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物語の終わり―――西尾維新『ネコソギラジカル』読了

 「あたしと、お前らとじゃ、違うよ」
 哀川さんはさも当然のように言った。
 「お前らは、まだ子供じゃん」
 「…………」
 「だからまだあと一回くらい、やり直せるさ」




 もう何年前の話になるのだろうか―――
 戯言シリーズ第2作目の『クビシメロマンチスト』を読み終わった際、自分の中で「このシリーズは読み終えてはいけない」と防衛本能が働きました。なるべくならば、自分が死ぬまで戯言シリーズを読み終えることなく、自分が死んでも“終わっていない物語”として生き続けて欲しいと。

 せめて自分の中だけでも、あのキャラ達には“物語の途中”を生き続けて欲しい―――と。



 しかしまぁ、好きすぎるから「最後まで読みたくない」と思うのと同時に、好きすぎるから「最後まで読みたい」と思ってしまうもので―――1年に1冊とか、半年に1冊のペースでチョイチョイ読み進めてしまい、とうとうシリーズ最終章の『ネコソギラジカル』を読み終えてしまいました。

 でも、辛くはありませんでした。
 “終わり”だけど、それは絶望を意味しているワケではなかった―――


 “世界の終わり”にすらまだ未来は残されている―――
 西尾維新は、“世界の終わり”すらこうも優しく描けるものなのか。

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 ライトノベルは読む順番が分かりにくいので一応書いておきますと……
 この作品は『クビキリサイクル』『クビシメロマンチスト』『クビツリハイスクール』『サイコロジカル』上下巻『ヒトクイマジカル』と続いてきた戯言シリーズの最終作品なんですが、読んだ感じだと『零崎双識の人間試験』を『ヒトクイマジカル』の次に読んでから『ネコソギラジカル』上中下巻を読むのがイイみたいですね。

 実際……戯言シリーズをほとんど読まずに『零崎双識の人間試験』を読んでしまって「ワケわかんなかった」と感想を書いていた人もいましたし。
 ナンバリングをしない方が途中からでも手にとってもらえるということなのかも知れませんが、途中から読んでも意味が分からないのだし、いっそのこと1巻2巻3巻と順番に並べてくれた方がイイのではと思ったりもします。この辺、何か業界の事情でもあるんですかね?




 で―――最終章『ネコソギラジカル』。
 上巻読んでいる際に書こうと思っていた感想と、中巻読んでいる際に書こうと思っていたソレと、下巻読んでいる際に書こうと思っていたソレでは全くの別物で……実際問題「物語の最後というのはこういうものなのかもなぁ」と、こちらの思考も行ったり来たりしたものなのですが。

 中巻以降の感想はネタバレになってしまうので、上巻時点の感想を言わせてもらえれば―――
 劇場版『ドラえもん』のようだと思いました。

 もちろん良い意味で。劇場版『ドラえもん』の構成力の半端なさをみくびんなよ!
 ドラえもんというのは、(一部の例外はあるけれど)あの世界では“何でも出来る”秘密道具を持った無敵な存在なワケです。本来ならばドラえもんに出来ないことはないし、適わない敵なんていない―――でも、それでは物語がちっとも盛り上がらないので、あの手この手で“ドラえもんの秘密道具”を封じていくのです。
 その結果、最終的な物語の鍵を握るのはのび太やジャイアンやしずかちゃんやスネオといった“普通の子供”達となり、彼らが知恵と勇気を振り絞って悪を倒す―――というカタルシスを生み出すのです。


 『ネコソギラジカル』上巻を読んでいる際に、頭に浮かんだのはこのことでした。
 戯言シリーズの登場人物というのは、語り部たる≪いーちゃん≫を除けば無敵で頼れる人達が沢山いるワケで―――言ってしまえば秘密道具を山ほど抱えたドラえもん状態なんで、どんな敵が出てきても怖くないはずなんですが。こうしたキャラ達をうまーく封じ込めることによって、“普通の人”である≪いーちゃん≫が奔走していく様を描けるという。

 まさにオールスターキャストという登場人物達の中で、どうやって物語を盛り上げていくのかが上手く考えられているなぁ……と感心します。あと、崩子ちゃん、可愛いね崩子ちゃん。

 ただ、一方で「このシリーズって、推理小説じゃなかったっけ……?」と思うのも確か。
 “物語を終わらせる”ことに一生懸命になったことはよく分かるし、僕はこの“終わり”の描き方は素晴らしかったと心の底から思っているのですけど……やっぱり最初の2作『クビキリサイクル』『クビシメロマンチスト』で震え上がらんばかりの体験をしてしまっているだけに、物足りないと思ってしまう部分もあります。


 あとはまぁ……これは作品本編とは違うことで、尚且つネタバレ全開な「許せないこと」があるので。文字色を反転させて愚痴りたいと思います。携帯電話とかで読んでいる人や、(よく分からないんですけど)RSSとかでもそうなんですかね。文字色を背景色と一緒にして隠しても意味ないぜ!って人は気をつけて下さいな。


<ここからネタバレ>
 裏表紙に思いっきりラストシーンの二人がネタバレしているじゃねえか!
 最終巻だから仕方ないのかも知れないけど、裏表紙ってポンとその辺に置いてあったら目に入っちゃうところじゃないですか。読み始める前からラストシーンが想像できてしまったら感動も何もあったもんじゃないじゃん!
 今まで戯言シリーズではそういう経験をしたことがなかったから、完全に油断していました。チクショウ!俺の感動を返せ!!

</ここまで>

 まぁ……いつもの通りで。

 最後に恨み言を書きましたが、個人的には最後の最後まで戯言シリーズには楽しませていただきました。
 もちろん最初の2作が一番好きでしたけど、それ以降の作品もハラハラしたし感動したしキャラが可愛かったし震え上がる経験を幾つもさせてもらいました。レビューとか、批評とか、そういうものが出来ないくらいに僕はこのシリーズとこの世界が好きだったのでしょう。

 戯言シリーズに出会えて良かった。
 出会えていなければ、恐らく僕の人生は全く別のものになっていたでしょう……とか書くと、「ソレに出会えていなくてもまた別の“同じ作用を持つもの”に出会えていただろう」と狐面の男に言われるのでしょうか。

 そうかも知れない。
 あの日、あの瞬間に出会っていなくても別の出会い方をしていたかも知れない。そしてまた、巡り巡ってやはり僕はこんな生き方をしているのかも知れない。さぁ、どうだろう。



 では、これまで戯言に出会ってこなかった人達に「文庫版も出たのでこれを機会にどうぞ」と薦めて、この文章を締めたいと思います。さて、次は何を読もうかな。


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