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やまなしなひび−Diary SIDE−
ロリ貧乳もいいが、貧乳お姉さんも捨てがたい
縦書きの漫画を、横書きにする海外展開
 『ドラゴンボール』や『キャプテン翼』が世界中で読まれているという話は有名ですし、日本の漫画は海外でもコアな人気を集めていますよね。この辺の事情はあまり詳しくないのですが、インターネットを通じて(違法か合法か定かではありませんが)日本のアニメを観ている海外のヲタク層というのも存在します。


 日本はこれから先どんどん人口が減っていくでしょうし、漫画業界は「雑誌が売れない」時代に危機感を覚えています。こないだ記事にした「携帯電話で読める漫画」が増えている理由も、そうした危機感(と裏返しのビジネスチャンス)があるからかも知れませんね。

 その“漫画の電子化”と双璧を為す突破口と語られているのが、“漫画の海外展開”でしょう。
 『ドラゴンボール』の例を挙げるまでもなく、コミックスを翻訳して世界中で販売する動きは随分昔からありました。また……雑誌についても、数年前に少年ジャンプの北米版が発売するというニュースがありましたよね。海外の公式サイトがあったので、まだフツーに続いているようです。


 日本だけでは市場規模に限界があるので、世界市場を相手にしたい。
 漫画もアニメもゲームも、意図するところは一緒だと思います。




 ただ、漫画の場合……
 ゲームやアニメ以上に、「文化による文法の違い」が大きなハードルになってきます。言語を翻訳するとか、世界に通じるテーマにするとか以前に……日本人と欧米人では読み方が全然違うんですよね。

 すなわち、縦書きの文化と横書きの文化の違い。

 日本の小説はほとんど縦書きですが、欧米の小説は横書きです。そもそも、欧米の言語を縦書きにする方法そのものがありません。
 なので、日本の漫画を欧米人に読ませるためには、セリフも縦書き(右上から左下に向かう)から横書き(左上から右下に向かう)に直さなければならず……セリフの向きに合わせて、漫画全体を左右反転させることになります。



 絵描きとしては、まずここで恐怖ですよ。
 漫画評論家が、絵を裏側から透かして見て「ここのデッサンが狂っている!この作者は画力がない!」とかイチャモンつけて解説して下さるようなことを………全てのページ・コマにおいて自動的にやられてしまうということですからね。僕みたいに絵がヘボヘボな漫画描きにとっては、想像するだけで胃が痛くなってしまいます。


 いやまぁ、それくらいは胃を切除するなりして我慢すればイイんですが……
 日本の漫画を海外向けにローカライズするとなると、もっと本質的にマズいことが起こるのです。



 喩えば、『ちのしあ』7話の1ページ目。
 『ちのしあ』7話1ページ目

 テキトーに描かれているように思われているこの漫画ですが、一応この漫画も“読者の視線”をどう誘導して間を作っていくのかを考えて作られています。漫画は紙芝居じゃないですからね。フキダシの位置・大きさ、キャラの目線などで“間”を演出する必要があるのです。


 視線の動きを簡単に表すと、こんなカンジ?
 『ちのしあ』7話1ページ目・読者の視線の動き

 セリフが縦書きなので、当然ながら読者の目は上下に動くことが基本となります。ですから、漫画で“間”を演出するにはこの上下動をどう使うかを忘れてはいけません。

 このページの場合……左上の「いや、もうどれでもイイっすよ」というムトくんのセリフまで視線を上げさせておき、その下に何のセリフもない空間を作ることで“3人のやり取りを見ている海イズの間”を演出し、次の「何してんだ?」を引き出すワケですね。
 単に僕がメイド服を描きたくてあの空間を開けておいたのではないのです!




 では、これを海外仕様にしてみましょう!
 英語のセリフはエキサイト翻訳に頼んだものなので、ニュアンスが違っても僕のせいじゃないよ!
 『ちのしあ』7話1ページ・英語バージョン

 4コマ目が何か気持ち悪いことになっている……(笑)
 何だろう、このダマシ絵を見ているような感覚は。酔いそうです、あまり長く直視しないように。

 元々、僕のフキダシは縦長なこともあってセリフがなかなか入りきりませんね。
 『ドラゴンボール』はともかく、『キャプテン翼』なんかは物凄くセリフ(実況)の多い漫画なのに……どうやってローカライズしているんでしょう?



 で、これが英語版の視線の流れ。
 僕は横書き漫画に慣れていないため、多分こんなカンジかなーというくらいですが。
 『ちのしあ』7話1ページ・英語バージョン・読者の視線の動き

 フキダシを読む順番が変わってしまうこともそうなんですが(でも、あれは内容的にはどちらからでもイイようにしてあるので問題ない)、視線の動きの基本が横になったため、上下に大きく動かすことによる間が生まれにくくなってしまっているんですよね。

 視線の流れを受けて“視線が入りやすいように”斜めにした4コマ目の垂直ラインも、横書きだと微妙にズレているのが辛いところ。漫画家の意図とは違う演出になってしまうんですよね。1ページでコレなのだから、見開きだともっと深刻な事態になるんじゃないかと思います。



 ※ ちなみに、視線誘導の話は僕が漫画を描き始めた頃に読んだ↓の本に書かれていたことです。

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 ということで……ゲームやアニメと比べて、漫画を海外向けにローカライズしてもその魅力は伝わりにくいんじゃないかというのが僕の考えです。少なくとも、上で挙げた例のようにフキダシの中身だけ変えても上手くいかないんじゃないでしょうか。

 もちろん、それでも海外で人気の和製漫画はたくさんあります。そうした作品には、こんなハンデなんかものともしない魅力があったのでしょう。


 でも、全部の漫画がそうなれるワケじゃないですよね。
 僕みたいにインターネットで自分の作品を公開しているアマチュアの漫画描きは分かりやすい例ですし、もし今後10年・20年後にデジタル漫画が一般的になれば日本語版と英語版を同時配信なんてことだって可能です。対象となる人口が多い方が、より多くの人に読んでもらえる(ビジネスチャンスに繋がる)ワケですからね。

 ……そうした時に、“ハンデをものともしない”作品は何割あるんだろうという話です。




 で、イチ漫画描きとして思うのは……
 「フキダシを全く入れずに全ての絵を描いてしまう」というのが一つの手かなと。全て描き終えてから、フキダシをデジタル作業で入れれば良いという案……この際に、日本語版・英語版で異なったフキダシ位置(演出)にすればイイだろうと。


 後はもう開き直って、「最初から横書きで漫画を描く」とかね。
 このブログだって横書きですし、日本人にとって「横書きが読みにくい」なんてことはないでしょう。事実、(最近はどうだか知りませんが)ゲーム雑誌は横書きで書かれているものが多いので、ゲーム雑誌には横書きの漫画が連載されているんですよね。ファミコンバブルの頃の話ですが、『魍魎戦記MADARA』のような人気作もゲーム雑誌から生まれましたもんね。



 そう考えていくと……インターネットで漫画を描くのなら横書きの方が向いている?
 読む側にとっては、慣れてしまえばどちらも同じ感覚で楽しめるんじゃないかと思うんですが……描く側からすると、そうは言っても縦書きの漫画のダイナミックな上下運動の魅力は捨てがたいですし。うーん、悩みどころ。


 試しに、大好きな作品で英語に翻訳されたものを読んでみて研究するのも手かも知れませんね。
 “間”の違いを研究するにはイイ参考書になりそうな気がしますし。


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この記事に対するコメント

開き逆にしてるのって最近はあんまりないんじゃなかったろうか
【2008/05/28 01:14】 URL | ああああ #- [ 編集]


 視線誘導の話は、知ってはいたけど改めて言われると、なるほど。
 開きの向きを日本と同じにする流れはできてきたとはいえ、作画の演出と合わせて考えると、けっこう重要な問題ですね。
 以前にパソコンで漫画を読んでみましたが、紙媒体と同じコマ割りだと、読みにくいこと読みにくいこと。
 四コマ漫画なら無理なく読めても、ストーリー漫画は、まだ読むのに修練が必要ですね。
 1つのアイデアとして、吹き出しを入れずに作画して、媒体に合わせて吹き出しを入れるというのに一票。
 でも、吹き出しもまた絵の一部と考えると、別な才能と工夫が必要そうですね。
【2008/05/28 02:32】 URL | 清水 銀嶺 #nEx7PFYA [ 編集]


あくまでも海外版は入り口としての扱いで、コアな海外ファンは日本語を勉強して日本版を楽しんでいるみたいですね。ハリーポッターなど小説では日本人でも原著にこだわる人もいますが同じようなものでしょうか。向こうの人も修正で浮き出てくる違和感のようなものを感じているんでしょうかね。
【2008/05/28 03:05】 URL | ああああ #- [ 編集]


手持ちの海外版のコミックスは、横書きの本のように開くと最初のページに(縦書き本では実はそこが巻末)
この本はこうやって読んでね! という解説が見本ページ付きで載ってました。
5年ほど前、ジャンプの原画展で世界各国のコミックスを見ましたが、
反転されてるものはありませんでしたよ。
桜蘭高校ホスト部のタイ語版だけが反転らしいですがジャンプ漫画のタイ語版はそのままでした。
【2008/05/28 03:46】 URL |    #- [ 編集]


上でも書かれていますが、最近は日本と同じ開きで出版されているマンガも多くなっているようです。
海外のオタクさんたちも、なるべく元と同じ状態のを見たいんでしょうね。
読み方については、慣れるみたいです。

海外のオタクさんたちの生態(?)は、海外のオタク向けBBSを訳してくれているブログとかを読むと色々分かります。私も面白くて良く読んでます。
「お茶妖精」「誤訳御免」あたりがオススメです。
【2008/05/28 11:58】 URL | メルト #- [ 編集]


野球漫画→ 一塁と三塁が逆になる、スコアボードが逆になる
医療漫画→ 心臓が右に
【2008/05/28 13:36】 URL | k #- [ 編集]


>ああああさん
 そうなんですか。
 この件に関して大量のツッコミコメントが来ているので(笑)、多分「左右反転」の漫画は減っているんでしょうね。だとすると、もっと大きな問題があると思うんですが……この辺は、時間があれば明日にでも記事にします。


>清水 銀嶺さん
>以前にパソコンで漫画を読んでみましたが、紙媒体と同じコマ割りだと、読みにくいこと読みにくいこと。
 耳が痛いです(笑)。
 そういう意味でも4コマ漫画の利点は大きいんですよね。携帯電話に向けたサービスをやっている出版社は、新人発掘の賞に4コマ部門とか作っていますし。

>吹き出しもまた絵の一部と考えると、
 人にも依ると思いますが、僕なんかはフキダシありきで構図を考えますね。
 ここにこのキャラとこのキャラの顔を描くためにはフキダシをココに入れないと顔が映らない…とか。描くのが難しいところはフキダシで隠しちゃえ!とか(笑)。


>ああああさん
 なるほどですね。
 アニメのネットラジオとかに「日本語を勉強しています」という外国人からのメールが届くことが多々あって、その度に「日本語なんて勉強しても何の役にも立たなくね?」と思ってきたのですが……(ヲタク文化の)原著に触れたいという人が世界中には沢山いるということなのかも知れませんね。

 さすが、世界に誇る日本の漫画文化!
 これを日本人の国会議員が規制しようとするんだからなぁ……


> さん
 5年前というと、ちょうど北米版少年ジャンプが出た辺りですね。
 あのニュースで「左右反転している」ことを知って、「うわーデッサン苦手な人はキツいなあ」と思った記憶があるので……雑誌とコミックスでは違ったのかも知れませんね。確かに、雑誌の方が一般層に向けて作っているのでしょうし。


>メルトさん
>読み方については、慣れるみたいです。
 うーん……現実的にはそうなんでしょうけど。
 漫画描きとしてはスゲー複雑な話ですね。「アナタが読んでいるその漫画は、漫画家が意図した演出とは違うんだよ」と。でも、それを言い出すと洋画の字幕とかもそうか……構図とか台無しになっちゃいますもんね。


>kさん
 なるほろ。目から鱗です。
 「デッサンの崩れを気にしている」だけで左右反転をやめたというこ理由ならしっくり来なかったんですが、その理由なら納得です。つーか、『キャプテン翼』が左右反転なら全員レフティーだったのか……

 スポーツ漫画、格闘漫画でも左右の概念は大切ですし。こうした設定を考えてのことかも知れませんね。
【2008/05/28 20:06】 URL | やまなし(管理人) #KBwqQFSI [ 編集]


>「お茶妖精」「誤訳御免」あたりがオススメです。
お茶妖精はともかく、誤訳御免はアレでしょう…。
【2008/05/28 23:26】 URL | ああああ #- [ 編集]

>ああああさん
 好みは人それぞれですからね。
【2008/05/29 20:13】 URL | やまなし(管理人) #KBwqQFSI [ 編集]


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