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じゃあ、実際にマンガを描いてみよう!その8~ペン入れ・実践編~

 当たり前のように、今週もこの記事を書き始めた土曜日夕方時点でペン入れは終わっていません。でも、今週はまだ余裕があって日曜日の午前中には終わりそうなので、この記事がアップされる日曜日の夕方にも終わっていないということはないと思います。普段はどんだけギリギリなんだよって話ですが。


 こうしてデスマーチは続いていく……


マンガは描ける!絵が描けない人でも
マンガは描ける!絵が描けない人でも

1.企画を立てる
2.プロットを考える&シナリオを書く
3.コンテに起こす
4.キャラクターをデザインする
5.ネームを描く
6.下描きをする
7.ペン入れをする(前編)
8.ペン入れをする(後編)←今週はココ!
9.消しゴムをかける&修正する
10.ベタを塗る
11.トーンを貼る
12.スキャンしてセリフを入れて完成!


 ペン入れに使う画材の話や、「そもそも本当にペン入れは必要なのか?」という話は、先週書いちゃったのでそちらをどうぞ。今週は更に更にマニアックな「実際にペン入れをしていく際の話」を書こうと思います。



 今回は8週目の「ペン入れをする」です。

【使用する道具】
・Gペン、丸ペン
・インク
・マーカー(枠線用)
・定規
・余った紙(原稿用紙を汚さないため用と、インクの出を確認する用)
・ティッシュペーパー(ペンのインクを拭く用)
・鉛筆



◇ まず知っておきたい「自分の体」のこと
 絵を描かない人に「ペン入れなんてただ線なぞるだけじゃん、なんでそんな時間がかかるの?」と言われたことが何度もあります。
 私も自分でマンガを描くまでは同じようなことを思っていました。初めてマンガを描く前、「マンガを描くのは初めてだから下描きには2~3ヶ月はかかっちゃうかもだけど、ペン入れは線をなぞるだけだから1週間もあれば30ページくらい余裕で出来るだろう」なんてスケジュールを組んでました。無知って怖いですね。


 まず大前提として知らなければならないことは、

 人間は疲れると「マトモな線」なんて引けなくなるということです。人間の体は筋肉で動きます。絵を描くための動きも筋肉を使います。言ってしまえば、「絵」は筋肉が描くんです。1日中ずっと机に向かってペン入れをしようとしても、あっという間に筋肉は疲労して狙い通りの線なんて引けなくなります。

 例えば、野球のピッチャーは「1球だけすごい球を投げられる」だけじゃダメですよね。先発ピッチャーならば100~130球くらいは投げなければいけません。リリーフピッチャーも1イニングを投げるのなら30球くらいは投げられなければダメでしょう。ワンポイントリリーフであってもファウルで粘られることを考えれば10球は投げなければいけません。

 マンガ描きもそうなんです。
 「思い通りの線を1本引く」のはきっと誰にでも出来ます。しかし、1本の線だけでマンガは完成しません。何百本、何千本、何万本もの線を引いて、ようやくマンガは完成されるのです。マンガを描くということは「何百本、何千本、何万本という線を引く持久戦」なんです。


 「ペン入れなんてただ線なぞるだけじゃん、なんでそんな時間がかかるの?」と言う人は、これをイメージしていないんです。1本だけならそりゃ確かにちゃちゃっと引けますよ。でも、それを1日中は続けられません。

 「今日は8時間ペン入れをするぞー!」と8時間ずっと机に向かったとしても、私の場合「ベストな線が引ける」のはせいぜい30分くらいです。残りの7時間30分は筋肉が思ったように動かないので、狙ったような線なんて引けません。
 しかし、1日30分ずつのペン入れではマンガは完成しませんから、「狙ったような線なんて引けない」状態でも何とかペン入れをしてマンガを完成させるしかないのです。

 では、実際にどうやって「狙ったような線なんて引けない」状態でマンガを完成させているのかの話をしていきます。



penire1.jpg
 一つには、「体がしっかり動く」時間帯に「大事なところを優先してペン入れする」こと。

 私の場合、最優先にしているのは「女性の頬」です。
 私の体は疲れてくると、「曲線」を引こうとしても体が楽をしようとして丸みを失った曲線になりがちなんですね。この状態で「女性の頬」を描こうとすると丸みがなくなり、頬がこけたようになって、極端な話「女性に見えなくなる」のです。だから、体がしっかり動く時間帯に「女性の顔」だけを次々にペン入れしていくのです。

 後は、男女問わず「キャラクターの口」も優先してペン入れをします。口は感情を表現する部位ですから、ちょっと線がズレて口角が上がってしまっただけで“意味”が変わってしまうのです。だからここも優先するのですが、口だけを先にペン入れをするとバランスがおかしくなることもあるので、やはり「キャラクターの顔」を優先的にペン入れをしていくってカンジですかね。

 その他だと、「まっすぐな長い線」も疲れてくると難しいです。さっきの話とは逆の話になっちゃうのですが、「直線」も疲れている時に引こうとするとヘナヘナな線になりがちです。定規を使えば問題はないのですが、私はなるべく定規を使わないフリーハンドで背景を描きたいので、背景の「まっすぐな長い線」も優先してペン入れをしますね。


 逆に、「服」とか「木」とかは後回しにして、疲れている時間帯にペン入れすることが多いです。



 その他に心がけていることは、「休憩をちゃんと取る」ということです。
 こんなのテクニックでも何でもありませんが(笑)。
 マンガを描くことに一生懸命になると「何時間ぶっ続けで描き続けた」ことに酔いしれちゃったりするものなのですが、その結果ヘロヘロな線ばかりになってしまうくらいなら、しっかり休憩を取って「肩を回復させる」「長時間作業できるようにする」ことも大事です。

 私の場合、ペン入れに限らずマンガを描く作業の時はいつも「45分作業」「15分休憩」「45分作業」「15分休憩」「45分作業」「15分休憩」「45分作業」「15分休憩」というサイクルにしようと心がけています。まぁ、実際にはもっと作業続けちゃうことも、逆に30分で肩が動かなくなって休憩に入ることもあるんですが。
 「休憩」はちゃんと肩を回復させること。「休憩時間だからマリオやろうっと」なんてしたら、右手に力が入って逆に筋肉が疲労しかねません。私は普段、休憩中は横になって、目を休めるために目もつぶって、ただひたすらラジオを聴いています。以前ブログに書いたこともありますが、肩甲骨付近の筋肉の凝りをゴルフボールでほぐして肩を回復させていますが、これは血管を傷つけるからあまり良くないという話も聞いたこともあるので……まぁ、あの……自己責任でお願いします。

 これで肩を回復させられれば、そこそこマトモな線も引けるようになるので、それでまた優先順位の高いところをペン入れしていくってカンジかな。


 あと、そもそも「ペン入れ作業を分散させる」というのも大事です。
 今回の企画は毎週作業を進めるというものだったので、「この週は下描き」「この週はペン入れ」って形にしましたが……普段の私は「下描き」と「ペン入れ」を同時並行でやっています。体の動く時間に「ペン入れ」、疲れてきたら「下描き」ってカンジで。

penire2.jpg

 原稿を乾かすスペースが3枚分しかないので、チョコチョコとペン入れするしかないってのもあるんですけどね。この3枚の中から「優先順位の高い箇所」「そうでもない箇所」を判断してペン入れをしています。




 「体力を付けること」「肩の筋肉を付けること」も大事で、私もなるべく筋トレしているのですが……あまり成果は上がっていないので偉そうなことは言えません。

 マンガ描きにとって肩の疲労は最も気にしなければならないことなので、私は普段なるべく右肩を疲れさせるようなことはしないように気をつけています。一時期は左手で歯磨きをしようとしたこともあります。上手くできなくてすぐ辞めましたが(笑)。
 なので、「タイミングを合わせてボタンを押す」系のゲームが出来ないんですね。実際に肩を痛めてアクションゲームを封印した時期もありました。QTEで「ボタン連打だ!」とかやられるのホントきつい……



◇ ペン入れはどこからしていくの?
 ……と、ここまで書いてきましたが。
 さっきの「女性の頬など、大事なところからペン入れをしていく」という話は割と“邪道”な手段だと思います。

 マンガを描く教科書的な本には、ペン入れは「手前にあるもの→奥にあるもの」の順でしていくと書かれています。私も基本的にはそうしています。その中で、例外的に「体の動く時間帯に女性の頬だけ先にペン入れしておこう」としているのです。

 それではみなさんにクイズを出します。
 マンガにおいて「一番手前にあるもの」ってなんだと思いますか?

 正解は……



 正解は、「マンガによって違う」でした!


 わーわーわー、石を!石を投げないでください!当たったら死にます!石が頭に当たると人は死ぬんです!!



 なんでか知りませんが、時々こういう意味もない茶番を書きたくなるんですよね。何なんでしょう。新しい病気なんですかね。
 基本的には、マンガは「枠線」が一番手前にあります。次に「フキダシ」や「描き文字」。その奥にようやく「キャラクター」。で、最後に「背景」。

 ただ、「枠線」より手前に「フキダシ」が来ることもありますし、「描き文字」が来ることもあります。「キャラクター」が前に来ることもあります。そういう時は、臨機応変に手前にあるものからペン入れしていくのです。


penire3.jpg
 例えば、ここは「フキダシ」の上部と「描き文字」が枠線より手前に来るので先にペン入れをしています。


penire4.jpg
 ここはパンプキンパイの右腕が枠線より手前に来る予定なので、枠線を後回しにしています。

 ということで、分かりやすく説明すると。
 「枠線からはみ出ているもの」→「枠線」→「フキダシ&描き文字」→「キャラクター」→「背景」の順が基本ですかね。もちろん例外はあるので、その都度作者が判断するしかないのですが。

 「効果線は?」という話は後ほど。



◇ 紙を回転させながら描く
 先ほども書いたことですが、「絵」は「筋肉」が描いてくれるものです。スポーツ選手が「自らの筋肉」をしっかりと分析して最適な動きを模索するように、マンガ描きも「自分の筋肉」をしっかりと理解しなければならないと私は思っています。マンガ描きはアスリートなのです!ブクブク太るけどな!


 人間の体は、右利きだと「(」←この向きの曲線は得意ですが、「)」←この向きの曲線は引くのが苦手です。左利きだと逆。また、「↓」この向きに直線を引くのは得意ですが、「→」この向きに直線を引くのは難しいです。じゃあ、「)」や「→」といった線を引かなければならない時にどうすればイイか―――

 「)」を180度回転させれば「(」になります。
 「→」を90度回転させれば「↓」になります。

 原稿用紙の方を回転させてしまえばイイのですよ。


 「それだといつまで経っても線引くのが上手くならないんじゃないか」だって?
 そういうのは「(」や「↓」を完璧に描けるようになってから考えることだ!

 二流・三流の変化球をたくさんの種類投げられるように練習しても、投げたら打たれるような二流・三流の変化球は投げられないのと一緒だ!それならば、ストレート1本に磨きをかけて「ストレートだけなら通用する」方が先でしょうよ!ストレートも二流、スライダーは三流、フォークも三流、シュートもカーブもチェンジアップも三流じゃ、何も投げられないのと一緒なんですよ!!




penire5.jpg
 では、実際にグリッシーニ警部の顔をペン入れしていく様を見ていきましょうか。


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 いきなり逆さま。
 先週書きましたが、髪の毛の先は「入り」を使って尖らせたいのでこの向きで描くのです。


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 次に頭のラインをペン入れしています。
 

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 まだまだ原稿用紙を回転させながら、次は輪郭。
 警部はあごひげ生えているのでここまでですが、普通のキャラは顎まで1本の線で一気に描きます。先ほども描いたように女性キャラは「頬のライン」を失敗すると別人に見えてしまうので気をつけて。


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 グルッと回して反対側まで線を繋げます。


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 次に顔の中のパーツを描きます。
 「(」の曲線で描けるところを描いていきます。眉毛、上まぶた、上唇……


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 180度回転させて、今度は下まぶた、鼻、下唇……


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 また180度回転させて、口の中……


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 向きを戻して、鼻筋や黒目、シワなどを描きこみました。これで完成。
 女のコのキャラだと黒目を大きく描くこと多いので、黒目も回転させながら描くこともあります。



 すっごい面倒くさそうに思えるかも知れませんが、自分はもう慣れちゃっているので左手がパッパパッパと流れ作業のように原稿用紙を回転させてくれます。もうほとんど無意識。
 故に私はペン入れをデジタルに移行出来ないんですね。デジタルソフトにも原稿を回転させる機能は付いているのですが、アナログほど無意識で回転させてはくれないのですごく時間がかかってしまい、「これならアナログでやった方が早いやー」と今でもペン入れはアナログでやっているのです。



◇ 集中線&ベタフラにチャレンジ
 さーて、「効果線」の話をしますよー。
 マンガの絵は、「キャラクター」と「背景」だけで出来ているワケではありません。あくまで紙に描かれただけの「静止画」なのに、「スピード線」を加えれば「動き」に見えるし、「集中線」を加えれば「カメラがそこに寄っている」ように見えるのです。不思議ですよね。動いているのは「絵」ではなく「読者の目」なのに……というメカニズムの話は長くなるのでこの辺で。


 多分気付いている人はいないと思いますが、私のマンガは昔と今では「効果線」の描き方が変わりました。意図的に変えた時期があるのです。それは『shine』を描いた時。後述しますが、あの作品は自分の中で「線の太さ」というものを真剣に考えた作品だったので、「効果線の太さ」についても考え直したんですね。


200vssutyu.jpg
 それ以前の、『200vs1×1』の集中線はこちら。

 当時の私の「効果線」は細いんです。丸ペンで、なるべく細く描かなきゃダメなんだと思っていたんですね。



commansyuutyuu.jpg
 しかし、それ以後の『コマンド?→A/B/C』の集中線はこちら。

 1本1本の線が太くなっていることが分かると思います。この画像だとちょっと分かりづらいですが、「1本の線の中で“太い→細い”と太さが違う」ように引いています。なので使っているペンもGペンで、強弱をつけて引いているのです。スキャナが「抜き」を拾えていないというのは難点ですが。
 また、『200vs1×1』の頃も意識していなかったワケではないのですが、『コマンド?→A/B/C』の集中線は「3~4本の線ごとに束になる」ように描いています。

 「集中線はメリハリ」なんですね。
 等間隔で敷き詰めて描いてしまうと、「ただの射線」に見えてしまいかねません。集中線の目的は「読者の視線を素早く動かすこと」なので、太い部分と細い部分のメリハリをつけて、線が引いてある場所と引いていない場所もメリハリをつけることにしました。


penire14.jpg
 では、実際に集中線を描いてみましょう。
 これもマンガを描き始めた頃はやっていなかったのですが、いつからか「下描き時にも集中線を描く」ようになりました。その方が完成した絵がイメージしやすいという理由で。

 よく見ないと分からないと思いますが、「×」印が中心点です。ここに向かって強弱を付けてサッと線を引いていきます。
 あ……さっき「人間の体は↓は描きやすいが→は難しい」と書きましたが、定規を使う場合は「→」の向きの方が描きやすいと思います。ここも原稿を回転させながら「→」の向きで線を引いていきます。

penire15.jpg
 ハイ、完成。
 原稿だとちゃんと「抜き」が出来ているんですけどね……


 「効果線はどの順番でペン入れするのか」というと、これも「コマに依る」んです。
 効果線は“線の勢い”が大事なので、なるべくなら他の部分にペン入れをしていない段階で引いておきたいです。原稿用紙の上は平らではありません。たくさんの線がペン入れをされるとその分だけインクが載っかりデコボコしてしまうのです。なので、上の画像は「キャラクター」より先に「集中線」をペン入れしているのです。

 ただし、更に上で載せた『200vs1×1』や『コマンド?→A/B/C』の画像の集中線は「キャラクターの奥に引いている」のが見ると分かると思います。キャラクターの動きを浮かび上がらせるために集中線がキャラクターの上に載らないんですね。こういう箇所は、「集中線」より先に「キャラクター」にペン入れをしています。



commanbetafla.jpg

 どんどん行きますよー。次は「ベタフラッシュ」
 黒いベタの中に、白い部分がフラッシュのように輝いている演出です。

 正直、やりたくないです(笑)。
 体力も精神力もものすごく消耗するので、一番体が動く時間帯にやらねばなりませんが、時間もムチャクチャかかります。スクリーントーンで済ませてしまうとか、デジタルで入れてしまうとか、手描きでやらずに済ませる人の気持ちも分かります。

 例えば『月刊少女野崎くん』の中で、「先輩、どうしてバスケやめてマンガなんて描いているんですか。バスケやっていた先輩はあんなにカッコ良かったのに」と言われた野崎くんが「今だってカッコ良いぞ!ベタフラが出来るようになった!」と言うシーンがあります。
 それくらいベタフラは大変だし、逆に言うとベタフラが出来るというのはカッコ良いんです。


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 ということで、そんなベタフラが描けるようになって、みなさんもモテモテになりましょう。
 今日から我々は非モテ卒業だ!!


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 集中線と同様に、「×」印で中心点を決めます。
 次に「線が始まる位置=始点」の大体の位置を円状にして決めて、「線が終わる位置=終点」の大体の位置をジグザグにして決めていきます。これはあくまで目安ですが、この目安によって様々な形状のベタフラに変化するので、面倒くさがらずに鉛筆で描き込んでおきましょう。

 どういうベタフラが楽かというと、「始点と終点に距離がある」方が楽です。
 何故かは後で分かります。


penire18.jpg
 関係ないコマが汚れないように紙を載せてカバー。
 今回のこの箇所のベタフラはそんなに大変じゃないですが、上の『コマンド?→A/B/C』のように「コマとコマが重なっている」ところにベタフラをする際には隣のコマに侵食しないように細心の注意が必要です。

 ただし、紙を載せると「紙の厚さ」の分だけ線の勢いは死にます。
 かといって薄い紙だと染みこんで隣のコマに侵食しかねないので……もうホント大変だったんですよ、『コマンド?→A/B/C』のベタフラは。


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 ベタフラというのは、言ってしまえば「密着している集中線」なんです。
 さっき集中線をGペンで強弱付けて「太いところと細いところにメリハリが付くように描いている」という話をしましたよね。アレの応用テクニックとも言えて、強弱のメリハリが出来ている集中線が密着すると白い部分がフラッシュのように見えるのです。“始点と終点が離れている方が楽”というのは、距離がある方が「強弱のメリハリ」を付けやすいからです。


 1本1本こうやって手描きしていくのは大変です。すっごい根気が要ることです。
 これが出来るんだから、野崎くんが言うとおり「ベタフラが出来る」って格好イイことなんです!


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 根気が尽きました(笑)。
 肩が疲労してくると「抜き」がキレイに出なくなるので、適度な休憩も取りましょう。ペン先もずっと同じものを使っていると「抜き」が出なくなるので、自分はGペン1→Gペン2→Gペン3とフル動員して、Gペン3もキレイに出なくなったら新しいペン先に(Gペン1を)入れ替えることにしています。

 あ、そうそう……詳しくは先週の記事を読んでもらいたいのですが。インクもベタフラ前には容器を入れ替えて「抜き」が出やすくなるようにしています。とにかく、ベタフラをしなければならない日はありとあらゆる手を使ってこれに向かう必要があるのです。だから、なるべくならやりたくないのです。


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 どうだ!完成したぞ!!
 久々のベタフラだったので緊張しましたが、そこそこちゃんと出来て良かったです。

 「枠線の外とかフキダシの中にはみ出してるのはどうするの?」という話は来週書きます。



◇ 超簡単に「白抜き」を入れる方法
commanshironuki.jpg

 『マンガは描ける!』の中でも名前だけは出した「白抜き」。
 キャラクターや描き文字などを、背景から浮かび上がらせて目立たせたい時に、その周りを白く縁取る演出方法のことです。

 私がマンガを描き始めた頃に読んだ本には、やり方は「描いた絵の周りを修正液でグルッと縁取る」と書かれていました。しかし、実際にやってみたらものすごく難しいし、ものすごく時間がかかってしまったし、現実的に出来るレベルではありませんでした。プロの人や、プロのアシスタントは次元が違うんだな……と打ちのめされました。なので、私のマンガもある時期まで「白抜き」を使っていませんでした。


 でも、ある日ふと気付いたんです。
 なんでわざわざ描いたものを消さなくちゃならないんだ?最初から描かなければ良いんじゃないか?と。

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 このコマでは、「女のコ」の奥に「警部」がいるという奥行きを表現したいので、「女のコ」の周りを白抜きしようと思います。まずは「女のコ」のペン入れを済ませます。


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 その周りを鉛筆で囲みます。
 『ドラゴンボール』のオーラみたいなカンジで。


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 その囲った中にはペン入れしない―――これだけ。超簡単。
 後で消しゴムをかければ囲った部分は全部消えるので、「白抜き」が終わっているという算段です。簡単だし、早いし、修正液も使わないので経済的にも助かります。



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 さっきも出したこのコマ。
 「描き文字」の周りに白抜きをしたいのだけど、枠線はどう引けばイイのかというと……


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 同じように、「描き文字」の周りを鉛筆でグルッと囲んでそこには枠線を描かないだけ。

 こういうところだけは、普段枠線に使っている「マーカー」ではなく、小回りが出来る「丸ペン」で描くことにしています。まず、丸ペンで普通に線を引く、定規はその位置のまま固定してペンとインクエッジとの角度をちょっとだけずらして並行になるようにもう1本の線を引く―――これで丸ペン2本分の太さの線が引けます。

 この「ペンとインクエッジとの角度」を調整したり、2本ではなく3本にしたりすれば、自由自在に狙い通りの太さの線が引けるのです。しかも、小回りが効くので「どこまで線を引いて」「どこからどこまでは空ける」みたいなことが簡単に出来ます。カラス口なんか使わんでも枠線は引けるんですよ!


penire26.jpg
 では、小回りが効かない時はどうするのか。
 集中線の中の描き文字―――集中線は勢いが大事なので、「囲った部分で止めて、またここから続きを描く」みたいなことをやると線が死んでしまいます。先ほど描いた手段は使えません。

 なので、ここは私がマンガを描き始めた時に読んだ本の通りに「描いた絵の周りを修正液でグルッと縁取る」を使います(笑)。その方法は、来週「消しゴムをかける&修正する」の回で!乞うご期待!!



◇ 何故「線の太さ」を変えるのか
 この話は過去にブログに書いて「オメーだって全然できてねえじゃん。偉そうなこと言ってんじゃねえよ」と言われたことがあるので、軽くトラウマになって話題にすることをずっと避けてきたのですが……
 この企画記事を参考にマンガを描き始める人がいるかも知れないことを考えれば、「叩かれるのが怖いから避ける」なんて理由で書かないのは良くないなと思ったので正面切って書こうと思います。


 先週の記事で、Gペンはボールペンやマーカーなどと違って「筆圧の強さによって線の太さを変えることが出来る」と書きました。しかし、「変えられるからどうした?」と思った人もいると思うんですね。「線の太さを変えられる」ことで何が出来るのかを語らなければ、どうしてGペンを使ってわざわざペン入れをしているのかを説明出来ないんです。



shineinei1.jpg

 一つは、線の太さを変えることで「陰影」を表現できるということです。
 『shine』という作品はそのタイトル通り「光」を演出のキーアイテムにした作品なので、作者としては“線の太さをコントロールすることで「陰影」を表現する”技術が必要な作品でした。「オメーだって全然できてねえじゃん。偉そうなこと言ってんじゃねえよ」と言われたトラウマを払拭するために、一から“線の太さ”の意味を考えて、それが表現できるようにこのマンガの主人公二人は髪の毛を白髪と金髪にしたのでした。


shineinei2.jpg

 このコマの線、シャインの髪の毛は右側と左側で線の太さが違うことが分かりますよね。(こちらから見て)右側は強い光が当たっているので線が細く、左側は影が出来ているので線が太くなっています。顔だけの絵でも、よく見ると1本1本の線の太さは違いますし、それぞれ「どうしてこの太さなのか」を考えてペン入れをしています。


 光が当たっているところは、線を細く。
 影が出来ているところは、線を太く。

 これが基本だと思います。
 まぁ、実際にマンガを描いていて「どっちから光が当たっているか」なんてなかなか考えないものですし、絵の描けない人間にとって何が一番難しいかと言えばこの「陰影」だと思うんですね。なので、ここは今でも私は自信がないところですし、偉そうなことを書いたからまた叩かれるんだろうなと今から落ち込んでいます。


penire27.jpg
 後は、「厚みを表現する」のにもよく使います。
 これは背景に小さく描いたビルの屋上の一つなのですが、1本だけ線が太いですよね。こうするだけで、この屋上は「平ら」なのではなく「中央部分が低くなっている」という立体感が出るのです。よく考えてみると、雨が降ったら水が溜まりますね、この屋上……


tanosimifutosa1.jpg
 すんごい細かいところですが……
 分かりやすい例を見つけたので、紹介すると。

tanosimifutosa2.jpg
 赤い丸で囲ったところと、青い丸で囲ったところ―――線の太さが2倍くらい違います。そうすることで「布の厚み」が表現されて、絵に立体感が生まれるという考えでこうしています。



penire28.jpg
 後は、「手前の絵」と「奥の絵」の線の太さを変えることで、「奥行きを表現する」こともあります。この二つの「絵」が同じ太さの線で描かれると奥にいるキャラが小人のように見えてしまうので、同じ距離にいるワケではないと線の太さを変えているのです。

 まぁ、ここのパンプキンパイの腕と髪の毛は後でベタ塗っちゃうんであまり意味ないですけど(笑)。



 そうだ、確か先週に「来週書く」って予告してあったと思う話を書くのを忘れていました。「フキダシ」の話。私、「フキダシ」の線は2回描いています。その方が太い線になって絵の中に埋没しないし、キレイな線になるし。

penire30.jpg
 まずは「しっぽ」の部分は、Gペンの「入り」を使って尖らせて描いて。


penire31.jpg
 次に「(」の向きに描けるように回転させながら描きます。
 しかし、これが画像だとちょっと分からないと思うんですが……

 左側→「(」←右側

 左側はキレイに揃っているんですけど、右側は何故だかガタガタの線になっちゃっているんですね。私のクセなのか画材のクセなのかは分かりませんが、マンガを描き始めた頃からずっとそうなんです。だから私はずっと「ガタガタが出ないように」気をつけてフキダシにペン入れをするのが嫌いだったのですが。

penire32.jpg

 今度は「)」の向きに二度目のペン入れをすればいいのだと気付きました。

 左側→「)」←右側

 この向きでも右側がガタガタした線になるので、ガタガタした方が合わさるようにもう1回描くと、両側がキレイになるという考えです。





 ハイ、ペン入れで語りたかったことはこんなもんかな。
 ということで……

penire29.jpg


 無事に全ページ、ペン入れが終わりました!!

 今週はペン入れ作業よりもブログ記事を書く時間が足りなくて苦労しました……
 来週は作業自体はそんなに大変じゃないけど、アニメの最終回ラッシュなのでブログ記事を書く時間の確保が大変そうです。

 消しゴムかけて、修正液かけるだけの週なので……あんまりブログに書くことなさそうですけどね(笑)。


 とりあえず山場は越えたぜ!!

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| マンガは描ける! | 18:08 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

風のマジカル

>人間は疲れると「マトモな線」なんて引けなくなる
 うわあ、納得。肉体労働ですね、本当に……

 もとより前回まででも「線の強弱」というのは、散々強調されてきた要素。楽なハズなどありませんでしたか。
 いや、楽だと思ってなどはいませんでしたが、それでも「なぞるだけ」という先入観はありました。

「だけ」どころの話ではなく、いかになぞるかこそが漫画の魂、といっても過言ではない領域なのですね。

『shine』の例のコマについては読んだときから、このコマ、ちょっと空気感が違うなと感じていました。
 さすが会心の一コマだったということですか。上の大ゴマも目を引くページですけど、小さいコマの密度も凄い。

| kanata | 2015/10/19 00:19 | URL | ≫ EDIT

>kanataさん

 今は1日の作業時間を「今はペン入れ、あと数時間したら下描き」というように分けていますが、昔は「全ページ下描きが終わったら全ページのペン入れを開始」としていた時期があって。
 その頃は同じように「8時間マンガを描いていた」としても、ペン入れしている期間の方が明らかに肩がバッキバキに凝っていましたね。緊張もあるのだろうけど、疲れ具合が違うんですねペン入れって……その分、楽しいんですけど。


 『shine』の例のシーンは、自分のマンガ描き人生の中でも思い入れのあるシーンなので嬉しいです。今なら2コマ目以降もトーンに逃げちゃうだろうけど、ペンタッチだけで光を表現しようとした当時の気合と若さは自分でも見習わなきゃならないなぁ。

| やまなしレイ(管理人) | 2015/10/19 21:13 | URL | ≫ EDIT















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