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“パクリ”と紙一重の“パロディ”だった『幽遊白書』

 「え?今更?」という話題かも知れませんが……最近とあるサイトで『ヨシりんでポン』についての記事を読んだので、今日は唐突に冨樫義博先生についての話題です。


 『ヨシりんでポン』とは『幽遊白書』の連載終了後に冨樫先生(とその友人)が出した同人誌で、『幽遊白書』が人気絶頂時に突然終わってしまった理由や連載時の辛いエピソードなんかが語られているそうです。僕自身は実物を見たことがないのですが、ネット上では読んだ人の感想が溢れているため、内容自体は結構有名なんじゃないかと思います。
 (どうでも良いけど、情報を集めようと検索したら大昔の自分の記事が出てきて、文章の酷さに逃げ出したくなりました。何なんだ、あの鬱を吐き出しまくっている文章は……!)



 というように、内容はほとんど知っているつもりだったんですけど……
 最近読んだその記事に「え?そうなの?」と色々なことを考えさせられた情報があったので、要約してご紹介したいと思います。


 「“領域(テリトリー)”の元ネタは例のアレで、パロディとして笑い飛ばしてもらいたかったのだけど……ほとんどの人にはパクリだと思われたみたいで肩身が狭かった」

 繰り返しになりますが僕は原物を見たことがないので、この発言が本当に書かれていたものかは保証できませんし(又聞きの又聞きだしねぇ)、本当に書かれていたとしてもそれが真実かどうかは分からないのですけど―――言われてみれば、そう考えた方が納得がいくような気もするのです。


 喩えば……“領域”が出てくる「魔界の扉編」の前の「暗黒武術会編」についても同じで。
 当時のジャンプに多かった(というよりも編集方針だった)“トーナメントによるインフレバトル”として一括りにされそうな「暗黒武術会編」なんですけど、ところどころに“トーナメントによるインフレバトル”へのパロディというかアンチテーゼのようなものが垣間見えたんですよね。

 ・公平ではないトーナメント表
 ・対戦方式を毎度話し合って決める
 ・公正ではないジャッジ
 ・一度負けた選手が、再び登場してまた戦う

 これは『幽遊白書』よりも、次作である『レベルE』やその次の『HUNTER×HUNTER』の初期(ハンター試験編)なんかに顕著なんですけど……“漫画のお決まりごと”を読者が知っていることを前提に、そこから絶妙な具合だけ外すという手を冨樫先生はよく使うんですよね。それこそが彼の作品の最大の魅力だとも僕は思っていて。

 『パワプロ』好きの冨樫先生に敬意を表する比喩をさせてもらえば、打者の得意コースに投げたと見せかけてボール半個分外れていることで打ち取る―――とでも言いましょうか。


 そうした“お決まり”からのズレが冨樫先生流の「パロディ」だとすると―――
 「魔界の扉編」に出てくる“領域”が、「パクリ」ではなく「パロディ」というのも分からなくはないなとも思えるのです。


 元ネタとなっているという“例のアレ”というのは、率直に言って『ジョジョの奇妙な冒険』のスタンドですよね。各キャラに個別の能力があって、その能力に二つ名が付いていて、有効距離の概念があって、駆け引きと能力の相性によって勝敗を決するという部分はほぼ一緒。

 でも、よくよく考えてみると……『ジョジョ』のそれがあくまで“スタンド能力者同士の戦い”だったのに比べて、『幽遊白書』のそれは“戦闘能力では圧倒している主人公達が、能力を持っただけの人間に苦しめられる”という構図の違いを見つけることができます。
 「何故見破ったんですか?」→「何となくだ!」みたいな展開も、高度な駆け引きバトルを冨樫先生流にパロッたものだという気もしますし。確かに当時、僕なんかはそれはそれで面白いと感じていたんですよね。



 ただまぁ……上に書いた“トーナメントによるインフレバトル”のパロディとも解釈できる「暗黒武術会編」も、「ドラゴンボールのパクリだ!」と思う人もいますし(個人的には当時のジャンプはトーナメントバトルばっかだったので『幽遊白書』だけ指摘されるのは違和感あるんですけど)。
 スタンドバトルのパロディのつもりで描かれた“領域”が、「パクリだ!」と言われるのも仕方ないのかなーとも思います。さっきは敢えて書きませんでしたけど、『ジョジョ』自身が「これまでのお決まりパターンを崩す」展開を好んで使っていましたしね。


 「パロディの定義って何?」という話になっちゃうんですけど……
 「元ネタを知らないと楽しめないのがパロディ」という定義だとすれば、「元ネタ(=お決まりごと)を知らない人も楽しんでいた」「元ネタ(=お決まりごと)を知っているとより楽しかった」『幽遊白書』は非常にグレーなポジションだったんじゃないでしょうか。
 そう考えると……『レベルE』なんかは思いっきり「元ネタ(=お決まりごと)を知らないと楽しめない」作品だったとも言えて、『レベルE』は冨樫先生が描きたかった念願のパロディ作品だったのかなーと今更ながらに思ったのです。

 裏を返せば、『幽遊白書』ではそこまで自由に描くことが許されなかったのかも知れませんね(バトル漫画の看板みたいな作品でしたしね)。



 ということもあって。
 僕の中での冨樫作品の好きな順は、『レベルE』>『HUNTER×HUNTER』>『幽遊白書』の順です。

 『てんで性悪キューピッド』は別格。あの漫画で性に目覚めた小学生の僕は、そこから変態街道まっしぐらで今に至ります(笑)。でも、今考えてみると、あの作品もまた王道お色気ラブコメのパロディのような作品だったんですかね。押し入れの中から引っ張り出して、今度また読み返してみようかな。


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| 漫画読み雑記 | 18:00 | comments:13 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

初めまして。
よしりんでぽんはもう何年も前の、
実際配布されていた時期ごろに手に入れていたのですが、
「アレ」がジョジョのスタンドの事だということに今気づきました。
ずっと海藤の能力の元ネタが筒井康隆、ということを指しているのだと思っていました。
よくよく読んでみれば、テリトリー自体の元ネタを指す文章でしたね。

| nana | 2008/08/26 01:40 | URL | ≫ EDIT

「幽遊白書」のパクリ、なんて言われる「烈火の炎」という作品があります。
烈火は、幽白を強烈に意識はしているけど、設定や展開自体は王道作品なんですけどね。
王道故に、設定と話全体の構造としては幽白よりも完成度が高いと個人的には思っていますけど、あまり言及すると荒れそうなのでこの辺で(笑)。

パクリやパロディってのは、結構微妙な関係なんでしょうね。
Aさんから見たらパクリな作品も、Bさんから見たらパロディってな具合に、個人的なものさしが違うためにややこしいんでしょう。

ただ最近の風潮として、パクリと思った人が声を荒げて非難することが多いように感じられます。
元ネタとなった作品が好きなのは分かるけど、その元ネタ作品の元ネタがある場合も多いのに、なんだかな~という気分になります。

| メルト | 2008/08/26 11:39 | URL |

何をもってパクリとし何をもってパロディとするか、その定義は色々ありますけど、個人的には作者の味が入っていればパロディだと思います。その味が分かる舌を持たない読者にとってはただのパクリとしか思われない一方で、本当に自分の味を出すことができない作者もいるからややこしいことになるんでしょうね。

| ああああ | 2008/08/26 15:58 | URL |

>nanaさん
 初めましてー。
 実際に入手した方のコメントをいただけて、「実際に書かれていたのか」が不安だった僕としては一安心しました。ネットの情報は色んなものがあってくれる分、デマやらガセやらにも振り回されてしまうこともありますからね……

>海藤の能力の元ネタが筒井康隆
 海藤の能力にも似たようなものがあるんですかね?
 室田の能力と筒井さんの『七瀬』についての比較みたいな話はよく出ていて、『レベルE』のキャラの名前なんかでも分かる通り冨樫先生は小説が好きなんだろうなーとは思います(というか、『レベルE』の主人公が筒井くんなのは冨樫先生流の礼儀だったのかも知れませんね)。


>メルトさん
 『烈火』についてはノーコメントで。

>最近の風潮として、パクリと思った人が声を荒げて非難することが多いように
 ですが、確かに自分の好きな作品と同じような話をしれっとやられていたり、オリジナリティの欠片もない作品を見たりすると、「何コレ?パッチワーク?」と思ってしまうことも多々ありますよ。「パクリでも売れたもん勝ち」ならば誰もオリジナリティなんか追及しなくなりますし、「パクリは許せん!」という声は分からんでもないです。

 そうは言いつつ……自分の作品を見返して「背の低い主人公と背の高いヒロインって○○を無意識にパクっていたんじゃないか!?」とか、「ここのこの台詞って他の作品の台詞に似ているんじゃないか!?」とか、無性に不安になることがあるのも確か。「パクりじゃないか」という疑念に過敏になりすぎると、何も描けなくなるんだろうとは思います。


 まぁ……何でしょうね。著作権的なイミではなく、ファン心理としては。
 「元ネタのタイトルを作者の前で言ってはならない」みたいな暗黙のルールが出来ちゃうような作品は勘弁して欲しいなとは思います。


>ああああさん
 なるほど、簡潔ですけど物凄く分かりやすい素晴らしい喩えですね。

 使っている材料が一緒なだけで「パクリだ!」と騒ぐ客もいれば、パセリを一つ載せただけで「これはウチのオリジナルですよ」と言い張る料理人もいるワケで……漫画を喩えるには、芸術や娯楽作品よりも料理の方がしっくりきますね。

| やまなし(管理人) | 2008/08/26 20:44 | URL | ≫ EDIT

冨樫先生は、当時(テリトリー編連載中)のジャンプ巻末コメントで荒木先生にメッセージを送っていた記憶があります。「尊敬してます」とかそういう内容で、ネタ使わせてもらいますよ的な意味合いを含んだ文章でした。

| さら | 2008/08/26 21:16 | URL |

> 海藤の能力にも似たようなものがあるんですかね?
すいません、正確には能力というか、
「一定の時間ごとに使える言葉が一文字ずつ減っていく」という蔵馬との対決エピソードが、
筒井氏の「残像に口紅を」の試みと同じ、ということでした。

よしりんでぽんは大丈夫です、ちゃんと記述あります。

| nana | 2008/08/27 01:30 | URL | ≫ EDIT

『さよなら絶望先生』第14集の、「元ネタ認定の半分は誤爆」という言葉は、「テラひぐらしwww」を嗤うものであると同時に、「ネタをネタと見抜けない人」への揶揄の意味も込めていたのかなあ、と思った。

個人的に、暗黒武術会編なんかは、「ジャンプ的お約束の中での反抗」であって、パロディではないと思ってる。「お約束の中で、外す」というのは、ジャンプ的お約束の中でいかに面白い漫画を描くかという試行錯誤の結果だと。ハンター等を見るに、ああいう脳筋バトルものは富樫先生の趣味じゃなさそうだし。

まあ、ジャンプ自体売れた漫画のコピーを作り出すことで延命してきた雑誌だから、「同じ雑誌内でのパクリ」に関しては、ある程度寛容に見ることも必要なんじゃないかな。実際、『ジョジョ』も第2部までは『北斗の拳』の延長線上にある作品だし、『北斗』路線での人気がなければ第3部以降へつなぐことはできなかったでしょう。

| fox | 2008/08/27 01:41 | URL | ≫ EDIT

>さらさん
 なるほど。
 それが彼なりの礼儀というか、「パロディですよ」というサインだったのかも知れませんね。でも、ジャンプの巻末コメントって作者が思っているほど読者はチェックしていない気がするんですけど(笑)。

 とにかく、「例のアレ」が『ジョジョ』であることは間違いなさそうですね。記事内で断定しちゃっていたくせに、実は不安なところがありました……情報どうもです!


>nanaさん
 なるほど。それは確かに“元ネタ”っぽいですね。
 というか、冨樫先生はどれだけ筒井作品が好きなんだという話ではありますが……ジャンプ読者がみな筒井作品を読んでいるワケではないですし(僕も読んだことないですし)、これは「パロディ」ではなく「パクり」と言われても仕方ないかなぁ……

 その辺の罪悪感が『レベルE』に繋がっているんだとは思いますが。


>foxさん
 『吼えろペン』にも「宇宙からの電波を同時にキャッチしただけだ!(だからパクりじゃないんだ)」という台詞があります。自分で必死に考えたアイディアが他と被っていただけで「パクリだ!」と言われる恐怖を、どの漫画家さんも抱えているのかも知れませんね。

>暗黒武術会編なんかは、「ジャンプ的お約束の中での反抗」であって
 同意。
 暗黒武術会に限らず、冨樫先生の作風は「パロディ」というよりも「アンチテーゼ」という印象です……「アンチテーゼ」ほど強いものでなくても、「いつもいつも同じパターンばかりだと思うなよ」といった読者への挑戦みたいなカンジで。

 なので、今回冨樫先生が「パロディ」という言葉を使っていたというのを聞いてビックリしたんですよ。まぁ、もちろん「領域はスタンドのアンチテーゼです」と言うワケにもいかなかったんでしょうけど(笑)、冨樫先生の中では「あれがパロディ」なんだなと思いました。

>「同じ雑誌内でのパクリ」に関しては、ある程度寛容に見ることも必要なんじゃないかな。
 というか、編集部の意向というのも大きいでしょうしね(ほとんど?)。アレが売れたからこっちでもやろう、的な。
 それはまぁドラクエが流行ったらRPGばっか出てくるみたいなもので、二匹目のドジョウを狙いつつ、読者が求めているものでもあるんでしょうし。同じ雑誌の中でやる分には「元ネタの作者が怒らなければ」アリなんだろうとは思います。

| やまなし(管理人) | 2008/08/27 20:22 | URL | ≫ EDIT

パロ

私はパロディって一発ネタって感覚があるんですよね。
話に深く関わってきたりするものはネタに感じないんですよ。
なのでテリトリーが1話だけの雑魚敵だったらパロディと認識できたかもしれませんが残念ながらパクリとしかとれませんでしたね。

| せりお | 2008/08/28 14:43 | URL | ≫ EDIT

>せりおさん

 僕も「パロディ」という言葉だと、1発ギャグ的なソレを連想しますね。
 だからこそ、1発ギャグが嫌いな僕はパロディものを好きになれないんでしょうが……

 言葉の使い方論を置いとけば……冨樫先生の仰る「パロディ」の方が1発ギャグ的な「パロディ」よりも、「描きたいものがある」気がして個人的には好きです。領域はグレーかなと思っていましたけど、『レベルE』の「RPGの世界に入ってRPGのお約束にツッコむ」とかはホント大好きでした。

| やまなし(管理人) | 2008/08/28 20:08 | URL | ≫ EDIT

個人的にはトーナメントネタとか能力バトル的なものはパクリやパロディというものではなく、
ひとつのジャンルとして成立しているものだと思います。
例えば「過去に戻って未来を変える」とか「同じ日を何度も繰り返す」とかいうネタは
やったとしても~のパクリだ!とかは言われないわけですし。
要するに同じようなネタを扱っていてもキャラクターや話の展開次第でいくらでもオリジナルの作品が作れるのではないかと。
まあ当時はそういった作品があまりなかったのでいろいろ言われるのも仕方なかったのかもしれませんけど。

| ゆう | 2008/08/28 20:53 | URL | ≫ EDIT

>ゆうさん

 ふむ。
 確かに、現在では「能力バトルはジョジョのパクリだ」というよりも「能力バトルの先駆けはジョジョだ」といった受け止められ方だという気はしますね。だからこそ、パイオニアに敬意を払うべきだと思いますし、上の方が仰ったように巻末コメントで「尊敬しています」と書いたようなことって大事だと思うんですけど。

 “領域”の場合、扉絵で能力解説をするなどの「見せ方」も『ジョジョ』に似せていましたからね。一般的な能力バトルよりも一歩踏み込んでいたと思います。それが冨樫先生曰く「パロディ」だったのだけど、「パクリ」と受け取った人もいたのかなーと。

| やまなし(管理人) | 2008/08/29 21:11 | URL | ≫ EDIT

アートの世界では、
オリジナルより「格」を上げられたら(より多層的な表現ができたら)
パクリとは言わない。というルールがあります。
マンガは、どうなんでしょうかね。

| ああああ | 2011/09/29 15:28 | URL |















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