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名作の魅力を現代に届けるためには

 現在の自分は、ブログにレポート記事を書くためにdアニメストアの月額会員になって「見放題」を観まくっています。とにかくもう観まくっています。これまでずっと観たかったのだけど観る機会を作れなかったアニメを片っ端から観まくっています。
 その中でも、1月の後半からチョコチョコと観続けていて、ようやく最終話まで観終わったこの作品の話題を今日は書こうと思います。


 『キャプテン』

 原作は1972年~1979年に月刊少年ジャンプで連載されたちばあきお先生の漫画で、その後に特番アニメや劇場版アニメが作られましたが、私が観たのは1983年1月~7月に放送されたテレビアニメ版でした。dアニメストアだけじゃなくて、バンダイチャンネルの「見放題」にも入っています。(※2015年3月1日現在は)

 私はリアルタイム世代ではないので、原作漫画もテレビアニメも全く観たことがありませんでした。ただ、私より上の世代では「バイブル」として挙げる人も多く、お笑い芸人さんにもこの作品を好きな人が多いですよね。
 確か、ビビる大木さんだったと思うんですけど……ラジオでゲストに来た人に「『キャプテン』で言えば誰派?」という質問を、「AKBで言えば誰推し?」みたいなテンションでしているのを聴いてすごく笑ったのと、ここで「○○派!」と答えられる人間になりたいなと、いつか絶対に読むか観るかしようと思っていたのです。


 で、今回dアニメストアで全話視聴したのですが……
 まず、ベースとしては「面白かった」というのは最初に書いておきたいです。
 特に主人公が「キャプテン」ということで、チーム内の意見の調整などに苦労するのがとても面白かったです。一例を挙げると、即戦力の天才肌の1年生が入ってきて、「1年生はレギュラーにしない」という前例を覆してでもレギュラーにしたいのだけど、そうするとチームを支えてきた2年生をレギュラーから外さなければならないという葛藤があるとか。

 なので、「試合以外の回」はすごく好きだったのですが……
 「試合の回」はそれほどテンションが上がりませんでした。表現としてはあまり良くない言葉だと思うのですが、「よくある展開が続くなー」というものだったんですね。



 これは、『キャプテン』という漫画がダメな漫画だということじゃなくて。
 恐らくなんですけど、『キャプテン』があまりにエポックメイキングで「野球漫画のあり方」を変えてしまったために、『キャプテン』以後に「主人公がとてつもない凡人」「魔球なんかは投げないけど努力と根性で実力を付けていく」「泥臭く、ボロボロになりながら試合に戦っていく」という野球漫画がたくさん生まれるんですね。

 『県立海空高校野球部員山下たろーくん』(1986年~1990年)とか、『名門!第三野球部』(1987年~1993年)とかは、多分そうだったんだと思います。
 前者は史上最低の野球部が、たまたま通りかかった名門野球部を「偵察に来た!」と勘違いして猛特訓をして名門野球部に挑むスタートですし。後者は名門野球部の戦力外だった三軍が一軍に立ち向かうスタートですし。名門野球部の二軍の補欠から転校して、その名門に挑むという『キャプテン』の谷口に通じるところがあると思います。


 私は子どもの頃、先にそちらを読んでいたんです。
 特に『山下たろーくん』は自分が初めてコミックスをそろえていった漫画でしたし、野球のルールも『山下たろーくん』を読んで覚えたほどでした。『山下たろーくん』が自分の中の原点なので、『キャプテン』を観てまず思ったのは「『山下たろーくん』っぽい!」でした(笑)。

 年代を考えればもちろん逆なんですけど。
 これ、迂闊な人だったら脊髄反射でつい「何だよこの『キャプテン』って漫画、『山下たろーくん』のパクリじゃねえかよ」とTwitterに投稿しかねないなーと思いました。


 名作だからこそ薄れてしまう味

 これは2012年に書いた記事です。
 多くの作品に影響を与えたような名作ほど、後の世代は「影響を受けた新しい作品」の方を先に知ってしまうので、「影響を与えた名作」を後から観ても「俺の好きな○○に似てる」くらいにしか思わないという記事でした。
 『ワンピース』の作者が『ドラゴンボール』から影響を受けているのは間違いないけど、『ワンピース』から入った若者が「『ワンピース』に影響与えた漫画なんだって」と『ドラゴンボール』を読んでみて楽しめるかは別の話だ……みたいな。



 私は、「これだけたくさんの漫画やアニメやゲームがあるのだから、アナタが楽しめるはずの作品にも気付かずに過ごしてしまっているかも知れない。だから、新作だけじゃなくて過去の作品に触れる機会も大事なんですよ」と言いたくて、昔のゲームの紹介記事を書いたり、バンダイチャンネルやdアニメストアの「見放題」のレポート記事を書こうとしたりしてきたワケなんですが。

 過去の作品に今から触れても、どうしたって当時の空気みたいなものは分からないんですよね。
 『ゼノグラシア』の記事もコレに通じる話ですけど、2015年の今だと『舞-HiME』『舞-乙HiME』がヒットしていた2005年のあの空気感はなかなか分からないですからね。



 『伝説巨神イデオン』(テレビ版は1980年~1981年、劇場版は1982年)を去年に全部観た際にも、基本的には面白かったんですけど、ラストだけはどうしても「これ、○○っぽいよなぁ……」と思ってしまったんですね。ネタバレになるので具体的には書きませんけど、後にヒットするロボットアニメとか、富野さん自身の後の作品とかにも似たような描写があるので……
 「当時は斬新だった」のかも知れないのだけど、2014年に観た自分は「割とありがちなラストだなぁ……」と思ってしまったんですね。理屈ではそうではないと思えるのだけど、じゃあ当時の人と同じように楽しめるのかと言ったらそうでもないワケで。



 流行に逆行した姿勢が、色褪せない傑作を生む!『クインティ』紹介

 逆に、後の作品に影響を与えもしていないし、続編も出ていないようなものは、何十年経っても「新しい」と思えるのかも知れません。『ドラゴンクエスト』1作目を今遊ぶと「最近のRPG」と比較しちゃって古臭さを感じるけど、『クインティ』は比較する対象がないのでずっと「新しい」という。


 それこそ『キャプテン』における「試合以外」の描写は『山下たろーくん』では描かれなかった話だったのですごく楽しかったですし、『イデオン』のラストに向かうまでの壮絶な展開は他の作品でも観ないような壮絶さだったのでとてつもなく楽しかったです。
 『ガンダム』の1作目がどうして今でも超面白いのかと言ったら、避難民を乗せて戦争でボロボロになった地球を逃げ回るあの埃っぽさは後のシリーズにはない要素だからだと思うんですね。老人が子どもの食事を盗んだりするとことか。逆に、当時は恐らく「斬新」だった「ロボットアニメで戦争を描くこと」は、今ではもう普通のことなのでそこに「新しさ」は感じられません。


 なので、名作であっても「真似されていない部分」は今でも普通に楽しめる――――というのは、何だか不思議な感覚だし、同じ作品を同じように「面白い!」と言っている人でもリアルタイムに楽しんでいた人と何十年越しに楽しんでいる人では観るところが全然違うのかもなーと。

 名作の魅力を現代に届けるためには、「当時斬新だったところ」「多くの作品に影響を与えたところ」だけでなく、「どの作品も真似することがなかった部分」こそ紹介していくべきで。そこにこそ、その名作だけの魅力が残るのかなーと思いました。


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○ 余談
 名作漫画を題材にした漫画『金魚屋古書店』には、12巻に『キャプテン』が出てくるエピソードがありました。『キャプテン』を観終わった後、そのエピソードを読み返してみたら……
 ボロボロになりながらも戦い続ける『キャプテン』のキャラクター達と、ちばあきお先生の生涯とが、村尾と村尾の父との結末にシンクロしている見事な話だったんだなと分かりました。

 『金魚屋古書店』も『テレキネシス』も、「題材になっている作品を知らなくても楽しめるよ」と思っていたんですけど、題材を知る前よりも題材を知った後に読み返した方が面白い回も多くて……
 また、『キャプテン』を楽しんでいた人の人生を見ることで、『キャプテン』という作品の感じ方に奥行きが生まれますし。

 こういうことも「名作の魅力を現代に届ける」行為なのかもなーと思ったり。


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| ひび雑記 | 17:49 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

アニメは途中で終わっていますからそういう感想になるのかな。

イガラシの全国大会編は強豪校同士の駆け引き戦だし、近藤編はいかにチーム全体を強くするかというところに重点が置かれましたから。

| ああああ | 2015/03/02 21:44 | URL | ≫ EDIT

>ああああさん

 この記事で書いているのはそういう話ではないです。

| やまなしレイ(管理人) | 2015/03/02 22:10 | URL | ≫ EDIT

古きものの魅力

 後の作品が真似しなかった部分こそ斬新な魅力として残る、というのは少し新しい観点ですね。

 基本的には魅力的な部分ほど後発に真似られ、そして後発ほど洗練されていくから、古典が相対的な意味では見劣りするようになってしまう……ハズなのですが。
 面白かったからこそ多くの後継者たちが真似た部分とは別に、あまり着目されなかったが故に独自の個性として残る要素、というものもあると。

| kanata | 2015/03/02 23:14 | URL | ≫ EDIT

これは過去の名作を分析する上で、かなり重要なポイントなんではないでしょうか。
ここらへんがわかってくるようになると、ぐっと作品が面白くなるでしょうね。

| ああああ | 2015/03/03 14:34 | URL |

私がこの記事を読んで思いついたのは漫画ではなく
松本清張の「点と線」でした。

西村京太郎に多用されて陳腐になったトリックを取ったら
あの作品に何が残るのだろうと。

| 太田拓也 | 2016/04/07 20:33 | URL | ≫ EDIT















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