やまなしなひび-Diary SIDE-

変わらない価値のあるもの

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

『百万畳ラビリンス』上下巻紹介/全2巻に詰め込まれた大冒険!

【三つのオススメポイント】
・「見ていられない」けど、見ていたくなる主人公:礼香の魅力
・超人気イラストレーターの画力によって描かれた世界
・ミステリーでもあり、SFでもあり、大冒険でもあり


【紙の本】
百万畳ラビリンス  上巻 (ヤングキングコミックス) 百万畳ラビリンス  下巻 (ヤングキングコミックス)

【キンドル本】
百万畳ラビリンス(上) (ヤングキングコミックス) 百万畳ラビリンス(下) (ヤングキングコミックス)

【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:△(礼香の過去のシーンはちょっとキツイかも)
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×


◇ 「見ていられない」けど、見ていたくなる主人公:礼香の魅力
 半年くらい前にコメント欄でオススメされていた漫画です。
 キンドルで少年画報社のポイント還元キャンペーンをやっていたので(現在は終了しています)、上下巻まとめて買って一気に読んでしまいました。すごく面白い!けど、これをネタバレさせずに紹介するのは難しい!なるべく物語の核心部分には触れないように紹介できるよう頑張ります。


 ストーリーは、ゲーム会社でデバッグのアルバイトをしている女子大生2人が、ある日突然「誰もいない謎空間」に迷い込んでしまって、そこからの脱出を目指すというものです。


hyakuman1.jpg
<画像は『百万畳ラビリンス』上巻 第2畳より引用>

 主人公は19歳の女子大生:礼香。
 黒髪ロングで、端正なお顔立ちで、スタイルも整っている「これぞ美人!」っていうキャラです。


hyakuman2.jpg
<画像は『百万畳ラビリンス』上巻 第3畳より引用>

 相方は礼香のルームメイトの庸子。
 礼香とは対照的にワイルドな風貌で、自分で自分を「ドブス」と卑下したりもするキャラです。


 一見すると「美女と野獣」みたいなコンビに見えるかもですが、読み進めれば読み進めていくほど、この2人の関係性は逆だと分かっていきます。礼香が後先考えずに突っ走って、気配りの出来る庸子がそれをサポートするのです。礼香の友達をやっていけるのは庸子しかいないよなぁ……と徐々に見えてくるあたりが、この作品にハマるポイントでもあります。



 さてさて。主人公たちが元々「ゲーム会社で働いていた」という設定だったり、礼香も庸子もゲーム好きなのでゲームの例えもところどころで出てきたりもすることから、この作品をゲームが好きな人にオススメ!みたいに言われているのを見かけるのですが……逆に言うと、「ゲームに詳しくないと楽しめないのでは?」と手に取らない理由にもされてしまうんじゃないかと危惧します。

 私の感覚では、この漫画を楽しむのにゲームに詳しいかどうかはあんまり関係ないと思います。
 というか、主人公たち(&作者さん)と私の「ゲームの好み」は全然ちがうので、私にも出てくるゲームの例えがよく分からなかったりしました。それでも、問題なく楽しめましたからね。


 ただ、「バグ」と「デバッグ」については事前に知っておいた方がイイかな……と思うので、その用語の意味だけ説明しておきます。
 コンピューターゲームは人間の作った「プログラム」によって動くのですが、時々作り手が想定していない動きをしてしまうことがあります。例えば、本来なら8月31日で終わる『ぼくのなつやすみ』で、特定の手順を踏むと「8月32日」に進めてしまうとか。これが「バグ」です。
 「デバッグ」というのはそうした「バグ」を発売前に見つける作業で、見つけられた「バグ」は報告されて修正されます。そのため「どうしたらバグが起こるのか」をありとあらゆる方法で探さなくてはならないので、バイトを雇ってありとあらゆる方法を試させるのです。発売されたゲームに残っているバグというのは、基本的にはこの「デバッグ」作業ですら見つけられなかったものです(面白いから仕様として敢えて残すものもありますけど)。


hyakuman3.jpg
<画像は『百万畳ラビリンス』上巻 第1畳より引用>

 礼香と庸子は、この「デバッグ」のアルバイトをしている女子大生で。
 特にこの礼香は、「バグ」を見つけるのが大好きで、「バグ」を見つける天才でもあります。


 この礼香の「バグを見つける天才」なところが、『百万畳ラビリンス』の魅力とも言えて……言ってしまえば、「バグ探し」というのは、ゲームを作った人が想定しないことを考える行為なんですね。「誰もいない謎空間」に迷い込んでしまった2人ですが、礼香は「バグ探し」で鍛えた自由な発想で次々と困難を突破していくのです。

 「常人には発想できない奇抜なアイディアで困難を突破する」「常人には理解されない感性ゆえに人とうまく関われない」―――礼香のキャラクターの特性だけを見れば、物語の世界では特に珍しいものではありません。諸葛亮公明のような天才軍師タイプとか、シャーロック・ホームズのような名探偵タイプとか、様々な形で登場します。

 しかし、「軍師だから頭がイイんですよ」「名探偵だから頭がイイんですよ」と言うのではなく、「デバッガーだから他人の盲点を突ける」「そこに楽しさを見出せるからデバッガーなんてことをやっている」というキャラ付けだからこそ、彼女は説得力を持ったキャラクターになっていると思うのです。私達と地続きの世界にいそうなキャラとして感じられるのです。



 礼香はすっごい美人ですし、下着姿や全裸姿になることもあるので「あー、美しや美しや」と拝ませてもらっているのですが。彼女の魅力は単なる外見上の美しさではなく、次はどんな「常人には発想できない奇抜なアイディア」を見せてくれるんだろうというワクワク感と、それと表裏一体の「常人には理解されない感性」とも言える壊れ具合のハラハラ感が混在しているところにあると思うのです。



◇ 超人気イラストレーターの画力によって描かれた世界
 説明が遅くなりましたが、この作品は2013年から2015年に当時の「ヤングコミックチェリー」、後に「ヤングコミック」に名前を戻した雑誌に連載されていた漫画です。作者はたかみち先生。

 たかみち先生……と言ってピンと来るかどうかは人それぞれだと思いますが、一番有名な説明をすれば「コミックLOの表紙を描いている人」です。


 コミックLOという雑誌は、茜新社から発売されている「小さい女のコを好きな人に向けたエロ漫画誌」なのですが。その表紙は創刊号からたかみち先生が担当していて、基本的にはエロではない「少女が普通に過ごしている風景を切り取ったイラスト」になっています。そのイラストの美麗さゆえに、表紙をまとめた画集も発売されているほど高く評価されているのです。

LO画集2-A -TAKAMICHI LOOP WORKS- (FLOW COMICS)
LO画集2-A -TAKAMICHI LOOP WORKS- (FLOW COMICS)


 つまり、超絵が上手いイラストレーターさんが描いている漫画なんです。
 まぁ……「絵が上手い」と言っても、「カラー絵のイラスト」と「白黒の漫画」では表現できるものがちがいますし、絵の上手いイラストレーターさんが描いた漫画を読んだら「読みづれええ」みたいなこともしょっちゅうですし、ましてや「ノスタルジーをこめた現実世界の少女のイラスト」と「謎空間からの脱出を目指す漫画」じゃ方向性が正反対だとも思うんですが。

 「カラーが白黒に」なっても、「現実世界が謎空間に」なっても、「少女が女子大生2人組に」なっても、全く問題ないくらい画力という暴力で圧倒されました。


hyakuman4.jpg
<画像は『百万畳ラビリンス』上巻 第7畳より引用>

 トビラ絵を引用するのはちょっと気が引けるのですが……
 たかみち先生の特徴でもある「光と影のコントラスト」も、白黒でしっかり表現されていますし。謎空間の立体的な把握や、そこにしっかり存在するキャラクターのデッサン技術も高く、終始「絵が上手いとこんな漫画が描けるんだなぁ……」と思いながら読んでいました。


 あと、先ほども書いたように礼香さんは頻繁に裸や下着姿を見せてくださるので、画力の高さというのはそういうところでもありがたいですね。




◇ ミステリーでもあり、SFでもあり、大冒険でもあり
 三つのオススメポイント、一つ目は「キャラクター」について語り、二つ目は「画力」について語ったので、三つ目は「ストーリー」について語りたいのですが……これが、ネタバレせずに語るのがとても難しいです。

 私はこの漫画の「ストーリー」がとても好きで、最後のあとがきに「本作はあらかじめ結末までストーリーを決めて制作し、ほぼそのまま描ききることができました。」とあるように、非常に美しく構成されたストーリーだと思うんですね。
 それは「伏線の張り方が上手い」みたいな分かりやすいものだけでなく、情報の出し方が上手いというか、キャラクターがどういう人間なのかをあらかじめここで見せておくことで後の言動に説得力がある―――みたいに1つ1つのシーンがすごく計算されていると思うのです。


 ただ、それを解説してしまうと思いっきりネタバレになってしまいますし。
 それは、この作品の魅力を大きく損なうことだと思うんですね。



 だから、なるべく物語の核心部分に触れないように、自分がこの作品の「ストーリー」で好きなところを考えてみたところ……私はやっぱりこの作品、「大冒険」なところに魅力があると思いました。

hyakuman5.jpg
<画像は『百万畳ラビリンス』上巻 第4畳より引用>

 “ある日突然「誰もいない謎空間」に迷い込んでしまって、そこからの脱出を目指す”という説明だと、『密室からの脱出』的な脱出ゲームを連想する人もいると思うんですが、礼香はこの状況を「オープンワールド」のように捉えているんですね。

 「オープンワールド」の定義はゲーム好きの間でも見解が分かれる難しい話ですが、ゲームにあまり興味のない人にも分かりやすい説明を考えると……脱出ゲームは「作り手が想定する解法を見つけるゲーム」で、(ここで礼香が言っている)オープンワールドのゲームは「どこに行っても自由で、何をしても自由なゲーム」です。

 例えば、最近発売されたオープンワールドのゲーム『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』では、一つの塔の登り方にも、「壁をよじ登る」だけでなく、「風船をたくさん付けて浮き上がる」とか、「思いっきり丸太を吹っ飛ばして自分もその上に乗る桃白白ごっこ」といった様々な方法があります。中には開発チームですら想定しない技を編み出す人もいて、開発チームを悔しがらせたなんて逸話もあるのですが……



 要は、礼香はこの「誰もいない謎空間」を、オープンワールドのゲームのような「大冒険の場所」として楽しんでいるんですね。「次はあっちに行ってみよう!」「次はこんなことをしてみよう!」と、それこそ私達が『ブレス オブ ザ ワイルド』を買って自由に遊んでいるみたいに、礼香はこの「誰もいない謎空間」で自由に遊んでいるのです。

 「どうしてこんな謎空間に閉じ込められてしまったのか」の謎に迫っていくさまはミステリーのような楽しさがありますし、不思議空間が解明されていく展開はSF的な面白さもあるのですが、私はこの作品は「冒険するワクワク感」を与えてくれる漫画だと思うのです。


 そして、重要なのは、そんな大冒険が「全2巻」というコンパクトなページ数に詰め込まれていることです。「何十巻もあるような漫画は読む時間がない」という忙しい人にも、「何十冊も漫画を買うほどお財布に余裕がない」という人にもありがたい「全2巻」ですよ!




 2017年5月27日現在、
 Pixivコミックで1話が試し読み可能ですし、
 ソクヨミだと3話の冒頭まで試し読み可能みたいです。

 興味を持ってもらえたなら、試し読みからでも是非どうぞ!

| 漫画紹介 | 17:52 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://yamanashirei.blog86.fc2.com/tb.php/2272-f99d04df

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT