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脱衣麻雀も推理小説もゲームも、脱がす(謎を解く、攻略する)過程が楽しいという話

 ちょっと前、漫画家の浦沢直樹先生が昼の伊集院ラジオにゲスト出演されていました。
 伊集院さんと浦沢先生と言えば……『20世紀少年』最終回が掲載された日に、伊集院さんが夜のラジオで「何アレ?」と散々に批判したことを思い出したのですが。
 漫画業界内での伊集院ラジオの聴取率は半端ないので、あっさり浦沢先生の耳に入っていたらしく、「(『20世紀少年』の最終回について)伊集院さんはラジオで色々言っていたみたいですが……」と反撃されていました。


 僕は『20世紀少年』は時間がある時にまとめて読もうと思っているので、買ったまま未だ読んでいないのですが……最終回の出来だけで、漫画全体が語られてしまうというのは哀しいものがあるなーと思ってしまいました。

 連載漫画って、最終回以外の回がほとんどなワケですよ。
 そこで重要なのは「続きが読みたいな」「あの漫画が読みたいからあの雑誌を読まなきゃ」「次のコミックスも買おうっと」と思わせられることであって、そうしたものがなければ商業的には成功しません。浦沢先生くらいになると、雑誌とか出版社の看板を背負った作品を描かなきゃならなくるのですから、尚更その責任は重大なことでしょう……
 なので、最終回の評価だけで、その作品全体の評価がされてしまうのは口惜しい気持ちになるんじゃないかと思いました。


 この辺の“結末で作品全体を評価する”考え方は……「過程」よりも「結果(成績・数値)」を大事にする日本人ならではの感性とも言えるんですが。

 浦沢先生が「連載の途中が一番楽しいですよ。横溝の小説だって謎を解いていく過程が楽しいから、金田一耕助が犯人を暴くシーンは最後にチョロッと書くだけでイイんです」ってなことを仰っていたのは、なるほど確かにその通りだと納得しました。


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 ここで、話は一週間前に書いた「ぶっちゃけ全裸ってそんなにエロくないよね」という記事に戻ります。

 あの記事に対して、WEB拍手で「最終的なゴールは全裸だと分かっているからこそ、そこに向かう過程(脱ぎかけ)でいろいろ想像して楽しめる余地があるというか…。」というコメントを頂いて「ハッ!」と思ったのです。

 実を言うと……「全裸とエロス」に関しては、実際に書いた上述の記事以前に「野球拳や脱衣麻雀の目標設定」という記事を書こうと思っていました。
 「野球拳や脱衣麻雀」って非常にゲーム的ですよね。『マリオワールド』でのマップを埋めていく作業とか、『ポケモン』でポケモンを集めていく作業とか、『スマブラX』のクリアゲッターを開いていく作業に通じるものがあると思っていました。

・明確なゲーム目標(女のコを全裸にする)
・途中途中、現在の達成度が分かりやすく表示される(女のコの服がどれだけ残っているのか)


 上が「結果」で、下が「過程」でしょうか。
 記事を書こうと思っていた僕がここで詰まってしまったのは、「でも、女のコを全裸に出来るのが必ずしも嬉しいワケじゃないよなぁ」と思ってしまったからです。繰り返しになりますが、僕は全裸よりも脱ぎかけの方にエロスを感じるタイプなので、その目標に全然燃えられないんです。
 そういや、『幕張』という漫画で脱衣麻雀中に「ブラジャーを脱ぐ前に靴下を履いてくれ」と言うシーンがあったっけ。脱衣麻雀のゲーム目標を逆手に取った哲学的な描写……というよりは、ただのマニアック趣味な気がしますけど(笑)。



 でも、よくよく考えてみたら……別に「全裸とエロス」に限らず、「過程」の方に魅力を感じるものも沢山ありますよね。これはあくまで僕の例ですが……
 浦沢先生の仰るところの「横溝の小説は謎解きまでの過程が楽しい」でもそうですし、つい先日書いた「攻略サイトはどのタイミングで見るべきか」の記事で語った「達成感」の話もそうです。

 僕の場合ゲームは分かりやすく「エンディングまで進んでないゲーム」が沢山ありますし、達成率100%を目指すやりこみ要素とかはホント苦手です。「まだこのゲームには遊びつくしていない要素があるんだ」くらいのところで辞めてしまいたい人間なんです。
 推理小説で「犯人が分からないまま読むのを辞めた」ものは流石にありませんけど、漫画の最終巻とかアニメの最終話とかを観るのは凄く憂鬱だったりします。もう、それを観てしまったら物語は終わってしまうんだ……と哀しくなってしまうのです。


 終わらない夢を見ていたい。
 全裸が終着点なんだとしたら、脱ぎかけにはいつまでも続く夢があるんだ―――


 カッコイイようなことを言っているようで、あくまでエロの話(笑)。
 でも、何となく……分野に関係なく、自分自身が好きなもの嫌いなものがキッチリ見えてきたような気がしました。
 喩えば僕はサッカーのゴールシーン(結果)だけを見るのが嫌いで、試合の流れの中でそのゴールがどういう意味なのか(過程)を観るのが好きなんですよ。こないだのバーレーン戦で言えば、あのゴールはハンドだから仕方ないとかではなく、あれだけ攻められている状況で「ハンドだ」と一瞬気を抜いてしまったことが持つ意味、みたいなね。



 そう考えていくと……
 “50巻まで出ている漫画を20巻までしか読まない”とか“クリアに50時間かかるゲームを20時間で辞めてしまう”とかも、自分にとっては「楽しんだ!」「満喫した!」と言えることなのかも知れないと思いました。

 漫画やゲームに限らず、どうにも世の中には「最初から最後までキッチリ見たものしか語っちゃいけない」みたいな風潮があるみたいなんですけど……自分にとって一番楽しめる方法があるのなら、別に世間の風潮に従う必要なんかないですよね。
 「20巻まで読んでつまらなかったから残りの30冊は読むのを辞めたよ」も、それはそれで立派にその作品への評価ですし、むしろダラダラと全巻読むよりは能動的な強い意志が表れていると言えますよ。きっと。


 確かに、「とりあえず全裸」よりも「ブラジャー脱ぐ前に靴下履いてくれ!」の方が強い意志を感じるような気がしますね。ちなみに僕は足フェチなんで素足の方が好物です。

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| ひび雑記 | 18:27 | comments:4 | trackbacks:1 | TOP↑

COMMENT

まぁでもMONSTERといい20世紀少年といい浦沢先生はオチが弱いというか、もっと言ってしまえば広げた風呂敷の包み方が悪いという印象がありますが。
キートンは評判良いけど原作付きですしねぇ。
画竜点睛って言葉もありますし、やはり最期の締めまで決まってないと作品として良い評価はされないもんじゃないでしょうか。それがクリエイトするってことだと思います。

ちなみに私はMONSTERで殺し屋のオッサンが「殺しの後はコーヒーに角砂糖を5個入れる」と語るエピソードが好きです。こういう何気ない描写が光る漫画家で、大仰な話は向いてないんじゃないかと思います。個人的に。

| 通りすがりの萌え考察家 | 2008/03/30 07:03 | URL | ≫ EDIT

>通りすがりの萌え考察家さん

>キートンは評判良いけど原作付きですしねぇ。
 僕もネットで噂を知った程度のことですが、原作付きとは言え『キートン』も他の作品同様に浦沢先生と長崎さん(編集者)の二人で話を作っていたそうです。
 なので、一度出た豪華版(愛蔵版だっけ?)の作者名には浦沢先生一人分しかクレジットされていませんでした……が、それが後に問題になって権利関係がグチャグチャに―――という話を4~5年前に聞きました。

 個人的には『キートン』のような1話完結エピソードが好きなんですが、恐らく出版社の意向やらなんやらでそう上手くいかないんでしょうね。記事に書いたように「謎が謎を呼ぶ」方がコミックスは売れると思いますし……
 僕自身は「前の巻までの内容覚えていない!」→「読み直さなきゃ」の作業が大変なジジイなので、「謎が謎を呼ぶ」上に何十巻も続く漫画というのは苦手ではあるんですが。それは別に浦沢先生に限った話じゃないからなぁ……


 オチに関しては、僕は『20世紀少年』を途中までしか読んでいませんから偉そうなことを言えるワケではないですし、ネタバレはしないで欲しいのですが……最初に思いついたオチが完璧なものであっても、連載中に時代が変わってトレンドじゃなくなるということもありますからねー。
 有名な話ですが、『寄生獣』なんかは連載開始当初に予定していたオチと正反対のオチにしたとか。何つーか、長期連載漫画でキッチリとオチを付けるのなんてムリなんじゃないかと思ったりするのです。

| やまなし(管理人) | 2008/03/30 21:05 | URL | ≫ EDIT

最後まで作品に触れずに楽しむ自由はあっても良いと思いますが
最後まで作品を確かめずに評価したり,貶めたりするのは間違いなく不誠実でしょうね.

| み | 2008/04/01 14:06 | URL |

>みさん

 うーん……どうして「間違いなく不誠実」なのかを書いて下さると、こっちとしても「そういう意見があるのか!」と思えるのですが。

 自分の感覚では「途中で脱落した」ことを最初に述べれば、別にイイんじゃないのかなーと思います。
 50冊出ている漫画を20巻で脱落したとしても、「残り30冊も読む気が起こらない」のだとしたらそれはそれれで立派な意見ですし。作り手側としても、“続きを読む気にさせられなかった"ことはしっかりと受け止めるべきだと思うんですけどねー。

 あー、でもこれは媒体にも依るかも知れんと書きながら思いました。
 漫画の単行本の場合は続きを読むために別途料金がかかるので脱落するのも自由だとは思いますが、映画とかゲームの場合は序盤でやめてしまった人に語られるのはイヤな気もします。当たり前なことですが、ケースバイケースというか……

| やまなし(管理人) | 2008/04/01 20:47 | URL | ≫ EDIT















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