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テレビアニメの総集編映画は、誰のために作られるのか?

 あんなに頑張って書いたのに全然アクセス数がなかったからまた宣伝しますけど、この記事に書いた通り、私は昨年の11月にバンダイチャンネルの「見放題」で色んな作品を観まくっていました。

 その中の一つに、劇場版の『機動戦士ガンダム』3作品がありました(2015年1月現在は「見放題」対象作品ではありません)。
 テレビアニメ43話を3本の総集編にまとめた映画で、自分はテレビアニメ版は4~5周は観ているけど、劇場版はCSで流れているのをチラッと1回観ただけだったので……「見放題」で観られるのだから、もう1回観ておこうかなと視聴したのです。

 また、「見放題」でこれまでずっと観たかったテレビアニメ版の『伝説巨神イデオン』も観て、その後に「見放題」対象作品ではなかったので12月になってから個別課金で劇場版の『伝説巨神イデオン 接触篇/発動篇』をそれぞれ観ました。
 こちらは2本の映画ですが、前後編で合わせて3時間に収められている映画とも言えて……前編の『接触篇』がテレビアニメ38話までの総集編、後編の『発動篇』がテレビ版最終話の39話+打ち切りになってしまったがために描かれなかった40~43話を描いた“真の最終回”とも言える作品となっていました。



 意図したワケではないのですが、私は1ヶ月の間に2本「テレビアニメの総集編として作られた映画」を観たことになりました。
 以前にコメント欄で教えてもらったことですけど、『ガンダム』や『イデオン』より以前の『宇宙戦艦ヤマト』もテレビ版は打ち切り→ 再放送で評価される→ 総集編の劇場版が大ヒットという流れだったみたいですし。
 近年でも「テレビアニメの総集編映画」が上映される作品はありますよね。『進撃の巨人』は、前編が公開されて後編が今年の6月に公開予定ですし。『まどか☆マギカ』は新作映画の上映に先駆けて、テレビ版の総集編を前後編で上映していましたし。『あの花』『中二恋』のように、総集編にプラスアルファを売りにした作品もありましたし。『境界の彼方』は「総集編」と「新作」の二部作らしいですね。



 さて、スタンスを明確にしておいた方がイイと思うので書いておきます。
 私は「テレビアニメの総集編映画」は好きではないです。
 『ガンダム』と『イデオン』の総集編映画を連続して観て、改めてそう思いました。

 ただ……逃げ腰でも言い訳でもエクスキューズでもなくて、シンプルに本当にそう思っているから書くんですけど。私は「世の中の全ての作品が自分のために作られるべきだ」とは思っていないので、私が好きではないからと言ってそうした作品に存在する価値がないとは思いません。
 それらの作品は“私ではない人”のために作られた映画なのだから、私が観て面白くないのは当然だけどそれが悪いワケではなく、そうした作品は観るべき人が観て楽しめばイイだけだろうと思うのです。



 「では、どういう人のために作られるのか?」という話の前に、
 どうして「テレビアニメの総集編映画」が好きではないんですか?と訊かれそうなので、個人的な理由をちゃんと文章化しておこうと思います。

 きっとこれは私が「好きな原作がアニメ化しても楽しめない」のと同じ理由なんです。アニメ化じゃなくてドラマ化でも実写映画化でもイイんですけど……
 “好きな原作”はそれはもうその時点で完成形なのに、例えば漫画をテレビアニメにするのなら全く同じものというワケにはいかないので、カットされる部分や付け足される部分が出てきてしまいます。私はそれに耐えられず「ここが原作と違う!」「アニメスタッフは原作の良さを理解していない!」と文句ばかり抱いてしまって、好きな原作のアニメ化もドラマ化も実写映画化も楽しめたことが一度もないのです。食わず嫌いをしているのではなく、十代の頃は率先して観て「こんなの原作の冒涜だ!」と文句ばっか言っていたのですが、そんなのは人生において無駄な時間だなと気付いて一切観なくなりました。

 「好きなテレビアニメの総集編映画」もそうなんですよ。
 “好きなテレビアニメ”はそれはもうその時点で完成形なのに、例えば43話のテレビアニメを3本の総集編映画にするのなら全く同じものというワケにはいかないので、カットされる部分や付け足される部分が出てきてしまいます。私はそれに耐えられず「ここがテレビ版と違う!」「劇場版スタッフはテレビ版の良さを理解していない!」と文句ばかり抱いてしまって、好きなテレビアニメの総集編映画は楽しめたことが一度もないのです。



 しかし、逆に私は「テレビアニメ→原作」の順に観ると、「元はこういう話だったのか!」「この原作をあんな大胆に変えたのか!」「アニメも良かったけど原作も良いなぁ!」と二度楽しめるのです。このメカニズムの理由は以前に書きましたが、“好きなテレビアニメ”の原作を読んでつまらなかったことは私は一度もありません。

 だからきっと、「総集編の映画→ テレビアニメの順」で観ると、私はどちらも楽しめるんですよ。総集編とはちょっと違うんですけど、『マクロス』は先に劇場版『愛・おぼえていますか』を観て、その後にテレビ版をCSでチラホラ観たら「元はこんな話なのかよ!」と夢中になれましたし。


 つまり、私が「テレビアニメの総集編映画」を楽しめない理由は、「先にテレビアニメを観ているから」で―――逆に考えると、「テレビアニメの総集編映画」というのは「テレビアニメを観ていない人」のために作られるんじゃないのかと思うのです。


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 『宇宙戦艦ヤマト』のテレビ版の放送は1974年~1975年で、劇場版の公開は1977年です。
 『機動戦士ガンダム』のテレビ版の放送は1979年~1980年で、劇場版の公開は1981年~1982年です。
 『伝説巨神イデオン』テレビ版の放送は1980年~1981年で、劇場版の公開は1982年です。


 敢えてこの記事の序盤では一緒くたに語っていましたが、この時期の「総集編映画」と現代の「総集編映画」は役割というか存在意義が全然違うと思うんですね。何故かというと、この時期はまだビデオデッキが一般家庭に普及しきっていないので「テレビ番組を録画して繰り返し観る」ということが一般的ではなかったからです。

 ビデオデッキが世に登場するのは1970年代後半ですが、当時はまだまだ何十万円もする高額な商品で……例えば1980年からの時代を舞台にした島本和彦先生の自伝的漫画(フィクションですけどね!)『アオイホノオ』の第1話には、テレビアニメの時間までに急いで帰って集中して「脳に記憶させるのだ!」というシーンがあります。その後には友人が、購入したビデオデッキを学友に自慢するために重い思いをしてかついで大学を歩き回っているシーンもあります。持っていることが自慢になるくらいのアイテムだったんです、1980年時点のビデオデッキは。

 いや、私は生まれていないんで……聞きかじりですけどね(笑)。

 『アオイホノオ』の1巻には島本先生と庵野秀明さんの対談も収録されていて、庵野さんは『ヤマト』の第1話に衝撃を受けて第2話からカセットテープに録音(録画機器はないので音だけ録る)して繰り返し聴いていたという話をされています。しかし、その録音するテープもそんなに安いワケではないので、新しい回が来る度に仕方なく消す回を選ぶとか。『ヤッターマン』(1977年~1979年)は修学旅行で1話だけ観られなかったのが悔しかったとか――――ハードディスクに新番組のアニメを片っ端から毎週録画で録りためて「忙しいから観る時間ないわー」とか言っている自分が申し訳なくなってくる話が収録されています。


 なので、そんな時代の「総集編映画」は、今の時代の「総集編映画」とは違うんですよね。再放送がなければ観返すことも出来ないし、テレビの前にいなければ観られないから「1話観逃す」ことだって多かったろうし……
 それが映画館に行ってお金を払えば「通した話」を「何度でも繰り返し観られる」んだから、そりゃ意義深いものだったと思いますよ!「ククルス・ドアン出ないのかよ!」とか「キッチ・キッチンの出番短っ!」なんて贅沢な不満を抱くほど恵まれていなかったと思いますよ!

 ちょっと余談ですけど……なので、『ガンダム』にしても『イデオン』にしても「1話観逃したら取り返しがつかなくなるストーリー」にはなっていないんですよね。最初から最後まで「ジオン軍の追っ手から逃げまくるホワイトベース」「バッフ・クランから逃げまくるソロシップ」という構図を保ったストーリーになっているという。
 これが、ビデオデッキが普及してレンタルビデオ屋さんも増えてくる1980年代中盤以降になるとちょっと変わって、「複雑なストーリー展開のアニメ」でもありになってくるのかなと思います。それこそ1995年~1996年の『エヴァンゲリヲン』はビデオに録画したりレンタルビデオで借りたりして、「何度も繰り返し観る」ことで考察が盛り上がったアニメですしね。


 更に更に余談。
 他の作品はちょっと分からんのですが、『機動戦士ガンダム』の場合はレンタルビデオ屋さんに「劇場版」は置いてあるけど「テレビ版」は置いていないという時期も長かったんですね。正確な時期はWikipediaにすら記述されていないくらいなので曖昧ですが、「劇場版」はレンタルビデオは少なくとも1990年代前半には置いてあったように記憶していますし、「テレビ版」は1999年の20周年のタイミングで初めてビデオパッケージ化されてレンタルビデオ屋に並ぶようになったと記憶しています。
 なので……『機動戦士ガンダム』は、「劇場版は手軽に観られるけどテレビ版は観るのが難しい」という時期が長かったんですね。だから劇場版の方に愛着が強い人が多いのも分からんでもないです。今やテレビ版も月額1080円のバンダイチャンネルの「見放題」で観られちゃいますけど。



 閑話休題。
 そういう時代ならば、「テレビアニメの総集編映画」が作られるのはとてもよく分かる話です。インターネットが普及した現代からは分かりませんし、ビデオデッキが普及した後の時代に育った自分は見落としてしまいがちな話です。

 では、どうして現代でも「テレビアニメの総集編映画」が作られるのか?
 今やテレビも全録時代。DVD再生機も普及しているでしょうし、ネットでの動画配信も整備されています。例えば『進撃の巨人』なんかは月額432円のdアニメストアで全話「見放題」なワケですよ。わざわざ劇場に行って安くないお金を払って観る意味、確かに大スクリーン+イイ音響というのもあるけど、その代わりにストーリーはカットされてしまったりするので……そこにそんなに価値を見出せる人がいるのか、と不思議でならなかったのです。

 「制作費が安く済んで、テレビ版のファンがたくさん来るから儲かるんでしょ?」と思う人もいるかもですが、熱心なファンこそブルーレイを全巻持っていたり、テレビ版を全話録画していたりするものですから……
 熱心なファンほどわざわざ観に行かないんじゃないかなぁと思いますし、公開初日に観た人が「今回のは総集編だから観に行かなくてもイイと思うよ」とTwitterに書き込むような時代ですから、そんなに儲かるものでもないと思うんですけど。



 で、「テレビアニメの総集編映画」というのは「テレビアニメを観ていない人」のために作られるんじゃないのかという話にたどり着くのです。
 というのもね……2012年からずっと私は「普段アニメを観ない人にアニメを観てもらうにはどうしたらイイのか」みたいな記事を書いてきましたが、なかなか観てもらえない最大のネックは「全話観るのがしんどい」なんですよ。

 「全12話のテレビアニメ」みたいなパッケージが、もうしんどいんです。
 逆に言うと、ジブリの映画はアニメであってもたくさんの人が観るし、細田守さんの映画もたくさんの人が観るので―――「映画」というパッケージだったらアニメを観るのも構わないって人が結構いるんです。

 『まどか☆マギカ』の総集編映画が上映された年、映画好きで有名な放送作家さんが「その年に観た映画」のTOP10かTOP5に『まどか☆マギカ』の総集編を入れていて……こういう人でも「映画」というパッケージにしておけば『まどか☆マギカ』を観るんだと驚いたことがありました。


 これは「上映中」に限った話ではなく、後々の「DVD化」などの展開をしていった時もそうです。
 私がどれだけ『境界の彼方』を好きで「面白いから観てね!」と熱弁しても、ブルーレイ&DVDで全6巻(7巻は第0話)もあると「レンタルするのも面倒くさい」って人がほとんどなんだと思います。哀しいけど。無力感に潰されそうになるけど。
 でも、「総集編映画になってDVD1枚になりました」って言われたら、とりあえずコレだけでも観てねと勧めやすくなるのも確かなんです―――


 私自身は「総集編映画」はそんなに好きではないです。
 でも、「普段アニメを観ない人にアニメを観てもらうにはどうしたらイイのか」を考えていくのなら、「総集編映画」は「敵」ではなく「味方」だろうって思うのです。入口をコレにしてもらって、気に入ってもらえたら「テレビ版も観てね」と言うとか「このスタッフの新作テレビアニメがまた今度始まるよ」とか言えるじゃないですか。

 ならば、「ククルス・ドアンの出番がない」とか「キッチ・キッチンの出番が数分だ」みたいなことにいちいち文句を言わずに「総集編からでもどうぞ」と言うべきじゃないのかと思うのです。
 でもなー、あれだよなー。『境界の彼方』の総集編を作るのなら、まず間違いなく「臭い妖夢」の話はカットされるだろうし、愛ちゃんとか桜とかは空気ポジションになるんだろうなー。あーあーあー。まだ公開もされていないのに文句たらたら(笑)。


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| アニメ雑記 | 17:44 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

はじめてコメントします。
総集編映画について「あの名場面を・あの名セリフを・あの愛するキャラクターを」「劇場版の大画面・良音声で」また観たい……という欲求を考慮に入れていないので驚きました。突き詰めれば「大画面にほむほむ(一例)が映っているだけで泣くほど嬉しいんだよ!」というのがファン心理なんじゃないかと。
あとは「安くもない入場料金・交通費を払って」「公開期間という限られた時間の間に」「わざわざ劇場まで足を運ぶ」というライブ感覚自体が楽しい、というのもあってですね。まぁこのへん突き詰めると「劇場でまだ5回しか観ていないのに近所で公開が終わった!上京して観に行かなきゃ!」……という症状になりますけどね!(体験談)

| ああああ | 2015/01/06 19:05 | URL |

概ね賛成ですが、では実写のドラマの総集編はなぜそんなに需要がないのかが気になるところです。
これが「たかがアニメ」に時間を費やすのは勿体無い、という心理によるものだとしたら悲しいことです。
あけましておめでとうございます。
今年もいいアニメに出会えますように…。

| 児斗玉文章 | 2015/01/06 19:40 | URL |

僕は総集編があると助かりますね~
つい先日も2015年になったから久々にエヴァ見ようと思ったんですけど、どうしてもTV版全部見てる時間がない!
だから総集編があるとその1時間半だけで物語を思い出せて、世界観に没入し直してから旧劇を見れる
インスタントではありますけどね

| - | 2015/01/18 17:33 | URL |

僕は総集編があると助かりますね~
つい先日も2015年になったから久々にエヴァ見ようと思ったんですけど、どうしてもTV版全部見てる時間がない!
だから総集編があるとその1時間半だけで物語を思い出せて、世界観に没入し直してから旧劇を見れる
インスタントではありますけどね

| ああああ | 2015/01/18 17:33 | URL |















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