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黒船に飲み込まれるアニメのインターネット配信サイトとサムライたち

 この話は、私はちゃんと語らなければならない責任があると思ったので書きます。

 初心者の自分が、インターネットの無料配信で深夜アニメを観てみました
 アニメのインターネット配信を観るのなら、どのサイト?(2014年・夏)
 アニメのインターネット配信を観るのなら、どのサイト?(2014年・秋)
 アニメのインターネット配信を観るのなら、どのサイト?(2015年・冬)


 「普段アニメを観ない人にもアニメを勧めていこう」という流れの一つで、2014年1月~2015年3月の期間、このブログでは「アニメが放送されない地域でもインターネット配信で観ることが出来る」という話を集中的に書いていました。それはまぁ、もう過去のことなんでとやかく弁解する気もないんですが、とにかくあの頃はそれが誰かのためになると思って書いていたんですね。

 それをやめてもう1年が経過したワケですが……
 気が付いたら、1年経って状況が随分と変わっていたのです。あの頃の記事に書いたことが、もう通用しないんです。正直1年前はこんなことになるだなんて想像していませんでした。だから、私は今日の記事を書かなければならない責任があるんです。



 今日の記事は、今季のアニメの中から“この二作品”についての話です。

・P.A.WORKSのオリジナルアニメ『クロムクロ』公式サイト
・WIT STUDIOのオリジナルアニメ『甲鉄城のカバネリ』公式サイト

 P.A.WORKSは『SHIROBAKO』の会社、WIT STUDIOは『進撃の巨人』の会社です。どちらも実績・人気のあるアニメーション制作会社のオリジナルアニメということで、今季のアニメの中でもかなり注目されていた作品ではないかと思います。そして、この二作品……インターネット配信の方法も似通っているんですね。


『クロムクロ』Netflix独占配信
『甲鉄城のカバネリ』Amazonプライムビデオ独占配信

 1年前までに書いていた記事では、ニコニコ動画、バンダイチャンネル、dアニメストア、GyaO、楽天SHOWTIMEの5つのサイトを紹介して、これらのサイトをチェックしていればほとんどのアニメは網羅できるといったことを書いていました。もちろん「有料会員のみ観られる」というものもありましたけどね。

 しかし、2016年春アニメでは―――かなり注目度の高いオリジナルアニメの二作品が「Netflix独占配信」「Amazonプライムビデオ独占配信」となっているのです。どちらも「有料会員は見放題」というサービスだと思われます。Amazonプライムビデオというのは、Amazonのプライム会員は見放題というサービスですね。
 1年前にこの状況は予想できませんでした……というか、Netflixの日本上陸は2015年9月、Amazonプライムビデオの日本での開始も2015年9月。1年前には日本ではまだ始まっていなかったんですね。



 私が気になるポイントは2つ。
 どういう契約なのかは関係者以外は知りようもないですが、「独占配信」を公式に謳っているということは「独占配信する契約をしている」ということだと思います。『甲鉄城のカバネリ』はまだ第2話が放送されていないので分かりませんが、『クロムクロ』は第2話から提供クレジットにNetflixの名前が入っています。

kuromukuro.jpg
<画像はテレビアニメ『クロムクロ』第2話より引用>


 アニメの提供クレジットにインターネット配信サイトの名前が載ることは珍しくありません。例えば、同じP.A.WORKSの『SHIROBAKO』の提供クレジットにはdアニメストアの名前が載っていました。

shirobako-sp.jpg
<画像はテレビアニメ『SHIROBAKO』第1話より引用>


 しかし、2014年の秋アニメの各配信サイト対応表を見てもらえば分かるように、『SHIROBAKO』はdアニメストアで「“有料会員は見放題”は独占」だっただけで、ニコニコ動画やGyaOでは1週間無料でしたし、その他のサイトでは有料配信を行っていました。
 2015年冬アニメの例を見ても、バンダイナムコグループの『アイドルマスター シンデレラガールズ』もバンダイチャンネルが「WEB最速」「“有料会員は見放題”は独占」なだけで、配信はニコニコ動画でもGyaOでも楽天SHOWTIMEでも行われていました。あの季にdアニメストアがプッシュしていた『艦これ』もdアニメストアが「WEB最速」「アーカイブが6週間観られる」だけで、ニコニコ動画では1週間遅れの配信がありました。


 今季の『クロムクロ』と『甲鉄城のカバネリ』のケースは違うのです。
 完全に「インターネット配信はNetflix独占」「インターネット配信はAmazonプライムビデオ独占」なのです。ニコニコ動画でも、バンダイチャンネルでも、dアニメストアでも、GyaOでも、楽天SHOWTIMEでも、この二作品は全く配信されていません。見放題ではないとか、1週間遅れとか、有料配信だとか、でもないのです。配信自体を全くしていないのです。

 そして、この記事を書くまで自分は気付いていなかったんですけど……
 『クロムクロ』ってブルーレイ&DVDの発売が発表されていないんですね。今の深夜アニメは「ブルーレイ&DVDを売る」ことがビジネスの根幹なので、ほとんどの深夜アニメは第1話放送の時点でTVCMで「ブルーレイ&DVD」の告知がされていると思いますし、公式サイトにも載っかっていると思うのですが。4月18日現在、『クロムクロ』のブルーレイ&DVDはTVCMもされていませんし、公式サイトにも載っていませんし、Amazonなどの通販サイトにもありません。
 こんなことを書いた2日後くらいに「ブルーレイ&DVDが発売決定!」と発表されそうな気もしなくもないのですが(笑)、もしこのままブルーレイ&DVDが発売されなかったとしたら「深夜アニメのビジネスモデル」にとってターニングポイントになる出来事かも……って思います。Netflixの出資を受ければブルーレイ&DVDを売らなくてもビジネスとして成り立つってことですからね……


 まぁ……この話は「放送期間中」だけであって、放送期間が終わると他のサイトでの配信も始まる可能性もあるかも知れませんが。少なくともリアルタイムで追いかけたい場合は、これらのサイトと契約しなければネット配信では観られないんですね。
 以前から「アニメ」と「インターネット配信サイト」の関係は「ゲームソフト」と「ゲームハード」の関係に似ているなんて私は言っていましたが、とうとうここまで徹底した「独占配信する契約」という例が出てきました。ユーザーからすると不便に感じる人も多いと思うのですが、アニメ作品にそれだけの価値があると評価されたのかなとも思います。




 そして、もう1つの気になるポイント。
 NetflixもAmazonも、言うまでもなくアメリカの会社です。
 Netflixはアメリカの「映像配信」では勝ち組と言われている会社で、2015年7月の情報で加入者は全世界で6560万人(アメリカはその内の4230万人)だそうです。Amazonのプライム会員は推計でしかありませんが、2015年11月の情報で全世界で6400万人だなんて言われていますね。

 『クロムクロ』も『甲鉄城のカバネリ』も、NetflixやAmazonプライムビデオでの独占配信を発表する際「日本でも海外でも独占配信!」という言葉を使っています。『クロムクロ』はNewsから4月7日の記事参照、『甲鉄城のカバネリ』はこの記事参照。

 アニメの海外展開について、違法コピーではなくしっかりと公式からインターネット配信をしようと「全世界同時配信」を謳っていた作品は今までにもありましたが……NetflixやAmazonプライムビデオは、海外での知名度が比べ物にならないくらいに高いです。
 P.A.WORKSの堀川社長が「この作品を通して、世界中の人々を刺激する機会を私達に与えてくれたNetflixに感謝します。」とコメントしているように、NetflixやAmazonプライムビデオによる独占配信は「独占コンテンツを囲い込みたい」NetflixやAmazonの思惑だけでなく、「自分達の作品を海外でも展開したい」日本のアニメ制作会社&製作会社の思惑にも合致しているWin-Winの関係のように思えます。


 1年前の記事では「バンダイチャンネルとdアニメストアの対決」みたいなことで盛り上がっていましたが、バンダイチャンネルもdアニメストアも海外からは視聴できない日本国内だけのサービスですからね。全世界で6000万人以上のユーザーを抱えているNetflixやAmazonと比較すると規模が小さいと言わざるを得なくて。
 ゲーム機の例で言えば、「日本国内でしか普及していないゲーム機」よりも「全世界的に普及しているゲーム機」の方にソフトを出したくなるみたいなことなのかなと思います。



 んで、この話……これだけだったら「日本企業が狭い国内市場を奪い合っていたら、巨大資本を持つ海外企業が黒船のように襲来してきた」みたいなよくある話なんですけど……自分が面白いなと思ったのは、そうした広い広い海外市場に展開される「日本企業が作るアニメ」二作品がどんな作品なのかというと。


・『クロムクロ』は、サムライがロボットに乗って“鬼”と呼ばれるロボットと戦うアニメ
・『甲鉄城のカバネリ』は、サムライが銃を持って“カバネ”と呼ばれるゾンビと戦うアニメ



 どっちもサムライが、襲来してくる異形のものと戦うアニメという!
 まぁ……『カバネリ』はサムライが主人公ではないんですけどね。

 「海外展開を考えてこういう話にした」のか「こういう話だから海外展開を考えた」のかは分かりませんが、同じ時期に海外のサイトから「全世界独占配信」をされる二作品が、偶然にもどちらもサムライが出てくるというのがすごく興味深かったです。よりによって、黒船がやってきて、その黒船に乗るのがサムライなのかよ、みたいな(笑)。



 この「海外企業による独占配信」に眉をひそめる人も少なくないと思います。
 ニコニコ動画、バンダイチャンネル、dアニメストア、GyaO、楽天SHOWTIMEといったサイトを使ってきたユーザーからすると、「また別のサイトと契約しないと観られないのかよ」と不便に思えるでしょうし。これらの「これまでずっと日本のアニメを配信して支えていたサイト」を飛び越えて「巨大資本を持つ海外のサイト」に突然独占契約を結ばれてしまうのは、細々と続けてきた商店街が突如できた大型ショッピングセンター1つに潰されていった歴史を思い出されるようです。


 ただ、私個人としては期待しているところもあるのです。
 日本のアニメ業界はこのままではヤバイみたいな話はもう何年も前から言われていますし、実際「クオリティはどんどん上がっているのにブルーレイ&DVDの売上は上がっているワケではない」ことに閉塞感もあります。最近ブルーレイ&DVDが全3巻とか全2巻とかのアニメも増えてきましたものね。
 全世界で6000万人以上のユーザーを抱えているNetflixやAmazonがバックアップして配信してくれるなら、日本のアニメを面白いと思ってくれるユーザーが増えて、この閉塞感を打破してくれるかも知れませんし。極端な未来を考えるなら、例えば『クロムクロ』がNetflixの配信でたくさんの人に楽しまれたのなら、Netflixが自社オリジナルコンテンツとして日本のアニメ会社に「(テレビでも映画館でも観られない)Netflixだけで観られる日本のアニメ」を作らせるなんてこともありえるかも知れません。

 実写ドラマの分野では、ピース又吉さんの『火花』のドラマ版はNetflixが吉本興業と製作に入って、(少なくとも現時点で発表されているのは)Netflix独占のオリジナルドラマとして6月から全世界同時配信ですからね(全10話)。同じようなことがアニメにだって起こるかも知れません。


 また、個人的にはこっちの方が大きいんですけど……
 「普段アニメを観ない人にもアニメを勧めていこう」としてきた自分としては、「普段アニメを観ない人」にバンダイチャンネルやdアニメストアの有料会員になることを勧めるのは無謀だと思い知りました。あれらのサイトは「アニメが大好きな人」にはもう溜まらない夢のようなサービスなのですが、「普段アニメを観ない人」が月額幾らを払って契約してくれるかと言ったらムチャクチャハードルが高いんです。

 NetflixやAmazonは「普段アニメを観ない人」も使っているサイトです。
 アニメには大して興味がないけれど映画を観たくてNetflixを契約している人や、お急ぎ便を使いたくてAmazonのプライム会員になっている人が、「これも“ついで”で観られるんだ」と『クロムクロ』や『甲鉄城のカバネリ』を観てくれる可能性があると考えるのなら――――「普段アニメを観ない人にもアニメを勧めていこう」としてきた自分にとってはイイことなのかもとも思うのです。


 どちらの作品も、とても面白いので!
 『クロムクロ』も『甲鉄城のカバネリ』もチェックしていなかった人でも、Netflix使っている人や、Amazonのプライム会員になっている人は今からどうぞ!

Netflixの『クロムクロ』はこちら
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| アニメ雑記 | 17:47 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

特撮の話ですが・・・

アニメとは違うのですが、日本を代表する特撮ヒーロー「仮面ライダー」も今年の4月からAmazonプライムビデオ独占で全13話予定の作品が現在配信中です(仮面ライダーアマゾンズ)
前々から仮面ライダーシリーズは一年通して放送される物がほとんどで、面白いけど人におすすめしづらい状態でした。やまなしさんの春アニメの記事の際、特撮だけどおすすめしてみようか最後まで迷ったのですが、全く興味のないジャンルを観るためにプライム会員になるのはハードルが高いだろうなあと思って見送りました。
もっとNetflixやAmazon独占で見られる作品が増えれば、アニメから1クールの特撮、実写ドラマに興味を持つ人の流れも作れるのかなあと思いました。

とりあえず「クロムクロ」、やまなしさんの感想ツイートを見てどうしても観たくなったので今からNetflixに入会して視聴しようと思います。

| yatarou2 | 2016/04/20 03:18 | URL |

TVよりも表現規制緩そうだから、
AmazonプライムビデオやNetflix独占番組が増えそうですね。

| ああああ | 2016/04/20 22:00 | URL |

>yatarou2さん

 えええええええ!
 「仮面ライダーアマゾンズ」という名前はTwitter上でよく見るなぁと思っていたのですが、これはテレビでやっているものでなくAmazonプライムビデオ独占のコンテンツだったんですね。

 特撮は仰られるように僕は全く詳しくないので知りませんでしたが、仮面ライダーって日本以外でも認知されているものなんですかね……
 全13話ならば確かに手を出しやすいので、プライム会員になった機会にはついでに観てみようかなと思います。


>今からNetflixに入会して視聴しようと思います。
 おぉ!嬉しいし、『クロムクロ』自体はとてもオススメですが、僕自身はまだNetflixを使ったことがないし、Netflixは入会しないとラインナップの一覧が分からないので、ちょっと心苦しいところもあります(笑)。

 全話揃ってから「無料期間の1ヶ月」で観るというのも手だと思います。


>ああああさん
 これはどうですかね……
 特に性的表現なんかは海外の会社の方が厳しいイメージはあります。逆に言えば、日本のテレビアニメにはお色気系のアニメのみ残って、海外サイトの配信アニメに硬派なものが移行するという可能性はありますね(笑)

| やまなしレイ(管理人) | 2016/04/21 00:02 | URL | ≫ EDIT

仮面ライダーシリーズのテレビ放映が潰されたか…
しかも1年じゃなく3カ月だけのシーズン
ウルトラクイズにしろ、仮面ライダーシリーズにしろ、アメリカが潰すとその真相は完全に揉み消されるのな
で、アメリカが製作する、仮面ライダーをパクったハリウッドヒーロー物しか選択の余地が無くなる。ってか
自由がどんどん消されていくな
で、思想だけじゃなく嗜好まで強制される世界になっていくのか…

そういや、仮面ライダーアマゾンズじゃ、冷蔵庫が常にビールで埋まり登場人物達が常にグビグビ飲んでるシーンばかりだ
あと、いらない、韓国ブスとブサイクのキスシーンの強制視聴
キスを連想させ、だが、しない、などのキモい演出までてんこ盛りだ

アメリカにとっちゃ井上敏樹は天才過ぎて思想も持ってる分、危険だったようだな
小林靖子は器用なだけで何の思想も無いから安心して使えるんだろ

アメリカのわざとらしい せ・ん・の・う がうざ過ぎなんだよ

| 名無しさん@ニュース2ch | 2016/06/13 18:21 | URL |















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