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やまなしなひび-Diary SIDE-

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LINEノベルで『だれもカノジョのカオをしらない』最終話「一条 鴎-9」を公開開始!

 毎日の夜9時に1話ずつ公開していく予定です。
 LINEノベルアプリはiOS版と、Android版が揃いました!

 『だれもカノジョのカオをしらない』

表紙

 ↑ LINEノベルのアプリを入れている端末でクリックすると作品ページに飛びます。作品を「お気に入り」に入れて、エピソードごとに「いいね」を押してくれたらありがたいです。



■ 一条鴎という主人公について
 約1ヶ月間、27日という長丁場にお付き合いくださった皆様、お疲れさまでした。
 今日でとうとう『だれもカノジョのカオをしらない』も完結ですし、ミニコラムも最終回です。


 まずは、昨日の話の続きから。
 「挿絵のない小説」として考えた幾つかのアイディアの中に、「記憶を操作できる超能力者に次々と主人公達が挑む話」と、「透明人間のカノジョと同棲する話」があって、いずれもボツにした―――という話を、昨日は書きました。そして、その後に『だれもカノジョのカオをしらない』につながる三作品目が出来たんだよというところで昨日は「続く!」としたのですが。



 こちらはこの2月の記事が伏線でした。

 男性作家が、女性キャラを「ブス」と描くことは許されるのか

 これ、実は「挿絵のない小説」のアイディアだったんですよ。
 漫画のヒロインが「ブス」だとビジュアルのせいで手に取ってもらえないだろうけど、小説のヒロインが「とんでもないブス」であってもそれは読者の想像力に任せるものです。典型的なヒロインポジションが「とんでもないブス」だったらライトノベルはどうなるだろうという挑戦的な作品を考えていました。

 ボツにした理由は記事に書いた通りです。
 3割弱の女性が「腹が立つ」のなら、やめておこうと思ったのです。最終的に「ブスでもいいんだ」という結末を迎える話であったとしても、恐らく腹を立てた人は最後まで読んでくれません。最初の1章だけ読んで「やまなしってブス差別している作家だろ」みたいに言われかねないので辞めました。


 が、逆に「最後にブス」と明かすのはどうだろう?
 と考えたのが、『だれもカノジョのカオをしらない』が生まれた瞬間でした。


 つまりこの作品、「ヒロインがブスでもライトノベルは成り立つのか?」がスタート地点の作品なんです。「透明人間」「街を守るために戦う」要素は、それを活かすためにそれまでのボツアイディアから引っ張ってきたものなんですね。
 んで、「ヒロインがブス」なことを活かすために、「クラスのアイドル」だったり「世界一かわいい妹」だったりという典型的なヒロインを配置していこう―――と、菱川さんが生まれ、他の作品のアイディアとして考えられていた秋由汐乃を持ってきて、という流れでした。



 ライトノベルへの反逆――――
 作品公開開始前に言っていたことは、まさにこのことでした。
 ライトノベルの本には「挿絵」があって、「表紙」に絵が描いてあって、そこに描かれている絵によって手に取るかが選ばれます。この作品は、そうした外見至上主義では選ばれなかったであろう女のコを主人公にした作品なんです。読者が、作者が、出版社が、「かわいい女のコの表紙の本」を選んできたことに対するアンチテーゼを突きつける作品なんです。


 その結果、あまりPVが伸びなくて「やっぱり表紙にはかわいい女のコの絵を描くべきだったか……」と後悔した話は、ひとまず置いておいて(笑)。



 ということで、この作品―――「一条鴎というキャラクター」ありきの作品なんですね。
 彼女というキャラクターが生まれなかったら、準稀や菱川さんも生まれなかったでしょうし、ストーリーのほとんどは鴎さんが引っ張ってくれて出来たものだと思っています。だから私は、この作品の主人公は鴎さんだと思っているんですよ。準稀くんはただの語り部。


 この後の彼ら・彼女らの人生がどうなるのか気になる人もいるでしょうが、とりあえず物語としてはここが幕引きです。27日間、全26話、お付き合いくださった皆様、ありがとうございました!




■ 呼び方について
 まず大前提として「みなさんが好きなように呼んでくれたらイイ」んですけど、タイトルが長いから何と呼んでイイのか分からないという人のために作者が一応の略称を考えました。

 『その日 世界は…』が、「のひ は…」で『そせい』でしたから。
 『だれもカノジョのカオをしらない』は、「だれもノジョのオをしらない」で『カカない』ってのはどうですかね!?


 「だれもノジョのカオをしらない」で『カカオ』とか、「だれもノジョのオをらない」で『カカし』とかでもイイんですけど。「イイんですけど」と言っちゃうと収拾が付かなくなっちゃうんですけど(笑)。

 私としては『カカない』がラノベっぽい略称かなと思いますし、「カカ」という響きが元ブラジル代表のサッカー選手「カカ」を彷彿とさせるのでイイんじゃないかと思います(イイんじゃないかと思います、とは?)。


■ この欄に書くこと
 本来ならこの欄は、「その回のあらすじ」とか「前回までのあらすじ」を書いて最新話を読みたくなるようにするべきスペースだと思うのですが……『だれもカノジョのカオをしらない』(『カカない』、『カカオ』、『カカし』)は毎日1話ずつ更新するため、流石に毎日は追えないから「週末に一気に読もう」みたいな人も少なくないと思うんですね。また、LINEノベルアプリのAndroid版がまだ出ていないという事情もあります。

 「あらすじ」を書いちゃうと、まだ前回までの話を読んでいない人にネタバレになってしまうかもなーと思い……この欄には「あらすじ」的なことは一切書かないことにしました。ネタバレになりそうなこともなるべく書かないようにします。


 この欄で書くのは「制作秘話」というか「創作の裏話」のようなミニコラムです。このミニコラムは毎日更新しますが、バックナンバーは格納しておくので「週末に一気に読もう」という人もまとめて読めるようにしておきます。全26話ということはミニコラムも26回あるので、ネタを考えるのも大変!

 小説本編と同じく、この欄のミニコラムもよろしくお願いします!


■ 「短編」を書いていた人が「長編」を書くこと
 私はマンガも小説もまず「短編」をいくつも書いて、それをみなさんに読んでもらう機会があって、そこから「長編」を書き始めたのですが……マンガで『その日 世界は…』を描き始めたときも、小説でこの『だれもカノジョのカオをしらない』を書き始めるときも、考えたことがありました。
 それは、「自分の一番のブキは何だろう」ってことです。


 「短編」は色んなことに挑戦できるし、「このアイディア1本で1作できちゃう?」みたいな作品も作れてしまいます。女子高生がエロ本を買いに行くマンガとか、男子トイレが空くのをずっと待っている小説とか、そういうのも「短編」では許されるんですね。もちろん受けて欲しいとは思うけれど、受けなかったとしても「ダメだったか、次!」と切り替えられますからね。

 「長編」はそうは行きません。年単位の付き合いになりかねませんし、もし受けない作品を書き始めてしまえば、それを終わらせるまで他の作品を書くことは出来ません。色んなアイディアを試す余裕はないんですね。
 だから、今まで書いた「短編」の中で一番評価された部分は何だろうと考えて、それを「長編」に取り入れる―――例えば『ダンジョン飯』の九井諒子先生は「短編」を描いていた時代も短編マンガの名手だったのだけど、その中でも「ファンタジーが日常に溶け込んでいる世界の描写」が得意だったため、「長編」は「ダンジョンの中でモンスターを倒してそれを食べる」『ダンジョン飯』が生まれたのだと思うのです。


 自分の描いたマンガで評価されたものを考えて、それまでにもらった感想なんかを思い出すと……例えば「バトル」だとか「コメディ」だとかよりも、『朝が来る』とか『エロ本を買いに行こう』のような「主人公が人生の岐路で苦悩する作品」が褒めてもらうことが多かったなと思い―――『その日 世界は…』を描こうと思ったんですね。

 なのでまー、やむなしレイ先生も仰っていますが「読者の感想マジ大事」で、「○○良かったです」と言ってくれなかったのに「○○路線をどうして辞めちゃったんですか」とか後から言われても「オマエが言わなかったからだよ!」ってなるんですけど(笑)。


 では、じゃあ自分の「短編」小説で何が評価されていたかというと……
 一つには「ミステリー部分」があるのですが、これは正直あまり長編で量産できるものでもありません。『名探偵時間』のネタって「二度と使えないネタ」ばかりでしたからね。

 んで、二つ目として「会話の応酬」があるかなと思って、『だれもカノジョのカオをしらない』では会話パートを特に重視することにしました。『待ってるこっちの身にもなってくれ』の上野さんと先輩の会話とか、『待つことしか俺には出来ないのか』の山下さんとカムくんの会話とか、二人の会話でどんどん話が進んでいくのが面白かったと言ってもらえたし、自分も書いていて楽しかったんです。

 なので、『だれもカノジョのカオをしらない』は「バディもの」として常に主人公の横に誰かがいて、会話し続けているような作品になったのです。
 大昔、「対談形式」という形でマンガの感想を書くサイトをやっていたことがあったのですが、その頃は「キャラクター考えてセリフ言わせてるのとか超キモイ」とか2chで陰口叩かれていたのに、今になってその経験が活きているんだなーと思ったりもして。


 「陰口」は無視する!
 「感想」は大事!

 今日の話はそういう教訓ですね。



■ 文字数について
 『だれもカノジョのカオをしらない』は元々LINEノベルとは関係のないところで考えていた「挿絵なし小説」のアイディアだったんですが、LINEノベルという新しいサービスが始まって、その最初の賞を募集しているのだから、どうせならその賞に出してみようと予定を前倒しして書くことにしました。

 そのため、作品全体で「8万文字~20万文字」というレギュレーションがあったんですね。私は文字数を気にして文章を書いたことがなかったので、それがどれくらいなのかはサッパリ分かりませんでした。プロットを作ってみたら「全26話」だったので、8万ギリギリだと足りなくなりそうだから10万文字を目安にして……10万÷26=1話あたり3846文字くらいを平均値なつもりで書くことにしました。

 そうして書いた第1話の初稿の文字数が「3866文字」。
 後に推敲して現在は「4055文字」になっていますが、ペース的には理想ですよね。

 次に書いた第2話は、初稿の文字数が「7564文字」。
 後に推敲して現在は「7847文字」―――と、2話目にして大幅に平均値をオーバーしているのです(笑)。


 まぁ、「文字数で話を区切る」ワケではなくて、「お話の流れ上、ここで区切った方がイイ」と思ったところで話を区切っていますから各話の文字数はバラバラになりがちだと思うのですが……プロットを作った段階ではこんなバラバラになるとは思っていなかったんですよ。「小説を書く」という経験値の少なさのせいで、「プロット」から「実際に書き上がる小説のボリューム」がイメージ出来ていないからこうなるってことなんですよねー。

 ということで、回によって上は7000台、下は2000台と文字数はバラバラです!
 第2話と第3話は特に文字数が多かったので1日1話ずつ読むのは大変だと思いますが、第4話は「3213文字」と一気に下がったので今日は読みやすいですよ!


■ 間取りについて
 今回の小説は「挿絵なし」なので、そこまで細かく設定する必要もなかったのかも知れませんが……作品の舞台となっている「この街」にはモデルとなっている街があって、準稀達が住むマンション、通っている高校、バイト先のコンビニ、汐乃が通う中学校、菱川さんのマンションなども「大体この辺」という設定を細かく決めています。その方が、小説を書き慣れていない私がイメージをつかみやすいだろうという理由で。

 ただ、「実在する街をモデルにしている」のだけど「それはみなさんの住む街かも知れない」し「みなさんの住む隣の街かも知れない」と思ってもらいたかったため、どの街をモデルにしているとかどの学校をモデルにしているみたいなことを明かすつもりはありません。ここを説明すると長くなりそうなので、詳しくはまた別の日に書きましょう。


 ただ、「マンションの間取り」とか「準稀の住む部屋のレイアウト」は別に明かしてもイイかなと思ったので公開します。私、昔から「マンガなどに出てくる家の間取り」を見るのが好きで、そこで暮らしているキャラクターの毎日の暮らしをイメージしたりしてきたので……私と同じように「間取りを見るのが好き」って人がいると思って、公開します!

 え?いますよね?
 マンガとか小説に出てくる家の間取りを見るのが好きって人?
 私だけじゃないですよね……?

マンション間取り

 3LDKの全ての部屋が窓に面している構造で、かなりイイお値段のするマンションだと思います。兄妹でおにいちゃんの方が狭い部屋なのは準稀の意向です。「女のコの方がいろいろとモノが多くなるだろう」ってことで。
 ちなみにこのマンションは準稀が中学に上がるタイミングで越してきたもので、その前の家では兄妹は同じ部屋の二段ベッドで寝起きしていました。


準稀部屋

 準稀の部屋の内部はこんなカンジ。
 勉強机のすぐ横に本や上着やカバンなどが置ける棚があって、そこにパソコン(デスクトップ)も置いてあります。この家具にもモデルとなっているものがあって、ネット上で写真を見つけて「コレいいな!」と準稀の部屋に置くことにしたのですが……よく見るとこの写真のパソコンのモニター、薄型じゃない!現在ではもう売っていない棚かも知れませんね(笑)。


 鴎が来てからは、準稀はイスをどかして、テレビの方を頭にして床で寝ています。
 第1話で汐乃が「ベッドで寝ていると思ったおにいちゃんが床で寝ていた」のを見るシーンがありますが、この間取り図があるとそのシーンのイメージがしやすいかも知れませんね。クローゼットの方に意識が行かないのも頷けるかなと。


■ 「ヘプタスロン」というユニット名について
 キャラの名前を考えるのも大変ですが、今回の『だれもカノジョのカオをしらない』では「アイドルのユニット名」も考えなくちゃいけなくて、これが一番難航しました。元々アイドルに詳しくないのに、「それっぽい名前」でかつ「本当にあってはいけない名前」というギリギリの線を考えるのが難しいんです。

 『その日 世界は…』のCom-Pathは「水波」ありきだったので、「水波→南→東西南北を集めたユニット名がイイんじゃないか?→三人組だけど」と取っ掛かりがあったのですが……
 『だれもカノジョのカオをしらない』のユニット名は紆余曲折、いろんなものが候補に上がりましたが、プロットの段階では別の名前だったところ、第3話を執筆中に急に「これだ!」とヘプタスロンが降りてきました。


 「ヘプタスロン」とは、陸上の「七種競技」のことです。
 「十種競技(デカスロン)」という言葉ならスポーツに詳しくない人も聞いたことがあるんじゃないかと思います。2日間で10コの種目を行って総合順位を決める競技で、『彼方のアストラ』のカナタとか、タレントの武井壮さんなんかが過去にやっていた競技です。100m走、走幅跳び、砲丸投げ、走高跳び、400m走、110mハードル、円盤投げ、棒高跳び、やり投げ、1500m走の10種。

 「七種競技」とは、その縮小版のような形で高校生以上の女子が行う競技だそうです。100mハードル、走高跳び、砲丸投げ、200m走、走幅跳び、やり投げ、800m走の7種と、「十種競技」の過酷さを多少緩和させたようなラインナップになっているかなと思います(棒高跳びがないのはデカイ)。

 「女子だけのグループ」「まだまだ伸びしろのある発展途上のメンバー」「様々なことに挑戦する」という作品のアイドルのコンセプトに合致していますし、(準稀くんのせいで)やたらスポーツの話が出てくる『だれもカノジョのカオをしらない』という作品にもピッタシ。ということで、思いついたら即決しました。


 ちなみに、アイドルグループ:ヘプタスロンの「七種」はこんなカンジ。

・音楽……ライブやレコーディングなど
・演技……ドラマ、映画、舞台など
・撮影……グラビアやモデルなど
・バラエティ番組……テレビのお仕事など
・トーク……ラジオのお仕事など
・エッセイ……雑誌のお仕事など
・コミュニケーション……ファンとの交流など

 菱川なぎさは七種全部を高い水準でこなすけど、近藤聖空ちゃんは「撮影」「バラエティ番組」「コミュニケーション」は強いけどそれ以外はまだまだなど、メンバーによって得意分野がちがうみたいな設定です。

 他の3人について語る日は来るかな……?



■ 「基本的な情報」と「ネタバレ」の線引きについて
 『だれもカノジョのカオをしらない』の毎日更新を始めて今日で1週間です。
 流石にもう「読む気のある人」は第1話くらいは読んでくれているかなと思い、今の時点で第1話を読んでいない人は「読む気がない人」「読む環境がない人」だと思うので、今後はこういう人にもアピールしていかなきゃいけないんですね。「やまなしさんの書く小説なら何だって読みますよ!」と言ってくれる人だけにしか届けられなければ、パイがどんどん小さくなってしまうので。

 「いやいや、やまなしさん。私は読む気があるんですけど、ちょうどこの1週間は多忙を極めていましてまだ第1話を読めていないんです」とか、「全話完結したら一気に読もうと思っています」とか、「LINEノベルがPC版を出すまで読めません」という人は……今日のここからの話は第1話のネタバレ話を含みます。第1話を読んでからここを読むか、ここを読まずに引き返すか、ネタバレなんか気にしないで読んじゃうか、それぞれの判断に任せます。

 というか、小説は読んでいないけど、裏話コーナーだけ読む人なんている……?
 いや、でも世の中には推理小説のあとがきから読み始める人もいますからね。




 ということで、ですね。
 LINEノベルの作品詳細の「キャッチコピー」および「紹介文」に、“透明人間”という文言を加えました。

 まだ第1話を読んでいない人に説明しますと、そうなんです、『だれもカノジョのカオをしらない』には透明人間が出てくるのです。“不透明な男子高校生”と“透明な家出少女”のバディものなんですね。ここが一番重要な要素と言って過言ではありません。『ゆるキャン△』で言えば「この作品はキャンプをするアニメです」くらい、『だれもカノジョのカオをしらない』では「透明人間が出てくる」が作品の顔なのです。

 でも、私……こういう情報も事前に知らせたくないなと思っちゃうんですね。
 まったく知らない状態で読者の人には読んでもらって、それで第1話のラストで「透明だったんかーい!」と驚いてもらいたいと思っちゃうんです。なので、これまで鴎が透明人間だって話は、この欄にもLINEノベルの紹介文にもTwitterに載せてるスクショにも生配信中の雑談でも触れてきませんでした。



 昔、私が「ネタバレされるの嫌い。事前情報なしで触れたい」と書いていたら、「じゃあ、やまなしさんにマンガを薦めたいときは“これは野球マンガですよー”と言うことも許されないんですか!」と怒られたことがあるんですけど……そもそもそんな風に怒り出す人に薦められたマンガなんて読む気にならないよというのは置いといて(笑)。

 そんなものはケースバイケースで、例えば「既に読む気のあるマンガ」だったらわざわざネタバレして欲しくないし、「この人が薦めてくれるマンガだったらどんなジャンルでも読みたい」と思えるくらいの信頼感があるならジャンルも書かないでほしいのだけど、「読むか読まないか」「買うか買わないか」を迷っている状態だったら事前に情報を入れるしかないんですね。ジャンルだったり紹介文だったり評判だったりも調べます。


 なので、今回――――「やまなしさんの書く小説なら何だって読みますよ!」と思ってくれる人に向けては、「透明人間が出てくる」という情報は隠しました。フックとなる情報がなくても読んでくれるだろうと信じて。
 しかし、ここから先は「えー、やまなしさんの書く小説ー?ブログとか生配信とかマンガとかは全部見てるけど小説は読む気が起きないなー」という人だったり、TwitterなどでLINEノベルに投稿された作品を探して読みに来る「私のことを知らない人」だったりにも読んでもらうため、「透明人間が出てくる」の情報は解禁していこうと思います。ここが一番フックになるところですからね。

 “誰もカオを知らない”透明人間の家出少女とともに、この街のために戦う青春バディもの!『だれもカノジョのカオをしらない』は毎日の夜9時に1話ずつ公開しています!よろしくお願いします!



■ 推理小説要素について
 私が書いたことのある小説は『名探偵時間』に収録されている5つの短編だけなんで、「そりゃそうだろ……」って話なんですが、小説を書いて私がこれまで一番「面白かった」と言ってもらえたのは“推理部分”でした。そりゃ推理小説を書いたんだから、推理部分が褒められて当然ではあるんですけど。


 今作『だれもカノジョのカオをしらない』の企画経緯は恐らく9月25~27日あたりに書くことになりそうなのでここでは軽くとどめておきますが、今作は「透明人間が、その能力を活かしていろんな敵と戦っていく」という方向性が決まってからグッと形になっていった作品でした。つまり、ジャンルを大別すれば「超能力バトルもの」なんですね。

 しかし、前作『名探偵時間』が推理小説だったこともあって「推理モノじゃないんですか」「推理要素はないんですか」と聞かれることもあり、確かに前作を面白いと言ってくれた人の期待に応えるべきかなぁと考えて、ちょっとだけですが推理要素なんかも加えました。
 そもそもの話、私がストーリーを考える際に一番大事にしているのは「驚いてもらいたい」なので、そうすると「まさか」と「なるほど」と読者に思ってもらう“推理要素”は自然と入ってくるものなんですね。

 手前味噌になりますけど、そう言った経緯で「元々考えていた青春モノ+バトルもの」のコンセプトに「推理要素」が加わったことで、全26話という長丁場でも1話1話のテンションが落ちないストーリーになったかなと個人的にも気に入っています。菱川渚編もそろそろ終わりますが、次のエピソードも楽しみにしていただけるとありがたいです!




■ 菱川渚というヒロインについて
 勘の鋭い人なら察しているかと思いますが、「菱川渚」というヒロインは「一条鴎」との対比で生まれたキャラでした。「誰にも顔を知られていない透明人間」に対して、「みんなに顔を知られている美少女」という位置づけのヒロインでした。

 『だれもカノジョのカオをしらない』という作品は「透明人間が出ている」こと以外はスタンダードなキャラ配置にしようと思っていたので、最初の構想では「クラスで一番の美少女」くらいのキャラでした。要は「クラスのアイドル」「高嶺の花」ポジションだったんですね。それが「クラスで一番くらいじゃスケールが小さいな」と、「学校で一番の美少女」になり、「街で一番の美少女」になり、「日本で一番の美少女」なり、アイドル設定となっていったのです。


 でも、生半可なアイドルだったらアンチだって多くなっちゃうので、「同性からも支持される」「お年寄りからも支持される」ためにはどういうキャラならイイのか―――を考えた結果、全方位的に愛される“演技の天才”キャラになったという。
 メインキャラ4人の中では最後に出来たキャラなんですが、プロットを書いている間にどんどんアイディアが膨らんで面白くなっていったので、作者としてもお気に入りのキャラです。

 そうそう、“菱川なぎさ”と“菱川渚”の二面性みたいなのは最初はなかったんですね。この方が読者に分かりやすくなるかなーと、文字で区別することにしました。
 元々は、「鴎」「汐乃」「なぎさ」と女性陣の名前は「一文字」「二文字」「三文字」だったのだけど、そのせいで「鴎」「汐乃」「渚」と「一文字」「二文字」「一文字」になっちゃったのだけは心残りでした。あと、誰かに言われる前に先に言っておきますが、「なぎさ」が「渚」に変わったせいで女性陣の名前が『CLANNAD』っぽくなりましたよね(笑)。「なぎさ」だったころはそうは思わなかったんですけど。


 ということで、菱川渚編はこれにて終了です。
 明日からは秋由汐乃編が始まります!こうご期待!



■ 長編の中に短編がいくつも入っているような
 私の小説書き歴は短編を5つ書いたことがあるだけなので、長編を書くには勝手がつかめませんでした。どれくらい書けばどのくらいの文字数になるのかとかどこに山場を持ってくるのとか、いまいちピンと来ませんでした。しかし、LINEノベルに限らず「どこかの賞」に応募するのなら長編は書けるようにならなくてはなりません。

 ということで、「初めて書く長編小説」は「書いたことのある短編小説3~4つ分」をイメージして、独立したエピソード3~4つをつなげる構成にしようと考えました。
 これなら長編を書いたことのない私にも勝手が分かって書きやすいし、小説3~4つ分のネタを詰め込めるし、読む方にも「前の章はビミョーだったから途中で読むのやめちゃったけど章が切り替わったならここから読むの再開しようかな」と思ってもらえるかも知れないし!後ろ向きなんだか前向きなんだか分からない理由!


 なので、昨日で「菱川 渚」編が終了して、今日から「秋由 汐乃」編が始まります。
 もちろん作者としては「菱川 渚」編から通して読んでもらえたら嬉しいのですが、世の中には「妹にしか興味がない!」「ロリにしか興味がない!」という人もいらっしゃるでしょうから、「秋由 汐乃」編から読んでも大丈夫なように一応書いているつもりです。是非よろしくお願いします!



■ 「秋由 汐乃」編を2番目に持ってきた理由
 第10話「秋由 汐乃-1」を既に読んでもらった人は分かったと思いますが、「秋由 汐乃」編は一週間前を回想する形での“過去編”となっています。公開順は「菱川 渚」編→ 「秋由 汐乃」編ですが、時間軸的には「秋由 汐乃」編→ 「菱川 渚」編ということですね。

 この構成にした理由はいくつかありますが、その全てをここに書いてしまうとネタバレになっちゃうので書ける範囲で書こうと思います。


 一つは、「初手:妹」だとついてこられる人が限られるかなーと思ったからです。
 この10年は『俺妹』とか『妹ちょ』とか『いもいも』とか『兄好』とか妹がメインヒロインの作品も多くなりましたが、ひと昔前って「他に正ヒロインがいる」上での「攻略不可のサブヒロイン枠が妹」だったと思うのです。作品的なヒロインはこっちの子だけど、読者(視聴者)の中には隠れた熱狂的ファンがいるのが妹ポジションだったんじゃないかなぁと思うのです。それこそ転機は『シスプリ』とかなのかなぁ。

 『だれもカノジョのカオをしらない』は「みんなが思う典型的なヒロイン配置」に「一条鴎という透明人間」を加える作品なので、「クラスのアイドル」「妹」「幼馴染」「お嬢様」といったカンジにヒロインを配置していったのですが……「初手:妹」だと妹モノの作品という先入観がついてしまうかなーと、初手が菱川さんになったという。


 もう一つには、「秋由 汐乃」編からでも読めるようにしたかったのもあります。
 長編の中に3~4つ短編くらいの長さの話が入っていると言っても「2番目から読む気にならないよー」って人がほとんどだと思うんですね。なので、2番目を過去編にすることで「2番目から読んでも大丈夫」としたかったのです。


 最後、これはさっきのと矛盾するような話なんですが……とは言え「1番目の話」から読んだら、「あーあの時のコレはこうなっていたのか」と思ってもらいたかったからというのが大きいです。
 『スターウォーズ』のエピソード1から観るんじゃなくて、エピソード4と5を観た後に1を観ると「あー、この時のコレが後にああいう火種になるのか」と分かって百倍面白いみたいなことをやってみたかったのです。
 「菱川 渚」編から読んでくれている読者には「なるほどこれが」と思わせる仕掛けをいくつもしているので、上手くハマってくれることを期待しています。

(関連記事:「エピソード1もの」を、先に観るか、後に観るか
(関連記事:時系列をシャッフルさせるアニメの面白さ



■ 口癖の代わりに、各キャラに好きなたとえ話を設定していること
 小説という表現媒体は、言うまでもなく「文字だけで情報を伝えるもの」です。
 マンガだったらただそのキャラがそこに座っている姿を描くだけで、髪型・顔・体型・服装などで「そのキャラだ」と分かってもらえるのですが……小説ではそうは行きません。読者にキャラクターを認識・把握してもらうのが難しいんですね。

 なので、ライトノベルでは「特徴的な語尾」だったり「特徴的な一人称」だったり「特徴的な呼び方で主人公を呼ぶ」だったり「特徴的な口癖」だったりで、文字だけで「そのキャラだ」と分かってもらえるように工夫するんですね。「かみまみた」みたいなヤツのことです。


 しかし、あまりにぶっ飛んだ喋り方をさせてしまうと、現実感のない「作りもの」の世界だと興ざめされかねません。ということで、「特徴的なたとえ話」を各キャラに設定して、そこで「そのキャラだ」と分かってもらえるように試みました。

 準稀はスポーツが好きなので「スポーツのたとえ話」をよくします。
 一部で話題になったハリルホジッチ監督の話とかね(笑)。

 鴎はゲームが好きなので「ゲームのたとえ話」をよくします。
 ラングリッサーの三すくみの話とかね。

 菱川さんは「隙あらば下ネタをぶち込んでくる」とか、ドS刑事は「隙あらば準稀くんを罵倒してくる」とか、特に特徴的な語尾とか口癖を設定しなくても「この話をしているということはこのキャラか」と分かってもらえるような会話がリアリティを感じてもらえるんじゃないのかなぁと思って設定しました。

 現実でもそうじゃないですか。
 「このオッサン、何でも野球にたとえて説明するな」みたいなのってあるじゃないですか。なので、キャラクターを特徴的に引き立たせつつ、リアリティを損なわないラインとして、「特徴的なたとえ話」を各キャラに持たせることにしたのです。


■ 家族を題材にした話
 この「秋由 汐乃」編は「兄と妹」の話なんですが、その「兄と妹」を内包している「家族」を描いているエピソードだとも言えます。「菱川 渚」編で父や母がチラッとだけ登場していたのは、その前振りという意味もあったんですね。


 別に私、意識して「家族を描こう」と自身の作風にしているワケではないのですが……初めて描いた漫画が『ちのしあわせ家族』という「家族の伝統と再構築」をテーマにした作品でしたし(途中で頓挫してしまったけど)、節々で「家族」をテーマにした作品を描いてきたんですね。
 『Shine』は「家族にたどりつく」話だし、『アタシハ許サレマスカ』は「姉妹がイチャイチャする」話だし、『コマンド→』と『コンティニュ→』は「家族のしがらみを持たない」睦月くんと「家族に愛されて育った」まーちゃんの対比の話だし、『たのしみのない家族』は「家族のそれぞれを主人公にした群像劇」だし、言うまでもなく『その日 世界は…』は「家族の再生」の話だし。


 意識して選んで書いているワケではないのに自然と作品で描くことが多くなるのは、「無意識化で自分の中で大切に思っていること」なのかもと思ったりします。

 秋由準稀というキャラの強さは、間違いなくあの「秋由家」にありますし。
 家族を持つことを拒否した菱川渚との対比でもありますし。

 じゃあ、一条鴎はどうなのかな?
 というのが、恐らくこの作品の裏テーマなのかなと思います――――



■ 誰にでも「二次創作」ができる作品
 これまでずっと漫画・小説を描いてきて、私の夢は「私のキャラを誰かがイラストに描いてくれること」でした。要は「二次創作をしたくなるくらいに好きなキャラになってもらう」ことが私の夢だったんですね。しかし、それはなかなか実現されませんでした。私の腕不足もそうなんですけど、現在の私の交友関係だと「絵の描ける人」が私の漫画・小説を読んでくれていないんですね。

 絵が描けなくても漫画は描けるが、
 絵が描けないと二次創作のイラストは描けない!


 そこで考えたのが、「絵が描けない人でもイラストに描きやすいキャラクター」でした。例えば『星のカービィ』が大ヒットした理由の一つに、「子供でも描きやすいデザイン」と「分かりやすい絵描き歌のCM」があったことでしょう。ああいうキャラを作りたいと思って、辿り着いたのが一条鴎というキャラでした。

 では、行きましょう!
 一条鴎の素顔を、作者自ら描いてみました!どうぞ!



kamome-1.png

 ほら、特徴をよく捉えてあると思いませんか?
 みなさんにも簡単に描けるようにコツを伝授してあげましょう。これでバンバン一条鴎さんの二次創作イラストを描いてやってください。

 まず、髪の毛―――これは透明なので見えません。
 輪郭―――これも透明なので見えません。
 目――――これも透明なので見えません。
 口――――これも透明なので見えません。
 鼻――――これも透明なので見えません。
 首、肩幅―――これも透明なので見えません。
 手足――――これも透明なので見えません。

 つまり、「透明だから見えない」!
 これらの特徴を捉えれば、絵が描けないアナタであっても簡単に一条鴎が描けちゃうのです!バシバシ描いて、Twitterとかにアップしてくださいね!Pixivにアップしたら怒られそうなのでやめておきましょう!



 まぁ、今のは単なる悪ふざけだったんですけど。
 今回「挿絵なしの小説」にしたのは、菱川さんにしても汐乃にしても準稀くんにしても、「私の絵」に引っ張られずに「みなさんの理想の顔」を思い浮かべて欲しいという狙いがありました。一条鴎は例外ですが、菱川さんも汐乃も準稀くんも「キャラ設定画」はあるのに、それを公開しなかったのは「みなさんの理想」を大事にして欲しかったんですね。

 そのため、あまり過度に彼女らのビジュアルを描写しないようにしました。

 「私の絵」が入ってしまうと、「私の絵が合わない」という話を差し置いても、「私の理想の顔」になってしまって「みなさんの理想の顔」にならないんですね。それでは、日本中から愛される菱川なぎさになれないんです。


 ―――という意図があったんですが、ここ最近は「PV」も「いいね」も「お気に入り」の数も伸びなくてランキングがガンガン下がっていっているので「挿絵なしの小説」は作者の狙い通りには機能しなかったかなーと思っています。
 まだ次も小説を描くのかは分かりませんが「挿絵なしの小説」は今回限りかなーと思いつつ、「挿絵ありの小説」を発表できる場所はどこにもないので小説の企画自体が立てられない状況ですね。うーむ、厳しい。



■ 街の名前や、学校の名前を書かないこと
 『だれもカノジョのカオをしらない』の舞台となっている「この街」には、モデルとなっている実在の街があります。Googleマップで見て、「準稀が住んでいるマンションはここ」「通っている学校はここ」「菱川さんのマンションはここ」といったカンジに設定していて、実際に彼らが通っている道をストリートビューで見てイメージを膨らませています。

 ただし、今回「そのモデルとなった街」の名前を出すのはやめようと考えました。

 せっかく今回「挿絵なしの小説」にしているのだから、背景の絵から「モデルとなった街」が判明されることもありませんし。どうせなら読者のみなさんに好きなように想像してもらって、この舞台が例えば「アナタの住む街」だったり「アナタの住む街の隣街」だったりと思ってもらえればイイなと思ったのです。


 もちろん「そんなこと言ってもオレの住む町には電車が走ってねえぞ」みたいなケースもあるでしょうし、菱川さんの設定なんかで「日本中の誰もが自分の住む街だと思える」ようにはなってはいないと思うんですけど……理念としてはそう作ってあるという話ですね。


 そのため、準稀たちが通う高校名も作中では明らかにされていません。
 これも読者のみなさんに「アナタの通う学校」だったり「アナタがかつて通った学校」だったりが舞台になっていると思ってもらいたかったからで……そのため、例えばこの学校の制服が学ランなのかブレザーなのか、女子はセーラー服なのかブレザーなのか、そもそも制服が指定されているのか、そういった描写も敢えてしないようにしました。みなさんの自由に当てはめてやってください。


 もちろんこれは「挿絵なしの小説」だから出来ることで……
 もし仮にこの作品が大人気になって、「イラスト付きのライトノベル」として出版社から発売されるとか、どこかの雑誌でコミカライズとして漫画連載が始まるとか、アニメ化されるとか、実写映画化されるとか、ハリウッドで映画化されるとか、ユニバーサルスタジオでアトラクションになるとかしたら――――“街の背景”も“高校の形状”も“準稀が着ている服”もすべて可視化されてしまうので、また話は変わってくるんですけどね。

 もしそうなったとしたら街の名前や学校の名前も設定して、制服を着ているかどうかも公式設定で決めることになるんでしょう。



■ 幾らでも続きが書ける作品
 『だれもカノジョのカオをしらない』はLINEノベルの賞に応募するために書いた作品で、この賞の応募要項には「完結している作品」という条件があります。なので、『だれもカノジョのカオをしらない』はしっかりと話に区切りをつけて完結はします。「これ、未完だよね?」とは誰も言わない作品になるとは思います。


 ただ、書こうと思えば続きが幾らでも書けるような作品になっています。

 だってほら、透明人間とのバディで「街で起こった事件を解決していく」話なんて、無限に書けるじゃないですか。男子トイレの前で列を作る話とか、更新されないWEB小説を延々と待ち続ける話とかとはちがうんですよ。この型はいくらでも話が量産できる型なのです。
 「クラスのアイドル」「妹」とヒロインごとに話を書いたのなら、次は「お嬢様」だとか「幼馴染」だとか「女教師」だとか「後輩」とか「先輩」とか「学級委員」とか「図書委員」とか「保健委員」とか、新しい女性キャラを出せばそれだけ新しい話が作れますからね!


 んで、ですね……
 別に「人気が出て続編を書いた場合の伏線」というワケではないのですが、『だれもカノジョのカオをしらない』の中には一部「今回の全26話の中には思わせぶりなまま出番のない要素」もあります。ぶっちゃけて言うと、「未智くん」と「菜々香さん」は名前は出てきたけど今後もほぼ出番はないです。ひょっとしたら人気が出て続編を書いた場合、出番が多くなるキャラかも知れませんが。

 というのも、「物語」というのは主人公達の人生の一部分を切り取って見せているもので、『だれもカノジョのカオをしらない』は秋由準稀くんの「高2の5月」を切り取って見せているだけで、その前にも人生は続いてきたし、この後も人生は続くんですね。だから、その前から仲の良かった「幼馴染」だっているし、この5月では出会わなかった「年上のアイドル」だってこの世界には存在しているんです。


 この作品のPVとか「いいね」とか「お気に入り」の数が多くなったら―――LINEノベルの賞が終わった後、賞とは関係なく「高2の6月以降」の話を書いてもイイし、「過去編」を書いてもイイと思っています。「挿絵なしの小説」なら、1ヶ月あれば1冊分くらい書けることは分かりましたしね。
 「おっぱい大きい菜々香さんの出番ないのかー、残念」という人は続編とおっぱいのために応援よろしくお願いします!



■ 実は、初めて「兄妹もの」を書いた
 秋由 汐乃というキャラは、実は他の作品のために考えていた妹ヒロインの流用でした。

 意外なように思えるかも知れませんが、長く漫画や小説を描いてきた私でも「男主人公から見た妹ヒロイン」って実は書いたことがなかったんです。一番近いのは『たのしみのない家族』ですが、あのヒロインは「妹の親友」ですからね。妹自身がヒロインになったケースは初めて書いたと思います。

 よく「リアルに妹がいる人は妹キャラに萌えないんだよ」みたいなマウントを取られることがあります。「あんなのは妹に幻想を抱いている人間しかグッとこないんだ」的なヤツ。しかし、リアルに妹がいない私も実は妹キャラってあんまりグッと来ないんですね。

 リアルに妹がいないから、妹というものの距離感がいまいちピンと来ず、「一つ屋根の下に年頃の女のコが同居しているなんてありえない」くらいに思ってしまうのです。そんなのはフィクションの中の話でしょ?妹なんて実在するワケがないじゃないですか、やだなーもう。
 同じ理由で、幼馴染ヒロインも苦手。あんなのは都市伝説ですよ。

 そうは言っても、『エロマンガ先生』が好きだったのは「ある日できた妹」ならば自分にもイメージが出来るのと、「WEBに作品を投稿している人と、その読者」という関係性は自分にとっては身近だったからなのかなと思いますし……「姉妹モノ」なら楽しめるのは、主人公視点のキャラが自分より遠い存在なら「ファンタジー×ファンタジー」で受け入れられるのかなと思っています。


 ということで、今までずっと「兄妹モノ」は避けてきました。
 しかし、避けてきたところにこそ「新しいアイディア」が埋まっているとも言えるので―――いつか「兄妹モノ」を書いてみようかなと考えていたネタを、今回この『だれもカノジョのカオをしらない』で使うことにしたのです。

 要はこの秋由汐乃編、「兄妹モノのありがちな障壁」がない状態でも兄妹はくっつかないのかという話を描いてみたかったのです。
 「血がつながっているから兄妹はくっつけない」でもなければ、「両親が哀しむから兄妹はくっつけない」でもないし、「妹が可愛くないからくっつけない」でもない、血はつながっていないし両親も反対していないし妹も超かわいいし両想いでも兄妹はくっついてはいけないのかを一度描いてみたかったのです。

 8年後、この兄妹がどうなっているのかは作者の自分にも分かりませんが……
 「秋由汐乃」編のクライマックスで準稀くんが言ったセリフを読んで、私が考えたんじゃなくて、キャラが自然とこういうことを言ってくれるように育ったのは作者冥利に尽きるなと思いました。



■ 今日はオマケ回です
 今日はストーリーを進めず、今までに登場したキャラのまとめページです。

 キャラクターも増えてごっちゃになっちゃう人も多いでしょうから整理してもらうためと、本編では書けなかった裏話なんかも書いてあります。
 また、「全26話なんて長すぎて読めない!序盤で脱落しちゃったよ」という人もここから読めるように、「ここさえ読んでおけば最終章から読み始めても大丈夫」と思って作っておきました。もちろん全話読んでほしいですけど、それが無理だという人には明日から始まる最終章だけでも読んでもらいたい。是非、是非……



■ 主人公がクソマジメになった理由
 漫画にしても、小説にしても、ゲームにしても、作品を作って発表している人は往々にしてそうだと思うのですが……「思いついた作品」をすべて「形にしている」ワケではありません。
 創作活動をしていない人には「設定を思いつくことが大事で、思いついたものはちゃんと形にしないともったいない」と考える人もいるかも知れませんが、創作活動って10~20コ思いついた作品の中から、どれを形にするか1つ選ぶくらいの作業だと思うんですよ。つまり、残りの9~19作品は世に出てこないんです。

 この『だれもカノジョのカオをしらない』もたくさんの没作品の屍の上に立って出来たものですが、そうしたライバル達よりどの部分で「イケる!」と判断したかというと……一番はやはり「一条 鴎というキャラクターの特異性」で、二番目は「女のコがたくさんいる中でもブレないキャラクターの秋由 準稀」が生まれたからです。


 この話、主人公が「クソマジメ」じゃなかったら成り立たないんですよ。
 鴎と一緒にお風呂に入って、同じ部屋で寝起きしてても手を出さない。
 世界一かわいい汐乃に「結婚したい」と言われても流されない。
 国民的アイドル菱川なぎさの部屋に一泊しても、本当に何もしない。


 「男主人公に女子多数」という作品は、基本的にはその構造を維持するためにエロエロチャンスにも動じずに何もせずに終わらせないとならないのですが、そのせいでラノベ主人公って「鈍感系」とか「難聴系」とか言われがちなんですね。どうしてそこで手を出さないんだと読者に思われてしまいます。

 でも、主人公をクソマジメにすれば、相手の気持ちに気づいていても、エロにちゃんと反応しても、鉄の意志で手を出さない―――だから、いろんな話を次々と書くことが出来るぞというのが、この作品が「イケる!」と思った理由の一つでした。作者以上にクソマジメに立ち回る準稀くんは書いていてすごく楽しかったし、作者自身も好感の持てるキャラでした。



■ ゲーム実況をする回
 これは「ネタバレではない」と作者自身は思っているので書いちゃいますが、この『だれもカノジョのカオをしらない』には主人公達がゲーム実況をするという回が出てきます。これは「挿絵なしの小説を書くのだから透明人間をネタにしたらどうか」と思いついた際に、「どんな姿をしていても声だけは視聴者に届く」という意味で是非やってみたかったネタです。


 しかし、今回の小説を書く前からずっと考えていたことでもあって……
 結構前に、「やまなしさん、『絵が描けなくてもマンガは描ける』みたいに『パソコンに詳しくなくてもゲーム実況はできる』という本を書いたらどうですか?」ととある人に言われて、ずっと考えていたことでした。一見すると難しくてとっつきにくいと思われてそうなことが、実は結構簡単なんだよと解説するのは、私の数少ない特技の一つでもありますし、理に適っていると思ったのですが……

 本当に「結構簡単」なため、本にしようと思っても10ページくらいで終わっちゃうのではと思って、その企画は私の頭の中だけで終了しました(笑)。


 しかし、そこがずっと気にかかっていたことなので「小説の中で書いてみよう」と思ったのです。これを読んだだけで読者みんながゲーム実況できるようになるワケではないのですが、主人公達が簡単にゲーム実況をし始めているところを読んでもらえれば、そのハードルも下がるんじゃないかなとも思いましたんで。

 んで、実はここで「ゲーム実況をする」ことが先に決まったので、一条鴎がゲーム好きというキャラクターになったのでした。昨日の準稀が「クソマジメ」になった理由もそうなんですが、私の作品のキャラクターって「性格ありき」で生まれるというよりかは、「機能面」ありきなんですね。ゲーム好きにすれば、こういうこともこういうこともこういうこともさせられる―――みたいなカンジで、キャラクターの設定が決まっていくという。



■ 自分の他作品と被っている部分
 やむなしレイ先生の話じゃないですけど、私は「漫画」も「小説」も短編を中心にものすごくたくさんの作品をこれまで書いてきました。しかし、自分がどんなジャンルの作家なのかはよく分からないんですね。
 例えば「百合」しか書かない百合作家とか、バトルしか描かないバトル漫画家みたいに一ジャンルに特化することが出来ず、「こないだは推理小説を書いたから今度はラノベっぽい青春小説を書こうっと」と毎回ちがうジャンルのものを書いているんです。だからこそ書きたいネタが尽きないとも言えるのだけど、固定ファンの読者を獲るためには一ジャンルに特化した方がイイのかもとは思うんですよね。

 ちなみに今必死でプロットを作っている次回作は、『プチコン4』のノベルゲーですからね(笑)。もはや媒体すら変わっているという。


 ただ、どんなジャンルの作品を考えていても、媒体が変わっても、「自分が大切にしているもの」は作品の中に反映されるので「自分の色」みたいなものが出てきます。それはもちろん私だけの武器とも言えるので、長所である一方……『だれもカノジョのカオをしらない』で書いているネタは、『その日 世界は…』で描く予定だったネタも結構入っているんだよなーみたいなことも結構あるんですね。

 片や透明人間とともに街を守るために戦う青春バディもの。
 片や人生の岐路に立たされた女性の家族の再生の話。

 全然ちがうジャンルの作品なのに、共通するところが結構あって。自分で書いていて「これは『そせい』のネタバレなのでは?」と思うシーンもあったりして(笑)。早く『そせい』の続きを描かなきゃなーなんて思ったりもして。とりあえずは早く『プチコン4』のノベルゲーを作らねば……


■ 長編である意味
 私は、漫画も小説もまずは「短編」を描いて、そこから「長編」を描き始めました。
 正直なことを言うと、描く側からすると「短編」の方がいろんなことができるので楽しいとは思っています。実験的なこと、挑戦的なこと、一発ネタ、そういうものが好きな自分は「短編」こそが「面白さをギュギュっと凝縮したもの」だと思っているのですが……


 「長編」の小説を初めて書くにあたって、考えたことは「じゃあ、長編にしかできないことって何だろう」ということでした。短編小説は気楽に書けるけど、長編小説は次いつ書くか分かりません。この機会に「長編でしかできないこと」をやっておくべきかと考えたのです。

 んで、そこでたどり着いたのが「読者がそれぞれ、キャラに対して“イメージ”を持ってくれるんじゃないか」ということでした。前回で20話―――これを全部追いかけてくれた人なら、「秋由準稀ならこういう人」「一条鴎ならこういう人」「秋由汐乃ならこういう人」というイメージを持ってくれているんじゃないかと思うんですね。準稀くんがどういう顔をして、どういう家で、どういう街を走り回っているのか―――その“絵”が頭に思い浮かぶって人も出てきていると思うんですね。


 その“想像する楽しみ”こそが、「挿絵のない小説」の一番の面白さ―――

 ということを踏まえて、前回のような話を書きたかったのです。
 アナタが20話ずっと想像してきたその姿は、果たして実像なのか―――?


 さて、この作品もいよいよ最後の山場に向かっています。
 この作品がどこに着地して、何を描きたかったのか、最後まで見守っていただけるとありがたいです。



■ 決闘罪と、犯人と被疑者
 現在の日本の法律では、日時と場所を指定して「決闘」をすることは禁じられています。申し込んだ方も、応じた方も罰せられます。

 私が描いている漫画も小説も、キャラクターが喋るセリフは「私が考えて書いている」というより「キャラクターが勝手に喋る」ものなので、そのおかげで私の中でも「生きたキャラクター」として彼ら・彼女らを認識できるのですが……その弊害として、「生きたキャラクター」がストーリー進行のジャマにしかならないことを喋り出すケースがあるんですね。

 クソマジメな準稀くんだと、きっと「これは決闘罪にあたるのではないか」うんぬんかんぬんを言い出すんですよ。

 でも、これから主人公がラストバトルに向かうぞーという回に「これは法律違反だから助けに行けないのでは……?」と言い出す主人公はイヤだし、そこを刑事さんや自警団のみなさんに説得されてラストバトルに向かうのはダサすぎるし、テンポも悪くなるので全面カットしました(笑)。

 しょうがない、こういう軌道修正をするのが作者の仕事なのです。



 ついでに警察ネタでもう一つ。
 事件を起こした“敵キャラ”のことを、準稀くんは「犯人」とところどころで言っています。

 しかし、これは正確な表現ではありません。
 ちゃんとした司法制度の国ならば、罪が確定するのは「逮捕された瞬間」ではなく「裁判で有罪が確定した瞬間」です。「推定無罪」の法則ならば、女のコを車に連れ込んで拉致しようが、女のコに硫酸をぶっかけようが、まだ犯人かどうかは確定していないのです。

 なので、『カカない』の刑事さん達は同じ“敵キャラ”のことを「被疑者」と言っています。
 ここはちょっと分かりづらいかなーとも思ったのですが、高校生の準稀くんが「被疑者」と呼ぶのも妙ですし、敢えて統一はしませんでした。専門用語の使い方を分かった上でも、準稀くんは彼らのことを「犯人」と呼ぶと思いますしね。ここはキャラの性格が端的に出る場所だと思ったので修正しなかったのです。



■ 本編には入りきらなかった日常話
 詳しくは恐らく2日後のこの欄で語りますが、この作品のアイディアのスタート地点は「誰も顔を知らない透明人間のヒロインと一緒に生活をする」というものでした。挿絵のない小説を書くにあたって、「ヒロインの姿が見えない主人公」と「絵がないから自分で想像するしかない読者」の意識をシンクロさせようというアイディアだったんですね。


 そこから随分と方向転換したのですが、「透明人間との生活」の部分はちゃんと描こうという意識は残りました。朝起こされるシーン、ご飯を食べるシーン、お風呂に入るシーンなどなどが要所要所に入っているのはそのためです。衣食住の「食」と「住」はしっかりと書けたと思います。

 ただ、「衣」の部分はどうしても本編に入れられませんでした。
 鴎の服、洗濯はどうしているの問題です。

 結論から言うと、コインランドリーに行っているだけなんですが……
 準稀くんと鴎が2人でコインランドリーに行き、鴎の服を洗濯機に入れてグルグル回っているのを2人でNintendo Switchでもしながら待っているのだけど、傍から見ている人には「あの男の人、洗濯機に何も入れないでただお金払ってグルグル回している……」と思われているというの。漫画で描いたらとても面白そうなネタなんですが、一人称の小説だとどうやっても面白くならなさそうだなと思ってカットしました。

 こういう「一歩引いたところから見ると面白い」みたいなネタが、一人称の小説だと書くの難しいんですよねぇ。



 さて、もう一つ。
 中間テストの話です。

 私が覚えている限りでは2ヶ所、「テスト期間前ということもあって~(中略)~クラスメイト達も次々と帰っていく。」と「そう言えば中間テストも終わった週末。」と書いたところがありました。これは第1稿では入っていなかった表現です。というのも、この“中間テスト”ってメインストーリーにはまったく絡まないのに、敢えてテスト前だという情報を提示してもノイズになるだけだと思ったんですね。

 でも、学生にとって「定期テスト」って結構な重要なイベントだったと思いますし、まったく触れないのも不自然かなと悩みました。とは言え、メインストーリーに組み込むのはなかなか難しい。準稀くんも、菱川さんも、汐乃ちゃんも、基本的に「勉強できる組」なためテストの話を書いてもあまり面白くならないんですね。未智くんあたりがメインに入ってくれたら変わったかもですが、現行のメインキャラではなかなか話が作りづらかったのです。

 また、「アナタが通っている・通っていた高校が舞台になっている」と思ってもらいたい―――というコンセプトからすると、授業の話とかテストの話とかはしづらいってのもあるんですね。極端な話、普通科と工業科と商業科ではカリキュラムが全然ちがうでしょうし、もっと言うと私が高校生のころと今の高校生のころでもちがうでしょうし、10年後・20年後はもっとちがうでしょうし。

 ということで、2ヶ所だけさらっと「そんなことがあるよ」「そんなことがあったよ」と描写するだけで済ませたのです。


 「小説なんてテキトーにハンバーガー片手に食べながらでも書いてんだろうな」と思っている人がいるかもですが、すっごく細かいとこまで考えて書いてるんですよ。大変なんですよ……ホントに、もう。



■ 超能力バトルというジャンルについて
 今回の小説を書くにあたっての絶対条件は、一つ目が「挿絵のない小説」で、二つ目は「ライトノベルの賞に出す作品」でした。一つ目の「挿絵のない小説」から「透明人間:一条鴎」が生まれ、二つ目の「ライトノベルっぽい作品」から「学園ラブコメの定番のヒロイン配置にして彼女らの話を次々と解決していく構造」になりました。


 もちろん、内容としては「定番」というより「定番に見せかけた外し」ではあるのですが……パッと見だとよくある作品のように思われかねません。例えば、『青春ブタ野郎』なんかと構造はよく似ていますよね。「本人では制御できない超能力に悩まされている女のコ達が次々と出てきて、それを主人公が解決していく」という構造。

 なので、差別化を図る意味でも、「この作品は超能力バトルで行こう」と最初に決めました。社中也とのラストバトルが最初に決まり、そこに至るまでの2~3の事件でも犯人とのバトルを中心に描こうと考えていきました。
 最初の構想では各事件の犯人は「四天王」と呼ばれる結構キャラの立った敵になる予定でした。でも、それだとヒロインズに焦点が当たらなくなるため、菱川さんの事件も汐乃の事件も「犯人は名無しキャラ」に変更になっていくのですが……最初の構想だと菱川さんの事件の犯人は学校の女教師で、教師でありながら彼女の大ファンで―――みたいな全然ちがう展開だったという。ちなみにその「菱川さんの大ファン」の要素は、女教師の存在そのものがカットになった後、汐乃に引き継がれるのです。


 「超能力バトル」というジャンルは、漫画を描いていたころ度々チャレンジして、最後まで描き切れなかったジャンルでした。
 初めて描いた漫画『ちのしあわせ家族』は構想だけどはものすごく壮大だったのだけど、「漫画を描き始めてみたら、想像よりも20倍くらい時間がかかることに気づいた」ために序盤までしか話を描くことが出来ず。
 そのリベンジとして、続きものに移行してもイイと思ってこちらも壮大な構想を立てたまま描いた『コマンド?→A/B/C』も、こちらも最初の読み切りから先の話を描くことが出来ませんでした。


 漫画は描くのに時間がかかるけれど、小説なら書きたいところまでちゃんと書けるんじゃないか―――という目論見もあったので、この作品は『ちのしあ』や『コマンド→』のリベンジ作品でもあるんですね。特に“街”を舞台にして、次々と事件を解決していくのは『コマンド→』でやりたかったコンセプトですし。

 「未来が見える超能力」は「漫画でしか表現できない超能力描写」を考えて生まれたもので、「透明になって誰にも見られない超能力」は「挿絵のない小説」を活かす表現を考えて生まれたものという共通点もありますしね。あと、睦月くんは「サッカーを辞めた」キャラで、準稀くんは「野球を辞めた」キャラという共通点もあるか(笑)。

 まぁ、これにも「運動部を辞めた男子高校生」は時間と体力が有り余っているという合理的な理由があるのかもですが、私としては「打ち込んでいたものを辞めてしまった」空っぽの主人公に惹かれるのかもなぁと思ったり。



■ 作品が生まれる前
 このミニコラムも残り2回です。
 当初はもっと短く三行くらいで終わるものを毎日手軽に書くつもりだったのですが、毎日毎日けっこうな文量を書いていてかなり疲れました。書くネタ自体はあらかじめ26回分を用意していたので、何を書くか悩む時間みたいなものはありませんでしたけどね。

 ということで、ラスト2回なのでとっておきの話を書きます。
 この作品の始まりは、今年の元日に書いた「ストーリーを多く届けることを今年の目標にしたい」というものでした。この時点では何のアイディアもありませんでしたが、そのために「挿絵のない小説にしよう」とは考えていました。


 さて、「挿絵を描かない」ことで「手を抜いている」とか「片手間で書いている」みたいに思われたくはなかったので、「挿絵を描かないからこそ出来る小説」を考えていくことにしました。最初に考えたのは「記憶を操作できる超能力者」の話でした。“信頼できない語り手”という叙述トリックの応用です。

 私の小説は「一人称視点」ですが、章によって主人公が切り替わる方式を取り。
 第1章は「記憶を操作できる側」を主人公にして、その男が如何にその能力を使って好き放題できるのかを描いていきます。
 第2章以降は、その男の存在に気付き、「その男を打破しようとする者達」を主人公にするのですが……第2章以降の主人公はところどころで「記憶操作」を喰らうため、既に起こった事態を覚えていなかったり、さっきまで憎んでいた男を好いていたり、「記憶操作」を受けるたびに「主人公」と「読者」の認識にズレが生じていくという話でした。

 「挿絵」があるとその「挿絵」によって読者の記憶は鮮明になるのでしょうが、「挿絵」がないことで読者の記憶もどんどんあやふやになって「本当にこんなシーンあったっけ?」とか「この二人はこないだ会話してたはずなのに何故今初対面のように喋っているんだ」とかと読者もどんどん不安になっていくのが面白いかなと考えたんですね。


 ボツにした理由は、「読者を不安にさせてどうする」というものです(笑)。
 固定ファンが何万人もいる作家ならそれをやってもイイのだろうけど、せいぜい数十人の自分がそれをやると「ついてこられない人」を振り落とすだけになりそうだなと思って辞めました。ただ、この「挿絵」がないからこそ何もかもが不確かに受け取られるという構造は、出来上がった『だれもカノジョのカオをしらない』にはつながっている要素ではあるのです。



 次に、「挿絵がないからヒロインの姿を想像するしかできない読者」とシンクロさせるため、「透明人間のヒロインの姿が見えない主人公」というアイディアが生まれました。主人公と読者をシンクロさせると、さっきとは逆にとっつきやすいかなと思ったんですね。この時点では『だれもカノジョのカオをしらない』のようなバトルものではなく、純度100%のラブコメでした。
 社会人3年目くらいの男主人公のアパートに、透明人間のヒロインが転がり込んでくる―――けど、ずっと透明で自分でも解除できないので、主人公が世話をしてあげなければ彼女は生活できないみたいな話でした。この時点で「所有物がすべて透明になってしまう」という設定や、主人公が最後に下す決断など、後に『だれもカノジョのカオをしらない』となる作品と共通するところもあるのですが……

 基本的には、「不器用な男」と「透明なヒロイン」が一つの部屋でイチャイチャするだけの話でした。誤っておっぱい触っちゃうとか、一緒に風呂に入るとか、ゲーム実況をするとかのアイディアはこの頃に生まれたものです。


 ボツにした理由は、「透明なヒロイン」である設定が“ただの足かせ”になっているだけで、「主人公にも読者にもヒロインの姿が見えない」ことがあまり活きてこなかったのと―――どう考えてもこの設定だとエロイ展開にならないとおかしいので、ライトノベルの賞には出せないよなぁと思ったからです。ただ、ボツにはしましたがところどころの設定は生き残ったので、このボツ作品がなかったら『だれもカノジョのカオをしらない』は生まれなかったのは間違いないです。



 そして、三作品目。
 この作品こそが『だれもカノジョのカオをしらない』の元となるアイディアで、一条鴎が生まれたきっかけになるのですが―――それは明日のミニコラム最終回「一条鴎について」で語ろうと思います。

| 小説創作 | 21:00 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

「カカない」を自分は最高に楽しんで読んでます

LINEノベル更新お疲れ様です。

自分は「カカない」毎日楽しく読んでいます。読みながら、「やまなしさんならこう展開を捻ってきそう」とか予想するのがとても楽しいですし、一条鴎のゲームネタ会話も毎回面白いです。

「PV」や「いいね」、「お気に入り」の数がもっと増えてほしいですし、もっと増えて良いほどの面白さ・楽しさを「カカない」は備えていると自分は思います。

今日の話も早速楽しみながら読みたいと思います。

| ヤタロウ | 2019/09/15 21:29 | URL |

>ヤタロウさん

 気を遣わせてしまったようで申し訳ない……
 楽しんでくれている人がいらっしゃることは、本当に励みになります。


 しかし、作者としては「このやり方で本当に良かったのか」は常に自省してなきゃいけないと思うんですね。短編をいろんなサイトに載せていた時に比べて「最新話を読んでくれる人」が激減しているワケで。

・毎日更新にした
・挿絵がない
・アプリでしか読めないLINEノベル

 こういう要因も確かにあるんでしょうけど、第1話を読んでくれた人が最新話まで読んでくれていないのは僕の力量不足なので、そこはやっぱり反省しなきゃいけないかなーと思います。

| やまなしレイ(管理人) | 2019/09/21 01:14 | URL | ≫ EDIT















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