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やまなしなひび-Diary SIDE-

変わらない価値のあるもの

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『満ちても欠けても』全2巻紹介/「いつもそこにあるもの」のために働く人々の物語

【これさえ押さえておけば知ったかぶれる三つのポイント】
「一つのラジオ番組」を中心としたオムニバスのストーリー
予算がなくても、華やかな場所じゃなくても、「ラジオ」が好きな人達が熱いんだ
オムニバスだからこそ、不器用な二人をいろんな視点で眺めるのにニヤニヤする


【紙の本】
満ちても欠けても(1) (KCデラックス Kiss) 満ちても欠けても(2)<完> (KCデラックス Kiss)

【キンドル本】
満ちても欠けても(1) (Kissコミックス) 満ちても欠けても(2) (Kissコミックス)


【苦手な人もいそうなNG項目の有無】
この記事に書いたNG項目があるかないかを、リスト化しています。ネタバレ防止のため、それぞれ気になるところを読みたい人だけ反転させて読んでください。
※ 記号は「◎」が一番「その要素がある」で、「○」「△」と続いて、「×」が「その要素はない」です。

・シリアス展開:×
・恥をかく&嘲笑シーン:×
・寝取られ:×
・極端な男性蔑視・女性蔑視:×
・動物が死ぬ:×
・人体欠損などのグロ描写:×
・人が食われるグロ描写:×
・グロ表現としての虫:×
・百合要素:×
・BL要素:×
・ラッキースケベ:×
・セックスシーン:×

↓1↓

◇ 「一つのラジオ番組」を中心としたオムニバスのストーリー
 気づいたら、半年ぶりの「漫画紹介」記事になってしまいました。
 紹介記事を書く気がなくなったワケでも、この間に漫画を読んでいなかったワケでもなくて、半年間「紹介したい!」と思えるような作品に出会えていなかっただけです。それくらい自分の好みの作品に出会うのは難しいのですから、みなさんがみなさんの好みの作品に出会う手助けになれれば嬉しいですね。

 ということで、半年ぶりに「紹介したい!」と強い衝動に駆られた今回の作品は、講談社の女性向け漫画雑誌KISS(と、その姉妹誌Kiss PLUS)にて2014年まで連載されていた、水谷フーカ先生の『満ちても欠けても』です。架空のAMラジオ局:ラジオ雛菊の深夜番組『ミッドナイトムーン(MNM)』を中心としたオムニバス作品です。


 「またオムニバスか……」とか思われていそう!
 半年前の「漫画紹介」記事に書いたのが一つの教室を題材にしたオムニバス作品で、今回は一つの職場を題材にしたオムニバス作品ですからね(笑)。でも、「自分好みの漫画」を紹介すると、どうしてもこうなってしまうという!


 ただ、この作品は「登場人物はそこまで多くない」し、「関係性も分かりやすい」上に、「オムニバス作品の魅力をちゃんと持った作品」なので―――オムニバス作品の初心者にもオススメです!

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<画像は『満ちても欠けても』第1巻・第1話「天羽日向の場合」より引用>

 この漫画の中心となるラジオ番組『ミッドナイトムーン』を作っているのは5人―――「パーソナリティ」の天羽日向、「放送作家」の中村慧尋、「ディレクター」の伊庭徹、「AD」の蒲田大輔、「ミキサー」の牛塚理子。
 普段ラジオを聴かない人は驚くかも知れませんが、ラジオ番組って(特に深夜番組なんかは)このくらいの少人数で番組を作っているのです。まぁ、帯番組(月曜から金曜日まで毎日放送する番組のこと)の場合は、曜日ごとにスタッフを替えるものじゃないのかとは思いますが!


 さて、「オムニバス作品」の定義なんですけど……
 一つ一つは「独立した短編」をまとめたものなのだけど、「短編集」とは微妙にちがって、全体を通して「一つの作品になっている」ものを指すそうです。この『満ちても欠けても』の場合は、『ミッドナイトムーン』という番組を中心に「今回は天羽さんが主人公」とか「今回は伊庭さんが主人公」といったカンジに、毎回主人公が変わる一話完結の話が続くというカンジですね。

 中心にいるのは天羽さんだったり伊庭さんだったりなのだけど、回によっては意外な人が主人公になって、その主人公だからこその新鮮な視点を見せてもらえるのが面白いのです。

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<画像は『満ちても欠けても』第2巻・第7話「小森有希の場合」より引用>

 例えば、この回なんかは「番組を作る側」でなくて、「番組を聴く側」が主人公なんです。
 「番組を作る側」の視点だけでなく、「番組を聴く側」の視点も見せてもらえることによって、『ミッドナイドムーン』という架空の番組が多角的に見えてくるというのがこの作品の魅力ですし―――「お仕事」を題材にしたマンガの中でも、ラジオ局を舞台にしている強みだなぁと思うのです。


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<画像は『満ちても欠けても』第1巻・第1話「天羽日向の場合」より引用>

 私の推しはこのコ!
 天羽さんの後輩で、新人アナウンサーの花岡奈津ちゃんです!

 黒髪のショートカットで、マジメで清潔感があって一生懸命で―――私の好みど真ん中です!あんまり出番ないですけど!


↓2↓

◇ 予算がなくても、華やかな場所じゃなくても、「ラジオ」が好きな人達が熱いんだ
 さて、この作品のタイトル『満ちても欠けても』なんですけど……みなさんは何のことだと思いますか?

 正直、このタイトルでは「ラジオ局を舞台にしたお仕事マンガ」とは想像できませんよね。でも、このタイトル―――最後まで読むと「すっげえ良いタイトルだったなぁ!」って思うんですよ。


 「満ちても欠けても」という表現で連想するのは、「月」ですよね。
 そして、この作品の中心にあるラジオ番組は『ミッドナイトムーン』です。「満ちても欠けても」というのは『ミッドナイトムーン』のことで、実際に作中でも「満月の夜も、新月の夜も、あなたにお届けするミッドナイトムーン」というセリフがあるのですが……

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<画像は『満ちても欠けても』第1巻・第6話「伊庭徹の場合」より引用>

 でも、それは『ミッドナイトムーン』に限った話じゃなくて……
 ラジオって「月」のようなものだと思うんです。


 いつもそこにある、でもそれを見上げる人と見上げない人がいて、見上げるのを忘れてしまうこともあるのだけど、そんな日でさえも「月」はちゃんと地球のまわりを回っている――――
 ラジオもそうだと思うんですね。毎日欠かさず聴いている人もいれば、一度も聴いたことがない人も今日は聴くのを忘れてしまったという人もいて。でも、そんな日でさえも「ラジオ」の電波は流れていて、それを作っている人達がいるんだ―――と。


 そして、どちらも。
 一人でそれを見上げていたとしても、何のつながりもない赤の他人が別々の場所で「同じもの」を見ている―――という不思議なものなのです。 


 満ちる日も、欠ける日も、
 「いつもそこにあるもの」を作り続ける人がいる―――
それを表すタイトルなんです。



 こんなタイトルを付けるくらいなのだから、作品全体が「ラジオへの愛」に満ちていて、登場する人達もみんな「ラジオが大好き」で……そんな作品だから、私のように元々ラジオが大好きな人にとってはもちろん、そうでない人にとっても「何かを大好きな人達がそれを仕事にしている様」を見るのは熱く感じるものがあると思うんです。


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<画像は『満ちても欠けても』第1巻・第1話「天羽日向の場合」より引用>

 テレビに比べれば、予算は少ない。人も少ない。
 設備もないし、制約も多い。


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<画像は『満ちても欠けても』第2巻・第11話「三木貴信の場合」より引用>

 この野球実況者の回は、神回すぎる。
 スイングも見えない、投球も見えない、ボールがどこにあるのかも見えない、選手の位置も見えない―――そんなラジオで「野球中継」をする意味があるのか。


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<画像は『満ちても欠けても』第1巻・第1話「天羽日向の場合」より引用>

 でも、この作品のキャラクター達は誇りを持って「ラジオ」を作るのです。
 予算がなかろうが、テレビほど華やかな世界ではなかろうが、彼ら・彼女らは誇りを持って「ラジオ」を作るのです。


 今までラジオなんて聴いたことがなかった人でも、この情熱を見ればきっとラジオのことも見直してくれるはず!
 確かに美化されているところはあると思うけれど、ニッポン放送のアナウンサーさんがネームチェックまでしてくれているみたいなので、「これがラジオの現場なんだ!」と知ることができると思いますよ!


↓3↓

◇ オムニバスだからこそ、不器用な二人をいろんな視点で眺めるのにニヤニヤする
 さてさて、この作品が「回によって主人公が変わるオムニバス作品」だという話は最初の項にて書きました。しかし、「それで回によって主人公が変わると、何が面白いんだ?」と思った人もいるかも知れません。それは言い換えれば「オムニバス作品の魅力とは何だ」という話なのですが、私は一つのものを色んな視点から眺めることが出来るのが最大の魅力だと考えています。


 例えば、この作品の中心にあるのは『ミッドナイトムーン』というラジオ番組なのですが、「パーソナリティの天羽さんとディレクターの伊庭さんの関係」が色んな人の視点から描かれるのが面白いのです。
 「天羽さんから見た伊庭さん」や「伊庭さんから見た天羽さん」はもちろん、「第三者から見た二人」として描かれる二人の関係性がとてもイイのです。


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<画像は『満ちても欠けても』第1巻・第4話「花岡奈津の場合」より引用>

 何も知らずにアンケートをとっている花ちゃんと、ぶちギレている伊庭さんと、「何やってんだーーー」と焦る『ミッドナイトムーン』のスタッフ達。


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<画像は『満ちても欠けても』第1巻・第5話「中村慧尋の場合」より引用>

 見習いスタッフが藪をつつきそうなところを、すんでのところで止めるうっしーさん。


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<画像は『満ちても欠けても』第2巻・第9話「小星拓斗の場合」より引用>

 周りには「もどかしい二人」と思われてるにも関わらず、時折見せる「熟年夫婦」感とかすごく好き!


 これがもし「ずっと天羽さんが主人公」とか「ずっと伊庭さんが主人公」の作品だったら、なかなか進展しないなーともどかしく思うだけだったかも知れないのですが……毎回主人公が変わるこの作品だと、脇役として出てくる「変わらない二人の姿」にニヤリとさせられるという!

 一番分かりやすい例が「天羽さんと伊庭さんの関係」なのでここで取り上げましたが、他のキャラも「その人が主人公の回」だけじゃなくて「他の人の主人公の回」に脇役として出ていて、そしてみんな「いつもそこにある月(=ラジオ)を見ている」というのがこの作品の魅力だと思うのです!



◇ 結局、どういう人にオススメ?
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<画像は『満ちても欠けても』第1巻・第4話「花岡奈津の場合」より引用>

 登場人物みんなが「ラジオが好き」で、好きなもののために一生懸命働く姿を描く作品です。「ラジオが好きだ」という人にはもちろんオススメなんですけど、そうでない人にも「(悪意のない)優しい世界が好きだ」という人には是非オススメしたい1作です。

 そう考えると「日常系アニメ」とかに近いのかも知れぬ。
 日々に疲れたときに読んで、ほっと癒されるような作品です。オススメです!

| 漫画紹介 | 17:51 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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