤな人はいるだろうし、“禁断の愛”の4乗なので眉をひそめる人もいるかもだけど……テンポもイイし、爽やかな読後感があるし、割とライトな百合初心者にもオススメできる一作じゃないかなーと思います。多分。乙女ちゃんかわいいし(ゲシュタルト崩壊)。

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玄鉄 絢

芳文社 2013-02-12
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| 漫画紹介 | 17:56 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

星川銀座!!!
私も大好きです。大好きです。

確かに四重苦ですね、今気付きました笑
まだまだ(思春期一過性をよぎらせる)女子校閉鎖的百合が幅を利かせてる中早々に親子となったものだから、将来を展望させた点での意義しか私は念頭にありませんでした。
あとちゃんと外の世界を見通してるのも個人的ポイントですね。
浮き世離れした依存関係じゃ「生活感」は出せませんから。
そういうところがしっかりしていたからあまり意識してなかったのかなーと。
でも子供だから手は出せないシーンはやはりドキドキやきもきしましたけどね!!
最高です。
二人の関係がころころ逆転していくのもツボです。まさにそれが「生活感」に裏打ちされたものなので。

それと百合もBLも同性同士を壁に設定することは少なくなりましたが、BLは新たな壁に現実問題(恋人が入院したらとか、親へのカミングアウトとか)を盛り込むのに対し、百合はいつそこまで到達できるんだろう……と思ってしまいます。
星川銀座が人気を博せるのだから、これを足場に現実面に言及する百合が今後出てくることを期待してます。

| ねぎ | 2014/11/13 03:11 | URL |

姉妹百合等が成立しにくい理由

実は禁断の愛といっても禁忌度には差があるわけで…。
三大禁断愛といわれる同性愛、近親愛、小児愛の禁忌度は一般には
近親愛>小児愛>>(超えられない壁)>>同性愛なんだそうで。
ついでにいうと先生と生徒のような二次的禁断愛はこれらよりもずっと禁忌度が下がります。

従ってたとえば姉妹百合の場合は百合よりも先にシスコンが成立してしまうんですよね。
母娘百合の場合もそうでやはり百合の前に母子丼やロリコンが成立してしまうと…。
まああれだ同性愛というのは禁断愛の中では比較的ノーマルに近いということだね。

| hts | 2014/11/17 22:43 | URL | ≫ EDIT















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