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「原作が既に完結済み」作品のアニメ化であっても、不満は持たれる

 2015年7月~2015年12月と2016年4月~2016年6月に分割3クールでアニメ化された『うしおととら』の原作漫画をようやく全巻読み終わりました。33冊もあったので、読み終わるのにちょうどまるまる1か月かかりましたよ……

 『うしおととら』の原作は1990年代に連載されていたのですが、まさかのこの時期でのテレビアニメ化で。私は原作は未読だったのですが、私は元々「好きな原作がアニメ化されても楽しめない」「アニメを観終わってから原作を読むのは好き」だったため、アニメを全話観て→ 今回初めて原作漫画を読むという順番で楽しみました。



 まず、最初に断っておきますと……
 私はテレビアニメの『うしおととら』を単体で楽しんでいましたし、楽しんだからこそ「原作も読んでみよう」と原作も読んでみました。だから、「テレビアニメが駄目だった」とは思いませんし、「原作未読の人にはテレビアニメだけ観ても名作だと伝わらなかったんじゃ…」みたいに言われていたのは納得できません。原作ファンは往々にしてそういうことを言うのだけど、それはアニメから入ったファンに失礼じゃないかと思うんです。

(関連記事:アニメが初見でも楽しめているのになぁ……



 んで、今回ようやく原作を全巻読破したのですが……
 あぁ、原作ファンがそう嘆くのも分からなくはない。と思いました(笑)。

 原作を読んでいない人や、アニメを観ていない人のために説明をしますと……元々の原作漫画が33冊あるのを、テレビアニメは3クール39話に収めているんですね。
 例えば同じ3クールのアニメで言えば、『ジョジョ』4部は原作漫画およそ19冊分を3クール39話に収めていました。こちらは多分大きなエピソードのカットはなかったと思うので……(もちろん作品によって変わりますけど)3クールのアニメで描ける尺は大体そんなもんじゃないのかと思うのです。



 33冊と19冊……
 言うまでもなく33冊の方が多いですし、そのため『うしおととら』のアニメ化は3クール39話に収めるために多くのエピソードをカットしています。「白面の者」との戦いにあまり関係してこないエピソードはカットされる傾向が強く、そこに出てきたキャラもカットされるため……原作でそのキャラが後々登場する場面もカットされてしまっていて。

 例えば、原作には「凶羅」という強烈なインパクトを残すキャラが登場します。光覇明宗の和羅の兄で、何度もうしおの前に立ちふさがる強敵なのですが……「いなくてもストーリーには問題なく」、全てのエピソードやシーンがカットされていました。そのため、私が原作でかなり上位に好きだった「列車での戦い」はアニメでは描かれませんでしたし、お役目様のエピソードも若干弱いものになってしまった印象です。

 その「列車での戦い」に登場するキャラや、原作では秋田~北海道の間うしお達と行動を共にする大学生達や、原作終盤で大活躍する記者の人とか、アニメ化の際にカットされたキャラのエピソードには「うしおのような主人公にはとてもなれない一般人が必死に生きている」様を感じられるものも多く……それこそが『うしおととら』の魅力なんだ!と思っていた原作ファンが嘆くのも、分からなくもないんですね。

 私が原作ですごい好きだったキリオと真由子の話もアニメではカットされていて、アニメだとキリオは「あれだけのことをしておいて、何ちゃっかり真由子の家に住んでるんだよ、この野郎!」って印象でしたし。正直、原作→ アニメの変更点で一番ヒドイ扱いだったのはキリオじゃないですかね。ヒョウさんも中盤はヒドイ扱いでしたが、終盤は見せ場がたっぷりあったんでまだマシというか。



 しかし、です。
 アニメ化の際にどのエピソードをカットするかは、原作者の藤田先生が関わって決めていたそうで。そしてもちろん、原作者自ら「渾身のエピソード」や「魂を込めたキャラ」を削らなければならなかったのは、まず間違いなく本人が一番悔しかったことでしょう。

 アニメ版の『うしおととら』を原作と比べて否定するご意見に対する藤田和日郎先生のツイートが男前すぎる!!


 「じゃー、最初から4クールにすれば良かったんじゃ……」とアニメに詳しくない人は仰るかも知れませんが、アニメというのは1話作るたびにものすごいお金がかかるのです。そして、深夜アニメの場合はその製作費・制作費を賄うのは基本的には「DVD・ブルーレイの売上」です。
 『うしおととら』の場合はおよそ20年前の人気漫画を初のテレビアニメ化したワケですから、どれくらい「DVD・ブルーレイ」が売れるのかは予想できません。気軽に「3クールじゃなくて4クールやりましょう!」なんて言えるものじゃなかったと思うんですね。

 例えば『ジョジョ』の場合は、第1部~第2部を2クールでアニメ化したら「DVD・ブルーレイ」がものすごい売れたんですね。そのため、第3部が分割4クールで製作されてこれも「DVD・ブルーレイ」がかなり売れました。その結果、先ほど書いたように第4部が3クールで製作されてこれもそこそこ売れているのですが……徐々に数字は落ちているので、第5部もアニメ化されるかは微妙なラインです。

 まぁ、要は『ジョジョ』クラスであっても「まずは2クール」から始まっているワケです。
 『うしおととら』の「3クール」というのもギリギリなところだったと思いますし、その結果いろんなエピソードやキャラがカットされてしまったのは仕方がないことだと思います。


 逆に考えると、「よくこの原作を3クールに収めたなぁ」と思いますね。
 エピソードをギリギリまで削って、それで登場できなくなったキャラが後に登場するシーンは他のキャラに置き換えて、アニメ単体で見ても理解不能にならないように隅々にまで気を配って……パズルのように組み立ててあったと思います。

 冒頭に書いたように、私はアニメ単体で観て『うしおととら』を面白いと思いましたし。それで原作も読んでみた結果、「元はこうだったのか!」とか「こんなエピソードがあったのか!」と原作を完全版のように楽しんだので、このアニメ化が間違いだったとは思いませんし、20年前の名作をアニメ化する試みとしては大成功だったんじゃないかと思います。


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 さて、ここで思い出したのは過去に書いたこれらの記事。

 「原作が絶賛連載中」作品のアニメ化による物足りなさ
 「きちんと終わるアニメ」を観たいのならオリジナルアニメを観よう!
 物語の序盤だけアニメ化して、それで魅力が伝わるのか

 漫画にしてもライトノベルにしても、原作付きアニメの多くは「原作がまだ続いている」時点でのアニメ化がなされることが多いです。その方が「熱心な原作ファンがアニメも買ってくれる」「アニメから入ったファンが原作も買ってくれる」という相乗効果を生むのでしょうし、人気な原作はアニメ化の権利も奪い合いになるのでしょうし、原作が完結してからアニメ化ってケースは少ないように思えます。

 その結果、アニメは中途半端なところで最終回を迎えてしまうため……「これで終わり?」と不満を抱く人も多いし、2期・3期と続きを描いてくれるのなら良いのですが、そうでないとアニメしか観ていない人には「中途半端なところで終わった作品」として記憶に残ってしまいます。
 この3つの記事で話題に出した『いなり、こんこん、恋いろは。』『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』『未確認で進行形』『がっこうぐらし!』『響け!ユーフォニアム』『青い花』『くまみこ』の中でアニメ2期が作られたのって、『響け!ユーフォニアム』だけですから……2期が作られるアニメってごくごくごく少数なんですよね。「原作がまだ続いている」時点でのアニメ化は、大抵の場合は話の途中でアニメが終わってしまうものなのです。


 それで、じゃー今日の記事に書いた『うしおととら』のように「既に完結した作品」なら最終話までアニメ化されるんだからイイじゃんと思えるかというと……「既に完結した作品」は「既に完結した作品」で、原作のラストまでをアニメの最終話までに詰め込まなくちゃならないため、エピソードやキャラを大幅にカットしなければならないこともあって。それはそれで不満は持たれちゃうんですよね。

 もし、仮に……『うしおととら』が現在大人気連載中の漫画だったとして、それを「途中までアニメ化しよう」というプロジェクトだったら。恐らく1クールなり2クールなりの話数で描ける「区切りの良いところ」まで描いて終わりにする替わりに、(実際のアニメ化ではカットされた)人気のエピソードがカットされずにアニメ化されたんじゃないのかって思うんです。



 原作の最後までアニメ化されるけど、エピソードが大幅にカットされるのと。
 細かいエピソードも忠実にアニメ化されるけど、話が途中で終わってしまうのと。

 果たしてそれは、どっちの方が幸せだったのか――――

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| アニメ雑記 | 17:52 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

運不運やいろいろな条件が重なって出来不出来がなかなか難しいところのようですね。

・製作スタッフが作りたくて(頼み込んで)作っている
・1クール分に収まる切りのいい、詰め込み過ぎずにすむ区切りがある
・製作状況、期間に余裕がある
・スタッフの解釈、小説→アニメ化の翻訳がうまい
・作者が協力的

理想的な条件を挙げてみましたが、これが達成できればいいアニメになる可能性がだいぶ上がる…かもしれません。
元の知名度が低くても成功した、と個人的に思っているのは「境界線上のホライゾン」「ノーゲーム・ノーライフ」「乃木坂春香の秘密」「落第騎士の英雄譚」あたりでしょうか。

製作側の熱意はどの作品にも共通なのでしょうが、
詰め込み過ぎでカットした部分があってもちょっとしたフォローでカバーしてもらえたり、
メインキャラクターの感覚・感情を反映した専用ED演出を用意してもらえたり、
いいアニメだったけどオリコン的売り上げはそこまで高くないし続きはどうかなと思っていたら多少の端折りはあれど最後までアニメ化してもらえたり、
気合の入ったOP・EDを作ってもらったりエピソードを良編集・良改変してもらっていたり、
・・・挙げると切りがありませんが。

売れる売れない、人気が出る出ないにかかわらず幸せな作品のディスクは購入してよかったと思える物の一つですね。

| T2 | 2017/05/20 14:13 | URL | ≫ EDIT

>T2さん

 『うしおととら』の場合は「1クール分に収まる切りのいい、詰め込み過ぎずにすむ区切りがある」以外の要素は全部当てはまっていたと思うんですが、それだけが当てはまらずに苦労したってカンジですねぇ。

 逆に言うと、「どのタイミングでアニメ化するのか」「どこまでをアニメ化するのか」が一番重要と言えるのかなーと思いました。


 僕の理想のアニメ化は『四月は君の嘘』だったんですけど、アレは連載中の漫画のラストまでを予めアニメスタッフが知った上で最初から最後まで制作して、最終話のタイミングを漫画とアニメで合わせるという……全部のタイミングが完璧に決まったアニメ化だったと思います。

 ということは、「完結間近の漫画のアニメ化」が一番理想なのか……??でも、あれも2クールの予算が出たからこその成功だしなぁ。

| やまなしレイ(管理人) | 2017/05/21 00:31 | URL | ≫ EDIT

そもそも全エピソードを拾って原作漫画の全てのコマが原画として再現され動画はその隙間を埋めるもの、なんてアニメ作りはほとんどできなくなってますよね。
でも、それこそJOJOのように「一度、3部だけアニメ化されたけど、再度、今度は細かいエピソードもかなり拾い上げてアニメ化される」なんてこともあるわけで、短くともアニメ化されることは重要に思えます。
そこで人気をつかめばいいわけですから。
その意味で、思い切ってバサッと切るやり方は批判も浴びますけど、全人気キャラのエピソードは取り敢えず定期的に広く浅く摘まむ、というやり方よりは話が引き締まるのではないでしょうか。

| 児斗玉文章 | 2017/05/21 17:43 | URL |

>児斗玉文章さん

 個人的には「原作漫画まんまの構図をアニメで使う」のはあんまり好きじゃなかったりします。漫画の構図はコマ割の中でこそ意味をなすものだろ!と思ってしまうので。


>短くともアニメ化されることは重要に思えます。

 ジョジョの例はちょっと特殊だとは思うんですが、人気が出れば続きが作れるというのは確かにそういう考え方もありますね。
 『ユーフォ』なんかは1期が人気だったから、2期で(一応の)原作ラストまで描けて、1期・2期を通して名作になったワケですし、まずは「1期で人気をつかむ」のが大事とも言えます。

 ただ、個人的には「人気が出ない作品だって大事」だと思うんでね……

| やまなしレイ(管理人) | 2017/05/22 21:40 | URL | ≫ EDIT















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