やまなしなひび-Diary SIDE-

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漫画を人に薦める時に必要なのは、漫画ではなく人を見る目

 こないだの『よつばと!』の記事を書きながら思ったこと。
 確かに『よつばと!』は面白いし、僕も大好きだし、出来ることならば世界中の人が『よつばと!』を好きであって欲しいと思っているんですけど……それがどんなに素晴らしい漫画であっても、万人が「面白い!」と思うものなんて実際には存在しないんですよね。


 それは漫画だけでなく、アニメでもゲームでも映画でも小説でもそう。
 自分のことを棚に上げて発言しますけど……ネット上のレビューなんかで「万人にオススメ!」とか「これを嫌いな人がいるワケがない!」と紹介されているのを見ると、その作品はともかく、そのレビュアーの書くレビューはあんまり信用出来ないかなーって思っちゃいます。

 だって、それって「その作品はどんな人にはオススメ出来ないのか」の想像も出来ないってだけじゃないですか。そういうレビュアーの人の太鼓判って、申し訳ないけれど鵜呑みには出来ないなーと思ってしまうのです。



 上の『よつばと!』の例で言えば、「彼女が『よつばと!』を気に入ってくれると思った理由はどこにあったのか?」というか「彼女が『よつばと!』を気に入らなくならないと思った理由はどこにあったのか?」という問題だと思うのです。
 『よつばと!』を両親、兄貴、兄貴の嫁さん……と連続して薦めて絶賛された経験を持つ僕ですけど、正直『よつばと!』はハードルが高いんじゃないかと思います(まぁ、あの記事の彼女さんは中身を読んですらいないっぽいんですけどね)。

 特に序盤は「何も起こらない」日常を淡々と描いているので、どんどん色んなことが起こるイベント性を漫画に期待している人には何が面白いか分からないんじゃないかと思うのです。
 好きな映画にハリウッド映画を挙げるか、フランス映画を挙げるかの差というか―――あぁ、とは言うものの。僕は映画に詳しくないんで、この例えが適切だったかどうかも分かりません。ファーストフードと料亭の料理の違いってところでしょうか―――あぁ、僕は料亭にも行ったことがなかった。



 要は。
 その人の趣味趣向を無視して、「自分が面白いと思ったから絶対に気に入るはず」というだけの根拠で薦められも……という話。
 もちろん「1000人に読んでもらって何人が面白いと思うか」みたいなアベレージは存在すると思いますけど、大事なのはアベレージではなく「今そこにいる相手が面白いと思うか」じゃないですか。そのためには、まずその人がどういう人間で何に興味を持っているのかということを見極めるべきなんじゃないでしょうか。

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 チェックポイント1:興味、好奇心
 漫画を人に薦めたいなんて考えるほど漫画が好きな人は「どんなジャンルの漫画だって面白いぜ!」とお考えかも知れませんが、大多数の人間は“興味のある漫画”を限定しているものです。野球に興味がない人は野球漫画を「読むかどうか」の選択すらしませんし、麻雀に興味がない人は麻雀漫画を「読むかどうか」の選択すらしません。

 もちろん、バスケに興味がなかった人々を巻き込んだ『スラムダンク』のような例は漫画業界で度々起こることなんですけど、それは「世間で話題になっている」とか「みんなが読んでいる」といったプラスアルファがあったからなんですよね。


 言ってしまえば、その人が「どういう漫画に興味があるのか」を見極められるかという話。『よつばと!』の例で言えば、彼女が「ヲタクっぽい漫画は読みたくない」と思っていたのを察せなかったことが大きいんじゃないかと思います。例えそれが偏見だったとしても。
 ヲタク・非ヲタクの例だけでなく―――下ネタがどのレベルまで入っているとか、セックス描写があるかとか、読んでいて暗い気持ちになるかどうかとか。漫画を薦める際に重要な判断基準って沢山あると思うんですよ。

 守備範囲の広さというか、ストライクゾーンの広さというか。
 それは単に「広い←→狭い」ということではなくて、どういう分野ならストライクなのかを探る必要があるだろうということ。


 ごく稀に「自分が全く興味がなかったもの」にすら興味を持てる好奇心の強い人間もいるんですが、そういう人は少数だと思っておいた方が良いでしょうね。ていうか、そういう人なら普段の会話から好奇心の強さが見えてくると思いますし。



 チェックポイント2:絵柄
 分かりやすいのは、線数とかトーンの数とかですかね。
 一般的には……紙面の“情報量”が多くなると漫画に慣れていない人には処理しきれなくなり、演出した“間”が崩れてしまうと言われています。大友克洋作品なんかは素直に「スゲエ!」と言ってしまう絵なんですけど、一方ではこれを許容出来る人は限られているんだろうなぁとも思うのです。


 あとは、流行り廃りとか古臭さとか独特具合とかね。
 分かりやすいのは、『ジョジョ』の独特な絵ですかね。似ているものがないからこそ取っ付きにくいというべきか。でも、僕から言わせると『ジョジョ』は「長い」ことの方が薦めにくい理由なんですが(笑)。

 個人的に「自分は大好きだけど人には薦められない絵」というと、島本和彦作品かな。
 『吼えろペン』も『アオイホノオ』も抜群に面白いし、あの絵でなければ「あぁ!何だ!この漫画を読んでいるとジッとしていれられなくなる!!」という雰囲気は出てこないと思うんですけど……失礼ながら、とてもじゃないけど最近流行りの絵ではないので他人には薦めづらいと言いますかね。


 線数の話と流行り廃りの話とを絡めるなら……
 「絵柄で『ジョジョ』を読まないなんて損をしている!」と言っている人が、一昔前のトキワ荘メンバーの漫画なんかを食わず嫌いしていることだってありますしね。まぁ、これは「昔の作品は触れるキッカケがない」ということが大きいんでしょうけど。


 『よつばと!』を彼女に薦めたという例で言えば、「濃い絵の漫画よりも、こういうシンプルな絵の漫画の方が女のコ受けは良いはず」という根拠があったんじゃないかと思いますし。僕も、その気持ちは分からなくはないんですが……
 同じ“漫画が好きな女のコ”であっても、少女漫画好きなコと少年漫画好きなコでは許容範囲に差があるというか………この辺は、男きょうだいがいるかどうかで変わってくるのかも知れませんね。



 チェックポイント3:長さ、完結しているかどうか
 自分としては、レビューサイトをやっていた頃には一番気にしていた部分です。
 喩えば「何か面白い漫画ない?」と訊かれて『ワンピース』をオススメするような人って、僕は信じられないんですよ。それは決して『ワンピース』が面白くないという話ではなく、50巻も出ている漫画を薦めるのってどういう神経なんだ?と。

 もし、“買わせる”のだとしたらトンでもない出費になりますよね。
 “貸してあげる”にしても取りに来るのや持ち帰るのも大変ですし、よしんば家にまで届けてあげるにしても女のコだったら家まで来て欲しくないと考えるコもいるでしょうしね。どんだけ信用ねえんだ、俺は。
 家に置いておくのも相当なスペースになりますし、読むのにも時間がかかります。その人が一週間でどのくらいの時間を「漫画を読む時間」にあてているかを考えると、50巻も読ませることなんてゾッとしてしまいます。


 しかも、50巻で完結しているワケじゃないですしねー。
 「この後の巻も貸して欲しければ俺との関係を続けることだな、グフフフフ」という下心があれば別ですけど、そうでなければ最悪「続きが気になる」状態で関係が切れることだってあるワケです。10年、20年連載が続いていれば、そりゃ会わなくなる友達だって多いですし。

 僕は高校時代に浦沢直樹氏の『MONSTER』を買っていて、それが学年中で回し読みされているような状況があったのですが……『MONSTER』は僕の高校在学中に完結せず、高校卒業後しばらく経ってから会った高校時代の友人から「オマエが新しい巻を貸してくれないから、自分で続きを買うハメになった」と文句を言われたことがあります。
 この例は極端とは言え、未完の漫画を貸したりすれば似たようなことは起こりうることなんですよ。


 なので、僕は全2~5巻くらいで完結している漫画をオススメしていこうキャンペーンをやっているのですけど、そうすると今度は知名度がなくて「そんなマニアックな漫画、読んでられねえよ」と言われるという(笑)。



 チェックポイント4:プレゼン能力
 これはもはや「相手を見る目」ではありませんが……最終的に明暗を分けるのはコレなんですよね。

 同じ作品のレビューであっても、この人のレビューを読んでも買う気は起こらず、こっちの人のレビューを読んだら買いたくなった―――みたいなことは普通にありますから。結局、「彼女に『よつばと!』をオススメしたらドン引きされた」のって、『よつばと!』のせいじゃなく、オマエのプレゼン能力がないからだろと。彼女持ちの男には冷たく当たるやまなしなのであった。


 『よつばと!』だって「人妻・女子大生・女子高生・女子小学生・幼女に囲まれて日常を送る漫画」と紹介するか、「父と娘が町に引っ越してきて色んなことを体験していく漫画」と紹介するのかで全然イメージが違うじゃないですか。
 ちょっと反則技っぽいですが……『どうぶつの森』みたいな漫画だよ!と紹介するとかも手かなと(もちろん『どうぶつの森』を遊んだことがある人にしか使えませんよ)。


 「とにかく面白いから読んでみてよ」と紹介するだけで「じゃあ、読んでみようかな」と思わさせられるほど、信頼関係が築けている自信があるのならともかく―――普通なら、その人が好きな他の何かに似ているとか、共通の友達の名前を出して「アイツも面白いと言っていたよ」とか、搦め手から攻めていく方が効率が良いのですよ。

 最初にあらかじめ好きなキャラを言っちゃうとかも良い手かな。
 「とーちゃんがチャランポランなんだけど格好良いんだ」と言いながら渡すか、「恵那は俺の嫁!」と言いながら渡すかでは読む前の印象が全然違うというかね(当たり前だ)。


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 これは多分、漫画を好きすぎる自分にとっての哲学なんでしょうけど。
 「どんな漫画にだって良いところがあって」「その漫画を望んでいる人は必ずいる」と思うから、自分が好きになれない漫画であってもそれは単に「自分以外の人が望んでいる」だけのことであって、レビューサイトをやるからには「望んでいる人」に「望んでいる漫画」が届く手助けが出来れば良いなと思っていました。もう、レビューサイトはやめちゃいましたけどね。



 不特定多数の人に薦めるレビューサイトに比べれば、直接“その人”に薦めることなんて分かりやすいじゃないですか。その人の好みと好みじゃないものを聞いて分析する余裕があるのですから。それだけの条件が揃っていて、漫画を薦めてドン引きされるのなんてむしろ漫画に失礼だろと言いたいです。

 まぁ……その人も、漫画を薦める彼女すらいない僕なんかに言われたくないでしょうけどね!
 嫁ももう在庫切れだしなぁ……良いことないよなぁ……


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| 漫画読み雑記 | 18:17 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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