やまなしなひび-Diary SIDE-

変わらない価値のあるもの

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

『ダンジョン飯』1~3巻が面白い!/“ザコ戦”を楽しく描く逆転の発想

 こんな超有名作・超人気作をわざわざブログで紹介しなくても……と思われるかも知れませんが、どんな有名作であっても知らない人はいると思って書くのがウチのブログのスタンスなので堂々と紹介します!
 「ゲームは大好きだけどマンガはあまり知らない……」という人もウチのブログの読者さんには多そうですし、この作品はそういう人にこそまだまだ知ってもらえる余地があると思いますしね!


【三つのオススメポイント】
・このファンタジー世界は「リアル」でなくても「リアリティ」がある!
・ファンタジー作品の有名モンスター達との“ザコ戦”にスポットライトをあてた作品!
・RPGの定番“4人パーティ”、一人一人のキャラがしっかり魅力的に描かれる!


【キンドル本】
ダンジョン飯 1巻<ダンジョン飯> (ビームコミックス(ハルタ)) ダンジョン飯 2巻<ダンジョン飯> (ビームコミックス(ハルタ)) ダンジョン飯 3巻<ダンジョン飯> (ビームコミックス(ハルタ))

【紙の本】
ダンジョン飯 1巻 (ビームコミックス) ダンジョン飯 2巻 (ビームコミックス) ダンジョン飯 3巻 (ビームコミックス)


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、実験的にリスト化しました。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:×
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:◎(動物というか……モンスターを殺して食う作品なので)
・人体欠損などのグロ描写:△(人間の欠損はないけど血はドバドバ出ます)
・人が食われるグロ描写:○(グロくはないけど丸呑みにはされる)
・グロ表現としての虫:○(グロくはないけど虫のモンスターは出てくる)
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×


◇ このファンタジー世界は「リアル」でなくても「リアリティ」がある!
 この漫画は、エンターブレインが年10回刊行している漫画誌『ハルタ』にて2014年から連載されているファンタジー漫画です。作者の九井諒子先生は短編集はいくつも発売されていますが、長期連載はこの『ダンジョン飯』が初めてとなります。
 そうして始まったこの作品、現役のマンガ編集者が選ぶ「コミックナタリー大賞」の2015年度の1位、宝島社の「このマンガがすごい!」でも2016年のオトコ編1位になる(参照サイト)など……数々の賞を受賞しているすごい作品なのです。

 九井諒子先生の短編集も(全部ではありませんが)読んだことがあるのですが、「ファンタジーな世界観の中で暮らす人々を“ちゃんとそこで生活しているように”描く作品」が多いという印象で―――なるほど、この作風をキャッチーかつ長期的にネタ供給ができる連載向けの作品にしていくと『ダンジョン飯』になるのかと思いました。



 主人公は、ライオス達・冒険者の一味です。
 ダンジョンの最深部でレッドドラゴンと戦うも、空腹によって敗北。ライオスの妹ファリンによる脱出魔法で一行は地上に戻ることが出来ましたが、ドラゴンに呑み込まれたファリンだけは戻りませんでした。ファリンが完全に消化される前にダンジョンの最深部まで戻りたいけれど、脱出魔法によって荷物は最深部に置いてきたので一文無しです。これでは食料を買い込むことが出来ない―――よし!じゃあ、ダンジョン内のモンスターを倒して料理して食いつなぎながら最深部に向かおう!というのがこの作品の基本設定です。

 「やまなしの下手くそな説明だとよく分かんねーや」という人は、ComicWalkerで第1話は無料で読めるのでそちらをどうぞ。


 ということで、この作品……ドラゴンとかゴブリンとかスライムとかが出てくるファンタジー世界だけれども、敵が出てきた!やっつける!というだけでなく、「食事」とか「睡眠」とか「トイレ」のような“生きるために必要なもの”をしっかり描いていて。作中ではダンジョン内で「歯を磨いている」とか「洗濯物を干している」なんてシーンも見られます。ファンタジー世界だけど、彼らはそこでしっかり生きていることを描いているんですね。


 んで、ここからが九井諒子先生の本領だと思うのですが……
 ファンタジー世界でも彼らが私達と同じような生活をしているかと言うとそうでもなく、「魔法が現実にある」「エルフやドワーフが生きている」「モンスターがうようよ歩いている」というファンタジー作品の“お約束”を独自の解釈で描き直すことによって、ファンタジー世界なのに「リアリティのある世界」のように見せることが出来ているんだと思うのです。

mesi1.jpg
<『ダンジョン飯』3巻15話「雑炊」より引用>

 例えば、このシーン。
 このダンジョン内では「死んでも蘇生魔法でよみがえることが出来る」ため、死んだ冒険者を蘇生魔法でよみがえらせて金銭をもらう「死体回収屋」が存在しているんですね。

 また、「蘇生魔法がある」という世界観なので、私達が「初めて交通違反で切符を切られた時は~~」と話すみたいな感覚で、「初めて死んだ時はこうだった」と思い出話として話をしたりするのです。なんか、この辺の死生観がすごく「リアリティ」があるなぁというか、「本当に蘇生魔法があったらこんなカンジなんだろうな」と思わせるのです。



mesi2.jpg
<『ダンジョン飯』2巻9話「オーク」より引用>

 例えば、このシーン。
 私達の感覚では「美しい」という形容詞の代表のようなエルフの美女を、オークは「見た見た?噂には聞いてたけどエルフってブサイクだなー」ってなカンジに見ているのです。そりゃオークはオークの女性を美しいと思うんだから、その対極にあるエルフはブサイクに見えますよね。ものすごく細かい描写かも知れませんが、こういうものが私は「リアリティ」だと思うし、世界観を深くしてくれると思うんですね。



◇ ファンタジー作品の有名モンスター達との“ザコ戦”にスポットライトをあてた作品!
 とは言え……ここまでの話は、ファンタジー世界を描いた作品の中では珍しくない描写かも知れません。『ダンジョン飯』が『ダンジョン飯』として不動の地位を築いているのは、やはり「モンスターを倒して食べる」という要素に特化したことだと思います。


 実際にこの漫画を読む前は「モンスターを倒して食べる…?グロをギャグにした一発ネタの漫画なのかな?すぐに飽きちゃうんじゃないの?」と思ったのですが、読んでみると「なるほどこれは逆転の発想だ!」と思いました。グロくはないし、ギャグだけではないし、一発ネタでも飽きやすくもありませんでした。むしろ「次はどんな話が来るんだろう」とワクワク出来る作品でした。


 というのも……この作品に出てくるモンスターは、スライムとかゴーレムとかミミックといったファンタジー作品によく登場する“お馴染みのモンスター”達です。『ドラゴンクエスト』とか『ファイナルファンタジー』のようなRPGを遊んできた人にとっては、現実の動物以上に「よく知った顔」に思えることでしょう。
 しかし、ライオス達は本来ならレッドドラゴンと戦えるくらいのレベルの冒険者です(空腹によって負けたけど)。スライムなんてAボタン連打でやっつけられちゃうのですが、この作品は「敵を倒す」のが目的ではありません、「敵を倒して料理して食べる」のが目的の作品です。どんなに彼らが強くても食事を疎かにすれば負けるというところから始まっているのですからね。

 だからこそこの作品は……レベルの低い“ザコ敵”相手であっても、Aボタン連打の消化試合にはならないんです。
 九井諒子先生独特の独自解釈された“お馴染みのモンスター”達が、実はこういう構造でこういう生態系を持っていると描かれ、それをどう調理したら食えるのかと考え、実際に調理して、食べる、美味い!!


 1ページ丸々引用するのはちょっと心苦しいのですが、少しでもこの作品の魅力が伝わればと思うので私が特に好きな回を引用させていただきます。

mesi3.jpg
<『ダンジョン飯』1巻5話「かき揚げ」より引用>

 ダンジョンの中に仕掛けられた数々の“罠”は、なるべくなら発動させずに通りすぎたいし、発動してもさっさと抜ければイイのだけど……この回は、火の“罠”には油が使われているはずだから、この油で「かき揚げ」を作ろう!というのです。
 本来ならササッと通りすぎられてしまうような要素に注目して、それを独自解釈して1話使って描く―――「モンスターを倒して食べる」というのは決して一発ネタではなくて、“お馴染みのモンスター”1匹1匹との戦いにちゃんと注目して1話使ってまるまる描くという、“ザコモンスターとの戦い”を丁寧に描くための逆転のアイディアだと思うのです。


mesi4.jpg
<『ダンジョン飯』1巻5話「かき揚げ」より引用>

 作られた料理はレシピも載っています!材料が入手困難!




 “ザコ戦”にスポットを当てたファンタジー作品と言えば『灰と幻想のグリムガル』も延々とゴブリンやコボルトと戦っていましたが、あちらにはボスっぽいキャラもいるし、どっちかというと「Aボタン連打で延々とレベル上げをしている」感覚だったのですが(だからこそ……という話は置いときます)。

 『ダンジョン飯』は「栄養バランスも大事」と色んなモンスターを倒して食べなくてはならないため、1話ごとに新しいモンスターが登場して、それを倒して食べるので……「次はどのモンスターが出てくるんだろう」とワクワクさせられるのです。
 一発ネタどころか、毎回毎回「このモンスターはこう解釈したか!」というのが面白いし、ダンジョンの地形や魔法を活かして戦うバトルは凝っていて「実はバトル漫画としても面白い」ですし、本当に力のある漫画だなーと思います。




◇ RPGの定番“4人パーティ”、一人一人のキャラがしっかり魅力的に描かれる!
 主人公パーティは4人です。
 『ドラゴンクエストIII』など、RPGの定番人数とも言えますね。


<ライオス>
mesi5.jpg
<『ダンジョン飯』1巻1話「水炊き」より引用>

 パーティのリーダーで剣と鎧を装備した戦士。種族は人間(トールマン)。
 温厚でマジメ、戦闘でも頼りになるパーティの大黒柱だが、実は重度の魔物ヲタクで「魔物が好きすぎて食べてみたくなった」とモンスター食を提案した張本人となる。


<マルシル>
mesi6.jpg
<『ダンジョン飯』1巻2話「タルト」より引用>

 魔法が得意なエルフ。
 かわいい。エルフのイメージ通りに美しく、髪の手入れなどオシャレも欠かさず、魔法の腕はかなりのもの。かわいい。だが、パーティの中でも一番の常識人なので、モンスター食には常に反抗するし、ライオスの魔物ヲタクっぷりにはドン引きしていることも多い。
 ある意味では「読者の視点」に一番近いキャラで、モンスター食を最も嫌がる彼女が「食べてみたら意外に美味しい」という反応をすることで読者もカタルシスを体感できる。かわいい。


<チルチャック>
mesi7.jpg
<『ダンジョン飯』1巻5話「かき揚げ」より引用>

 小柄だが感覚が鋭敏なハーフフットという種族で、鍵開けや罠発見が得意。
 童顔だけどパーティの中では精神年齢的には一番の大人で、マルシルほどじゃないけど常識人でモンスター食にも消極的だった。軽口を叩いたり、ツッコミを入れたり、パーティの中でもムードメーカーなところがある。


<センシ>
mesi8.jpg
<『ダンジョン飯』1巻3話「ローストバジリスク」より引用>

 10年以上モンスター食の研究を続けていたというドワーフ。
 ライオス達と出会うまではダンジョン内に一人で生活していたこともあって、戦闘力・生活力ともに高いのだが、ドワーフのくせに鍛冶や鉱石に疎いためにドワーフの中では浮いた存在だったそうな。料理については人一倍うるさいし、調理の腕は確かだが、それ以外の常識はあまりなく、マルシルやチルチャックからはよくツッコまれている。



 という4人がこの作品の主人公です。
 ハーフフットはよく分からなかったのですが、雑誌掲載時には「ハーフリング」と記述されていたこともあったそうで(単行本では修正されている)……詳しい経緯は説明を省きますが、『指輪物語』などに出てくる「ホビット」のような種族と考えて間違いはないと思います。

 ということで、人間、エルフ、ホビット、ドワーフの4人パーティで。
 職業(クラス、ジョブ)は、戦士、魔法使い、シーフ、戦士といったところか。

 戦力的にはちょっとマルシルの負担が大きい気もしますね……攻撃魔法・回復魔法・補助魔法と全部マルシルがやらなくちゃいけないので、マルシルのMPが尽きたら一気に総崩れしそうなパーティのような。


 ただ、漫画としてはこの4人のバランスがとてもよく出来ているんですね。
 常識人と非常識人、ツッコミとボケ、話を動かす役と振り回される役……4人のキャラが立っていて、キャラ同士が互いを活かしあっていて、それぞれがそれぞれを魅力的に見せていると思います。

 あと、人間=マジメだがヲタクっぽいところもある、エルフ=美人で賢くて魔法が得意、ホビット=小さくて器用、ドワーフ=職人気質と……割と私達が思うファンタジー作品での種族ごとのイメージに沿いつつ、少し外している辺りがキャラクターとして魅力なのかもとも思います。
 マルシルはエルフで美人だけど感情の起伏が激しくて見てて飽きないしかわいいし、ドワーフは職人だけど鍛冶ではなく料理に特化しているとか。イメージに沿いつつ、独特のキャラになっているというか。




 ということで、少なくとも「スライム」とか「ゴーレム」とか「ミミック」といった言葉に反応するような人には是非是非オススメな作品です。私にとっては、ファンタジー世界を描いたどんな作品よりも「そうだ!オレが子どもの頃に読みたかったファンタジー漫画はこういうものだったんだ!」と思わせてくれる作品でした。

 ずっと長く続いてくれて、このキャラ達の冒険を長く読みたい気もしますが……元ネタとなる“お馴染みのモンスター”にだって限度があるだろうし、階層が進むにつれて戦いも激しくなっているので、そんなに長く続く作品でもないのかなぁと思っています。ひょっとしたら4~5巻、続いても7~8巻くらいで完結ですかねぇ。今から完結したときのことを考えて寂しくなるほどです(笑)。

 あと、マルシルがかわいいということは繰り返し言っておきたいです。

| この漫画が面白い! | 17:56 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

| | 2016/09/29 12:43 | |

>このコメントは管理者の承認待ちですさん

 コメントに書かれた部分はまだコミックスになっていないところだったので、ネタバレは書かないで欲しかったです……

| やまなしレイ(管理人) | 2016/09/29 23:30 | URL | ≫ EDIT

この作者のファンタジー世界に説得力を持たせる作風好きですね
ダンジョン飯の前の作品で人魚の人権について講義する団体が出てきたりやケンタウロスの労働環境について描いた話もあって、そういったファンタジーの住人をリアリティのある描写に落とし込む面白さををうまく連載向けにしたなと感じました
確かに長く続きそうにない題材ですがこれからも楽しみです!
美味しそうでも再現できないのが残念ですね

| ああああ | 2016/10/10 11:34 | URL |

>ああああさん

 なんていうか……「あー、ありそう」というところを上手く突いてくるんですよね。
 『ダンジョン飯』は更にそこから「食」という一つの軸を持って分かりやすくなったカンジで、『ダンジョン飯』のキャラが好きなのでなるべく長く読みたいのは確かですが、恐らくこれから先の作品も絶対面白いと期待させてくれる作者さんなのでどっちにしろ楽しみです!

| やまなしレイ(管理人) | 2016/10/12 00:20 | URL | ≫ EDIT

交わした約束忘れないよ

 大昔に読んだ、『リルガミン冒険記譚』シリーズ(wizardry世界の冒険者たちの日常を書いた小編集)のノリを思い出します。
 そういえば、あれにもモンスター食を研究する話が一編あったような……。

「あのゲームのノベル/コミック化ですよ」って体裁で、「あのゲーム」のファンに売り込むのでなくとも、オリジナル作品としてこういうのが流通可能になったというのは時代を感じさせますね。

 本編に関しては、そもそも当座の目標にタイムリミットがあるため、遅くとも6巻あたりまでには、一回終わらせなくちゃいけない話のように思われます(笑)
 ファリンさんをちゃんと取り戻せるのか、どんどん不安になっていきますので……。

| kanata | 2016/10/26 10:33 | URL | ≫ EDIT

>kanataさん

 そうなんですよね。
 ファンタジーって編集さんにはめっちゃ受けが悪いジャンルで、「ゲーム好きな人しか読まないよこんなの」って言われがちなんで。時代の変化もそうなんですが、これをしっかりと連載までこぎつけた編集部とそこまでの信頼を短編で築いた作者さんの執念の結晶という気がします。

| やまなしレイ(管理人) | 2016/10/27 00:51 | URL | ≫ EDIT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://yamanashirei.blog86.fc2.com/tb.php/2167-cb31e86d

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT