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スポーツ漫画の「最終目標」と「リアリティ」について

 WBCは日本が優勝で2連覇達成!やった!!
 最後の最後で決勝打を打ったのがイチローという辺り、良くも悪くもこの大会はイチローのために存在していたんじゃないかと思わされるフィナーレでした。スゴイ。感動しました。



 さて―――
 結果として優勝した今だから言えますけど、この大会が始まるまで僕は「今回のWBCってどこまで行ったら日本は合格なんだろうな」と思っていました。監督・選手のコメントやCMなんかを見る限り「優勝以外は眼中にない」というカンジでしたけど―――

 前回大会で優勝できたのは、ハッキリ言って“運が良かった”のは間違いないですし。大リーガーが参加しなかったとは言え北京五輪では惨敗でしたし。事前情報だと「今回は大リーガーが沢山出るからアメリカ・ドミニカ・ベネズエラはムチャクチャ強い」みたいに言っている専門家もいましたし。


 僕はこっそりと「優勝なんてムリだろうなぁ……」「ベスト8は余裕だろうからベスト4に進んだら万々歳くらいなのかなぁ…」なんて考えていました。悲観主義者でゴメンなさい。フタを開けてみたら、日本が堂々たる優勝でした。
 大会のルールとかモチベーションなんかの条件が日本優位に働いたとは言え、野球の国際大会において日本チームが優勝するのは何ら不思議ではない時代なんでしょうね。





 で、ここからが本題です。
 スポーツ漫画におけるフィナーレとは、「最高の舞台」で「最高の相手」と戦って「最終目標」をつかみ取るというのが一つの雛形になっていると思います。少年漫画の場合は特に。
 喩えば高校野球の漫画で言えば、夏の甲子園で優勝するとか、甲子園出場の切符を掴むとか―――その作品ごとの「最終目標」があります。
 実際に万年1回戦負けの弱小チームが1~2年で甲子園出場や甲子園優勝なんて成績をあげられるケースは少ないと思うのですが、それを漫画で描いたからと言って「リアリティがない」とは言われないものです。どっちかというと「夢を諦めない勇気を与えてくれる漫画だ」と称されるんじゃないかと(もちろん中身にも依りますけどね)。



 では、喩えばサッカー漫画で日本代表がW杯優勝するフィナーレを描いたとしたら……
 多分、「日本がW杯で優勝するなんてありえない」「リアリティがない」「この作者はサッカーを知らないのか」みたいにボロクソに叩かれちゃうんじゃないかと思うんですよ。あ、実際にそういう漫画があったならゴメンなさい。具体的な作品を思い浮かべて書いているワケじゃないですから。

 「万年1回戦負けだった弱小野球部が甲子園に出場する」のも、「サッカー日本代表がW杯で優勝する」のも、実際に起こりうる可能性はそんなに差がないような気がするんですけど……フィクションとして描いた時に許される度合いには大きな差があると思うのです。



 サッカー漫画って、今の時代どこに「最終目標」を設定すればイイか非常に難しいですよね。
 「W杯優勝」だと日本代表にはリアリティがないけれど、「W杯出場」だとさほどドラマチックにも思われなくなってしまっていて。「Jリーグ優勝」だとか「高校選手権優勝」だとかを最終目標にしても、「海外にはもっと強いチームがある」とか「サッカーの場合は高校生でもプロの選手として活躍するケースがある」とか、どうにも「最高の舞台」にならないような気がしてしまうというか。いやまぁ、Jリーグや高校選手権で優勝するなんて物凄いことなんですけどね。



 同じようことはプロ野球漫画にも言えて……今日の日本のWBC優勝は物凄くめでたいし感動したのですけど、現実の野球がこんなにドラマチックだったら、野球漫画で日本代表がWBC優勝を目指す物語を描いても「え?今更…」という印象がありますし。
 プロ野球のリーグ優勝を最終目標にする野球漫画を描いても、「WBCの優勝に比べれば…」と冷めてしまう人がいるかも知れませんし。


 スポーツ漫画って、常に「実際のスポーツ」と比較される分だけ難しいんだなぁと改めて思いました。


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| 漫画読み雑記 | 18:08 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

>「最高の舞台」で「最高の相手」と戦って「最終目標」をつかみ取る
言葉だけで捉えて論じるならそうかも知れませんね。
しかし、物語は結果だけでなく過程も描かれますから、その一コマ一コマ、一枚一枚、一場面一場面、一展開一展開、すべての積み重ね次第で、どんな「結果」も「リアリティ」があり「物語」として読者の心を捉えるのではないでしょうか。

| 白恋 | 2009/03/24 23:09 | URL |

うーん。「最終目標」と「リアリティ」は、関係はあまり無いと思います。
「最終目標」は言葉通りその漫画の目指す終わり方で、
「リアリティ」はその漫画を形作る要素の一つでしかないのですから。
他のコメントでも書かれていますが、結局その目標に辿り着く過程の描写で
如何に「説得力」を生ませるか、だと思いますよ。
そしてその「説得力」と「リアリティ」はイコールではありません。
現実的に考えれば「無理だろ」な目標を達成する結果を
素直に「よっしゃー!」と思わせるそれまでの描写が「説得力」です。
そしてそこがスポーツ漫画の主軸だと思います。
あと、環境(設定)的な「リアリティ」より、読者が重視するのは心情的な「リアリティ」の方が
多いかもしれません。

| ササキ | 2009/03/25 02:24 | URL | ≫ EDIT

描き方がチーム単位なら確かにおっしゃるような心配がありますが、
個人単位の目線ならどんな最終目標・テーマでも
あまり問題が生じないような気がします。

| t | 2009/03/25 06:15 | URL |

バスケ漫画では、驚くほど勝たない「あひるの空」のような漫画もありますね

| ないなん | 2009/03/25 12:15 | URL |

“最高の舞台”という、見た目ばかりに拘っているのでは?
“どこで誰と戦う”ということだけが重要なのであれば、それは単なる格闘ゲームでしかないと思います。


例えば『スラムダンク』は、ドラマ性と試合の内容、画力によって最高のスポーツ漫画になったんだと思います。別に全国大会が舞台だったから試合に凄みがあったわけではないと思います。

舞台に拘っていたらキリがないですよね。
世界が舞台で頂点にたっても、次は連覇という目標がでてきてしまうし。

だから、学校規模であれ、世界規模であれ、限定された空間の中で、いいドラマを作っていかないとダメなんだと思います。
それを描く“舞台”は、単なるステージでしかなくて、役者とドラマが重要なんじゃないかと

| ああああ | 2009/03/25 14:15 | URL |

言われてみると、〝世界一〟になって終わるサッカー漫画ってあんまり見かけないですよね。 殆どが〝海外で出会ったライバルのチームと戦って勝利する〟〝日本一になったから海外へ行く→俺たちの戦いはこれからだ!〟みたいな終わり方ばかりのような。
ちゃんと世界一になったのは「キャプテン翼」くらいかな? でもあれはJrユース及びユース代表限定の世界一だし、リアリティがあまり感じられないから、今回の記事の内容からは外れてしまうでしょうか(苦笑)

| じぇふ茶 | 2009/03/25 23:00 | URL |















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