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富野由悠季監督作品が描く、「なんか不思議な力」の恐怖と可能性

 どんなに宣伝しても一向にアクセス数が上がらないのでもう諦めますが、昨年の11月に自分はこの記事を書くためにバンダイチャンネルの「見放題」サービスを利用してアニメを見まくっていました。
 そこでテレビ版の『イデオン』、劇場版の『ガンダム』を観て……その後に劇場版の『イデオン』を観て、現在放送中のテレビアニメ『Gのレコンギスタ』も観ていて、自炊した『閃光のハサウェイ』も読み返している最中なので。ちょっとした「富野さん祭り」だなと、富野監督の作品について考えてみたくなりました。



 このブログは「アニメに詳しくない人にもアニメに興味を持ってもらおう」を一つの目的としているので、富野由悠季さんを知らない人のためにザッと大御所の来歴を説明しますと……

 1964年に虫プロダクションに入社、『鉄腕アトム』で制作進行・演出助手・脚本・演出を担当。フリーになってからは「さすらいのコンテマン」としてコンテを早く上げることで有名になり、1972年に『海のトリトン』で監督デビュー。1975年『勇者ライディーン』の監督を務め(監督は途中降板)、1977年『無敵超人ザンボット3』、1978年『無敵鋼人ダイターン3』とオリジナルアニメの原作&総監督を務めます。
 1979年の『機動戦士ガンダム』は社会的大ヒット、1980年『伝説巨神イデオン』、それらの劇場版を経て、1982年『戦闘メカ ザブングル』、1983年『聖戦士ダンバイン』、1984年『重戦機エルガイム』とオリジナルアニメを制作―――1985年からは『機動戦士Ζガンダム』『機動戦士ガンダムΖΖ』『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』『機動戦士ガンダムF91』『機動戦士Vガンダム』とガンダムシリーズを立て続けに作ったところで、ガンダムシリーズの監督を拒否して他の監督に任せることに。
 漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダム』の原作、OVA作品『バイストン・ウェル物語 ガーゼィの翼』を経て、1998年の『ブレンパワード』でテレビアニメの監督に復帰。1999年の『∀ガンダム』でガンダムシリーズに対するけじめを付け、2002年『OVERMANキングゲイナー』の原作&総監督、2005年には劇場版『機動戦士Ζガンダム』とWEBアニメ『リーンの翼』を制作し、2014年から『ガンダム Gのレコンギスタ』でテレビアニメに久々の復帰となりました。


 作品数、多すぎるわ!
 この他、小説も書いていますからねぇ……どんな仕事量の人生なんですか。

 ということで、流石に私も全作品を観ているワケではないですし。
 観た作品も……ほとんどの作品は10年以上前に観たものばかりで記憶が曖昧なので、今日の記事で全作品を網羅するつもりはありません。「○○についても触れろ!」と怒られるかも知れませんが、曖昧な記憶のまま書く方が失礼だと思うので、基本的には私の記憶が鮮明な『ガンダム』と『イデオン』を中心に語っていくと思います。



 富野監督の作品で一番有名なのは『ガンダム』なのは間違いないと思います。
 この作品自体も大ヒットしましたし、関連商品も大ヒットしましたし、監督自身が手がけたもの・他の監督が手がけたものがありますがシリーズ作品は未だに生まれ続けていますし、後のアニメ作品に多大な影響を与えた面もあると思います。

 で、その『ガンダム』という作品が「ロボットを“モビルスーツ”という兵器として描く作品」であったために、富野監督に対して「リアルな設定を好む人」や「スーパーロボットとは違うリアル系ロボットアニメの祖」というイメージを持っている人もいるかも知れません。
 というか、私がそうでした。故に『イデオン』を観るまで、富野監督に対するイメージがイマイチ定まっていなかったのです。


 「リアル系ロボットアニメ」に出てくるロボットはあくまで兵器なので、主人公の気合で性能が上がったりはしません。ガンダムも連邦軍の試作機だし、ザクもジオン軍の量産機です。パイロットが機体の性能を引き出すことはあっても、性能以上のことは出来ません。
 しかし、『Zガンダム』や『ガンダムZZ』の終盤には、“なんか不思議な力”によって機体が勝手に動いたり動かなかったりという描写があります。使われ方は違いますが、『ガンダム』や『逆襲のシャア』の終盤にも“なんか不思議な力”が出てきます。

 それ故に、『ガンダム』シリーズの終盤には“オカルト現象”というか“ファンタジー要素”があって「リアリティに欠ける」「御都合展開」「リアル系ロボットアニメだったのに最後が残念になる」という評価を、10年以上前にガンダムサイトを見漁っていた頃にはよく見かけました。
 私もそう思っていました。「どうしていつも最後こんなことをするんだろう?」と思っていました。そのシーンの意味を考えずに、ただ「ワケわかんないや」と思っていました。


 で、『イデオン』を観てようやく分かったんですね。
 富野監督にとって「リアル系ロボットアニメかどうか」なんてきっとどうでもイイんです。むしろ、一貫して描かれる「なんか不思議な力」こそが富野監督が描きたいものではないのかと思うんです。
 『ガンダム』シリーズだけだとそれがよく分かりませんでした。でも、『イデオン』を観て、『ダンバイン』や『ブレンパワード』などを思い出してみて、富野監督作品を通して考えてみると、「なんか不思議な力」への恐怖こそが一貫していると思うのです。


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 『イデオン』はとても分かりやすいですね。
 『イデオン』に出てくる主人公機イデオンは、主人公達が開発したのではなく、知らない星を掘り返したら出てきた「よく分からないロボット」です。それを、バッフ・クラン星人というまた別の異星人からの防衛のために起動して戦っていたら、どうやらこのイデオンというロボットは宇宙を滅ぼしかねないほどの力を持っていて、戦えば戦うほどパワーアップして手が付けられなくなっていることに主人公達は気が付くのです。

 「なんか不思議な力」を手に入れて「うっひょー!これを使えば敵もやっつけられるぜー!」と戦っていたら、いつの間にか「なんか不思議な力」に取り込まれていて、それが膨れ上がっていて、自分達の手に負えなくなっていたという展開をしていく―――富野監督の作品って、こういう展開をする作品が少なくないんです。


 『ダンバイン』後半におけるオーラ力の暴走やハイパー化もコレに通じるものがありますよね。『イデオン』の場合は「なんか不思議な力」を持ったイデオンは味方側にしかなかったけど、『ダンバイン』は一人一人が爆弾のような「なんか不思議な力」を持っていて、より複雑な構造の話になっていたと思います。
 『イデオン』を全話観た今、もう1回観返したいのだけど……全49話あるんですよねぇ。


 『∀ガンダム』は……詳しく語るとネタバレになってしまうので、どこまで語るべきか悩むのですが。『ガンダム』と名のついた作品ですけど、非常に『イデオン』と結びつきの強い作品ですよね。本当かどうかは分かりませんが、「イデオンのような物語をガンダムでやりたい」から始まった企画だったという説もありますし。
 穴を掘ったら「よく分からないロボット」が出てきたので、これに乗って攻めてきた異星人と戦う―――という展開は『イデオン』と一緒ですし、この「よく分からないロボット」がとてつもない力を持っていること、それ故に世界がどうのこうのという設定も『イデオン』にとても通じるものがあります。

 月光蝶だけでなく、発掘して出てきた核ミサイルだって、この作品のキャラクター達にとっては「なんか不思議な力」で―――そのあまりに凶悪な力に主人公が苦悩するシーンがあります。『∀ガンダム』は「とっつきやすくなった『イデオン』」と言えるのかもと今なら思いますし、この作品もまた観返したくなりました。でも、全50話あるんですよね……


 『ブレンパワード』も、なんかよく分からない遺跡を見つけ、そこから派生したなんかよく分からないものから生まれたなんかよく分からないマシンに乗り込んで、「なんかよく分からないマシン」同士で戦う話ですものね。
 当時は「なんかよく分からないマシンに乗って戦うなんて『エヴァ』っぽいなぁ」と思っていたんですけど、どっちかというと『エヴァ』が『イデオン』の影響を受けていて、『ブレンパワード』は『イデオン』やら『ダンバイン』やらの富野作品の流れに沿った作品だったんだなぁと今では思っています。



 さてさて。ようやくここで本丸に切り込めます。
 『ガンダム』における「ニュータイプ」という概念も、この「なんか不思議な力」だと思うんです。

 『ガンダム』を実際に観たことがない人はご存じないかも知れませんが、『ガンダム』の主人公アムロは最初は「ニュータイプ」とは呼ばれていないんです。住んでいるコロニーにジオン軍が攻めてきて、仕方がないからガンダムに乗って戦って、生き残るために戦って戦って戦っていたら―――いつの間にかニュータイプとしての能力が膨れ上がっていて、「オマエはニュータイプだ!」と言われるようになっていたのです。
 これ……住んでいる移民星にバッフ・クランが攻めてきて、仕方がないからイデオンに乗って戦って、生き残るために戦って戦って戦っていたら―――いつの間にかイデオンの力が膨れ上がっていて、「このままでは宇宙が滅んでしまう!」と気付いた『イデオン』の物語にとてもよく似ているのです。

 ニュータイプ自体は「ただ洞察力が鋭い人」でしかないのに、それが戦争に利用されると「人殺しのエキスパート」になりかねないし、力が暴走して「精神が壊れてしまう」キャラクターも後のシリーズには登場しました。『イデオン』における「イデの無限力」や『ダンバイン』における「オーラ力」と、実は近い描き方なんですね。



 富野監督の作風の一つに「皆殺しの富野」と呼ばれるものがあります。
 具体的なことはネタバレになるので書きませんけど、登場人物が片っ端から死んでいくみたいな展開が富野監督の作品にはよく起こって。しかし、逆に作品によってはほとんど登場人物が死なないで終わるものもあります。ファンの間では「黒富野」「白富野」と分類されることもあるのですが。

 富野監督が作る作品の根っこの部分に「なんか不思議な力」があるのなら、この「なんか不思議な力」を正しく使えたのか/それとも力に飲まれてしまったのかを描いた結果―――誰も死なないハッピーエンドにも、片っ端から死んでしまう皆殺しエンドにもなるんだと思うのです。
 その二つは「別々のもの」として生まれているのではなく、どの作品もどちらの結末にでもなる「表裏一体のもの」だよと描いているんじゃないかなぁと思うのです。『イデオン』を観ると、特に「力って何だろう……」と考えさせられますからね。


 なので……『Zガンダム』や『ガンダムZZ』のクライマックスで「なんか不思議な力」が出てくるのです。『ガンダム』や『逆襲のシャア』でも出てくるのです。
 もちろんバイオセンサーやサイコフレームなど「なんか不思議な力」が出てくる理由付けはされているのですが、わざわざクライマックスでああいう描写を入れるというのは戦って戦って戦った果てに“この「なんか不思議な力」を正しく使えたのか/それとも力に飲まれてしまったのか”を描くためなのだと思うのです。



 さて……『Gのレコンギスタ』もまた、「なんかよく分からない」空から降ってきたモビルスーツに「Gセルフ」という名前をつけて乗り込んで戦ってしまう話です。そして、ベルリはその才能を開花させて多大な戦果を挙げていきます。

 この「なんかよく分からない力」が最終的にどう描かれるのか……これまでの描写を振り返るに何も考えていないワケではなさそうので、今後の展開が楽しみです。


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| アニメ雑記 | 17:50 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

リアルであればあるほど、オチには人智を超えた何かが必要なのかも知れません。
視聴者の想像の範囲内で収まったら失敗ですもんね。
と、富野作品とは関係ないけど、昨年末の「インターステラー」を観て思ったのでした。
まぁ、それでもΖやΖΖのオチはどうかと思いますけど。
成功してるったら…F91のは美しい偶然ですね。

| 児斗玉文章 | 2015/01/11 19:33 | URL |















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