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ストーリーを引っ張る“勝利条件”と“敗北条件”

 今日の記事を書こうと思ったきっかけは、先月に書いた『鉄血のオルフェンズ』の記事からです。

 『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の魅力は「分かりやすさ」だ!

 序盤のネタバレを含むので、もしこれから『鉄血のオルフェンズ』を観始めようと思っている人がいたらここからの数行だけでも読み飛ばして欲しいのですが。
 『鉄血のオルフェンズ』は“目的”が分かりやすいのが魅力だと私は思っています。主人公達は「クーデリアを火星から地球まで運ぶ」のが目的で、これが主人公達の“勝利条件”です。一方の敵勢力は、彼らが地球に到達する前に「クーデリアを殺す」もしくは「クーデリアを捕獲する」のが目的で、主人公達から見ればそれをやられるのは“敗北条件”となります。

 主人公サイドにも敵サイドにもたくさんのキャラが出てきて、一人一人考えていることは違うのだけど、チームとしての目的は一応統一されているので―――視聴者は「無事に地球に辿りつけるのだろうか」「クーデリアが敵に捕まったりしないだろうか」というポイントに絞って観ることが出来るのです。なので私は、歴代ガンダム作品の中でも『鉄血のオルフェンズ』はトップクラスに分かりやすい作品だと思っています。


 さてさて、よくよく考えてみると「ロボットアニメ」「SFアニメ」において、「A地点から出発してB地点まで到達するのが“勝利条件”」という名作はたくさんあります。例を出すと序盤のネタバレになりますが、まぁ……最序盤のネタバレなので許してください。

 例えば、『宇宙戦艦ヤマト』も「地球からイスカンダルに向かう」というものすごく分かりやすい目的の話です。「1年以内に、地球からイスカンダルに向かい、コスモクリーナーDを受け取って、地球に帰還する」というのが“勝利条件”で、それが出来なければ地球の人類は滅亡するという“敗北条件”のストーリーでした。

 『機動戦士ガンダム』1作目も、ホワイトベースに乗ってサイド7を脱出した避難民が、ジオン軍に追撃されながら「地球の南米大陸にあるジャブローを目指す」のが“勝利条件”のストーリーでした。“敗北条件”はガンダムなどを奪われること。この“勝利条件”と“敗北条件”が、ストーリーが進むにつれて変わっていくというのが『ガンダム』のポイントなのですが、それは重要なネタバレなのでこの辺で。

 『超時空要塞マクロス』も、大まかな流れとしては冥王星付近から地球までマクロスが帰還するのが“勝利条件”のストーリーだったように記憶しています。観たのが昔すぎてあまり覚えていないので、時間が出来たらまた観返したいですけど。“勝利条件”を達成しても……というのは別の話。



 主人公達が何を目的として行動しているのかが分からないと、視聴者は感情移入できませんし応援もできません。「目的に一歩近づいた」という達成感も得られません。
 故に、漫画にしてもアニメにしても、長編作品には大きな流れでの「主人公達が達成しようとしていること=“勝利条件”」と「主人公達が防ごうとしていること=“敗北条件”」が提示されることがあり、これが分かりやすいかどうかで「初心者向けか、上級者向けか」が分析できるんじゃないかと考えました。


 例えば、『ガンダム』1作目に比べて、『Zガンダム』以降のガンダムシリーズってここがちょっと複雑だと思うんですね。細かいミッションは分かるのだけど、大局として今何をしようとしているのかが分かりづらい―――『ガンダム』を経験している人に向けて作られているからなのか、ちょっと複雑で上級者向けの話なように思えます。

 例えば、2014年の『アルドノア・ゼロ』の1クール目はものすごく分かりやすい話だったと思うんですね。「アセイラム姫を無事に地球連邦の本部まで連れて行く」のが勝利条件で、「アセイラム姫が暗殺される」のが敗北条件でした。
 ネタバレになるので詳しくは書きませんが、しかし、2クール目は「何が“勝利条件”で何が“敗北条件”なのか」分かりづらい話になっていきました。それがまぁ……希望のない「戦争」というものでもあるのですが。




 そして、もちろんこれは「ロボットアニメ」に限定した話ではありません。
 部活動を描いた作品は、「全国大会出場を目指す」「全国大会優勝を目指す」という“勝利条件”が自然と提示されるので、読者・視聴者にとって感情移入しやすいし応援しやすいし達成感も得やすいのだと思います。


 例えば、『けいおん!』には大きな流れでの“勝利条件”や“敗北条件”はありません。日常アニメと呼ばれる『きんいろモザイク』や『のんのんびより』や『ご注文はうさぎですか?』にも“勝利条件”や“敗北条件”はなく、一つ一つのエピソードの中からキャラが成長していく話です。
 故に、「中身がない」とか「ストーリーがない」とか「成長がない」みたいな批判もありますけど、「“敗北”がないから安心して観られる」という声もあります。

 『ガールズ&パンツァー』や『ラブライブ!』や『響け!ユーフォニアム』が、「全国大会出場」や「全国大会優勝」を目指して特訓する“勝利を目指す作品”ということを考えると……同じように「女のコがたくさん集まっている萌えアニメ」と呼ばれる作品であっても、この二つは全然違うジャンルだと言えます。
 というか、『ラブライブ!』や『響け!ユーフォニアム』は「“勝利条件”とは何だ?」という視点で考えると、かなり捻りのあるストーリーではあるんですよね。「私達が目的としていたことは本当に目的だったのか?」的な。詳しく書くとネタバレになるので、この辺にしておきますけど。

 『アイドルマスター』のアニメには大きな流れでの“勝利条件”や“敗北条件”はなく、一つ一つのエピソードの中で一人一人が成長するストーリーでしたが。『アイドルマスター シンデレラガールズ』の2クール目は、「部署の存続のために舞踏会ライブを成功させる」という大きな流れでの“勝利条件”や“敗北条件”が出来ました。それが、ストーリーを引っ張る推進力になっていたんですね。



 恋愛を描く作品も、「主人公とヒロインがくっつく」のが“勝利条件”で「ヒロインが別の男とくっつく」のが“敗北条件”と考えることができます(女性向け作品の場合は男女の役割を逆にしたり、BLや百合作品の場合はキャラの性別を調節して考えてください)。
 そうすると……ハーレムアニメって、視聴者ごとに違う「好きなヒロイン」が主人公とくっつくかどうかを楽しむアニメだと言えて、視聴者一人一人“勝利条件”と“敗北条件”が違うフレキシブルな作品という分析もできなくもないような気もしなくもない。

 まぁ……ギャルゲーは元々そういうものか。「主人公と、プレイヤーの好きなヒロインをくっつける」ことが“勝利条件”のゲームだと言えますもんね。
 でも、ハーレムアニメって「誰ともくっつかずに有耶無耶なまま終わる」か「正ヒロインとくっついて終わる」かの二つが大半であって、「この主人公は最終的に誰とくっつくんだろう……ワクワク」みたいな楽しまれ方ってあんまりしていないかな。

(関連記事:「貴方の好きなヒロイン」には、主人公とくっついて欲しいですか?




 “勝利条件”にしても、“敗北条件”にしても、それぞれストーリーを引っ張る推進力になります。
 『進撃の巨人』の何がすごいかというと、巨人に壁を突破されると人類がどんどん滅亡に近づいていくという“敗北条件”の分かりやすさだと思うのです。一方、“勝利条件”は(序盤は)よく分からないので、読者&視聴者としてもどうすれば勝ちになるかも分からない絶望感があるという。


 いつかブログで話題にしようしようと思いつつも、上手い切り口が思いつかなかった漫画の一つである『ダンジョン飯』も“勝利条件”と“敗北条件”という切り口で考えると「よく出来た漫画だなぁ」と思います。
 ダンジョンの奥でドラゴンに丸呑みにされてしまった妹を助けるため、妹が消化されるまでにダンジョンの奥に戻る―――というのが“勝利条件”で、間に合わずに妹が消化されてしまうというのが“敗北条件”の作品です。この“勝利条件”と“敗北条件”を最初に提示することで、「間に合うためにはダンジョンのモンスターを食料として食べなくてはならない」というこの作品特有のルールを自然に飲み込ませているのです。グルメ漫画だけになっ!!!

 今更私が紹介するまでもないくらい話題の漫画ですけど、とても面白い作品なので御存知ない方がいらしたら是非どうぞ>『ダンジョン飯』


 自分が「推理モノ」というジャンルを好きなのも、「謎を解く」とか「犯人を暴く」といった“勝利条件”が分かりやすく提示されるからなのだと思います。そこに興味が惹かれるから先が気になってグイグイ引きこまれるし、「謎を解けた」とか「犯人が暴かれた」時には“勝利条件”を満たしたというカタルシスが得られる。
 考えてみると、私自身はそうした作品を「謎を解こう」「犯人を当てよう」みたいには楽しんでいないように思います。恐らく「推理モノ」が好きな人の中には「歯応えのあるクイズ」のような楽しみ方をしている人も多いと思うのですが、私はそういう楽しみ方はしていなくて、名探偵なキャラクターが謎を解くことの爽快感を求めているような気がします(キャラが解くより先に自分が謎を解いてしまう作品は残念な気持ちになる)。


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 あれ……『ダンジョン飯』キンドル版の1巻、安くなっていますね。
 何かのセールをやっているのか……?


 はてさて。
 今日の記事、最初は「“目標”がストーリーを引っ張る」という記事にするつもりでした。「A地点からB地点までたどりつく」とか「全国大会で優勝する」とか「好きなあのコと恋人になる」みたいな目標があるからストーリーは進むのだし、読者&視聴者も引きこまれるのだろうと。

 しかし、ストーリーを進めるのは「こうしたい」という“目標”だけではなく、「こうしたくない」という“避けたいこと”のケースもあるよなぁと思ったのです。『進撃の巨人』の「壁を突破されてはならない」みたいな。


 ということで、それぞれの作品を“勝利条件”と“敗北条件”という切り口で考えてみると新たな発見がありましたし、ストーリーを作るという立場で考えても重要なことを言語化できたなと思います。今まで「何となく」でやっていたことも、分かりやすく、目的を持って出来るようになったなと思います。

 まぁ……今日の記事で言っていることは、「世の中の作品には“勝利条件”が提示されるものと、“敗北条件”が提示されるものと、どちらも提示されないものがあるんだ!」という「そりゃそうだろ」って話ではあるのですが(笑)。

| アニメ雑記 | 17:57 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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