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「自由さ」を押し出すしかなかった『Wii Music』のプロモーションへの疑問と同情

 定期的にやってくる、「買ってもいないゲームを他所様の感想を読んで偉そうに語る」コーナーですよ。
 今回のお題は『Wii Music』です。


 自由だけど自由じゃないWii Musicインプレッションカイ士伝さん)


 流石の名文。
 発売直後から色々な人が書いた『Wii Music』の感想を読み漁っていた僕ですが、「自由な演奏が楽しい!」という賛成派の意見も、「自由すぎて目的がない」「もうちょっとゲームらしさが欲しかった」という否定派の意見もどうにもしっくり来ませんでした。もちろん個々に“どう思ったか”は自由で構わないのだけれど、自分がハタから観ている『Wii Music』への印象とはズレがあって、どうにもモヤモヤしていたものがあったのです。


 というのも……僕は発売直後からニコニコ動画にアップされている『Wii Music』で作られたミュージッククリップを視聴していたからみたいなんですよ。明らかにそこには“出来の良いクリップ”と“出来があんまり良くないクリップ”がありました。


 “良いクリップ”というのは単純に演奏が上手いというだけでなく、使っているMiiとか、アイディアとか、複数のクリップの詰め合わせ方とか色んな要素が関わってくるのですが――― 
 「自由な演奏が楽しい」と言うけれど自由すぎるとクオリティは下がってしまいますし、「目的がない」と言うけれど“出来の良いクリップ”を作るという明確な目的があるとも思いますし。少なくとも、このミュージッククリップを作るというモードにおいては、そこまで「自由」でもそこまで「目的がない」とも思えなかったのですよ。(もちろん他のモードは違うんだろうなとは思いましたが)



 そんな漠然とした想いを抱えていたので、『カイ士伝』さんのインプレッションを読んだ時は「これだ!」と膝を打ちました。自分が言語化できなかったモヤモヤが、誰かの文章によって整理してまとめられていて「自分が思っていたのはこういうことだったのか!」と気付かされる衝撃というかね。

<以下、引用>
「この「自由」という表現や任天堂のプロモーションこそがWii Musicの魅力に対して誤解を招いている気がするので個人的な思いの丈をこのエントリーでぶつけておく。」
</ここまで>


 サッカーの喩えは秀逸すぎる。

 あまりに見事な喩えだったので、パクって自分の言葉で噛み砕いて僕も語ってみると―――従来のリズムゲームが「イラスト描き」だとしたら、『Wii Music』は「漫画を描く」ソフトだったのかなと。分野としては似ているし、共通の技法は沢山あるんだけど、「イラスト」と「漫画」では目指しているものが違うと。

 こんなんでも「漫画描き」の僕ですけど、世に溢れている「イラストサイトさん」を見るとそのレベルの高さに愕然とすることがしょっちゅうです。一生かかってもこんな絵は自分には描けないだろうなぁという「イラスト描きさん」が沢山いて、しかもそういう人でも「イラスト描き」の中では何万人の中の一人だったりするのです。

 でも、だからと言って、僕は「漫画描き」としてのプライドを失うワケではなく。
 上手い絵が描けなくても漫画は描けるさという拠り所を自分の中に持っているのです。

 もちろん絵が上手いに越したことはないですし、絵が上手ければ表現の幅も広がるんだろうなーとは思いつつ。漫画には漫画の技法が必要で、コマ割とか視線誘導とか効果線とか白抜きといった漫画に絶対必要なテクニックに比べ、絵の下手さ加減はある程度誤魔化しが効くのです(描けない部分はコマの外にはみ出しちゃうとか)。


 そういう意味では、「漫画」は自由だし不自由なんです。
 テクニック的には「イラスト」に比べて自由(デッサンやパースが多少狂っていても面白ければ許される)だけど、表現としては「漫画」の文法や技法を無視してはならないという不自由さがある―――




 従来のリズムゲームと『Wii Music』の違いもこれに通じるものがあって。
 『ビートマニア』とかの神業プレイ動画はもう何がなんだか分からない超絶テクニックで圧倒されるものがあるのに比べると。『Wii Music』は多少のミスをしていても「MISS!」という表示が出るワケでもなく演奏は続くので、“リズムを刻む”というテクニック的には『Wii Music』は遥かに自由だと思うのだけれど―――
 それらを組み合わせて合奏にしてミュージッククリップを作り上げる時には、そうして“自由”に演奏した一つ一つのパートの中でのルールや表現技法が必要になって「好き勝手演奏してイイというワケじゃないんだな」と気付かされるというか。


 その辺は、『カイ士伝』さんの記事のこうした表現からも読み取れることですね。

<以下、引用>
 これは実際やってみると痛感するんだけど、6つのパートを全部自分でやってみると、1つ1つの音がすごく実感できて大事に思える。単に音楽を聴く側だった時は何の変哲もない音楽だったんだけど、レッスンを重ねて1つの曲を作ってみると、「ああ、ここでドラムが効果だしてるんだなあ」と気づかされたり、「ここでベースが音外してるなー」なんてことが音楽に対してド素人の自分でも理解できたりして、そんな自分に驚かされる。
</ここまで>

<以下、引用>
 人間生活にも言えることだと思うけど、自分勝手にしていいのと自由であることというのは似ているようではき違えてはいかんと思うし、自由ではあっても自由を楽しめるまでにはきちんとしたレッスンが必要という意味で「自由に楽しめる」をあまりアピールしすぎるプロモーションはちょっとちがうかなと思いました。これは音楽というそのものを楽しむための入り口というほうが合ってる感じ。
</ここまで>


 しかしまぁ……このゲームってプロモーションがしにくいゲームだったんだろうなぁという同情の余地もあります。

 ミュージッククリップを熱心に作っているような人達からすると、思いっきり「一人で没頭する職人ゲーム」という認識が強いと思うのですが。
 「家族で楽しむ」Wiiの四本柱の最後として登場させるからには、誰もが気軽に“自由に”楽しめるという切り口として宣伝するしかなかった。その結果、「自由さ」の部分(モード)ばかりが前面に出てしまって、演奏を重ねて合奏するという部分(クリップ作成のモード)が認知されなかったんじゃないかと思います。

 そりゃあねえ、『Wii Music』という名前を付けるからには「職人ゲームですよ!」「人を選ぶゲームですよ!」とは言えなかったでしょうし、言うべきでもなかったんでしょうけど(「人を選ぶ」とスタッフですら思っていた『どうぶつの森』が大ヒットした例もありますし)。



 2006年のE3で宮本さんがWiiリモコンを指揮棒に見立てた時から『Wii Sports』『Wii Fit』に続くキラーソフトという認識がされていたのも不幸ですよね。年末商戦のラインナップから外されて10月発売になったということから分かるとおり、任天堂からしてもそれほど売れるソフトだとも思っていなかったでしょうに(まぁ、今後再点火する可能性もなきにしもですが)。

 つーか、いつの間にかAmazonでの販売価格が3582円にまで落ちていますね(15日朝時点)。
 購入を迷っていた人からすると、非常にお買い得な値段になってきたんじゃないかと無責任に思いました。「人を選ぶゲーム」だということさえ分かって、それでも魅力を感じるのなら肌に合わないこともないでしょうし!と、買ってもいない僕が勧めるのもどうかと思うなぁ。


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wii musicの宣伝変わってた。

「Wii Music」の宣伝が変わってるのに気がつきました。 http://wii.com/jp/movies/wii-cm-soft193/ これは良い宣伝ですね。 http://wii.com/jp/movies/wii-cm-soft193/の宣伝も3パターン目です。 1つ目は、女の人が一人で演奏しているものでした。 これは、あまり良い

| ちゃんぷる~ | 2008/11/21 14:45 |

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