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弱小チームが全国優勝してしまうことのリアリティについて

※ この記事は色々な作品の結末までのガッツリとしたネタバレを含みます。閲覧にはご注意下さい。


 とうとうやってしまいます!
 読んでくださる人が「まだその作品は観ていないからネタバレして欲しくなかった!」とショックを受けてしまうことを何より恐れてきたこのブログにおいて、“禁じ手”中の“禁じ手”を今日は使います!「色んな作品のネタバレ書くから、ネタバレ気にしない人だけ読んでくださいね」という記事です!

 というのも……今日の話題は「弱小チームが全国優勝してしまう作品」についてなので、「『○○』と『××』と『△△』のネタバレを含みます」って冒頭に書いてあったら「『○○』と『××』と『△△』ってラストは全国優勝するんだ!」と思われてしまうかも知れませんからね(実際にはそうでない作品のことも書いていますが)。注意書きのしようもないのです。
 一応、「これからこの作品についての話題を書きますよー」というところには、赤字&太字で作品名を書くので、その時点で引き返すというのも手です。


 今日の記事はネタバレ防止のために格納しておくので、TOPページから読んでいる人は「続きを読む」をクリックしてください。お手数をかけて申し訳ありません。



 さて、きっかけは『ガールズ&パンツァー』の話から。
 私はまだ劇場版は観られていないのでテレビ版の話ですが、Twitterを見ていたらこの作品のことを「野球漫画で言えば、野球部のない高校に名門高校から一人の選手が転校してきて、そこから部を作って甲子園で優勝してしまうような作品だ」と言っている人がいました。批判的なツイートではなく、「構造としてはよくあるものなんだよ」という意図のツイートでした。

 『ガールズ&パンツァー』の主人公達の学校は、かつては戦車道が盛んだったのだけど今は誰もやっていなくて、そこに戦車道を復活させたいから素人だらけのメンバーを指揮する者として「ただ一人の経験者」主人公:西住みほが抜擢されるという話です。
 そんな素人だらけのチームがどんどん勝ち進んで、最終的にはその名門校まで打ち破って全国優勝をしてしまうのだから―――これ、野球漫画だったら「こんなのはありえない」と私も違和感を覚えたかも知れないって思ったんですね。


 それを言ってしまえば、『ラブライブ!』だってそういう話です。
 全くの素人集団がアイドルグループを結成して、1期→2期を通して、スクールアイドルの全国大会「ラブライブ」で優勝してしまう話です。野球漫画で考えれば、今まで野球に興味のなかった高校2年生の主人公が「甲子園優勝を目指そう!」と言い出して、素人(熱心な野球ヲタを含む)だけで編成されたチームで甲子園優勝を果たしてしまう―――みたいなことで、流石にこれはリアリティがなさすぎると思ってしまうかも知れません。


 でも、実際の私は『ガールズ&パンツァー』にしても『ラブライブ!』にしても違和感は覚えずに純粋に楽しんでいましたし、「こんなに頑張ったんだから全国優勝しても当然だ」くらいに思っていました。
 それは、この二作品で描かれている大会が“架空の大会”だからなのかなぁと思います。戦車道にしても、スクールアイドルにしても、この作品世界の中でのみ盛んなオリジナルな文化です。比較対象がこの作品の中にしかないため、「こんなのはありえない」と思うこともなかったのかなと思うのです。


 例えば、先ほどから例に出している「高校野球」の作品で言えば……
 2011年の『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』のアニメに対して、当時ものすごく引っかかる批判を見かけたんですね。「弱小のチームが、ちょっと工夫したくらいで甲子園に出場できるワケがない」「“ボール球を投げない”作戦なんて現実ではありえない」みたいな。
 確かにこの作品はアニメとしてどうかと思うところもあったし、前進守備に関しては意味分かんないと私も思ったのですが……この作品に対して「現実ではありえない」って批判はどうなのかなと思ったのです。だって、この作品は「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら、現実の高校野球では見られないようなことを起こしてくれるだろう」って作品じゃないですか。現実にありえることだけ描いていたら、「高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んでも読まなくてもあまり変わらなかった」って普通の野球アニメになっちゃうじゃないですか。

 でも、まぁ……現実の野球を知っている人ほど「こんなのは現実ではありえない」と言いたくなっちゃう気持ちも分からなくもないです。甲子園に出場するのってものすごく大変だし、一部の名門高に限られちゃっている地域も多いし、「これくらいで甲子園に出場できると思うな!」と言いたくなるのかも。それだけの説得力を持てたかというと、作品に出てきたような「革新的な作戦」では不十分だったのでしょう。
 “現実の大会”を知っていると、どうしても“現実の大会”と比較してしまうので、「こんなのは現実ではありえない」と思ってしまいやすくなるのかも知れません。



 自分は直接そういう批判を見たワケではないのですが、『響け!ユーフォニアム』のアニメにも「顧問が変わったくらいで、万年銅賞だった学校が(ダメ金じゃない)金賞なんてありえない」という批判もあったみたいで。
 いやいやいや、この作品はその「去年までやる気のなかった部員が、どうしていきなり全国を目指すみたいにやる気満々になったのか」を描いている作品なんだから、そこに文句を言ったら何も始まらないじゃんと私は思ってしまうのですが……
 吹奏楽経験のない私は、実際の吹奏楽部のコンクールの大変さを知らないので、私にとって『響け!ユーフォニアム』のコンクールは『ガールズ&パンツァー』や『ラブライブ』の全国大会のような“架空の大会”と大差がないんですね。だから、「現実にはありえない」なんてことは思いません。でも、実際に吹奏楽部を経験していて“現実の大会”の大変さを知っている人は、「こんなのは現実にはありえない」なんて思ってしまうのかなぁと。

(関連記事:『響け!ユーフォニアム』アニメが描いていたものを原作小説から読み解く



 『ガールズ&パンツァー』と同じ監督の作品である『SHIROBAKO』は、「アニメ業界」という現実にある世界を描いている上に、アニメ視聴者にとっても馴染みのある業界だったため、『ガールズ&パンツァー』に比べると現実的な結果に留まっているんですね。
 いや、「女性キャラがこんな美人ばかりなのはおかしい」とか「色恋沙汰が起こらないのはおかしい」とかが現実的じゃないのかも知れませんが(笑)、1クール目にあれだけ頑張って作られた『えくそだすっ!』の円盤売上が4000~5000枚で「2期は無理だろうね」って言われていたのに驚きました。

 もちろん「オリジナルアニメで4000~5000枚」ってすごいことなんですけど、『ガールズ&パンツァー』とか『ラブライブ!』が全国優勝していることを考えると、「『えくそだすっ!』も大ヒットしました!5万枚売れました!7万枚売れました!」ってやったっておかしくないでしょう。でも、それだと「こんなの現実にはありえない」と違和感を覚える人が多いから(視聴者だけでなく作り手側も)、4000~5000枚って「現実でもありえそうな」数字に留めたのかなぁと思いました。

 そう言えば、ずかちゃんの扱いとか、りーちゃんの扱いとかもリアルでしたもんね。「この業界、そんなに甘くねえぞ」というか。同じ監督の作品であっても、題材によってリアリティのラインが変わるというか。





 「主人公のチームが弱小」のところから始まって「全国出場」とか「全国優勝」みたいな大きなことを成し遂げる物語はカタルシスが大きく、定番の“型”のようなものだと思います。
 これの原点がどこにあるのかは分かりません。スポーツ漫画に限らなければ、それこそ『ももたろう』とか『一寸法師』だってそうだと思いますからね。

 スポーツ漫画に限定して考えても、1972年から連載が始まっている『キャプテン』がそうなので、1970年代には既にあった“型”なのかなと思います。流石に私も生まれていないので、この辺のことはよく分かりません。
 『キャプテン』は努力と根性とキャプテンの指導方法によって「弱小が強豪に変わっていく」作品でしたが、「弱小が強豪にどういう理屈で変わっていくのか」でこの“型”の作品を分析していくと面白そうですね。『ガルパン』は西住ちゃんの奇抜な作戦、『もしドラ』はドラッガーを読んだマネージャーによる野球部の構造改革、『ユーフォ』は周囲に流されてしまう部員達に全国を目指すという空気を植えつけたこと、『ラブライブ』は……なんだろ……「アイドルが好き」とか「この学校が好き」とか、そんなんだったっけ……


 ただ、スポーツ漫画は当然この“型”だけでなくて、「最初からそこそこ強豪」という設定にして「強い先輩」を何人も配置しておくという作品も多いですね。『テニスの王子様』なんかはそうでしたし、『弱虫ペダル』もそうですよね。強豪校というワケではないけど、『ハイキュー!』も先輩達はしっかりと「強い先輩」でした。
 「弱小チーム」スタートだと「弱い主人公達がどんどん強くなっていく」カタルシスは大きくなるんですが、「強い先輩」キャラを出せないし、「弱かったチームが短期間でこんなに強くなるなんてありえない!」という違和感も出てきてしまうので。「そこそこ強豪」スタートの方が今の時代に合っているような気もします。

 しかし、こう並べてみると『ガールズ&パンツァー』や『ラブライブ!』のような「短い尺でストーリーをまとめなければならないオリジナルアニメ」が「弱小チーム」スタートで、『テニスの王子様』や『弱虫ペダル』のような「長期間連載してストーリーを膨らませていく長編漫画」が「強豪チーム」スタートだというのが面白いですね。
 パッと考えると逆になりそうなものですけど……ゴールが決まっていない連載漫画の場合は、「弱小チーム」スタートでどんどんインフレを起こしていくよりかは、強い先輩キャラもたくさんいる「強豪チーム」スタートの方が話を広げられる可能性があるってことなんですかね。

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| アニメ雑記 | 17:59 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

ガルパンの大洗と黒森峰の戦力比は戦車の実数にティーガーの戦力比
まで考慮すると10倍以上あるはずでそれで負けた黒森峰というか西住流は
戦力整えての力押ししかできない脳筋か?と思ってしまいます。
みほの確執も例の救援だけでなく彼女の戦い方が西住流で
卑怯扱いされていたのが背景にあるのではと邪推したり。
(以前やまなしさんが述べた「ガチとズル」参照)

人材がまともにない「弱小チーム」でも天才指導者が各人の
資質を確認して猛練習を積ませ、相手チームのデータを徹底的に解析、
さらに「松井を全打席敬遠」など恥も外聞も無い作戦を展開すれば
優勝することは可能でしょう。

しかしこの手の「弱小チーム」はサークル感覚で適当に楽しんでいるだけの部員が多く、
月月火水木金金の猛練習のガチチームに方針転換したら
退部者続出でチームそのものが成り立たなくなります。
勉強と睡眠以外の全ての時間をその競技に使う、社会的に
認められた競技である事以外はネトゲ廃人と変わりません。
そこまで覚悟のある人は最初から強豪校に行くでしょう。

あと「弱小チーム」ものというのはチームに一人くらいは
ガルパンのみほやロウきゅーぶの智花のような「本物」がいて
それが勝ち進む牽引車になるのですがそうなると
ファーストガンダム終盤のアムロとフラウ・ハヤトみたいに
ムチャクチャな実力差がチーム内の距離感を生みそうな気が。
(前出の「松井敬遠」のときのチームメイトのスポーツ記者も
はっきり言ってないが口ぶりから距離感を感じた。)

| 太田拓也 | 2015/12/19 08:15 | URL | ≫ EDIT

有名指導者+学校のバックアップ+やる気のある部員=四ヶ月で全国大会出場、というフィクションのような話を聞きました。この条件がそろうのが奇跡なんでしょうね。
ラグビーワールドカップやワールドカップ予選でも珍しいから創作や現実で輝くのかも?

| 今年の吹奏楽 | 2015/12/19 10:56 | URL | ≫ EDIT

>太田拓也さん

>この手の「弱小チーム」はサークル感覚で適当に楽しんでいるだけの部員が多く、月月火水木金金の猛練習のガチチームに方針転換したら
退部者続出でチームそのものが成り立たなくなります。

 この記事で挙げた作品の多くはこのパターンで、猛練習をさせられている様と、「何故、今までだらけていた人達が猛練習に耐えられるようになったのか」の理屈と、作品によっては「猛練習に耐えられずに脱落する部員」も描いていますね。


>今年の吹奏楽さん
 フィクションで描いたようなことが実際に起こると、「実際にありえるんだ」と嬉しくなる一方、「そんなにすごいことでもないんだ」と思ってしまいますよね(笑)。

 仰るとおり、「現実ではありえないようなことを観たい」気持ちが私の中にはあるように思います。

| やまなしレイ(管理人) | 2015/12/20 01:58 | URL | ≫ EDIT

実はつい最近ガルパン全話を見て「物語の構造としてはよくあるもの」というのは全く同じように思いました。

単純にガルパンについては「短い尺でそれをやろうとすると、日本のマンガ(もしくはそれに準ずるコンテンツ)に対しての慣れがないと、すんなり解釈するのは難しいかもしれない」という認識もあります。ガルパンは描きたいことを優先させているために結構その辺りが省かれていると思うんですよね。アンツィオ戦だけじゃなくて。西住みほの類まれなる異能さ異端さもクローズアップされていませんし(未経験者を短期間で全国レベルの大会に通用するように指導できるのは、それだけでも表現は足りないかもしれません。リアルに言えば)、戦車道受講者の努力や変化の描かれている量が圧倒的に足りてないです。基本的には。

でもこの手のコンテンツに慣れている視聴者にとっては、そこは補完できる場所なんじゃないですかね。そうでない人にとっては「キャプテン」並に懇切丁寧に変化の具合が描かれていないと「なんやただのチートやないか(もしくはご都合主義が過ぎる物語)」という認識になってしまうと思われます。

ただそもそも制作者側も視聴ターゲットがそういう「分かってる人向け」に対して制作したように思えました。計算して「そういう人向けに刺さるような物語の削り方」をしているように見受けられました。ですからそこを補完できない人が「こんなのありえない」と感じられてしまうのも、僕は制作者側的には想定内なのかな?っていう印象はありますね。

| usage_mqn | 2015/12/20 20:45 | URL |

>usage_mqnさん

 なるほどー。
 「1クールのアニメだから展開が早足になるのは仕方ない」と僕なんかは思ってしまうんですけど、そう思えるのは「アニメ慣れしている」からとも言えて、そうでない人にとっては「どうして早足になるのか」すら分からないものですもんね。

 そう考えると……同じ水島監督作品の『SHIROBAKO』がたっぷり2クール使って、主人公の宮森が「エース」になる様を丁寧に描いていたというのは、ここからの反省があったのかもですねぇ。

| やまなしレイ(管理人) | 2015/12/21 22:45 | URL | ≫ EDIT















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